2014年09月19日

捕鯨礼賛大本営放送NHKがニュージーランドに宣戦布告!?

◇捕鯨礼賛大本営放送NHKがニュージーランドに宣戦布告!?


 ツイッターでの反応はこちらに。
■NHK、ニュージーランドにケンカを売る
http://togetter.com/li/720977

 スロベニアで開かれているIWC(国際捕鯨委員会)総会を取り上げた、9/17のNHK「ニュースウォッチ9」の特集の中で、度肝を抜く解説が。
 視聴者の目に飛び込んできたのは、画面いっぱいにまでデカデカと書かれた「ニュージーランド真のねらい 日本の国際イメージ悪化」のキャプション──。
 さて、同じ太平洋の島国として、報道の自由度をはじめ民主主義の各種指標で高く評価され、非核の道を貫き、地震の痛みをともに分かち合う、かけがえのない友好国であるはずのNZと同国市民に、思いっきり拳を振り上げてケンカをふっかけたNHKの真意は何なのでしょう??

 まず、背景を説明しておきましょう。
 この間、NHKをはじめとする日本のメディアは、同国提出の決議を「先延ばし」を狙ったものだと盛んに報じてきました。大本営の指示どおりに。しかし、実際にはその内容は、単なる先延ばしを目的としたものではありません。調査捕鯨の計画審査にあたり、その妥当性について、科学委員会(IWC-SC)の上位組織となるIWC総会にチェックさせる機能を求めるもの。
 なにしろ、ニュージーランド(NZ)はオーストラリア(AUS)とともに、この3月末ICJ(国際司法裁判所)によって日本敗訴の判決が下された調査捕鯨裁判の当事者なのです。皆さんとっくにご承知のはず。
 調査に名を借りた日本の違法な捕鯨を食い止めることのできなかったIWC-SCに対し、ICJの判断を踏まえてより厳格な運用を求めることは当然のことでしょう。もう一方の当事者に反省の姿勢が微塵も見られないのであれば、なおのこと。

 NHKの主張は、きわめて合理性に欠けるものです。
 友好国を攻撃的に貶めるのであれば、吉田調書や慰安婦証言以上に徹底した精査が求められて当然でしょうに。
 NZの決議に賛成した国は35カ国。一番の“お友達”である米国、AUS、EU諸国、南米諸国をはじめ多数の国々が、NHKいわく日本を貶めようとしているNZに同調したことになります。
 一体、彼らはみな、NZの“悪意”を見抜けなかったのでしょうか? あるいは、彼らもまた、日本の失墜させようと企んでいるのでしょうか?
 その中で、NHKがNZのみをことさらにあげつらったのは一体なぜでしょう? NZの日本に対する悪意が中でも飛びぬけていたから??
 ていうか、NZ、米・AUS・EU・南米諸国等がこぞって、日本に対するイメージを悪くさせようと働きかけている“世界”って、どこなの?? 中国や韓国? ロシア? このやり方で効果ある? それらの国に対して、これ以上日本の評価を貶める意味あるの????
 それを言うなら、国連から勧告を受けたヘイトスピーチや、(否定された一部以外の)慰安婦問題への対応、海外メディアで報じられている極右と政府関係者のリレーションのほうが、よっぽど日本のイメージダウンにつながっているよね・・少なくとも、報道の扱い方を見る限り、NHKはNZの陰謀≠ノ比べれば瑣末なことと思っているらしいけど・・

 第一、日本が決議を遵守さえすれば、国際ルールを守る姿勢を見せさえすれば、国際的イメージの悪化を防ぐことは簡単に避けられます。
 今回のNZの決議以前に、これまで日本の調査捕鯨に対してはIWCで何度も非難決議が採択されてきたわけです。
 捕鯨に伴う「国際的イメージの悪化」は、賛成反対双方がずっと指摘してきました。それを招いたのが、NZの陰謀などではなく、南極海調査捕鯨に固執する日本の姿勢そのものであることも含めて。
 そして、「国際的イメージの悪化」を懸念する声が、霞ヶ関の中からさえも聞こえていたわけです。
 米国・AUS・NZはじめ価値観を共にするハズの友好国に対するイメージを悪化させる、国際協調のつまづきの石としての負の側面と、捕鯨サークルの業界益ないし森下政府代表の言うところの「政治的ニーズ」という、二つの国益を斟酌し、「大きな国益の方を優先するほうが賢明なのではないか?」という声が挙がっていたわけです。
 今年NZが決議を出す以前から。日本国内で。例えばこれ。

−メディアが伝えぬ日本捕鯨の内幕 税を投じて友人をなくす|WEDGE

 今回最初に社説を出した毎日新聞も、「南極海での捕鯨に固執して参加国の反発を招き、沿岸での捕獲枠設定まで否定されるという負の連鎖からは脱却する必要がある」(引用)と指摘しています。
 その点に関していえば、NZは日本の沿岸小型捕鯨再開要求に対し、「南極海での捕鯨をやめるなら検討の余地がある」と日本に対する理解ある見解をはっきりと述べているのです。
 もちろん、日本はやっぱり国際法規を遵守する、敬意を払うに値する国だったのだな、と世界から賞賛を浴びる機会はありました。そう、ICJ判決の直後に。
 ところが、日本は国際的イメージを大幅にアップさせるまたとない機会を、自ら棒に振ってしまったのです。
 商業捕鯨モラトリアム決議から30年以上、「国際的イメージ悪化」などどこ吹く風という態度で、聞く耳を持たなかった捕鯨ニッポン。
 いまさら「国際的イメージ悪化」を気にしてどうするのでしょう?
 公共放送を通じてあからさまに他国の責任に転嫁する真似をしているようでは、その「国際的イメージの悪化」に拍車がかかるばかりに違いありません。
 何より、日本の恥を世界に晒したのは、国際裁判の判決文の形で後世にまで汚名を刻み込まれることとなった、本川水産庁長官の国会答弁・「刺身にすると美味いミンククジラ鯨肉の安定供給のため」にこそ、日本は南極海での調査捕鯨にこだわっているのだ──という、身も蓋もない本音の吐露に他なりません。

 NHKはニュージーランドという国、その国民の皆さんを侮辱しました。その侮辱を通じ、受信料の納付者、国民の信頼を裏切りました。
 中立・公正・公平とは程遠い、朝日吉田調書報道と比べても悪質さと外交への影響の点で比べ物にならない、北朝鮮国営TVもびっくり顔負けの偏向報道の責任を、NHKにはきっちり取らせるべきです。
 ニュージーランド政府はNHKと日本政府に対し、公式かつ厳重に抗議すべき。BPO(放送倫理・番組向上機構)にも審理を申し立てるべきです。
 番組の制作過程に徹底的にメスを入れたうえ、ニュースウォッチ9は打ち切り、ディレクターとトップも引責辞任を。

参考リンク:
−ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
−クローズアップ2014:IWC「調査」先延ばし可決 日本の捕鯨、岐路に(9/19,毎日)


◇追記:森下代表、ガボンとイギリスにケンカを売る

 NZに対する陰湿な誹謗中傷に負けずひどかったのが、ガボンに対する解説。
 中でも看過できないのは、森下代表の「トロイの木馬」発言。
 英国がガボンに戦争を仕掛けている。ガボンを乗っ取ろうとしている──そう受け止められても仕方のない発言です。
 では、実際の経緯を見てみましょう。
 ガボンは2002年にIWCに加盟。期を合わせるように、2003、04年と立て続けにランバレネ零細漁民センター整備計画の名目で水産ODAが供与されています。そして、2009年にはリーブルビル零細漁業支援センター建設計画の名目で11億円を超える水産ODAが供与されています。
 実は、ガボンは石油が採れることもあり、アフリカの発展途上国の中では所得が高く比較的恵まれた国。そうすると、援助要件が変わってくるわけです。ところが・・政治優先の水産無償は、それらの条件を無視して貸付ではなく贈与の形で供与が可能。水産無償はガボン宛の累積援助総額の実に9割を占めていました。詳細は下掲リンクの拙水産ODA問題解説をご参照。
 破格の厚遇があればこそ、「ヨロシク」の一言が利いてくるのです。
 今回、多くの発言で存在感を示したドミニカ同様、援助とセットで押し付けられた日本の身勝手極まる価値観の呪縛から解放されたのが真実。
 今もなお、日本の用意した甘い汁に惑わされ、片棒を担がされている国々が多くあるわけですが・・。
 公正・公平が大原則であるべきODAを、「美味い刺身」という我欲のために捻じ曲げ、アフリカをはじめとする地域の主権国家の尊厳を踏みにじり、国際会議の場で道具≠ニして利用しているのは、一体どこの国なのでしょう?
 ガボン政府と英国政府もまた、NHKと日本政府に強く抗議するべき。
 森下丈二氏には、日本の外交を担う資格はありません。まさに国の恥。コミッショナーを解任すべき。

 
参考リンク:
−国別プロジェクト概要 ガボン共和国
−捕鯨推進は日本の外交プライオリティbP!?──IWC票買い援助外交、その驚愕の実態


◇追記:BPOに意見を送ろう!

 NZ、ガボン、英国の人たちと仲良くしたいと思うみなさん(そう思わない人なんていないはず!)、BPO(放送倫理・番組向上機構)に意見を送りましょう!
 宛先と文例はこちら↓ 

posted by カメクジラネコ at 04:27| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会科学系

2014年09月04日

嘘つきデタラメ捕鯨協会

◇嘘つきデタラメ捕鯨協会──それでもあなたは捕鯨に賛成ですか?

 IWC総会を控え、我らが日本捕鯨協会さんが、またしてもとんでもないキャンペーンを張った模様(--;;
 リンクを示すのもアホらしい限りなのですが。。。

■「それでもあなたは、クジラを食べることに反対ですか?」
http://youtu.be/vO__n5uhFyM

 捕鯨サークル発の都市伝説の総集編という感じでしょうか。。。
 ま、よく出来てますよね。さすがという他ありません。
 その手の都市伝説が大好きな巷の反反捕鯨ネトウヨ君たちや、「美味いミンク刺身」(〜本川水産庁長官談)を料亭でつつくことにしか頭のない、トホホな永田町の族議員たちには、大いにウケそうです。
 腕利きのクリエーターに有償で委託したんでしょうけど。
 トップの重大な失言のせいで国際裁判でボロ負けしたのに、責任を一切取らないまま、大幅に増額された予算も、こういう具合に国民を騙す広報に使われていくんでしょうねぇ。。
 復興予算流用への批判もどこ吹く風。

 筆者にはプロに頼んで対抗動画を投稿する余裕などないのですが、とりあえず絵を1枚作ってみました。


Pyramid.png
pyramide.png

  ◆数十万種に及ぶ海洋生物のうち、人間が商業的に利用している(食べられ、かつカネになる)のはごく一部。
  ◆日本でTACが設定されたり、国際機関の管理対象になっているのは、合わせてわずか数十種。
  ◆国際管理は失敗続き。一握りのTAC設定種以外は「議論に着手したばかり」というお寒いありさま。
  ◆乱獲し放題できたウナギについてさえ、生態についてはわからないことだらけ。
  ◆利用してない(する気のない)海の生物のことはほとんど何も知らず、利用している魚のことさえろくに知らない。
  ◆わからないまま乱獲しまくり、いつのまにか資源枯渇・・の繰り返し。それが捕鯨ニッポン。

 これのどこがアンダーコントロール???
 科学的管理なんて、ぜーんぜんまっったく出来てないわけです。
 海の生態系をぜーんぶ丸ごと、万遍なく管理するなんて、できるはずも、また、しようもありません。

 以下の資料もご参照。
 
−漁業 日本のTACはなぜ7魚種しかない? 「科学的知見が十分でない」というのは本当か|WEDGE
−TAC認定対象魚種について
−全漁獲量の8割を占める魚種数の比較|水産庁

現在のTAC魚種以外にカタクチイワシ、マダラ、ホッケ、ブリ、ウルメイワシといった魚種が新たな追加魚種として挙げられているものの「生物的知見が少ない」、「精度の高い資源量の推定や将来予測は難しい」という理由で採用されていません。(引用〜WEDGE記事)

 こういう具合で、よそで出来てることすらやろうとしない、日本の水産業の悲惨な実態について、あるいは海洋環境・野生動物保護の問題についてある程度リテラシーのある方であれば、上の絵1枚だけでもわかってくれると思いますけど・・

 上記はJWAの主張に対する反論のごく一部であり、そのうちの今まであまり取り上げていなかった論点を述べただけにすぎません。捕鯨サークル発のトンデモ鯨食害論、間引き論については、猫玉さん、Adarchismさん、flagburnerさん、化学者さんはじめ市民ブロガーの皆さん、国内のNGO、そして何より、今もIWC日本政府代表の立場にあるハズの当の国際水産資源研究所所長・森下氏の口からさえも明快に否定されています。
 詳細は以下の市民ニュース記事、拙ブログコーナーのリンク先(2)をご参照。

−捕鯨問題総ざらい 2.トンデモ鯨食害論を斬る!
−「クジラが魚食べて漁獲減」説を政府が撤回──国際捕鯨委員会で森下・政府代表代理が「修正」発言

参考:
新しい提案|ika-net日記
posted by カメクジラネコ at 01:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系

2014年08月22日

クジラたちの海・ケータイ版

『クジラたちの海』と続編『クジラたちの海─the next age─』、スマホ等携帯端末でも見やすいよう文字数を調整(32字×14行、16pt)したPDFファイルを用意しました。

■クジラたちの海 〈上巻〉 (全739ページ)
■クジラたちの海 〈下巻〉 (全759ページ)
http://www.kkneko.com/nvl/whalesocean_b_k.pdf
■クジラたちの海 ─the next age─ 〈上巻〉 (全686ページ)
■クジラたちの海 ─the next age─ 〈下巻〉 (全747ページ)
■新旧上下巻4ファイルセット (LZH形式、12.3MB)

作品の概要はこちら。
■クジラ・ジュゴン・イルカたちが問う南極、オキナワ、タイジ、そしてフクシマ
■クジラたちの海─the next age─☆オマケイラスト

動物文学、SF、ファンタジーがお好きな方、読みごたえのある長編小説をお求めの方、ぜひ手にとってみてくださいm(_ _)m
タダです(^^;
夏休みは残り少なくなっちゃったけど、通勤・通学のおともに。。

ご意見・ご感想は当ブログのコメント、拙ホームページのフォームメール、拙ツイッターアカウントDMまで。

posted by カメクジラネコ at 23:16| Comment(4) | TrackBack(0) | 特設リンク

2014年08月07日

クジラたちの海─the next age─☆オマケイラスト

挿絵3枚UPしました。
1作目は全章にイラストを付けたのですが、今作はもう息切れでこの辺が限界。。
どのシーンかは読んでみてください・・
ご感想お待ちしてますニャ〜m(_ _)m

posted by カメクジラネコ at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2014年08月01日

クジラ・ジュゴン・イルカたちが問う南極、オキナワ、タイジ、そしてフクシマ

本日は宣伝ですm(_ _)m

一部残っていた誤字を修正、イラストを加え、再アップしました。


『クジラたちの海─the next age─』
snext_cover1a.pngsnext_cover2a.png

http://www.kkneko.com/
http://www.kkneko.com/nvl/nmokuji.htm
http://www.kkneko.com/nvl/nmokuji2.htm


『クジラたちの海─the next age─』は、'95年に評論社より刊行された『クジラたちの海』の公式の続編・完結編です。


前作『クジラたちの海』は、ズバリ《クジラ版ウォーターシップダウン》。

ジャンルでいうなら、『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』(リチャード・アダムズ/評論社)、『テイル・チェイサーの歌』(タッド・ウィリアムズ/早川書房)、『ジェニー』(ポール・ギャリコ/大和書房)に代表される動物ファンタジー。

日本国内で該当する作品は『ガンバと仲間たち』のタイトルでアニメ化された『冒険者たち』(斎藤惇夫/講談社)くらいでほとんど見当たらない中、海外の優れた動物文学に負けないだけの作品であると、作者自身は自負しております。

前作の見所は、ウォーターシップダウンに出てくるエル・アライラー、同じくテイルチェイサーのミアスラーに当たるクジラたちの神メた・セティにまつわる話中話。それらは他の作品に類を見ない生態学の物語≠ネのです。筆者のお気に入りは世界でただ一頭の醜い生きものクラークにまつわるスカベンジャーの物語。
個性豊かな4頭の旅の仲間が、読者を大海原の冒険へといざないます。そこで読者は登場鯨物たちとともに、公海漁業、核実験、タンカー事故といった海の環境問題に直面することになります。メインのテーマはもちろん捕鯨、そして米軍による核事故。うわべをなぞるだけで終わることなく、さりとて冒険の味わいを損ねることなく、クジラたちの海≠ナいま何が起きているか、読者は身をもって体感することになるでしょう。

続編『クジラたちの海─the next age─』は、いくつかの点で前作よりさらにパワーアップ。
前作はジュヴナイルながら読みにくさ、とっつきにくさが難点でしたが(『指輪』ほどじゃないけど・・)、新作は対象年齢を少し引き上げつつも、文章は前作よりずっと読みやすくなっているハズ・・。
本作の売りは3つ。

100%動物目線の本格動物ファンタジー
現代社会の闇に限界スレスレまで肉迫する社会派小説
時空を超えた圧倒的スケールで展開するSFスペクタクル

相容れないかに見える3つの要素を、ひとつの小説に全部、本気でブッ込んでます・・

まず動物文学の部分について。
前作は異種混成ながら、登場鯨物はほぼクジラメインでしたが、今作ではジュゴン2頭がメインキャラとして大活躍します。そのうち1頭はリュウキュウのザンの郡最後の子=Bこの2頭は、作者が作品中で一番好きなキャラでもあります。
最後の子<Cオの生い立ち、ヘノコの海の危機、そして、南の海から彼を救いにきた長老ヨナや、無邪気なスナメリの子ハナとの交流は、この物語の核でもあり、筆者としてもありったけの思いを筆(キー)に込めました。
ジュゴンが主役級のファンタジーというだけでも、動物文学ファンなら一読の価値ありです。
また、後半では、オキゴンドウのレオやマダライルカのシーベル、カマイルカのファウナなど、たくさんのイルカたちが登場します。出番はやや短めですが、彼らも豊かな個性で物語を引き立てます。中のマゴンドウの賭博師ダイは、ガンバに登場するイカサマがモデル。
物語の見せ場のひとつが、巨大ツナミの脅威に、クジラ・ジュゴン・イルカたちが、それぞれの個性を活かしつつ立ち向かうシーン。
イルカ視点のツナミの描写も、もちろんオリジナル。
今作では、敵方のネオシャチ特攻隊の5頭の将校らも、一癖も二癖もある曲者ぞろい。
主鯨公夫婦だけでなく、懐かしい前作のキャラも登場します。

次に、社会派小説の要素。
本作はクジラ章≠ニ3頭の《毛なしのアザラシ》を主人公とするアザラシ章≠ェ交互に進む展開。
このうち、アザラシパートについては、複数のNGO関係者のほか、官僚、科学者、海保職員、元捕鯨会社社員など、さまざまなキャラが登場します。某船長とか、どっかで団体の誰かに似てない?とか思う方もおられるかもしれませんが、もちろん関係ないです・・
とはいえ、各団体や各キャラ等は、現実の映し鏡となるよう、複数の属性を兼ね備えた、事件≠説明するのに最適な理想化された存在として、役柄を与えられています。現実のニンゲンをモデルにしても、やっぱり面白くないですし、ね・・
本作で描かれるテーマは、南極海捕鯨、米軍基地問題、イルカ猟、そして原発。本作ではサスペンスの要素も盛りだくさん。
いま何かと話題の脱法ドラッグ(名称変わったけど)の問題にも触れています。
実際に起こった事件とは異なりますが、話中で起きる鯨肉絡みの事件は、現実の捕鯨問題の核心に迫ります。
捕鯨とイルカ猟の町、太井地では狂信的な極右団体、その名も在得会≠ェ暗躍。イラストはそのワンシーン。
zaitoku.png
そして、大詰めでは、某NGOの所有船爆破事件を越える、日本史上空前のテロが。
公開中の映画ゴジラの新作についてはいろいろ論評されていますが、311に文字どおり真っ正面から取り組んだ作品として、本作はゴジラにも全然負けてないつもりです。

最後に、SFの要素。筆者としてはあえてハードといいたいところ。
クジラの主鯨公の妻、メルの予言と、アザラシの主人公の一人、紗樹の夢が交差するとき、物語はほのぼのとした動物ファンタジー、現代社会を舞台にした社会派小説から、一気に壮大なスケールのSFへと移行します。
前作でもシャチVSシャチ、マッコウVSマッコウの戦闘シーンがクライマックスを飾りましたが、今作でも息を切らせぬ戦いが複数の組み合わせで展開されます。
原発事故現場で繰り広げられるミュータントVSミュータントの死闘、精鋭ネオシャチ軍団VSC&S<Rンビの戦闘シーンもイラストにするつもりだったのですが、紙がなくなっちったのでまた次回に・・
終盤になると、幾何級数的に物語のスケールが拡がっていきます。

『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』、『テイル・チェイサーの歌』、『スフィア』(マイクル・クライトン/早川)、『海底牧場』(アーサー・C・クラーク/早川)、『スタータイド・ライジング』(デイヴィッド・ブリン/早川)を読んで面白かった方。
ファンタジー、SF、社会派小説が守備範囲の方。既存の小説に物足りなさを感じている方。
あなたを(前作と合わせて)2万+5千マイルの冒険の旅にお連れします。
ぜひ手にとってみてください。
前作(改訂版)、新作ともにいまなら無料で読めます(PDF版+HTML版)。


 ◇ ◇ ◇

筆者としては、ニセヤブじみた自画自賛は本意ではないのですが、翻訳と同時に進めていたエージェントとの交渉がポシャッてしまったため、当面小説の売込を優先せざるを得ない次第(--;
前作が筆者の未熟さに加え、前後左右から鉄砲を撃ちまくられたおかげで、興業的に啼かず飛ばずで終わったため、続編発行の道も閉ざされてしまったわけですが。。
引き続き、海外出版社との交渉協力者を募集中m(_ _)m
有償、条件等応相談。詳細はHPのフォームメールまで。
posted by カメクジラネコ at 21:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 特設リンク

2014年07月14日

捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!・3/JARPAUレビューに見る調査捕鯨の非科学性・2

◇捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!・3

■巨大クジラ、漁業資源の増殖に貢献? (07/11,ナショジオ)

「我々が新たに検証した複数の研究では、クジラのような大型捕食動物が存在するほうが、生態系における魚類の個体数が多くなることが明らかになっている」(引用)

 クジラたちは、高緯度における生産を貧栄養の深海や低緯度海域に分配し、海の自然の多様性を高めるきわめて重要な役割を果たしていることが明らかに。もっとも、定性的には以前から指摘されてきたことであり、とくに意外性はありません。要は、クジラも「他の野生生物と同じなんだ」というだけのこと。自然について無知な日本の反反捕鯨論者が脳内妄想でこしらえた、海の自然を害するエイリアンのごとき存在などではないという、当たり前のことが再確認されただけ。
 国際司法裁判所からもそのずさんさを指摘された日本・鯨研の調査捕鯨と異なり、「質が高く興味深い研究」とレビューした他の研究者も絶賛。まあ、「刺身にすると美味いミンククジラ肉の安定供給のため」に行われた名ばかりのケンキュウとじゃ、比較にもなりませんわな。。
 以下の拙過去記事と関連リンクもあわせてぜひご参照を。

−捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!
−捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!・2
−捕鯨は生態系破壊!!
−調査捕鯨では絶対わからない種間関係の重要性

◇JARPAUレビューに見る調査捕鯨の非科学性・2

■SC/65b/Rep02 Report of the Expert Workshop to Review the Japanese JARPA II Special Permit Research Programme
http://iwc.int/sc65bdocs
http://events.iwc.int//index.php/scientific/SC65B/paper/view/686/673

 前回の続きから。
 生息数推定に関する6章では、クロミンククジラと他の鯨種、あるいは捕鯨操業海域≠ノおける生態の情報量のアンバランスが指摘されています。従前から筆者らが口酸っぱく追及してきたことですが・・。以下はJARPATのレビュー時にHPで使ったチャート。Uになってフクサンブツの生産量が倍増、生態系アプローチというお題目が加わったものの、状況は変わってないわけです。
 一言で言えば、おっそろしく偏っているのです。
jarpa.png
 かくもいびつに変更している理由はひとつ──そう、永田町のグルメ族議員に「刺身にすると美味いミンククジラ肉を安定供給するため」。ICJの判決文中にもしっかり書き込まれてしまったとおり・・。
 そのことを端的に象徴しているのが、レビューの23ページに書かれた以下の記述。

The Panel also recommends the collection of data on the ecotype of killer whales to try to allow estimates of abundance to be developed for each. This information is of importance to ecosystem modelling given their different feeding habits and in particular to evaluate the consequences of predation on minke whales.(引用)

 自然死亡のパラメータ推定にも直結する重要な捕食者であることは誰の目にも明らかなことですが、生態系アプローチと言いつつ、両種を含む種間関係の研究には、《耳垢コレクション》と違い雀の涙ほどの研究リソースも割かれてはきませんでした。
 今日ではシャチは食性や分布から少なくとも3つのエコタイプに分かれることが確認されていますが、シャチの個体数と分布動態とあわせ、クロミンククジラの繁殖海域を確定し、海域と年齢によるシャチの捕食傾向を突き止める息の長ーい研究が必要とされるでしょう。日本は単純な4鯨種モデルをぶち上げましたが、その単純なモデルでさえ、パラメータとしてシャチの捕食を考慮するか否かでシミュレーションの結果は天と地ほども変わってくるはず。RMPに生態系モデルを適用するなら、絶対に外していいはずがありません。
 まあ、まっとうな動物学者にしてみれば、挑戦のし甲斐のあるテーマに違いありませんが、副産物の売り込み営業を喜び勇んで兼任している鯨研の連中としては、忍耐力と限界突破の発想と多くの時間を要するこの手の非致死的研究には、きっと食指が動かないのでしょうけれど・・・

 最後のJARPAUレビュー、ツッコミどころはまだまだ残っているのですが、当ブログではこの辺にとどめておきます。興味のある方は直接IWC-SCのレポートをぜひチェックしてみてください。
 調査捕鯨に関してひとつはっきり言えることは、海洋環境保全や沿岸の漁業資源の管理のために必要な、はるかに寄与度の高い数々の研究を差し置いて、長期にわたって巨額の研究費が国によってあてがわれながら、その内容は驚くほどずさんで、疑問符のつかない満足なアウトプットひとつ出せない代物だということです。なんとなれば、《調査捕鯨そのものの正当化》、《永田町のグルメ議員たちに刺身にすると美味いミンククジラ肉を安定供給すること》こそが、調査捕鯨というカガクの目的であり、成果に他ならなかったのです。

参考リンク:
−調査捕鯨の科学性を解体する|Togetter
−JARPAレビュー報告徹底検証
−持続的利用原理主義さえデタラメだった
−調査捕鯨の科学的理由を"後から"探し続ける鯨研 
−ペンギンバイオロギングと調査捕鯨


◇お知らせ

 海外出版社との交渉を担当するエージェントを急募しています。
 交渉料7万円〜(応相談)
 連絡はHPのコンタクトフォームまで。

posted by カメクジラネコ at 17:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系

2014年06月30日

JARPAUレビューに見る調査捕鯨の非科学性

◇JARPAUレビューに見る調査捕鯨の非科学性──IWC科学委で長年ツッコまれ続け、ICJにダメ押しくらったトホホな実態

 国際司法裁判所(ICJ)で日本の南極海調査捕鯨を国際条約違反と認定した判決が出た後、サイエンス4月号で同判決の影響等を論じた1ページの特集が組まれました。
 理研小保方氏のコピペ論文と同様、鯨研発論文の掲載を拒んだ権威ある国際科学誌ですが、法の最高権威たる国連の司法機関から調査捕鯨の科学性が酷評されたことについて、科学者の論評をまとめています。


■[ENVIRONMENTAL POLICY] Court Slams Japan's Scientific Whaling
http://www.sciencemagazinedigital.org/sciencemagazine/20140404C?pg=22#pg22


「ICJの判決は、我々研究者の多くがIWCで唱えてきた主張を踏まえたものだ」(〜オレゴン州立大スコット・ベイカー氏)
「科学研究にとってと同じく国際法にとっても良き日だ」「漁業機関における科学的管理手法の強化の助けにもなる」(〜ハワイ大の法学者アリソン・ライザー氏)
「『王様は裸だ』とIWC科学委では何年も言われてきたことだ」(〜アラスカ水産研究センターフィリップ・クラップマン氏)

 まあ、さんざんな言われようですねぇ・・。日本側証人として法廷に立ったノルウェー・オスロ大ワロー氏の一連のコメント「less than 10」「worthless」等)も紹介。法的観点からも、科学的観点からも、こき下ろされて当然の代物だったわけです。日本の調査捕鯨は。
 華々しい発表会見から一転、袋叩きに近い状況にあるアイドル的リケジョと違い、残念ながら調査捕鯨については、未だに科学性の再検証を求める声が封殺されている状況。それも、「食文化」のかけ声にかき消される形で
 これはもはや、科学に対する侮辱というほかないでしょう。

 調査捕鯨の非科学性については当ブログ・拙ホームページ・ツイッターにて再三取り上げてきたところですが、ここで改めて日本の調査捕鯨がどれほどダメダメか、ICJで中止を申し渡される直前、今年2月に東京の日本鯨類研究所(鯨研)で開かれた第二期南極海鯨類捕獲調査(JARPAU)のレビュー資料を中心に、じっくりチェックしてみることにしましょう。


■SC/65b/Rep02 Report of the Expert Workshop to Review the Japanese JARPA II Special Permit Research Programme
http://iwc.int/sc65bdocs
http://events.iwc.int//index.php/scientific/SC65B/paper/view/686/673


 上掲は今年5月にスロベニアで開催された国際捕鯨委員会科学委員会(IWC-SC)の会合に向け用意されたたたき台の資料。ワークショップが開かれたのは今年2月、東京。
 ICJの判決によって実質的に終わりを告げたJARPAUですが、最後の最後までこき下ろされ続けてきたことがよぉくわかります。
 一点、IWC-SCの調査捕鯨関連の報告書に頻出(しかもしばしばゴシックで印字されたり)する語句が「welcome」
 これ、修辞ですよ。日本の顔を立てている、立てざるを得ないということ。
 まず、日本側はSCのレビュー会合でも総会でも、最も多くのメンバーを送り込んでいる多数派。例えばこの報告書も、評価するパネルメンバー9名に対し、日本側の提議者は22名。そして何より、日本は現在IWCの加盟分担金を多く支払っている大口スポンサーの一国なのです(当然の義務とはいえ)。何せ、日本が水産ODAで買収した持続的利用グループの国々は、分担金を払い続ける持続性≠ノ欠けるものですから・・。そういう財政事情もあり、定期的な総会も年1回から2年に1回に変更されたりしているわけです。その辺はIWCの限界、日本の独善的な横暴に対して実効性のある方策をなかなか講じることができない事情のひとつともいえるわけですが。
 そういう具合に日本の顔を一所懸命立てたうえで、なおそのお粗末ぶりをケチョンケチョンに批判せざるを得ない──そのことが一体何を意味するか、皆さんにもお察しいただけるでしょうか。
 以下、レビュアーが指摘している問題点の記述を抜粋しながら、具体的に解説していきましょう。

レビュー結果@鯨類の生息環境のモニタリング(p11-12)

 この項目でパネルが改善≠求めたのは以下の5点。
1.海洋学的データを完全に収集すべく、機器の較正作業をきちんと行うこと。
2.内外のデータベースで報告されている海氷等関連する海洋学的データの有用性を精査し、JARPAT/Uのデータに組み込むこと(NASAのサイトへのリンクも教えてあげるよ!)
3.収集した海洋学的データを他の国際研究プログラムが活用できるよう、提供を検討すること。
4.TDR(音響測深器)とEPCS(電子粒子係数・粒径測定器)のデータは重要だからきちんと分析すること。
5.鯨類の目視・生物学的データと照合させる形で海洋学その他環境データの分析を進めること。

However, to investigate finer spatial and temporal characteristics, which is ideal when investigating the relationships between oceanographic data and species distributions, it is important to collect in situ water samples to calibrate and when necessary correct the instrument readings; as a minimum instruments should be calibrated at the factory once a year.

 1番目の指摘、せっかく諸々のデータを収集したのはいいけど、「計測器は少なくとも年に一度は調整しないとダメ」と言われてます。
 そういうのって基本じゃないんですか? こういうところも某リケジョみたいだよね。若すぎる一個人研究者じゃなく、日本の鯨類学を代表する研究機関のハズなのに。
 2、3、5番目も、日本の鯨類学が専門領域(?)のタコツボに深くはまって安住しすぎ、関連する海洋学の研究情報の収集すら怠ってきたことを証明しています。「日本国内で提供されているデータにすらアクセスしてないじゃん」とツッコまれてるわけです。それらの外部のデータとの整合性を検証する作業は必須ですし、中には重複している無駄な作業もあるかもしれません。これも科学者であれば最初から念頭にあっていいはず。
 ところで、この辺のフレーズ、どこかで聞き覚えがありませんか? ここでちょっと、公海調査捕鯨の再開・継続の意思を表明した林農相の談話(4/18)を振り返ってみましょう。

国際捕鯨委員会科学委員会のワークショップでの議論,他の関連する調査との連携等により、国際的に開かれた透明性の高いプロセスを確保します。(引用)

−今後の鯨類捕獲調査の実施方針についての農林水産大臣談話|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/koho/pdf/danwa.pdf


 前々から指摘されていたことを、あたかもICJの判決を受けて心を入れ替えた≠ゥのごとく弁明に使ってしまう林氏の神経が知れません。まあ、この声明も官僚が用意したんでしょうけど・・。

Unfortunately, this was not done for the last two years (2009/10 and 2010/11) when only TDR data were collected.

 4番目、クジラの分布・生息密度等を把握するうえできわめて重要とSCで評価されたデータが、なぜか後の2年間は収集されなかったことへの遺憾が表明されてますね。
 科学的プライオリティが高い情報収集を怠った理由、なぜだと思います?
 まあ、大体想像はつくでしょう。ソナーを使ったらSSCSに居場所がバレちゃう、と──。
 このことが示すのは、日本という国は科学研究のプライオリティ付けをする能力が根本から欠けているということです。
 「刺身にすると美味いミンク鯨肉の安定供給」「SSCSとのプロレス」のことしか頭にない連中が、計画を立案し推進してきたわけです。
 補完にしかならない致死的データ収集を優先する理由は何もありませんでした。米国とオーストラリアにも協力してもらい、極地研主導で海洋データと目視データの収集・分析を進めればよかったのです。そうすれば、鯨類学にとどまらず、南極圏の物理学・生物学研究に携わる世界中の研究機関に高く評価されるだけの科学的データを速やかに提供でき、場合によっては商業捕鯨再開にさえつながったかもしれないのに。

The Panel commends the collection of debris data, both in the environment and in the stomachs of the whales that can provide valuable baseline data. Such information should regularly (the need to do this annually or less frequently should be evaluated) be analysed and presented to the IWC.

 この記述は一見肯定的評価のように見えますが(科学者という哀しい人種は、データが存在すればそれだけで興味を持つものだけど・・)、カッコの中に注目。「毎年行う必要があるかどうか検証すべき」と。同じことはサンプル数についても言えます。
 実際、胃内容物ではなく海面でのデブリの収集はJARPAUの6年間にわずか88例にすぎません(p58,AnnexD)。それもおそらく偶発的に発見しただけでしょう。そもそも海面付近のデブリの密度をつぶさに調べる調査計画になっていないのです。
 デブリや汚染物質のモニタリングは、まず当該環境の汚染状況を測定・把握したうえで、その環境に生息する野生生物、この場合は南極圏の生物全般で調査を行ってこそ、初めて意義があること。南極海がどの程度汚染されているか、南極海生態系の中で汚染の影響に対し最も鋭敏なのはどの種か、死亡率の増加や繁殖への影響が見られるか、それを調べることこそ真っ先に求められるのです。毎年毎年クロミンククジラの胃を開いて中身をあさる前に。さらに言えば、漂流物が相対的にはるかに多く、影響も懸念される低緯度・北半球のウミガメ、海鳥等のモニタリングに対し、より多くの研究リソースが割かれるべきなのです。海洋汚染の状況を測るのに適切とはいえない種を指標動物にしてしまうのは、単に非効率かつ科学研究予算の無駄使いであり、汚染の実態を見過ごす危険すらはらみます。環境科学の見地からは決して許されることではありません。

レビュー結果A系群構造の時空間的変化(p14-19)

However, the Panel noted that Antarctic minke whales and other baleen whale species are more-or-less continuously distributed around the Antarctic continent; in contrast, the JARPA II research area represents just under half of the circumpolar area. Given the stated objective, the lack of information provided for areas outside the programmes’ research area presents some inherent difficulties in fully meeting the objective to elucidate spatial and temporal variations in stock structure, even though the information developed under JARPA II is probably sufficient for the purposes of developing trials to evaluate RMP variants within the area of sampling.

 調査範囲について最初から大きな疑義が表明されています。南極大陸の周り全部にいるのに、日本が調査しているのはその半分でしかないじゃん、と。
 便宜的に区分された6海区のうち、JARPAUがカバーしているのは、かつて日本の捕鯨会社が操業してきた2海区とその両隣の海区の半分ずつのみ。毎年毎年片側では数百頭分の死体から採取した耳垢栓の標本を積み上げながら、大陸をはさんだ反対側では情報が完全に欠落しているのです。科学的に見ればこれほどアンバランスなことはありません。どうせ裏側にいるクジラなんて来やしないと見込みで判断するのは、事実をもとに仮説を検証する科学者の姿勢にもとります。両隣の海区では、さらにその両隣の海区に分布する系群と混交が起きている可能性も当然否定できないからです。RMPの改善に寄与するという取って付けた目的を掲げるなら、それ以上に重要な改善要請に応じるのがスジというものでしょう。

The Panel welcomes the fact that the authors of SC/F14/J27 referenced the IWC guidelines for DNA data quality control (IWC, 2009) as had also been recommended at the JARPN II review (IWC, 2010). However, the Panel recommends that a revised paper be submitted that explains in more detail how far the guidelines were able to be followed (the present paper did note why the proponents had not been able to follow one recommendation regarding sequencing of microsatellite loci).

 4年前のレビューでIWCのDNAデータ品質管理のガイドラインに従ってないと勧告を受けながら、まだ一部で対応できておらず、その詳細な説明が不足していることを問題視しています。
 その後、SC/F14/J28とSC/F14/J29というクロミンクの系群解析に関する 2つの論文に対するレビューが続きます。SC/F14/J28はミトコンドリアDNAおよびマイクロサテライトDNAというクジラ以外でも野生動物の多型解析ではおなじみの遺伝子マーカーを用いた解析。SC/F14/J29はそれら遺伝情報に身体測定データを加えて解析したもの。執筆代表者は前者が鯨研調査研究部長Pastene氏、後者がIWC-SCの議長も務める東京海洋大北門氏。
 「よくがんばりました」と花丸の判子を押しつつ、こう言ってます。

However, there are a number of places where additional information is required to fully interpret the results.
 

 このパート(5.2.3 p15)は集団遺伝学のかなりしちめんどくさい議論ですが、要約するなら、「JARPAUによって示されたデータ自体、日本側の提唱する仮説と矛盾しているし、その部分の検証に抜けがいっぱいある」と指摘されているわけです。
 JARPA最終レビューで受けた指摘に対応したという北門氏らの解析に対しては、SC副議長に敬意を表してかせっせと持ち上げつつもPastine論文以上に辛辣なコメントが付いています。勧告の数は合わせて9個。
 まず、「論文の記載で、個体と系群に同じインデックスを使用されちゃ困るよ」と某リケジョ論文を思わせる稚拙さに苦言を呈されています。ほかにも、「モデルはベイズ法か最尤法で処理するように」「形態データの統合にあたっては性差に依存しないパラメータの変化も検討するように」といった指摘がなされており、おそらく統計学・遺伝学畑の方々なら「基本じゃないの?」と首をかしげるのではないでしょうか。これでは過渡的な試論の段階で論文の体裁をなしてないと批判されても仕方がないでしょう。

Management procedure considerations on stock structure focus on developing plausible interpretations of available data not simply the single ‘best’ interpretation when examining uncertainty.

 SC/F14/J29への指摘に続いて、パネルは1ページ以上にわたって長々と「もうひとつの仮説をきちんと検証してちょうだい」と注文を付けています。
 ここで一応ざっくり解説しておきますが、調査海域のクロミンクにはIストックとPストックという二つの系群(個体群)が存在すると考えられ、その分布境界と混交の程度が長年にわたって問題になってきたわけです。2つの系群の境界領域(p7の図1に描かれているグラデーションの部分)の状態を説明するため、<two-Stocks-with-mixing:2系群混交>説と<isolation-by-distance:距離による隔離>説という2つの仮説が立てられました。前者はI系群とP系群の分布が重なる混交領域を仮定するのに対し、後者はI系群とP系群が距離に応じて次第に混じり合う状態によって説明しています。現在日本側が主張しているのは前者。

 こうしたSCの小言≠ヘ、「低緯度の繁殖海域の調査をちゃんとやったら?」と同様、今に始まったことではありません。以下は'06年のJARPATのレビュー時のもの。

With respect to the area of transition, it was suggested that methods that address the question of isolation by distance (such as spatial autocorrelation and Mantel tests) would help resolve the position and nature of this transitional pattern. It was further suggested that other analyses based on individual genotypes, such as landscape genetics as assessed in the program ‘alleles in space’ (Miller, 2005) may help resolve the pattern of structure and mixing (though this would likely require 15+ microsatellite loci to provide sufficient power). (p421)

−Report of the Intersessional Workshop to Review Data and Results from Special Permit Research on Minke Whales in the Antarctic, Tokyo, 4-8 December 2006 | J. CETACEAN RES. MANAGE. 10 (SUPPL.), 2008 411
http://iwc.int/document_1565

 ところが、JARPAU開始年次にはすでに提唱されていた対立仮説を、日本側はずっと無視し続けてきました。JARPATへのレビューに対する応答として、JARPAUの所定の最終年次に提出された論文においてさえ、それは考慮されていなかったのです。
 しかし、今回のレビューでも引用されているとおり(p17)、当の鯨研の論文でも以前は複数の仮説が併記されていたのです。


Therefore the general stock structure archetype for the Antarctic minke whale in the feeding grounds is multiple stocks with spatial (longitudinal) segregation. (p7)


−SC/D06/J9 Genetic analysis on stock structure in the Antarctic minke whales from the JARPA research area based on mitochondrial DNA and microsatellites
http://iwc.int/document_1570


 パネルは「不確実性を解消するために必要なのは、単一の解釈に対して手を替え品を替え正当化を試みることじゃない。複数の仮説があれば、まずどちらの仮説が正しいか検証することだ」と述べ、決着をつけるための具体的な方法(近交係数の経度毎の変化を調べればいい)まで明示しているわけです。
 2つの仮説のどちらが正しいかわからない状態がずーっと続いていれば、強いフラストレーションを感じ、早く結論を出したいと考えるのが、まっとうな科学者というものでしょう。
 同じくP16でパネルは「生物学に大きく貢献するし、JARPAUの目的にも合致するはずだ」と半分持ち上げつつ、対立仮説を検証するよう改めて強く促しています。
 しかし、日本の御用学者たちは、結論を導き出すことよりも、一方の仮説に都合のいい解釈をこね回し続けることに、意義を感じていたというわけです。調査捕鯨ならではの身体測定データを、どうやって致死調査を正当化する口実につなげられるか、そんなことばっかり考えていたと。
 新しいアイディアや手法を優先して試してきた、というわけでもありません。その点に関しては、パネルは形態データの統合を歓迎しつつも、「4.で述べたとおり、海洋物理学的データの統合だって少なくとも同じくらい重要だよ。そっちもやんなよ」と推奨し、さらに衛星タグ、放射性同位体や脂肪酸解析など多岐にわたる手法も提示しています。
 工夫の余地だったら他にもたくさんあるのに、致死的調査にばかり異常に執着したがる日本の鯨類学の偏向には、科学の公平性・合理性・効率性の観点からも到底誉められたものではありません。


 続いて、ザトウクジラについて。けど、ザトウは捕っていません(オーストラリアに対する脅迫カードに使ってるだけ・・)。ここで評価されているのは、いわゆる非致死調査であるバイオプシーを用いたもの。
 短い論評ですが、「致死的調査をしてないばっかりに質が低い!」なんてことは、もちろん一言も書かれていません。論文の記載、詳細なデータの提出の注文だけ。
 バイオプシーだけで済ませているザトウクジラとミナミセミクジラより、致死調査をすることでより充実した中身になっているハズのクロミンククジラとナガスクジラの論文に対するほうが、より注文が多く、かつ手厳しくなっているわけです。
 ナガスクジラの調査結果に対しては、統計学的正当性への懸念は当然として、「過去の商業捕鯨時代のデータや他のバイオプシーサンプルをきちんと調べなさい」と注文を付けられています。
 5章最後の節、写真標識による個体識別データについては、「系群構造解明に資するポテンシャルを認識して、もっと情報の提供と分析に努めるように」と強く奨めています。
 はたしてこれは、IWC-SCが非致死調査ばかり選り好みしている所為なのでしょうか?
 いいえ。

 In such a situation, it was difficult for this study to further distinguish between stock mixing and stock core areas without using the data from the breeding areas. Future microsatellite study should use the samples from the breeding areas. Nevertheless, substantial increases in the numbers of the analyzed microsatellite loci and the biopsy samples allowed us to confirm our previous conclusion on the humpback whale stock structure in the Antarctic.

−SC/F14/J31 Stock structure of humpback whales in the Antarctic feeding grounds as revealed by microsatellite DNA data
https://events.iwc.int/index.php/workshops/JARPAIIRW0214/paper/viewFile/554/543/SC-F14-J31.pdf

 これ、当の鯨研の論文の記載ですよ。IDCR/SOWERの分を加え、トータルで581サンプル。系群構造の解析にはこれでも不十分だったとしてますが、「繁殖海域のサンプルなくしてこの研究はできなかった」との表現は、逆に言えば繁殖海域でバイオプシーを活用した調査を行えばサンプルサイズを抑えることだって十分可能だということ。「無駄な殺しをしなくて済む」ということに他なりません。
 こうやって鯨研自身が「重要な成果だ」と自賛しているくらいなのですから、ICJが「ザトウは殺さずに調査研究できるんだから、クロミンクでその努力を怠るのはおかしいでしょ」と追及するのは当然のことでしょう。
 ついでにいえば、他の野生動物でも遺伝的多型を調べる場合のサンプルサイズはこんなものです。

−地理的スケールにおける生物多様性の動態と保全に関する研究|環境省
https://www.env.go.jp/earth/suishinhi/wise/j/pdf/J01F0140.pdf

 例えば、高尾のリスの個体群構造解析は26個体、中国・近畿のツキノワグマでは同じく92個体。遺伝子サンプルは生検、発見した死骸、糞などから。
 種によっては、狩猟ないし有害駆除された死体からのサンプルが含まれるケースもあります。殺す以上は、徹頭徹尾データを取得することが供養だという考え方もあるでしょう。
 しかし、研究を主目的に、生きた個体を毎年数百頭ずつ殺そうとする、代替手法の開発・改善によってその数を少しでも減らそうと一切努力することなく、むしろ何とかして殺す数を維持しようとあの手この手を画策する──そんな動物学者は世界広しといえど、捕鯨業界のリソースにどっぷり依存している日本の御用学者以外、見当たりますまい。
 彼ら日本の御用鯨類学者は、どの野生動物の研究者よりも、動物実験が主体の医学・生理学者に近いといえるかもしれません。某リケジョのような。。研究実績の指標となる論文数を稼ぐ動機で、必要性に首を捻りたくなる突飛な研究を思いつく特性の点でも。調査捕鯨との大きな違いを挙げるなら、曲がりなりにも3R《苦痛の軽減・使用動物数の削減・代替手法への置換》の概念に基づく明確な倫理指針が設けられ、法規制や科学誌への論文掲載の国際的な審査基準として定着していることでしょう。もっとも、日本と海外先進国との大きなギャップは、動物福祉方面では常に指摘されてきたところですが。
 「なるべく殺さない」──それが動物学の基本常識。
 その中で、日本の鯨類学のみが「なるべく殺す」という常識ハズレの哲学に従っているわけです。
 残念ながら、その哲学は、科学の意義、価値を重んじる姿勢から興ったものではありません。
 副産物こそが目当てだから、解体時間が延びて鯨肉が体温で傷むことさえ恐れ──何せ、水産庁長官曰く「刺身にすると美味いミンククジラ肉」ですから──可能な限り少ない組織標本で済ませようとし、必要な解析・研究をうっちゃらかして、クジラの精子とウシの卵をかけ合わせるなんておっそろしくバカげた研究で論文数だけなんとか稼ごうとする。
 科学が産業と政治に隷属し、二の次になっているが故の哲学なのです。

 実は、上掲のクロミンクの系群構造の2つの仮説をめぐる鯨研発の2つの論文のデータについて、どうにも腑に落ちない部分があったため、パネルメンバーに直接問い合わせてみました。
 該当箇所はこちら。

[SC/D06/J9] 
  No statistically significant level of deviation from the Hardy-Weinberg genotypic proportion was detected through the strata at each of the six loci (Table 9). The same was true for overall loci in all samples combined (chi-square=16.948, d.f.=12, p=0.152).(p6) 
  Table 9(p16) 

http://iwc.int/document_1570

 [SC/F14/J28] 
  Genetic diversity indices are shown in Table 4 for whales in the western and eastern sectors of the research area. The average number of alleles per loci, average allelic richness, and average expected heterozygosity, all over the 12 loci, was high for the both sectors, and the levels of these indexes were quite similar between the two sectors. Both sectors showed evidence of deviation from the expected Hardy-Weinberg genotypic proportions.(p4) 
  Table 4(p8)

−SC/F14/J28 An update of the genetic study on stock structure of the Antarctic minke whale based on JARPAII samples
https://events.iwc.int/index.php/workshops/JARPAIIRW0214/paper/view/551

−SC/F14/J29 Dynamic population segregation by genetics and morphometrics in Antarctic minke whales
https://events.iwc.int/index.php/workshops/JARPAIIRW0214/paper/view/552

 これは同じVEからYWにかけてのクロミンクのマイクロサテライトDNAの解析結果(HW:ハーディー・ワインバーグテスト値)と記述。両論文で正反対になっています。違いは調査期間と解析した遺伝子マーカーの数、そして集団の取り方。JARPAUの方は、解析するマーカー遺伝子数を増やしたものの、各遺伝子座毎の詳細データが提示されておらず、非常に不親切。この点は上掲したように、パネルからも指摘を受けていますが。
 二つの論文の該当箇所を比較してみましょう。
HW.png

 怪しいと言えば怪しいのですが、HWテスト値が真逆になる合理的な理由も一応考えられます。SC/D06/J9のデータは経度による分割を増やした計8つの集団についての解析結果であるのに対し、SC/F14/J28の方は東西の2集団。
 HW平衡が成り立つのは、任意交配が行われる独立した遺伝子集団の場合。ただし、部分集団で任意交配が行われていても、それらの部分集団の集合としてみた場合には平衡が崩れます(ワールンド効果)。HWやワールンド効果については、参考リンクの集団遺伝学講座をご参照。
 パネルは「扁平なトーラス」という表現を用いていますが、<距離による隔離>仮説によれば、クロミンクは通常経度方向にあまり大きく移動することはなく、遺伝的に少しずつ異なる集団が隣接し合い、大陸を取り囲む連続的なスペクトルの状態をなしている、というイメージですね。
 それに対し、日本側が推している<2系群混交>仮説は、単純に2つの個体群が重なり合い、間で混交が起きているというもの。
 日本側はSC/F14/J28で提示されているHW平衡からの逸脱を、年毎に東西系群間の移動・混交の度合が大きく変化することによって説明し、<2系群混交>仮説を支持する論拠としている模様。
 確かに、HW平衡が崩れるもうひとつの理由として、集団への出入りがある場合が挙げられます。ただ、移動・混交の年変化によるなら、より小さな分集団を対象にした以前のSC/D06/J9のHWテスト値は、もっと大きな逸脱を示していてもおかしくないと思うんですがね。実際には
 さらに、同論文のP5では以下の記述があり、JARPAT時の調査結果と大差ないと言っているのがなんとも不可解。

Regarding the work conducted in response to the recommendations from the JARPA review meeting, the number of the microsatellite loci used was doubled from the previous six to current 12. Even with this substantial increase in the loci numbers, however, the level of genetic differentiation among the samples was very low.


 しかし、遺伝的小集団の集合によるワールンド効果という解釈であれば、<距離による隔離>仮説の支持も可能。むしろ、2つの調査結果に示されるHW期待値の傾向が相反することをうまく説明できます。
 一方、<2系群混交>仮説であれば、今年のレビューのP17でパネルが指摘しているように、近交係数とともにHWテスト値のほうも、遷移領域と両側の純系群との間で差が出てくるはずなのです。
 やはりP16でパネルが指摘しているとおり、当のJARPAUが提示した経度によって遺伝的・形態的特性が変化するモデルは<距離による隔離>説と矛盾しません。むしろその方がしっくりきます。身体測定データの差異を解析したSC/F14/J29のグラフ(p10)、皆さんはここで示された9つのグラフの中に、2つの明瞭な不連続境界を見出せますか? それとも、経度方向の漸次的、連続的な変化に見えますか?
 ここでパネルのコメントを再掲しましょう。

Management procedure considerations on stock structure focus on developing plausible interpretations of available data not simply the single ‘best’ interpretation when examining uncertainty. In this spirit, the Panel recommends that during the coming year, the authors of SC/F14/J28 and SC/F14/J29 consider the merits of an alternative to the two-Stocks-with-mixing hypothesis: a single stock that exhibits one-dimensional isolation by distance along a longitudinal gradient. This alternative is suggested by visual inspection of fig. 3 in SC/F14/J29, which shows how morphometric scores for individual whales vary by longitude. Morphology appears to vary more or less linearly along the zone of sampling, rather than being constant at the eastern and western extremes, with an area of mixing in between. Under isolation-by-distance, statistical comparisons of samples from the extreme eastern and western sampling regions could produce the types of results described in SC/F14/J28 (see Schwartz and McKelvey 2009).


 <距離による隔離>は野生生物の個体群動態の実相を幅広く表していますが、中でもクロミンクのケースはかなりユニークなものだといえるでしょう。分断された繁殖海域と明瞭な地理的隔離障壁がない摂餌海域との間を大回遊する生態が、ユニークな系群構造をもたらしたに違いありません。さらに、皮肉にもJARPAUの結果、系群の境界領域は時間的・空間的に変化しており、また性差もあることが確認されたわけです。そうした分布動態が微小な遺伝的交雑の蓄積を生み、経度方向に少しずつ異なる遺伝的集団が出来上がったとも考えられます。
 なお、パネルメンバーのお一方、NOAAの遺伝学者Waples氏によれば、「SC/D06/J9中の問題のHW値等については精査できておらず、パネルとしてのコメントはない」とのこと。
 結局、何年もかけて数千頭のオーダーで野生動物を積極的に殺しておきながら、T期・U期いずれの調査結果も満足な結論を出せるレベルにないということです。
 鯨研はサボタージュを働こうとせず、繁殖海域の調査、JARPAUのサンプルの再解析によって、パネルが指摘した有力な仮説の詳細な検討作業に真摯に取り組むべきです。

 話はここで終わりません。
 生態系アプローチをはじめ、鯨研側の手法や議論があたかも結論にたどり着くのを引き伸ばそうとしているかに見えるのは、調査捕鯨をズルズル延命したいという日本側の動機を考えれば容易に納得できます。しかし、系群構造に関して対立する2仮説のうち一方ばかりに肩入れする理由は何かあるのでしょうか?

 ここで、なぜ捕鯨の管理に系群構造の解析が求められるのか、改めて説明しておきましょう。付ける薬のない狂信的な反反捕鯨論者たちの認識は根本から間違っているのですが・・
 もはや常識ですが、自然保護・野生動物保護の文脈において、対象となるのは種≠ナはありません。個体群です。
 おりしも生物多様性条約の年次会合がカナダで開かれていますが、ここでいう多様性というキーワードの意味は、《自然(生態系)の多様性》であり、《遺伝子の多様性》に他なりません。地球全体で見たそれぞれに特色のある生態系の多様さ、その生態系を保全するために欠かせない構成種の豊富さ、そして、種内の遺伝子の多様性すなわち個々の個体群ひとつひとつをきちんと保全することで、それらが構成する地域の生態系の健全さを可能な限り保持すること。
 小川や林に生息する昆虫や淡水魚などの小動物たちから草花まで、「種の個体群ひとつだけ生き残っていればいいや」などという乱暴な考えは、もはやとっくに時代遅れ。地域地域の自然を構成する、遺伝的に微妙に異なる個体群のそれぞれをしっかり守ることこそが求められているのです。ホタルしかり、トンボしかり、メダカしかり、カエルしかり。
 それが現代の自然保護のトレンドであり、時代の要請なのです。
 ペンギンも、サメも、アザラシも、そしてクジラも、自然保護の標準から外れる差別的扱いは決して許されることではありません。
 クジラの保護管理に責任を負う国際機関であるIWCとて、時代の要請を受け入れる必要があるのです。

 商業捕鯨の管理方式・管理体制においても、当然個体群毎の厳格な管理を念頭に置かなければなりません。
 仮に、クロミンククジラに当てはめるとしたらどういうことになるでしょうか?
 まず、推定個体数の全体の数字(最新の合意値で52万頭)には意味がないということ。保護・管理すべきなのは個々の個体群だからです。
 以前、便宜的な合算値である76万頭(既にゴミ箱行となりましたが)に対し、年間約3千頭(平均)というRMP(改定管理方式)に基づく捕獲枠の試算が示されました。これも系群単位ではなくトータルの値なので意味がないわけですが、この仮試算の数字をもとに改めて概算してみることにしましょう。もし将来商業捕鯨が解禁になったとき、日本がどれだけのクジラを殺せるか、の。
 最初に、76万に対して52万、おおよそ2/3ということで約2千頭。全6海区のうち、日本が伝統的≠ノ漁場としていたのは2海区ですから、1/3で約700頭。実際、インド洋、大西洋側にまで出張っても、燃費がさらにかさんでますます不採算になるだけですからね。まだ名乗り出る気配のない未来の公海商業捕鯨企業が、そんなバカげたことをするはずもありませんし、「南極海のクジラはぜーんぶ俺様のモノだ!」とジャイアンな宣言をするほど、日本が狂った国であるハズがないと、世界も信じてくれていることでしょう・・
 ここで、この数字をJARPAUの目標計画数がすでに上回ってしまっているということに、皆さんもお気づきになられたでしょう。ICJがクロ認定するのは当然のことでした。
 系群構造に応じた管理を考えた場合、対象群の規模が小さければそれだけ注意深い管理が求められ、高い安全係数を見込むことになりますから、全部ブッコミの数字より当然目減りすることになります。
 余計なパラメータの入力を必要とせず、最も頑健で信頼性の高いRMPは、系群毎の管理の要請に応じるために、管理区域を経度10度毎に分割することにしていました。日本側は「それで目減りすんのは嫌だ!」という理由から、管理区域間の線引きの目をもっと粗くしようと目論んでいるわけです。「野生動物は個体群毎に保護しなければダメ」という環境保護の常識からではなく。ついでに、調査捕鯨の大きな口実にもなったわけですが。
 <2系群混交>説に即した場合、IとPの純系群、遷移領域の3つを考えればいいということになるでしょう。一方、<距離による隔離>説が正しければ、経度方向のより細かい管理区分が必要になってきます。仮に、JARPATの調査に基づきHW平衡が確認された集団を1管理系群とみなすなら、2海区で6つ。後者の方がより厳格で慎重な管理を求められるのは言うまでもありません。
 ただし、遷移領域については純系群と同様に捕獲枠を算定するわけにはいきません。捕鯨船がこれから殺そうとしているクジラが、I系群のものかP系群のものかを殺す前に判別する方法がないからです。衛星タグを打ち込んで、遺伝子サンプルを持ち帰って確認した後、翌年回収しに行く? 今はまだどこも名乗りを挙げようとはしない未来の捕鯨会社も、そんなバカげた著しく採算性を損ねるやり方を択るはずもありますまい。
 また、個体群毎の個体数推定の精度も大きく下がることになります。2つの系群を合わせたトータルの数字としてなら算出することが可能ですが、遷移領域(前者1つ、後者は4区ないしそれ以上の細分化が必要)については、さらにそのうちの系群毎の比率を割り出すことが求められます。そして、異なる系群への混獲の影響を最小限にするために、遷移領域ではより少数のほうの系群に応じた捕獲枠を設定することになるでしょう。その場合は、純系群に近い場所ほど捕獲枠を小さく設定せざるをえません。そんなしち面倒くさい管理に従いたがる捕鯨会社など、やはりいるとは思えませんが。そもそも南極海捕鯨をやりたいと言ってる企業自体ありませんけど。。
 まだ問題があります。<2系群混交><距離による隔離>のどちらであれ、JARPAUの調査自身によって判明している時間的・空間的変動と性差を管理にも組み込む必要があるということです。年毎に管理の指標とされる系群の境界が移動し、去年と同じ海域でも異なる系群に該当する可能性があったり、同じ海域でも系群毎のメスとオスの割合が異なるため雌雄別々に管理しなければならないという、きわめて厄介な課題が生じるのです。
 捕獲枠の算定に際しても、年毎に境界が移動する可能性のある変動領域の分を割り引かれなければなりません。でなければ、系群毎の管理の意味がないわけです。該当する海域での捕獲は事実上不可能ということになるでしょう。マッコウクジラじゃありませんから、今に至っても選択的捕獲はほぼ不可能。そのマッコウクジラでは、かつて陸上の狩猟動物の管理に倣ってオスだけの捕獲枠が設定されましたが、この選択的捕獲のせいで妊娠率が大幅に低下、北太平洋のマッコウクジラは個体数が急減し、商業捕鯨管理の無残な失敗のモデルケースとなりました。
 系群の性比のバランスを崩さない厳格な管理を追求するなら、同じ海域内に生息する少数の系群の、少数の性の個体数をもとに捕獲枠を算定する以外にないでしょう。
 結局、遷移領域(両方の系群が混在している範囲)・変動領域(管理区分の境界が年によってずれ得る範囲)については、ごく少数の捕獲しか認められないということになるでしょう。
 合わせて300頭か、200頭か、100頭か。以前のJARPATの規模でも多すぎということになるかもしれません。いい加減で済んだかつての乱獲時代と異なり、細かく区切った管理区域毎に厳重な管理をする、という前提付で。
 以下はそのイメージ。

jarpa2kaisetu2.png
 してみると、日本側が2つの仮説のうち1つのほうに異常なまでに固執するのは、「もう一方では商売≠ノ都合が悪い」という理由以外に考えられないでしょう。
 日本を含む捕鯨産業が大乱獲の果てに大型鯨類を次々に絶滅寸前へと追いやり、南極海生態系を荒廃させた悲劇の歴史を鑑み、慎重のうえにも慎重を期した管理手法として提案されたのがRMPでした。
 「少しでも取り分を増やしてやろう」などと画策する日本の姿には、過去に対する真摯な反省の姿勢が微塵もうかがえません。
 RMPの趣旨を踏まえるなら、遷移領域・変動領域の捕獲枠ゼロ設定は当然のことでしょう。RMS(改訂管理体制)を受け入れようとしない日本に、近海のウナギもマグロもまともに管理する能力のない持続的水産業の落第生に、影響を最小限に抑えながら捕獲する繊細な管理などできるはずがありません。

 残念ながら、これは「商業捕鯨をどうしても再開したいのであれば、最低でもここまではやるべきだ」という筆者のべき論にすぎません。そして、科学者として似つかわしくない「鯨肉販売営業」を平気で兼任している鯨研の連中のこと、時代の要請だといっても、このようなきめ細かな管理に応じるつもりはさらさらないでしょうね。
 レビュー報告の12章では、調査捕鯨を正当化する従来の主張どおり、そのデータがRMP運用の「改善に資する」と日本側は謳っています。「安全第一の管理のせいで目減りする量をちょっと増やせるかも」という意味で。
 こんなものは改善ではありません。日本がやろうとしているのは間違いなく改悪です。
 ナガスクジラを世界で最も多く殺し、南極海生態系の撹乱という未曾有の大実験を遂行してきた捕鯨ニッポンは、かけがえのない人類共有の財産である南極圏の野生動物と取り巻く自然をなおも弄び続け、多様性を損ねようと企てているのです。
 この点に関しては、多数派にしてスポンサーでもある日本への配慮から、両論併記の形で調査捕鯨の有用性に一定の理解を示そうとしているIWC-SC自体が、もはや時代から取り残されているといわざるをえません。
 「資源が枯渇さえしなければいい」という時代遅れの指標はきっぱり捨て去られるべきなのです。

 時代は変わったのです。「種が絶滅しなければいい」という初歩の段階はとっくに過ぎたのです。
 自然の多様性をいかに健全に保つかが、いま何よりも求められているのです。そして、社会の側が自然を開発するニーズについて、より厳しい目が向けられているのです。
 年間300万人の児童が栄養失調で亡くなっている時代に、世界の食糧援助をはるかに上回る食べ物を捨て、世界中のどこの国より命を粗末にしている最悪の飽食大国が、永田町の食通族議員たちを満足させるべく「刺身にすると美味いミンククジラ肉を安定的に供給するため」(by本川水産庁長官)、多額の税金を投じて繰り広げる、地球の裏側の南半球に暮らす人々が愛してやまない自然への、欺瞞と独善に満ちた不当な介入。
 これは南極のクジラたちに対する、ホタルやメダカにも劣る差別的待遇以外の何物でもありません。


 ここまでJARPAU最後のレビューレポートの2章分をざっとながめてきましたが、残りのパートもツッコミどころが満載です。
 とくに野生動物フリーク、生態学に興味のある方なら、これを読んで日本の鯨類学がそこまでお粗末だったということに開いた口がふさがらないはず。
 キーワードはシャチ
 トホホな実態の検証、続きは来月中に・・

(集団遺伝学関係参考資料)
−集団遺伝学講座|霊長類フォーラム
http://www.primate.or.jp/PF/yasuda/index.html
−適応進化遺伝学|東京大学大学院新領域創成科学研究科
http://www.jinrui.ib.k.u-tokyo.ac.jp/kawamura/tekioushinka2013.pdf
−Genetic differentiation between individuals|Journal of Evolutionary Biology #13
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1046/j.1420-9101.2000.00137.x/abstract
−北海道東部に生息するタンチョウの集団遺伝構造解析|日本生態学会第61回全国大会
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/61/B1-08.html

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2014年05月16日

IWC決議違反の調査捕鯨は国連決議違反の北朝鮮のミサイルと同じ! 国際法秩序を踏みにじる日本の密漁捕鯨は4カ国包囲網で阻止を!!

■「2014年度第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(沖合調査)」の実施について|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/enyou/140516.html
■調査捕鯨船2隻 北西太平洋へ出港 (NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140516/k10014505691000.html
■北西太平洋で7月末まで (共同)
http://www.47news.jp/movie/general_national/post_11034/

 本日、JARPNU(北西太平洋鯨類捕獲調査)の沖合調査に従事する船団が下関を出港とのニュースが。
 南極の海で行われてきた同規模の調査捕鯨に対し、ICJ(国際司法裁判所)がきっぱりと違法認定を下してから、沿岸調査に続く二度目の強行となります。
 国会決議直後の先月18日に、林農相の談話とともに公表された実施計画より、ニタリクジラの捕獲数が5頭増えて25頭に。
 「精査のうえ」、数字をいじったということのようですね。。一体何を精査したの? 鯨研の出納帳? 冷凍倉庫の帳簿?


 やっぱり日本はよその国とは違う。
 本当に国際法を尊重し、信義と礼節を重んじる、信頼に値する国だ。
 どっかの国や、どっかの国や、どっかの国とは違って──
 そのように世界中から絶賛されるまたとない機会を、日本は自らふいにしてしまいました。


 調査捕鯨は密漁です。
 国連決議に違反する北朝鮮のミサイル発射や核実験と同じ。


 確かに、かつて何度も核実験を行い、実際に兵器としても使用しながら、現在も大量の核兵器を保有している国との扱いの差を指摘し、差別≠セと訴える北朝鮮の主張には一理あるでしょう。
 だからといって、彼らが許される道理はありません。
 たとえ落下地点をIMOにきちんと報告して、人工衛星≠フフリをしたとしても。

 同じことです。

 かつて南極海での乱獲に関わってきた捕鯨国に対し、言いたいこともあるでしょう。
 もっとも、上の例に倣うなら、日本自身も核大国ならぬ有数の捕鯨大国として、歴史上の乱獲と資源枯渇に重大な責任を負っている点で、北朝鮮のほうがずっとマシといえるでしょうが・・。

 せっかく最も権威ある国連の司法機関が、国際社会が、日本の顔を立てて、南極海での泥沼プロレスに代わり、由緒正しい国際法廷のリングを用意し、潔く身を引けるように計らってくれたのに。紳士的に正々堂々と戦った末に破れ、拍手とともに惜しまれつつ退場できるように、花道≠用意してくれたというのに。
 沿岸で粛々と、伝統から外れることのない慎ましやかな捕鯨を行うことに、理解を得られる可能性もまだ残されていたというのに。
 日本という国は、南極・公海で、自らの力≠誇示したいなどという、あまりにもくだらない沽券にこだわったあまり、何もかも台無しにしてしまいました。
 合法な調査捕鯨を装い、姑息な脱法行為を長年にわたって続け、世界と自国民の目を欺いてきたことに対し、ついに一言の謝罪もないまま。

 本川水産庁長官曰く、「お刺身なんかにしたときに非常に香りとか味がいいということで(ニタリやイワシやツチクジラより)重宝されている」ミンククジラを、沿岸事業者に枠を譲って少しの間我慢すれば、また「安定的に供給」することができると、大本営は今なお思っているわけです。
 日本はもはや、北朝鮮、あるいは他の国々に対し、《法の正義》を掲げる資格を完全に失ってしまいました。

 違法判決直後に拙速に開始を決めてしまったために、沿岸事業者に委託されているJARPNU沿岸調査も、JARPAUに関しては認定されなかった新たな国際法(ICRW附表第30項)違反に問われる疑いが濃厚です。威勢よく外国・白人たちを叩き、実態を何も問わずに日本の文化を声高に叫ぶパフォーマンスをすればウケるとしか考えていない、ボンクラ国会議員たちのせいで。
 確かに、船を出せないとなれば不安を覚えるのは業者は当然でしょう。筆者としては、漁に携わる術を完全に奪われた福島の沿岸漁業者以上に同情する気はありませんけど。
 しかしその責任はすべて国にあります。
 これまで、南極の自然を貪り尽くそうとした大手捕鯨会社のゾンビに他ならない調査捕鯨事業者を優先するあまり、沿岸捕鯨に対して国際社会から差し伸べられた手を突っぱね続け、ツケを押し付けてきたことを土下座したうえで、「公海調査捕鯨を即時全廃することで国際社会に情状酌量を求め、沿岸捕鯨再開の道を探ります」と言えず、合理的な解決案を提示しないどころか、沿岸捕鯨事業者を捕鯨サークルの犯した罪に巻き込み、相対的に違法の度合い低かったはずの沿岸調査捕鯨に新たな違法性を付け加えてしまったのです。
 一体、これほどの愚行が許されていいのでしょうか?

 日本人として、これほど堪えがたいことはありません。

 昨日、北西太平洋を取り囲むIWC加盟国(水産ODAと引き換えに日本に票を売った国を除く)である4カ国に対し、オーストラリア・ニュージーランドがJARPAUを訴えたように、JARPNUをICJに共同提訴するよう求める要請書を、国の愚行を憂える日本の団体・市民の有志のみなさんとともに提出しました。賛同いただいた皆さん、多謝m(_ _)m
 日英の要請文と補足は拙ホームページのほうで公表しましたが、当ブログ上にも掲載しておきます。


 今からでも遅くはありません。直ちに船を引き返させてください。
 林農相は、「ミンクは美味い」発言を国際裁判記録として後世に残され、国中に恥をかかせた本川長官を直ちに更迭し、自らも辞任すべきです。
 国際法を冒涜するならず者国家の烙印を押されたくないなら。
 このままでは恥の上塗りになりますよ。

 
http://www.kkneko.com/jarpn2.htm
http://www.kkneko.com/english/jarpn2e.htm

 
2014年5月15日

駐日大韓民国大使館
 駐日中華人民共和国大使館
 駐日ロシア連邦大使館
 駐日アメリカ合衆国大使館 御中

 写し:
 駐日オーストラリア大使館
 駐日ニュージーランド大使館
 駐日欧州連合代表部
 日本外国特派員協会 御中


絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)、国際捕鯨取締条約(ICRW)および国際捕鯨委員会(IWC)決議に違反する日本の北西太平洋調査捕鯨(JARPN II)に対し、4カ国による国際司法裁判所(ICJ)への共同提訴を求める要請書


  今年3月31日、オーストラリアおよびニュージーランドと日本との間で争われた調査捕鯨をめぐる国際裁判において、ICJは日本の南極海調査捕鯨(JARPA II)がICRWおよび各種のIWC決議違反に該当すると認定し、今後調査捕鯨の許可証を発給するにあたり、今回の判決を十分考慮するよう求めました。
  日本政府はICJの判決に従うとしながら、今年度もJARPN IIを強行する決定を下しました。しかし、JARPN IIにはJARPA IIと同様、ICJで認定された多くの違法性が含まれていることは明らかです。
  日本政府は国際法規を遵守する姿勢を打ち出していますが、国会議員らは「ICJの判決は政治的だ」と非難するばかりで、国際法を尊重しなかったことへの反省の弁は聞こえてきません。また、マスコミは敗訴の決め手となった水産庁長官の国会答弁等には一切触れず、調査捕鯨の違法性を文化の問題へとすりかえる報道を繰り返しています。
  日本政府が自らの過ちを認めず、国際法に背く行為を続けようとしていることは、日本国民として耐えがたいことです。遺憾ながら、日本の姿勢を改めさせるためには、南半球諸国を代表してオーストラリアとニュージーランドが国連の司法機関に判断を仰いだのと同様に、北半球の国々によって日本の違法性を再度追及してもらうほかありません。
  大韓民国、中華人民共和国、ロシア連邦、アメリカ合衆国は、北西太平洋に近接し、日本の水産ODAによる勧奨活動の影響を受けていないIWC加盟国として、科学の名を借りた違法な公海資源の占有を訴える資格があります。
  とりわけ、韓国は一昨年のIWC年次会議でICRW第8条に基づく調査捕鯨の計画を発表しながら、内外の市民の批判を受けてこれを撤回しました。
  国際法をきちんと遵守する同国とは対照的に、違法な調査捕鯨をなおも続行する国の存在を認めることは、国際社会の公平性・公正性の観点からも許されるべきではありません。
  よって、私たちは4カ国が共同で日本のJARPN IIをICJに提訴するよう、強く要請するものです。

以上


カメクジラネコ

賛同団体 (五十音順)

茨城県民ネットワーク
全日本動物愛護連合
チロとサクラのクリニック
動物愛護党
動物たちとともに W.A.A
フリッパーズジャパン
ヘルプアニマルズ



参考リンク:
−ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html
−北は人工衛星という名のミサイル、日本は調査捕鯨という名の商業捕鯨
http://kkneko.sblo.jp/article/60752017.html
−調査捕鯨国際裁判敗訴は全て安倍と自民党捕鯨議連の責任
http://togetter.com/li/650580
−捕鯨ニッポンが最悪のドツボにはまる可能性
http://kkneko.sblo.jp/article/93046598.html
−調査捕鯨継続なら、本川水産庁長官は更迭、林農相も辞任すべし!
http://kkneko.sblo.jp/article/93365382.html

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2014年04月18日

調査捕鯨継続なら、本川水産庁長官は更迭、林農相も辞任すべし!

◇調査捕鯨を継続するなら、林農相は本川水産庁長官を更迭し、自らも辞任せよ!──多額の税金をどぶに捨て、自ら敗訴を招いた大失策の責任を取ろうとしない厚顔無恥な捕鯨官僚&族議員


■第180回国会 決算行政監視委員会行政監視に関する小委員会 第3号(平成24年10月23日(火曜日))
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025318020121023003.htm


○本川政府参考人
ミンクというのは、お刺身なんかにしたときに非常に香りとか味がいいということで、重宝されているものであります。 (中略)
したがって、ミンククジラを安定的に供給していくためにはやはり南氷洋での調査捕鯨が必要だった、そういうことをこれまで申し上げてきたわけでございます。
(引用、強調筆者)


 はあ・・読む度にため息が漏れますね。。
 上掲引用で略した部分では、売れ行きが悪くて在庫がかさんでいる北西太平洋産のイワシクジラやニタリクジラ(IKANニュース51号参照)、地元では干し肉の形で消費しており都心の料亭で刺身にするには向かないツチクジラについて説明されています。でもって、それじゃ永田町のグルメ議員らの舌を満足させられないから、「美味いミンクを食い続けるためにも、南極まで行って捕ってこなきゃ駄目だ!」という本音につながる形。むしろ、質問に立った議員たちに対し、「やっぱり南極でやるのが大事なんですよ、だって美味いミンク食べたいでしょ?」と媚を売る発言にも聞こえますね。食道楽垂涎の的、ナガスの尾の身にはさすがに触れてないけど・・。
 無論、本川長官の責任は免れようがありません。しかし、佐々木副大臣、小野寺氏をはじめ委員会に出席した十名余りの国会議員らも、「調査捕鯨の合法性に疑義をもたらしかねない重大な発言だ」と撤回・訂正を求めることをしなかった以上、当然彼らも同罪です。

■孤立無援の日本の「捕鯨」、どうすれば伝統漁業を残していけるのか|JBPRESS
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40449

私は水産庁の「鯨類捕獲調査に関する検討委員会」の委員として、捕鯨についての政策論議に関わったことがあるが、豪州の日本提訴について、水産行政に関わってきた人たちの見方は「盗人たけだけしい」といった認識で、日本が負けることはあり得ないという楽観論がほとんどだった。(引用、強調筆者)

 論者は朝日新聞石巻支局長を務めた「さかな記者」高成田亨氏。
 「水産行政に関わってきた人たち」にとってみれば、南極海、南半球、というより世界のクジラはぜーんぶ俺様のモノ。だから、彼らの目には、自分たちのクジラをオーストラリア人が横取りしようとしているかに見え、平気で盗人呼ばわりしているわけです。
 なんというジャイアンな性格!
 こういう感覚の人たちが長年にわたって日本の水産行政を牛耳ってきたとすれば、ウナギ、マグロが瀬戸際に追いやられるのも当然の成り行きでしょう。

■調査捕鯨のオウンゴール 建前を貫く覚悟が大切 (4/13,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO69790750S4A410C1TY7000/?dg=1

 日本政府も科学的調査を目的に掲げて調査捕鯨を実施してきた。だが本川長官の発言では別の目的がはっきりしている。本音と建前に当てはめるなら、科学的調査は建前で、鯨肉の安定供給が本音という構図だ。
 この使い分け自体が見苦しいのは言うまでもない。が、それに劣らず問題なのは、日本の捕鯨政策の責任者が公の場で、建前をないがしろにする本音を開陳したことだろう。
(引用、強調筆者)

 浅はかさと傲慢さによって自ら墓穴を掘った完敗に近い敗訴。その決め手となった、水産庁トップの致命的な国会答弁は、国際司法裁判所(ICJ)の判決文の中にしっかりと記されました。日本は国際裁判史上前例を見ない恥ずかしい当事国として、永久にその名を歴史に刻みつけられてしまったのです(判決文#197,p58)。

■JUDGMENT|WHALING IN THE ANTARCTIC (AUSTRALIA v. JAPAN: NEW ZEALAND INTERVENING)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18162.pdf

 一部の有識者、そして筆者をはじめICJの口頭弁論をウォッチした市民は、科学性の粗をパフォーマンスと論点外しで必死にごまかそうとする日本側の戦略を見て、「このままじゃ旗色がかなり悪いぞ」と昨年の段階から警告していました。その筆者らの予想さえ上回るほどの完敗の背景には、自らの非を認め、襟を正すという、人としては当たり前の能力が根本的に欠如した捕鯨サークルの恐るべき体質があったわけです。

■日本の調査捕鯨が国際司法裁判所で弾劾される日|天木直人氏 ('13/6/27,BLOGOS)
http://blogos.com/article/65118/
■ICJ調査捕鯨訴訟で日本は負ける|拙ブログ
http://kkneko.sblo.jp/article/70305216.html
http://www.kkneko.com/english/icj.htm
■調査捕鯨国際裁判敗訴は全て安倍と自民党捕鯨議連の責任|Togetter
http://togetter.com/li/650580

 この間政府関係者は、少なくともざっと一通り判決文に目を通しているはずで、この致命的な発言がしっかり入れられてしまったことも当然知っているはずです。
 ところが、敗訴の責任については、安倍首相が鶴岡代表を厳しく叱責するパフォーマンスのみで、すっかりうやむやにされてしまった感があります。知名度の高い国際弁護士数名に何千万円ものギャラを支払ったというのに。
 マスコミも、上掲のオンライン論説1本以外、本川長官と水産庁の重大な責任に触れた報道がひとつも見当たりません。
 TVは調査捕鯨が商業捕鯨に他ならなかったという事実を追認するように、鯨肉料理屋や客の怒りの声を流し続け、「このままでは伝統の食文化が・・」と危機感を煽るばかり。従来と何も変わらない捕鯨擁護論ばかりが伝えられ、ICJの判決の中身を詳細かつ冷静に分析する報道は皆無に等しい状態です。
 外務省の三段構えの戦術は、筆者ら捕鯨ウォッチャーの目には見苦しいものに映りました。それでも、公平性・公正性を世界で最も重んじるICJ判事たちの目を、本川長官の「ミンクは旨い!」発言からいかにして逸らすかという無理難題に対し、彼らはそれなりに善処したといえましょう。「自分たちは正しいのだから、負けるわけがない」と高を括り、建前と本音の使い分けさえできない自らの不始末を放置しながら、すべての戦略を外務省に丸投げした捕鯨サークル関係者や族議員には、他省の尻拭いに負われ、TPP交渉と掛け持ちで忙殺された外務官僚の苦労など理解できるはずもないでしょうが。

 ただ……一連の経緯からは、外務省がひたすら損な役回りだったかに見えますが、必ずしもそうとばかりは言えないかもしれません。
 レベルの低すぎる捕鯨官僚が負うべき責任を、外務省は自らの面目を思いっきり潰される形でかぶってやったわけです。当分の間、農水省/水産庁は、外務省に対して頭が上がらないでしょう。
 何しろ、水産庁長官の「ミンクは旨い」発言のせいで、「国際裁判初戦完敗」という永久に消えない屈辱を外務省に与え、看板に泥を塗ったも同然なのですから。
 農水省/水産庁は、外務省にあまりにも大きな借りを作ってしまいました。「クジラ」で。
 日豪EPA交渉で、直前にクジラで負けた相手でもあるAUSから、日本は対米交渉に有利なカードをも渡してもらいました。各所で指摘されるとおり、こちらのEPAについても、畜産農家やサトウキビ農家など、日本の農業者にとっては苦渋の選択を強いられる内容がいくつもあったようですが。
 ここのところ、靖国参拝や河野談話見直し等で米国の失望を買いまくり、今度のオバマ米大統領来日に際しても「国賓待遇なんて要らないから」と冷たい反応を返されるほど、ガタガタになった日米関係を修復することこそ、外務省にとって何よりも最優先すべき課題
 オバマ氏に対して、日本は相応の貢物を差し出す必要に迫られています。
 いま日本の手元にあって、大統領来訪中に差し出すことが可能なものは、2つしかありません。
 TPP日米交渉の大幅な進展、もしくは公海調査捕鯨からの撤退。
 TPPで米国の要求を丸呑みするならば、日本の一次産業従事者は、稲作農家、畜産農家以外も含め、一握りの起業家向きの人を除き、窮地に追いやられることになるでしょう。
 永田町では、捕鯨サークル主催の鯨肉パーティーを兼ねた族議員の決起集会が開かれ、衆参両院で調査捕鯨継続を求める決議を提出されました。TPPに関しても同様に5品目の聖域確保などを求める決議が出されましたが、威勢のよさでは「クジラ」が主食の「米」をも上回った感がありますね・・

 もうかる漁業補助金の超優遇をはじめ、捕鯨サークル最優先の陰で常に割を食わされ続けてきた沿岸漁業者の方々を含む、日本全国の一次産業従事者の皆さん。
 農水省/水産庁は、「クジラ」で取り返しのつかない愚策を犯したうえに、その責任をすべて外務省に押し付けてしまいました。
 外務省は「じゃあ、そういうことでかまいませんね?」と、米国にあなた方を売り渡すでしょう。彼らにとっては、それが省益にも重なる最大の国益にほかならないからです。
 いま、農水省/水産庁は、「クジラというご神体≠ウえ死守できれば、後はどうなろうと別にかまわない」という、驚くべき姿勢を示しつつあります。
 本川水産庁長官による「ミンクは旨い」発言が招いた国際裁判完敗の恥辱に対し、見て見ぬフリをする形で。そのあまりにも重大すぎる責任を一切負おうとしないことで。
 世界最高の国際司法機関から国際条約違反と断じられた擬装商業捕鯨である調査捕鯨を延命させんがために。
 当たり前のことですが、外務省は農業にしろ捕鯨産業にしろ、潰してやろうなどと考えているわけではありません。国際外交の場で日本にとって国益にかなう、最も有利な選択は、日米同盟を堅固に保つことだ──というのが、彼らの揺るぎない信条です。彼らにとって、農業あるいは捕鯨産業は、日米同盟の維持によって日本が生き延びるためなら、場合によっては差し出してかまわないカード≠ニいうこと。
 先の記事で最悪のドツボにはまる可能性について指摘したとおり、外務省サイドも調査捕鯨訴訟がまさかここまで完敗に至るとは考えていなかったと思われます。ただ、TPP交渉の進展が捗らない中、オバマ訪日とまさにぴったりのタイミングで、農水省を完全に抑えこめたことで、「棚からぼた餅ならぬクジラ」と、一部の外務関係者はほくそ笑んでいるのではないでしょうか?
 もし、族議員らの決議を慮って、日本政府が北西太平洋での調査捕鯨を強行するならば、米国への手土産はTPP/農業で確定です。日本の一次産業の未来も。美食の追求のために南極の野生動物を屠る行為とは対照的に、地域の風土と文化に密接に結び付き、環境保全にも一定の役割を果たしていたはずのこの国の農業は、米国のそれに似たビジネスの形でしか生き残れません。それはもはや、かけがえのない日本の伝統文化である農業とは相容れないものです。私たち日本人の魂のよりどころだった、日本の原風景である美しい農村も、失われていくばかりでしょう。

 本当にそれでいいのですか!?


 日米関係を大きく修復させ、なおかつ、日本が被る損失を圧倒的に小さくできるカードはあるのですよ。筆者ら少なからぬ日本国民にとっては、そもそもお荷物でしかなくメリットのほうがはるかに大きいものですが。
 確かに、識者が指摘したとおり、ICJから日本の調査捕鯨が違法認定された時点で、「南極海捕鯨からの撤退」というカードは失われてしまいました。裁判所に言われたことをただやるだけ、ではカードになりようがありません。
 しかし、ほんの少し上乗せするだけで、不人気の民主党オバマ政権を大いに喜ばせ、米国市民の日本に対する評価・好感度を一気に上昇させるのに十分なサプライズになるはずですよ。
 安倍首相が、オバマ大統領の隣で、世界に向かって「公海調査捕鯨からの完全撤退」を宣言するならば、同氏と日本の株は飛躍的に上昇することは間違いありません。
 お隣のいくつかの国には、面白くないと思う人もいるでしょう。けど、中国・韓国の市民だって、戦前の帝国主義を彷彿とさせる強硬な捕鯨政策を日本が改めるならば、見直す方も決して少なくはないはずです。


 日本の一次産業従事者の皆さん。
 独善的な捕鯨サークルの業界益のために、あなた方が犠牲になる必要はありません。なるべきではありません。
 もし、日本政府が公海調査捕鯨の続行を表明し、代わりに農業そのものを米国に差し出すならば、あなた方は一丸となって、外務省に頭が上がらなくなる原因を作った主犯である本川水産庁長官の更迭と、林農相の辞任を農水省に対して求めるべきです。
 また、海洋環境・野生動物に関心のある内外の市民は、ICJに対し米中韓三カ国共同で日本の北西太平洋調査捕鯨を提訴するよう働きかけるアクションが必要になってくるでしょう。

参考リンク:
■「鯨肉が売れない!」〜鯨研自らが公表した、入札結果の惨状〜|IKA-net
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/whaling/250-sluggish-sales-of-whale-meat
■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html
■捕鯨ニッポンが最悪のドツボにはまる可能性
http://kkneko.sblo.jp/article/93046598.html

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2014年04月16日

今年の小笠原/公海調査捕鯨からの撤退を

◇今年の小笠原

 先週同地を訪れた人からいただきました。
 ギスギスした話ばっかりしてきたので、たまには目の保養に、微笑ましいザトウ親子の写真をお楽しみください(^^;;
 お母さんがずいぶんのんびり屋さんだったみたいで、おチビさんがはしゃぎまわる姿を存分に堪能できたそうです。ウォッチング船の船長さんも、こんなのは初めてだとのこと。
 最後の陸に上がったクジラは、小笠原WW協会にある海洋堂のフィギュア(非売品)。。

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 小笠原は日本、そして世界でもモラルを守った理想に近いホエール・ウォッチングが根付いている場所。時間をかけて、クジラたちもヒトが危害を加えない存在だと学習してくれたから、こうして距離を縮めることができたわけです。
 近すぎず、さりとて遠すぎず、お互いの存在を意識しながら、過度に干渉しない。野生動物とヒトとの最も望ましい関係。
 他の生きものに対して生殺与奪の権利とその能力を持つ万物の霊長≠ニして、威張り散らしながら自然の豊かさを奪うのではなく、他の生きものたちとともに自然を分かち合っているのだという事実をしっかり認識し、あくまで謙虚に自然に向き合うこと。

 どうか、小笠原のザトウクジラたちと同じように、はるか南の氷の海で命を謳歌するクジラたちにも平和が訪れますように。

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 この15日、鯨研・共同船舶・日本捕鯨協会という3つの頭を持つキングギドラじみた組織が、威勢よく炎を吐き出す怪物の巣窟・永田町で、各党の国会議員ら関係者を招き、大々的な鯨肉パーティーを兼ねた決起集会を開いたとのこと。

 議員の皆さん。
 出水や釧路など、全国各地の水辺で、大勢の日本人の目を楽しませてくれるツルやハクチョウたちを、この国は(それなりに)手厚く保護しています。もし、地域の歴史・文化と切っても切れない関係を持つ、まさにかけがえのない日本の文化にほかならない野鳥たちが、日本の200海里を出た途端、赤道を越えてやってきた南半球の国の船に、年間何百羽も殺され続けたとしたら、日本の愛鳥家たちはどう思うでしょう?
 
「季節のたびに訪れ、目を楽しませてくれる鳥たちを、あなたたちがたくさん殺していることで、私たち日本人はとても悲しい気持ちでいっぱいです。どうかやめていただけませんか? あなた方が自分たちの国の野鳥を殺すことに対しては、胸が痛むこととはいえ、文句を言うつもりはありません。けれど、せめて、私たちの国に渡ってくる鳥たちだけは、どうか見逃してやってくれませんか?」
 そうお願いしても、件の南半球の国は「Xマスの焼き鳥は長い歴史を持つ俺たちの神聖な伝統文化だ! 貴様たちの感情論など知ったことか!」と罵るばかりで、耳を一切貸してくれなかったとしたら、あなた方はどんな気持ちになりますか?

 日本がこれまで、南半球の人たちの文化や価値観を踏みにじりながら、南極海のクジラに対してやってきたことは、まさにそういうことです。

 あなた方の独善的な振る舞いは、私たち日本国民の目から見て、あまりにも目に余るものです。
 引き際を見極め、潔く身を引くことは、政治家として決して恥ずかしいことではありません。
 今回の判決は、この国が自制心を取り戻し、国際社会との正常な関係を取り戻すために、国際司法裁判所が差し出してくれた救い≠フ手とさえいえるでしょう。
 これ以上、飽食の国の身勝手な価値観を、南極の自然と野生動物、彼らに関心を持つ世界中のたくさんの人たちに対して、押し付けるのはやめてください。
 いまこそ公海調査捕鯨からの撤退という英断を!!
posted by カメクジラネコ at 02:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系