2014年07月14日

捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!・3/JARPAUレビューに見る調査捕鯨の非科学性・2

◇捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!・3

■巨大クジラ、漁業資源の増殖に貢献? (07/11,ナショジオ)

「我々が新たに検証した複数の研究では、クジラのような大型捕食動物が存在するほうが、生態系における魚類の個体数が多くなることが明らかになっている」(引用)

 クジラたちは、高緯度における生産を貧栄養の深海や低緯度海域に分配し、海の自然の多様性を高めるきわめて重要な役割を果たしていることが明らかに。もっとも、定性的には以前から指摘されてきたことであり、とくに意外性はありません。要は、クジラも「他の野生生物と同じなんだ」というだけのこと。自然について無知な日本の反反捕鯨論者が脳内妄想でこしらえた、海の自然を害するエイリアンのごとき存在などではないという、当たり前のことが再確認されただけ。
 国際司法裁判所からもそのずさんさを指摘された日本・鯨研の調査捕鯨と異なり、「質が高く興味深い研究」とレビューした他の研究者も絶賛。まあ、「刺身にすると美味いミンククジラ肉の安定供給のため」に行われた名ばかりのケンキュウとじゃ、比較にもなりませんわな。。
 以下の拙過去記事と関連リンクもあわせてぜひご参照を。

−捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!
−捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!・2
−捕鯨は生態系破壊!!
−調査捕鯨では絶対わからない種間関係の重要性

◇JARPAUレビューに見る調査捕鯨の非科学性・2

■SC/65b/Rep02 Report of the Expert Workshop to Review the Japanese JARPA II Special Permit Research Programme
http://iwc.int/sc65bdocs
http://events.iwc.int//index.php/scientific/SC65B/paper/view/686/673

 前回の続きから。
 生息数推定に関する6章では、クロミンククジラと他の鯨種、あるいは捕鯨操業海域≠ノおける生態の情報量のアンバランスが指摘されています。従前から筆者らが口酸っぱく追及してきたことですが・・。以下はJARPATのレビュー時にHPで使ったチャート。Uになってフクサンブツの生産量が倍増、生態系アプローチというお題目が加わったものの、状況は変わってないわけです。
 一言で言えば、おっそろしく偏っているのです。
jarpa.png
 かくもいびつに変更している理由はひとつ──そう、永田町のグルメ族議員に「刺身にすると美味いミンククジラ肉を安定供給するため」。ICJの判決文中にもしっかり書き込まれてしまったとおり・・。
 そのことを端的に象徴しているのが、レビューの23ページに書かれた以下の記述。

The Panel also recommends the collection of data on the ecotype of killer whales to try to allow estimates of abundance to be developed for each. This information is of importance to ecosystem modelling given their different feeding habits and in particular to evaluate the consequences of predation on minke whales.(引用)

 自然死亡のパラメータ推定にも直結する重要な捕食者であることは誰の目にも明らかなことですが、生態系アプローチと言いつつ、両種を含む種間関係の研究には、《耳垢コレクション》と違い雀の涙ほどの研究リソースも割かれてはきませんでした。
 今日ではシャチは食性や分布から少なくとも3つのエコタイプに分かれることが確認されていますが、シャチの個体数と分布動態とあわせ、クロミンククジラの繁殖海域を確定し、海域と年齢によるシャチの捕食傾向を突き止める息の長ーい研究が必要とされるでしょう。日本は単純な4鯨種モデルをぶち上げましたが、その単純なモデルでさえ、パラメータとしてシャチの捕食を考慮するか否かでシミュレーションの結果は天と地ほども変わってくるはず。RMPに生態系モデルを適用するなら、絶対に外していいはずがありません。
 まあ、まっとうな動物学者にしてみれば、挑戦のし甲斐のあるテーマに違いありませんが、副産物の売り込み営業を喜び勇んで兼任している鯨研の連中としては、忍耐力と限界突破の発想と多くの時間を要するこの手の非致死的研究には、きっと食指が動かないのでしょうけれど・・・

 最後のJARPAUレビュー、ツッコミどころはまだまだ残っているのですが、当ブログではこの辺にとどめておきます。興味のある方は直接IWC-SCのレポートをぜひチェックしてみてください。
 調査捕鯨に関してひとつはっきり言えることは、海洋環境保全や沿岸の漁業資源の管理のために必要な、はるかに寄与度の高い数々の研究を差し置いて、長期にわたって巨額の研究費が国によってあてがわれながら、その内容は驚くほどずさんで、疑問符のつかない満足なアウトプットひとつ出せない代物だということです。なんとなれば、《調査捕鯨そのものの正当化》、《永田町のグルメ議員たちに刺身にすると美味いミンククジラ肉を安定供給すること》こそが、調査捕鯨というカガクの目的であり、成果に他ならなかったのです。

参考リンク:
−調査捕鯨の科学性を解体する|Togetter
−JARPAレビュー報告徹底検証
−持続的利用原理主義さえデタラメだった
−調査捕鯨の科学的理由を"後から"探し続ける鯨研 
−ペンギンバイオロギングと調査捕鯨


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posted by カメクジラネコ at 17:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系

2014年06月30日

JARPAUレビューに見る調査捕鯨の非科学性

◇JARPAUレビューに見る調査捕鯨の非科学性──IWC科学委で長年ツッコまれ続け、ICJにダメ押しくらったトホホな実態

 国際司法裁判所(ICJ)で日本の南極海調査捕鯨を国際条約違反と認定した判決が出た後、サイエンス4月号で同判決の影響等を論じた1ページの特集が組まれました。
 理研小保方氏のコピペ論文と同様、鯨研発論文の掲載を拒んだ権威ある国際科学誌ですが、法の最高権威たる国連の司法機関から調査捕鯨の科学性が酷評されたことについて、科学者の論評をまとめています。


■[ENVIRONMENTAL POLICY] Court Slams Japan's Scientific Whaling
http://www.sciencemagazinedigital.org/sciencemagazine/20140404C?pg=22#pg22


「ICJの判決は、我々研究者の多くがIWCで唱えてきた主張を踏まえたものだ」(〜オレゴン州立大スコット・ベイカー氏)
「科学研究にとってと同じく国際法にとっても良き日だ」「漁業機関における科学的管理手法の強化の助けにもなる」(〜ハワイ大の法学者アリソン・ライザー氏)
「『王様は裸だ』とIWC科学委では何年も言われてきたことだ」(〜アラスカ水産研究センターフィリップ・クラップマン氏)

 まあ、さんざんな言われようですねぇ・・。日本側証人として法廷に立ったノルウェー・オスロ大ワロー氏の一連のコメント「less than 10」「worthless」等)も紹介。法的観点からも、科学的観点からも、こき下ろされて当然の代物だったわけです。日本の調査捕鯨は。
 華々しい発表会見から一転、袋叩きに近い状況にあるアイドル的リケジョと違い、残念ながら調査捕鯨については、未だに科学性の再検証を求める声が封殺されている状況。それも、「食文化」のかけ声にかき消される形で
 これはもはや、科学に対する侮辱というほかないでしょう。

 調査捕鯨の非科学性については当ブログ・拙ホームページ・ツイッターにて再三取り上げてきたところですが、ここで改めて日本の調査捕鯨がどれほどダメダメか、ICJで中止を申し渡される直前、今年2月に東京の日本鯨類研究所(鯨研)で開かれた第二期南極海鯨類捕獲調査(JARPAU)のレビュー資料を中心に、じっくりチェックしてみることにしましょう。


■SC/65b/Rep02 Report of the Expert Workshop to Review the Japanese JARPA II Special Permit Research Programme
http://iwc.int/sc65bdocs
http://events.iwc.int//index.php/scientific/SC65B/paper/view/686/673


 上掲は今年5月にスロベニアで開催された国際捕鯨委員会科学委員会(IWC-SC)の会合に向け用意されたたたき台の資料。ワークショップが開かれたのは今年2月、東京。
 ICJの判決によって実質的に終わりを告げたJARPAUですが、最後の最後までこき下ろされ続けてきたことがよぉくわかります。
 一点、IWC-SCの調査捕鯨関連の報告書に頻出(しかもしばしばゴシックで印字されたり)する語句が「welcome」
 これ、修辞ですよ。日本の顔を立てている、立てざるを得ないということ。
 まず、日本側はSCのレビュー会合でも総会でも、最も多くのメンバーを送り込んでいる多数派。例えばこの報告書も、評価するパネルメンバー9名に対し、日本側の提議者は22名。そして何より、日本は現在IWCの加盟分担金を多く支払っている大口スポンサーの一国なのです(当然の義務とはいえ)。何せ、日本が水産ODAで買収した持続的利用グループの国々は、分担金を払い続ける持続性≠ノ欠けるものですから・・。そういう財政事情もあり、定期的な総会も年1回から2年に1回に変更されたりしているわけです。その辺はIWCの限界、日本の独善的な横暴に対して実効性のある方策をなかなか講じることができない事情のひとつともいえるわけですが。
 そういう具合に日本の顔を一所懸命立てたうえで、なおそのお粗末ぶりをケチョンケチョンに批判せざるを得ない──そのことが一体何を意味するか、皆さんにもお察しいただけるでしょうか。
 以下、レビュアーが指摘している問題点の記述を抜粋しながら、具体的に解説していきましょう。

レビュー結果@鯨類の生息環境のモニタリング(p11-12)

 この項目でパネルが改善≠求めたのは以下の5点。
1.海洋学的データを完全に収集すべく、機器の較正作業をきちんと行うこと。
2.内外のデータベースで報告されている海氷等関連する海洋学的データの有用性を精査し、JARPAT/Uのデータに組み込むこと(NASAのサイトへのリンクも教えてあげるよ!)
3.収集した海洋学的データを他の国際研究プログラムが活用できるよう、提供を検討すること。
4.TDR(音響測深器)とEPCS(電子粒子係数・粒径測定器)のデータは重要だからきちんと分析すること。
5.鯨類の目視・生物学的データと照合させる形で海洋学その他環境データの分析を進めること。

However, to investigate finer spatial and temporal characteristics, which is ideal when investigating the relationships between oceanographic data and species distributions, it is important to collect in situ water samples to calibrate and when necessary correct the instrument readings; as a minimum instruments should be calibrated at the factory once a year.

 1番目の指摘、せっかく諸々のデータを収集したのはいいけど、「計測器は少なくとも年に一度は調整しないとダメ」と言われてます。
 そういうのって基本じゃないんですか? こういうところも某リケジョみたいだよね。若すぎる一個人研究者じゃなく、日本の鯨類学を代表する研究機関のハズなのに。
 2、3、5番目も、日本の鯨類学が専門領域(?)のタコツボに深くはまって安住しすぎ、関連する海洋学の研究情報の収集すら怠ってきたことを証明しています。「日本国内で提供されているデータにすらアクセスしてないじゃん」とツッコまれてるわけです。それらの外部のデータとの整合性を検証する作業は必須ですし、中には重複している無駄な作業もあるかもしれません。これも科学者であれば最初から念頭にあっていいはず。
 ところで、この辺のフレーズ、どこかで聞き覚えがありませんか? ここでちょっと、公海調査捕鯨の再開・継続の意思を表明した林農相の談話(4/18)を振り返ってみましょう。

国際捕鯨委員会科学委員会のワークショップでの議論,他の関連する調査との連携等により、国際的に開かれた透明性の高いプロセスを確保します。(引用)

−今後の鯨類捕獲調査の実施方針についての農林水産大臣談話|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/koho/pdf/danwa.pdf


 前々から指摘されていたことを、あたかもICJの判決を受けて心を入れ替えた≠ゥのごとく弁明に使ってしまう林氏の神経が知れません。まあ、この声明も官僚が用意したんでしょうけど・・。

Unfortunately, this was not done for the last two years (2009/10 and 2010/11) when only TDR data were collected.

 4番目、クジラの分布・生息密度等を把握するうえできわめて重要とSCで評価されたデータが、なぜか後の2年間は収集されなかったことへの遺憾が表明されてますね。
 科学的プライオリティが高い情報収集を怠った理由、なぜだと思います?
 まあ、大体想像はつくでしょう。ソナーを使ったらSSCSに居場所がバレちゃう、と──。
 このことが示すのは、日本という国は科学研究のプライオリティ付けをする能力が根本から欠けているということです。
 「刺身にすると美味いミンク鯨肉の安定供給」「SSCSとのプロレス」のことしか頭にない連中が、計画を立案し推進してきたわけです。
 補完にしかならない致死的データ収集を優先する理由は何もありませんでした。米国とオーストラリアにも協力してもらい、極地研主導で海洋データと目視データの収集・分析を進めればよかったのです。そうすれば、鯨類学にとどまらず、南極圏の物理学・生物学研究に携わる世界中の研究機関に高く評価されるだけの科学的データを速やかに提供でき、場合によっては商業捕鯨再開にさえつながったかもしれないのに。

The Panel commends the collection of debris data, both in the environment and in the stomachs of the whales that can provide valuable baseline data. Such information should regularly (the need to do this annually or less frequently should be evaluated) be analysed and presented to the IWC.

 この記述は一見肯定的評価のように見えますが(科学者という哀しい人種は、データが存在すればそれだけで興味を持つものだけど・・)、カッコの中に注目。「毎年行う必要があるかどうか検証すべき」と。同じことはサンプル数についても言えます。
 実際、胃内容物ではなく海面でのデブリの収集はJARPAUの6年間にわずか88例にすぎません(p58,AnnexD)。それもおそらく偶発的に発見しただけでしょう。そもそも海面付近のデブリの密度をつぶさに調べる調査計画になっていないのです。
 デブリや汚染物質のモニタリングは、まず当該環境の汚染状況を測定・把握したうえで、その環境に生息する野生生物、この場合は南極圏の生物全般で調査を行ってこそ、初めて意義があること。南極海がどの程度汚染されているか、南極海生態系の中で汚染の影響に対し最も鋭敏なのはどの種か、死亡率の増加や繁殖への影響が見られるか、それを調べることこそ真っ先に求められるのです。毎年毎年クロミンククジラの胃を開いて中身をあさる前に。さらに言えば、漂流物が相対的にはるかに多く、影響も懸念される低緯度・北半球のウミガメ、海鳥等のモニタリングに対し、より多くの研究リソースが割かれるべきなのです。海洋汚染の状況を測るのに適切とはいえない種を指標動物にしてしまうのは、単に非効率かつ科学研究予算の無駄使いであり、汚染の実態を見過ごす危険すらはらみます。環境科学の見地からは決して許されることではありません。

レビュー結果A系群構造の時空間的変化(p14-19)

However, the Panel noted that Antarctic minke whales and other baleen whale species are more-or-less continuously distributed around the Antarctic continent; in contrast, the JARPA II research area represents just under half of the circumpolar area. Given the stated objective, the lack of information provided for areas outside the programmes’ research area presents some inherent difficulties in fully meeting the objective to elucidate spatial and temporal variations in stock structure, even though the information developed under JARPA II is probably sufficient for the purposes of developing trials to evaluate RMP variants within the area of sampling.

 調査範囲について最初から大きな疑義が表明されています。南極大陸の周り全部にいるのに、日本が調査しているのはその半分でしかないじゃん、と。
 便宜的に区分された6海区のうち、JARPAUがカバーしているのは、かつて日本の捕鯨会社が操業してきた2海区とその両隣の海区の半分ずつのみ。毎年毎年片側では数百頭分の死体から採取した耳垢栓の標本を積み上げながら、大陸をはさんだ反対側では情報が完全に欠落しているのです。科学的に見ればこれほどアンバランスなことはありません。どうせ裏側にいるクジラなんて来やしないと見込みで判断するのは、事実をもとに仮説を検証する科学者の姿勢にもとります。両隣の海区では、さらにその両隣の海区に分布する系群と混交が起きている可能性も当然否定できないからです。RMPの改善に寄与するという取って付けた目的を掲げるなら、それ以上に重要な改善要請に応じるのがスジというものでしょう。

The Panel welcomes the fact that the authors of SC/F14/J27 referenced the IWC guidelines for DNA data quality control (IWC, 2009) as had also been recommended at the JARPN II review (IWC, 2010). However, the Panel recommends that a revised paper be submitted that explains in more detail how far the guidelines were able to be followed (the present paper did note why the proponents had not been able to follow one recommendation regarding sequencing of microsatellite loci).

 4年前のレビューでIWCのDNAデータ品質管理のガイドラインに従ってないと勧告を受けながら、まだ一部で対応できておらず、その詳細な説明が不足していることを問題視しています。
 その後、SC/F14/J28とSC/F14/J29というクロミンクの系群解析に関する 2つの論文に対するレビューが続きます。SC/F14/J28はミトコンドリアDNAおよびマイクロサテライトDNAというクジラ以外でも野生動物の多型解析ではおなじみの遺伝子マーカーを用いた解析。SC/F14/J29はそれら遺伝情報に身体測定データを加えて解析したもの。執筆代表者は前者が鯨研調査研究部長Pastene氏、後者がIWC-SCの議長も務める東京海洋大北門氏。
 「よくがんばりました」と花丸の判子を押しつつ、こう言ってます。

However, there are a number of places where additional information is required to fully interpret the results.
 

 このパート(5.2.3 p15)は集団遺伝学のかなりしちめんどくさい議論ですが、要約するなら、「JARPAUによって示されたデータ自体、日本側の提唱する仮説と矛盾しているし、その部分の検証に抜けがいっぱいある」と指摘されているわけです。
 JARPA最終レビューで受けた指摘に対応したという北門氏らの解析に対しては、SC副議長に敬意を表してかせっせと持ち上げつつもPastine論文以上に辛辣なコメントが付いています。勧告の数は合わせて9個。
 まず、「論文の記載で、個体と系群に同じインデックスを使用されちゃ困るよ」と某リケジョ論文を思わせる稚拙さに苦言を呈されています。ほかにも、「モデルはベイズ法か最尤法で処理するように」「形態データの統合にあたっては性差に依存しないパラメータの変化も検討するように」といった指摘がなされており、おそらく統計学・遺伝学畑の方々なら「基本じゃないの?」と首をかしげるのではないでしょうか。これでは過渡的な試論の段階で論文の体裁をなしてないと批判されても仕方がないでしょう。

Management procedure considerations on stock structure focus on developing plausible interpretations of available data not simply the single ‘best’ interpretation when examining uncertainty.

 SC/F14/J29への指摘に続いて、パネルは1ページ以上にわたって長々と「もうひとつの仮説をきちんと検証してちょうだい」と注文を付けています。
 ここで一応ざっくり解説しておきますが、調査海域のクロミンクにはIストックとPストックという二つの系群(個体群)が存在すると考えられ、その分布境界と混交の程度が長年にわたって問題になってきたわけです。2つの系群の境界領域(p7の図1に描かれているグラデーションの部分)の状態を説明するため、<two-Stocks-with-mixing:2系群混交>説と<isolation-by-distance:距離による隔離>説という2つの仮説が立てられました。前者はI系群とP系群の分布が重なる混交領域を仮定するのに対し、後者はI系群とP系群が距離に応じて次第に混じり合う状態によって説明しています。現在日本側が主張しているのは前者。

 こうしたSCの小言≠ヘ、「低緯度の繁殖海域の調査をちゃんとやったら?」と同様、今に始まったことではありません。以下は'06年のJARPATのレビュー時のもの。

With respect to the area of transition, it was suggested that methods that address the question of isolation by distance (such as spatial autocorrelation and Mantel tests) would help resolve the position and nature of this transitional pattern. It was further suggested that other analyses based on individual genotypes, such as landscape genetics as assessed in the program ‘alleles in space’ (Miller, 2005) may help resolve the pattern of structure and mixing (though this would likely require 15+ microsatellite loci to provide sufficient power). (p421)

−Report of the Intersessional Workshop to Review Data and Results from Special Permit Research on Minke Whales in the Antarctic, Tokyo, 4-8 December 2006 | J. CETACEAN RES. MANAGE. 10 (SUPPL.), 2008 411
http://iwc.int/document_1565

 ところが、JARPAU開始年次にはすでに提唱されていた対立仮説を、日本側はずっと無視し続けてきました。JARPATへのレビューに対する応答として、JARPAUの所定の最終年次に提出された論文においてさえ、それは考慮されていなかったのです。
 しかし、今回のレビューでも引用されているとおり(p17)、当の鯨研の論文でも以前は複数の仮説が併記されていたのです。


Therefore the general stock structure archetype for the Antarctic minke whale in the feeding grounds is multiple stocks with spatial (longitudinal) segregation. (p7)


−SC/D06/J9 Genetic analysis on stock structure in the Antarctic minke whales from the JARPA research area based on mitochondrial DNA and microsatellites
http://iwc.int/document_1570


 パネルは「不確実性を解消するために必要なのは、単一の解釈に対して手を替え品を替え正当化を試みることじゃない。複数の仮説があれば、まずどちらの仮説が正しいか検証することだ」と述べ、決着をつけるための具体的な方法(近交係数の経度毎の変化を調べればいい)まで明示しているわけです。
 2つの仮説のどちらが正しいかわからない状態がずーっと続いていれば、強いフラストレーションを感じ、早く結論を出したいと考えるのが、まっとうな科学者というものでしょう。
 同じくP16でパネルは「生物学に大きく貢献するし、JARPAUの目的にも合致するはずだ」と半分持ち上げつつ、対立仮説を検証するよう改めて強く促しています。
 しかし、日本の御用学者たちは、結論を導き出すことよりも、一方の仮説に都合のいい解釈をこね回し続けることに、意義を感じていたというわけです。調査捕鯨ならではの身体測定データを、どうやって致死調査を正当化する口実につなげられるか、そんなことばっかり考えていたと。
 新しいアイディアや手法を優先して試してきた、というわけでもありません。その点に関しては、パネルは形態データの統合を歓迎しつつも、「4.で述べたとおり、海洋物理学的データの統合だって少なくとも同じくらい重要だよ。そっちもやんなよ」と推奨し、さらに衛星タグ、放射性同位体や脂肪酸解析など多岐にわたる手法も提示しています。
 工夫の余地だったら他にもたくさんあるのに、致死的調査にばかり異常に執着したがる日本の鯨類学の偏向には、科学の公平性・合理性・効率性の観点からも到底誉められたものではありません。


 続いて、ザトウクジラについて。けど、ザトウは捕っていません(オーストラリアに対する脅迫カードに使ってるだけ・・)。ここで評価されているのは、いわゆる非致死調査であるバイオプシーを用いたもの。
 短い論評ですが、「致死的調査をしてないばっかりに質が低い!」なんてことは、もちろん一言も書かれていません。論文の記載、詳細なデータの提出の注文だけ。
 バイオプシーだけで済ませているザトウクジラとミナミセミクジラより、致死調査をすることでより充実した中身になっているハズのクロミンククジラとナガスクジラの論文に対するほうが、より注文が多く、かつ手厳しくなっているわけです。
 ナガスクジラの調査結果に対しては、統計学的正当性への懸念は当然として、「過去の商業捕鯨時代のデータや他のバイオプシーサンプルをきちんと調べなさい」と注文を付けられています。
 5章最後の節、写真標識による個体識別データについては、「系群構造解明に資するポテンシャルを認識して、もっと情報の提供と分析に努めるように」と強く奨めています。
 はたしてこれは、IWC-SCが非致死調査ばかり選り好みしている所為なのでしょうか?
 いいえ。

 In such a situation, it was difficult for this study to further distinguish between stock mixing and stock core areas without using the data from the breeding areas. Future microsatellite study should use the samples from the breeding areas. Nevertheless, substantial increases in the numbers of the analyzed microsatellite loci and the biopsy samples allowed us to confirm our previous conclusion on the humpback whale stock structure in the Antarctic.

−SC/F14/J31 Stock structure of humpback whales in the Antarctic feeding grounds as revealed by microsatellite DNA data
https://events.iwc.int/index.php/workshops/JARPAIIRW0214/paper/viewFile/554/543/SC-F14-J31.pdf

 これ、当の鯨研の論文の記載ですよ。IDCR/SOWERの分を加え、トータルで581サンプル。系群構造の解析にはこれでも不十分だったとしてますが、「繁殖海域のサンプルなくしてこの研究はできなかった」との表現は、逆に言えば繁殖海域でバイオプシーを活用した調査を行えばサンプルサイズを抑えることだって十分可能だということ。「無駄な殺しをしなくて済む」ということに他なりません。
 こうやって鯨研自身が「重要な成果だ」と自賛しているくらいなのですから、ICJが「ザトウは殺さずに調査研究できるんだから、クロミンクでその努力を怠るのはおかしいでしょ」と追及するのは当然のことでしょう。
 ついでにいえば、他の野生動物でも遺伝的多型を調べる場合のサンプルサイズはこんなものです。

−地理的スケールにおける生物多様性の動態と保全に関する研究|環境省
https://www.env.go.jp/earth/suishinhi/wise/j/pdf/J01F0140.pdf

 例えば、高尾のリスの個体群構造解析は26個体、中国・近畿のツキノワグマでは同じく92個体。遺伝子サンプルは生検、発見した死骸、糞などから。
 種によっては、狩猟ないし有害駆除された死体からのサンプルが含まれるケースもあります。殺す以上は、徹頭徹尾データを取得することが供養だという考え方もあるでしょう。
 しかし、研究を主目的に、生きた個体を毎年数百頭ずつ殺そうとする、代替手法の開発・改善によってその数を少しでも減らそうと一切努力することなく、むしろ何とかして殺す数を維持しようとあの手この手を画策する──そんな動物学者は世界広しといえど、捕鯨業界のリソースにどっぷり依存している日本の御用学者以外、見当たりますまい。
 彼ら日本の御用鯨類学者は、どの野生動物の研究者よりも、動物実験が主体の医学・生理学者に近いといえるかもしれません。某リケジョのような。。研究実績の指標となる論文数を稼ぐ動機で、必要性に首を捻りたくなる突飛な研究を思いつく特性の点でも。調査捕鯨との大きな違いを挙げるなら、曲がりなりにも3R《苦痛の軽減・使用動物数の削減・代替手法への置換》の概念に基づく明確な倫理指針が設けられ、法規制や科学誌への論文掲載の国際的な審査基準として定着していることでしょう。もっとも、日本と海外先進国との大きなギャップは、動物福祉方面では常に指摘されてきたところですが。
 「なるべく殺さない」──それが動物学の基本常識。
 その中で、日本の鯨類学のみが「なるべく殺す」という常識ハズレの哲学に従っているわけです。
 残念ながら、その哲学は、科学の意義、価値を重んじる姿勢から興ったものではありません。
 副産物こそが目当てだから、解体時間が延びて鯨肉が体温で傷むことさえ恐れ──何せ、水産庁長官曰く「刺身にすると美味いミンククジラ肉」ですから──可能な限り少ない組織標本で済ませようとし、必要な解析・研究をうっちゃらかして、クジラの精子とウシの卵をかけ合わせるなんておっそろしくバカげた研究で論文数だけなんとか稼ごうとする。
 科学が産業と政治に隷属し、二の次になっているが故の哲学なのです。

 実は、上掲のクロミンクの系群構造の2つの仮説をめぐる鯨研発の2つの論文のデータについて、どうにも腑に落ちない部分があったため、パネルメンバーに直接問い合わせてみました。
 該当箇所はこちら。

[SC/D06/J9] 
  No statistically significant level of deviation from the Hardy-Weinberg genotypic proportion was detected through the strata at each of the six loci (Table 9). The same was true for overall loci in all samples combined (chi-square=16.948, d.f.=12, p=0.152).(p6) 
  Table 9(p16) 

http://iwc.int/document_1570

 [SC/F14/J28] 
  Genetic diversity indices are shown in Table 4 for whales in the western and eastern sectors of the research area. The average number of alleles per loci, average allelic richness, and average expected heterozygosity, all over the 12 loci, was high for the both sectors, and the levels of these indexes were quite similar between the two sectors. Both sectors showed evidence of deviation from the expected Hardy-Weinberg genotypic proportions.(p4) 
  Table 4(p8)

−SC/F14/J28 An update of the genetic study on stock structure of the Antarctic minke whale based on JARPAII samples
https://events.iwc.int/index.php/workshops/JARPAIIRW0214/paper/view/551

−SC/F14/J29 Dynamic population segregation by genetics and morphometrics in Antarctic minke whales
https://events.iwc.int/index.php/workshops/JARPAIIRW0214/paper/view/552

 これは同じVEからYWにかけてのクロミンクのマイクロサテライトDNAの解析結果(HW:ハーディー・ワインバーグテスト値)と記述。両論文で正反対になっています。違いは調査期間と解析した遺伝子マーカーの数、そして集団の取り方。JARPAUの方は、解析するマーカー遺伝子数を増やしたものの、各遺伝子座毎の詳細データが提示されておらず、非常に不親切。この点は上掲したように、パネルからも指摘を受けていますが。
 二つの論文の該当箇所を比較してみましょう。
HW.png

 怪しいと言えば怪しいのですが、HWテスト値が真逆になる合理的な理由も一応考えられます。SC/D06/J9のデータは経度による分割を増やした計8つの集団についての解析結果であるのに対し、SC/F14/J28の方は東西の2集団。
 HW平衡が成り立つのは、任意交配が行われる独立した遺伝子集団の場合。ただし、部分集団で任意交配が行われていても、それらの部分集団の集合としてみた場合には平衡が崩れます(ワールンド効果)。HWやワールンド効果については、参考リンクの集団遺伝学講座をご参照。
 パネルは「扁平なトーラス」という表現を用いていますが、<距離による隔離>仮説によれば、クロミンクは通常経度方向にあまり大きく移動することはなく、遺伝的に少しずつ異なる集団が隣接し合い、大陸を取り囲む連続的なスペクトルの状態をなしている、というイメージですね。
 それに対し、日本側が推している<2系群混交>仮説は、単純に2つの個体群が重なり合い、間で混交が起きているというもの。
 日本側はSC/F14/J28で提示されているHW平衡からの逸脱を、年毎に東西系群間の移動・混交の度合が大きく変化することによって説明し、<2系群混交>仮説を支持する論拠としている模様。
 確かに、HW平衡が崩れるもうひとつの理由として、集団への出入りがある場合が挙げられます。ただ、移動・混交の年変化によるなら、より小さな分集団を対象にした以前のSC/D06/J9のHWテスト値は、もっと大きな逸脱を示していてもおかしくないと思うんですがね。実際には
 さらに、同論文のP5では以下の記述があり、JARPAT時の調査結果と大差ないと言っているのがなんとも不可解。

Regarding the work conducted in response to the recommendations from the JARPA review meeting, the number of the microsatellite loci used was doubled from the previous six to current 12. Even with this substantial increase in the loci numbers, however, the level of genetic differentiation among the samples was very low.


 しかし、遺伝的小集団の集合によるワールンド効果という解釈であれば、<距離による隔離>仮説の支持も可能。むしろ、2つの調査結果に示されるHW期待値の傾向が相反することをうまく説明できます。
 一方、<2系群混交>仮説であれば、今年のレビューのP17でパネルが指摘しているように、近交係数とともにHWテスト値のほうも、遷移領域と両側の純系群との間で差が出てくるはずなのです。
 やはりP16でパネルが指摘しているとおり、当のJARPAUが提示した経度によって遺伝的・形態的特性が変化するモデルは<距離による隔離>説と矛盾しません。むしろその方がしっくりきます。身体測定データの差異を解析したSC/F14/J29のグラフ(p10)、皆さんはここで示された9つのグラフの中に、2つの明瞭な不連続境界を見出せますか? それとも、経度方向の漸次的、連続的な変化に見えますか?
 ここでパネルのコメントを再掲しましょう。

Management procedure considerations on stock structure focus on developing plausible interpretations of available data not simply the single ‘best’ interpretation when examining uncertainty. In this spirit, the Panel recommends that during the coming year, the authors of SC/F14/J28 and SC/F14/J29 consider the merits of an alternative to the two-Stocks-with-mixing hypothesis: a single stock that exhibits one-dimensional isolation by distance along a longitudinal gradient. This alternative is suggested by visual inspection of fig. 3 in SC/F14/J29, which shows how morphometric scores for individual whales vary by longitude. Morphology appears to vary more or less linearly along the zone of sampling, rather than being constant at the eastern and western extremes, with an area of mixing in between. Under isolation-by-distance, statistical comparisons of samples from the extreme eastern and western sampling regions could produce the types of results described in SC/F14/J28 (see Schwartz and McKelvey 2009).


 <距離による隔離>は野生生物の個体群動態の実相を幅広く表していますが、中でもクロミンクのケースはかなりユニークなものだといえるでしょう。分断された繁殖海域と明瞭な地理的隔離障壁がない摂餌海域との間を大回遊する生態が、ユニークな系群構造をもたらしたに違いありません。さらに、皮肉にもJARPAUの結果、系群の境界領域は時間的・空間的に変化しており、また性差もあることが確認されたわけです。そうした分布動態が微小な遺伝的交雑の蓄積を生み、経度方向に少しずつ異なる遺伝的集団が出来上がったとも考えられます。
 なお、パネルメンバーのお一方、NOAAの遺伝学者Waples氏によれば、「SC/D06/J9中の問題のHW値等については精査できておらず、パネルとしてのコメントはない」とのこと。
 結局、何年もかけて数千頭のオーダーで野生動物を積極的に殺しておきながら、T期・U期いずれの調査結果も満足な結論を出せるレベルにないということです。
 鯨研はサボタージュを働こうとせず、繁殖海域の調査、JARPAUのサンプルの再解析によって、パネルが指摘した有力な仮説の詳細な検討作業に真摯に取り組むべきです。

 話はここで終わりません。
 生態系アプローチをはじめ、鯨研側の手法や議論があたかも結論にたどり着くのを引き伸ばそうとしているかに見えるのは、調査捕鯨をズルズル延命したいという日本側の動機を考えれば容易に納得できます。しかし、系群構造に関して対立する2仮説のうち一方ばかりに肩入れする理由は何かあるのでしょうか?

 ここで、なぜ捕鯨の管理に系群構造の解析が求められるのか、改めて説明しておきましょう。付ける薬のない狂信的な反反捕鯨論者たちの認識は根本から間違っているのですが・・
 もはや常識ですが、自然保護・野生動物保護の文脈において、対象となるのは種≠ナはありません。個体群です。
 おりしも生物多様性条約の年次会合がカナダで開かれていますが、ここでいう多様性というキーワードの意味は、《自然(生態系)の多様性》であり、《遺伝子の多様性》に他なりません。地球全体で見たそれぞれに特色のある生態系の多様さ、その生態系を保全するために欠かせない構成種の豊富さ、そして、種内の遺伝子の多様性すなわち個々の個体群ひとつひとつをきちんと保全することで、それらが構成する地域の生態系の健全さを可能な限り保持すること。
 小川や林に生息する昆虫や淡水魚などの小動物たちから草花まで、「種の個体群ひとつだけ生き残っていればいいや」などという乱暴な考えは、もはやとっくに時代遅れ。地域地域の自然を構成する、遺伝的に微妙に異なる個体群のそれぞれをしっかり守ることこそが求められているのです。ホタルしかり、トンボしかり、メダカしかり、カエルしかり。
 それが現代の自然保護のトレンドであり、時代の要請なのです。
 ペンギンも、サメも、アザラシも、そしてクジラも、自然保護の標準から外れる差別的扱いは決して許されることではありません。
 クジラの保護管理に責任を負う国際機関であるIWCとて、時代の要請を受け入れる必要があるのです。

 商業捕鯨の管理方式・管理体制においても、当然個体群毎の厳格な管理を念頭に置かなければなりません。
 仮に、クロミンククジラに当てはめるとしたらどういうことになるでしょうか?
 まず、推定個体数の全体の数字(最新の合意値で52万頭)には意味がないということ。保護・管理すべきなのは個々の個体群だからです。
 以前、便宜的な合算値である76万頭(既にゴミ箱行となりましたが)に対し、年間約3千頭(平均)というRMP(改定管理方式)に基づく捕獲枠の試算が示されました。これも系群単位ではなくトータルの値なので意味がないわけですが、この仮試算の数字をもとに改めて概算してみることにしましょう。もし将来商業捕鯨が解禁になったとき、日本がどれだけのクジラを殺せるか、の。
 最初に、76万に対して52万、おおよそ2/3ということで約2千頭。全6海区のうち、日本が伝統的≠ノ漁場としていたのは2海区ですから、1/3で約700頭。実際、インド洋、大西洋側にまで出張っても、燃費がさらにかさんでますます不採算になるだけですからね。まだ名乗り出る気配のない未来の公海商業捕鯨企業が、そんなバカげたことをするはずもありませんし、「南極海のクジラはぜーんぶ俺様のモノだ!」とジャイアンな宣言をするほど、日本が狂った国であるハズがないと、世界も信じてくれていることでしょう・・
 ここで、この数字をJARPAUの目標計画数がすでに上回ってしまっているということに、皆さんもお気づきになられたでしょう。ICJがクロ認定するのは当然のことでした。
 系群構造に応じた管理を考えた場合、対象群の規模が小さければそれだけ注意深い管理が求められ、高い安全係数を見込むことになりますから、全部ブッコミの数字より当然目減りすることになります。
 余計なパラメータの入力を必要とせず、最も頑健で信頼性の高いRMPは、系群毎の管理の要請に応じるために、管理区域を経度10度毎に分割することにしていました。日本側は「それで目減りすんのは嫌だ!」という理由から、管理区域間の線引きの目をもっと粗くしようと目論んでいるわけです。「野生動物は個体群毎に保護しなければダメ」という環境保護の常識からではなく。ついでに、調査捕鯨の大きな口実にもなったわけですが。
 <2系群混交>説に即した場合、IとPの純系群、遷移領域の3つを考えればいいということになるでしょう。一方、<距離による隔離>説が正しければ、経度方向のより細かい管理区分が必要になってきます。仮に、JARPATの調査に基づきHW平衡が確認された集団を1管理系群とみなすなら、2海区で6つ。後者の方がより厳格で慎重な管理を求められるのは言うまでもありません。
 ただし、遷移領域については純系群と同様に捕獲枠を算定するわけにはいきません。捕鯨船がこれから殺そうとしているクジラが、I系群のものかP系群のものかを殺す前に判別する方法がないからです。衛星タグを打ち込んで、遺伝子サンプルを持ち帰って確認した後、翌年回収しに行く? 今はまだどこも名乗りを挙げようとはしない未来の捕鯨会社も、そんなバカげた著しく採算性を損ねるやり方を択るはずもありますまい。
 また、個体群毎の個体数推定の精度も大きく下がることになります。2つの系群を合わせたトータルの数字としてなら算出することが可能ですが、遷移領域(前者1つ、後者は4区ないしそれ以上の細分化が必要)については、さらにそのうちの系群毎の比率を割り出すことが求められます。そして、異なる系群への混獲の影響を最小限にするために、遷移領域ではより少数のほうの系群に応じた捕獲枠を設定することになるでしょう。その場合は、純系群に近い場所ほど捕獲枠を小さく設定せざるをえません。そんなしち面倒くさい管理に従いたがる捕鯨会社など、やはりいるとは思えませんが。そもそも南極海捕鯨をやりたいと言ってる企業自体ありませんけど。。
 まだ問題があります。<2系群混交><距離による隔離>のどちらであれ、JARPAUの調査自身によって判明している時間的・空間的変動と性差を管理にも組み込む必要があるということです。年毎に管理の指標とされる系群の境界が移動し、去年と同じ海域でも異なる系群に該当する可能性があったり、同じ海域でも系群毎のメスとオスの割合が異なるため雌雄別々に管理しなければならないという、きわめて厄介な課題が生じるのです。
 捕獲枠の算定に際しても、年毎に境界が移動する可能性のある変動領域の分を割り引かれなければなりません。でなければ、系群毎の管理の意味がないわけです。該当する海域での捕獲は事実上不可能ということになるでしょう。マッコウクジラじゃありませんから、今に至っても選択的捕獲はほぼ不可能。そのマッコウクジラでは、かつて陸上の狩猟動物の管理に倣ってオスだけの捕獲枠が設定されましたが、この選択的捕獲のせいで妊娠率が大幅に低下、北太平洋のマッコウクジラは個体数が急減し、商業捕鯨管理の無残な失敗のモデルケースとなりました。
 系群の性比のバランスを崩さない厳格な管理を追求するなら、同じ海域内に生息する少数の系群の、少数の性の個体数をもとに捕獲枠を算定する以外にないでしょう。
 結局、遷移領域(両方の系群が混在している範囲)・変動領域(管理区分の境界が年によってずれ得る範囲)については、ごく少数の捕獲しか認められないということになるでしょう。
 合わせて300頭か、200頭か、100頭か。以前のJARPATの規模でも多すぎということになるかもしれません。いい加減で済んだかつての乱獲時代と異なり、細かく区切った管理区域毎に厳重な管理をする、という前提付で。
 以下はそのイメージ。

jarpa2kaisetu2.png
 してみると、日本側が2つの仮説のうち1つのほうに異常なまでに固執するのは、「もう一方では商売≠ノ都合が悪い」という理由以外に考えられないでしょう。
 日本を含む捕鯨産業が大乱獲の果てに大型鯨類を次々に絶滅寸前へと追いやり、南極海生態系を荒廃させた悲劇の歴史を鑑み、慎重のうえにも慎重を期した管理手法として提案されたのがRMPでした。
 「少しでも取り分を増やしてやろう」などと画策する日本の姿には、過去に対する真摯な反省の姿勢が微塵もうかがえません。
 RMPの趣旨を踏まえるなら、遷移領域・変動領域の捕獲枠ゼロ設定は当然のことでしょう。RMS(改訂管理体制)を受け入れようとしない日本に、近海のウナギもマグロもまともに管理する能力のない持続的水産業の落第生に、影響を最小限に抑えながら捕獲する繊細な管理などできるはずがありません。

 残念ながら、これは「商業捕鯨をどうしても再開したいのであれば、最低でもここまではやるべきだ」という筆者のべき論にすぎません。そして、科学者として似つかわしくない「鯨肉販売営業」を平気で兼任している鯨研の連中のこと、時代の要請だといっても、このようなきめ細かな管理に応じるつもりはさらさらないでしょうね。
 レビュー報告の12章では、調査捕鯨を正当化する従来の主張どおり、そのデータがRMP運用の「改善に資する」と日本側は謳っています。「安全第一の管理のせいで目減りする量をちょっと増やせるかも」という意味で。
 こんなものは改善ではありません。日本がやろうとしているのは間違いなく改悪です。
 ナガスクジラを世界で最も多く殺し、南極海生態系の撹乱という未曾有の大実験を遂行してきた捕鯨ニッポンは、かけがえのない人類共有の財産である南極圏の野生動物と取り巻く自然をなおも弄び続け、多様性を損ねようと企てているのです。
 この点に関しては、多数派にしてスポンサーでもある日本への配慮から、両論併記の形で調査捕鯨の有用性に一定の理解を示そうとしているIWC-SC自体が、もはや時代から取り残されているといわざるをえません。
 「資源が枯渇さえしなければいい」という時代遅れの指標はきっぱり捨て去られるべきなのです。

 時代は変わったのです。「種が絶滅しなければいい」という初歩の段階はとっくに過ぎたのです。
 自然の多様性をいかに健全に保つかが、いま何よりも求められているのです。そして、社会の側が自然を開発するニーズについて、より厳しい目が向けられているのです。
 年間300万人の児童が栄養失調で亡くなっている時代に、世界の食糧援助をはるかに上回る食べ物を捨て、世界中のどこの国より命を粗末にしている最悪の飽食大国が、永田町の食通族議員たちを満足させるべく「刺身にすると美味いミンククジラ肉を安定的に供給するため」(by本川水産庁長官)、多額の税金を投じて繰り広げる、地球の裏側の南半球に暮らす人々が愛してやまない自然への、欺瞞と独善に満ちた不当な介入。
 これは南極のクジラたちに対する、ホタルやメダカにも劣る差別的待遇以外の何物でもありません。


 ここまでJARPAU最後のレビューレポートの2章分をざっとながめてきましたが、残りのパートもツッコミどころが満載です。
 とくに野生動物フリーク、生態学に興味のある方なら、これを読んで日本の鯨類学がそこまでお粗末だったということに開いた口がふさがらないはず。
 キーワードはシャチ
 トホホな実態の検証、続きは来月中に・・

(集団遺伝学関係参考資料)
−集団遺伝学講座|霊長類フォーラム
http://www.primate.or.jp/PF/yasuda/index.html
−適応進化遺伝学|東京大学大学院新領域創成科学研究科
http://www.jinrui.ib.k.u-tokyo.ac.jp/kawamura/tekioushinka2013.pdf
−Genetic differentiation between individuals|Journal of Evolutionary Biology #13
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1046/j.1420-9101.2000.00137.x/abstract
−北海道東部に生息するタンチョウの集団遺伝構造解析|日本生態学会第61回全国大会
http://www.esj.ne.jp/meeting/abst/61/B1-08.html

posted by カメクジラネコ at 01:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系

2014年05月16日

IWC決議違反の調査捕鯨は国連決議違反の北朝鮮のミサイルと同じ! 国際法秩序を踏みにじる日本の密漁捕鯨は4カ国包囲網で阻止を!!

■「2014年度第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(沖合調査)」の実施について|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/enyou/140516.html
■調査捕鯨船2隻 北西太平洋へ出港 (NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140516/k10014505691000.html
■北西太平洋で7月末まで (共同)
http://www.47news.jp/movie/general_national/post_11034/

 本日、JARPNU(北西太平洋鯨類捕獲調査)の沖合調査に従事する船団が下関を出港とのニュースが。
 南極の海で行われてきた同規模の調査捕鯨に対し、ICJ(国際司法裁判所)がきっぱりと違法認定を下してから、沿岸調査に続く二度目の強行となります。
 国会決議直後の先月18日に、林農相の談話とともに公表された実施計画より、ニタリクジラの捕獲数が5頭増えて25頭に。
 「精査のうえ」、数字をいじったということのようですね。。一体何を精査したの? 鯨研の出納帳? 冷凍倉庫の帳簿?


 やっぱり日本はよその国とは違う。
 本当に国際法を尊重し、信義と礼節を重んじる、信頼に値する国だ。
 どっかの国や、どっかの国や、どっかの国とは違って──
 そのように世界中から絶賛されるまたとない機会を、日本は自らふいにしてしまいました。


 調査捕鯨は密漁です。
 国連決議に違反する北朝鮮のミサイル発射や核実験と同じ。


 確かに、かつて何度も核実験を行い、実際に兵器としても使用しながら、現在も大量の核兵器を保有している国との扱いの差を指摘し、差別≠セと訴える北朝鮮の主張には一理あるでしょう。
 だからといって、彼らが許される道理はありません。
 たとえ落下地点をIMOにきちんと報告して、人工衛星≠フフリをしたとしても。

 同じことです。

 かつて南極海での乱獲に関わってきた捕鯨国に対し、言いたいこともあるでしょう。
 もっとも、上の例に倣うなら、日本自身も核大国ならぬ有数の捕鯨大国として、歴史上の乱獲と資源枯渇に重大な責任を負っている点で、北朝鮮のほうがずっとマシといえるでしょうが・・。

 せっかく最も権威ある国連の司法機関が、国際社会が、日本の顔を立てて、南極海での泥沼プロレスに代わり、由緒正しい国際法廷のリングを用意し、潔く身を引けるように計らってくれたのに。紳士的に正々堂々と戦った末に破れ、拍手とともに惜しまれつつ退場できるように、花道≠用意してくれたというのに。
 沿岸で粛々と、伝統から外れることのない慎ましやかな捕鯨を行うことに、理解を得られる可能性もまだ残されていたというのに。
 日本という国は、南極・公海で、自らの力≠誇示したいなどという、あまりにもくだらない沽券にこだわったあまり、何もかも台無しにしてしまいました。
 合法な調査捕鯨を装い、姑息な脱法行為を長年にわたって続け、世界と自国民の目を欺いてきたことに対し、ついに一言の謝罪もないまま。

 本川水産庁長官曰く、「お刺身なんかにしたときに非常に香りとか味がいいということで(ニタリやイワシやツチクジラより)重宝されている」ミンククジラを、沿岸事業者に枠を譲って少しの間我慢すれば、また「安定的に供給」することができると、大本営は今なお思っているわけです。
 日本はもはや、北朝鮮、あるいは他の国々に対し、《法の正義》を掲げる資格を完全に失ってしまいました。

 違法判決直後に拙速に開始を決めてしまったために、沿岸事業者に委託されているJARPNU沿岸調査も、JARPAUに関しては認定されなかった新たな国際法(ICRW附表第30項)違反に問われる疑いが濃厚です。威勢よく外国・白人たちを叩き、実態を何も問わずに日本の文化を声高に叫ぶパフォーマンスをすればウケるとしか考えていない、ボンクラ国会議員たちのせいで。
 確かに、船を出せないとなれば不安を覚えるのは業者は当然でしょう。筆者としては、漁に携わる術を完全に奪われた福島の沿岸漁業者以上に同情する気はありませんけど。
 しかしその責任はすべて国にあります。
 これまで、南極の自然を貪り尽くそうとした大手捕鯨会社のゾンビに他ならない調査捕鯨事業者を優先するあまり、沿岸捕鯨に対して国際社会から差し伸べられた手を突っぱね続け、ツケを押し付けてきたことを土下座したうえで、「公海調査捕鯨を即時全廃することで国際社会に情状酌量を求め、沿岸捕鯨再開の道を探ります」と言えず、合理的な解決案を提示しないどころか、沿岸捕鯨事業者を捕鯨サークルの犯した罪に巻き込み、相対的に違法の度合い低かったはずの沿岸調査捕鯨に新たな違法性を付け加えてしまったのです。
 一体、これほどの愚行が許されていいのでしょうか?

 日本人として、これほど堪えがたいことはありません。

 昨日、北西太平洋を取り囲むIWC加盟国(水産ODAと引き換えに日本に票を売った国を除く)である4カ国に対し、オーストラリア・ニュージーランドがJARPAUを訴えたように、JARPNUをICJに共同提訴するよう求める要請書を、国の愚行を憂える日本の団体・市民の有志のみなさんとともに提出しました。賛同いただいた皆さん、多謝m(_ _)m
 日英の要請文と補足は拙ホームページのほうで公表しましたが、当ブログ上にも掲載しておきます。


 今からでも遅くはありません。直ちに船を引き返させてください。
 林農相は、「ミンクは美味い」発言を国際裁判記録として後世に残され、国中に恥をかかせた本川長官を直ちに更迭し、自らも辞任すべきです。
 国際法を冒涜するならず者国家の烙印を押されたくないなら。
 このままでは恥の上塗りになりますよ。

 
http://www.kkneko.com/jarpn2.htm
http://www.kkneko.com/english/jarpn2e.htm

 
2014年5月15日

駐日大韓民国大使館
 駐日中華人民共和国大使館
 駐日ロシア連邦大使館
 駐日アメリカ合衆国大使館 御中

 写し:
 駐日オーストラリア大使館
 駐日ニュージーランド大使館
 駐日欧州連合代表部
 日本外国特派員協会 御中


絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)、国際捕鯨取締条約(ICRW)および国際捕鯨委員会(IWC)決議に違反する日本の北西太平洋調査捕鯨(JARPN II)に対し、4カ国による国際司法裁判所(ICJ)への共同提訴を求める要請書


  今年3月31日、オーストラリアおよびニュージーランドと日本との間で争われた調査捕鯨をめぐる国際裁判において、ICJは日本の南極海調査捕鯨(JARPA II)がICRWおよび各種のIWC決議違反に該当すると認定し、今後調査捕鯨の許可証を発給するにあたり、今回の判決を十分考慮するよう求めました。
  日本政府はICJの判決に従うとしながら、今年度もJARPN IIを強行する決定を下しました。しかし、JARPN IIにはJARPA IIと同様、ICJで認定された多くの違法性が含まれていることは明らかです。
  日本政府は国際法規を遵守する姿勢を打ち出していますが、国会議員らは「ICJの判決は政治的だ」と非難するばかりで、国際法を尊重しなかったことへの反省の弁は聞こえてきません。また、マスコミは敗訴の決め手となった水産庁長官の国会答弁等には一切触れず、調査捕鯨の違法性を文化の問題へとすりかえる報道を繰り返しています。
  日本政府が自らの過ちを認めず、国際法に背く行為を続けようとしていることは、日本国民として耐えがたいことです。遺憾ながら、日本の姿勢を改めさせるためには、南半球諸国を代表してオーストラリアとニュージーランドが国連の司法機関に判断を仰いだのと同様に、北半球の国々によって日本の違法性を再度追及してもらうほかありません。
  大韓民国、中華人民共和国、ロシア連邦、アメリカ合衆国は、北西太平洋に近接し、日本の水産ODAによる勧奨活動の影響を受けていないIWC加盟国として、科学の名を借りた違法な公海資源の占有を訴える資格があります。
  とりわけ、韓国は一昨年のIWC年次会議でICRW第8条に基づく調査捕鯨の計画を発表しながら、内外の市民の批判を受けてこれを撤回しました。
  国際法をきちんと遵守する同国とは対照的に、違法な調査捕鯨をなおも続行する国の存在を認めることは、国際社会の公平性・公正性の観点からも許されるべきではありません。
  よって、私たちは4カ国が共同で日本のJARPN IIをICJに提訴するよう、強く要請するものです。

以上


カメクジラネコ

賛同団体 (五十音順)

茨城県民ネットワーク
全日本動物愛護連合
チロとサクラのクリニック
動物愛護党
動物たちとともに W.A.A
フリッパーズジャパン
ヘルプアニマルズ



参考リンク:
−ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html
−北は人工衛星という名のミサイル、日本は調査捕鯨という名の商業捕鯨
http://kkneko.sblo.jp/article/60752017.html
−調査捕鯨国際裁判敗訴は全て安倍と自民党捕鯨議連の責任
http://togetter.com/li/650580
−捕鯨ニッポンが最悪のドツボにはまる可能性
http://kkneko.sblo.jp/article/93046598.html
−調査捕鯨継続なら、本川水産庁長官は更迭、林農相も辞任すべし!
http://kkneko.sblo.jp/article/93365382.html

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2014年04月18日

調査捕鯨継続なら、本川水産庁長官は更迭、林農相も辞任すべし!

◇調査捕鯨を継続するなら、林農相は本川水産庁長官を更迭し、自らも辞任せよ!──多額の税金をどぶに捨て、自ら敗訴を招いた大失策の責任を取ろうとしない厚顔無恥な捕鯨官僚&族議員


■第180回国会 決算行政監視委員会行政監視に関する小委員会 第3号(平成24年10月23日(火曜日))
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025318020121023003.htm


○本川政府参考人
ミンクというのは、お刺身なんかにしたときに非常に香りとか味がいいということで、重宝されているものであります。 (中略)
したがって、ミンククジラを安定的に供給していくためにはやはり南氷洋での調査捕鯨が必要だった、そういうことをこれまで申し上げてきたわけでございます。
(引用、強調筆者)


 はあ・・読む度にため息が漏れますね。。
 上掲引用で略した部分では、売れ行きが悪くて在庫がかさんでいる北西太平洋産のイワシクジラやニタリクジラ(IKANニュース51号参照)、地元では干し肉の形で消費しており都心の料亭で刺身にするには向かないツチクジラについて説明されています。でもって、それじゃ永田町のグルメ議員らの舌を満足させられないから、「美味いミンクを食い続けるためにも、南極まで行って捕ってこなきゃ駄目だ!」という本音につながる形。むしろ、質問に立った議員たちに対し、「やっぱり南極でやるのが大事なんですよ、だって美味いミンク食べたいでしょ?」と媚を売る発言にも聞こえますね。食道楽垂涎の的、ナガスの尾の身にはさすがに触れてないけど・・。
 無論、本川長官の責任は免れようがありません。しかし、佐々木副大臣、小野寺氏をはじめ委員会に出席した十名余りの国会議員らも、「調査捕鯨の合法性に疑義をもたらしかねない重大な発言だ」と撤回・訂正を求めることをしなかった以上、当然彼らも同罪です。

■孤立無援の日本の「捕鯨」、どうすれば伝統漁業を残していけるのか|JBPRESS
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40449

私は水産庁の「鯨類捕獲調査に関する検討委員会」の委員として、捕鯨についての政策論議に関わったことがあるが、豪州の日本提訴について、水産行政に関わってきた人たちの見方は「盗人たけだけしい」といった認識で、日本が負けることはあり得ないという楽観論がほとんどだった。(引用、強調筆者)

 論者は朝日新聞石巻支局長を務めた「さかな記者」高成田亨氏。
 「水産行政に関わってきた人たち」にとってみれば、南極海、南半球、というより世界のクジラはぜーんぶ俺様のモノ。だから、彼らの目には、自分たちのクジラをオーストラリア人が横取りしようとしているかに見え、平気で盗人呼ばわりしているわけです。
 なんというジャイアンな性格!
 こういう感覚の人たちが長年にわたって日本の水産行政を牛耳ってきたとすれば、ウナギ、マグロが瀬戸際に追いやられるのも当然の成り行きでしょう。

■調査捕鯨のオウンゴール 建前を貫く覚悟が大切 (4/13,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO69790750S4A410C1TY7000/?dg=1

 日本政府も科学的調査を目的に掲げて調査捕鯨を実施してきた。だが本川長官の発言では別の目的がはっきりしている。本音と建前に当てはめるなら、科学的調査は建前で、鯨肉の安定供給が本音という構図だ。
 この使い分け自体が見苦しいのは言うまでもない。が、それに劣らず問題なのは、日本の捕鯨政策の責任者が公の場で、建前をないがしろにする本音を開陳したことだろう。
(引用、強調筆者)

 浅はかさと傲慢さによって自ら墓穴を掘った完敗に近い敗訴。その決め手となった、水産庁トップの致命的な国会答弁は、国際司法裁判所(ICJ)の判決文の中にしっかりと記されました。日本は国際裁判史上前例を見ない恥ずかしい当事国として、永久にその名を歴史に刻みつけられてしまったのです(判決文#197,p58)。

■JUDGMENT|WHALING IN THE ANTARCTIC (AUSTRALIA v. JAPAN: NEW ZEALAND INTERVENING)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18162.pdf

 一部の有識者、そして筆者をはじめICJの口頭弁論をウォッチした市民は、科学性の粗をパフォーマンスと論点外しで必死にごまかそうとする日本側の戦略を見て、「このままじゃ旗色がかなり悪いぞ」と昨年の段階から警告していました。その筆者らの予想さえ上回るほどの完敗の背景には、自らの非を認め、襟を正すという、人としては当たり前の能力が根本的に欠如した捕鯨サークルの恐るべき体質があったわけです。

■日本の調査捕鯨が国際司法裁判所で弾劾される日|天木直人氏 ('13/6/27,BLOGOS)
http://blogos.com/article/65118/
■ICJ調査捕鯨訴訟で日本は負ける|拙ブログ
http://kkneko.sblo.jp/article/70305216.html
http://www.kkneko.com/english/icj.htm
■調査捕鯨国際裁判敗訴は全て安倍と自民党捕鯨議連の責任|Togetter
http://togetter.com/li/650580

 この間政府関係者は、少なくともざっと一通り判決文に目を通しているはずで、この致命的な発言がしっかり入れられてしまったことも当然知っているはずです。
 ところが、敗訴の責任については、安倍首相が鶴岡代表を厳しく叱責するパフォーマンスのみで、すっかりうやむやにされてしまった感があります。知名度の高い国際弁護士数名に何千万円ものギャラを支払ったというのに。
 マスコミも、上掲のオンライン論説1本以外、本川長官と水産庁の重大な責任に触れた報道がひとつも見当たりません。
 TVは調査捕鯨が商業捕鯨に他ならなかったという事実を追認するように、鯨肉料理屋や客の怒りの声を流し続け、「このままでは伝統の食文化が・・」と危機感を煽るばかり。従来と何も変わらない捕鯨擁護論ばかりが伝えられ、ICJの判決の中身を詳細かつ冷静に分析する報道は皆無に等しい状態です。
 外務省の三段構えの戦術は、筆者ら捕鯨ウォッチャーの目には見苦しいものに映りました。それでも、公平性・公正性を世界で最も重んじるICJ判事たちの目を、本川長官の「ミンクは旨い!」発言からいかにして逸らすかという無理難題に対し、彼らはそれなりに善処したといえましょう。「自分たちは正しいのだから、負けるわけがない」と高を括り、建前と本音の使い分けさえできない自らの不始末を放置しながら、すべての戦略を外務省に丸投げした捕鯨サークル関係者や族議員には、他省の尻拭いに負われ、TPP交渉と掛け持ちで忙殺された外務官僚の苦労など理解できるはずもないでしょうが。

 ただ……一連の経緯からは、外務省がひたすら損な役回りだったかに見えますが、必ずしもそうとばかりは言えないかもしれません。
 レベルの低すぎる捕鯨官僚が負うべき責任を、外務省は自らの面目を思いっきり潰される形でかぶってやったわけです。当分の間、農水省/水産庁は、外務省に対して頭が上がらないでしょう。
 何しろ、水産庁長官の「ミンクは旨い」発言のせいで、「国際裁判初戦完敗」という永久に消えない屈辱を外務省に与え、看板に泥を塗ったも同然なのですから。
 農水省/水産庁は、外務省にあまりにも大きな借りを作ってしまいました。「クジラ」で。
 日豪EPA交渉で、直前にクジラで負けた相手でもあるAUSから、日本は対米交渉に有利なカードをも渡してもらいました。各所で指摘されるとおり、こちらのEPAについても、畜産農家やサトウキビ農家など、日本の農業者にとっては苦渋の選択を強いられる内容がいくつもあったようですが。
 ここのところ、靖国参拝や河野談話見直し等で米国の失望を買いまくり、今度のオバマ米大統領来日に際しても「国賓待遇なんて要らないから」と冷たい反応を返されるほど、ガタガタになった日米関係を修復することこそ、外務省にとって何よりも最優先すべき課題
 オバマ氏に対して、日本は相応の貢物を差し出す必要に迫られています。
 いま日本の手元にあって、大統領来訪中に差し出すことが可能なものは、2つしかありません。
 TPP日米交渉の大幅な進展、もしくは公海調査捕鯨からの撤退。
 TPPで米国の要求を丸呑みするならば、日本の一次産業従事者は、稲作農家、畜産農家以外も含め、一握りの起業家向きの人を除き、窮地に追いやられることになるでしょう。
 永田町では、捕鯨サークル主催の鯨肉パーティーを兼ねた族議員の決起集会が開かれ、衆参両院で調査捕鯨継続を求める決議を提出されました。TPPに関しても同様に5品目の聖域確保などを求める決議が出されましたが、威勢のよさでは「クジラ」が主食の「米」をも上回った感がありますね・・

 もうかる漁業補助金の超優遇をはじめ、捕鯨サークル最優先の陰で常に割を食わされ続けてきた沿岸漁業者の方々を含む、日本全国の一次産業従事者の皆さん。
 農水省/水産庁は、「クジラ」で取り返しのつかない愚策を犯したうえに、その責任をすべて外務省に押し付けてしまいました。
 外務省は「じゃあ、そういうことでかまいませんね?」と、米国にあなた方を売り渡すでしょう。彼らにとっては、それが省益にも重なる最大の国益にほかならないからです。
 いま、農水省/水産庁は、「クジラというご神体≠ウえ死守できれば、後はどうなろうと別にかまわない」という、驚くべき姿勢を示しつつあります。
 本川水産庁長官による「ミンクは旨い」発言が招いた国際裁判完敗の恥辱に対し、見て見ぬフリをする形で。そのあまりにも重大すぎる責任を一切負おうとしないことで。
 世界最高の国際司法機関から国際条約違反と断じられた擬装商業捕鯨である調査捕鯨を延命させんがために。
 当たり前のことですが、外務省は農業にしろ捕鯨産業にしろ、潰してやろうなどと考えているわけではありません。国際外交の場で日本にとって国益にかなう、最も有利な選択は、日米同盟を堅固に保つことだ──というのが、彼らの揺るぎない信条です。彼らにとって、農業あるいは捕鯨産業は、日米同盟の維持によって日本が生き延びるためなら、場合によっては差し出してかまわないカード≠ニいうこと。
 先の記事で最悪のドツボにはまる可能性について指摘したとおり、外務省サイドも調査捕鯨訴訟がまさかここまで完敗に至るとは考えていなかったと思われます。ただ、TPP交渉の進展が捗らない中、オバマ訪日とまさにぴったりのタイミングで、農水省を完全に抑えこめたことで、「棚からぼた餅ならぬクジラ」と、一部の外務関係者はほくそ笑んでいるのではないでしょうか?
 もし、族議員らの決議を慮って、日本政府が北西太平洋での調査捕鯨を強行するならば、米国への手土産はTPP/農業で確定です。日本の一次産業の未来も。美食の追求のために南極の野生動物を屠る行為とは対照的に、地域の風土と文化に密接に結び付き、環境保全にも一定の役割を果たしていたはずのこの国の農業は、米国のそれに似たビジネスの形でしか生き残れません。それはもはや、かけがえのない日本の伝統文化である農業とは相容れないものです。私たち日本人の魂のよりどころだった、日本の原風景である美しい農村も、失われていくばかりでしょう。

 本当にそれでいいのですか!?


 日米関係を大きく修復させ、なおかつ、日本が被る損失を圧倒的に小さくできるカードはあるのですよ。筆者ら少なからぬ日本国民にとっては、そもそもお荷物でしかなくメリットのほうがはるかに大きいものですが。
 確かに、識者が指摘したとおり、ICJから日本の調査捕鯨が違法認定された時点で、「南極海捕鯨からの撤退」というカードは失われてしまいました。裁判所に言われたことをただやるだけ、ではカードになりようがありません。
 しかし、ほんの少し上乗せするだけで、不人気の民主党オバマ政権を大いに喜ばせ、米国市民の日本に対する評価・好感度を一気に上昇させるのに十分なサプライズになるはずですよ。
 安倍首相が、オバマ大統領の隣で、世界に向かって「公海調査捕鯨からの完全撤退」を宣言するならば、同氏と日本の株は飛躍的に上昇することは間違いありません。
 お隣のいくつかの国には、面白くないと思う人もいるでしょう。けど、中国・韓国の市民だって、戦前の帝国主義を彷彿とさせる強硬な捕鯨政策を日本が改めるならば、見直す方も決して少なくはないはずです。


 日本の一次産業従事者の皆さん。
 独善的な捕鯨サークルの業界益のために、あなた方が犠牲になる必要はありません。なるべきではありません。
 もし、日本政府が公海調査捕鯨の続行を表明し、代わりに農業そのものを米国に差し出すならば、あなた方は一丸となって、外務省に頭が上がらなくなる原因を作った主犯である本川水産庁長官の更迭と、林農相の辞任を農水省に対して求めるべきです。
 また、海洋環境・野生動物に関心のある内外の市民は、ICJに対し米中韓三カ国共同で日本の北西太平洋調査捕鯨を提訴するよう働きかけるアクションが必要になってくるでしょう。

参考リンク:
■「鯨肉が売れない!」〜鯨研自らが公表した、入札結果の惨状〜|IKA-net
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/whaling/250-sluggish-sales-of-whale-meat
■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html
■捕鯨ニッポンが最悪のドツボにはまる可能性
http://kkneko.sblo.jp/article/93046598.html

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2014年04月16日

今年の小笠原/公海調査捕鯨からの撤退を

◇今年の小笠原

 先週同地を訪れた人からいただきました。
 ギスギスした話ばっかりしてきたので、たまには目の保養に、微笑ましいザトウ親子の写真をお楽しみください(^^;;
 お母さんがずいぶんのんびり屋さんだったみたいで、おチビさんがはしゃぎまわる姿を存分に堪能できたそうです。ウォッチング船の船長さんも、こんなのは初めてだとのこと。
 最後の陸に上がったクジラは、小笠原WW協会にある海洋堂のフィギュア(非売品)。。

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 小笠原は日本、そして世界でもモラルを守った理想に近いホエール・ウォッチングが根付いている場所。時間をかけて、クジラたちもヒトが危害を加えない存在だと学習してくれたから、こうして距離を縮めることができたわけです。
 近すぎず、さりとて遠すぎず、お互いの存在を意識しながら、過度に干渉しない。野生動物とヒトとの最も望ましい関係。
 他の生きものに対して生殺与奪の権利とその能力を持つ万物の霊長≠ニして、威張り散らしながら自然の豊かさを奪うのではなく、他の生きものたちとともに自然を分かち合っているのだという事実をしっかり認識し、あくまで謙虚に自然に向き合うこと。

 どうか、小笠原のザトウクジラたちと同じように、はるか南の氷の海で命を謳歌するクジラたちにも平和が訪れますように。

 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 この15日、鯨研・共同船舶・日本捕鯨協会という3つの頭を持つキングギドラじみた組織が、威勢よく炎を吐き出す怪物の巣窟・永田町で、各党の国会議員ら関係者を招き、大々的な鯨肉パーティーを兼ねた決起集会を開いたとのこと。

 議員の皆さん。
 出水や釧路など、全国各地の水辺で、大勢の日本人の目を楽しませてくれるツルやハクチョウたちを、この国は(それなりに)手厚く保護しています。もし、地域の歴史・文化と切っても切れない関係を持つ、まさにかけがえのない日本の文化にほかならない野鳥たちが、日本の200海里を出た途端、赤道を越えてやってきた南半球の国の船に、年間何百羽も殺され続けたとしたら、日本の愛鳥家たちはどう思うでしょう?
 
「季節のたびに訪れ、目を楽しませてくれる鳥たちを、あなたたちがたくさん殺していることで、私たち日本人はとても悲しい気持ちでいっぱいです。どうかやめていただけませんか? あなた方が自分たちの国の野鳥を殺すことに対しては、胸が痛むこととはいえ、文句を言うつもりはありません。けれど、せめて、私たちの国に渡ってくる鳥たちだけは、どうか見逃してやってくれませんか?」
 そうお願いしても、件の南半球の国は「Xマスの焼き鳥は長い歴史を持つ俺たちの神聖な伝統文化だ! 貴様たちの感情論など知ったことか!」と罵るばかりで、耳を一切貸してくれなかったとしたら、あなた方はどんな気持ちになりますか?

 日本がこれまで、南半球の人たちの文化や価値観を踏みにじりながら、南極海のクジラに対してやってきたことは、まさにそういうことです。

 あなた方の独善的な振る舞いは、私たち日本国民の目から見て、あまりにも目に余るものです。
 引き際を見極め、潔く身を引くことは、政治家として決して恥ずかしいことではありません。
 今回の判決は、この国が自制心を取り戻し、国際社会との正常な関係を取り戻すために、国際司法裁判所が差し出してくれた救い≠フ手とさえいえるでしょう。
 これ以上、飽食の国の身勝手な価値観を、南極の自然と野生動物、彼らに関心を持つ世界中のたくさんの人たちに対して、押し付けるのはやめてください。
 いまこそ公海調査捕鯨からの撤退という英断を!!
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2014年04月13日

捕鯨ニッポンが最悪のドツボにはまる可能性

◇捕鯨ニッポン、最悪のドツボにはまる!?──ICJ完敗が外交にもたらす深刻な影響

 おかげさまで、前回の記事へのアクセスが掲載後1日で1万アクセスを突破しました。やはり、調査捕鯨国際裁判に対する皆さんの関心はそれだけ高いようです。
 マスコミ記者の方も、判決文中の例の箇所に着目してくれました。タイトルはちょっと変ですが(国際社会を前に建前を貫かれるのも困るし・・)、外国人技能実習制度の問題も例に挙げ、よくまとまっています。アナログ版でも掲載してほしいところ。


■調査捕鯨のオウンゴール 建前を貫く覚悟が大切 (4/13,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO69790750S4A410C1TY7000/?dg=1


 日本政府も科学的調査を目的に掲げて調査捕鯨を実施してきた。だが本川長官の発言では別の目的がはっきりしている。本音と建前に当てはめるなら、科学的調査は建前で、鯨肉の安定供給が本音という構図だ。
 この使い分け自体が見苦しいのは言うまでもない。が、それに劣らず問題なのは、日本の捕鯨政策の責任者が公の場で、建前をないがしろにする本音を開陳したことだろう
 この発言の2年前、日本の調査捕鯨の実態は商業捕鯨だと主張するオーストラリアが、国際司法裁に中止を求めて提訴していた。係争中だったことを長官は知っていたはずで、ワキが甘いと言うしかない。周知の通り日本は豪州に敗れた。
(引用、強調筆者)
 
 この日経記事で「やっと出てきた」という感じですが、判決文とその波及効果について、きちんと冷静に分析したメディアがまだ少ないのは残念なことです。
 国際司法裁判所(ICJ)の公表したプレスリリースをわざわざ訳してくれたのは、律儀な反反捕鯨活動家君ですし、筆者も判決文のごく一部を紹介しただけにすぎません。本来なら、外務省/日本政府が率先して判決文全文の和訳版をホームページ上で公開し、広く国民に知らしめるべきだと思うんですけどね。鶴岡代表の冒頭と最終の口頭弁論はしっかり載っけてるんだし。
 まあ、これ以上恥をさらしたくないという気持ちもわからなくはありませんけど・・。でも、一流国際弁護士の高額報酬分を含め、多額の税金をつぎ込んだ国際裁判デビュー戦の試合結果≠ナある以上、敗因の分析も含めて国民に詳細に説明するのは国の義務のはず。
 ただ、そんな余裕すらないほど、彼らは切羽詰まった状況に追い込まれているのかもしれません。


■宮城沿岸などの調査捕鯨 実施か慎重に検討 (4/11,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140411/k10013656931000.html


 これらの海域での調査捕鯨は、中止を命じた判決の直接の対象にはなっていません。
 しかし政府は、捕獲する頭数など調査の方法などによっては、今後、判決が適用される可能性があるとして調査方法の検証を始めており、予定通り調査捕鯨を実施するかどうか慎重に検討を進め、来週にも結論を出すことにしています。
(引用)


 皆さん、奇異に感じませんか?
 JARPNU(北西太平洋調査捕鯨)三陸沖沿岸調査の名目で行われるこの調査、事業主体は共同船舶ではなく、沿岸捕鯨事業者の組合に相当する地域捕鯨推進協会です。工船モラトリアム違反に該当する捕鯨母船・日新丸を運用するでもなく、操業場所もサンクチュアリ決議違反に当たる南緯60°以南の南極海からは遠い日本の二百海里内、目標捕獲数は60頭前後で対象種はミンククジラ1種のみですから、JARPAUで追及された対象種拡大・捕獲枠増大の問題も、相対的には大幅に小さいといえるでしょう。唯一引っかかるとすれば、胃内容物等の生態解明を目的とした調査手法について、非致死的な代替案を検証したかどうか。実際、バイオプシーによる脂肪酸解析という手法があり、この点は確かに突っ込まれても当然なのですが・・。
 いつも居丈高な水産庁が、内外の誰の目から見ても、少なくともかなりマシ≠ノ見える沿岸調査で、「慎重な検討」を強いられ、実施するかどうかさえ明言を避けたのには、それなりの理由があるはずです。

 一方、それと対照的な反応を示したのがこちらの当事者。

■15年度以降に調査捕鯨再開へ 鯨研、米地裁に意見書提出 (4/14,共同)
http://www.47news.jp/CN/201404/CN2014041201001846.html


 日本政府は、捕獲頭数削減など計画内容を変更し15年度以降の再開を目指す考え。鯨研は内容の異なる計画で、15年度以降の調査捕鯨実施は、これまでの計画を対象にしたICJの判決に背くものではないと説明している。(引用)


 見出しの前半分だけ見ると、国際裁判にずっと注目してきた人たちはみなギョッとしたところでしょうが、これは明らかに鯨研の先走り。国際条約附表に基づき審査する国際捕鯨委員会(IWC)ではなく、一組織の事情で因縁の相手と争うことになった米国地裁に対して、「自分たちは再開したい! するつもりだ! するぞ!」という意見を送っただけ。
 そうでないはずがありません。当の水産庁が、ジリジリしながら待たされている沿岸捕鯨事業者に対し、直前まで実施を明言できないのですから。
 むしろ、水産庁トップの致命的な発言をはじめ、自業自得で調査捕鯨再開の可能性が刻一刻としぼんでいく中で、破れかぶれの反応を示した、というのが正解かも。族議員や外野の応援団が、シーシェパード(SSCS)とのプロレスに引っかけたSOS要請≠ノ応じ、南極海での続行のゴリ押しを手伝ってくれるものと、期待してのことでしょう。

 莫大な税金を投入して債務超過団体に転落した身を引き上げてもらった当事者が、どれほど「絶体絶命のピンチ」を叫ぼうと、国民も、合理的な現実主義者が多数を占めていいハズの政府関係者も、今回ばかりは「じゃあ、救済してあげる」と二つ返事で請け合える状況にあるとは、筆者は思いません。
 賢明にして優秀なる外務官僚諸兄は、きっとお気づきになられたでしょう。
 今回のほぼ完敗に近い敗訴が、日本の外交戦略に致命的な打撃をもたらす爆弾となりかねないことを。
 いざという場面で使うはずだったカードがゴミ屑と化し、代わりに敵の手に有用なカードを渡してしまったかもしれないことを。

 前回の続きになりますが、いま日本政府の頭を悩ませているのは、他の国からJARPNUまでICJに訴えられやしないか、ということです。
 最初に思いつく候補として米国を挙げ、なおかつ米国自身が提訴する可能性は高くないかもしれないと指摘しました。そして、他にも該当する国があると──。
 ここで、その2つの国を、仮にA国B国としておきましょう。
 そして、日本との間で懸案になっている問題を、A国とのT島問題B国とのS諸島問題として
おきましょう。
 ・・・・・・。
 バレバレな感じですが、まあいいよね(^^;;
 訴えるはずがない、とおっしゃる?
 そうとばかりも言えないことを、これから説明していきましょう。

 A国B国は、ともにIWCに加盟しています。そして、ともに北西太平洋に面しています。
 しかも、両国はユニークな位置づけにありました。日本の主張にそっくり右へ倣えしてきた、カリブ海、太平洋、アフリカの加盟国は、日本の水産ODAと引き換えにIWCの票を売っただけで、自分たちが南極海などで捕鯨を始める可能性はゼロです。そんな中で、A国とB国だけが、独自のスタンスを取っていたといえます。アイスランド、ノルウェー、デンマーク(フェロー諸島)、ロシアとは別に。
 ちなみに、ロシアが日本を訴える可能性もありますし、その戦略的意味合いもこれから述べるA国B国のそれに近いものがあるかもしれません。
 これまでのIWC報道では、二国はどちらかというと日本に同情的、と報じられてきました。しかし、この2国はただ自国で捕鯨を行う可能性を吟味していたにすぎません。潜在的捕鯨国というわけです。
 A国では現在でも地方で鯨肉が消費されており、主に問題の大きな混獲という形で提供されています。B国では現在捕鯨は行われていませんが、伝統捕鯨はありました。そもそも、日本に古式捕鯨の技術が伝わったのは同国からだったという説もあります。また、B国がある意味で最も商業捕鯨参入のポテンシャルが高い国であることも、日本国内の一部の関係筋が指摘しているところです。
 「捕鯨国同士はいつでも利害が一致する」というのは、もちろん意味のない前提です。他の産業を見ても、歴史を振り返ってみても。それは、現在南極海・母船式捕鯨になど興味のないノルウェーとアイスランドが、常に日本と同じスタンスだったわけではないことからも明らかでしょう。
 
実は、A国は日本と同じように「調査捕鯨をやりたい」と、IWCの場で表明したことさえあるのです。それはつい昨年のことでした。
 そして、内外の反発を受け、反対派の意見に真摯に耳を傾けたうえで、いったん出した宣言を引っ込めたのです。まさに捕鯨ニッポンとは対照的な振る舞い。捕鯨に限らず、ここまで大人の対応ができる政治家は、残念ながら今の日本にはいそうもありませんね・・。


■韓国の調査捕鯨参戦宣言が招いた波紋 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/56904118.html
■韓国調査捕鯨断念報道 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/67764403.html


 記事中に国名が入っちゃってますが、とりあえず気にしないでください。。。
 続いてB国ですが、IWCでの立場はやや日本よりだったものの、同国内では捕鯨に対しさまざまな意見が聞かれます。今回のICJ判決に対しても、日本に同情的な声から辛辣な批判まで多様な主張がある模様。ネットメディアの捕鯨報道に関する限り、B国は別に検閲などしておらず、日本よりむしろジャーナリズムの公平性が保たれているくらいかも・・。


■調査捕鯨に中止命令、中国では矛盾指摘の声も=中国版ツイッター|Searchina
http://news.searchina.net/id/1528607
■違法な捕鯨が暴き出す“日本人の腐った根性”―中国メディア|ZINHUA.JP
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/379038/
■中国発捕鯨批判 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/34860899.html 


 こちらも国名が入っちゃってますが、同じく気にしないでください。。。。
 では、両国が本当に日本を訴えられるのか、またその気があるかどうか。
 まずA国自身が国際的な批判を受けて調査捕鯨計画を撤回したにもかかわらず、AUS・NZとの裁判で違法認定された日本が、ほとんど同じ内容の大規模調査捕鯨をいけしゃあしゃあと北西太平洋で続行するとなれば、同国とその市民にとっては面白いはずがありません。
 しかも、おそらく同国の計画した調査捕鯨の内容は、近海に限った小規模なもので、少なくとも日本のJARPAUに比べればはるかに違法性が少なかったはずなのです。
 つまり、A国にはJARPNUをICJに訴える大義名分が十分にあるのです。
 そして、同じくB国にとっても、北西太平洋の資源を日本が事実上占有している状態に、いい顔をするはずはないでしょう。ICJが違法性を指摘した以上、B国がここぞとばかり追及しない道理はないわけです。
 今回の訴訟では、B国出身の判事も含まれていました。某週刊誌がどうでもいい記事を書いてるようですが。。
 また、A国はハーグで大使を傍聴させていたことを、捕鯨擁護記者が確認。

■元産経木村正人氏もやっぱりトホホ反反捕鯨記者 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/73531621.html

 前回も指摘しましたが、両国が今回の日本とAUS・NZの訴訟の経緯を、細心の注意を払って見守っていたとしても、何ら不思議はありません。
 この訴訟への対応が、T島S諸島の問題を睨んだものだということは、当の日本政府関係者もマスコミも、あっけらかんと言いふらしていたわけです。聞いていないはずがないでしょう。


 両国とも、上記したとおり大義名分はあります。
 しかし、建前とはまったく別の理由で、日本を提訴することが大きな意味を持つと考えるかもしれません。日本が公にしていた裏の動機と同じく。
 ICJはすべての国連加盟国に開かれ、さまざまな国に活用されているとはいえ、訴訟コストはバカにはなりません。日本はこれまでICJで争ったどの国よりも、無駄金を投じたといえそうですけど・・。
 とはいえ、A、B両国は、その価値に十分見合う対価とみなすことでしょう。しかも、このケースに限っては、非常に低コストで済む可能性が高いわけです。事前提出資料はAUSのそれを参考にすればよく、後述するように、審議の準備の方は不要にさえなるかもしれません。
 また、AUSとNZのように、タッグを組むことも可能。むしろそのほうがお互いメリットになるでしょう。


 さて、A国B国が、「日本のJARPNUは国際捕鯨取締条約違反だ」とICJに訴えたとします。内容はAUSとほぼ同じ。
 この両国は、ICJに対して義務的管轄権受諾宣言を提出していません。
 ですから、AUS戦と異なり、日本はあっさりと逃げられます。AUSに対しては先決的抗弁を使う手法があり、そのほうが合理的だったのですが、その手続さえ不要です。
 確実に負けるとわかっているのですから、合理的に考えるなら、応訴しないで無視するのは当然のこと。
 しかし……そこで「日本は逃げたぞ!」と言われるわけです。
 国際司法裁判所に違法性を指摘されながら、間違いなく同様に違法な調査捕鯨を、対象外だという理由で別の場所で強行してしまう。判決に従うどころかICJの権威に泥を塗る、国際法規を重んじる精神など欠片も持ち合わせない国として、徹底的に批判されるでしょう。ついでに、相手がAUSのときは応じたのに、同じアジア諸国であれば無視する点も、一種の差別という謗りを免れないでしょう。
 話はそこで終わりません。
 今度は日本側がいよいよT島S諸島問題で両国を訴えようとしたとき、やはり彼らは同様に簡単に逃げることが可能です。
 しかし……そこで両国には格好の言い訳が与えられます。
「おあいこじゃん」
「先に逃げたのはそっちでしょ?」
「判決を守ろうとしない、調子のいい国の相手なんかしてられないよ」

 国際社会も、「まあ、どっちもどっちだね」という評価を下すでしょう。

 そもそも、日本政府が調査捕鯨裁判を、自国の絡む国際紛争(とりわけT島、S諸島)を処理するためにICJを活用するモデルケースとみなしたのは、次のような狙いとシナリオがあったからでした。
 本音では重要な国益だとは考えていないクジラで、引き分けに近い、あるいは実質勝訴といえる軽い#s訴を受け入れ、国際社会に対して自分たちが国際法規を尊重する模範的な優等国なのだということを精一杯アピールする。
 そして、本丸≠ナAB両国を土俵に引っ張り上げ、あるいは逃げられたとしても、そのことによって自分たちの正当性を声高に世界に知らしめる
──という。
 ところが、日本の思惑は大きく外れてしまいました。軽い#s訴で済むはずが、重い#s訴になってしまったのです。水産庁長官ら、捕鯨サークルのポカで。

 ここでもし、族議員や捕鯨サークルのわがままを受け入れ、JARPNUを小手先の変更で済ませたり、南極海での再開を強行するようなことになれば、国際社会から「なんだ、日本は口では守ると言いながら、判決に従う気なんて全然ないじゃないか」と強い批判を浴びるでしょう。優等生であることをアピールするはずが、脱法国家のイメージがさらに強化されてしまうのです。そうなれば、AB両国を睨んだ日本の戦略は台無しになってしまいます。
 逆に言うなら、日本からICJオプションを奪う、少なくともその効果を大きく減殺してしまえる非常に有効な手段を、日本はAB両国に対して与えてしまうことになります。

 日本には、両国のJARPNU提訴に対し、逃げずに受けて立つという選択も一応あります。AUSの提訴に対してそうしたように。
 しかし、その場合、200%負けが確実の茶番と化すわけです。 まさに究極の不合理。
 いくら高いギャラを積まれたって、海外の弁護士は絶対に日本の依頼に応じるはずもなし。免責事項がついても、看板に傷がつくのは誰だってごめんです。お人好しのワロー氏に代わって証人を引き受けてくれる海外の研究者なども、見つかりはしないでしょう。前回負けた京大の法学部教授他、代表団は全員日本人で構成するしかないでしょうね。
 顔ぶれは変わっても、ICJ判事たちはそれこそうんざりするでしょう。「AUSとの裁判で既に指摘されたことを、なぜ守ろうとしなかったのか?」と、日本が一段と厳しく責任を問われるのは間違いありません。
 内外のメディアはシラケるばっかり。欧米豪の市民は、特にクジラ好きでなくたってAB両国を応援するでしょう。各国政府も沈黙するしかなし。
男なら、負けると分かっていても戦わなければならないときがある(〜某昔のアニメ)! どうだ、逃げずに戦ってやったんだぞ、偉いだろ! もう1回、(領土で)尋常に勝負!!」
 満身創痍でそんな見得を切ってみせたって、ウケるのは国内のサブカル世代のネトウヨだけでしょうね・・。
 裁判に応じようと応じまいと、日本のイメージダウンは必至です。
 最近の日本の首相の猪突猛進ぶりに業を煮やしているAB両国にとっては、低リスクで得るものの大きい、検討に値する戦略だと思いませんか?

 

 正直、筆者自身は領土のことなんて知ったこっちゃありません。
 大切なのは、命、自然、そして平和。
 日中双方の識者が指摘するとおり、尖閣諸島の主権をめぐる問題で、両国にとって恩恵を最大化できる選択は「永久棚上げ」です。
 台湾との間で、水産資源管理の点では十分とはいえない、当の八重山の漁業者にも納得のいかない拙速な漁業協定を結べるくらいなら、日中台で公平・公正かつ厳格な資源管理に基づく漁業協定を結ぶべきであり、またそれは可能なはず。
 日中および米国が真剣に取り組むべきは、緊張緩和・軍縮のための膝詰めの交渉のはずです。
 韓国との間の歴史問題等にしても、未来志向といいつつ談話を見直そうとしたり、バカげた観測気球を打ち上げ続けたり、やってることは常に後ろ向きでは、米国に愛想をつかされて当たり前です。竹島は韓国が実質的な施政下に置いていますが、交渉の前提となるはずの慰安婦問題をはじめとする歴史認識で復古主義を前面に押し出すようでは、相手を硬化させるばかりで、対話が進むはずがありません。

 とはいえ、とくに保守主義の立場でなくとも、領土問題に関しては非常に強い関心をお持ちの方も少なくないでしょう。そんな諸兄のために、この問題をA国B国に利用されないようにするための対処法を提案したいと思います。
(「領土なんかより鯨肉のほうがずっと大事な国益だ!」と言えちゃうヒトたちには、筆者から申し上げることは何もありませんけど。。)
 日本が、自らの犯した重大な失策を埋め合わせる方法は、やはりひとつしかありません。
 国益としては(少なくとも領土に比べれば)実に瑣末でチッポケな、特定の事業者と癒着した官僚・族議員の利権のためでしかないクジラを、きっぱりとあきらめること。
 可及的速やかに、疑念を差し挟む余地がないほど判決を遵守するのがベター。要するに、一番手っ取り早いのは、公海からの完全撤退です。詳細は前回の記事をご参照。
 JARPNUをほとんど内容を変えずに今年強行したり(もう時間はあまり残されていませんが)、再来年の南極海での再開を宣言するなどは、もちろんもってのほか。
 そのとき日本は、クジラなんぞよりはるかに大きなものを失うことになるかもしれませんよ──。


 領土問題で、3国がお互いに頭を冷やしたうえで、罵り合いにならない実のある話し合いのテーブルに着くまでには、まだまだ長い時間を要することでしょう。
 日本はここで、最低限の自制心を、クジラから、今回のとても痛い敗訴から、真剣に学ぶべきです。


参考リンク:
−メディアが伝えぬ日本捕鯨の内幕 税を投じて友人なくす|WEDGH Infinity
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/721
−ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン (前回記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html


 次回は今年の小笠原のザトウクジラの画像をお届けしますニャ〜

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2014年04月12日

ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン

◇ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン

■JUDGMENT|WHALING IN THE ANTARCTIC (AUSTRALIA v. JAPAN: NEW ZEALAND INTERVENING)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18162.pdf

 国際司法裁判所(ICJ)の調査捕鯨訴訟、筆者も政府関係者に倣って判決文を精査しているところですが、読めば読むほど日本側に不利なことが明らかになってきた感じ。
 例えば、ICJが認めているのは、国際捕鯨取締条約(ICRW)8条に書かれた定義上の調査捕鯨のみで、第一期のJARPAについては本件の争点ではないと判断を完全に保留しています。双方の言い分を一応紹介したうえで、「今回の件とは関係ないから、あんたたちの意見の不一致にコートは取り合わないよ」といっているわけです。巷で言われているように、決して日本の調査捕鯨を認めたわけではありません(#99-108:ICJ判決文)。認めたのはIWCへの事務手続きだけ。

 The legality of JARPA is not at issue in this case. #99(p35)

Overall, the Parties disagree whether JARPA made a scientific contribution to the conservation and management of whales. The Court is not called upon to address that disagreement. #108(p37)


 また、非致死調査の検討がきわめて不十分だったことについては、AUS側の主張をそのまま認めており、「ザトウとナガスの致死調査なしでも一定の成果が挙がっているのに、なぜクロミンクで致死調査にこだわるのか?」と問題視しています。「ザトウとナガスを計画数どおりに殺せ(さ)なかったことが問題で、もっと増やしゃよかったんだ」という擁護派の主張は明らかに誤っています(:ICJ判決文)

The Court also notes Japan’s contention that it can rely on non-lethal methods to study humpback and fin whales to construct an ecosystem model. If this JARPA II research objective can be achieved through non-lethal methods, it suggests that there is no strict scientific necessity to use lethal methods in respect of this objective. #211(p62)

 その中で、敗訴を決定付けた日本側の致命的なポカを発見しました。


The use of lethal methods in JARPA II focuses almost exclusively on minke whales. As to the value of that species, the Court takes note of an October 2012 statement by the Director-General of Japan’s Fisheries Agency. Addressing the Subcommittee of the House of Representatives Committee on Audit and Oversight of Administration, he stated that minke whale meat is “prized because it is said to have a very good flavour and aroma when eaten as sashimi and the like”. Referring to JARPA II, he further stated that “the scientific whaling program in the Southern Ocean was necessary to achieve a stable supply of minke whale meat”. In light of these statements, the fact that nearly all lethal sampling under JARPA II concerns minke whales means that the distinction between high-value and low-value species, advanced by Japan as a basis for differentiating commercial whaling and whaling for purposes of scientific research, provides no support for the contention that JARPA II falls into the latter category.
  #197(p58)

 これはオーストラリア(AUS)側が昨年6/28の口頭弁論時に指摘してみせたもの。

■Public sitting held on Friday 28 June 2013, at 10 a.m., at the Peace Palace, President Tomka presiding, in the case concerning Whaling in the Antarctic (Australia v. Japan: New Zealand intervening)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/17400.pdf

60. As recently as October 2012, the Director of the JFA openly admitted to a Japanese Parliamentary Subcommittee that maintaining its purportedly “scientific” whaling program in the Southern Ocean was necessary to perpetuate the market in minke whale meat. (Tab 108):
“Minke whale meat is prized because it is said to have a very good flavour and aroma when eaten as sashimi and the like . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
[T]he scientific whaling program in the Southern Ocean was necessary to achieve a stable supply of minke whale meat.”12
 (p18)


 で、該当する国会答弁はこちら。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025318020121023003.htm

第180回国会 決算行政監視委員会行政監視に関する小委員会 第3号(平成24年10月23日(火曜日))

○本川政府参考人
 少し補足をさせていただきます。
 被災前でありますが、調査捕鯨として大体八割、三千八百トン、七百トン前後をとってきておりますが、そのうち南極海が二千トンであります。ただ、これはミンククジラというものを中心にとっております。ミンクというのは、お刺身なんかにしたときに非常に香りとか味がいいということで、重宝されているものであります。
 それから、北西太平洋で千七百トン程度、二十二年はとっておりますが、そのうち百二十トンが沿岸の調査捕鯨であります。千五百トン強はいわゆる鯨類研究所がとっている鯨であります。ただ、こちらはイワシクジラとかニタリクジラというものを中心にとっております。
 それから、沿岸の小型捕鯨というのが二十二年で四百十七トン捕獲しておりますが、これはツチクジラという、イルカに非常に形が似た鯨でありまして、ジャーキーのような、干し肉になるようなものでございます。この前、鮎川に行かれたときに、鮎川の捕鯨の方がとっておられましたが、これはまさにツチクジラをとる業を営んでおられる方でありまして、この方が南氷洋でとられるミンククジラを扱うということはまずないのではないかなというふうに思っております。
 したがって、ミンククジラを安定的に供給していくためにはやはり南氷洋での調査捕鯨が必要だった、そういうことをこれまで申し上げてきたわけでございます。
 それから、今のデータにつきましては私どものホームページで公開させていただいております。積極的に提供申し上げなかったことについては申しわけないというふうに申し上げたいと思います。
(中略)
○小野寺小委員
 長官、これは誰が見たって今回違和感がありますよ。復興の予算でこうやってつけるというのはおかしい。だから、もうこれはだめということになるんだけれども、迷惑しているんだ、あなたのおかげで。
 誰が迷惑しているかというと、鯨産業の人全体が迷惑しているんですよ。こうやって、何か捕鯨がいかにも復興予算の流用の悪い人にとられてしまったら、捕鯨事業全体が困ってしまう。実際、この石巻地区だって、日本だって、やはり捕鯨というのは大事な文化ですよ。ですから、あなた方がそういう変なことをするから逆にこういうことに迷惑がかかるんだから、しっかり必要な予算はとっていく、しかも本予算でとっていく、それをはっきり言っていただきたい。
(引用、強調筆者)

 まあ・・誰がどう見たって、調査捕鯨が商業捕鯨に他ならないことを自ら白状しているとしか思えませんわな・・・
 とはいえ、ここで本川長官個人のうかつさを責めたてても始まりません。「そういうことをこれまで申し上げてきた」とは、歴代の水産庁長官が調査捕鯨についてそのように説明してきたことを意味するのですから。
 そして、質問に立った国会議員らも、「調査捕鯨に対する疑義を招きかねない問題発言だ」として撤回・修正を求めることなど誰もしていないわけです。風評被害≠心配して啖呵を切った代表的な捕鯨族議員、小野寺氏も含め。
 これは言わば、捕鯨サークルという組織の慢心からきた身から出たサビ

 このときの衆院委員会質疑は、東北大震災復興予算流用に関するもの。
 水産官僚だって、族議員に「何とかしろ」と尻をたたかれ、深刻な鯨研の赤字問題を解決するために復興予算に飛びついたんでしょうが・・。

■日本鯨類研究所(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%AF%A8%E9%A1%9E%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80

震災復興資金流用への批判
税金投入問題に派生する形で2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の震災復興資金のうち、石巻の復興の為として約23億円が調査事業費として計上され、うち18億円が調査捕鯨の費用に、5億円がシー・シェパード対策に使われた事実に対する批判があり、当の石巻市からも地元に恩恵がない、当地の関係者から調査捕鯨で捕った鯨は一頭も流通していないとされており。この件で衆院決算行政監視委員会の理事である自民党の平将明衆院議員は調査捕鯨の必要性を訴えられたが調査したら鯨肉の在庫は余っており、役所に嘘をつかれたと非難している。また、2012年10月23日の衆院決算行政監視委員会で、水産庁の本川一善長官は18億の調査捕鯨の費用で当時の8億7千万円の債務超過を解消してゼロにした旨を答弁した。尚、この件は最初に英豪メディアで取り上げられたものの、この報道を見て災害の義援金が使われたと誤解した人からの抗議が豪日本大使館に殺到した為、義援金使用に関しては否定のコメントを出した。
(引用、強調筆者)

 調査捕鯨の本質を最もわかりやすい形で、当事者の口から、国会という場で説明させたのは、まさに復興予算を平気で流用してしまう捕鯨サークルの体質でした。
 この問題が海外メディアに取り上げられたことで、AUS政府にも証拠として提供されることになったのでしょうね。
 ちなみに、AUS側の審議前の提出資料には含まれていないため、隠し玉として用意されたのでしょう。AUSの今回の提訴が、国内受けを狙った内向きのパフォーマンスではなく、本気で結果を出そうと知恵を絞った証ともいえますが。
 してみると、水産庁の最高職から自爆発言を引き出し、ICJに思い切った判決を下させるうえで大きな貢献を果たしたのは、ほかでもない、捕鯨サークルや国会議員たちを復興予算流用問題から逃れられない状況に追い込んだ日本国民、ということになるでしょう。具体的には、調査捕鯨に対して特に含むところがあったわけではなく、震災復興予算の使われ方への関心と公平な視点を持ち、調査捕鯨が聖域≠ニして見過ごされることをよしとしなかったジャーナリストと研究者、そして取り上げざるを得なくなった多くのマスコミ、「これはひどい」という正常な反応を示してくれた、被災地を始めとする全国の国民の皆さん。まさに殊勲賞ものですね。

 ほぼ完敗といえる敗訴に至った理由は、まず一義的には、演出によるイメージ戦略でもって不利な戦況を乗り越えようとした外務省の戦術のマズさにありました。しかし、勝ち目のない負け戦をあえて受けて立たせたのは、理をわきまえず「ともかく勝て!」とせっついた自民党捕鯨議連であり、TPP首席担当と兼任させる形でわざわざ外務官僚のエースを起用した安倍政権に他なりません。
 しかし、最初から勝ち目のない戦にしてしまった主因は、もちろん捕鯨サークル自身にあるわけです。責任の大きい個人の名を挙げるとするなら、自爆発言の本川一善現水産庁長官と、ICJ/AUS&NZにツッコミどころを山ほど提供したJARPAUを立案・主導した小松正之氏ということになるでしょう。AUSが口頭弁論で用意したプレゼン資料の中には、小松氏の「It's none of your business!(余計なお世話だ!)」発言や、「捕獲枠拡大のおかげで鯨肉が安価に提供できるようになった」と紹介する自著なども入っていました。クジラ本、山ほど書かれましたもんね・・。
 いずれにしても、こんなバカげた訴訟の負担を国民に強いた責めを負うべきは、族議員と歴代官僚を含む捕鯨サークルであることは間違いありません。

■調査捕鯨国際裁判敗訴は全て安倍と自民党捕鯨議連の責任|Togetterまとめ
http://togetter.com/li/650580


 さて……あるとき、とある国が何年もの間、赤道を越えた南極に向けてぶっ放し続けていたのは、人工衛星などではなく、国際条約に違反するミサイルだったと、世界で最も権威ある司法機関からきっぱりと駄目出しを受けました。
 ところが、「人工衛星か? ミサイルか?」が問われていたにもかかわらず、その国の中ではどういうわけか、「うちのミサイルは、中世の花火に歴史をたどれる美しい伝統技術だ! 南極に向かって打ち上げ続けろ!」というわけのわからない屁理屈をマスコミが盛んに流し続けています。国民の大多数が、「あれが花火でも人工衛星でもない、ミサイルだってことは、とっくにわかってたさ・・」とつぶやいているのに。
 前約束で、国際法を遵守する旨宣言した以上、「仕方ない、これ以上ミサイルを南極に飛ばすのはやめよう」と、現実に向き合う政府関係者も多い中、なおも「うるさい! 国際条約機関から脱退してでも、ともかくミサイルを南極に飛ばすんだっ!」と息巻いている人たちもいます・・

 一体日本は、そんな目も当てられない国だと、世界から白い目を向けられるようになってもいいのですか??

 アイルランドの提案、米国の打診、外部専門家を招き多くの関係者の時間と労力を注ぎ込んだIWCでの歩み寄り交渉──あたかもミサイル人工衛星と嘯き続ける近くの独裁国家と見まがうような、強硬な唯我独尊の姿勢を貫き、テーブルをひっくり返してきたのが、捕鯨ニッポンに他なりません。

 先日、地方紙の一紙で産経のポエムとは比較にならない、思わず読者をうならせる名コラムが掲載されました。以下はその一説。


 (デ・ソト提案に沿った交渉の)当時「南極海での調査捕鯨中止」は、日本にとって強力な交渉カードだった。もし、このカードを交渉で切っていれば、得られたものは大きかったはずだ。だが、今回の判決でこのカードの意味はなくなってしまった。(引用〜岐阜新聞・時言「捕鯨をめぐる幻の妥協」)


 指摘されているとおり、裁判所で国際条約違反と認定されてしまった時点で、日本は立場も、代わりに何かを要求する権利も、すべて完全に失ってしまったのです。その時点では、一定範囲の沿岸捕鯨を許容してもらえる余地もまだあったというのに。
 しかも、国際裁判至上にいつまでも汚名を刻み込まれる形で。

 日本が自らの愚策の果てに失った誇りを取り戻すには、一体どうすればいいのでしょう?
 なすべきことは、ひとつしかありません。
 それは、世界中の人々に対し、ミサイル人工衛星だとずーーっと偽り続けてきたことを、深々と頭を下げて心の底から謝ることです。
 何年も国際条約を破り続けてきたことが明らかになったのに、一言の謝罪もなく、「失望した」などと逆ギレしたうえ、一切のペナルティなしに済ませようとするのは、あまりにも虫が好すぎるんじゃありませんか?
 もし、日本との間で係争を抱えている国が、同じような振る舞いをしたなら、国内で増殖しつつある新世代のナショナリストたちはきっと、怒り狂って暴動を起こすことでしょうね・・・
 実際、政府関係者はICJでAUS・NZを迎え撃つにあたり、今回の訴訟対応を、対中国・対韓国の領土問題を念頭に置いたICJでの紛争処理のモデルケースとして捉えていると、臆面もなくメディアに語っていたわけです。最強布陣の必勝体制で臨み、負けるはずがないと高を括っていたからなのでしょうが。
 中国や韓国の人々はもちろん、今回のICJ判決を受けて日本がどのように振る舞うかに、非常に大きな関心をもって注目しているはずでしょう。

 無論、世界の日本に対する評価を気にするならば、口先だけの謝罪と反省で終わらせるわけにはいきません。国際社会に対して自らの犯した罪をきちんと償う必要があります。それを具体的に行動で示さなければなりません。

1.南極海からは即時、完全に撤退すること。
 一年間だけ休んだら再びクジラたちの楽園を脅かすべく舞い戻ろうなどとは、二度と金輪際考えないことです。

2.北西太平洋からは段階的に撤退すること。
 カードは失われてしまいました。南極海撤退だけで目こぼしをもらうことを、国際社会に乞うことはもうできません。
 AUS・NZ・米国等には、あらかじめお願いして了承を取り付けることが必要でしょう。現実的な観点から、各国には土下座しつつ、少しばかり猶予期間をいただきましょう。せいぜい3、4年の期間が目処でしょうね。
 その間に、市場縮小のロードマップを提示し、副産物≠セったハズのものの需給を調整するとともに、共同船舶の船員の一時補償と再雇用の支援を国が確実に行うこと。繰り返しになりますが、捕鯨批判派を含め、復興予算流用に厳しい目を向ける国民だって、誰一人文句を言いやしません。
 副産物≠ノついては、都市部の食通どもがネット通販で取り寄せていいものではありません。全量沿岸捕鯨地に回すべし。江戸時代から続くという意味では、資格があるのは太地と和田浦くらいですが、鮎川、釧路は含めていいでしょう。そして、東北の被災地を尻目に自分たちだけ20億の経済効果にありつこうとした、同情の余地など一片もない下関ではありますが、大マケにマケて一定の期間は認めてもいいでしょう。
 どーしてもどーしてもどーーーーしても鯨肉が食べたい!という人は、沿岸捕鯨地に出向いて、現地にさまざまな形でカネを落とし、地域経済に貢献することです。
 学校給食への活用などは無論禁止。こどもたちに食べさせるべきは、地産地消の究極のアンチテーゼというべき南極産の野生動物の肉などではなく、雑穀、地域野菜、地先の海で取れる小魚です。
 捕鯨協会/国際PRがでっち上げた虚飾の鯨肉食ブンカは、ドングリ、ヒトデ、ヒザラガイなどと同じ、地産地消の文化に反しない、身の丈にあった地域の食習慣の水準に回帰するべき。

3.沿岸捕鯨については、乱獲と規制違反の歴史に対する真摯な謝罪と反省を世界に表明したうえで、国際機関の厳格な管理のもと、小規模な地場利用の形で認めてもらうよう、お願いすること。
 今回のICJ判決報道の中で、和田の捕鯨会社は「罪悪感を伴うものにならなければいいが」などとコメントを寄せ、捕鯨業者でありながら日本の伝統捕鯨の精神の真髄を何も理解していないことを露呈してしまいました。あまりにも情けないことです。何のための供養碑だと思っているのだろう? 自分たちも先祖に倣ってやっていることは、形式だけのパフォーマンスにすぎないと思っているのでしょうか?
 また、太地は凝りもせずに次回IWC総会への外遊予算を確保したとのこと。国際会議への出席は、本当に必要ならば政府が費用をもって代表団に加えればいい話。視察に名を借りた地方自治体の議員・首長らの海外旅行は、市民オンブズマンの批判を浴びて久しいですが、どこ吹く風という感じですね。伝統の真珠養殖を潰して画餅の「鯨の海構想」を強引に推し進めることといい・・。太地はご神体への自縄自縛の状態から自らを解放しなくてはなりません。

4.イルカ猟については、追い込み猟を突きん棒猟に切り替えること。また、国連海洋法条約に則りIWCの管理下に置いたうえで、水産庁はデータが不足している対象種・個体群をきちんと調査し、厳格なPBRに基づく捕獲枠を設定しなおすこと。
 
捕鯨と同様、イルカ猟も国際法の観点から問題があることは明らか。イルカフリークの皆さんには申し訳ないと思いますが、筆者はここであえて、かなり譲歩した現実的な提案を示します。ガイアツで追い込まれる前にきちんと襟を正すことが生き残る唯一の道だと、関係者は胸に刻むべきです。


 いやだとおっしゃる? どーしてもどーしてもどーーーーしてもいやだと?
 日本はカードを失ったのですよ。そんな贅沢なことを言えた立場ではないのです。
 東北大石井准教授が指摘されていますが、JARPNU(北西太平洋調査捕鯨)は間違いなく、今回違法認定を受けたJARPAUと同様の問題を抱えています。NHKが報道したように、事業者も海域も船の規模も捕獲数も捕獲対象種も異なる沿岸調査にさえ、水産庁が慎重な検討を強いられているのは、もちろんそれが理由。もっとも、族議員の反発が少ない沿岸調査にしわ寄せをできる限り押し付け、共同船舶の母船式捕鯨の傷をなるべく少なく済ませようとの意図もあるのかもしれませんが・・。
 北太平洋の捕鯨に対して日本を訴える相手といったら、思いつくのはやっぱり米国。ただ、みなさんもご承知のとおり、日米関係は主軸となる貿易・防衛問題で重要な局面を迎えており、米国がクジラで日本にイチャモンをつける余裕はないかもしれません。
 なら安心だと思いますか?
 いや・・ワイルドカードも考えられます。
 もし、どこかの国どこかの国が、日本のJARPNUをICJに訴えたとしたら──日本はクジラよりはるかに大きなものを失うことになるかもしれませんよ?
 次回は、日本がはまりかねない最悪のドツボについて、詳細に検証してみたいと思います。
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2014年04月06日

今こそ南極海捕鯨から全面撤退のとき 日本政府は英断を!

 日本の調査捕鯨をめぐる国際裁判・日本VSオーストラリア&ニュージーランドに対する国際司法裁判所(ICJ)の判決が示されました。

■ICJ Press Release 2014/14
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18136.pdf
■JUDGMENT|WHALING IN THE ANTARCTIC (AUSTRALIA v. JAPAN: NEW ZEALAND INTERVENING)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18162.pdf


 正直驚いています。ここまでの判決が出たことに。
 敗因については、直後に毎日が触れ、また3日には朝日が2面で大きな特集を組んでいます。毎日ブリュッセル支局の斎藤記者は以前かなり偏向した記事を書いたことがありますが、今回はとても冷静かつ的確にまとめてくれています。朝日の編集委員小山田記者は、今のマスコミの中では一番の捕鯨問題通の一人といえそう。これまでも興味深いネタを発掘してきてくれました。いつもミスリードの意図が見え見えな産経記事とは対照的に、記事自体は淡白で、そこはプロのジャーナリストならでは。


■叱責の首相・釈明する担当者…調査捕鯨、日本完敗の訳は (4/3,朝日)
 ※ アナログ版記事見出し:捕鯨外交 自信が裏目 「最強布陣にあぐら」
http://www.asahi.com/articles/ASG42630CG42UTFK01B.html


最低でも数千万円単位の弁護報酬を支払い、世界的権威の弁護士を雇った。完敗はあり得ないとなめていた」(政府関係者)と打ち明ける。(引用、強調筆者)
 欧米諸国では、日本に批判的な記事が目立つ。フランスのフィガロ紙は1日付で「日本は(商業)捕鯨を継続できるよう調査捕鯨プログラムを『でっち上げた』」ために豪州から訴えられたと批判的に報じた。米ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は「判決は南半球のみが対象。クジラを守る戦いは終わっていない。日本は国際的な非難を待たず、すべての捕鯨をやめるべきだ」と同日付の社説で論じた。オランダのトラウ紙は同日付の記事で「中国との尖閣諸島の問題で日本は『国際法のもとで解決を』と強く主張している。ICJ判決を無視すれば、日本の外交的信頼に大きくマイナスになるだろう」とした。 (引用)

■調査捕鯨中止:「透明性欠いた」点、受け入れられず (3/31,毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20140401k0000m030115000c.html


 一方、捕鯨を批判する欧米やオセアニアとの外交交渉で捕鯨問題が常に障害となってきた事実は否定できない。日本が調査捕鯨を断念すれば、外交的には評価を受けることになりそうだ。(引用、強調筆者)

 その傍らで、戦前を髣髴とさせる大本営愛国放送と化しつつあるNHKは、今回の訴訟と関係ないハズの北西太平洋調査捕鯨の画像と主張を混ぜ込んで、実にえげつない誘導解説記事を出しています。主張自体デタラメですが・・。解説の解説≠ノついては下掲リンクをご参照。

■くらし☆解説 「調査捕鯨国際司法裁判所判決の意味は」 合瀬宏毅解説委員 (4/1,NHK)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/184379.html


 こちらはニュースですが、IWC副議長の傾聴に値するコメント。


■IWC副議長 捕鯨方法の抜本的見直しを (4/2,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140402/k10013430391000.html


この中でシュメイ副議長は、「国際司法裁判所の判決は、IWCの加盟国の間で政治的な理由から停滞してきた議論の論点を中立的な立場から明確にした」として、判決を歓迎しました。
そのうえで、日本は現在のやり方のままでは調査捕鯨を続けられなくなったことを踏まえ「鯨を殺さないで行う調査をほかの国と連携して実施するなど、ほかの選択肢があると思う」と述べ、日本は調査捕鯨の方法の抜本的な見直しが必要だという考えを示しました。
(引用、強調筆者)


 今回の調査捕鯨国際裁判については、筆者も市民の皆さんとともに昨年6、7月に行われた口頭弁論を国連ウェブキャストで傍聴し、固唾を飲んで行方を見守ってきました。
 結果的には、筆者の予想(というより期待)にかなり近い判決となったわけです。
 当時の筆者が指摘した問題点と合わせ、判決を受けての筆者と多くの市民の皆さんの感想を、以下のまとめサイトで取り上げていただきました。
 マスコミ記事の細かいチェックまで、大変なまとめを引き受けてくれた富さんに改めて多謝m(_ _)m


■調査捕鯨国際裁判敗訴は全て安倍と自民党捕鯨議連の責任|Togetter
http://togetter.com/li/650580
■調査捕鯨の科学性を解体する|Togetter
http://togetter.com/li/486896
■ICJ調査捕鯨訴訟で日本は負ける|拙ブログ
http://twilog.org/kamekujiraneko
http://b.hatena.ne.jp/entry/kkneko.sblo.jp/article/70305216.html
■Japan will lose the legal suit on of whaling in the Antarctic at the ICJ|拙HP
http://www.kkneko.com/english/icj.htm


 裁判の結果が大きく報じられたこともあり、拙管理サイトにも大きな反響がありました。
 拙ホームページには3日に2100、ブログには2日に1900、3日に2500を超えるアクセスが。これは、ウヨガキ君たちが殺到した調査鯨肉横領(世間的には窃盗)事件のとき以上。はてなブックマークの方にも多くの皆さんに指定をいただいたところ(Ika-netブログのブクマはさらに1桁上ですが)。
 そして、まとめのほうはなんと3日間で驚きの28,000アクセス超え。お気に入り120、つぶやき回数も700以上。
 別の野生動物関連のコンテンツで1万以上の方のご訪問をいただいたことはありましたが、クジラ関連では新記録(^^;;
 数よりも驚いているのは、横領事件のときとは対照的に、非常に多くの方から筆者の指摘に対するご賛同、好意的な反応をいただいたことです。
 判決後のツイッターのタイムラインにも、座布団をみんなにサービスしたいほど名言・名句の数々が流れ、筆者としてはうれしい悲鳴をあげていた次第。

 やっぱりみんな、わかってたんだよね・・・本質を。

 その辺りの事情はマスコミに関してもいえるでしょう。これ以上捕鯨サークルをかばいだてすることが困難な状況になったことが、各紙の社説からもうかがえます。
 残念ながら、これまで精一杯応援してきた後ろめたさが尾を引いているのか、「大変だ、なんとかしなきゃマズイ!」と言いつつ、結論が不明瞭で歯にものが挟まったような言い方が多数。そのせいか、読売、朝日、日経、東京とも、社説に関しては論調が驚くほど似通ってしまっています。どちらかというと、声が大きい捕鯨擁護派に配慮してぼやかした印象。どれも食文化論や食害論、漁業規制脅威論などトホホな主張をこれまでどおり入れちゃってますね(--;; 一方で、過剰鯨肉在庫、収益悪化、復興予算流用問題など、「調査捕鯨に問題がある」ということも、ほとんどのところがはっきりと指摘しています。捕鯨報道のあり方としては、従来からのかなり大きな前進といえるでしょう。
 その中で、一歩リードといえるのが、毎日新聞と宮城県中心の地方紙・河北新報
 河北新報は沿岸捕鯨地である鮎川が圏内にあることから、これまで捕鯨擁護色の強い主張が目立っていました。むしろそれだけに、事態の厳しさも肌で感じたのでしょう。復興予算の流用が象徴するように、東北の沿岸捕鯨者と中央の公海捕鯨事業者との利害はときに相容れず、その際苦汁を味わわされてきたのはいつも沿岸でした。それはこの社説の文中からも明瞭に読み取れます。
 鹿児島の南日本新聞の社説も、冷静なトーンで良質な内容。

■社説:調査捕鯨で敗訴 南極海から撤退決断を (4/2,毎日)
http://mainichi.jp/opinion/news/20140402k0000m070169000c.html

食文化を守るために南極海で商業捕鯨を再開する必要性は乏しい。そのために年間数十億円の国費を使って調査を続ける意味はないだろう。政府は今回の判決を受け入れるとしながらも撤退の意思を明確にしていないが、もう決断すべきだ。(引用)

■調査捕鯨敗訴/「文化」守りつつ政策転換を (4/3,河北新報)
http://www.kahoku.co.jp/editorial/20140402_01.html

 ただ、今回の判決で捕鯨に向けられる視線が厳しくなるのは必至で、国際的な批判にさらされながら調査が続けられるかどうかは疑わしい。
 数年前、国際捕鯨委員会で日本が調査捕鯨を停止する代わりに、捕獲数を大幅削減した上で沿岸や南極海で事実上の商業捕鯨を認める案が出され、各国が前向きに議論したことがある。
 南極海の調査捕鯨から全面撤退し、その代わりに伝統文化とも深く関わる沿岸商業捕鯨の再開に道を開く案を提起する。そうした政策転換もあっていい。(引用、強調筆者)

■[調査捕鯨敗訴] 根本から見直す機会に (4/4,南日本新聞)
http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201404&storyid=55918

 そもそも捕鯨国と反捕鯨国の勢力が拮抗きっこうし、不毛な対立に終始しているIWCの現状をみると、商業捕鯨の再開は望めそうにない。国内では鯨肉離れが進み、ビジネスとして成り立つ見込みも薄い。
 捕鯨政策はとうに曲がり角にきていたといえる。今回の敗訴を根本から見直す機会にすべきだ。(引用)

 ただ一紙、ポエムを2日連続で声高に唱えた産経は、まあサンケイですから・・・

 インターネットメディアになると、熱烈な捕鯨サークル応援団のばら撒くゴミの割合がやや高くなり、サンケイと変わらず斜め方向に思いっきり捻じ曲がった解説もチラホラ。
 しかし、オンラインの論評の中でも、コラムニスト小田嶋氏のコラムが光っています。熱烈な鯨肉ファンに反発を受けることを覚悟のうえ、中途半端に彼らに媚びることなく、ストレートにご自身の考えを述べられており、若い世代を中心に、脳がベーコン化していない日本人の多数が共感を持てる内容です。日経BPのID持ってる方は必見!


■クジラの凱歌|小田嶋隆のア・ピース・オブ・警句
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20140403/262310/


 振り返ってみれば、当の捕鯨サークル・日本政府関係者も、筆者を含むウォッチャーにとっても、予想だにしなかった判決をICJが下した一番のポイントは、ここにあるのではないかと、筆者は思うのです。
 すなわち、私たち日本国民の大半が、程度はどうあれ、調査捕鯨がいかがわしい代物だと感じていた、ということ。
 いかに御用メディアのNHKや産経が、あたかも北朝鮮の統制報道のごとく、国内の捕鯨礼賛派の声ばかりを取り上げ、批判の声を封じ込めようとも、国民の大半が冷静に判決を受け止めるであろうことを、ICJ判事たちは確信していたのでしょう。


 翻って、本当に残念でならないのは、安倍首相と自民党捕鯨議連の反応です。詳細はTogetterをご参照。
 これでは本当に世界の恥

 族議員たちのぶち上げた脱退の主張は非現実的の一言に尽きますが、身内(票田)を意識したくだらないパフォーマンスによって、確定した司法判断にケチが付けられることはあってはなりません。

 これから日本に求められるのは、真摯な反省の姿勢です。
 かつて、米国が内々に持ちかけたり、IWCでも外部専門家を招いて歩み寄りが促されるたびに、日本は唯我独尊の姿勢を貫き、強硬に突っぱね続けてきました。
 日本国民にとっても決して小さくない財政負担を敷いた、科学を擬装した商業捕鯨の延命工作が、こうして脆くも崩れ去ったいま、潔く進退を決するのが、日本人らしさではないのですか?


 日本がやるべきことについて。
 まず、北西太平洋調査捕鯨(JARPNU)について、「今回の判決とは無関係」の一言で済ませず、JARPAUと同様の問題点が存在することは明らかなのですから、自らの手で徹底的に検証することです。本来なら休止が望ましいところですが、最低でも今漁期については大幅に捕獲数を削減すること
 もし、自制心を働かせ、エゴイスティックな振る舞いを改められなければ、そのときは、米国等に北太平洋での調査についてもICJの判断を仰ぐことになりかねませんよ。そしてまた、日本の脱法姿勢は、判事たちの心象をさらに一段と悪化させるであろうことは、想像に難くないでしょう。
 モラトリアム成立時と同じく、外圧によってしか解決できないとすれば、日本人としては無念の一言に尽きますが。
 そして、南極海からは完全に撤退すること。ICJで日本側証人のノルウェーの鯨類学者、ワロー氏が正直に「less than 10」と認めたとおり、また条約そのものが起草時に想定していたとおり、許容範囲は年間数頭です。
 「生態系の解明」を掲げ続けるのであれば、科学的にナンセンスな4鯨種モデルは放棄し、カニクイアザラシ等鰭脚類、ペンギン等海鳥各種、魚、イカ等を含むオキアミ捕食者について、等しい精度で致死ないし非致死の調査を行うこと。いま致死調査を優先する必要があるとは思いませんが・・
 ICJでもこれ見よがしに成果として自慢した、「クロミンククジラの脂皮厚減少の発見!」も、単一種のみの調査では、それがいかなる環境変化の応答なのかという肝腎な答えが得られません。STAP細胞と同じ
 有害物質汚染の調査も、「薄く広く」がこの分野の常識。GPJも声明で指摘していますが、本物の生態系調査・環境調査こそがいま南極圏で求められているのです。


 ようやく花道が用意されました。
 いまなら、「お疲れ様」と関係者の労をねぎらうことができます。
 日本は全国民の雇用が完全保障された共産主義国家ではありませんが、復興予算流用とは異なり、国が関係者に補償することに対しては、筆者のような捕鯨反対派も含め、異を唱える人は日本には一人もいないはずです
 いまなら、国際社会も「日本は英断を下した」と勇気を讃えることができます。
 これ以上、みっともない真似をするのは、世界にをさらすのは、終わりにしましょう。
 いまこそ南極海捕鯨から撤退を!

posted by カメクジラネコ at 21:53| Comment(8) | TrackBack(0) | 社会科学系

2014年03月29日

調査捕鯨に貢がされた「もうかる漁業」補助金

◇捕鯨ニッポンの深い闇──おかげでウハウハ、調査捕鯨に貢がされた「もうかる漁業」補助金

■Press Release 2014/13 The Court to deliver its Judgment on Monday 31 March 2014 at 10 a.m.
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18094.pdf

■土俵際の調査捕鯨 国際司法裁、31日判決 (3/26,朝日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11049088.html
■調査捕鯨、科学か商業か 国際司法裁、31日に判決 (3/28,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2701Z_X20C14A3PP8000/
■Big threat to Japan whaling: Declining appetites | APMobile
http://m.apnews.com/ap/db_306485/contentdetail.htm?contentguid=cDVDpbVo

■そろそろそろそろ国際司法裁判所の判決が|ika-netブログ
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-2f85.html
■03/10/14 Campaign to Alert About Ruling of the Century for Whales
http://www.ccc-chile.org/articulo-15-1112-031014_campaign_to_alert_about_ruling_of_the_century_for_whales.html


 いよいよ秒読みの段階に入ったICJ(国際司法裁判所)調査捕鯨裁判・捕鯨ニッポンVSオーストラリア&ニュージーランド。
 26日の朝日はやや大きな扱いで、一般の読者がわかるよう、調査捕鯨の現状をコンパクトにまとめた記事になっています。
 一方、日経は朝日と趣向がガラリと異なり、判決の予想がメイン。残念ながら、少々認識不足というのが筆者が受けた印象。
 両記事へのツッコミについては拙ツイートをご参照いただくことにして、ここでは朝日記事にあった注目すべき情報について、取り上げたいと思います。
 それがこれ↓

省エネ漁業にする制度を「特例」として適用され、年45億円を12年度から3年間受け取る。(引用〜朝日記事)

 何しろ庶民には縁のない桁なので、どうにも頭がついていきませんけど、それでもこの数字に注目しないわけにはいきません。庶民としては。
 これまで調査捕鯨に対しては、SS対策を主な名目とした円滑化事業という呼称で予算がつけられていました。当初は年約3億円でしたが、やがて約8億円に、近年では年約11億円にまで膨らんでいます。
 ここに、東北大震災のあった2011年、被災地復興を名目とした補正予算に便乗する形で、調査捕鯨事業安定化推進費なる予算が付け加えられます。その額、約23億円
 震災復興予算の流用に対しては、従来から捕鯨問題に取り組んできた市民団体のみならず、これまで捕鯨に同情的だったはずのマスコミからも、いっせいに批判が巻き起こります。詳細はNGOの発信、拙過去記事をご参照。
 その後、捕鯨サークル(水産庁&鯨研/共同船舶)もさすがに懲りた──かと思いきや、あまり表沙汰にならないよう別のカネの出所を求めました。
 それが、漁業構造改革総合対策事業、いわゆるもうかる漁業&竢赴焉B
 その金額について詳細は不明でした。
 元水産参事官の言じゃないけど、環境テロリストの妨害を口実に、法制定前から特定ヒミツ扱いだっただけに、審査の過程は完全非公開。税金を元手にした基金であるにもかかわらず。
 23億でさんざんたたかれたのだから、引け目を感じて多くても10〜20億円くらいだろうと(それでも十分大きな金額ですけど)、筆者はにらんでいました。過去記事にあるとおり、当時の水産紙報道でも15〜20億円程度という見方。
 ところが、蓋を開けてみれば、流用で非難されたハズの震災復興予算23億円のほぼ2倍もの額。
 3年間のトータルの金額の間違いじゃないかと、最初は目を疑ったほどです。朝日の小山田記者はこれまでの実績もありますし、APの記事もこの金額を裏付ける格好ですから、間違いないでしょうけど。
 厚顔無恥も、ここまでくれば脱帽するしかありません。


 が・・実は驚くのはまだ早すぎるのです。
 東北の被災者をダシにし、彼らのために使われるべき税金を赤字解消というエゴイスティックな目的でふんだくった捕鯨サークルは、同様の手口で、またしても政治的な弱者を足蹴にしていたのです。
 他の犠牲者とは、他でもない中小の漁業者。
 苦境にある東北の沿岸漁業救済のために設けられた「がんばる漁業」に一部の事業を移した結果、60億円分の余剰が生じた件については、以前のブログ記事でも取り上げました。その空席の3/4が調査捕鯨に当てられたことが、今回発覚したわけです。
 以下はもうかる漁業の受付機関となっている水産庁の外郭団体、水産業・漁村活性化推進機構(水漁機構)の資料。下の二つは水産庁。


■平成21年度補正予算において設けられた基金の執行状況等について
 基金名:水産業体質強化総合対策事業基金|水漁機構
http://www.maff.go.jp/j/budget/pdf/1800225-1.pdf

■平成24年度水産関係予算概算決定と税制のポイント|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/budget/pdf/24_point2.pdf
■漁業構造改革総合対策事業|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/budget/23_hosei/pdf/111226_kouzou.pdf


 45億円に該当するものが見当たりませんが、上半期・下半期で分散したのかもしれません。4月の21億円と3月の24億円が足すと45億円。怪しいですね・・。事業実施者数を見ると、やや辻褄が合わない感じですけど。
 1事業者当りの平均補助金額はこの’12年度で5千5百万円ほど。鯨研/共同船舶への補助は単年度でその80倍
 最後のページに国庫補助金の総計がありますが、基金創設時の2009年度に積み立てられた額が約50億円。トータルで約500億円ほど。
 海面漁業生産の1%に満たない捕鯨業に分類される(ほんとは漁業じゃなく科学調査のハズだけど!)調査捕鯨への補助が、いかに大きな割合を占めるかがわかります。
 同支援事業の執行額は、'11年度の計約189億円から、翌'12年度には約174億円と15億円減。震災復興を目的とするがんばる漁業に移った分が60億円なので、その差は45億円
 ぴったりですね・・。
 KKPの話がまとまった1年前の4次補正で新たに積み増されたのが138億円
 45億×3年間で、135億円・・。
 はたして、要求時に調査捕鯨への梃入れまで念頭に置いていたのかはわかりませんけど・・。いずれにしろ、増資分が捕鯨サークルにほぼそっくり飲み込まれた格好です。
 その後、同基金への国庫からの増資は減っていきます。'12年は本予算・予備費・補正合わせて110億円、’13年は20億円+補正25億円。これも合わせて45億円になりますけど・・。
 一方で、沿岸漁業の体質強化のために設けられた水産業体質強化総合対策事業基金は'12年4月で廃止。漁場機能維持管理事業基金は'10年7月に廃止。
 八方塞がりの状況に喘いでいる沿岸の漁民を差し置いて、捕鯨サークルだけが破格の厚待遇を受けているということです。


 高齢化、燃料高騰、汚染に乱獲に温暖化、流通・小売業界との歪んだ関係、無知な消費者、無策の水産行政・・・・
 この現状を打破し、沿岸漁業の明日を切り開こうとする真摯な若者に、援助の手を差し伸べるのであれば、誰も文句はありません。
 しかし、残念ながら、水産庁が「漁業者のため」と嘯き、導入してきた基金や制度の運用状況を見る限り、本来必要とされる対象ではないところに、手厚い支援が施されているといわざるをえません。
 日本の水産業界・水産行政を堕落させた張本人たる捕鯨の亡霊がいつまでものさばり、それと引き換えに、海も、漁民も、未来がますます見えづらくなるばかり。
 国民、そして漁業者の皆さん、このような不公正を本当に許していいのですか?


 
 朝日記事の指摘したように土俵際の崖っぷちにまで追い詰められた日本の公海調査捕鯨、結果はICJの判決次第ですが、赤字のほぼ9割を国に肩代わりさせることまで平然とやってのける捕鯨サークルのこと、正直筆者は不安を拭えません。気がかりなのは、農相の地盤下関市を中心にした母船更改につながる動きですが・・
 プルトニウムとクジラの闇については、拙小説『クジラたちの海』の続編『the next age』の七央人編を中心に詳細に描いたつもりですが、現実はフィクションをとっくに超えてしまっているかもしれません・・・


参考リンク:
−漁船漁業構造改革の検証|東京海洋大学・濱田氏
http://www.gyokei.sakura.ne.jp/D.P/Vol4/No4_1.pdf
−r氏提供情報|Yahoo!BBS
http://textream.yahoo.co.jp/message/1834578/a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa?comment=68731
−マスコミが伝えきれない調査捕鯨への復興予算流用問題(拙HP)
http://www.kkneko.com/ryuyo.htm
−東北の被災地を足蹴に復興予算をせしめた厚顔無恥な捕鯨サークル(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/59017147.html
−調査捕鯨の正体は「儲かってないけど儲けたい商業捕鯨」だった(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/58981151.html
−拙ツイログ
http://twilog.org/kamekujiraneko

posted by カメクジラネコ at 22:13| Comment(10) | TrackBack(0) | 社会科学系

2014年02月10日

米大使ツイート騒動/フォアグラとクジラ/都知事選とクジラ

◇反反捕鯨祭りで終わり? 米大使イルカ猟反対ツイートのその後

■キャロライン・ケネディ駐日米国大使のツイート
http://twilog.org/CarolineKennedy/date-140118


 先月1月18日に発信された、ケネディ駐日大使のツイート。
 騒ぐだけ騒がれたけど、議論らしい議論は何もなく、ただお互いに言いたいことを言い合っただけに終わっちゃった感がありますね。ディベートの最も悪いお手本というところでしょうか・・

 当の大使のアカウントは、五輪等のイベントもあるけど、1月末以降更新なし。もともとツイートの頻度はそれほど高くないですけど。もしかしたら嫌気が差したかも? 日本語のツイートがセットになっているので、作業は大使館の秘書の方がなさってたんでしょうけど。
 ツイッターに対するウンザリ感もさることながら、大統領選への貢献の論功行賞ともささやかれた駐日大使職が、こんなに割の合わない仕事だとは思わなかったかもしれませんね。
 日米の接着剤として過剰な期待を主に日本側から押し付けられる一方、ちょっと気に入らないことを口にすれば、途端に掌を返したように噛み付いてくる──そうした日本人の気質・民族性(?)にじかに触れたことで、いままで抱いていた好感度が一気にダウンしてしまったかも
 ただひたすらいいところを褒めそやしてくれればいいのだ。悪い部分に目を留め、ほじくり返すような真似は、誰も頼んじゃいないんだ──日本が米国に対して求めているのは、お互いに悪いことを諌め合い、相手の批判にも真摯に耳を傾けることのできる真の友人関係≠ナはなく、まさに表面的なオトモダチ≠フ関係だということを、少なくともケネディ大使個人は薄々感じ取ったのではないでしょうか?
 大使に向かって浴びせられた罵詈雑言が、日本人を代表する意見ではなく、国家とメディアに踊らされたニホンジン≠フ声にすぎないことを、せめて彼女が理解してくれればいいのですけど・・・
 もっとも、かくいう筆者も、ツイッターで彼女に注文を付けた1人だったりしますが(--;;

 さて、話を戻しますが、「お互い言いたいことだけ言い合った」状況を、環境外交がご専門の東北大石井敦准教授が的確に指摘されています。


■石井氏のツイート
https://twitter.com/ishii_atsushi/status/426586862493245441


大使が指摘している「非人道性」についての議論がほとんど聞かれないのは非常に残念です。これでは真摯な議論ができません。やはり「ニッポンには対話がない」のか(引用、強調筆者)


 確かに、マスコミ・著名人のレベルになると、動物福祉問題についての議論はもう可聴域外≠ニいう感じで完全にスルーされていますね。
 多少なりとも踏み込んだ意見を表明しているのは、むしろ一般のネット市民のほうでしょうか。

■【イルカ漁】ケネディ駐日大使のつぶやきから考えた「人道的な屠殺」という問題|トゥゲッター
http://togetter.com/li/618222#c1353011

「それなら家畜を殺すと きはいいのかよ」という非難がなされ、この説明に宗教や文化的な違いを上げることがこれはそのままだと間違っていると思う。
近代以降は動物愛護意識の向上以外にも作業環境の改善や 肉質の向上などのために過度に動物を苦しめるような屠殺法は忌避され、なるべく一撃で仕留める屠殺法が各国で取 られている。
以上の観点からイルカの追い込み漁を見ると、「明らかに 意識がある状態で苦しみを与える形で殺している」という点家畜の屠殺に比べて多くの苦しみを与えている≒非人道的な狩猟法という非難はまぬがれそうもない。
(引用)

 もっとも、この辺りは、工場畜産や動物実験、犬猫の殺処分問題に関心のある方々にすれば、「何を今更」と首を振るレベルではあるでしょう。
 屠殺については環境省のガイドラインまで引っ張っていますね。しかし、そこまでたどり着きながら、人道性の議論がなぜ先進国で具体的な法整備の段階まで推し進められたのか、追求するところまでいかなかったのは残念なこと。その後は反反捕鯨派の主張に重なる「価値観の違い論」に逸れており、認識不足のまま終わってしまっています。
 作成者は工学系の学生の方。他のまとめやツイートからは、脱原発に懐疑的なちょっとシニカル保守の属性が入っているのがうかがえますが。

 当該まとめに対しては、念のため筆者が補足を付け加えておきましたが、以下は一次ソース、当事者である太地発の情報です。

■和歌山県太地町のいるか追い込み漁業における捕殺方法の改善(水産総合研究センター遠洋水産研究所、太地町漁協)|太地漁協スーパー
http://www.cypress.ne.jp/jf-taiji/geiruihosatu.pdf

致死の判定基準は、作業者の便宜から運動と呼吸の停止とした。(引用、強調筆者)
脊髄切断法の開発者は楔による血液の体内保持は致死を遅くする恐れがあると指摘している。今後フェローと同じ指標(散瞳)で致死時間を再検討する必要はあろう。(引用、強調筆者)

表1 捕殺に要した時間
スジイルカ 
槍+脊髄切断 例数4 捕殺時間:最短5秒 最長30秒 平均17.5秒 (従来法 例数1 捕殺時間:300秒) (引用、強調筆者)

 脊髄切断法は2000年にフェロー諸島に倣って太地でも導入が試みられましたが、スジイルカ、マダライルカ、カマイルカ等には適用できませんでした。スジイルカについては、2008年にやっと脊髄切断法に切り替えられます。ただし、表に示されるとおり、この時点では槍を併用していました。水研センターの公表している「国際漁業資源の動向」中でも明記されていますが。
 2009年には、岩場をビニールシートで覆い、そこへ追い上げて保定することで、完全適用≠ナきたと謳っています。槍を併用せずに済んだかどうか言及はありません。そして何より、その完全適用に基づいた捕殺時間のデータは示されていないのです。2008年の捕殺時間のデータもわずか4例にすぎず、この数字に意味があるとは到底言えないのですが。
 おそらく槍の使用はやめたんでしょうが、代わりにわざわざ切断創に楔を打ち込んでいます。上掲リンク資料に画像がありますが、金槌で後頭部にパックリ開いた傷口に楔を当てて、ガンガン叩き込んでますね・・。まるでB級ホラー映画。まあ、他の犬猫の殺処分にしろ、家畜の屠殺や狩猟時の処理にしろ、「どうせ同じだ」と目に映るヒト、それらすべてに対して何も感じず、歓迎すらしてしまうヒトもいるのでしょうが、筆者としてはそうした不感症のニンゲンがほんの一握りにすぎないことを祈るばかりです。
 左側の画像に、「水中で落とした際の目印」となる浮きも示されています。皮膚を切り裂いた後の傷口、柔らかい皮下の組織に直接打ち込むのですから、しっかり固定されるはずがありません。少なくとも木材に釘を打つほどには。ビニールシートの上に追い上げるのに、それでも水中でなくす可能性が否定できないわけです。どの程度固定されるのか、その精度についても一切言及がありません。やっぱり暴れて弾き飛ばされる可能性があるから、でしょうかね? 作業者が押さえ込むのであれば、槍を使うのと作業の危険性はさして変わらないでしょう。
 致死時間の計測の仕方にも問題があります。心拍・呼吸の停止は、実際にはその前から微弱かつ変則的になっているので、測定者にとって判定するのは容易ではありません。瞳孔散大・対光反射の確認の方がより明瞭。通常はその3つを指標にしているわけです。皆さんもわかると思いますけど、これはヒトという哺乳動物でもまったく一緒なので、獣医方面のみならず医師の方にとっても常識の話。運動に至っては論外。組織が厚い大型動物の場合、心拍・呼吸判定の難易度はもっと上がることでしょう。そのうえ、イルカは潜水するのでただでさえ呼吸間隔が変則的で長いのです。
 しかし、太地ではこのわずかなデータを正確に測定することさえ、「作業者の便宜」を優先して渋ってしまいました。要は面倒臭がった、ということです。

 上掲のとおり、調査に当たった当の水産庁の外郭組織・水研センターの職員すらも問題点を挙げざるを得なかったわけですが、彼らがあえて触れなかった点についても、指摘しておかなければなりません。
 太地と並んで世界から非難を浴びているフェロー諸島ですが、渋々、かなり遅れて、中途半端な形で導入を図った日本の太地と異なり、脊髄切断法の開発や致死時間の測定指標について、曲がりなりにも動物福祉に配慮する姿勢を示そうとしたわけです。その理由は、各加盟国も国際機関としても動物福祉に関して厳しい法規制を進めてきたEUの一員であるデンマークの自治領ということもあるでしょう。

 以下はCNNのインタビューに対する安倍首相のコメント。

■安倍首相、イルカ漁を語る (1/24,CNN)
http://www.cnn.co.jp/world/35043008.html?tag=top;topStories

漁の仕方については、「相当な工夫がなされているという風に聞いている。この漁についても、あるいは漁獲方法についても、厳格に管理されている」と述べた。(引用)
 東京五輪招致の際の、例の原発事故・汚染水に関する「アンダーコントロール」とまったく同質の発言ですね。何も知らずに、官僚に渡されたメモの通りに回答しているだけにすぎないわけです。現地に視察に行って、東電の担当者にブロックできる港湾の範囲を教えてもらうのと同じように、太地の組合からイルカの苦痛の「コントロール」、放血の「コントロール」について説明を受ける気は、彼にはないでしょうけど・・


 動物福祉面を考慮した屠殺法を開発したフェロー諸島の関係者が「致死を遅くする恐れがある」と指摘する楔による放血制御を、なぜ太地はあえてやったのでしょうか?
 ひとつはっきり言っておかなければならないのは、楔による放血制御は動物福祉上の配慮とは一切無関係だということです。太地のライバル(?)にあたるフェロー諸島の関係者が、「むしろ逆だ」とはっきり言うほどなのですから。
 水研センターの担当者は「海面の血液による汚染防止や血液の工業的利活用の可能性を拓いた」と理由を挙げています。
 かつては捕鯨会社に対する漁民の焼き討ち事件が発生したように、温血動物の大量の血液が海水の停滞しやすい港湾に流れ込むことは、まさに「海洋汚染」に他なりません。捕鯨会社はまさに汚染水を垂れ流す汚染物質排出事業者、公害企業だったわけです。
 もっとも、こんな楔が完全に′潔tの流出を止められるはずもなく、汚染防止の効果は程度の問題にすぎません。BOD・CODを計測してデータを比較すれば、多少は説得力があるんでしょうけどね。ついでにいえば、海を汚すことで直接被害を受けるのは太地の漁業者です。水質の影響をもろに受ける伝統の真珠養殖業は、三軒町長によって引導を渡されることになったので、もう関係ないということになるんでしょうが・・。
 工業的利活用の可能性≠ノ至っては、コストを無視した非現実的な画餅にすぎません。家畜の血液は従来残滓、つまり産業廃棄物として金をかけて処理されてきたため、コストを浮かすために有効活用が求められ、ときに肥料に回されることもあります。ただし、獣臭・魚臭の除去がネックとなり、良質な肥料として重宝されるものではありません。さらに、その工程自体がコストに跳ね返ります。太地の組合が事業としてイルカ肥料≠売り出したとして、一体買う農家がいるでしょうか? 収支を考えれば、ビジネスとして成り立つはずもないわけです。
 まあ、当の捕鯨サークルが、過年度在庫が積み上がっている鯨肉在庫事情を公文書中で正直に告白してすら、未だに鯨肉が売れているという都市伝説≠ノしがみついている経済音痴の反反捕鯨論者たちには、理解できなくても仕方がないでしょうが。。
 とはいえ、「鯨体の完全利用」などと高々と謳いながら、実際には完全利用など全然出来てなどいなかった事実を示す、これも明らかな証拠の一つといえるでしょう。水銀まみれだから仕方ないとはいえ、腎臓・肝臓は産業廃棄物ですし。太地はイルカやゴンドウの頭骨を沖合に投棄して、海上保安庁に不法海洋投棄との指摘を受けたことさえあります。

 では、なぜ太地は放血を制御をしたいのでしょう? 致死時間の測定さえ「作業者の便宜」を優先して渋るヒトたちが、「太地の海を汚すな」なんて誰からも頼まれていないのに、余計な手間をかけようとするのでしょうか?

 皆さんなら、説明しなくてもおわかりでしょう。
 海面がイルカたちの血で染まる様、その映像が内外に流出して一般の人々の目に触れることを、彼らは阻止したかったわけです。つまり、イメージの悪化≠恐れたのです。


 太地のイルカ猟関係者とその応援団は、「苦痛を長引かせるのはかわいそうだから、少しでも早く楽にしてあげよう」と考える、感じる能力がすっぽり抜け落ちてしまっているのです。
 「俺たちは命をいただいてるんだ! 供養塔も建ててるんだ! 文句あっか!!」
 これが太地のイルカ猟なのです。そして、若者を中心に多くの日本人が、彼らを日本の輝かしい伝統を体現する選ばれし人々であるかの如く、熱烈に崇拝・賛美しているわけです。
 人道性の問題を置き去りにしたまま。

 まあ上掲のまとめサイトの一番下のコメントを御覧なさいな。。


したり顔の白人共腹立つ。俺激おこ(引用)


 脳の髄までマチズモに毒された、彼ら狂信的な反反捕鯨ネトウヨ君たちにとって、捕鯨・イルカ猟はまさにご神体というわけです。
 「尖閣や竹島の領土問題、靖国参拝と同じく、日本という国にとって絶対に譲れない一線なのだ。米国大使はその逆鱗に触れ、日本人の怒りを勝ったのだ」──そのようなメッセージを、彼らは堂々と世界に向かって発信してしまったわけです。
 ケネディ大使ご本人は、顔を顰めたかもしれませんが、イルカ猟を批判したことでしたり顔などするはずがないでしょうに・・。

 太地のイルカ猟の問題点については、NGOが以下の声明で簡潔に要領よく説明してくれています。

■太地のイルカ猟に関する声明|イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク(IKAN)
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/coastal-small-whales/292-statement2014-taiji-dolphine-hunting


 日本の環境省は、動物の福祉に関して「動物の愛護と管理に関する法律」で管理を行っています。しかし、この動愛法においては、海の生物のほとんどが環境省の管轄外であることから、鯨類捕獲に関しては動愛法の対象とはなっていません。この違いは、きわめて政治的、経済的な見地からもたらされたものです。環境省の福祉基準を鯨類にも当てはめることは、イルカ捕獲の非人道性への検証となると思われます。(引用)

 捕鯨の人道性の側面に関わる、日本の動物愛護法の問題点については、以下で筆者が詳細に指摘していますので、合わせてご参照。

■動愛法改正関連パブコメ|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/70657008.html

 このほか古式〜近代捕鯨史、太地のイルカ猟の社会学的側面については、下掲の参考リンクに示した過去記事もご参照。

 さて、イルカを含む鯨類は国連海洋法に定められるとおり、本来なら国際機関の管理下に置かれるべき対象です。
 今では顧みる人もいなくなったドングリ食や、水産庁に抑圧されているアイヌのサケ漁とは異なり、きわめて歴史が浅いうえに持続性をまったく確立できなかった太地の捕鯨・イルカ猟をして、不可侵のデントウと崇めると同時に、ヒト以外の動物の取り扱いの人道性、動物福祉に関する議論をバッサリ切り捨ててしまう──国際社会で広く認知されている価値観を全否定し、「特殊なブンカの存在とその絶対的優位性を認めよ」という突飛な価値観を世界に押し付けようとする日本。
 「これこそが日本なのだ、日本人なのだ」というイメージが、世界中の人々に改めて植え付けられてしまったのです。
 今回のケネディ駐日大使のツイートがきっかけで。

 日本出身のエンターテイナーとして、日米両国民に対して高い発信力を持つオノ・ヨーコ氏も、以下のとおり強い憂慮を示されています。

■オノ・ヨーコさん、イルカの追い込み漁に訴え (1/20,AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3006905

 オノさんは「(イルカの追い込み漁は)中国やインド、ロシアといった大国やその子どもたちに、日本を悪く言う口実を与えてしまう。簡単なことではないと思うが、私たちの国の力をそぐ機会を常に探している、多くの強国に囲まれた日本の将来の安全のためにどうか考えてほしい。政治的に非常に敏感な今、(追い込み漁は)世界の子どもたちに日本人を嫌わせる」と述べている。
 また「何年も、何十年も私たちは、日本に対する真の理解を世界から得るために懸命に努力してきた。しかし今、享受しているものは、文字通り1日にして壊れ得るものだ。原発事故の後の私たちの国の不安定な状況をかんがみてほしい」とも述べた。
(引用、強調筆者)

 しかし、本当にそうなのでしょうか?
 まず、日本の異常性≠伝えるメッセージを積極的に発信したのは、明らかに過剰反応を示した日本側でした。その点、映画『ザ・コーブ』公開のときとも状況は少し異なるでしょう。

 確かに、「これはケネディ大使の打ち上げた一種の観測気球≠セった」との推測も成り立つかもしれません。日本の民主主義の成熟度、国際感覚を測るための。
 後述する識者も指摘していますが、ツイート1つに対してオーバーヒートを起こさず、さりげなくかわすことが出来ていたなら、まだしも及第点といえたでしょう。
 しかし、日本が示したのは、まさに最悪の反応と呼べるものでした。
 中国・韓国を敵視し、米国に対して「オトモダチなんだからこっちの味方をしてくれ」としきりにねだりながら、その中国・韓国に対するのと何一つ変わらない敵意を平気で剥き出しにしてしまう。
 相手が隣国だろうが国防上のパトロンだろうが、エゴをコントロール≠ナきない唯我独尊の国民性(?)をあらわにしてしまったのです。

 より重要なのは、はたしてこのイルカ猟賛美が日本人の総意なのか? 本当に日本人の大多数が、捕鯨・イルカ猟を自国のアイデンティティと同一視しているのか?──という点です。
 これは、歴史認識や靖国参拝等をめぐる議論において、安倍氏・橋下氏・石原氏・田母神氏の主張に代表されるウルトラナショナリズムと国民の感覚との間にズレがないのか? それとも、ごく一握りのヒトたちの過激な思想にすぎないのか?──という問題とも重なってきます。

■安倍首相が「イルカ漁」に言及 日本は海外からはどのように見られているのか|ハフィントンポスト
http://www.huffingtonpost.jp/2014/01/25/shinzo-abe-dolphin_n_4663655.html
■米国人にとっての捕鯨・イルカ漁|中島聡氏/BLOGOS
http://blogos.com/article/78897/
■コラムニスト・小田嶋隆氏のツイート
http://twilog.org/tako_ashi/date-140125
■現代史研究家・山崎雅弘氏のツイート
http://twilog.org/mas__yamazaki/date-140120
■三重大水産学者・勝川俊雄氏のツイート
http://twilog.org/katukawa/date-140131
http://twilog.org/katukawa/date-140203
■【島人の目】日本のイルカ漁 (2/7,琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-219207-storytopic-1.html

 このとおり、日本人全体が諸手を挙げてイルカ猟に賛成しているなんて、そんなバカな話はありません。日本でも民主主義、言論の自由はまだ何とか機能しているといえそうです。
 筆者は主な意見の一部をピックアップしただけですが。一般のツイッターユーザーの方々の意見も、himiさんが丁寧に拾ってくれています。
 おそらく、一般の日本人の大半はほとんど関心を持っていないでしょう。そして、イルカ猟に賛成している人々の多くは、漠然とした認識しか持たず、欧米に対するかすかなコンプレックス・被差別意識から、動物福祉について深い考えもないまま、牛やカンガルーと比較する浅薄な主張にうっかり同調してしまっただけに違いありません。熱烈に支持しているのは、在特会のような極右に重なる一握りのネトウヨ層だけでしょう。
 もっとも、慰安婦銅像撤去署名(主導したのは日本の反反捕鯨運動の強力な助っ人、テキサス親父殿ですけど・・)や、雪にもめげず元航空幕僚長氏に票を投じにいった東京都の20代が示すとおり、彼らのすさまじいエネルギーは侮れませんが・・。

 そして、以下のようなご意見も。

https://twitter.com/kabutoyama_taro/status/426368546126327809
鯨問題だと結構なインテリでさえ橋下化(「慰安婦制度は日本だけじゃない」)するから不思議だ。(引用、強調筆者)

 著名人や鬱屈した若者世代が、最も大切な同盟国・米国に向かって声を大に叫んでしまうのは、一体何故でしょう?
 彼らを煽動している犯人は、「日本人=愛捕鯨」との誤った認識を世界に植え付けようと画策した犯人とも符号するはず。
 みなさんはもうおわかりですよね。そう、マスコミ。国際PRの時代から、世論操作はお手のもの。

 ここで少し、内外のメディアの反応を見てみることにしましょう。

■US ambassador Kennedy draws nationalist ire with tweet condemning Japan dolphin slaughter (1/20,South China Morning Post)
http://www.scmp.com/news/asia/article/1409735/us-envoy-touches-nerves-after-tweeting-concern-japan-dolphin-slaughter

 上掲は香港の南華早報。ある意味で、日本からも米国からも等距離の視点を一番提供してくれそうなとこですね。
 香港メディアが中立軸からどれくらい日本もしくは米国よりにブレるか、筆者としては非常に気がかりだったのですが、中身は至ってニュートラルなもの。双方の主張を並列で扱っています。日本側の主張に軍配を挙げるような偏向記事にはなっておらず、安心しました。
 もっとも、記事中で大使館職員がわざわざ要らないコメントを出しているのは、捕鯨論争の文脈を十分に理解してない感じですが・・

 一方、下はブルームバーグのオピニオン記事。評者個人の意見ですが、日本側を思いっきりヨイショ。
 ネオコン・テキサス親父殿の存在が示すように、日本と同様米国でも捕鯨に関する意見が多様であったとしても、そのこと自体は何の不思議もありません。
 ただ、なんとも奇妙なのは、言ってることが捕鯨サークルの主張の引き写しになっていることです。

■Whaling Ban Befuddles U.S. (2/8,Bloomberg)
http://www.bloomberg.com/news/2014-02-07/outdated-whaling-ban-befuddles-u-s-.html

 ヒントはここにありました。

■イルカ漁・捕鯨と外交 米大使ツイートの波紋 (2/5,プライムニュース|BSフジ)
http://www.bsfuji.tv/primenews/movie/index.html?d140205_0
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-140206
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-140207

 鯨研の役員に関係者を送り、捕鯨サークルと長年蜜月関係にあった御用新聞・産経の系列・BSフジの報道番組。出席者は鶴保庸介参議院議員(自民党和歌山選挙区選出)、藤崎一郎前駐米大使、お馴染みMr.捕鯨問題・小松正之氏(国際東アジア研究センター)、唯一批判者側(といってもほとんど中立に近いけど・・)の立場で招かれた東大の日本文学教授ロバート・キャンベル氏。日本通で知られるキャンベル氏ですが、とかく肌の色で見られがちな日本社会で、批判者がガイジン1人のみなのは、さすが産経系列というべきか。
 討論のまとめの部分で、前中米大使の藤崎氏が「見えない広報」というわかりやすいフリップを掲げながら、海外メディアのオピニオンリーダーに接触する布教活動について、かなり露骨に語ってくれています。
 要は、国際PR〜捕鯨協会が日本の新聞等の論説委員に対して行った働きかけを、海外でも展開したというわけです。国費・外交官を使って。
 上記のほか、北米局長まで務めた元外務官僚の藤崎氏は、日本語だから大丈夫と思って気が緩んだのか、割と赤裸々に本音の一部を語ってくれました。
 気になるのは、最後に掲げた「当然視しない」「気を遣って感謝の気持ちを忘れない」との発言。
 藤崎殿、それって自戒の意味を込められたのですか? なら、筆者も同感ですがね・・。それとも、ひょっとして米国に対するアテツケのつもりでした?
 「何でも米国の言いなりになると思うなよ」「思イヤリ予算だって貢いでやってるし、今度沖縄にも基地作らせてやるの、忘れたわけじゃあるめーな?」──それが、米国との外交交渉を担当した外交官トップの認識だったという理解でいいのですか?
 米国政府関係者は、こんな番組なんて見やしないだろうと、高を括られたのかもしれませんけど・・・。
 小松氏は残念ながら相変わらずで、自説を曲げませんでしたが、フリップで「対話と敬意」を掲げたように、以前よりわずかに丸くなったかも。対話については、藤崎氏ら後に続く外交官にお手本を示した、押しの強いプレゼン≠もって対話のつもりなんでしょうけど。。
 そして族議員を代表する鶴保氏。素朴な捕鯨ニッポン性善説にしがみついている鶴保氏には、ニコル氏が目撃した太地の捕鯨業者の規制違反など目に映らないのでしょう。
 最後のフリップ「来て見て」に至ってはもうムチャクチャですね。SSCSその他の人たちは、実際に「見るために来て」いるのではないの? 「来て、食って、金を落として、でも都合の悪いところは見ないでってのが太地の本音でしょうに。
 キャンベル氏は大変示唆に富む指摘をいくつもしてくれました。
 米国内の反応については、「大使のただのツイート1件に対してではなく、それに対する日本側の過剰反応に驚いている」
 米国の駐中大使の抑制ぶりとケネディ発言を対比したのも、非常に興味深かったです。むしろ、靖国参拝をはじめとする安倍政権の極度の右傾化に対し、対中バランスを考慮して直言できない状況で、ケネディ大使は仕方なくイルカ猟でチクリと警告した──という見方も成り立つかもしれません。
 番組ではサラリと流され、他の論者も聞き流しましたが、「日本人の中にも、こういう漁の仕方を考え直そうという意見もある」とも。
 それにしても、キャンベル氏がコメントするたびに、刺すような目つきで睨みつける鶴保氏の顔がそのまま放映されており(前半14分13秒、後半14分10秒)、筆者は正直背筋が寒くなりました。。。。和歌山県の有権者は要チェック。
 ちなみに上掲動画公開は期間限定とのこと。拙ツイログもご参照。


 安倍政権に変わってから、マスコミに対する締め付けは倍化し、いまやNHKまで産経化する危機的状況に。捕鯨サークルも右傾化の流れにうまく便乗しようと考えているかもしれません。
 しかし、中韓アジアに対する優越感を歴史の修正で、欧米/白人に対する優越感を反反捕鯨で満たそうとする振る舞いは、日本の孤立化をより一層招くだけです
 米国は見ています。世界の市民は見ています。多くの日本人も、「これはおかしい」と気づいています。
 日本の真の理解者になってくれるであろう、ケネディ大使やキャンベル氏らに、これ以上愛想を尽かされないよう、真剣に自省したほうがいいと思いませんか?

 反抗期の小児のようにダダをこね続けるなら、必ず大きなツケとなって跳ね返ってくることでしょう。
 たかがクジラで、たかが鯨肉で、真の友人を失うのは、あまりにも愚かなことです。


参考リンク:
−捕鯨の町・太地は原発推進電力会社にそっくり|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/78450287.html
−「The Cove」騒動と捕鯨の町|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/36872863.html
−民話が語る古式捕鯨の真実|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/33259698.html
−捕鯨のメッカ太地のイルカ漁V.S.「THE COVE」|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/33105405.html
−捕鯨のメッカ太地のイルカ漁V.S.「THE COVE」2|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/33346665.html
−太地−ブルーム姉妹都市騒動の背景|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/31722747.html
−NHK、久々に捕鯨擁護色全開のプロパガンダ番組を流す|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/31093158.html
−太地の捕鯨は中国産!? 捕鯨史の真相|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/18025105.html



◇ユネスコ、捕鯨問題については沈黙〜フォアグラとクジラ


■An Open Letter to UNESCO about the Registration of "Washoku"
http://www.kkneko.com/english/unesco.htm
■「和食」の無形文化遺産登録に関するユネスコへの公開質問状
http://www.kkneko.com/unescoj.htm
■ユネスコさん、捕鯨も世界遺産「ワショク」にブッコミでOKなのですか!?
http://kkneko.sblo.jp/article/84796741.html


 個人ブロガーの方から、公開質問状へのご賛同をいただきました。Lさん、多謝m(_ _)m
 一ヶ月待ちましたが、残念ながらユネスコからの回答はなし。うちのサイトにはユネスコのIPアドレスからこっそり20回ほどアクセスがあったんですけど。。
 いくつか国際的な反捕鯨団体・動物福祉団体から問い合わせはいただいたのですが、皆さん抱えている問題で手一杯なのと、ワショクの実態がなかなか伝わりにくいこともあって、なかなか一定以上の理解はいただけないようで・・。
 残念ながら、出直すしかなさそうです。


 もっとも、クジラとジュゴン・リンク署名と同様、このアプローチが重要なのは変わりありません。
 クジラ・イルカにとっても。すべての動物・自然にとっても。

 期を合わせるように起こったフォアグラ弁当騒動。仕掛けたのは日本の老舗の動物権団体。


■「フォアグラ」はコンプライアンスの問題|オルタナ
http://www.alterna.co.jp/12514
■「フォアグラの飼育は残酷」と抗議する人たちは「非常識」なのだろうか?
http://fujipon.hatenablog.com/entry/2014/01/25/170122


 上の要領を得たオルタナ編集長のコラムも、下の個人ブロガーさんの率直な意見も、イルカ猟反対大使ツイート騒動と同じく、国内の多様な見方を反映するものといえるでしょう。
 ツイッター等における賛否の議論では、ほぼそのままフォアグラ弁当支持=反反捕鯨=反動物愛護という構図が見受けられましたが。

 当然のように捕鯨・イルカ猟問題が引き合いにされましたが、まさにこの問題はリンクしています。
 上掲トピックの太地イルカ猟に関する人道性の議論は、そのまま多くの国で生産・販売等に法的な禁止措置が取られているフォアグラをめぐる議論に重なってきます。
 どちらにもお墨付きを与えているのが、ユネスコという権威ある国際機関である以上、各方面からより厳しく糾弾されて然るべきです。世界遺産審査にあたっての情報の透明性や公平性、公正性についても検証が求められるところ。
 ユネスコさん。包括的に生態系全体を保護し、捕獲等の産業利用を規制するサンクチュアリ型の自然保護のアプローチに普遍的な価値を与えたのは、貴機関の世界遺産の取り組みによるところが大きいでしょう。その意味で、生態系や野生動物保護において貴機関が果たす役割を、筆者は評価してきました。
 しかし、このままではユネスコは動物の敵です。世界の人々にそのように認知されてもかまわないのですか?



◇都知事選とクジラ


 宇都宮氏、残念でした。
 名護では風が吹いたけど、東京は雪に封じられた?
 それにしても、低い投票率には溜息を禁じ得ません。
 組織票、無関心。
 既得権益を守ろうとする壁が、いかに分厚いものかを示してもいるのでしょうが。中でも大きな役割を果たしているのはマスコミですけど・・


 蓋を開ければ、宇都宮氏が細川氏と僅差で2位。足しても舛添氏には届きませんし、細川氏が断念していても、その分はやはり宇都宮氏と舛添氏に分散するだけだったでしょうけど。 
 マスコミの出口調査がどの程度正確に実態を反映しているのか、首を捻りたくなる部分もありますが、若い世代の共産党アレルギーはそれほど強くはなさそう。偏狭なナショナリズムに対するアレルギーが、左に対するそれよりもっと強くていいと思うのだけど。政策が一致する家入氏タイプのパートナーが現れてくれれば、もう少し結果が違ったかもしれませんね。
 小泉氏は、今回の都知事選ではなく、先回の衆院選、遅くとも参院選の段階で、旗を掲げて自民党と民主党をぶっ壊すべきでした。
 脱原発票を足しても届かないといった見方もありますが、言うまでもなく間違いです。
 311以来、原発に嫌気が差した人で、舛添氏の「脱原発依存」という主張を素朴に真に受けた方も、きっと多くいたに違いありません。
 ただ、推進メディアの「それ見たことか」報道が端的に示すとおり、与党と電力業界を喜ばせた舛添氏が、東京を原発に依存しないで済む街へと生まれ変わらせることなど、できるはずないでしょうに。
 そして、細川氏が仮に当選していたとしても、即時全廃どころか、脱依存すら達成できなかったことでしょう。
 なぜなら、原発は、私たちを取り巻く社会のさまざまな問題と切っても切り離せないからです。
 私たちニンゲンの社会が、自然・命を征服し、コントロールする方向へ向かうか。それとも、ニンゲンが動物の一種にすぎず、自然の一部にすぎないという事実をわきまえ、自らをコントロールする術を身に付け、暴君として君臨するのではなく、慎ましく生きる道を選択するか。
 福島の原発事故は、まさにその問いを私たちに突きつけているからです。

 捕鯨問題はもちろん都知事選の争点にはなり得ません。原発問題と同じく、決して無関係とはいえないけれど。
 ただ、大きな共通項があります。
 昨年夏以降明らかになったストロンチウム汚染隠し問題も何のその、「アンダーコントロール」と世界に向かって大嘘を吐いた安倍首相らは再稼動に向けて突っ走ろうとしています。彼らの無神経さは、弱者から公平に°zい上げ、政官業学報の強固なリレーションに加わった一部の人々のみが富を享受できるシステムにそのままつながっています。南極の自然を支配し、制御することが可能だと信じ込むことも、原子核の扉をこじ開けて無尽蔵に富を引き出せるとの幻想に浸るのも、根っこはすべて同じです。共存する以外にない近隣諸国、在日外国人の人々、あるいは沖縄に対する高慢な姿勢は、そのまま声なき自然、動物たちに対する横暴の数々とも重なっています。

 原発・エネルギー政策は、最重要課題といってもいいでしょう。東京都にとっても。五輪のような一過性のお祭り騒ぎと比べても。
 しかし同時に、原発問題はシングルイシューではあり得ません。
 ヘイトスピーチから葛西臨海公園開発、戦略特区問題に至るまで、すべてはリンクしています。

 日本の社会は根から腐りかけています。
 そのことを象徴しているのが、原発に他なりません。

 だからこそ、原発は最重要テーマであるべきでした。なおかつ、シングルイシューにもすべきではありませんでした。
 根が腐っているにもかかわらず、枝葉を勢いよく伸ばし、その先に黄金の実を付けることが可能なのだと嘯く、稀代のペテン師たちの言葉に、これ以上騙されてはならなかったのです。
 最初から脱原発の姿勢を明確に掲げ、なおかつ総合的な政策をきちんと提示していた候補者は1人だけだったことに、気づかれていた都民の方も少なくなかったはず。
 もう1回悲劇が起こらないと思い知ることができないほど、日本人が愚かだとは思いたくないのですが・・・・

posted by カメクジラネコ at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系