2013年08月28日

元産経木村正人氏もやっぱりトホホ反反捕鯨記者

◇元産経記者木村正人氏もやっぱりトホホ反反捕鯨ジャーナリスト

■安倍政権が総力戦で臨んだクジラ裁判の行方|木村正人 (8/26,YAHOO!ニュース)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20130826-00027574/


 ICJ(国際司法裁判所)での調査捕鯨裁判の口頭弁論が幕を閉じて一月。マスコミの関連報道もしばらくありませんでしたが、ここへ来て突然「クジラ裁判ネタ」が復活。世間的にはもう旬を過ぎた話題といえますが、一ヶ月以上もかかって書いたにしては、残念ながらたいした分析もない、間違いだらけのトホホな内容でした。
 木村氏が冒頭で張った思わせぶりな伏線についての解説は後回しにするとして、同記事のトホホぶりについて徹底的に解説しておきましょう。


 「エース投入」と題した節の最初には、(日本政府関係筋)とするコメントが2つ出てきます。事情通なんでしょうが、「立ったようです」「日本が〜明らかです」といった台詞を見る限り、現在政府部内にいる方ではないでしょう。おそらく木村氏が自分の勘違いでこういう書き方をしてしまったのでしょうが、いくつか誤りを指摘しておきます。

 代理人は外務省の国際法局長が務めるのが普通だが(引用)

 周知のとおり、日本は今回ICJデビュー戦で、普通≠烽ヨったくれもありゃしません。ICJ当事国の代理人は訴訟事案、国によって大使や元閣僚など様々です。そんな中で、AUS(オーストラリア)も、途中参加のオブザーバー的立場で1日しか弁論の機会を設けられなかったNZ(ニュージーランド)も、現職の司法長官を代理人として出席させました。
 一方、日本は同格に当たる谷垣法相を出席させませんでした。
 木村氏は「安倍政権が総力戦で臨んだ」「本気で臨んだ」と繰り返しています。外交専門家の天木氏も指摘するとおり、TPP交渉で大忙しのはずの鶴岡氏を引っ張り出したのは、日本の外交手法・人員配置のまずさを露呈するばかりなのですが、彼がエース≠セというのは内輪の評価の話。審議官は事務方のトップ事務次官の次に偉い<|ストとなっていますが、「局長級」から「次官級」にレベルを上げてやったんだぞと、相手国やICJに対して威張れる話じゃありません。
 少なくとも、この点に関しては、本気度≠世界にアピールしたのは日本ではなくAUS・NZ側だったのです。日本は係争相手国と対等の姿勢を示さなかったのです。
 仮に日本政府自身が「これで本気だ」と表明したのだとすれば、AUS、NZ両国に対しては失礼な話であり、世界は日本が国際裁判に臨む姿勢に対してそのような評価を下すでしょう。ICJ判事はともかく。
 「本気」「総力戦」云々の表現が、木村記者個人の両国を見下す先入観によるものかは不明です。ただ、ICJでの係争の相手が仮に中国や韓国、あるいは米国で、相手側の代理人が司法長官クラスだったとしたら、はたして日本は審議官クラスで済ませたでしょうか? あるいは、国内メディアや政治家らから「(相手に合わせて)担当をすげ替えろ」という突き上げの要求が起こったりしないでしょうか? 一端のジャーナリストなら、そこまで検証してもらいたいところですね。


 政府関係筋の方のもう一つの情報は興味深いものです。過去記事で指摘したとおり、鶴岡氏は水産については門外漢で、仏語のスキルとエースの肩書きが抜擢の理由と思われますが、国連大使を務めた鶴岡氏の父とICJ判事が知己だったことも、彼が代理人に起用された理由と必ずしも無関係ではなさそうです。彼が本筋の司法論争とまったく無関係な個人的な父との思い出話を持ち出したものだから、一体どうしちゃったんだろう?と首をひねったのですが、道理でという感じです。
 内容ではなく、コネに基づく印象でなんとか得点を稼ごうという話だったわけです。仏語と同様(後述)、日本はともかくパフォーマンスで勝負する気だったのですね。

 鶴岡氏の発言、「異なる文化の間に優劣」云々については、捕鯨サークルの常套句をそのまま借用しただけですが、本来ドングリ食・イルカ食・アザラシ食と同等にすぎない日本のクジラ食ブンカのみを「優れた聖域」と勝手に位置づけ、地球の裏側の南極のクロミンクにまで拡張したうえ、海の自然と野生動物を守るAUSやNZ、その他の南半球諸国のかけがえのない文化を劣ったものとしてバッサリ切り捨てた≠フが日本なのです。


 次の節「反捕鯨オーストラリアの論理」に進みましょう。節の見出しが内容に合ってませんけど・・

 日本を含む多くのICJ加盟国は、相手国の提訴に応じる義務を受け入れている。このため、日本はオーストラリアの提訴に応じ自動的にICJの法廷で争わなければならない仕組みになっている。(引用)

 「ICJ加盟国」って何ですか? ICJは国連下の機関であり、国連加盟国は自動的にICJ当事国になり得ます(国連非加盟国も一定条件下で当事国になり得る)。産経のロンドン支局長にまでなったジャーナリストのくせに、どうしてここまで日本語がいい加減なんでしょうね(--; 佐々木氏じゃないけれど・・。まあ、産経だからしょーがないのか・・・
 その次の文は間違い。まず、この義務が生じるのは受諾国同士です。「同一の宣言を行った他の国をして、一方的に裁判に服させることができる」(〜ウィキペディア)です。で、日本にしろAUSにしろ無条件ではなく、応訴に当たって条件を付けています。この裁判をウォッチした人なら知っていて当然の話。何しろ、「『オーストラリアの提訴に応じ自動的にICJの法廷で争わなければならない』わけじゃないんだ」ってのが日本側の主要な論点だったのですから・・。

 語学力でまずオーストラリアを圧倒した。 (引用)

 いやはや、たいしたパフォーマンス勝負ですね。ICJはいつから高校生のクイズ甲子園になったの?(笑)
 2つの公用語のうち、仏語のほうが法廷で優位に立つ言語だなんて誰も言ってません。英語での陳述は仏語の通訳が入り、仏語の場合は英語の通訳が入ります。資料も同じ。
 確かに、英語圏の方は、英語が標準語で当たり前という感覚なのに対し、フランスとその旧植民地を中心とする仏語圏の方は、仏語を英語より優先する相手に対してほんのちょっぴり好感が増す人も、あるいはいるかもしれませんけどね・・。それだけ≠フ話です。ほんっとに。
 「日本は4人も仏語で陳述した」なんて、海外メディアはどこも報じてません。そんなくだらんことに興味を持って記事にするのは木村氏だけです。
 まあ、日本政府は藁にもすがる思いだったんでしょうが、ペレ教授にべらぼうなギャラを支払ったことで帳消しですよ・・・


 次の節「十分な準備と訴訟戦略を練った被告・日本」、神戸大柴田教授の解説について。
 「通常であれば〜不利に」という表現にそもそも首を捻らざるを得ません。あらゆる裁判において、原告が被告より有利に立つのは当然という見方はあるでしょう。「十分な検討」に関していえば、ICJにおける訴訟は提訴から審理が開始されるまでに、過去記事で詳細に取り上げた受理可能性の審議など種々の手続を踏まえ、時間をかけます。2010年にAUSが提訴してから今年の審理に至るまでにも2年半以上費やしているのです。日本における民事・刑事・行政訴訟と比較して被告がより不利になる要素はありません(一審制は双方を縛る)。
 一方、原告が不利になる要素もあります。提出資料は提訴国が先。口頭弁論の順番も然り。応訴国側は後出しジャンケンが可能なのです。実際、AUS側のプレゼン資料を都合よく加工したり、日本側は後攻の利を精一杯利用していましたけど・・


 「現実的にJARPA2を継続できなくなる恐れはあるかもしれない」というコメント、柴田氏も木村氏もその理由にまったく触れていませんが、もちろんカネです。条約起草時に想定された本来あるべき規模の調査捕鯨しかできなくなれば、日本はバカバカしいのでやらないという話です。ジャーナリストならきちんと突っ込まないといけませんね・・

 次の節「焦点のJARPA2の捕獲枠」。節全体がおよそ巧みとはいえない焦点のすり替えになっちゃってますけど・・
 何度も解説してきたように、JARPAUは(南極海)生態系モニタリングのための調査に価しません。ミンククジラ特化で取得するサンプルを増やし帳尻を合わせただけ。貧弱で不完全極まりない4鯨種競合モデルを組み込もうとしたものの、そんなものは生態系モニタリングでも何でもありません。

 10年度に調査捕鯨は初めて中止に追い込まれた。(引用)

 またしても誤り。まず、初めてではありません。2007年に日新丸の火災事故(作業員1名死亡)で中止しています。この他にも、2009年に発生した船員転落事故でも中断しています。「初めて中止に追い込まれた」との表現は、まるでその年の操業が丸々できなくなったと受け取られそうですが、2010/11の中止は、サンプル数をそろえることが科学的に重要でなかったうえに、膨れ上がった鯨肉在庫を解消する必要にも迫られていたからこそ、できたこと。

 ワシントン条約は「絶滅の恐れのある野生動植物を保護する」条約ではなく、国際取引を規制する条約です。野生動物・環境問題に疎い人ならではの表現。いずれにしろ、元の肩書きを使うのは小沢一郎=自民党というのと同様にナンセンス。ラポワント氏はもうだいぶ前から捕鯨サークルのオトモダチをやってる持続的利用原理主義の人。AUSのスタンスに関するラポワント氏の単なる個人的主観≠ヘ、SSCSのワトソン氏の日本に対する単なる個人的主観≠ニ同列にすぎません。

 日本では00年末に約1900トンだった鯨肉の在庫量が商業捕鯨国アイスランドからの輸入本格化で一時5000トンを突破。(引用)

 木村氏はいかにも元産経記者らしい珍説を披露してくれました。在庫が膨れ上がったのをアイスランドの所為にしたのは、おそらく御用記者らの中でも木村氏が初めてではないでしょうか? 何でもかんでも常に日本以外の所為にしたがるところは産経出身者ならでは。
 まず、5000トンを突破した最初のピークはJARPAU増産後の2006年。アイスランドからの鯨肉輸入が17年ぶりに一部再開されたのは2008年です。当然これは無理な増産による自爆。2回目のピークは2009、2010年ですが、在庫量自体は6000トンに届く勢いに達しながら、アイスランドからの輸出量(2010)は500〜600トン(日本側の輸入統計の数字はもっと低く、当年時は税関の保冷倉庫等に眠ったままだったと思われる)。
 木村氏はまったく指摘していませんが、ひとつはっきりいえるのは、減産・在庫調整に協力してくれたSSCSと異なり、輸入鯨肉が追い討ちをかける形で、もともと乏しい調査捕鯨の採算性をさらに脅かしているということ。
 その次の指摘、鯨肉がドッグフードに使われていたのは単なる事実。海外のNGOの発信で、日本のメディアは産経も含め無視したはずですが。



 
「戦後の食糧不足の時代ならまだしも、わざわざ南極海まで出かけて行って調査捕鯨をする必要があるのか」という主張も国内で大手を振り始めた。
(引用)

 まさに正論でしょうに。この辺りの記述もまた、リベラルないし親韓・親中の主張に対して危機ムードを煽る♂E翼メディアの表現を彷彿とさせます。

 次の東京海洋大加藤氏のコメント、現役の鯨類学者の中では大御所で、粕谷氏などとは対照的に、年を取るにつれて一段と御用学者らしくなっていった方ですけど・・。
 加藤氏は食文化・鯨肉食の歴史についてご存じない(ふりをしている)ようですね。県別消費量をメディアが記事にした折にも、水産庁が公的に認めたところですが、鯨肉食は地域の限られた食習慣にすぎませんでした。それが戦後に一気に広がったのです。「供給量が増えたのだから(他に食べるものがなかったのだから)、鯨肉を食べる人口が多くなったのは当たり前」なのですよ。そして、その後一貫して消費が減り続ける中、捕鯨会社は魚肉ソーセージなどの形で需要を維持したり、学校や自衛隊等大口の固定消費者を捕まえて凌いだのです。
 あきれるのは次の一言。加藤氏は「食の多様性」「IWC科学委員会で議論すべき」だとお考えのようですね。生物学者が国際会議の場に「食の多様性」云々を持ち出すことに何の疑問も感じないのであれば、ブンカ人類学者にでも鞍替えするのがよろしい。


 非致死性の調査も可能だが、期間が100年に及ぶ内容のものもあり(引用)


 具体的にどのことを指摘しているのか不明ですが、サンプルサイズに関する言及なのでしょう。非致死的調査は捕鯨ニッポン流致死的調査と異なりいままさに飛躍的な進歩を遂げているところで、今後も短縮の余地は十分あるでしょう。
 一方、致死調査に関して言えば、系群判別など20年以上かかって結論を出せていないのです。100年やったところで出やしません。科学委員会で勧告されているとおり、低緯度の繁殖海域の調査など、本当にやるべき調査をやろうとしないからです
 副産物*レ当てでズルズル続けているだけで、科学的には「調査を行う意味がない」のが日本の調査捕鯨なのです。むしろ、生態系アプローチ等、いつまでも結論が出ない目標を掲げるのが捕鯨サークル側の理想。


 次の節「捕鯨国ニッポンの論理」。AUSの論理とやらをAUS自身に語らせずラポワント氏に解説≠ウせた以上、公平を期すなら第三者が検証するべきなんでしょうけどね。
 日本側の証人に立ったやり手国際弁護士出身のアカバン氏(ペレ氏同様とんでもないギャラを払ったんでしょうが・・)、言ってることは何のことはない、捕鯨協会のパンフレットからの引き写しです。捕鯨や日本文化の専門家でも何でもないのだから、当然ですけど。
 問題はそれよりも木村記者とこのヤフー記事そのもの。

 〈クジラを食す文化と伝統を持つ日本、アイスランド、ノルウェー、その他の先住民族と違い、日本に開国を迫った米国、英国、オーストラリアはかつてクジラを乱獲して照明ランプ用の鯨油だけを採取して他は廃棄した。石油生産で鯨油価格は暴落し、後者の国々は捕鯨から撤退するばかりか反捕鯨を声高に唱え始めた〉 アカバン教授の弁論は続いた。(引用)
 アカバン氏はこうした事実を列挙し(引用)

 おやおや……アカバン教授らしくない支離滅裂な主張だと思ったら、該当する陳述が見当たりません。
 アカバン氏が証言に立ったのは、日本側の口頭弁論に割り振られた5日間のうち、6月2日の午後と7月15日の午前中の2回でした。下掲のPDFファイル、p14-38、p40以降。

http://www.icj-cij.org/docket/index.php?p1=3&p2=1&k=64&case=148&code=aj&p3=2
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/17424.pdf
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/17458.pdf


 実際、アカバン氏も捕鯨史について鶴岡氏と同程度の内容をさらっと流したのですが、それだけです。
 開国がどうしたランプがどうしたと、頭蓋骨の中で脳みそが右寄りに傾いちゃった一部の日本人しか言わないようなことは、一っ言も口にしてませんよ。
 これって、木村氏が法廷でメモったんですか? ICJがアップした記録資料もチェックせずに?
 ていうか、水産庁なり捕鯨協会なりがアカバン氏に渡した原稿≠直接見せてもらったの?
 アカバン氏ほどの方なら、そりゃ添削してまともな文章の形で言い直しもするでしょうけどねえ・・・


 さて、いかにも素朴な反反捕鯨論者らしいカビの生えた主張に対して、事実誤認を指摘しておきましょう。
 「日本」「その他の先住民族」という表現自体国語的に間違っていますが、木村氏ないし原稿を用意した人物(アカバン氏ではなく)の捕鯨史認識と人種・民族観の重大な偏見があることを露呈しています。
 IWCでは先住民生存捕鯨の枠が認められているのですが、他国と異なり日本の先住民族であるアイヌには日本政府自身が承認していません。伝統的なサケ漁さえごく最近まで禁止していました。そもそも彼らは歴史的に日本人(倭人)から同化を強いられ、迫害を受け続け、他の先進国で認められている少数民族の権利さえ十分に享受できていないのです。
 アイヌは間違いなく立派な捕鯨文化の担い手でした。縄文時代の捕鯨・鯨肉食はアイヌのそれに近く、中国発祥説もあるはるかに時代を下った古式捕鯨とは系譜が違います。日本が認めようとしないアイヌの先住民捕鯨については、過去記事で何度も口酸っぱく説明しているとおり。
 一方で、アイスランドにはクジラを食す習慣がほとんどなかったため、日本等に輸出しているわけです。
 文中に「と違い」と入ってますが、冗談じゃありません。南極海での乱獲五輪で金メダルを獲ったのはノルウェー。銅メダルが日本(まだ金を狙い中・・)。「日本がアジアを侵略をした事実はない」というのと同レベルの、近代捕鯨史に対する明白な、許されざる事実誤認です。戦前の日本の捕鯨が国際協定にも参加せず、外貨獲得の鯨油目当てで鯨肉を大量に投棄していたのも史実。
 捕鯨から撤退した国が反捕鯨を唱え始めた? それが何か? やりながら唱えるのはおかしな話だけど、別にいいじゃない。侵略戦争の愚を犯した国が、「二度と戦争をしません」と誓うのと同じで、実に結構なことです。過ちを繰り返せとでも?

 非西洋圏のイラン出身で人権問題にも造詣が深いアカバン氏が、事実にあまりにも反することを端折ったのは、賢明だったとはいえるでしょう。
 木村氏が勝手に捏造(妄想?)したのではなく、そういう原稿が用意されていたという前提での話ですけど。
 日本の味方なんかしたばっかりに、こんなふうに顔に泥を塗られて、アカバン氏もさぞかしいい迷惑でしょう。

 次の段落のほうは、15日の陳述に一応該当する箇所がありますが、アカバン氏のコメントそのものではなく、木村氏が勝手につなぎ合わせて組み立てています。さすが元産経だね!

 そもそもオーストラリアは近隣国との兼ね合いから南極海の排他的経済水域(EEZ)について自らICJに留保を申し立てているのに、その海域について裁判を起こせる権限があるのかと日本側は弁論を締めくくった。 (引用)

 文章がメチャクチャ。ICJの仕組み、今回の裁判の文脈を木村氏が何一つ理解していない証拠ですが。
 「近隣国」ってどこ? 「南極海のEEZ」ってなに?
 AUSの関係者自身首を捻るよ(--;; なんつう舌足らずな。これでジャーナリストを名乗ってるんだから、ほんっっとに腹立ちます(--;;;
 以前に当方で解説し、日本政府関係者も理解したうえで攻めた部分でもありますが、近隣国なんて関係ないです。これは主張し合ってる国同士を意識した話。
 AUSの義務的管轄権受諾宣言には、「南極海」なんて語句は一語も入っていません。読めばわかることですが、領海、EEZ等の境界画定紛争に係る訴訟への応訴義務については保留するといっているだけです。
 日本はAUSの揚げ足を取り、「JARPAUの操業海域はAUSのEEZに隣接するし、調査捕鯨は一応科学だけど境界画定紛争に関わる"exploitation"=《営利的、搾取的な資源開発》に相当するから、お前らには訴える権利はないんだぞ」と主張したのです。
 文脈としては、「日本が応じる必要はない(先決的抗弁で突っぱねることができた)」とICJが判断した可能性はあるものの、過去の事例からも受諾宣言は訴える権利を縛るものではなく、また日本が応訴してしまった以上、墓穴を掘ったのは日本側だといえますし、時間稼ぎの戦術であることも見え見えでしたが。
 「AUSが近隣国との兼ね合いから南極海のEEZについて留保を申し立てたので、その海域について裁判は起こせない」というロンリではありません。木村氏は国際ジャーナリストとしてはあまりにも勉強不足。


 次の段落は元同僚の佐々木氏と同じですね。木村氏も日本の納税者でありながら「日本がこの訴訟のためいくら費やしたのか?」「敗訴した場合有権者の理解を得られるのか?」にはまったく関心がないようです・・
 以前にも指摘しましたが、日本はメンツにこだわりさえしなければ、もっと安上がりに勝つ方法があったのですよ。


 次の節「判決の行方」。佐々木氏がネタにした豪紙ダービー記者のコメント。
 木村氏は「公平性を期す」などと殊勝なことを述べていますが、ここにあるダービー記者自身の意見は反捕鯨の立場と切り離された公平な情勢分析≠ノすぎず、記事自体の公平性はまったく担保されていません。
 「日本鯨類研究所の財政問題」とその主因について、自分で分析できないのも情けない限り。


 日本に調査捕鯨を行う権利を認めた上でIWCに差し戻す形の判決になった場合、再び出口のない議論が繰り返されるのか、商業捕鯨再開に向けて捕鯨国、反捕鯨国双方の大胆な妥協が図られるのかを予測するのは時期尚早だ。 (引用)

 調査捕鯨を行う権利自体はICRW8条で認められている格好ですから、ICJはあくまで「日本のJARPAUが国際法における定義上の調査捕鯨≠ノ該当するかどうか」判断するだけです。その判断がIWCに差し戻される形にはなり得ません。
 今回の判決の如何によらず、「商業捕鯨再開」という話にはなりません。まったく別のハードルがあるからです。「大胆な妥協」は既に試みられ、破棄されました。もう一度同様の妥協を図ることは不可能ではないでしょうが、お互いが再度歩み寄ることは望み薄でしょう・・。特に日本側に関していえば。
 AUSが負けるか、ダービー氏らの指摘する中庸の判決がなされた場合、少なくとも母船更新まで現状維持です。もっとも、計画&゚獲数は、儲かる漁業補助金を受け取るためにKKPで設定されたラインにまで削られるでしょう。つまり、ICJの判決とは無関係に利己的な理由で調整されるということ。おそらくそれでも収益は改善されず、国が注ぎ込む税金はますます膨れ上がることになるでしょうが・・
 本当に賢明な官僚なら、そんなバカげたことを望むはずないんですけどね・・・


 さて、最後の節「傍聴席に陣取った韓国大使」。「日本が初の国際裁判に本気で臨んだ本当の理由」(冒頭から引用)だそうですが・・韓国政府関係者が傍聴していたからといって、そんなに騒ぐことかしらん?
 一点、韓国が参考にする可能性のある日本の戦術≠ノついて、外交筋のコメントと合わせて指摘しておきましょう。あまり現実的で賢いやり方ではないと、韓国自身思ってるでしょうけど・・
 韓国と中国はともに義務的管轄権受諾宣言を提出していません。日本が訴えても応訴する義務はないということです。
 ではなぜ、「応じる可能性はないとは言い切れない」などと外交筋≠ェ言い始めたのでしょう?
 万が一、今回の日本v.s.AUSの裁判で、ICJが「AUSに訴える権利なし」という判決を出して日本側の勝訴となった場合、韓国も同じ手を使える可能性がなくはない、ということです。
 仮に日本のやり方が通用するとしたら、それこそ日本と同じように応訴したうえで、「応訴する必要のない国を訴えるおたくがおかしいんだよ。だって、そのやり方でおたくAUSに勝ったじゃない?」とやり込めることも、まったく不可能ではないでしょう。
 ま、この形での日本の勝利は一番あり得ないパターンだと思いますし、韓国も「ダメだこりゃ」と思ったでしょうけどね・・
 まさか、本丸≠フ判断材料にするためにAUSをダシにする考えが日本の外務関係者にあったとも思いませんけど・・


 安倍政権の右傾化を指摘する声は強いが、日本はICJに提訴されれば自動的に応じる義務を受け入れている。 (引用)


 実におかしな文章ですね。「自動的に応じる義務」の表現は2回目ですが、間違いです(繰り返しですけど)。「安倍政権は別に右よりじゃないんだよ」という木村氏のメッセージなのでしょうか・・。
 受諾宣言を日本が提示したのは2007年、政権を民主党に渡す前。差し替える動きでもあれば、さらに要注意といえるでしょうけど・・
 いずれにせよ、体制の右左とICJへの受諾宣言を結びつけるトンチンカンな主張も、木村氏が初めてでしょう。紛争処理は全部ICJに任せて、軍備は一切放棄しますというなら話は別ですが。
 

 今回の口頭弁論、日本にとっては領土紛争を国際法廷で解決する姿勢を国際社会に示す良い機会だったとも言えそうだ。(引用)


 結局、「中韓両国に対する威嚇にはなったぞ」と言いたいんでしょうかね・・
 今回の調査捕鯨訴訟が、領土紛争の解決に際して参考になるとはとても思えません。日本が国際裁判で、貿易・防衛面で親密な協力関係を築いている友好国を相手に、相当えげつないやり方をする国だということは、世界にすっかりバレてしまいましたけど・・。応援団≠熕キり上がらなかったし・・・


 「総力戦」「本気」「本当の理由」がこの程度だとしたら、木村記者以上に日本という国自体がトホホな国ということになってしまいます。
 国際法廷を舞台に、調査捕鯨の非科学性をはじめとする事実が包み隠さず詳らかにされたとしても、国民の関心が薄く(英語の壁もあるでしょうが)、疑問を持たなければ、こういった粗雑なちょうちん記事でいくらでも誤魔化してしまえると、政府が勘違いしたとしたら、ある意味不幸だとはいえるでしょう。

 霞ヶ関の皆さん。マスコミの皆さん。
 市民はそれほど簡単には騙せませんよ。


参考リンク(過去記事):
−ICJ調査捕鯨訴訟で日本は負ける
http://kkneko.sblo.jp/article/70305216.html
−ICJ調査捕鯨訴訟の核心─憲法とICRW/御用新聞のトホホ記者・佐々木氏の珍解説
http://kkneko.sblo.jp/article/70152801.html
−国際クジラ裁判報道ランキング/鶴岡発言の真意
http://kkneko.sblo.jp/article/71016491.html
−ICJ調査捕鯨訴訟解説
http://kkneko.sblo.jp/article/69890851.html



 現在小説を鋭意英訳中ですが、先にICJ記事の英訳を進めることにしました・・
 引き続き翻訳協力者募集中m(_ _)m

posted by カメクジラネコ at 20:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2013年08月26日

悪いのはみんな反捕鯨国(by大本営放送)/悪いのはみんな消費者(by霞ヶ関)

◇NHK「TPP水産関連」報道の裏を読む

■TPP 漁業補助金禁止提案に反対表明へ (8/26,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130826/k10014023581000.html
http://textream.yahoo.co.jp/message/1834578/a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa?comment=64236


アメリカの提案には、オーストラリアニュージーランドが同調している一方で、ベトナムやマレーシアなどが反対しているとみられ、日本としては連携をとって議論に臨むことにしています。(引用、強調筆者)
漁業補助金には、漁港を整備する費用や漁船の燃料代が上昇したときの影響を緩和する助成金なども含まれる可能性があり、全国の漁協で作る全国漁業協同組合連合会などは、議論の対象から外すよう求めています。(引用、強調筆者)


https://twitter.com/katukawa/status/353480244533010433

この前、ペルーの資源管理の話を聞いたけど、ものすごくちゃんとしている。「魚が減ったら、漁獲枠を7割削減」とか、国が資源の保護をちゃんとやるから、漁業が持続的に利益を生む。(引用、強調筆者)


 既に各所で指摘されてきたとおり、農産物と違い価格格差がそれほどない水産分野の品目交渉で全漁連が猛反発する理由がこれ、補助金問題

 ウナギやマグロの惨状を見れば、補助金漬けの一方で「目に見えて悪化するまでほったらかし」というやり方を続けてきた資源管理最後進国・捕鯨ニッポンに対し、海外からクレームが付くのは当然のことでしょう。
 気になるのは、上に引用した新興国が規制に反対しているという一文。「とみられ」なんて、NHKのくせに産経を思わせる、ソースの不明確な、直接裏を取っていないみなし記事だよね。ていうか、最近産経と見分けがつかなくなってきた感じだけど・・
 NHKさん、それ誰に聞いたの? 「連携するから大丈夫ヨ」といった霞ヶ関のヒトですか?
 確かに新興国における資源管理は遅れているでしょう。しかし、勝川氏が指摘するペルーのように、新興国でも資源管理において日本よりはるかに秀でている国もあります。ペルーもTPP交渉には加わっていますが、やはり日本側の主張に賛同してはいないんでしょうねえ。


   日本+新興国・途上国(中国・韓国除く) V.S. 欧米(白人の反捕鯨国)


 いやはや、NHKさんらしい、実にわかりやすい対立の図です。お決まりのパターン。作られたイメージ。正義¢ホ悪
 しかも、相手は見事に反捕鯨御三家だね(笑)
 米国との交渉でタッグを組める分野があるのかどうか知らないけれど、日本政府が働きかけているのがこの2国というだけの話なんじゃないの? それともまた水産ODAを餌に釣るつもりなのか・・・
 ベトナムさん、マレーシアさん。少なくとも水産(/海洋環境)分野で日本と組むのはよしたほうがいいですよ。日本は反面教師≠ナしかありません。
 NHKのニュース(引用下)、全漁連「など」って入ってるでしょ? 漁港整備の補助金が入らなくて困るのは、農水官僚と密接な天下りリレーションを構築してきた水産ゼネコン業界ですよ。燃油補助金のほうも、全漁連・漁協はマージンが入ってホクホクと指摘されたとおりですが。
 日本の真似をして補助金をばら撒いたりするのではなく、米国なりAUSから先進的な資源管理制度を導入するほうが、豊かな海の自然を持続的に利用し、次世代に残していく道につながるはずです。日本のように手遅れになる前に。



◇なんでもかんでも消費者に責任を押し付けるのが霞ヶ関流


■消費者にメジマグロを食べるなと言っても話にならない|BLOGOS/中島聡氏
http://blogos.com/article/68753/


ぶっちゃけて言ってしまえば、日本の水産庁にとっての No.1 のプライオリティが「水産資源の保護」でないところが一番の問題で、それがクロマグロやウナギを絶滅に追いやっているし、調査捕鯨などという馬鹿げた詭弁を作り出しているのだ。(引用)


https://twitter.com/katukawa/status/370745571344019458

国が漁獲規制をしないから、メジマグロが大量に流通しているのだけど・・・(引用)

https://twitter.com/gyoruikonoehei/status/371057878485827585
魚がその場にいたらいるだけ獲って、お咎めもなし。そりゃ大事な水産資源も激減しますって。国が魚食推進に力を入れる一方で、後手に回る乱獲対策。消費者も賢くなれと言われても、漁業に関する適切な施策作りはお役人様の仕事ですので。(引用)


 名文につき必読です。
 中島氏の事例、米国もこういうところは本当に羨ましくなってしまいますね・・。米国も日本と同じくらい、あるいはそれ以上に駄目な部分も多いですが、漁業規制・水産資源保護への国の取り組み、漁業者のモラル、消費者/市民の意識に関しては、日本より格段に上といわざるを得ないでしょう。
 対する日本では、先日もチビチビのマグロの解体動画が受けているとか、海の自然とすっかり切り離された哀しい国民性を映し出す話題がニュースになっていましたけど・・・


 さて、この宮原水産庁次長発言ですが、実効性の欠片もない、まさに企業・マスコミの「地球に優しい」エコ(エゴ)大合唱を髣髴とさせるパフォーマンスそのものじゃありませんか?
 「食べるな」といっている相手の消費者は、顔の見えない不特定多数であり、誰もが「自分は関係ない」と思えてしまえる対象。自覚のない当の乱食消費者も含め。
 SSCS(シー・シェパード)といった外国人とともに、いちばんなすりつけるのにもってこいの相手。
 日本政府は同じことを様々な問題で繰り返してきたわけです。自分たちの責任を回避する手頃な口実として。
 閉鎖動物園や生体輸入販売業者の責任を一切問わない外来生物問題も然り。同じくペット殺処分問題も然り。パーム油をはじめとする第三世界の環境破壊を招く各種製品も。
 原発の電気も、国策として強引に推進してきた当事者責任をぼかし、消費者・納税者にフクシマに対する負い目だけを背負わせようとしている点で、構図は見事に共通しているといえるでしょう。 
 問題は存在しないといい続け、いよいよ隠し切れなくなると当たり障りのない敵≠見つけて罪をなすりつけてさらに時間を稼ぎ、結局のところ何もしないで済ませようとする。
 日本はいつからここまでおかしな国になってしまったのでしょう?




◇お知らせ

 悪質ななりすましトラブルに見舞われているため、法的対処が済むまでブログ記事更新の自動アップを含めツイッター利用を見合わせます。

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2013年08月21日

命より南極プロレスが大事?/逆立ちする捕鯨ニッポン

◇命より南極プロレスが大事?

■水産政策審議会第45回企画部会議事録
http://www.jfa.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/pdf/45kikakubukai.pdf

 調査捕鯨の実施主体である共同船舶と切っても切れない関係にある全日本海員組合の高橋健二水産局長のコメントがあります(p18)。資料4の中身がわかりませんが、文面を読むと、おそらくバレニン教PRのための鯨肉料理の写真か何かを使ってるんでしょうねぇ・・。で、高橋氏が、その写真を下のほうにやって、シー・シェパード(SSCS)とのプロレスの写真を入れてくれ!と要求していると・・。
 高橋氏・海員組合は「危険!危険!」と必死に訴えているわけですが、ここで次のp19の木場弘子委員(千葉大客員教授・元TBSアナウンサー)のコメントに目を移していただきましょう。

来週、海上保安庁のほうの交通政策の基本的な施策を5年に1回更新する委員会に初めて出るに当たって、つい昨日レクチャーを受けました。その中で気になったのが、事故のうち小型船の事故というのが7割もありまして、そこには漁船とかプレジャーボートが入っているという説明を受けました。その事故の内容で死亡事故にまで至る重大な事故というのが、やはり小型船が9割も占めるというのを聞きました。その中で私が伺いたいと思ったのは、AISという自動船舶識別装置のことです。今は義務づけられているのは500トン以上の大型船等々ということで、もちろん小さな漁船の方々は義務づけられてはいないのですが、ただ、簡易的なものはかなりお値段も低く、30万程度ではないかとおっしゃっていました。こう言った安価な物の活用によって、漁船の皆さんの安全をより担保できるようなことというのは可能なのかという点と、もしもそういったものが多少国からの支援、助成によって漁船の方がつけることによって多少事故が減る可能性があるのかという点について、教えていただければと思います。(引用)


 調査捕鯨円滑化事業の名目で国から拠出される金額はいまや年間11億円に上ります。他にも「儲かる漁業」なり何なり、債務超過に陥っても救済してくれる至れり尽くせりの破格のサービスを、この特定の一事業者のみが受け続けてきたわけです。

 なぜ海員組合は、SSCSとのプロレスの絵≠ノばかりこだわり、毎年死亡事故が起きている零細な漁船の船員の安全を守ることの必要性を訴えないのでしょうか? 組合員でないからでしょうか? 共同船舶は株主として一連托生の関係にあるけれど、零細漁民のことは知ったこっちゃない、ということでしょうか?
 なぜ水産庁は、事故が起きていない南極海でのプロレスに毎年10億円超の税金を注ぎ込みながら、事故を少しでも減らすための予算を付けることをずっと渋り続けてきたのでしょうか?
 なぜマスコミは、絵≠ノなるプロレスばかりを取り上げる一方、生活のために命がけで漁をしながら、国から救済の手を差し伸べられずにいる零細漁民と小型船事故の問題を取り上げようとはしないのでしょうか?


 
  海上保安庁の統計資料によれば、H24年の海難事故隻数2,261隻中漁船は651隻でプレジャーボートに次いでいます。しかし、死者・行方不明者数では78人中55人、2/3は漁業者なのです。
 零細漁業者にとっては、背に腹を替えられずに危険を承知で操業し続けているのでしょう。しかし、事故がまだ起きていない南極プロレスのほうは、南極産ナガスの尾の身のために無駄な税金を注ぎ込むのをやめさえすれば済むことです。
 問題はすべて、水産庁・国の優先順位が完全にひっくり返ってしまっていることにあるのです。


参考リンク:
−海難の現況と対策について(平成24年版)資料編
http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/kouhou/h25/k20130328/k130328-siryou.pdf
−なぜ海員組合はここまで力むのか?|Yahoo!BBS
http://textream.yahoo.co.jp/message/1834578/a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa?comment=64022
−南極海>>尖閣領海!? 日本の調査捕鯨強硬政策は狂っている (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/62765769.html
−ヒトの命に関わるリスクまで背負った飽食の国の鯨肉という食品 (〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/25212992.html
−異常に高い調査捕鯨事業における死亡事故リスク (〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/30992331.html
http://kkneko.sblo.jp/article/34484278.html



◇逆立ちする捕鯨ニッポン

 上掲のトピックは、捕鯨サークルの特殊性というよりは、いまの日本という国の性格≠端的に示しているにすぎません。
 大切なことと、バカげたことの優先順位が逆転してしまうという。
 遅々として進まない原発事故被災者支援をめぐる訴訟、そして海洋流出に続くタンクからの超高濃度汚染水漏れの発覚。
 自動車やマンションの需要を掘り起こすための減税措置や、公共事業への大判振る舞い、癒着業界団体と一体で進む得体の知れない官製ファンドの乱立、海外の投資家たちや米国政府に対する諸々の約束事と比べたとき、そのスピード感・ボリューム感のあまりのギャップに驚かざるを得ません。
 311で変わるかに思えたのですが、逆向きに思いっきり振り子が振れてしまいましたね・・・


 〈毛なしのアザラシ〉たちは生きものとしての自分たちの拠り所を見失っているんだわ……。それで時制が混乱してるのね。彼らが思い描く未来世界のイメージは……欲望を反映しただけにすぎない空しい希望と、目を背けることでリアリティを拭われている絶望とが錯綜してる。未来を拒むために現在に閉じ篭もり、現在を否定して未来に逃避してる……虚偽の悪循環なんだわ。過去はその虚偽を当然のように見せかけはしても、真実のほうはぼかして暗がりに追いやってしまう……。行き着く先に待ち受けているものは……なに? 空恐ろしい予感がするわ……。
http://www.kkneko.com/nvl/sec50.htm


 上掲は拙著「クジラたちの海」の主鯨公クレアの台詞。改訂版も初版とほとんど変えてません。発刊は311よりだいぶ前だったのですが・・・
 少なくともベクトルは今が最悪の気がします・・・・

 


 筆者をいま攻撃している人物が前から撃ってるのか後ろから撃ってるのか、判定できずにいる次第。本当は発信者情報開示までやるべきなのですが・・

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2013年08月11日

エゾシカよりオスプレイを駆除したら?

◇エゾシカよりオスプレイを駆除したら?

■釧路湿原のエゾシカ捕獲へ 急増でタンチョウへの影響も
http://www.asahi.com/national/update/0808/TKY201308080308.html


 環境省は、ジュゴンが過敏になり、餌場を放棄するのを恐れて、オスプレイを駆除しないの? ビョウドウな<Aセスメントをしたの?



◇恣意的な法解釈が大得意な捕鯨ニッポンにICJで勝たせていいの!?


■海外で武力、認める余地ない 解釈改憲は邪道 阪田雅裕・元内閣法制局長官に聞く (8/9,朝日)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201308080619.html?ref=reca


 国際司法裁判所は、調査捕鯨裁判の裁決を下すに当たって、日本の二枚舌、恣意的な法解釈・運用(憲法含む)の実態にも十分留意すべきでしょう。
 以下もご参照。

−ICJ調査捕鯨訴訟の核心─憲法とICRW
http://kkneko.sblo.jp/article/70152801.html
−動愛法2条適用問題
http://kkneko.sblo.jp/article/70657008.html



◇異(食)文化への無理解で世界に恥をさらす捕鯨ニッポン


https://twitter.com/Ikuya_Ueta/status/366163224908939264


長崎市は「トルコライスの日」を制定したが、トルコ大使館に「イスラム教とは豚肉を食べません」(当たり前です)といわれ、やめたそうですね。(引用)


 親日国トルコに対してまたしても失礼なことを・・。よその国の創作寿司メニューにはいちゃもんつけるくせに、自分たち以外の文化圏の食文化に対しては恐ろしく無理解な捕鯨ニッポン。


参考リンク:
−聞いてあきれるデントウブンカ・長崎編
http://kkneko.sblo.jp/article/14632407.html
http://kkneko.sblo.jp/article/16409364.html



◇食ブンカなんてその程度の代物です


■東京都も対策に動き出した弁当の「路上販売」 新しい規制は必要か?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130524-00000407-bengocom-soci


 これも立派な行商文化、食文化。業者にとって死活問題なのも事実。国も都もこれらの業者に配慮し、《儲かる弁当販売&竢赴焉tを創設して、税金で赤字を穴埋めしてなどくれません。食文化は決して侵すべからざる聖域などではないのです。日本においてすら。
 鯨肉食はドングリ食と同じ。世界中のどこの国よりも命を粗末にしている、人口一人当り最悪の食料廃棄国が、ただの食材を地産地消≠ニいうかけがえのない上位に置くのは本末転倒。伝統文化に対する愚弄です。
 税金を注ぎ込み、国が消費を煽り、学校給食のメニューにまで無理やり加えて、南極の自然を荒らすことを、ブンカの名の下に正当化するのは、「傲慢な価値観の押し付け」「文化帝国主義・拡張主義」に他なりません。
 日本が海岸をコンクリで固め、自分たちの首を絞めるほど魚を乱獲しまくり、干潟や藻場を埋め立てて台無しにし、確たる証拠もなく野生動物を悪者扱いして殺し、大量の放射能を垂れ流し、海の自然を貧しくするのは、日本の勝手な価値観といえばそれまでかもしれませんが、太平洋に面する他の国々にとっては大迷惑。
 ましてや地球の裏側、南極海での話。日本とは比較にならないほど海の自然を大切にするオーストラリア、ニュージーランドをはじめとする南半球の国々は、近海を回遊する移動性野生動物を大切にする素晴らしい文化を誇っています。海辺の自然を厳格に守り、漁業の節度を保つことにおいても、日本よりはるかに格上。海を汚し、荒らしまくってはばからない尊大な飽食大国に、そのかけがえのない文化を一方的に踏みにじられるのを、どうして黙って見過ごすことができるでしょう?

 そのようなことは絶対許してはなりません。世界の恥です。


 新作『クジラたちの海──the next age』、悠宇耶編の3話になぜかアクセスが集中・・。何か検索で引っかかったかもしれませんが、ここに書かれているIT事情はいい加減なので、あまり真に受けないでください。この物語はフィクションです。。
 一月ほど寝かして文章を手直ししたあと、PDF版を作成し、その後いよいよ前作の英訳に着手する予定。
 ICJでAUS・NZが勝ってくれれば、余計な支出を強いられなくて済むんだけど・・・



 ツイッターの活用に支障が生じているため、来週中に司法対応を済ませる予定・・・

posted by カメクジラネコ at 12:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

捕鯨礼賛に突っ走る毎日新聞

◇海を殺す国、捕鯨ニッポン・続

 事故が起きてしばらくはみんな、1年のうちに地下ダムでガッチリ固めて漏れないようにしてくれるだろうとか、そんなふうに思っていなかった?
 なんとかなる(してくれる)だろうと。 国全体が危機感・緊張感を持っていた当時でさえ。
 日本って、一言でいえば《原発が合わない国》なんだよね・・・ 
 世界中のどこの国よりも合わない≠フに、世界中のどこの国よりも前のめり≠ノなっている国。
 事故からたった2年しか経ってないのに……海洋汚染は他人事……節電意識もどこへやら……国あげて輸出ビジネス支援……核燃サイクルもカネを理由に止められず……除染も被曝健診も口先ばっかり……
 以前、姜尚中氏も指摘していたけれど、311は私たち日本人にとって、これまでの過ちに気づき、価値観を再構築するきっかけになるはずだったんだよね。それがいつのまにやら、311以前にも増して、現実から目を背け、受け入れるのを拒否する風潮が支配的になってしまった。いつのまにやらというか、選挙を重ねる度ごとに、という感じだけど・・・
 残念ながら、悲惨な戦争の過ちも、同じく悲惨な原発事故の過ちも、食い止めることはできませんでした。
 同じ過ちを再度繰り返すことは、日本人が、ニンゲンという動物が、万物の霊長を名乗るにはあまりにも愚かしすぎることの証明にほかなりません。



◇産経新聞の上をいく捕鯨礼賛紙に成り下がった毎日新聞

 
■なるほどヒヨコ:なぜオーストラリアは捕鯨に反対なの? (8/2,毎日小学生新聞)
http://mainichi.jp/feature/maisho/news/20130802kei00s00s011000c.html
■15歳のニュース:豪VS日本、調査捕鯨裁判 法律論も巻き込み注目 (8/10,毎日大阪版)
http://mainichi.jp/area/osaka/news/20130810ddlk27100484000c.html


 ICJ(国際司法裁判所)でのクジラ裁判以降、拙ブログにてランキングで偏向報道大賞を差し上げた毎日新聞が、あまりにも稚拙でレベルの低い捕鯨礼賛記事を連発・・
 上段の毎日小学生新聞の記事のほうは、ブリュッセル支局斎藤義彦記者の書いた7/15掲載の「質問なるほドリ」と変わりません。
 今月10日に掲載された大阪の地方版に掲載された下段の記事は、大阪本社編集局の山成孝治記者によって書かれたもの。
 裏をまったく取っていない間違いだらけの内容なので、以下に指摘しておきましょう。

@「縄文からの関わり」の裏◆文化的不連続と持続性のなさ

 まず、能登の真脇遺跡から出土しているイルカの骨ですが、堆積層中から発見されたのは285体程度。集落があったと考えられるのは今から6千年〜2千年前まで、そのうち中期以降としても、年間に捕獲した頭数がたかが知れていたのはいうまでもありません。地層中で保存されやすかっただけ。当時の人たちは利用できる食料を何でも利用しており、寄りイルカもその一部にすぎなかったというだけの話です。貝塚の貝の数を考えればわかるでしょう。
 いずれにしても、縄文時代のイルカ猟はアイヌ文化の系譜であり、アイヌの伝統捕鯨を認めない倭人の文化とは無関係です。
 実際には、江戸時代にも真脇地方でイルカ猟が行われていたのですが、散発的に千頭も捕獲するような、持続性とは縁もゆかりもないとんでもない代物だったのです。生存・生活を直接依存する貴重な資源として、時間をかけて自らを戒める形で持続性を確立してきた真の伝統漁労ではなく、たまたま手に入った「もっけもの」という感覚だったからこそ、こういう愚かな乱獲が出来てしまったのでしょう。それ故に他の地域と異なり、明治に入る以前に廃れてしまったのです。
 今日のウナギ・マグロをはじめとする水産資源の惨憺たるありさまに直結する、日本の乱獲漁業、持続的水産物利用の落第生ぶりを象徴するものだったといえるでしょう。
 中世の突取式捕鯨が、発祥地と初期の移植先で乱獲が祟って次々に自滅に至ったことなど、日本の古式捕鯨史の真相について無知なまま、あろうことにも「日本人とクジラは長く、しかも安定した多彩な関係を結んできました」(引用)と、まったく事実に反するガセネタを流してしまったのです。
 斎藤氏と同様、山成氏も大先輩たる原氏のバイブル『ザ・クジラ』には目もくれなかったのでしょう。

A「油目当てに乱獲」の裏◆日本は油目当てにも鯨肉目当てにも乱獲してきた

 捕鯨問題ウォッチャーにはすでに既知ですが、日本は戦前外貨獲得目当てに国際協定にも加盟しないままクジラを乱獲しまくり、肉も脂も無駄にしていると他の捕鯨国からクレームが出ていたほどでした。
 日本は51年に加わりましたが、この時期、世界は反捕鯨へ一転しました。(引用)

 もう笑うしかありません。捕鯨賛成派さえ、ここまで商業捕鯨史について無知な人間が新聞記者を名乗っていることに、開いた口が塞がらないでしょう。不勉強度に関しては、おそらく歴代擁護記者の中でも最強でしょう・・・
 その次のセンテンスは斎藤記者の記事と同じ内容で、筆者がツイッターで批判したもの。繰り返すと、AUS・NZの過去の捕鯨は均せば年400頭程度。日本の古式捕鯨も年間数百頭規模、多い時は800頭は獲っていたとみられています。マッコウ目当ての米国の帆船も来ていましたが、セミ、コク、ザトウは日本の乱獲が主因で激減したのです。
 日本が殺した南半球ナガスの数は、累計で12万頭を越えます。南半球で、ですよ!?
 山成氏も、斎藤氏と同じく、日本(の捕鯨産業)がどれほど大きな責任を有しているかには、一言も触れませんでした。
 これはいわば、日本の戦争責任に一切触れることなく、米国の原爆投下を非難し、「米国は歴史を踏まえて♀j軍縮など口にしてはならないし、日本の核保有を認めるべきだ」と主張しているのと、まったく変わりありません。
 自国の過ちを何一つ省みることなく、よその国の過去をあげつらう、山成氏や斎藤氏のような人物が日本で新聞記者を務め、記事を配信していることに、筆者は日本人の一人として恥ずかしい思いでいっぱいになります。本当に。

B「正当な訴訟か否か」の裏◆ICJとAUS・NZをコケにする日本の訴訟戦術の狡猾ぶり

 さて、山成氏は書き出しで「最終盤で注目を集めた」(引用)などと書いているのですが、これは同記者がICJを口頭弁論の内容をろくにチェックしていない証拠。日本はメモリアルで明記し、期間中もこの主張を混ぜ込む戦術を一貫して取ってきました。そもそもイレギュラーな手口。だれも注目なんてしていません。むしろ科学性の部分で不利が露呈したため、頼らざるを得なくなったとさえいえます。
 詳細はリンク先の過去記事をご参照。

C「捕鯨問題の主な主張」の裏◆トホホな食害論を唱えて墓穴

 双方に直接提示させないえげつないやり方ですが、非科学的な食害論を最後に付け加えることで墓穴を掘っていますね。野生動物保護、環境問題、生態学への理解が欠片もないことがモロバレ。
 この辺は捕鯨協会がソースなのでしょうけど・・

 勉強と猛省を促しても、ここまでレベルが低いともう無理でしょうね・・・ 

参考リンク:
−ICJICJクジラ裁判報道マスコミランキング (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/71016491.html
http://kkneko.sblo.jp/article/71443019.html
−やる夫で学ぶ近代捕鯨史−番外編− (拙HP)
http://www.kkneko.com/aa1.htm
−真脇遺跡|ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E8%84%87%E9%81%BA%E8%B7%A1

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2013年08月07日

小説完結/狂信的鯨肉カルトと穏健捕鯨容認派は別

◇『クジラたちの海──the next age』完結
http://www.kkneko.com/nvl/nmokuji.htm


 一応脱稿しました。しばらく寝かしてから手直しを入れますが・・・
 当初は来年のIWC年次総会までに書き上げる予定でしたが、余計な横槍が入ったおかげ(?) で早く仕上がりました。出版社とケンカしたため(汗)、大変なのは発行先・エージェン トの確保ですが・・
 捕鯨、原発、沖縄の問題に真っ正面≠ゥら取り組んだ作品です。詳細は解説にて。
 長編ですが、動物ファンタジー、海洋ファンタジー、SFファンタジーを守備範囲とされる方は、ぜひご一読ください。
 皆様からのご感想をお待ちしておりますm(_ _)m



◇狂信的鯨肉カルトと穏健捕鯨容認派を区別しよう


■鯨類捕獲調査改革推進集中プロジェクト改革計画書
http://www.jf-net.ne.jp/fpo/gyoumu/hojyojigyo/01kozo/nintei_file/H241002_kujira.pdf


 資料の公開先がリンクを変更したので再掲。
 官庁・公益法人のサイト更新の際、リンクジャンプや修正表示など、ユーザビリティへの配慮が欠けているのは本当に困りものですね。PDFなど1年たつと大体どっかへ消えちゃいますし・・


「販売不振により、過年度在庫が発生している」(引用、p21)


 読んで字の如しです。
 これは当の捕鯨サークル(水産庁・鯨研・共同船舶)が自白している「厳然たる事実」です。


 当事者が公表し、国会答弁で農相も発言している「事実」、鯨肉が売れず、大量の在庫が発生していた「事実」を認識できない人は、日本の捕鯨の応援団ですらありません
 捕鯨サークルの利益など頭になく、「鯨肉が売れている」という迷信にただひたすらしがみついているだけの、正真正銘の狂信者の集団です。おそらく人員は5名以下でしょうが・・
 

 クジラの保護に関心のある方は、捕鯨サークル(内野)、メディア・著名人(外野)、穏健容認派市民(応援席)のみ相手にしましょう。フーリガンは無視すること。
 見極めはきわめて簡単です。捕鯨サークルは必ずしも正直ではありませんが、誰であれ、自分たちに明らかに不利になるだけの嘘はつきません。在庫問題のように。
 捕鯨サークル側の提示資料さえも否定する自称捕鯨賛成派≠フ人たち=狂信者です。
 まあ確かに、「誤った情報を延々と流し続ける」狂信者たちがいるのは困ったものですが、万一引っかかる市民がいた場合は、速やかに上のKKP計画書を教えて、カルトから救出してあげましょう。

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2013年07月28日

ICJクジラ裁判報道マスコミランキング・2

 鴨シーアクションに参加された皆さん、熱い中ビーチクリーンアップまでお疲れ様でした。
 今日はNHK深海ザメ特集ですね。深海の脆弱な生態系についても、当の深海サメの生態についても不明なまま、海の自然に無関心な消費者に美容・健康サプリを提供すべく、歯止めのない乱獲が進んでいる状況に、警鐘を鳴らすきっかけになればいいのですが・・・

◇ICJクジラ裁判報道マスコミランキング・2

■春秋 (7/18,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO57468590Y3A710C1MM8000/


こういう風習は日本中にあった。苦心して捕獲した鯨をあますところなく利用し、その恵みに感謝して霊をとむらったのだ。鯨塚は東北から九州まで広く分布、なかには戒名をつけてもらった鯨もいるという。かくも高い精神性を伴ってきたのが日本の捕鯨文化なのだが、感情的な反捕鯨運動の前に立場はますます厳しい。
(中略)
国際的なルールのもとでの行為をやめさせようとは提訴自体に異文化への不寛容がにじむ。ICJは敢然と退けてほしいけれど、判事の過半数は反捕鯨国の出身でもあり予断を許さない。
遠い海まで出かけて捕るよりも沿岸捕鯨の復活に力を、という声もあって問題は複雑だ。しかし世論があまり盛り上がらないのは、鯨を食べる機会がめっきり減ったせいでもあろう。狂信的な団体の妨害もあって捕獲が減り、鯨食がますます廃れていく仕儀だ。鯨塚を築いた先人たちの思いを、どうしたら引き継げようか。(引用)


■捕鯨文化を守りたいが【私説・論説室から】 (7/24,東京)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2013072402000163.html


国際条約では商業捕鯨は三十年近く凍結されたままだが、生息数や生態を分析する調査捕鯨は種類、頭数を制限して認めている。だが、オーストラリア政府が提訴して「科学を装った商業捕鯨にすぎない」と全面禁止を求めた。日本政府は「種の保存に考慮しながら持続可能な捕鯨をしている」と反論し、全くの平行線だった。
(中略)
捕獲数など厳格な条件を付けたうえでこれまで通り調査捕鯨を認めてほしいが、先住民による伝統猟も含め捕鯨実施国は六、七カ国だけ。国際社会では逆風が強い。(引用)


 前回のブログ記事後に掲載されたマスコミ報道をチェックします。といっても、情報としては何の価値もない小論説記事ですが。原発推進の日経、批判の東京とも、クジラ裁判コラムは同水準のトホホなガラクタ。

 まずは日経から。記者のいう「高い精神性」裏事情を説明しましょう。それにしても、自分で言っててよく恥ずかしくないものですね・・・
 ポイントは2点。鯨塚の詳細については参考リンクをご参照。


@捕鯨と無関係な鯨塚のほうが多かった。
A動機もさまざまだが、供養した一番の理由は仏教徒としての「後ろめたさの解消」


 これらの鯨塚は(古式)捕鯨業者が建てたものばかりではありません。全国的には、流れ鯨、寄り鯨に由来するもののほうがずっと多いのです。捕鯨ではなく「拾鯨」

 日本の多くの漁民にとって、クジラは魚を追い込んでくれる海の神、恵比寿でした。
 そして、飽食の現代日本とはまったく異なる時代状況も背景にありました。多くは飢餓や貧困から救ってくれたことへの感謝なのです。
 三崎地方では「流れ鯨を拾った船元の家は栄えた例がない」との言い伝えがあり、西浜延命地蔵の鯨塚は祟りを恐れて建てられたとされます(「日本漁民史」)。
 三崎の鯨塚については同地方で行われた捕鯨業者が建てたとの説もありますが、建立時期が天保なので間違い。相模湾には戦国末期に突取の技術が導入され、業態としての捕鯨も行われたのですが、乱獲が祟ってあっという間に自滅に陥ったのです(「慶長見聞集」)。
 中には浦安のように、「高い精神性」どころか割としょうもない理由もあります。何しろ中世日本では銅鉱に次ぐ一大マニファクチャー、金にはなりましたからね・・

二人の漁師は大鯨捕獲劇でもちきり英雄扱い有名人となり仕事には手が付かず、 年配者の示唆を受けて気を引き締めるため「大鯨の碑」を稲荷神社末社にたて奉納したといわれる。(引用〜参考リンク2番目)


 さらに、京都の在胎鯨子塔の碑文が示すとおり、「食べ(ることができ)なかった」ケースまであるのです。


嘗て鯨をとりしが子鯨、母鯨にそうて上となり下となりて其の情態甚だ親しく、既に母鯨の斃る頃も、頑是なき児の母の死骸にとり付きて、乳を飲む様にも見えたり、よって屡々これを取除かんとすれども遂に離れず、拠無く子・母共殺すに至る。いかなるものもその様を見てはその肉を食うに忍びず、此処に葬りて墓を建て供養せり、定めてこの墓の鯨もザトウなるべし。(引用〜参考リンク1番目)


 日本が現在南極と北西太平洋で行っている調査捕鯨は、ランダムサンプリングということで未成熟の仔クジラをたくさん殺しています
 日経記者殿は、日本人のどれほど「高い精神性」を備えていたか、一から勉強し直すべきでしょう。その精神が現代においてかくも失われてしまった理由についても。
 日本で鯨肉消費が一気に増大したのは戦後、敗戦国へのアメリカの配慮のおかげです。クジラにとっては災難でしたが。もともと一部地方のハレの日の食材、食べる機会がふんだんにあること自体、真の伝統食文化に逆行する異常なこと。もっと減らしてナンボ。
 「鯨塚を築いた先人たち」が、この日経記者のような手合いが日本人の伝統と精神を捻じ曲げていることを知ったら、さぞかし嘆くことでしょう。

 続いて東京新聞のコラム。署名があるだけ日経よりマシですが、書いてあることはグチャグチャ。
 山本勇二氏は論説室"専門"編集委員とのことですが、ひょっとしてこんなろくでもないコラムばっかり書いてるんでしょうか・・
 まず、商業捕鯨の凍結(モラトリアム)は条約の条文ではなく付表の修正によるもの。日本が調査捕鯨の根拠としている国際捕鯨取締条約(ICRW)8条には、「生息数や生態を分析する」「種類、頭数を制限して」などとは一言も書かれていません。もしあったら、オーストラリア(AUS)は120%快勝できたでしょう。前回の朝日記事の解説でも触れたことですが。
 管理のために最も重要な情報である生息数を調べるのは、非致死の目視調査。調査捕鯨に時間と手間を取られるせいで、調査の精度が落ちています。生態の調査については、毎年850殺し続ける必要など何もなく、これも優先順位のはるかに高い調査がなおざりにされているせいで、満足に活用することさえできない有様。
 「捕獲数など厳格な条件を付けたうえでこれまで通り調査捕鯨を認めてほしいが」という表現は、日本語として成立していない二律背反。日本の主張は「厳格な条件を付けるな!」、「これまでの調査捕鯨」は事実上の無規制捕鯨に他なりません。
 残念ながら、今回のICJ訴訟の背景・経緯についても、口頭弁論の内容そのものについても、山本編集委員が何も勉強しないままこのコラムを書いたことがわかります。
 論説中二番目の段落の「すべて利用」「感謝の気持ち」云々については、日経と同様、外に対してアピールできちゃうこと自体恥ずかしい話。公平を期せば、口論の相手になった米国記者も彼と同水準かもしれないけど・・


 マスコミの皆さん。別に賛成でもかまわないけど、とにかくもっと勉強して!!(--;;

参考リンク:
−鯨文化:鯨を弔った鯨墓・鯨塚など
http://www.geocities.co.jp/NatureLand-Sky/3011/kujirahaka.html
−東京湾岸内・外の鯨塚
http://www.geocities.co.jp/NatureLand-Sky/3011/haka-toukyou.html
−ほんの穏やかな意見ですが|其蜩庵井蛙坊
http://blog.goo.ne.jp/matonn-8/e/57f281e29aabbf635deb911274d54fde
−三浦浄心の「慶長見聞集」〜やる夫で学ぶ近代捕鯨史番外編・1
http://www.kkneko.com/aa1.htm
−日本人がクジラを供養した理由〜NHKの捕鯨宣伝番組4(拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/31422606.html
−日本の日本のマスコミによる捕鯨報道は素人レベル(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/18740030.html




◇捜査中・・・

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2013年07月17日

国際クジラ裁判報道ランキング/鶴岡発言の真意

◇ICJ調査捕鯨訴訟報道・マスコミランキング

 国際司法裁判所(ICJ)で3週間にわたって交わされたクジラ裁判のオーストラリア(AUS)・ニュージーランド(NZ)・日本による口頭弁論が16日終了。
 参院選投票を間近に控え、原子力規制委員会の審査やいくつかニュースもあった関係か、全体的に海外メディアに比べて報道量が少なく、具体的な内容も乏しい印象を受けます。そして、いくつかのマスコミ報道は、日本政府の思惑に沿ったすり替えや世論誘導が明らかで、いわゆる大本営発表の形になっていたのは否めません。
 以下、最終弁論前後の報道に絞って、各社がどのように報じたか一つ一つチェックしていきましょう。


■捕鯨訴訟が結審、判決へ 日本、適法性を再度強調 (7/16,共同)
http://www.47news.jp/CN/201307/CN2013071601001927.html
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201307170061.html


 訴訟の最大の争点は、日本が南極海で実施している調査捕鯨が、国際捕鯨取締条約により認められた科学的研究のための捕鯨に当たるかどうか。(引用)


 淡々と伝えるニュートラルな記事。詳細版(中国新聞)ではAUS、NZ、日本の主張をコンパクトにうまくまとめています。
 引用した文も的確。ポイントは「条約により認められた」「〜のための捕鯨に当たるかどうか」という部分。
 日本の国民は「調査捕鯨は科学だ」と信じ込まされているわけですが、「そもそも調査捕鯨って何なの?」ということが問われているわけです。
 AUS・NZ側は「調査捕鯨というからには、まっとうで優れた、本当に必要な科学調査でなきゃダメだ」と主張し、それに対し日本側は「ともかく科学のつもりであれば勝手にやっていいんだ、科学性で判断しちゃダメなんだ」と主張しているわけです。


■捕鯨訴訟が結審、判決へ 日本、適法性を再度強調 (7/16,時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013071600497


 訴訟で日本が勝利すれば調査捕鯨は維持できるが、不利な判断が示された場合には判決に即した軌道修正を迫られる見込み。(引用)


 時事もわかりやすくまとめています。後述するNHKよりニュートラルでまとも。ただ、日本側弁論の最終日とはいえ、載せたコメントは鶴岡審議官のみで、AUS・NZ側の主張はこの記事では取り上げていません。

■国際司法裁、調査捕鯨裁判の口頭弁論終結 年内にも判決 (7/16,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1603L_W3A710C1FF1000/


 日本側の代表を務める鶴岡公二外務審議官(経済担当)は16日の最終弁論で「ICJが今回の捕鯨裁判を管轄する権限がないこと、もしくは豪州の請求を却下することを要請する」と述べ、日本の主張を全面的に支持するよう訴えた。(引用)


 日経は鶴岡審議官の主張のうち「管轄権」に関する部分を取り上げました。日本側が最終的な結論に持ってきたのがこれ。詳細は7/1の拙記事「ICJ調査捕鯨訴訟で日本は負ける」をご参照。
 AUS・NZは「調査捕鯨の科学性の有無・是非」を追及したわけですが、それに対して日本側は「科学性はある」と弁解しながらも、結局一番の反論は「ICJに管轄権はないから門前払いしろ」だったわけです。本来は門の外で言うべきことを、門に入ってから言っちゃったわけですが・・
 ただ、この鶴岡氏の結論のコメントは日本語表記としても変。そして、大きな問題は「却下」という用語の使い方。鶴岡氏が用いた単語はrejectですが、日本の民事裁判・行政裁判では却下と棄却の使い分けに意味があり(〜wiki)、ここで当てはめるなら前半が「却下」、後半が「棄却」。
 本来なら先決的抗弁で「却下」を求めるべきところ、日本の取った戦術≠フおかげでICJにとっては「却下」でも「棄却」でも大差なくなってしまったとはいえるのですが。日本の国際法・司法に対する認識がどれほどいい加減なものか、新聞記事でも象徴される形に・・。
 今回の訴訟の概略を掴むには、日経(の趣旨)と共同の記事を併せて読む必要があるかもしれません。


■日本、最終弁論で合法性主張 ICJの調査捕鯨裁判 (7/16,朝日)
http://www.asahi.com/international/update/0716/TKY201307160518.html
■(天下逸品)ふれあいに一番近い島 (7/16,朝日夕)
http://www.asahi.com/culture/articles/OSK201307150017.html


 日本側代理人の鶴岡公二・外務審議官はこの日の法廷で、日本の捕鯨は「科学的知識を得る目的だ」と改めて主張。豪州の訴えが、そもそもICJで扱われる問題ではないとして却下するか、豪州側の主張を退けるかのいずれかを求めた。
 その一方で、来年から国際捕鯨委員会(IWC)で南極海の調査捕鯨の見直し議論が始まることにも触れ、「必要ならば調査捕鯨の計画を修正する用意がある」と説明した。
 日本はこれまでの口頭弁論で、科学研究目的のため限定的な捕鯨を認めた「国際捕鯨取締条約」の条文をもとに、年数百頭の捕鯨の正当性を主張してきた。
 一方、豪州は「実際は肉を売るための商業捕鯨で、科学的根拠はない」と非難。日本は「鯨資源の保護のために必要で、殺さないと取れないデータもある。科学的成果も上げている」と反論した。また「科学には多様な意見があり、一つに定義できない」とし、あくまで条文に基づく司法判断をICJに求めた。
 もし日本に不利な判決が出ても、「北太平洋の捕鯨は裁判の対象外」(日本外交筋)という。ただ、内容によっては捕獲量を減らさざるを得ず、捕鯨の継続が難しくなる可能性はある。 (引用)


 NHKや毎日ほどひどくはありませんが、やや野島記者の主観で起承転結の流れを作った印象があります。
 大手新聞の記事にしては、日本語表現もやや変です。「科学的知識」→「科学的知見」、「科学的根拠はない」→「科学的正当性はない」、「科学には多様な・・」→「科学性については多様な」にすべき。「豪州の訴えが〜を求めた」の文章については、上掲日経記事の解説と同じ。「却下」の使い方は日経と違って一応合っていますが、文章はわかりにくいですね・・
 非常に問題のある記述が、上掲三段目の 「限定的な」。もし、ICRW(国際捕鯨取締条約)8条にその文言が入っていたなら、AUS・NZは文句なしで楽勝できたでしょう。きわめて残念なことに・・。
 日本が現在強行している南極海調査捕鯨(JARPAU)は「限定的でない」からこそ国際的な裁判沙汰になったのです。半世紀以上前の条約起草時には想定外だった、終わりのない年数百頭規模の調査捕鯨という明らかに限度を超える¥況に対処するためには、「きちんと限定すべきだ」というのがAUS・NZの主張です。そのためにICJに判断を仰いだのです。
 書かれていない用語を「条文」に勝手に入れてしまい、しかも同じセンテンスに「年数百頭」と入れることで調査捕鯨の規模を矮小に見せかけようとする、きわめて問題の多い記事です。ミスリードというより明白な誤りなのですが。
 もう一つ問題のある記述は「鯨資源の保護のために必要」。主語が見当たりません。そして、「鯨」と「資源」をくっつけてますね。日本側も"conservation"という単語を度々用いました。反論の余地があるとはいえ、「生態等の研究のために必要」「(間接的に)役に立つ」という趣旨の発言もありました。また、「商業捕鯨(再開)のために必要」「資源の持続的利用のために必要」ということも明言しました。しかし、「クジラを保護≠キるためには毎年数百頭殺す研究が必要不可欠」という趣旨の主張は、少なくとも筆者は聞いていませんでした。日本側は突っ込まれたくないハズ。もしあったとすれば、それこそ大問題です。
 このきわめて曖昧な表現は、「日本の調査捕鯨が、クジラという野生動物を保護するために行われているのだ」という、事実に反する重大な誤解を、朝日新聞読者に招きかねません。
 繰り返しますが、これはまったく事実に反します。毎年数百頭の捕殺を要求する大型野生動物の生態調査は、日本の調査捕鯨以外存在しません。保護を口実にしようとしまいと。調査捕鯨の必要性は、あくまで「商業捕鯨をやるという前提のもとでの鯨資源の管理」という文脈なのです。日本側の主張でさえ。「クジラを保護するため」ではありません。
 殺しておいて保護なんて、日本語として間違っているのは子供だってわかります。せめて「(資源の)保全」でしょう。
 朝日野島記者は、ジャーナリストとしては日本語が稚拙か、野生動物保護全般に無関心か、調査捕鯨を積極的に擁護すべく新聞記者としての立場を利用しているか、いずれかでしょう。たぶん、三番目ではないのでしょうけど・・。目を通したはずの編集委員の質も問われますし。
 「調査捕鯨計画の修正」に関しては、次のトピックで詳細に取り上げます。


 同日の朝日夕刊には御蔵島のイルカの記事。女性ダイバーとイルカの写真が紙面一杯に掲載され、文章も感傷的(と反反捕鯨層なら噛み付くでしょう・・)。野生動物・海洋生態系保護に関心の高い層にアピールして、紙としてバランスを取ったつもりかもしれませんが……AUSの沿岸でクジラに親しんでいる市民が見たら一体どう感じるでしょう?


 やれやれ……まだ悪質とまでは言い切れない朝日でこんなに引っ張っちゃいましたね(--;;
 続いて、ワースト3位の発表に行きましょう。「トホホ賞」読売さん。次点が産経佐々木記者(6/28の拙ブログ記事ご参照)。いまのところ産経の記事が確認できないため、後で読売を抜くかもしれませんが・・


■調査捕鯨裁判…「言い尽くした」日本、豪は自信 (7/16,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20130716-OYT1T01029.htm
■国際司法裁判 科学的な調査捕鯨は有益だ(7月15日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20130714-OYT1T00805.htm
http://the-japan-news.com/news/article/0000382249


 残念な社説≠フほうは、天木氏のブログと拙ツイログ及び過去記事をご参照。
 '09の同社社説で示された「調査≠フために年間1000頭近い鯨を捕獲する必要があるのか、といった疑問は、日本国内にもある」との見解は、AUSにプレゼン資料として取り上げてもらいたかったくらい、価値があったんですけどね・・。

 記事については、AUSの主張に対して日本が反論するという体裁にはなっているのですが、朝日よりはマシという感じ。
 一点、これは記者の誤解によるものでしょうが、日本側の主張として「持続可能な捕獲数を調査するため」という表現を使っているのは誤り。日本の趣旨は、「持続可能な捕鯨(再開)のため」「調査捕鯨自体は持続的」。
 「持続可能な捕獲数」自体は、調査捕鯨なんてやらずとも、RMPを使えば推定個体数だけで何の問題もなく℃Z出できます。日本側は「精度を上げられる」と主張しているわけですが、精度を上げるためにもっと出来ること、必要なことが他にあり、調査捕鯨の所為で着手できていないのが実情。
 朝日記事と同様、この表現だと「調査捕鯨しなきゃ捕獲数がわからないのか・・」と読者が受け取めてしまう恐れがあります。


 続いて、ワースト2位。「大本営賞」は一応′共放送のハズのNHK


■国際捕鯨裁判が結審 年内にも判決 (7/16,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130716/k10013077741000.html


 この判決について異議申し立てや控訴などはできず、双方とも判決に従うとしているため、オーストラリア側の主張がすべて認められるようなことになれば、日本が行ってきた南極海での調査捕鯨ができなくなるだけに、判決の行方が注目されています。(引用)


■捕鯨裁判 判決で大きな影響も (7/17,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130717/k10013084881000.html
http://textream.yahoo.co.jp/message/1834578/a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa?comment=63155


 判決は早ければ年内にも出される見通しで、内容次第では日本の捕鯨の将来に大きな影響を及ぼすことになりそうです。
(中略)
 また、判決の行方は、捕鯨国と反捕鯨国の対立から行き詰まりを見せている、IWC=国際捕鯨委員会の議論にも影響を与えるのは必至とみられています。
 IWCのフレデリック・シュメ副議長は、NHKのインタビューに対して、「両国の法廷闘争は、捕鯨委員会の議論にマイナスの影響を与えると思う。判決次第では建設的な対話がより難しくなる」と指摘し、合意を得るための交渉が今後ますます困難になるのではないかと懸念を示しました。(引用)


 NHKの報道の内容は、一見中立公正であるかのように見えますが、「すべて認められるようなことになれば」「できなくなるだけに」といった表現は典型的な煽り。南極海での調査捕鯨が、(あたかも領土係争中の島の如く)一歩も譲れない重要な国益=A1億の日本国民にとって重大な関心事であるかのよう。天下の公共放送のニュースを見て、そういう気分にさせられてしまう視聴者が多いのも、残念ながらこの国の現実ですが・・。
 IWC副議長のインタビューについては、確かにそういう懸念もあるのですが、NHKは背景の説明を一切省略しています。
@まず、行き詰まりを打開するために、アイルランドが公海母船式捕鯨を禁止する代わりに沿岸捕鯨を認める妥協案を提示した(’97)。米国は別途日本に同様の提案を打診している。日本はこれを蹴った。
A同じく、行き詰まりを打開するために、外部専門家デソト氏を招いて双方の譲歩を目指した。(’09)
Bところがこれも日本とAUSが譲らず、行き詰まった。結果としてAUS・NZによるICJ提訴の運びとなった。
 そして、合意を得るための交渉が困難になるのは、「日本側実質勝利」というケースのみです。この影響は非常に甚大。後に説明する理由で、おそらく日本は自発的に「削減」を表明するはずですが、その後は完全に固定化しかねません。
 一方、AUS実質勝利であれば、日本側がそれに従うという誓約を守る限り、スムーズにさまざまな建設的な議論ができるようになるのは疑いの余地がありません。
 NHKの記事は、あたかも「AUSの所為で交渉が困難になる」と受け取られかねません。提訴したのは確かにAUSですが、責任が大きいのは明らかに南半球諸国の反対を押し切って調査捕鯨を強行し続けてきた当事国である日本です。


 続いて、いよいよワースト1位の発表。「偏向報道大賞・こどもまで洗脳できたで賞」毎日新聞ブリュッセル支局の斎藤義彦記者に進呈。


■質問なるほドリ:なぜオーストラリアは捕鯨に反対なの?=回答・斎藤義彦 (7/15,毎日)
http://mainichi.jp/opinion/news/m20130715ddm003070050000c.html
■調査捕鯨:日本「条約順守」…訴訟が結審 国際司法裁判所 (7/17,毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20130717k0000m030073000c.html


 豪州は「調査捕鯨はクジラを殺すのが目的」などと動物保護の世論を意識し、日本に攻撃的な議論を仕掛けたが、日本は「条約を順守している」と法律論で応じた。
 (中略)日本が16日、「管轄権」問題を前面に打ち出したのは、豪州の提訴を事実上、門前払いする効果を狙った戦略だ。
(中略)
 キャンベル豪州代表は16日、「今回の件に適用されない」と反論したが、国際法に詳しいブリュッセル自由大のフランクス教授は「理論的には却下もありうる。日本は最初から主張もできたが戦略的に後回しにしたのでは」とみる。
 (中略)
 豪州側はワロウ氏が09年に日本で叙勲されたことまで持ち出し、証人の中立性を疑う攻撃的議論を展開。
ワロウ氏が「豪州側の証人より中立だ」と反論すると法廷はどよめいた。
豪州側は同氏から否定的見解を引き出そうと詰問を約1時間続けた。
 日本側は「冷静に応じる」として調査捕鯨が合法との法律論を述べ、科学的実績も紹介。
豪州など先進国が価値観を他国に押し付ける「“倫理的十字軍”の時代は終わった」とけん制した。
(中略)
 日本捕鯨協会の分類によると判事の出身国は10カ国が反捕鯨で過半数だ。
(中略)
 日本はモラトリアム実施の際、クジラの科学的データの不足が指摘されたことから、商業捕鯨再開のため、合法的に調査捕鯨を始めたと主張している。


 ここまで悪質な記事は久しぶりに見ました。さすがにサンケイ佐々木記者も真っ青・・。
 子供・家庭をターゲットにした超えげつない振り仮名付き解説記事については拙ツイログの批判とリンク先をご参照。以下では17日の記事をチェックします。

 引用1段目、おそらく内外の捕鯨問題ウォッチャーの大多数は、AUS(特に1周目)が予想以上に控え目だったのに対し、日本は最初からエンジンフル回転という感じで超攻撃的な弁論を展開していたことに同意されるでしょう。AUSのメディアがドレフュス司法長官の談話を引いていますが、取材した海外メディアの関係者はみな、守る側の日本の「offensive」ぶりに目を丸くしたに違いありません。ICJ判事たちもまず間違いなくそう受け止めたことでしょう。
 斎藤記者の目にはAUSの主張が「動物保護の世論を意識」したものに感じられ、「攻撃的」な印象を受けたようですが、実際にはむしろ逆です。AUS国内での各種の発言・論調に比べれば、弁論は明らかに抑制されており、「動物保護派」なら不満を覚えるほど慎重な言い回しに終始していました。当然そうあるべきですけど・・。で、日本側は「言ってることがずいぶんと違うんじゃねえか?」と必死に当てこすっていたわけです。攻撃的≠ノ。
 AUS側が積極的に攻めたのは「科学性」に関する部分。「動物保護の世論を意識」という斎藤記者の指摘は、度のきついメガネ越しの主観でしかありません。環境保護でも野生動物保護でもなく「動物保護」という用語を使う辺りが恣意性を感じますね・・。
 加えて、対する日本側は「法律論で応じた」というより、「科学性」と「法律論」を度々切り替えて誤魔化す応戦スタイルを示していました。
 2、3段目では斎藤記者の無知が露呈。上掲日経記事の解説と過去記事で説明したとおり、門の中に入って「門前払い」もへったくれもありゃしません。
 奇妙なのは、外野のフランクス教授のいう「日本の戦術」について、斎藤記者が具体的な説明を一切していない点。フランクス氏もおそらく筆者と同じ見解に違いないでしょうが、これは「科学性について十分な論議をさせない時間稼ぎと論点の拡散」を狙う戦術であり、マナー違反です。筆者にいわせれば墓穴
 4段目、日本側証人ノルウェー・オスロ大ワロウ氏の証人喚問については、AUSがかなりポイントを稼いだサンプルサイズの設定など肝腎の証言の内容には一切触れず。斎藤記者のメガネは、日本側に都合の悪いところは完全にカットして見えなくなるよう加工が施されてるんでしょうねぇ・・。
 ワロウ氏は捕鯨国ノルウェーの学者、日本側の証人であって、日本とのスタンスはイコールではないものの、そもそも最初から中立でなどあり得ません。なぜ日本で叙勲されたのか、日本人を含めて関心を寄せるのは当然のことですが、斎藤記者はジャーナリストとして疑問すら感じなかった模様・・。
 これではまるで、「ワロウ氏が中立かどうか」が争点として争われたかのよう。記事としてはまさにゴミ。斎藤記者は、ただの挨拶代わりのちょっとしたジャブの応酬を、まるで訴訟の核心であったかのように報じ、あえてカモフラージュに使ったわけです。すり替えの意図があったのは明白。
 5段目、科学的実績は「ある」というだけで、具体的には紹介されていません。精子の活性とか、しょうもない研究で論文数を稼いでるのを、法廷でばらしたくはないもんね・・。調査目的に掲げられた項目の多くは、未だに不明で成果が挙がっているとは到底いえないか、脂皮厚推移のように明らかに結論が飛躍している内容の乏しい研究ばかり。そんなものは実績とは言えないと、AUSは口酸っぱく説明してきたはず。
 6段目、やはり捕鯨協会とリレーションがあるのでしょうかね。記事の中で協会の名前を出したのは唯一斎藤記者のみ。判事の出身国に強い興味を抱いたのも、サンケイと毎日斎藤記者、後は日テレくらい。
 最後、「クジラの科学的データの不足が指摘されたことから〜始めた」との記述について。まあ、始めた理由は誰の目にも明らかですが・・。データの不足については、2期にまたがるJARPAをもってしてもまだ埋め合わされてなどいません。そして、不足のままでも管理が行えるようにと「わざわざ捕鯨国側に配慮して」開発された管理方式こそがRMP(改訂管理方式)でした。
 ここは斎藤記者の作文ではなく日本側の主張を取り上げたにすぎませんが、「AUSの主張はこれですべて論破してやったぞ」というつもりで、結びに持ってきた節がうかがえます。捕鯨協会の指導を受けたのでしょうか?
 捕鯨協会に情報を聞けるくらいなら、IWCの過去の経緯についてきちんと勉強するべきでしたね。


 大変残念に思うのは、毎日新聞の姿勢です。15日の斎藤記者の解説記事はあまりにも公平性を欠く内容でした。同紙はラマレラ特集など他の記者の手による過去の一連の記事でも、強い捕鯨擁護色が見受けられましたが。
 朝日の石氏、読売の岡島氏と並ぶ大手新聞三社の環境記者として知られた元毎日編集委員の原剛氏が著した『ザ・クジラ』は、捕鯨問題のバイブルとして高い評価を受けました。が、同紙では上から圧力がかかった話も聞いています。


 最近、とある野生動物が開発によって追い詰められている問題について、他紙にはなかなか取り上げてもらえない中、同紙のある記者の方が深い理解を示してくださり、心強い詳細な論説記事を書いてくださいました。その動物は、ミンククジラのJストックと同様、地域によっては間違いなく絶滅の危機に脅かされていますが、レッドリストに指定されているわけではありません。
 記事では「本当に必要な開発なのか」を問い、「目先の豊かさより、野生動物の暮らせる豊かな自然を後世に遺すことの大切さ」を訴えていただけました。「自然と命を大切にする本物の日本の伝統」、地域に語り継がれてきた、野生動物との上手な付き合いの歴史についても取り上げてくださいました。
 記者といっても、同じ新聞社に勤めていてさえ、自然保護・野生動物保護に対する認識が天と地ほど違うこともあるのだと、改めて思い知らされます。
 そのとある野生動物と、取り巻く自然を守りたいと願っている日本人とまったく同じように、グレートバリアリーフなど南半球の海を回遊する野生動物として、ミンククジラやザトウクジラを守り続けたいと切に願っているAUSやNZの市民の皆さんがたくさんいるのです。
 自国の過ちを何一つ省みることなく、よその国の過去をあげつらう、斎藤氏のような人物が日本で新聞記者を務め、記事を配信していることに、筆者は日本人の一人として恥ずかしい思いでいっぱいになります。
 ドップリ捕鯨礼賛の価値観に侵され、業界よりの記事しか書くことのできない記者に、提灯記事を書かせる毎日新聞の姿勢は、決して容認できるものではありません。


参考リンク:
−ICJ調査捕鯨訴訟で日本は負ける (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/70305216.html
−却下|ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%B4%E4%B8%8B
−日本の調査捕鯨を正当化する社説を掲げた読売新聞 (7/15,天木直人のブログ)
http://www.amakiblog.com/archives/2013/07/15/
−筆者のツイログ (7/16a.m.2時台)
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-130716
−読売新聞にベストバランスメディア賞を(勝手に)授賞!
http://kkneko.sblo.jp/article/34727956.html
−捕鯨報道・マスメディアランキング (拙HP)
http://www.kkneko.com/media.htm



◇鶴岡発言から見えてくる日本の戦略


■日本政府代理人 鶴岡公二外務審議官による最終陳述及び最終申立て(仮訳)
国際司法裁判所(ICJ)における「南極における捕鯨」訴訟|外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page24_000038.html
http://www.mofa.go.jp/files/000007683.pdf
■日本政府代理人 鶴岡公二外務審議官による冒頭陳述
国際司法裁判所(ICJ)における「南極における捕鯨」訴訟(仮訳)|外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page4_000117.html
■日本政府代理人 鶴岡公二外務審議官による談話
国際司法裁判所(ICJ)における「南極における捕鯨」訴訟|外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page22_000056.html


 さて、いま見たら、仮訳とはいえ外務省も日経と同じく棄却の代わりに「却下」という用語を使っちゃってますね(汗)
 最終日の弁論はパリ西部大のペレ氏と鶴岡審議官の2名のみ、予定時間より30分近く早目に幕を閉じてしまいました。結論と挨拶だけであっさり終わったという印象です。

 
 ペレ氏は8つのまとめを上げましたが、鶴岡氏が最終的に要求したのは2点。筆者が指摘した日本の主要な論点3点のうち、やはり@に主眼を置いていたことが伺えます。詳細は7/1の記事をご参照。
 一点、このときの記事について補足したいと思います。
 AUSの義務的管轄権(選択条項)受諾宣言を引き合いにしてICJに管轄権がないとする日本の主張は、NZの権利、そしてICJに解決を託そうとするすべての国連加盟国の権利を過剰に制約しかねない危うさをはらんでいます。
 ICJ規定62条及び63条に記されるとおり、ICJは裁判とその条約解釈に影響を受ける国の参加を認めています。条約そのものの審議ではなく、提訴国が要件を満たすかどうかのみを理由に、手続に参加した他の国に対しても判決による拘束を求めることは、今後のICJの運用のあり方にも重大な一石を投じることになるでしょう。
 まあ、AUS・NZ側が共同戦線を張った理由も、確かにこの部分の補強にあったんでしょうけどね。どちらが頼んだか知りませんけど。
 そういうわけで、ICJが中立公正な審議をモットーとする国際社会の良識の府≠ナあるなら、少なくとも日本側が第一に要求している「却下」はないと筆者は考えます(そうでないと困ります・・)。

 鶴岡氏がフランス語も英語もペラペラなのはさすがと思いましたが、AUS・NZ側が両国とも司法長官を代表にしてきたのに対し、ご自身が政府代理人トップの立場で出席したことに対しては、内心どう感じていらっしゃるでしょうね・・
 鶴岡氏の最終陳述の中で筆者が注目したのは一点なのですが、その前にせっかくなのでいくつか補足しておきましょう。


4.致死的調査からのデータを使用した科学論文の発表を拒否する科学雑誌をコントロールすることはできません。(引用)

 査読雑誌に不掲載となった理由は、キャンペーンのせいでも、日本の研究者が英語が下手だったからでも(本当にそうならそれはそれで問題ですが)、「真実を示す機会」がなかったからでもありません。詳細はAERA('08/4/7)『捕鯨ナショナリズム煽る農水省の罪』にあるとおり、身内の水産官僚ですら「科学性は5、6割」とのたまう程度の代物だったからですよ。ついでにいえば、一定の水準を満たさなければ調査捕鯨論文と同様に弾かれるというだけの話です。
 7.ホエールウォッチング(WW)の分科委員会の件については、AUSも謝罪した方がいいでしょう。が、IWCの場で非消費的利用について議論することに対し、当初捕鯨サークルは「なんで捕鯨委員会なのにWWなんかやるんだ!」と相当バカにしていたことも確かでしょ。
 8.ワロー教授の件は、捻じ曲げたのではなく引き出しただけ。ま、役割は完璧に果たしてくれたと思いますが。
 12.脱退はただのブラフ。そんなことより、国内の少数派と多様な価値観を尊重していただきたいもの。判事もわかってるでしょうが・・

 で、筆者が注目したのは以下。特に下線部分。

10.裁判所長,裁判所の裁判官の皆様,私達の目を将来へと向けましょう。JARPAIIは,来年,IWCの科学委員会によって見直しが行われます。日本は,これまで多くの資源と努力を費やしてきたこの計画について,真剣かつ建設的に科学的な見直しがなされる機会をとても楽しみにしています。日本としては,見直しにおける議論とその結論を十分に検討した上で,必要であれば,調査捕鯨の計画を修正する用意があります。(引用)

 合法性についても、850頭のサンプルサイズの科学性についても、あれだけ「完璧」だといわんばかりの主張をしていたのに、急にしおらしくなった印象がありますね。
 完璧だったら、見直しの必要などありません。
 さんざん正当化してきた挙句、「修正する用意がある」と突然言い出すのは、あまりに大きな矛盾です。
 科学は何も決めません。そして、科学政策は、予算の範囲で、優先順位を付けて決めるものです。
 科学は「聖域」にはなり得ません。日本だってこれまでそのような扱いなど決してしていませんでした。ただ一つの事業、南極海で強行されてきた調査捕鯨を除いて。
 この鶴岡氏の発言にはがあります。レールはとっくに引かれていました。 

−鯨類捕獲調査改革推進集中プロジェクト改革計画書
http://www.jf-net.ne.jp/fpo/gyoumu/hojyojigyo/01kozo/nintei_file/20121002_kujira.pdf


 捕獲数の削減は、IWC-SCの議論とも今回のICJ訴訟の行方とも無関係に、元から決まっていたことでした。
 JARPA2は目標生産量に基づいて設定し直されます。
 赤字にならないように。
 日本側はおそらく、この削減を「科学による修正」、「AUS等の声に配慮し、大幅に譲歩した結果」として大喧伝するでしょう。
 まさにいい子ぶりっ子です。
 無論、ICJの裁決次第で流れは変わってきます。
 可能性は少ないものの、AUS・NZ側の完勝に近い判決が出れば、母船式調査捕鯨はほぼ「ジ・エンド」でしょう。北西太平洋の裏作≠セけでは商業的に$ャ立しません。(本物の)調査捕鯨をやることは可能でも。長きに渡り背負い続けてきた理不尽な重荷を、日本はやっと降ろすことができるわけです。後1年で打ち切られる「儲かる漁業」補助金に代わるカンフル剤を探す必要もなくなり、多くの水産関係者はさぞかしホッとするでしょう。おそらく、良識ある一部の水産官僚・外務官僚も含め。
 中途半端な判決となった場合、そして同じく可能性はかなり少ないですが、日本側のほぼ完勝となった場合、当初日本側が思い描いたとおりにことが運ぶだけです。そして、AUSもNZも実効的な対抗策を失います。
 もし完勝したら、外交上日本はとてつもない得点を稼いだことになります。大金星を挙げた鶴岡氏の株も急上昇するでしょう。「AUSやNZのために必要もないのに身を削って、筋を曲げて数を減らしてやるなんて、日本ってなんて素晴らしく奥ゆかしい国なんだろう!」と当分の間自画自賛しまくりでしょうね・・。美しいのが大好きな誰かさんなんか大はしゃぎでしょう。
 赤字を解消するのが本当の理由なのに。
 最初は超攻撃的にAUSをこき下ろしていた日本が、しまいになって謙虚ぶったからといって、ICJが甘い点を付けてあげる必要はありません。

 今回の裁判は、私たちの日本にとって、水産業界にとっても、しがらみ、重い足枷から解き放たれる、実質最後のチャンスかもしれません。
 KKPの内容は、まだ昨年の段階で練られたもの。アベノミクスの為替誘導の所為で円安が一気に進み、燃油はさらに高騰しています。高級料亭で尾の身をつつきたがる庶民離れした小成金も若干増えたかもしれませんが、鯨研/共同船舶にとっては収益を悪化させる要因のほうが確実に効いているはずです。
 以前に決めた計画、目標生産量では、調査捕鯨事業は赤字体質から脱却できないでしょう。
 さらに、補助金で出来たのは一時的に寿命を延ばすための小幅改造だけです。
 先の見通しなど何もないのです。
 永田町の族議員のルサンチマンのために、あまりに不合理な、非常識な、地球の裏側での公共事業(プロレス)をこれ以上続けることは、納税者、しわ寄せを食う漁業者にとって、何一つためになりません。
 調査の名を借りた公海母船式捕鯨には、ここらで花道を用意して、おいとましていただきましょう。それが唯一の、合理的で、常識的な道です。AUSやNZではなく、日本にとっての。

参考リンク:
−国際司法裁判所規定|国際連合広報センター
http://www.unic.or.jp/information/international_court_of_justice/
−Written Observations of New Zealand | ICJ
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/17256.pdf

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2013年07月08日

動愛法改正関連パブコメ

◇動愛法改正関連パブコメ(7月12日〆切)──クジラ・イルカも関係するよ!

■動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針及び動物の飼養及び保管に関する基準等の改正案に対する 意見の募集(パブリックコメント)について (お知らせ)|環境省
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16763


 皆さんも環境省に意見を送りましょう!
 以下に筆者の文案を掲載しておきます。


 〜 〜 〜


<告示の名称>
「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」


<該当箇所>
添付資料1・P3〜P4
(合意形成)


<意見内容>
該当箇所を削除すべき。


<理由>
「合意形成」は法律の制定に際して図られるべきものである。
該当箇所の記述の一部には、同法第2条及び第20条の条文、趣旨及び精神と矛盾しているもの、明確に反しているものが見受けられる。
「適正」な動物の利用とは、あくまで法律に反しない形で行われる利用を指すべきである。
何となれば、「万人に共通して適用されるべき社会的規範」こそが法律だからである。
もし、現行法とは異なる新たな社会的合意が形成された場合、まず合意を踏まえた法律の改訂がなされるべきであり、改訂されない限り、法がすべてに優先されるべきなのは、法治国家として当然のことである。
現行の同法第2条及び第20条の条文には、誤解を生む余地は何もないと考える。
環境省は、法の遵守のために必要な各基準・指針を、漏れのない形で、早急に整備する必要がある。


 〜 〜 〜


<告示の名称>
「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」


<該当箇所>
添付資料4・P1
同基準の名称


<意見内容>
該当箇所を以下に修正すべき。


「実験動物等の飼養及び保管及び捕殺並びに苦痛の軽減に関する基準」


<理由>
実験動物のみ、飼養又は保管のみでは、同基準(1)「実験等」に明確に該当しながら、同基準に漏れ、同法が適用されないケースが生じる恐れがあるため。例:第二期南極海鯨類捕獲調査
野外捕殺に関する基準を別途作成するか、同基準の適用範囲を拡張することで、同法が適用されない不公正な事態を食い止める必要がある。


 〜 〜 〜


<告示の名称>
「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」


<該当箇所>
添付資料4・P2
第2 定義
(2) 施設


<意見内容>
該当箇所を以下に修正すべき。


(2) 施設 実験動物等の飼養若しくは保管または実験等を行う施設(船舶を含む)をいう。


<理由>
同基準(1)に定義される「実験等」を行う施設の中には船舶が含まれるため、明示したほうがよい。


 〜 〜 〜


<告示の名称>
「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」


<該当箇所>
添付資料4・P2
第2 定義
(3) 実験動物


<意見内容>
該当箇所を以下に修正すべき。


(3) 実験動物等 実験等の利用に供するため、野外で捕殺若しくは施設で飼養又は保管をしている哺乳類、鳥類又は爬虫類に属する動物(施設に導入するために輸送中のものを含む。)をいう。


<理由>
飼養又は保管のみでは、同基準(1)「実験等」に明確に該当しながら、同基準に漏れ、同法が適用されないケースが生じる恐れがあるため。例:第二期南極海鯨類捕獲調査
野外捕殺に関する基準を別途作成するか、(1)と同様に(3)の定義を拡張することで、同法が適用されない不公正な事態を食い止める必要がある。


 〜 〜 〜


<告示の名称>
「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」


<該当箇所>
添付資料4・P2
第2 定義
(4) 管理者


<意見内容>
該当箇所を以下に修正すべき。


(4) 管理者  実験動物等及び施設を管理する者(研究機関の長等の実験動物等の捕殺又は飼養又は保管に関して責任を有する者を含む。)をいう。


<理由>
実験動物等、飼養又は保管のみでは、同基準(1)「実験等」に明確に該当しながら、同基準に漏れ、同法が適用されないケースが生じる恐れがあるため。例:第二期南極海鯨類捕獲調査
野外捕殺に関する基準を別途作成するか、(1)と同様に(3)の定義を拡張することで、同法が適用されない不公正な事態を食い止める必要がある。


 〜 〜 〜


<告示の名称>
「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」


<該当箇所>
添付資料4・P7
第4 個別基準
1(1) 実験等の実施上の配慮


<意見内容>
該当箇所を以下に修正すべき。


1(1) 実験等の実施上の配慮  実験実施者は、実験等の目的の達成に必要な範囲で実験動物等を適切に利用するよう努めること。また、実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、麻酔薬、鎮痛薬等を投与すること、麻酔薬等を用いない捕殺の場合は致死時間の短縮に努めること、実験等に供する期間をできるだけ短くする等実験終了の時期に配慮すること等により、できる限り実験動物等に苦痛を与えないようにするとともに、保温等適切な処置を採ること。また、実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、代替法を選択又は開発する等、利用に供される動物の数の削減に努めること。


<理由>
実験動物等、飼養又は保管のみでは、同基準(1)「実験等」に明確に該当しながら、同基準に漏れ、同法が適用されないケースが生じる恐れがあるため。例:第二期南極海鯨類捕獲調査
野外捕殺に関する基準を別途作成するか、(1)と同様に(3)の定義を拡張することで、同法が適用されない不公正な事態を食い止める必要がある。
第1「一般原則」1「基本的な考え方」で数の削減が謳われながら、基準に反映されないのでは基準の体をなさない。苦痛の低減とともに数の削減についても明示される必要がある。


 〜 〜 〜


<告示の名称>
「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」


<該当箇所>
添付資料4・P8
第5 準用及び適用除外


<意見内容>
該当箇所を削除すべき。


<理由>
「畜産に関する飼養管理の教育若しくは試験研究又は畜産に関する育種改良を行うことを目的として実験動物の飼養又は保管をする管理者等」が準用ではなく適用除外となっているのは、「農林水産省の所管する研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」によって別途基準が提示されていることが理由と受け止める。
しかし、同法第40条2に明記されるとおり、環境大臣は協議した上で定めることができる。
「産業動物の飼養及び保管に関する基準」に定められる飼養者・管理者の多くが農林水産省所管であり、同省が所管施設に対する基準の設定を環境省に委ねている以上、「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」で扱われるべき畜産研究を適用除外とする合理的理由はない。
同じく、同基準に定められる飼養者・管理者の多くが文部科学省所管であり、環境省所管でない対象に対しても環境省が基準を定めている以上、同基準に該当する農林水産省所管の施設だけを除外する合理的理由はない。
基準の整合性を保ち、二重行政を避け、対象機関に対する不公正を是正するためにも、環境省が一括して基準を設定すべきである。
また、畜産分野にかからない捕鯨産業等における実験等の指針が宙に浮く形になることから、原則として適用除外の項目を設けるべきではない。
準用に関しても、「生態の観察を行うことを目的とする動物の飼養及び保管については、家庭動物等の飼養及び保管に関する基準に準じて行う」こととあるが、生態の観察を行う非致死的調査に対して愛玩動物を対象とする基準を適用しながら、同じ目的に基づく致死的調査に関しては基準が存在しないことは、同法の条文及び趣旨に著しく反する不公正であり、国民の納得は到底得られない。


 〜 〜 〜


◇補足解説


■動物の愛護及び管理に関する法律|環境省
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S48/S48HO105.html
■農林水産省の所管する研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針|農水省
http://www.maff.go.jp/j/press/2006/pdf/20060601press_2b.pdf


 パブコメ案のポイントについては、以下をご参照ください(余裕があれば後日書き足します)。この問題は、ICJ調査捕鯨裁判にも大きく絡んできます。


−拙ツイログ
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-130707
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-130708


 昨年の動愛法改正をめぐっては、筆者も一応注視していました。しかし、8週齢規制の導入を始めとする実効性を伴った生体販売・実験動物等の法規制は事実上見送られ、層の厚みがありながら大きな壁≠ノ跳ね返されたという印象が拭えませんでした。わずかな前進は確かにあったものの、諸外国に比べればあまりにお粗末な状況です。民主党政権である程度大きな一歩を踏み出せていれば、今回の支持率も違ってきたでしょうけどね・・
 残念ながら、日本のパブコメは、市民の声を聞いているという「アリバイ作り」、一部のNGOにコミット感を与える「ガス抜き」の側面が大きいのは否めません。
 確かに、霞ヶ関の職員にも、まじめに仕事してる方はいます(特に下の現場のほう)。しかし、基本は中立≠ネのです。政官業の癒着を構築できた相手は別格ですが。天下りポストやいろいろ美味しい果実≠用意できないNGOの声に、一方的に耳を貸すことはありません。まあ、貸しても耳だけ≠ナす。「握った上で批判役を演じている」と思い込んでいる方が一部にいるようですが、むしろ掌で踊らされているだけです。
 そのことも承知のうえで、やはり意見を送るに越したことはありません。業界の組織票に対抗する必要もありますし・・

 そういうわけで、筆者や犬猫・動物実験関係NPOの文案を参考に、ぜひ皆さんも意見を送ってください。上掲の文案は調査捕鯨のみを念頭に置いていますが、イルカ猟に関しても添付資料5「産業動物の飼養及び保管に関する基準」に対して同趣旨の意見を述べられます。


参考リンク:
−生体販売考(拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/66141893.html
−日本と欧米のペット事情──動物愛護最貧国捕鯨ニッポン(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/27417246.html

 
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2013年07月01日

ICJ調査捕鯨訴訟で日本は負ける

◇ICJ調査捕鯨訴訟で日本は負ける(可能性が高い)

■International Court of Justice|UN WEB TV
http://webtv.un.org/meetings-events/international-court-of-justice-ICJ/
■Pending Cases | International Court of Justice
http://www.ICJ-cij.org/docket/index.php?p1=3&p2=1&code=aj&case=148&k=64
http://www.ICJ-cij.org/docket/index.php?p1=3&p2=1&k=64&case=148&code=aj&p3=1


 6月26日から幕を開けたハーグのICJ(国際司法裁判所)における調査捕鯨裁判「日本v.s.AUS(オーストラリア)・NZ(ニュージーランド)」。
 例年なら、IWC(国際捕鯨委員会)の年次会議がどこかのリゾート地で開催され、巷で「アングロサクソンはけしからん!」と管を巻くヒトが一時的に増加するクジラの季節。隔年になって開かれないIWC総会の代わりに、今年はこのICJ訴訟が酒の肴を提供してくれているわけです。マンネリ気味で国民もいい加減飽きが来ているIWC総会とは趣向の違う、初の国際クジラ裁判ともなれば、外野の応援団もマスコミもいつも以上に熱気を帯びて不思議はない……のですが、どうもいまひとつ盛り上がりに欠けますねぇ。
 皆さん、《日本とAUSの泥沼裁判》ですよ?
 365日代わり映えのしない芸能人の離婚騒動や、「サムライ」言い過ぎたせいかデモで冷や水浴びせられたか少し息切れした感のあるW杯・コンフェデ杯、あるいは、遠い地球の裏側・南極海で繰り広げられる、当事者の一方的映像しか届かないSSCS(シーシェパード)と日本の調査捕鯨船団のプロレスごっことはワケが違います。
 《国と国とのケンカ》ですよ? 正面からがっぷり四つの。しかも、日本はデビュー戦
 もっと注目したっていいんじゃないの??
 IWCでの議論は、その内容がすべて市民にオープンにされてきたわけではありません。基本的に大本営発表に忠実な日本のマスコミに代わり、貧乏な市民団体が現地に足を運び、可能な限り情報を届けてくれてはいますが。それでも、外部専門家の仲裁案をめぐるデソト交渉の裏側、「関係者の間で具体的に何が話されたか」などは、ほとんど表に出てこなかったわけです。
 しかし、今回のICJ訴訟では、弁論の一部始終を国連が生中継で世界中に流しています。何もかも包み隠さず明らかにされるのです。

 捕鯨サークル(狭義には水産庁・日本鯨類研究所・共同船舶、広義には+族議員&御用マスコミ)がどれほど懸命にガセネタを流しまくって真実を覆い隠そうと、市民が主体的・能動的に情報を取得しようとすれば、阻むものは何もないわけです。一般市民にとって高いのは、むしろ英語の壁かもしれませんけど・・。ライブ動画は1日後にはアーカイブとしてアップされているので、なるべく早く誰でも読める英語・日本語のテキストの形で公開されてほしいもの・・


 さて、AUSが提訴に踏み切ったのは2010年のこと。それ以前に話が持ち上がったときから、米国等他の反捕鯨諸国や穏健NGOからは懸念する声が挙がっていました。御用新聞記者が他人の借り物で指摘しているとおり、AUS国内のメディア、閣僚の間でも反対論が根強かったほどです。筆者も再三にわたって問題点を指摘してきました。結局AUSをバックアップする形で訴訟に加わったNZも、当初は批判的でした。
 一種のギャンブルであり、AUS側に不利に働く要素も判っており、下手をすれば取り返しのつかない結果を招きかねなかったからです。別の喩えを使うなら場外乱闘。後でリングの上に戻ったとき、勝敗を決するダメージにつながりかねません。
 しかしその後、日本側は更なる失点を重ねました。AUS側の不利を埋め合わせるほどに。
 ひとつは、調査捕鯨の科学性の相変わらずなトホホぶり。
 もうひとつは、「震災復興予算」と「もうかる漁業」補助金を受け取っちゃったこと。

 この2点については、一連の過去記事でお伝えしたとおりです。
 今回は、日本側の対ICJ/AUS戦術の致命的欠陥について解説したいと思います。

 前々回の解説で、この訴訟の主要な要点を3つ挙げました。AUS側が訴えた争点が、日本の調査捕鯨の非科学性と違法性だから、市民・メディアも当然ここが注目点だと受け取ったわけです。
 ところが、日本側の反論は、非科学性の打ち消しに焦点を絞ったものにはなっていません。当然ながら故意によるものでしょうが、ポイントがずれています。
 上掲ICJのサイトの2番目のリンクに、3国の政府による提出資料が掲載されています。かなり重いPDFファイル(日本のなんか約280MB)ですが・・。
 日本側の主張は以下の3点に集約されます。


@ICJの管轄権外
AICRW8条一点集中による正当化
B調査捕鯨は科学的


 内外のマスコミや環境問題・動物問題に関心のある市民は、このうち主にBをめぐる議論に注目しているわけですが、@AはBに劣らず、あるいはそれ以上に、この裁判においては重要な争点といえます。そこには日本側の度を越えたしたたかさ≠ェ浮き彫りになっています。
 AはBの是非を問わず、@はB及びAの是非を問わず、日本の立場を正当化する内容となっています。つまり三段構えの主張になっているわけです。
 日本初となる国際法廷で、外務官僚の立てた戦術がどういうものかが、そこに反映されているわけです。戦術というより策略≠フレベルですが。
 しかし、AUS側の資料を解析したうえで綿密に練ったこの戦術には、日本自身が足をすくわれかねない大きな穴≠ェ潜んでいます。日本の敗北を決定付けるほど。
 筆者には、日本側が自らの弄した策略にはまり、自滅するシナリオが見えてきました。
 今回のICJ調査捕鯨訴訟は日本の負け。
 タレント弁護士風に、一応(可能性が高い)と付け加えておきますけど・・。なお、この見解は、AUS側の言い分とは別の、筆者個人の検証に基づくものですのでご注意。

 まず、ICJの流れをざっと説明しましょう。詳細はウィキペディア、朝日GLOBE特集をご参照。
 ICJは国連の司法機関。訴える側も、訴えられる側も国家。
 裁判になるのは、原告と被告の双方が同意した場合のみ。性格上仕方ないとはいえ、これはICJの限界ともいえるでしょう。
 ただし、義務的管轄権(選択条項)受諾宣言を出している国は、他国から訴えられた場合に応訴の義務が生じます。
 公平性がICJの大原則。縛りと自由のセット。条件を出したければ、相手にも同じ条件を認める。それがICJの裁判。
 下掲リンク3番目、国連のサイトに、それぞれの国の受諾宣言が示されています。日本とAUS、NZはともに受諾国。


−Statute of the Court|ICJ
http://www.icj-cij.org/documents/?p1=4&p2=2&p3=0#CHAPTER_II
−国際司法裁判所規程|国際連合広報センター
http://www.unic.or.jp/info/un/un_organization/icj/statute/
−各国の義務的管轄権受諾宣言・ICJ規程36条2|国連
http://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=I-4&chapter=1&lang=en
−国際司法裁判所規則|国際連合広報センター
http://www.unic.or.jp/files/1978.pdf


 だから、AUSは、日本には応訴の義務があり、ICJで審議すべきだと訴えたわけです。ごく単純に。
 ところが……日本はカウンターの提出資料でとんでもない主張を始めます。
 該当する部分は、資料の1章。31ページにわたり、ネチネチとAUSの揚げ足取りをやってます。
 ちなみに、CITESやCBDへの抵触については、ほんの一節でサラリと流して逃げています。こういうところで、日本がいかに環境保護・野生動物保護の意識が低い国かを、判事のみならず世界中に知らしめているといえますが・・
 この件に関しては、AUS側が28日の口頭弁論で、日本側の言葉遊びについて判事に丁寧に解説しています。(下掲リンクの拙twitpic参照)。
 
 1章の冒頭(P23)で、日本はいきなりICJの管轄権外だと主張します。
 ICJで訴えられた場合、取れる対応は3つ。@「ガン無視」A「ちょっと待て」B「やったろやんけ」
 義務的管轄権受諾宣言を出している国同士なら@はなしですが、管轄権外=「ICJでやる話じゃないでしょ」と、受理妥当性に意義を申し立てることが可能。これが先決的抗弁で、ICJは手続に入る前にその妥当性を審議することになります。上掲4つ目のリンクをご参照。
 日本はこれをやりませんでした。つまりB。売られたケンカを買ったわけです。
 ところが、蓋を開けると、A’「やっぱりちょっと待て」。どういうことなのでしょうか?

 そこで日本は判例を掲げています。ケースはマケドニア共和国V.S.ギリシャの国名紛争。ギリシャ側が(うちの地名と誤解招くという理由で)「名前変えないとNATO加盟を認めないぞ」と言い出し、怒ったマケドニアがICJに提訴。それに対し、ギリシャ側が「名前の話、NATOの話なんだから、ICJの管轄権外だ」と、先決的抗弁ではなくカウンターメモリアルで書いてきちゃったと。
 何しろ前代未聞の国の呼称問題で、しかもICJの裁定の内容を読むと、「先決的抗弁の条項を杓子定規に捉えず、もう少し弾力的に運用しましょうよ」という話です。少しくらいは大目に見てあげようと。
 ちなみにこの訴訟の主審は小和田判事。まあ、彼がネタ出ししたわけじゃないだろけどねー、まさかねー。
 で、判決は15:0でギリシャの負け。つまり「管轄権外だぞ」と文句を言った側の負け・・
 おそらく、ギリシャが誉められないうっかりミスをやらかして、大目に見てもらった最初のケース、なのでしょう。NATO問題がこういう形で遡上に上った例がなかったという事情もあったのかもしれませんが。


 この一文からわかるのは、日本の場合は明らかに故意にICJ規則79条を無視したということです。
 先決的抗弁は、ICJで無駄な訴訟手続を回避するシステムのひとつ。国連も当事国も金と時間を無駄にせずに済むのですから。
 わざわざ管轄権外との異議申立を、正式な手続を無視して応訴してからやる──。日本のやり方は、国際法の専門家たちの目には、ひどく奇異に映るでしょう。


 ここで日本の管轄権外との主張について、少し詳しく見てみましょう。
 AUSは2002年にICJの選択条項受諾にあたり、留保要件を付けました。海上の境界画定係争に関する事案については留保すると。該当する問題がICJの裁判にかけられたときは、義務的応訴はしませんよ、と。自分から同様の問題を訴えた場合は、もちろん相手の国も応じる必要はなくなります。
 「とある事情」があって、AUSはここを例外扱いしたわけです。わかる人には説明不要でしょう。まあね・・AUSも日本と変わらず、国として駄目なところはありますからね・・
 で、ある意味AUSの弱みといえる部分を、日本は目ざとく見つけて(?)つっこんできたわけです。
 曰く、「JARPAU(南極海調査捕鯨)は留保対象の事案にあたるのだから、AUSに日本を訴える資格はなく、ICJの管轄権外なのだ」と。
 AUSの宣言中にある語句"exploitation"=《営利的、搾取的な資源開発》に関しては、「JARPAUは商業捕鯨ではない科学なんだけど、《営利的、搾取的な資源開発》には当たるとぉーっても特殊な科学なんだぞぉ〜」ということを説明することに、たっぷり紙面を費やしています。
 ただし、日本側の解釈はかなり文脈をすっ飛ばしています。
 義務的管轄権受諾宣言の意味は、留保した要件については「(応じたくなければ)応じる必要はない」です。「応じてはならない」ではありません。当然応訴してもよいのです。
 「都合が悪い訴訟に関しては逃げる権利(正確には逃げない義務に対する留保)」であって、「都合の悪い訴訟に応じてはならない(訴えてもならない)という義務」ではありません。
 実を言うと、日本の法解釈が正しいという前提に基づけば、日本は先決的抗弁を提出し、「AUSに原告適格性なし」というICJによる判断を勝ち取ることが可能だったのです。
 それは、最も合理的で(財政的にも安上がりで!)日本に有利な対処法だったはずなのです。
 さらにいえば、AUSのICJ提訴に関して、諸外国・NGO、筆者などが指摘した、最もあり得るAUSの負けパターンでした。調査捕鯨の科学性について不問のまま、ただICJオプションを失うという。
 しかし、日本はとにもかくにも応訴したのです。応訴したうえで、実はAUSには訴える権利はなかったし、日本も応じる義務はなかったし、ICJも開廷の必要なんてなかったんだよ、と臆面もなく主張しているのです。これはあまりにもAUS、そしてICJをバカにした話です。


 日本はなぜ、最も楽で国民の負担も軽い、可能性の高い勝ちパターンを狙わずに、世界が首を傾げる無駄な応訴をわざわざやってのけたのでしょうか?
 にもかかわらず、どうして調査捕鯨の科学性一本で勝負しようともせず、ダラダラと管轄権の話に拘るのでしょうか?


 実際には、ICJの管轄権の問題を俎上に上げ、本案手続の中での先行審議を求める理由は、火を見るより明らかです。
 「科学性をチェックするための審議期間の短縮」、すなわち時間稼ぎ。
 だからこそ、日本は同じ手をクドクドと何度も繰り返しているのです。
 では、なぜみっともない時間稼ぎをしなければならないのか? もちろん決まっているでしょう。
 科学性だけでは勝ちが見えてこないからです。自信がないからです。
 中でもひどいのは1章2節(p33,34)、「AUSは調査捕鯨を指して商業捕鯨だと言っている。商業捕鯨だとしたら、"exploitation"に該当するからAUSはICJに訴えられないはずだ」と、わざわざご丁寧に解説してくれています。時間稼ぎのための言葉遊び以外の何物でもありません。もちろん、商業捕鯨なら即IWC決議違反で止められる話で、AUSがICJに訴える必要もなかったわけですが。
 「仮にうちらが条約違反をしていたとしたら、おたくは訴えられないんですよ」などと、平然と口にすれば、「一体この国は法を尊重する姿勢があるのか?」と、誰もが強い疑念を覚えることでしょう。
 1章の3節(P38)からも、日本はAUS側の「とある事情」、今回の係争と直接的には関係のないネタでAUSをやり込め、自国とAUSの違いをアピールしたうえで、JARPAUだって「とある事情」に「関係してなくはない」んだから、「AUSには訴える資格はないんだぞ」という結論に立ち戻ります。最後まで言葉遊びに終始しているのです。
 日本の提出文書には、"exploitation"や"or"をめぐる言葉遊びや、調査捕鯨から特別許可捕鯨へのシフト、8条の性格付けなど、前回の記事での筆者の主張とはまさに対照的に、科学性のハードルを下げ、商業性のハードルを上げる形での「調査捕鯨の再定義化」の意図が明瞭に表れています。
 日本側の3つの主張は、@で出来る限り時間を稼ぎ、ABでは実態を問う余裕を与えず、「日本の特別許可捕鯨」をグレーのまま認めさせようとの意図から構成されたといえるのです。


 管轄権外の主張が正当なら、最初から先行的抗弁ですっきり答えを出し、AUSを無視すればよかった話です。
 科学性で十分勝てるなら、それ一本で勝負すればいいことです。「応訴する必要がなかった」などという無駄話をして煙に巻くのは、日本は真剣に訴訟に向き合う気がゼロだと、判事たちにアピールするばかりでしょう。
 もちろん、日本の調査捕鯨の科学性がいかに信用の置けないものであるかを、自ら証明するに等しいでしょう。
 それだけではありません。用意周到に見えながら中途半端でどっちつかずの、居丈高に見えながら必死に護りに入っている、日本の一連の裁判戦術は、日本の外交、日本という国の性格≠世界中に知らしめています。
 今回のICJ調査捕鯨裁判で、AUSの弱みにつけこんで難癖を付け、ICJの場を弁えずに無駄な論争を持ちこみ、「科学性」とは、「環境保護」とは、「命」とは、「公平性」とは何かを問うこともなく、ひたすらエゴを正当化するために法律の抜け穴を掻い潜ろうと必死になる日本の姿が、世界中の人々の目に晒されることになるのです。国連のウェブキャストを通じて。
 日本がもし、このまま提出した文書の内容どおりに口頭弁論を展開するとすれば。文書自体はすでに公開されていますので、今更手遅れですけど・・
 日本は狡猾でエゴイスティックでなりふりかまわぬ国だということを、自ら世界にアピールしてしまっているのです。思いっきり恥を晒しているのです。日本国民としては、これほど耐え難いことはありません。

 日本が正しければ、友好国と争う必要はありませんでした。
 日本が正しければ、姑息な手を使うみっともない真似をしなくて済んだはずでした。
 それをやってしまったのはなぜなのでしょうか?
 ひとつの解釈は、単に日本が合理的でない国だということ。
 ICJで管轄権外という結論を勝ち取りたいのであれば、先決的抗弁で済む話です。それ以外の作業はすべて無駄になってしまいます。コストベネフィットを考えれば、まさに最善の選択です。
 にもかかわらず、応訴したうえで管轄権を争うなどという、そんな合理性の欠片もない戦術は、霞ヶ関の一流エリート官僚が企てることではありません。
 つまり、実利とは無関係なメンツのため。
 世界に逃げたと受け止められるのは心外だ。沽券に関わるから絶対イヤだ。ただ勝ちたい。AUSをギャフンと言わせたい。アングロサクソンどもを捻じ伏せてやりたい。
 たったそれだけのくだらない理由で、回避できたはずの友好国との係争をわざわざ受けて立ったのです。
 TPPで対米交渉を担う首席交渉官、外務官僚のエース中のエースを、わざわざ政府の代理人として引っ張り出し、高いギャラを払って海外の国際法の専門家を何人も引き抜いて迎え撃ったわけです。
 税金の使い道を考えないという意味でも、恐ろしく不合理ですね。
 そういうことを言い出すのは、およそ永田町の族議員以外に考えられませんけど・・
 とはいえ、科学だけでは心もとなくて仕方がなかったのです。だから、どれほどえげつない手法に見えようと、「ともかく勝ちさえすればいい」と三段構えの戦法を取ったわけです。
 国連がいくら生中継しようと、重たい文書や英語での難解な法律論争の動画など、しょせん誰も全部視聴する気などない。国内の世論はマスコミを使っていくらでも誘導できる、そういう軽い考え方も前提としてあるのでしょう。

 しかし、その日本の戦術自体が、"逃げ道"を用意する考え、法の抜け穴を探り国際法規を尊重しない考え、公平性に配慮しない考え、そして、相手国やICJを愚弄する態度を露呈してしまっているのです。
 ICJ判事が見抜けないはずはないでしょう。

 この裁判、日本の負けです。
 クジラを含むすべての野生動物のためにも、南極の自然のためにも、ここは負けてもらわないと困りますけどね・・


参考リンク:
−国際司法裁判所|ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%8F%B8%E6%B3%95%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80
−国際司法裁判所特集|朝日GLOBE
http://globe.asahi.com/feature/article/2013031400006.html
−ICJ調査捕鯨訴訟の核心(拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/70152801.html
−ICJ調査捕鯨訴訟解説(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/69890851.html
−クジラの敵はオバマとラッド(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/38814709.html
−ミナミマグロ事件の事例検証(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/34240502.html
−拙twitpic
http://twitpic.com/photos/kamekujiraneko

posted by カメクジラネコ at 21:27| Comment(1) | TrackBack(0) | 社会科学系