2013年12月08日

特定秘密保護法、捕鯨問題もバッチリ関係するよ!

◇捕鯨問題が示す特定秘密保護法施行後の暗澹たる未来〜4つのケーススタディ

 国会前、全国各地で法案にNOを唱えてきた市民の皆さん、お疲れ様です。
 よもや21世紀に入ってから、耳元で軍靴がはっきりと轟く暗い時代を迎えようとは、誰しも思いもよらなかったことでしょう。
 「アンダーコントロール」「ブロック」「第三者的」「重層的」と空疎な発言を連発、日本語をことごとく破壊し、言葉の重みを吹けば飛ぶほど軽いものにしてしまった、戦後最低・最悪の首相・安倍晋三氏は、いったい本気で21世紀の東条英機を目指しているのでしょうか??
 お腹痛くて一回やめたお坊ちゃま首相の言葉がいかに稚拙であっても、彼を支える集団の手口はきわめて巧妙なものでした。
 戦前よりはるかに洗練された、巧妙なファシズム。北朝鮮より恐ろしい、表向きは平和な民主主義国家を取り繕った戦慄すべき国に、日本はいま急速に変貌を遂げようとしています。
 忍び寄る兆候は以前からあったし、脳が化石化した復古主義者にとっては、悲願に向けた一歩目がまさに叶ったということになるのでしょうが。
 きっかけはやはり311なのでしょうね。それは、虚構の栄華を夢見続けてきた日本にとって、現実を直視し、身の丈を弁え、本当に大切なものは何かを知る機会となるはずでした。再生に向けたパラダイムシフトの。
 しかし、結果は逆に、都合の悪い現実から目を逸らし、さらなる嘘を塗り固め、自らを欺く方向へと突き進んでしまったわけです。
 アベノミクスというツケを先送りしただけの錬金術に目をくらまされ、演出とカネで手に入れた五輪開催や食ブンカ世界遺産ブランドに酔いしれ、「自分たちはやはり別格なのだ、優れた民族なのだ」という錯覚に陥る悪夢の展開。
 原発推進・再稼働、辺野古移設、そして行き着く先は、核保有・再軍備〜戦争への道。

 矛先は、折り合いをつけて共存する以外に選択肢など存在しない近隣諸国にとどまらず、長年枷をはめられてきた相手、媚びへつらうフリをしてきた口先だけのオトモダチ・米国へと向けられるでしょう。
 覇権主義の復活、そして敗戦の屈辱に対する復讐。
 「戯けたことを抜かすな、そんなことになるわきゃない」?
 いえいえ。その予測を裏付ける事例は、ほかでもないクジラが示してくれています。
 以下に、3つの視点を提供することにしましょう。


@ミスター捕鯨問題・元水産官僚森下氏の華麗なるフライング


 まず、猫玉さんが「フライング」と適切に名づけてくれた、元水産庁参事官・現水産総合研究センター国際水産資源研究所所長(兼IWC日本コミッショナー)森下丈二氏の超問題発言から。これ↓

■鯨類学入門講座受講報告|ika-net日記
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-063d.html

あんまりだと思って講演の後に.挙手して2010年の時の日本の立場を聞いたら、今国会にかかっている例の法案のことを持ち出し、答えたら罪に問われるかもしれないから答えられない、と来た。(このような都合のいい逃げ道を作るのだな、と秘密保護法案の実習を見たような思いだった)(引用、強調筆者)

 いやはや、実に見事なフライングですね。これ、施行前どころかまだ成立もしていない、衆院で審議している最中の先月の話ですよ?
 さて、国会周辺で抗議する市民デモを指して、わざわざ条文を持ち出して「テロ」呼ばわりするトンデモ法解釈を披露してくれたのが石破自民党幹事長。慶大法学部出で、しかも直接担当大臣も務めたはずの石破氏が、法律の条文をまともに読み解くことすらできないというのは驚きですが、日本で法案を作成するのが実際には官僚であるため、立法の責を負う国会議員がこの体たらくで済んでいるのでしょう。
 しかし、その霞ヶ関で参事官のポストまで務めたエリートでさえ、法律の基本を何一つ理解できていないということですね。
 それとも、ひょっとしたら、特定秘密保護法が今後「過去の発言にまで遡って適用され得る」ことを、森下氏は仄めかしたのでしょうか? もしそうだとしたら、とてつもなく恐ろしいことです。
 該当する改正案がいずれ上程され、施行後に逮捕者が続出することになるでしょう。森下氏の超法規的解釈に従うなら、氏自身はもちろん、筆者もとっくにアウトですよ(--;; そんな法律は未だかつて聞いたこともありませんが、あるいは特定秘密保護法に限っては、そんなウルトラCの運用すら可能だと、外交機密を扱う政府当局者である森下氏は、実感を込めて語ってくれたのかもしれません・・・・・
 特定秘密保護法がいかに恐ろしい法律であるかという、まさにその一語に尽きます。
 まあ、過去への適用は、法曹関係者なら百人中百人が「技術的にあり得ない」と否定する話でしょうが、森下氏の態度が示唆しているのは、それだけではありません。
 この法律の危険性は、何より恣意的解釈がいくらでも可能だということです。それが、公務員、ジャーナリスト、そして国民一人ひとりに対する萎縮効果を発揮し、日本が戦前に等しい情報統制・情報管理社会と化す危険に結び付いているのです。待ち受けているのは、逮捕されるリスクを負わないために、誰もが国家権力に従う、表現・言論の自由が存在しない恐ろしい社会です。
 森下氏の回答は、その懸念が取り越し苦労などではなく、まさに現実のものであることを示しています。彼は自己の不利益を恐れているかのような表現を用いていますが、実際には業界益と結び付いた省益を固守する立場から、彼自らが率先して情報を伏せたがっていることは明々白々です。
 都合の悪いことを一般市民に聞かれたくない官僚にとって、特定秘密保護法は抜くだけで絶大な効果を示してくれる伝家の宝刀
 森下氏は、法律が可決成立・施行される以前から、勇んでその危険な刃を懐から抜き出し、市民の前で振りかざしてみせた、というわけです。
 彼は特定秘密保護法がどのような形で使われ(得)るのか、その運用のお手本を示してくれたのです。これまで市民の情報公開請求に渋々応じてきた政府機関・自治体の職員たちに。私たち市民に対しても。
 これが他の省庁・部門の官僚であれば、成立・施行まで余計なことは言わず、周到に押し黙っていることでしょう。しかし、長年一部の大手事業者と全漁連に奉仕してきた水産官僚の場合、「国民はみんな自分たちの味方だ」と高を括っているものだから、こういうときに以外にガードが甘くて、平気でポロッと口にしちゃえるんでしょうねぇ。。
 この法律に関心を持つすべての市民・ジャーナリストは、天下り役人のフライング事例に着目しておくべきでしょう。


A墨塗り調査捕鯨公開文書に見る証拠隠滅の先例


 ウォッチャーの皆さんはきっとどなたも同意されることでしょうが、捕鯨問題こそはこの法律以前から存在する「ほぼ特定秘密」に他なりませんでした。逮捕されないだけで、情報はことごとく隠蔽されてきたのです。森下氏がごく自然にフライングできたのも、当然のことでしょう。
 水産庁が情報公開にいかに後ろ向きだったかを如実に示す事例が以下。


■3年間の活動実績|情報公開・個人情報保護審査会('04)
http://www8.cao.go.jp/jyouhou/sonota/katudou.pdf

開示決定通知書に具体的な行政文書名を記載せずに決定した件について,情報公開制度の趣旨が損なわれかねないことになるとも考えられることから,諮問庁においては,開示請求対象文書の特定や開示決定等において,今後同様のことがないよう責任ある適切な対応が望まれる旨の付言をしたもの。
諮問庁:水産庁長官
諮問日:平成15年7月18日(平成15年(行情)諮問第529号)
答申日:平成16年3月12日(平成15年度(行情)答申第690号)
事件名:北太平洋及び南氷洋で行った調査捕鯨に関する文書の一部開示決定に関する件
(中略)
第5 審査会の判断の理由
(中略)
4 文書の特定について
諮問庁は,原処分において具体的な行政文書名を明示せず開示決定を行い,さらに,いったん理由説明書において本件対象文書として特定していた文書を誤りであるとして取り消している。
本件のような開示を求める事項を示して行った開示請求の場合,開示請求者は,対象となる文書としてどのような行政文書が存在するのかさえ分からないため,本件のように開示に際し,開示決定通知書に具体的な行政文書名を記載せずに決定したならば,開示請求者の側は対象となる行政文書の存在や名称さえ分からないこととなる。加えて本件では,当初の理由説明書において対象文書と説明していた国際鯨統計について,その後対象文書ではなかったと説明するなど,開示請求への対応に問題があったと言わざるを得ず,現に,本件異議申立人は,開示請求から処分に係る手続において文書の特定について強い不信感を示しているところである。このようなことでは,情報公開制度の趣旨が損なわれかねないことになるとも考えられることから,諮問庁においては,開示請求対象文書の特定や開示決定等において,今後同様のことがないよう責任ある適切な対応が望まれる。(引用、着色強調筆者)

 上掲の政府資料のp72に、まさに今回の特定秘密保護法の内容に直結する表現があります。下線は筆者による強調ではなく、もともとです。
 残念ながら、これは「今後同様のことがないよう」との苦言でしかありません。毎年多額の税金が投じられてきた事業でありながら、この後も内外のNGOによる情報公開請求は、特定の事業者を手厚く庇護する異様な政治的判断に基づき、ことごとく突っぱねられてきたわけですが・・
 さて、特定秘密保護法に関しては、多くの言論人が批判しているとおり、秘密の存在、文書の存在そのものが秘密にされることが危惧されているわけです。
 これまでは、曲がりなりにも情報公開の原則の観点から「さすがにそれはマズイよね」という話でした。「対象となる文書としてどのような行政文書が存在するのかさえ分からない」のは。
 そう・・ここにも先例があったという次第。
 つまり、霞ヶ関官僚にとって目障りな存在だった情報公開制度(海外に比べれば大きく遅れているところの・・)を無意味化させてしまえるのがこの特定秘密保護法。だからこそ、彼ら役人と結託して既得権益を貪ってきたあらゆる業界が、この法整備を歓迎しているということでしょう。
 特定秘密保護法によって、「同様のことがないよう責任ある適切な対応」を行政機関が取ることは、もはや二度とありません。証拠隠滅が大手を振って罷り通るのですから。


B「ほぼ特定秘密」を暴こうとして逮捕されたGPJスタッフ

■【秘密保護法案】 環境守る市民も制約 政府追及に萎縮効果 (12/2,共同)
http://www.47news.jp/smp/47topics/e/248117.php
■「廃案に」強まる声 秘密保護法案 国内外から懸念 (12/5,東京)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013120502000122.html


 国際NGOにとっても、国内で地域の自然を守ろうとしている市民団体にとっても、この法律が活動の大きな妨げとなることは自明です。
 捕鯨以外にも「ほぼ特定秘密」ばかりを扱ってきたといえるグリーンピースは、おそらく最も影響を受ける団体のひとつといえるでしょう。中国で活動するほうがまだマシになるかも。ロシアでは北極海油田開発アクションで逮捕者が出ましたが(プーチン大統領も石破氏と同じくテロとの区別が付かないヒトでしたね・・)、日本でも真っ先に逮捕者が出かねません。
 いや・・そういえば、逮捕者はもう出ていたんですよね。国の「ほぼ特定秘密」を暴こうとしたばっかりに。
 詳細は当事者に語っていただいたほうがいいでしょうが、GPJスタッフ逮捕事件は、「特定秘密保護法を日本政府がどのような形で活用≠オていくつもりか」を示すモデルケースに他なりません。
 捕鯨サークルは、族議員・癒着業界・天下り官僚から成る運命共同体の代表例。彼らはサークル益の追求のためにはなりふり構わぬ恐るべき集団です。
 優秀なPRマンを雇い、鯨肉料理付き懇談会を開催してマスコミ関係者を呼び招いて味方につけた後は、クジラになぞ無関心で買う気のない一般大衆の感覚との大きなズレも何のその、捕鯨推進が日本の最重要政策・国民の一大関心事であるかのごとく位置づけることに、彼らは見事成功したわけです。
 マスコミは自主規制し、決して調査捕鯨の裏面に光を当てようとはしませんでした。一部両成敗の形で公平な記事を書いてくれたメディアもありましたが。
 しかし、特定秘密保護法施行後はそれすらもなくなるでしょう。あえて危険を冒してでも追及してくれるジャーナリスト・言論人は、誰もいなくなるでしょう。
 業界関係者による鯨肉横領・横流し疑惑は、当の共同船舶・水産庁側の説明が二転三転する不可解な状況があったにもかかわらず、後付で飛び出した「土産」の一言で片付けられ、そのまま闇に葬り去られてしまったのです。
 調査鯨肉横領事件は、カゲキな反捕鯨団体による鯨肉窃盗事件へと、タイトルがいつの間にかすり替えられてしまったのです。
 マスコミだけではありません。
 当初理解を示していた東京地検の担当者は外され、そもそも代用監獄として海外から批判されている拘置の期間も異常なまでに引き延ばされ、一審の青森地裁判事には自衛隊官舎ビラ事件をうまく処理したエース級高裁判事があてがわれました。メンバーの選定過程が不明な検察審議会も、鯨肉横領をめぐるサークル側の主張の矛盾には一言も触れられることなく「問題なし」として処理しました。
 一票の格差をめぐる最高裁司法判断を例に挙げるまでもなく、日本の裁判では上へ行けば行くほど権力に擦り寄る判決になりがちことは、皆さんご承知のとおり。そして、GPJ職員逮捕事件は、日本においては司法すらも権力者側に都合のよい道具として扱われ得ることを示しています。
 三権分立・司法の独立性が、海外に比べてもきわめて不十分な日本において、機密保護のための法律だけは、ツワネ原則に定められる国際基準から程遠いことが、米国のシンクタンクや元政府高官からさえ指摘されているのです。これは決して見過ごしていいことではありません。
 GPJ佐藤氏の逮捕は、まさしく見せしめに他なりませんでした。「国に楯突く者、秘密を暴こうとする者はすべてこうなるのだ」という。
 たとえそれが実態を反映していなくとも、作られたヨロンをバックに、国による制裁は正当化され得るということです。
 そして、この手法は、必ず捕鯨以外にも適用されることになるでしょう。原発(とくにプルトニウム)、米軍基地、その他諸々の、霞ヶ関・永田町の周辺に群がり、利権の甘い汁を吸っている人たちにとって都合の悪い問題に目を向けようとする市民はみな、同様に悪者に仕立てられる可能性があるのです。


Cウルトラナショナリズム政権に口実を与えた米国の大きな過ち〜常軌を逸する日本の捕鯨政策から一体何を学んだの?


■(非情世界 信義なき情報戦争)極秘情報 日米が神経戦 (12/3,朝日)
http://www.asahi.com/articles/TKY201312020629.html
■海渡雄一弁護士「秘密保護法と原発―秘密保護法ができると原発はもっと暗闇に! 戦争準備も!」 (11/25)
http://www.youtube.com/watch?v=Cr8sxtenGKo
■【IWJウィークリー27号発行!】国民無視の「強行採決」 秘密保護法の先にある「米国の軍事属国化」
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/114642


 日本の特定秘密保護法の成立を受け、米国副報道官から歓迎の意が伝えられたとのこと。
 「今のままでは、最重要のパートナーである安保同盟国・米国の機密を守れず、提供を受けられない」というのが、法案提出の大きな理由とされてきました。
 しかし、元自民党出身議員の口からも、「既存の仕組みで十分、新たな法整備の必要はない」との指摘が上がっているほどです。
 この法案関連報道の中で、米国がカナダ・AUS・NZと機密情報を共有するネットワークを構築し、日本が蚊帳の外に置かれてきたことを朝日が指摘しました。
 太平洋で軍事同盟の関係にある日米豪のうち、真の友人関係といえるのは米豪だけで、いざ日本でかつての超拡張主義が復活したときに備え、監視・警戒の役割を果たしているとの指摘もあります。中国ではなく、日本封じのためだと。それは、たまに漏れる米関係者の発言や公文書などからも読み取れることですが。
 安保条約自体、日本に対する米国の首枷の役割を果たしているともいえます。そして、日本は今のところ、核の傘を与えてくれるご主人サマに対し、尻尾を愛想よく振って命令を何でも聞く忠犬の役割を、見事に演じきっているかに見えます。財政が火の車なのに思いやり予算を無理くり捻出し続けたり、TPP交渉でも自らの集票組織を裏切ってまで、米国の利益に奉仕しようとしています。近隣住民に対して吠えかかる癖はなかなか治りませんけど・・・
 主人の米国は、「安保という鎖・首輪でつないであるのだから」と安心しきっているのかもしれません。
 しかし・・そんな忠犬捕鯨ニッポン号ですが、戦後の困窮期、痩せ細った体を見て米国ご主人サマが哀れに思って差し出してやった「南氷洋捕鯨」というドッグフードの器を、「そんなにブクブクに肥えて世界に冠たる飽食大国になったんだし、もうそろそろいいでしょ」と取り上げようとした途端、猛然と牙を剥き出して唸りかかり、決して器をご主人サマに返そうとはしませんでした。
 日本の捕鯨政策・捕鯨外交からは、敗戦後ずっと引きずり続けている白人・アングロサクソンに対するルサンチマンが、未だに烈火の如く燃え盛っていることが、手に取るようにわかるはずです。そして、白人コンプレックスの裏返しである、自民族に対する尊大な優越感情も。たとえそれが、国家の中枢で主導権を握っている、ほんの一握りの黒幕たちだけで、日本人全体の性向ではないとしても。
 米国は、度重なるIWC調停の失敗からも、そのことを十分学び取ったはずです。
 彼らはこの先も、南極のクジラに鬱屈したルサンチマンの捌け口を引き受けさせ続けるつもりなのでしょうか? それが可能だと思っているのでしょうか?
 しかし、そこには致命的な誤りがあります。
 まず、日本の超拡張主義者たちは、現状に決して満足せず、鬱憤を抱え続けています。悪いことに、国際条約に縛られず堂々と行える脱法調査捕鯨を継続するための口実として、商業捕鯨再開という非現実的な目標が掲げられ、国民はそれを信じきっているのですから。憂さ晴らしになっていないのです。
 さらにいえば、日本の公海捕鯨は二進も三進もいかない状況に陥っています。鯨研は多額の負債を抱え、赤字穴埋めのために国民・被災地の人々を裏切って震災復興予算に手を出しました。鯨肉には適正価格が存在せず、商業的にもはや成立の余地がないため、さらなる税金を投じ、無理やり学校給食に回すのが関の山で、瀬戸際まで追い詰められているのです。
 日米はこの問題で腹を割って話し合い、お互い痛みを分かち合う形で合理的なソフト・ランディングを目指すことが、ついに出来ずじまいでした。
 
トモダチなどではないからです。戦争に負け、原爆を落とされ、屈服させられたにっくき敵でしかないからです。
 捕鯨文脈で米国・白人に浴びせられる、自らの乱獲の過去を一切省みることのない威圧的な罵詈雑言の数々が、その何よりの証拠に他なりません。

 軍事メジャーとアグリメジャーの短期的利益のために、特定保護法案の抱える数多の問題に目を瞑るとすれば、米国にしてはあまりに愚かといわざるをえません。
 地球の裏側の野生動物に拘泥するあまり、トモダチ米国や最たる親日国AUSに対してさえ激しく食ってかかる捕鯨ニッポンに、北太平洋地域の安定のために自重し、協調する能力があると、米国は本気で信じているのでしょうか? こっちも財政がキツイから、集団自衛権を認めて自腹を切ってもらえた方がありがたいなどと、のんきなことを言ってられるのですか?
 リップサービスは誤解を招くだけです。真の友であれば、ときには過ちを厳しく糾すことも必要です。
 そしてまた米国も、沖縄の人々を苦しめ、ジュゴンを絶滅に追いやる不正義を自らに認めるべきではありません。
 あるいは、世界で最も強固なようでいて、実は互いの本音を隠し続ける、世界で最も脆く遠い間柄にある日米という二国のいびつな関係が、今回の特定秘密保護法成立の背景にあったといえるかもしれませんが。
 だとすれば、これはとてつもなく不幸なことです。日米両国民のみでなく、世界中のすべての人々にとって。


 今回の特定機密保護法成立で真っ先に餌食になる日本の自然は、間違いなく北限のジュゴンに違いありません。仲井真知事と稲嶺市長の身の安全≠煖Cがかりなくらいですけど・・
 ただ、最も心配なのはやはりプルトニウム
 クジラとプルトニウムは日本の暗部。つながる闇がそこに見えてきます。
 先日のフクイチ4号機の核燃料移送の際、監視カメラがプールに落下したとのこと。これは東電が作業の必要から設置したんでしょうけど、そういえばIAEAの査察カメラの方はどうなっているんでしたっけ・・?
 誤差分だけで核爆弾が作れるという話もありますが、世界有数のプルトニウム保有国である日本の保有状況に、少なくとも市民は今後一切アクセスできなくなるでしょう。
 特定秘密保護法は、核の悲劇に見舞われた唯一の国(厳密には違うけど)であり、非核三原則を国是(捕鯨推進なんぞよりはるかに高位のハズの)とし、憲法でも戦争放棄・軍隊不保持を謳った平和国家が、一気に軍事大国・核保有国に突き進むことを可能にします。
 核保有国というステータスに心底憧れている人たちが、この国の中枢には蔓延っているのです。何しろ、つまらないことで国連の核廃絶宣言にすら難癖をつけ、これまで賛同してこなかった国ですし。
 核保有論を平然とぶち上げながら、議員バッジを手にした政治家が一体何人いたでしょう? 彼らは毎年パーティーを開いて「アングロサクソンけしからん!」と気勢をあげている捕鯨礼賛論者ともピタリと一致するでしょうけど・・・
 福島第一原発の事故によって、IAEAの監視体制にも穴が開いたはず。
 米国さん、日本よりはるかに技術力の低いハズの国が、いつの間にか核保有国を宣言するに至ったケースが、これまでにもいくつかあったはずですよねぇ?
 いずれにせよ、いざその気になったらお茶の子さいさいで、あっという間に核を持ててしまうことも、貴国は知っているはずです。
 日本国民が選挙によって最悪の首相を選んでしまったのは、確かに我々日本人自らの責任です。
 しかし、貴国はいいように使い分けながら、同盟国の政治の右傾化を都合よく利用してきたのです。間違いなく責任の一端を負っているはずです。むしろ、とんでもなく重いのと違いますか?

 最終的に自らの力で掴み取ることができなかったせいか、日本の民主主義が諸外国に比べ未成熟であることも一因かもしれません。「お上の言うことは常に正しいものだ」と考える人が、年配者に未だ多いのも事実でしょう。「国の言うことに従っていれば、震災や原発の問題も、きっと何とかしてくれる」と、すがるような思いに捉われている人も少なくないかもしれません。当座の生活に関わる景気が、四流の手品に等しいアベノミクスのプチバブルで上向いたかに見えることで、現実の裏打ちのない期待感がいっそう膨らんだ面もあるでしょう。
 一方で、若年層のすさまじい排外主義のエネルギーは、バブル崩壊後に沈んだまま、311後に一層濃くなった鬱屈感の裏返しともいえるでしょう。しかし、「お上の言うことは常に正しいのだ」と十代の若者たちに刷り込む教育の歪みも、その背景にあることは疑いありません。
 もしかしたら、この天下の悪法が成立する日を待ち望んでいた人たちが、憎しみの種を撒き散らすやり方において、二度と過ちを繰り返すまいと平和の種を蒔き続けてきた人々に、この局面で勝ってしまったといえるのかもしれません。

 2013年12月6日、東北大震災・重大な原発事故から1000と2日後、日本の民主主義はいったん敗北しました。
 次の選挙まで、国民の声を踏みにじる強行採決の暴挙を絶対忘れないこと。
 自公には絶対入れないこと。党内野党などまったく機能しないことは、これで前回入れてしまった人も身に染みて感じているはずでしょう。
 公明党には最初から期待するだけムダ。聖教新聞を一度でも読めば、特定秘密保護法施行後の世界が見えるでしょ。。。
 衆院で譲歩ひとつ引き出すでもなく、可決への道を開いたみんなと維新にも絶対入れないこと。退席云々はともかく、この点に関しては共産党の言うとおり到底許せる余地などありません。
 維新は共同代表の石原がアレでよく抵抗勢力のフリができるもんだ(--;; 川田議員は個人的に応援しているけど、これを契機に離党していただきたいところ。
 そして、共産党から民主党まで、今度こそ*{気でタッグ(政策連携)を組むこと。他の政治課題は棚上げし、脱原発と特定秘密保護法廃止法のみで。戦略第一で。
 そして、消費者は安倍自民党を支える企業の商品・サービスを極力利用しないこと。とても難しい課題ですけど・・・
 次に負ければ、日本の民主主義は今度こそ本当の本当に死にます。


 選挙が公正に行われることが大前提だけど・・・・・・

参考リンク:
−ちょっと待ってアノニマス! クジラ・イルカの味方は嬉しいけれど・・(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/81701906.html
−秘密保全法パブコメ文案(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/75845393.html

−豪米戦略のターゲットは中国or捕鯨ニッポン?(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/75815825.html

−沖縄基地問題と捕鯨問題(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/34000727.html
−鯨肉横流し事件の全貌解明を(拙HP)
http://www.kkneko.com/yoko.htm

 本日はもう無理ですが、次回でユネスコ問題を取り上げる予定。なんとか実効性のあるアクションを考えなきゃ(--;;

posted by カメクジラネコ at 01:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2013年11月30日

ちょっと待ってアノニマス! クジラ・イルカの味方は嬉しいけれど・・

■アノニマスが日本政府に警告 捕鯨批判 (6/1,共同)
http://www.47news.jp/CN/201306/CN2013060101001212.html
■ハッカー集団:「アノニマス」日本に攻撃予告 (11/14,毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20131115k0000m040050000c.html
■ハッカー集団「アノニマス」が日本に攻撃予告 - トレンドマイクロが注意喚起 (11/14,マイナビニュース)
http://news.mynavi.jp/news/2013/11/14/363/


■アノニマス・ハッカーに禁固10年 秘密保護法施行後の日本を予告|Blogos/田中龍作氏
http://blogos.com/outline/73816/


 他の野生動物の問題にかまけていたこともあり、「ウヨガキ君たちが騒いでいるなあ」という程度でろくにチェックしていなかったのですが、通報をいただいて、「ちょっとマズイなあ」と思った次第。時間もありませんけど。
 ターゲットリストを見ると、官邸はじめ多くの省庁がリストアップされてますが、官邸ターゲットにやるんだったら、ネタはイルカ・クジラじゃなくて特定秘密保護法だよね・・・
 じゃなくて(汗)
 そう・・・・問題は特定秘密保護法。タイミングが悪いよね(--; そして相手が日本だということ。
 特定秘密保護法が強引に国会で通されようとしているこの状況下で、外国人ハッカー集団が反イルカ猟を訴え、省庁サイトをスプラッタな映像(になるかどうかわかんないけど)に書き換えることの意味を、真剣に考え直してほしいということです。

 北朝鮮から米国まで、権力に媚びへつらうことなく、全方位に抑圧に対する抵抗を貫く姿勢には敬服します。日本じゃ特に、白人中心というだけで色眼鏡で見られがちだからね・・
 輪郭の明瞭でない、自由な集団としての危うさはあるでしょう。既存の権力もそこを恐れているのかもしれません。筆者としては、集権国家以上の危うさは感じないけれど。
 ただ、手法については、対象が誰であれ(北朝鮮であれ、中東の専制国家であれ、米CIAのOS先であれ、麻薬マフィアであれ、あるいは日本政府や太地町であれ)、違法な破壊活動に準ずるもので、推奨できることではないでしょう。日本には、北朝鮮のサイト攻撃"だけ"喝采を送る類の人もいるかもしれませんが。それに、米ロ中日を問わず、正規の軍によるサイバー攻撃ならOKというわけでもないけれど。

 もっとも、彼らのアクションの目的、引き出される結果自体は、古典的なNGOのそれと変わるところはありません。それは情報の周知。真実を日の下に明らかにし、市民に発信し、共有してもらうこと。
 残念ながら、日本の捕鯨に関しては得るものが少ないです。「隠された事実の暴露」にならないから。
 SSCSが華々しく活躍し、動物・環境に関心のある層は既に十分注目しています。ある意味で食傷気味の感もあるくらい。
 インパクトのあるメッセージや動画で認知を図るキャンペーンの初期の段階はとっくに過ぎました。そして、遺憾ながら日本では、国・業界・マスコミが一丸となってより巧妙な反反捕鯨キャンペーンが展開され、逆予定調和の平衡状態に至っています。一歩進んだ戦術・戦略が必要なのです。
 太地からイルカの生体を買っている世界各地の水族館をターゲットにするのなら、また話は別かもしれないけれど。
 捕鯨サークルにもどす黒い暗部はありますが、それは霞ヶ関のサーバー上にデジタルのデータの形で存在してはいないです(たぶん・・・・)。拙小説『the next age』では、族議員たちの宴≠熾`写してますが、文書化される類のもんじゃないからね(--;;
 特にODA外交の裏側など、すっぱ抜けるものならそうして欲しいのは山々ですけどね。ウィキリークスでも漏れたのは外交公電のほんの切れ端。それに、日本の官公庁のITレベルは他の先進国より低いけど、霞ヶ関と霞ヶ浦を間違えているようでは、北朝鮮や中東諸国を相手にするのと同じようにはいかないでしょう。


 一方で、これまでのマニュアルの延長の形で、日本政府側には確実に利用されるでしょう。
 単に捕鯨サークルだけでなく、日本政府が産経やNHKなど大本営マスコミを通じて積極的に活用することになるでしょう。特定秘密保護法を国民に受け入れさせる材料として。
 

「それ見たことか、日本は攻撃されている。だから機密は守らなきゃ」

 というわけです。
 下手をすれば、"例の町"のサーバーにセキュリティホールを残しておいて、わざと改竄させる手まで使われかねません。
 そうすれば、陰湿な攻撃を受けた素朴な漁民、デントウブンカの担い手として、純然たる被害者としてスポットライトを当てられることになるでしょう。日本では。
 残念ながら、日本国民の多くは、そうした演出に容易に引っかかってしまう傾向があります。
 海外でどういう反応が起きようと、捕鯨サークルは馬耳東風で気にしやしません。むしろ、文化の対立として解説≠入れ、ルサンチマンの種を植え付けるのに利用するのみです。
 悲しいことに、太地という町は、外圧をかければかけるほど、自尊心を肥大させる体質が染み付いてしまいました。中央の捕鯨サークルや在特会をはじめとする拡張主義者の応援団のおかげで。もちろん、外圧に頼んできた反捕鯨運動自身にも非はありますが。
 太地町に対する攻撃は、硬直姿勢に拍車をかけ、国に対する依存心を増すことにしかなりません。現地での監視活動であればまだ実態を正確に把握する意味もありますが、サイバー攻撃にはデメリットしかないのです。
 それは同町の将来を真剣に憂える現実派の市民にとっても、立場を悪くするだけでマイナスにしか働かないでしょう。


 調査捕鯨に関する公文書は、内外のNGOが情報公開を請求したものの、真っ黒に墨塗りされたものしか提示されませんでした。
 まさに全体主義に一気に突き進もうとする今日の状況を示唆するかのように。


 日本版NSC設置法、特定秘密保護法等の一連の動きは、表向き軍事同盟の相手である米国を慮ったものです。しかし、目先の軍事利権を優先する余り、日本を「いつまでも鎖に繋いでおけるもの」と高を括って、東アジアの緊張をますますエスカレートさせる状況に目を瞑るなら、米国は将来重いツケを背負わされることになるでしょう。
 捕鯨の闇を見れば、そこには今現在尻尾を振って愛想よく振る舞っている相手、戦争に負けた米国に対するルサンチマンが燻っているのがはっきりと見て取れます。

「政府にとって国民に知られたくない情報を明るみに出したのがハモンド被告だった。政権と癒着していたことを暴かれた米国の既存メディアは、この事件をあまり扱っていない。事件は闇に葬られる恐れもある」


 これはジャーナリスト田中氏の記事(上掲リンク4番目)からの引用。魔女狩りを受ける犠牲の皮切りとなるのは、あるいはひょっとしたら、海の野生動物にとっての実利を求め、内外のギャップを埋めようと腐心してきた市民になるかもしれません。少なからぬ国民から「売国奴」の烙印を押される、都合のいいスケープゴートとして。何しろ、鯨肉窃盗事件でも、マスコミをすっかり掌握し、国民の無関心状態をキープした実績があるのですから。御用メディアが国民に植え付けたイメージがあれば、カルト、テロと結び付けるのも容易でしょう。

 アノニマスさん、繰り返しになりますが、対日本、対捕鯨・イルカ猟のアクションにはデリケートな戦術判断が必要です。クジラとイルカも大事ですが、サイバーアクションの標的としてもっとふさわしい環境破壊企業もあるはずです。あるいは、日本を標的にするとしても、メッセージがもっと活きるテーマがあるはずです(推奨はしないけど・・)。
 近々行う予定とのサイバーアタックは、どうか中止してくださるよう、クジラ、イルカたちのためにお願いしますm(_ _)m 彼らにとって何が本当の利益につながるか、もう一度落ち着いて考えてみてください。

参考リンク:
−ウィキリークスによって明らかになった赤松元農相の問題発言(拙HP)
http://www.kkneko.com/wiki.htm

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2013年10月18日

捕鯨の町・太地は原発推進電力会社にそっくり

◇伝統産業を政治力でねじ伏せる捕鯨の町・太地のやり方はまるで原発推進電力会社

■イルカ漁の太地町、海洋公園をオープンへ (10/7,AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3001001
■クジラ牧場 計画中 和歌山・太地町で世界初 (10/5,東京)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013100502000233.html

■第2回・第3回鯨の海構想検討委員会議事録概要|美熊野政経塾
http://park.geocities.yahoo.co.jp/gl/mikumanoseikeijuku
■鯨の海構想|(〃)
http://park.geocities.yahoo.co.jp/gl/mikumanoseikeijuku/view/20120328
■第1回 鯨の海構想検討委員会 議事録概要(その3)|(〃)
http://park.geocities.yahoo.co.jp/gl/mikumanoseikeijuku/view/20120419

■森浦湾に真珠を求めて―三幸漁業生産組合|和歌山社会経済研究所
http://www.wsk.or.jp/book/40/02.html

 町立くじらの博物館名誉館長で、日本鯨類研究所(東京都中央区)顧問の大隅清治博士は「可能」と言い切る。「大昔、クジラのエサ場と繁殖場は一緒だった。温暖化でエサ場が冷たい所に移動し、広い範囲を移動するようになっただけだ」と解説する。(引用〜東京新聞)
 町は本年度、調査費として一千万円を計上。湾内で操業していた真珠養殖業者らとは既に漁業権の問題をクリアし、周辺の土地購入もほぼ終わっている。(引用)
 水産庁の担当者は「応援したい気持ちはあるが、魚やイカといった大量のエサをどうするのかや、生態系の問題など、調査の積み重ねが必要。時間はかかるでしょうね」と話している。(引用)

 鯨の海構想では森浦湾を約430mにわたって網で仕切るというのだが、これだけでも人件費を含め莫大な維持管理費が発生する。しかも網干鼻(あぼしのはな)は小さな低気圧が来ても波が高くなる場所で、仕切りだけ考えてもこの構想は、最初から無理がある。 (引用〜美熊野政経塾)
 決まっているのは三幸真珠の漁業権を無償で町に提供してもらおうと考えているので(真珠の)筏は町が(税金で)撤去しなくてはいけないかなと考えいる」ということでした。現在は真珠の養殖はやっていないと聞いていますがどうなのでしょう。(引用)
 オブザーバー 福田忠由 (三幸真珠生産組合長 太地町議会議員)
  オブザーバーより現在の森浦湾利用概要紹介
  @区画漁業権での真珠及びひおうぎ貝の養殖
  A上記養殖と合わせて、静穏な森浦湾を活用したシーカヤック体験事業等
(引用)
 水産庁の補助金がついたので、協議会に期待している。(大隅氏)(引用)

 本題から逸れますが、先に鯨研顧問・大隅御大の珍回答から。
 アサギマダラを始めとする昆虫、ウナギ・マグロから、ウミガメ、クジラ、多くの渡り鳥に至るまで、移動性野生動物は各種存在します。本来なら、それらの種はすべてボン条約のもとに国際的に保護管理されるべきところですけどね・・。
 そうした長距離を季節的に渡る動物の行動のルーツについては、様々な学説が唱えられています。気候変動はプレートの移動とともに有力な仮説ではありますが、クジラについては天敵メガロドンへの対処だったとの説もあります。
 いずれにしても、原生のヒゲクジラ類の祖先種は中新世の中頃、1千万年以上昔に出現し、当時から回遊もしていただろうと考えられます。ナガスクジラ科など現生種の科・属の分岐年代も数万年から数百万年前くらい。それだけの期間、いずれの種も南北両極に近い高緯度と赤道に近い低緯度を回遊し続けてきたわけです。定住型のカツオクジラのように、あまり長距離を移動しない生態に戻ったケースもありますけど。
 まあ、仮に温暖化説のとおりだったとしましょう。人為的な要因に基づく急激な気候変動に、多数の野生動物が適応できずに絶滅することが危惧されているわけです。長期的なスパンで獲得した自然な生態の修正があったからといって、その個体がいきなり大昔と同じ環境に適応できるなどと言い出す動物学者・生態学者がいるはずもないでしょうに。
 「獣は昔はみな魚だったんだから、水槽に閉じ込めたってそのうち慣れる」と言っているようなもの。もうムチャクチャです・・・ 
 そもそも、記者の質問とも全然噛み合ってませんけど。集団飼育関係ないし・・
 実際のところ、動物園・水族館で飼育されている野生動物は、本来の生息場所の環境とかけ離れた人工的環境で飼育され、行動習性も大幅に歪められてしまい、環境教育の効果さえ相殺しているのです。だから、昨今では海外発のエンリッチメントの発想が(形ばかりですが)導入されるようにもなったわけです。「行動を制限してかまわない」という思考のベクトル自体、時流に逆行しているとはいえるでしょう。
 大隅氏が諸手を挙げて賛同しているのは、かつて畜産研究者とともに「クジラ牧場」を夢想し、頓挫した苦い経験があり、なおも諦めていないからでしょうが・・・

 で、本題。
 東京新聞の記事等を読んで、筆者は強い違和感を禁じ得ませんでした。
 皆さんはブルーム騒動の話を覚えていますか? ブルームは太地と姉妹都市提携を交わしているオーストラリア北西部の町。詳しくは参照リンクの拙記事をご参照。
 ブルームとの縁は真珠です。イルカではありません。古式捕鯨の壊滅の後、同地の真珠養殖業に潜水士として入植した移民が交流のきっかけだったわけです。養殖技術も日本から取り入れたとの話もあります。
 後ほど詳しく解説する上掲最後のリンクに、昭和30年代には森浦湾を始め和歌山県内で真珠養殖が広く行われていたとあります。
 日本のイルカ猟はどこも散発的に行われただけで、生計を立てる生業とはいえませんでした。イルカが「余禄」でしかなかったからこそ、持続性を持たない乱獲体質だったわけですが。しかも、太地のイルカ追い込み猟は全国でも後発組で、伊豆から技術を導入して本格的にやりだしたのはやっと1969年のことです。
 太地の真珠養殖業は、それ以前から行われていた地域の欠かせない伝統産業だったはずなのです。姉妹都市との縁も取り持った。
 和歌山県ではこの伝統産業が次々に"絶滅"し、後はこの《鯨の海構想》が持ち上がった森浦湾を残すばかりとなりました。
 理由はカネです。経費がかかりすぎて安い輸入物に勝てなかったわけです。そんな他愛のない理由で数々の伝統産業を滅びるに任せてきたのが、この日本という国なわけですが。今日でもまったく変わっていませんけどね・・
 そんな中、まあ太地の真珠養殖はギリギリまで頑張ってはいたわけです。

 さて、その伝統の真珠養殖を、湾をイルカ・クジラ飼育用に専有するために潰そうというのが、この鯨の海構想です。
 多くの零細沿岸漁業同様、産業として成立しているかといえば実態は怪しい節もありますが、曲がりなりにも漁業権を有し、担い手がいれば、採算が取れれば(捕鯨のように不採算でも国庫補助で無理やり続ける手もあるけれど!)、継続したかったのが本音でしょう。
 その漁業権を召し上げ、同湾で辛うじて存続していた伝統産業を無理やり潰してしまおうと、太地町は考えているわけです。
 第一回の検討委員会議事録では「無償で提供してもらう」とありますが、東京新聞では「クリアし」とあり、町の予算で街の土地購入費用等も出したようですね。
 ちなみに、東京新聞にはまるで他人事のような水産庁の担当者のコメントが載っていますが、大隅氏自身が「水産庁の補助金がついた」とはっきり発言しています(第三回検討委員会議事録)。どこまで無責任な庁なのでしょうか?

 強引に腕ずくで沿岸漁業を潰すこのやり方、何かに似ていませんか?
 そう……福島から上関まで、原発立地自治体における電力会社の漁業補償交渉そのもの。原発温排水養殖という形で共存≠オているところまでありますが。
 あるいは、ダム等の大型公共事業にも通じるところがありますね。数々のかけがえのない共同体の有形無形の歴史的資産を水の底に沈めてきた。
 そうしたところはどこも、背に腹は替えられず、地域の多数意見と有力者のひときわ大きな声に逆らえず、伝統の生業を手放さざるを得なかったわけです。表向きは「自発的に売った」形を装って。
 伝統産業をかくも蔑ろにしてきたわけです。この日本という国は。
 そう、原発やダムとまさに同じく、捕鯨・イルカ猟は、地域の誰もが逆らえないご神体になってしまったのです。
 原発であれば、そうした空気≠利用して有力者が利権を貪り、町を私物化する構図が見えてくるわけですが……。
 筏の撤去費用を肩代わりし、土地を購入するといっても、漁業権は無償で放棄させるとするなら、これはある意味では原発よりなお一層タチが悪いといえるでしょう。身内だからかまわないということなのでしょうか? それとも、何か他に裏があるのでしょうか?


 実は、太地町と真珠に関しては、まだ不可解なことがあります。
 ここで上掲最後のリンクをご参照。
 どっかで見た名前が出てきますね・・。そう、この地域経済誌が刊行された2002年の時点では、太地の真珠養殖業を束ねる三幸漁業生産組合の長は、現太地町長の三軒一高氏だったのです。検討委員会議事録に出てくる現組合長の福田氏も、やはり太地町議会議員とのことですが。
 イルカ追い込み猟以上に重要な伝統産業だったはずの真珠養殖の方は、どういう理由によってか、他の方に事業を譲ったうえで、結局鯨の海構想のために潰してしまおうと、三軒氏はお考えになったわけです。
 上掲リンクには、真珠養殖もいろいろ経緯があったことが詳しく書かれています。需要の変化や海外との価格競争など、経済的事情により文化として変質を迫られた部分は大きかったでしょう。乱獲のような問題は生じなかったとはいえ。地域限定の食習慣から外貨獲得目的の鯨油生産、食糧難時代の緊急避難的食糧、魚肉ソーセージ原料を経て、高級グルメへと変遷した、捕鯨・鯨肉食産業ほどめまぐるしい変化とはいえないでしょうが・・
 後半に、赤潮被害についても書かれています。生活・産業排水の問題が大きいのでしょうが、近隣の他の養殖業の影響もあったかもしれません。
 そして、もう一点奇妙な記述が。

 昭和61年に発生した大規模建設の工事中に、その濁水が森浦湾の漁場に大量に流入し、養殖中の真珠がへい死しました。(引用)

 一体なんでしょうねえ、この「大規模建設の工事」ってのは?
 太地町のサイトでは、同年「グリーンピア南紀オープン、浅間山園地完成」とあるくらい。既に売られたグリーンピアは、一応森浦湾を望む位置にはありますが。
 自然豊かで趣があることを森浦湾のキャッチフレーズにしている太地町、御用社会学者の秋道氏らは素朴に礼賛していましたが、伝統産業に被害を及ぼすような大規模な自然破壊が、厳然として太地町で引き起こされていたということです。

 狂信的な捕鯨擁護応援団たちが何を叫ぼうと、イルカ猟と真珠養殖の間に線を引くのは、伝統産業・文化に対する恣意的な差別に他なりません。
 何より問題なのは、資本主義経済の市場の原理、自然な時代の成り行きではなく、国・町が税金を使って無理やりこのご神体≠死守しようとしていることです。
 太地町は、近隣の町とともに海の自然を何よりも大切にするブルームに対し、「イルカ猟に一切口出しするな」と高慢な要求を突きつけました。
 その一方で、二つの都市を結ぶよすがに他ならなかった真珠養殖を、ブルームとは何の関係もない自然搾取娯楽ビジネスのために、滅ぼしてしまおうというのです。
 これは友好に対する裏切り以外の何物でもありません。
 ブルーム市と市民は、ただちに太地町に対して強く抗議を申し入れるべきです。

参考リンク:
−太地−ブルーム姉妹都市騒動の背景(拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/31722747.html
−民話が語る古式捕鯨の真実(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/33259698.html
−NHK、久々に捕鯨擁護色全開のプロパガンダ番組を流す(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/31093158.html



◇コントロール・シンドロームに陥った捕鯨ニッポン(おまけ)

■排水溝で1400ベクレル検出 大雨で流入か 福島第一 (10/17,朝日)
http://www.asahi.com/national/update/1017/TKY201310170092.html

 大きな誤解を生みそうな記事タイトル。これは1リットル当たりの数字。検査は一日置きでしょ。どれだけの量のストロンチウム90が海に流れ出てしまったのか、もはや見当もつかないということ。
 一体どこがコントロールでブロックなのやら。
 「目に見えない海に流れてくれてよかった」と考えている人たちも、おそらくいるのでしょうけれど・・・
 水産物の放射性物質検査は今後ストロンチウムまで必須にしなくては駄目です。
 私は食べないけど、知りませんよ? ていうか、ネコたちだって困るし・・・
 イルカ、クジラを始め、海の生き物たちはもう手遅れかもしれませんが・・・

 
 なお、横浜国大のシンポジウムについては、IKANが記事にまとめてくれましたので、そちらをご参照ください。

■海に関連するシンポジウムが|ika-net日記
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-2f26.html

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2013年10月02日

平和の祭典の前に、自然と動物たちに平和を!

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◆コアジサシの楽園・葛西臨海公園を壊さないで!
 都会のオアシス、葛西臨海公園の1/4を潰すカヌー競技場建設計画。絶滅危惧種を含む多くの野生動物を育む汽水域を保全できないようでは、東京は世界に顔向けできません! 東京では危急種、隣の千葉では絶滅危惧種のコアジサシも隣接する渚で営巣していますが、開発によって繁殖に影響が出る恐れも。渡り鳥の保護は、越冬地のオーストラリアをはじめ、世界に対して責任を負っていることをお忘れなく!


◆カラスを虐殺しないで!
 愛嬌ある仕草で人々の目を楽しませ、高度な社会性を備えたカラスは、スカベンジャーとして生態系のバランサーの役割を果たしてくれるありがたい存在。ゴミの後始末はニンゲンの責任なのに、駆除でごまかそうとする東京都は、知恵比べでカラスに負けてます!
※ コアジサシなどの野鳥の減少をカラスの所為にする向きもあるけど、捕食の影響なんて生息地・営巣地の破壊とは比べ物にならないよ!


◆沖縄と北限のジュゴンにも平和を!
 この国で平和の祭典を開催したいなら、平和と相容れない軍事基地のために、最も絶滅が危惧される北限のジュゴンの大切な住処を潰すのはやめて! 近隣諸国と仲良くできないなら、一体何のための五輪なの!?

◆イルカ猟・水族館展示をやめて!
 渡り鳥と同じく、広い海原を行き来する野生動物の保護管理は世界が決めること。経済的理由で地域の伝統文化・伝統産業を蔑ろにできる国が、海の野生動物を殺すことについてだけ文化を唱えても白々しいだけ。ご神体≠支えているのは、税金と水族館での生体展示。五輪開催に手を挙げる国として恥ずかしいよ!

◆南極の野生動物たちに平和を!
 世界一の飽食大国・食糧廃棄大国でありながら、美食を理由に南極の自然にこれ以上手を出すのはやめて! 日本が「南半球の自然も野生動物も俺たちのものだ!」なんてジャイアンなことを平気で叫び続けるなら、南半球のすべての国は東京五輪2020をボイコットしよう!


◆ヘイトスピーチを厳罰化し、排外主義者を撲滅して!
 同じ人間に向かって「殺せ!」「レイプしろ!」と叫ぶ狂信的な排外主義者のデモを認めてしまう、あまりにも時代遅れな都市で、五輪開催なんてできるはずないでしょ!? 外国人が安心して訪れることのできない街だと、世界に思いっきりアピールしてどうするの??

◆地震と原発のある国で五輪なんて無理っ!
 日本は地震・津波・火山と共存していくことしかできません。いつ来るかも正確に予測することなんてできないよ。海外から大勢の人たちを招くのであれば、原発推進の旗を降ろすのは大前提だよね!


    ***


 「ブロック」だの「コントロール」だのデタラメ三昧のプレゼンで強引に勝ち取った2020年の東京五輪開催。
 どうしてもどうしてもどーーーーーーーーしてもやりたいんだよね・・・・
 そんなにどーーしてもやりたいのであれば、やめるべきことをきっぱりやめていただきましょう。
 実質的な不利益を伴わない外圧は100%無意味です。捕鯨ニッポンの場合は逆効果。
 けれど・・ネタがあれば話は別です。
 歯に物が挟まったような言い方ではなく、はっきりと、強いメッセージを伝えましょう。遠慮は一切要りません。
 そして、特定のNGOや個人の枠にとらわれず、各自それぞれ個性的なメッセージを発信していきましょう。
 7年あります。


参考リンク:
−日本/東京が五輪開催国/都市に相応しくあるために(拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/75365093.html
−東京五輪、返上しませんか?(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/74406344.html



 コントロール・シンドロームに陥った捕鯨ニッポン・その2として、横浜国大と朝日のシンポについて近々まとめる予定・・
 武力・核の保持、侵略が平和でなんてあり得ないように、命を奪って環境保護もへったくれもありゃしません。
 ニンゲンは自然をコントロールできる崇高な存在だという、とてつもない傲慢が蔓延りつつある状況は、何とかしないといけませんね・・・

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2013年09月29日

コントロール・シンドロームに陥った捕鯨ニッポン

◇風立ちぬ感想

 タダ券をもらったので「風立ちぬ」を観にいきました。
 うーん・・・
 宮崎氏には申し訳ないけど、ちょっと泣けんかった。
 自分の作品はどれも何度読んでも泣けるんだけど。。
 原作のプラモデル誌連載漫画、堀越二郎の伝記及び堀辰雄の同名小説についてある程度予備知識があれば、それなりに面白かったのだろうと思います。
 今までにない目新しい演出といえる部分は、「地震」「大人の恋愛」くらいだったかな。彼の場合、既に完成されすぎている部分もあるのでしょうが・・。宮崎駿氏はアニメ演出家としてはまさしく超一流で右に出る者のいない存在だと思うのですが、脚本は別の人間に任せたほうがいいように思うんですよね。制作スタイルとして無理なんでしょうけど。
 一言でまとめれば、伝記+サナトリウム文学をアニメ映画の形で表現したらこうなった、という感じなのでしょうか。
 まあ、そういう映画もあっていいと思うのですが……そういう前振りはなかったよね。
 これまでずっと、ジブリとスポンサーで入っている大手広告代理店等は、興行成績の数字を念頭に置いたプロモーションを展開してきたわけです。作品そのものと切り離して。今回は庵野氏の主役抜擢(人選は宮崎氏だというけど・・)とニンゲン効果音。
 ジブリの大罪の一つとしてしばしば挙げられる、プロの声優さんを起用しない方針については、筆者も以前から強い不満を覚えていたところ。絵コンテや動画を素人にやらせるのも、斬新な演出としてアリ、と言ってるのと同じだよね・・
 アニメ監督、クリエーターとしての庵野氏には、宮崎氏同様尊敬の念を奉っているのですが、声優としての起用はどう考えても大失敗としか思えませんでした。効果音も作品の雰囲気ぶち壊し。コメディやB級ホラーなら馴染んだかもしれませんけど。。

 映画を読んで感じたのは、宮崎氏の最後のわがまま
 筆者の好きな宮崎作品(アニメ作品)は、@ラピュタ、Aトトロ、Bナウシカ。後は、ルパン最終回やパンダコパンダ。数字をたたき出したその後の作品は、いずれもガッカリ感のほうが強いです・・
 ちなみに、原作で好きなのは「シュナの旅」と「もののけ姫」(映画は嫌い)。「ナウシカ」は終盤に入って宗教臭が強まったり、王蟲をバイオ工学の産物にしてしまったのがちょっと残念だった。テトも殺しちゃうし。。
 宮崎氏以外では「猫の恩返し」と「ぽんぽこ」。むしろ演出で宮崎氏に入って欲しかった。。
 これは筆者の勝手な想像にすぎませんが、映画ナウシカやルパン最終話(TV)は、作った本人は「青かった」と思っている節があるように感じました。筆者はそうは思わないんですけどね。むしろ=B
 メッセージ性を薄めてぼかして、わけのわからないものにして、勝手に視聴者に解釈させる(実はかなり素朴な教科書的回答が用意されているんだけど・・)中期以降の作品に対しては、返って幻滅感を覚えました。「もののけ」とか「千」とか「ポニョ」とかの辺り。だから、劇場には行かなかったんですけどね・・。
 今回の「風立ちぬ」は、本人はメッセージ性はないとおっしゃっていましたが、これまでの一連のジブリ作品に比べると、メッセージがはっきりと打ち出されていました。震災、復興、全体主義へ向かう風潮。二郎や本庄、カストルプ、カプローニらの、ほんの2、3の台詞の形で、しっかり示されていましたよ。短くでしたけど、強烈に。強烈すぎるくらいに。
 まあ、ちょっと青かった≠ゥもしれないです。強すぎたし、作品のエンターテイメント性との調和が取れていなかった部分は否めなかったかもしれません。ナウシカやラピュタに比べても。
 でも、爆発的にヒットした過去の一連の作品よりはマシだったかも。
 たぶん、宮崎氏自身自己矛盾だと思い続けておられるんでしょうけど。

 「風立ちぬ」を(大人の)恋愛モノとして見た場合、「純愛王道サナトリウム文学ってのはこういうもんなんだよ」というお約束≠あらかじめ頭に入れてない鑑賞者には、あまりにもシンプルでご都合すぎ、しょんぼりとしか言いようがありません。
 そして、堀越氏の伝記として見るならば、まさに宮崎氏のようなマニアならディティールに惹きつけられるでしょうが、人間ドラマ・伝記としては何よりも肝腎な部分、戦闘機を作った人間の悲劇性からは大きく焦点がはずれていました。設計者として真骨頂となる最も美しい飛行機であるべき零式を、敵のみならず搭乗員の命すらあえて奪う恐ろしい特攻兵器にされた苦悩、無念さが描かれず、思いっきり端折られてしまったのは、非常にもったいなく、やや尻切れトンボの印象にもつながりました。
 泣くだけなら、松任谷のエンディングだけで涙腺はそこそこ刺激されるでしょう。しかし、はたして「戦争に関わった技術者の心の痛み」に涙した人はいたでしょうか?
 その点については、批判の目を気にされた部分も確かにあったのでしょう。誤魔化すことを「要求」された部分も。長編アニメは1人じゃ作れませんからね・・。もちろん、それ以上に、鑑賞者各自が想像を膨らませてくれることに望みを託されたのでしょうが。

 残念ながら、いまの日本は驚くほど《想像力の欠如した社会》になってしまいました。
 想像を働かせるのは、ある意味脳をフル回転させる面倒な作業です。他者の用意したマニュアルに沿った模範回答を取り込み、自分の感想にしてしまう人が、今の時代、この国ではどれほど多いことか・・・
 実際に映画を観た人たちから「よかった」「感動した」という判を押したような感想ばかり聞くと、暗澹たる思いに駆られてしまいます・・
 だからこそ、筆者としては、むしろストレートに、これでもかとばかりに、汚く、醜い、血にまみれた「航空機開発の歴史」の負の側面にスポットライトを当てて欲しかったのです。逆に過剰なくらい描かれていた、「美しい純愛」の部分と釣り合いが取れるくらいには。
 聞こえてくる限り、最後の作品の出来栄えにご本人はある程度満足されているのでしょう。奥さんは不満だったという話だけど・・。
 純粋に作品に対する評価でいえば、筆者は高い点を付けられません。けれど、メッセージを前面に出す「青さ」に面映さを覚え、口では若い時代の作品を低く評価しながらも、実はメッセージ性とエンターテイメント性の狭間で揺れ動き、ずっと苦悩し続けていた宮崎監督らしさは感じました。
 歯の浮くような、あるいは鼻につくような、青いとさえ感じる、高い社会的なメッセージが気にならないほど、ずば抜けたエンターテイメント性を備えた作品でさえあるならば、どんどん発信していいというのが筆者の持論。
 それだけの優れた演出の才を備えた、稀有なクリエーターこそ宮崎氏だったと思うのです。残念ながら、実際には多くのジブリ作品が商業性を優先させられ、薄味の作品ばかりになってしまった感が否めませんが。
 結局最後まで宮崎氏のカラーに頼らざるを得ず、宮崎氏に匹敵する才能と、氏とは異なる強烈な個性をともに備えたクリエーターを発掘し、育てることのできなかったジブリの今後も、筆者としては気になるところ。


 そういえば、噛み付いてるヒトたちもいましたね。
 禁煙学会の批判については、筆者はもっともだと思いました。さすがに重度の結核患者の前で吸うのはいただけない。ほかにいくらでもやりようがあったという意味で、作品の本筋とは無関係な演出だし、これもヘビースモーカーの宮崎氏のわがままなんでしょうけど。
 「正論」の右翼らしいみっともない攻撃のほうは、「熱風」の憲法改正特集への当てつけなのが見え見えだったけどね〜。
 「戦闘機や戦艦を好む一方で戦争反対を主張する矛盾=v? 全ッ然OKですよ。
 筆者はあまりその属性はないのですが、別に嫌いでもありません。メカは描くのが苦手だからあんまり好きになれないだけ。
 殺しをやめて、戦争をやめて、博物館行きにして、たっぷり愛でればいいんですよ。いくらでも。そして、歴史は歴史。過去は過去。繰り返さなきゃいいんですよ。単に。メカフェチ、ミリオタ万々歳!
 いまこれから戦争そのものをやりさえしなければ。戦場に行かなければ。銃弾なり核兵器を積み、発射しなければ。命を奪わなければ。
 もちろん、「繰り返さないための反省」は日本という国が存続する限り決して怠ってはなりませんし、現状では戦争の準備の段階で環境汚染や税金の使い道の問題も厳然として発生しますけど・・
 それらはあくまでヒトの罪。メカの罪じゃありません。
 ニンゲンはもともと矛盾だらけの生き物です。想像を膨らませるのは自由。表現するのは自由。
 右翼のアホどもは何も矛盾を解消できているわけではありません。反反捕鯨論者のイカレた殺しの平等論≠ニそっくり同じで。
 創作、表現の場においては、徹底的に、とことん理想を追求するべきなのです。現実の枷を引きちぎって。
 萎縮を狙う国粋主義者たちがいくら脅しをかけようとも、妥協する必要など一切ありません。

 もちろん、それはアチラサイドのヒトたちについても同じですし、実際その手の作品が増加傾向にあるのを感じますが、人の命より国体を優先するような価値観の持ち主には、本物の感動を与えることなど決して出来はしないのですから、その点は筆者は楽観しています。
 宮崎作品の個性(アク)には筆者は少し肌が合わないところもあるのですが、はっきりと正論を言ってくれた宮崎氏らには、心から尊敬の念を覚えます。
 なぜなら、日本の著名人層・メディア人層の多くは、権威に迎合するか当たり障りのないことしか言わず、本当に必要な社会的発信をしたがらないから。それだけでも、応援したくなるというもの。
 また監督として次作を出してくれとか、そういうことを言う気はないけど。注文としては、やって欲しいのはむしろ、映画以外の表現への挑戦、後身を育てること、かな。
 ジブリについては、ラピュタのリメーク版とかどうかしら? 竜の巣への突入シーンとかゴリアテだけCG使って書き直して。興行的にはむしろペイすると思うんだけどなあ。まあ、宮崎氏は嫌がるだろうけど・・
 そうそう、ジブリさん、「平成狐合戦コンコン」なんてどうでしょうか?
 あと、「三獣使」も映像化すればエンターテイメント性の高い作品にきっと仕上がりますよ。ポケモンのプロダクションでもいいけど。ていうか、誰か作ってくれないかニャ〜。筆者の脳内だけじゃもったいないし・・・


参考リンク:
−風立ちぬ|ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E7%AB%8B%E3%81%A1%E3%81%AC_(%E5%AE%AE%E5%B4%8E%E9%A7%BF%E3%81%AE%E6%BC%AB%E7%94%BB)#cite_note-hochi-42



◇コントロール・シンドロームに陥った捕鯨ニッポン・その1─池上プロパガンダに見られる情報コントロール

■(池上彰の新聞ななめ読み)安倍首相の五輪招致演説 「ブロック」発言の意味は (9/27,朝日)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309260575.html

■汚染水浄化装置、22時間で試運転中断 福島第一原発 (9/28,朝日)
http://www.asahi.com/national/update/0928/TKY201309280038.html
■(耕論)止まらない汚染水 野村修也さん、阿部博之さん (9/27,朝日)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309260581.html
■安倍首相、再び「汚染水ブロック」 海へ流出続くなか 福島第一視察 (9/20,朝日)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309190662.html
■POLITICS/実態なき「ブロック」 汚染水「影響は港湾だけ」安倍首相は明言 福島第一視察 (9/20,朝日)
http://www.asahi.com/business/articles/TKY201309200284.html
■朝日新聞ツイッターで東京落選と誤報 IOC総会、直後に訂正 (9/10,朝日)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309090584.html

このとき朝日新聞のツイッター速報が「東京、落選しました」と報じましたが、(引用)
「フェロー」という聞きなれない肩書をそのまま記事で使っているため、この人がどういう地位にある人なのかわからず、どの程度重みのある発言か評価できないのが残念です。(引用)

 権力を監視し、チェックするのが本来のジャーナリストの役目。
 日本を代表するジャーナリストとしてTVに新聞に引っ張りだこの池上彰氏は、しかし、報道より誘導のプロといったほうがしっくりきます。
 池上氏は民主党政権時代は保守陣営から叩かれていたようですが、要は時の政権に擦り寄る風見鶏ということでしょう・・
 大勢につく迎合型の手法、茶の間に届けるネタに使っていいかどうかムードを読む感性が、この御仁の持ち味なのでしょうけど。
 27日の朝日に掲載されたオピニオンには、まさに氏の誘導のテクニックがいかんなく発揮されていました。
 タイトルが「新聞ななめ読み」となっていますが、安倍政権への批判の足をすくって安倍擁護にそっくり利用する手口は、「ななめ」というレベルではありません。記事をコケにされたに等しい朝日が、なぜこの御仁にこれだけの紙面を与えているのか不思議でなりません。
 しょうがないのでななめ読みのななめ読み≠「きましょうか・・・

 冒頭で落選誤報の件に触れ、真摯な謝罪を装って朝日をチクリと刺していますが(他紙もたたいてますけど)、朝日がツイッター上では数分後に削除、謝罪し、紙面でも記事で謝罪していることには触れていません。ここに池上氏のアンフェアぶりが露呈しています。
 「自分はすぐに謝ったし、ここでも謝ってるんだぞ、エッヘン♪」と胸を張るなら、引用文は「報じ、すぐに削除・謝罪しましたが」とするべきです。朝日の紙面を借りてるのにねえ・・
 意味のないパートですけど、ここで「早合点という恥ずかしい誤報」という言葉を伏線に使っているわけです。覚えておきましょう。
 少し飛ばして、池上氏がかなり行数を割いている「フェロー」について。フェローがどういうポジションか池上氏が知らないはずはありませんが、朝日の解説不足を指摘しながら自身が代わりに解説するわけでもありません。肩書きは東電が付けるもので、勝手にメディアが勝手に変えられるわけでもなし。
 一般読者は、たとえフェローが正確にどういう役職か知らなくても(日本語の役職だってそれは同じことです)、東電の人間がこう言ってるのかと受け止めますし、大事なのは内容。真っ先に地位に目が行き、その地位に基づいて発言の重みを斟酌する、池上彰のようなタイプの人間ばかりではないのですから。平の社員、下請けの作業員だろうと、重みのある発言だと市民は受け止めます。池上氏はきっと、ハッピー氏の指摘に重みなどまったく感じないのでしょうね・・・
 さて、ここからが重要。池上彰の真骨頂(?)誘導のテクニック。究極のミスリード。
以下、朝日の同氏論説からの引用。数字、強調は筆者。

@ あれっ、初めて聞いた話だぞ。
A やっぱり安倍首相の発言には根拠がないというわけです。
B これではまるで泥縄ではありませんか。
C これを「コントロール」や「ブロック」といえるのでしょうか。
D そうか、「汚染水をブロック」ではなく、「汚染水の影響をブロック」だったのですね。早合点した私がいけなかったのか……。

 @からCまでは、安倍IOC発言と汚染水問題をめぐる朝日報道に対する、一般の読者とさして変わらない感想を述べただけ。
 そして記事末にきて突然、朝日記事に「ふむふむ」と頷いていた読者を唖然とさせる、とんでもない誘導が行われます。
 多くの紙面を費やした朝日の汚染水問題の解説を読み、納得した読者の側に寄り添っていたかに見せかけていたのが、補足記事の一部を抜き出した上で、次の結論を提示して安倍擁護に回るわけです。
「いや〜、僕も、読者のみんなも、朝日の記者も、(恥ずかしい)早合点≠オちゃってたけどさぁ、安倍首相は本当はこう言いたかったんだね。目からウロコだね! 早合点した私がいけなかったんだよね!(お前らもだよ)」
 「汚染水」じゃなくて「汚染水の影響=vだからいいんだよ、と。
 これですべての疑問がすっきり解消されたといわんばかりに。
 びっくり!! もう見事なお手並みというほかありません。

 早合点していなかった読者が、池上氏のミスリード解説を読んで早合点≠キるといけませんから、再度文脈を整理してみましょうか。
 「The situation is under control」がスピーチで安倍氏が使用した言葉。その後質疑応答で「影響」とは口にしていますが、海外メディアのリポーターのインタビューに対しては、次のように答えたと報じられているわけです。
I explained about the water contamination in Fukushima and explained that the contaminated water was blocked.
 いちいち「影響」を入れるのが面倒くさかったのか、リポーターの側が聞き取れなかったのか知りませんが、少なくとも「ブロック」という言葉はこういう形で一人歩きしているということです。
 早合点≠オた世界中の人が恥ずかしいと思わなければならないのでしょうか? 安倍発言の真意をタダしく汲み取れなかったことを。
 それとも、早合点されかねない「ブロック」という言葉を安易に用いた安倍氏の首相としての資質を問うべきでしょうか?

 池上氏は、この論説を通じて、「後者じゃないんだ、前者なんだよ!」ということを言っているわけですが。
 「状況」も「影響」も、最もコントロールという言葉が似つかわしくない対象。定義・境界が明瞭でなく、受け取る人によって多義的な解釈が可能な代物。
 そもそも低線量被爆を含む放射能の人体への影響、生態系に及ぼす影響については、まだわからないことが山ほどあるのです。
 わかってないもんをどうやってコントロールするんじゃ!! ブロックなんぞできるか、ボケがっ!!!!
 現在の科学でわかっている範囲では、直接ニンゲンの健康に「深刻な悪影響」(深刻≠熨椛ホ的な指標ですが)はないと考えられる──そう結論付ける人たちはいるでしょう。だからといって、「影響がない(影響を与えない)」という表現を用いるのは、子供でもわかることですが、日本語として明らかな誤りです。
 ブロックというのは、文字どおり「そこで止める」ということ。現状はだだ漏れしまくりで、どんどん拡散して薄まるから数字が低く見えるというだけ。生物圏に取り込まれた放射性物質が、どのような形で移動するか、まったくといっていいほど解明されていないのに、「影響をブロック」など出来るはずがないのです。
 それをないと言い切ってしまう、あまりにも単純素朴すぎる究極のオプティミズム。
 安倍氏が「コントロールできてると僕は思う! 信じる!」のは勝手。彼はコントロールの定義が世間とかけ離れているだけ。定義が合致しているのは、池上氏や擦り寄っているアホ右翼どもだけ。
 日本という国が、国民に、五輪関係者に、世界に対して、責任を負うことなどできるはずがありません。
 何をもって、どの範囲までをコントロール/ブロックと呼ぶのか。コントロール/ブロック出来ているか出来ていないかを誰が、どのような基準で判定するのか。出来なかった場合、誰が、どのような形で責任を負うのか。負えるのか。
 そうした問題に一切言及することなく、五輪欲しさのあまり、「The situation is under control」と言い、「Contaminated water is entirely blocked」と言てしまう、そんな恐ろしい人物を一国の首相に据えてしまっているのが日本なのです。
 追及するメディアの記事そのものを用いて政権批判を「ブロック」し、世論を「コントロール」しようとする──これほどまでの池上氏の熱意はむしろ、オピニオンリーダーとしての氏の立場を精一杯活用しようとする一つの勢力があるようにさえ思えてきます・・・

 原発・汚染水・リニアから、自然・野生動物・犬猫の命、そして一人ひとりの国民とその個人情報・表現の自由まで「コントロール」したがる、コントロール・シンドロームがいま、この国で蔓延しつつあります。
 自然・野生動物のコントロールを推進するリーダー、横浜国大松田氏が「減る水産物、増える海獣−絶滅危惧の水産生物と持続可能な漁業−」なる物騒かつアバウト極まりない迷惑なタイトルのシンポジウムを開催した模様。食文化御用学者加藤氏が何を言ったのかも気になるところですが。
 短いブログだけでもツッコミどころ満載なので、次回はこの問題を取り上げたいと思います(ほかにちゃんとチェックしてる方がいれば、筆者が出る幕もないのだけど・・)。


−公開コロキアム「減る水産物、増える海獣−絶滅危惧の水産生物と持続可能な漁業−
http://www.cosie.ynu.ac.jp/news/94.html
http://d.hatena.ne.jp/hymatsuda/20130920/1379638672


参考リンク:
−安倍首相が五輪招致でついた「ウソ」 “汚染水は港湾内で完全にブロック” なんてありえない (9/8,水島宏明氏)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20130908-00027937/
-Japan Prime Minister’s Fiction vs. Fact: Fukushima contamination has never done any damage to Tokyo; Radioactive water at plant was “blocked” − Study: Tokyo was contaminated − Experts: Radioactive water is constantly flowing out to sea and almost impossible to stop | ENENEWS
http://enenews.com/japan-pm-fukushima-contamination-has-never-done-any-damage-to-tokyo-radioactive-water-at-plant-was-blocked-study-tokyo-was-contaminated-experts-radioactive-water-is-constantly-flowing-ou
−池上彰の反中プロパガンダ|世に倦む日日
http://critic6.blog63.fc2.com/blog-entry-396.html
−豪米戦略のターゲットは中国or捕鯨ニッポン?(拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/75815825.html
−コントロール下にあるのは言論とメディア
http://kkneko.sblo.jp/article/75670669.html
−日本/東京が五輪開催国/都市に相応しくあるために
http://kkneko.sblo.jp/article/75365093.html
−ミツバチとクジラ──科学のまやかしと予防原則
http://kkneko.sblo.jp/article/74729858.html
−東京五輪返上しませんか?
http://kkneko.sblo.jp/article/74406344.html
−オマケ・池上彰のキャラ設定
http://kkneko.sblo.jp/article/46531519.html
http://twitter.com/kamekujiraneko/status/319807027423629313

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2013年09月22日

ダイマッコウ考/「予告犯」の正しい読み方

※ 本日の記事はネタバレ注意です!
◇ダイマッコウ考

■鯨の王 藤崎慎吾・著|文芸春秋
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784163260006
■感想サイト
http://www.webdoku.jp/shinkan/0708/t_5.htm
http://blog.livedoor.jp/sintamanegi/archives/51240016.html
http://www.asahi-net.or.jp/~wf9r-tngc/kujiranoou.html

 日本発の本格的な海洋SFとして、SFファンにはぜひ手に取っていただきたい作品です。

 海という環境において、ヒトという陸棲哺乳類の種族は、完全にアウェイの立場にあるわけです。
 もっとも、現代を生きるヒトには、その認識すらないのかもしれません。
 「ほかの誰かが暮らしている世界なのだ」という自覚さえあれば、少しは遠慮が働いたというものでしょう。ここまで荒らし放題、汚し放題、壊し放題ということにはならなかったでしょう。
 その最たるものが、核のゴミ捨て場としての利用。そして軍事利用。

 この作品は、ヒトが海という自然とどのように向き合うべきか、今の付き合い方で本当にいいのか──という問題を、私たちに改めて気づかせてくれます。
 米海軍の潜水艦をも翻弄するダイマッコウという存在を介することで。
 この作品で筆者がとくに気に入っている点は、ニンゲンの知性と武力さえも上回る存在でありながら、ダイマッコウがあくまで野生動物らしさを失っていないこと。興醒めしがちな異なる知性≠ナはなく、クジラ(亜)目(下位の分類群は現存しないけど)の動物の一種としてすんなり受け入れることができたところ。
 放射性廃棄物を含む有害廃棄物の投棄、音響妨害のような問題にも、きっちりボリュームが割かれ、読者に考えさせる機会を与えてくれています。
 ハードSFとしての緻密な設定、海洋生物の描き方、コンタクトものとしての切り口の面でも、ドイツの作家の手になる「深海のイール」よりも、筆者としてはポイントが高かったです。

 きちんと読んだのは、実はつい先日(汗)
 これまでなかなか食指が動かなかったのは、主人公の無頼なアル中鯨類学者・須藤秀弘のモデルが、最近御用色が濃くなってしまった加藤氏だからなんですが(汗々) 名前も一字違いだし、どうしてもあの個性的なヒゲ面が思い浮かんじゃうんだよね(--;;
 それから、正直、テーマやSFネタの一部に拙作と被る部分もあり、筆者としてはかなり悔しい思いをしました(^^;;
 続編で気嚢ネタを出したのが、すっかり二番煎じになっちゃったし。。
 このままじゃ癪だし、筆者はハードSFファンなので、いくつかツッコミを入れたいと思います。藤崎先生のファンの皆様、ゴメンチャイm(_ _)m

 まずは気嚢ネタについて。
 今までダイマッコウが発見されなかった大きな理由は、呼吸のために海面に上がる必要がなかったから。そのために気嚢の特徴、アザラシでの事例をもとに水中仕様の肺≠ニいうアイディアを作者は考案されたわけです。筆者も読者の皆さん同様唸らされたのですが、実はひとつ大きな問題が。
 それは、進化史的な説明が(ほぼ)不可能だという点。
 動物がそれまでの水中生活から陸上生活へ移行するにあたって、酸素をどうやって取り込むかはとても大きなハードルでした。
 実際にどうやったかというと、浮き袋という元来別の機能を果たすための器官に、空気中の酸素も取り込める追加仕様≠加え、水中では鰓、陸上(乾燥期や水場間の移動)では肺という、両棲タイプの動物へとまず進化したわけです。その後淘汰圧が働き、フロンティアの陸上に生活の比重が移る過程で、呼吸のための器官もメインとサブが入れ替わることになったわけです。これが進化における呼吸器官スイッチの流れ。進化は常に、境界領域で起こり、一種のひらめきにも似た想定外の活用=A不可欠な機能に至る前のバックアップ的な活用≠フ過程が入るわけです。ID論者であればここは省けるんですけどね・・
 ダイマッコウの場合、肺という単一の器官を空中仕様から水中仕様へといっぺんに切り替える形になるため、進化の過程を考えるとやはり苦しいのかな、と。
 徐々に潜水時間を引き延ばす方向へ淘汰圧がかかったとして、いまは発声器官として使われている鼻道の気嚢に近い構造を水中の酸素を一時的に取り込む器官として発達した、という説明なら可能かもしれません。マッコウは鼻道に低温の海水を取り込み、脳油の比重を下げることで大深度への急速潜行を可能にしているという仮説があります。その前庭気嚢がやがて音響用から水中呼吸用への器官へとシフトしたとの説明はつくかも。ただ、それだとソナーや音響通信の性能は低下しちゃうかもしれないけど・・
 あと、マッコウより大きい強力な社会性の捕食者という位置づけを考えると、そこまでして深海に適応する必要性は高くなかったでしょう。餌の生産性、あるいはメガロドンのような天敵への対処にしても。ヒゲクジラの場合は高緯度に逃げることで対処し、それが長距離回遊の由来だと考えられています。メガロドンに逃げるために潜水時間を徐々に延ばすよりは、寒い海に逃げるか、大型化で対抗したほうが手っ取り早いだろうし、やはり深海への適応はコストがかかりすぎる気がします。
 余談ながら、気嚢は鳥類の大きな特徴のひとつといえる器官で、恐竜から続く進化の観点でも注目されてきたのだから、動物学者なら畑違いでも名前と概略的な機能は知っていていいこと。対談を見る限り、やっぱり加藤氏は動物<食文化学者だね。。。 
 もうひとつ、その須藤氏(加藤氏)の解説の間違い。
 「生きた化石」は形態・形質が祖先種とほぼ変わっていない原生種に対して用いる用語。ヒゲクジラもハクジラもダイマッコウも、ムカシクジラを共通祖先に抱く関係という意味では同じで、直系の子孫には違いありません。
 むしろ、マッコウとダイマッコウは、別の系統でありながら深海に適応したために、よく似た形態を有するようになった相似の典型といえるので、その辺の解説が欲しかったところ。
 それと、これだけのサイズで分布も広範に及んでいたなら、化石の形でやっぱり残ってしまうでしょうね。だから、分岐年代がそこまで遡っていたとしたら、やっぱり現代に未知の新種として発見されるのはちょっと苦しいかも。
 

 環境問題に関する部分で指摘しておきたいのは、核廃棄物に関して。
 超臨界二酸化炭素を用いた化学分解技術は実際に応用されていますが、ウランから酸素などの不純物を除去するためで、放射能の問題を解決するわけではありません。登場した多国籍企業がどれだけ悪質かって話だけど。
 原潜と海底基地の原子炉も、あのままでは確実に汚染源。海の原潜・核事故は、ロシアの原潜、タイコンデロガの水爆搭載艦載機をはじめ、実際起きているわけですが。
 近未来の設定といえる海底基地ですが、電力供給を原子炉でやるのは、燃料棒の交換などを考えるとかなり無茶かも。やっぱり温度差か波力が現実的かしら。核の問題を訴える意味であえてそういう設定にされたのだと思うけど。

 有人宇宙ステーションは極低重力という特有の実験環境が必要性につながっていますが、有人深海底基地のほうは、優れた潜水艇があったり、高圧実験環境が陸上で作れることもあり、コストに見合う必要性が見出せないかも。現状の洋上の母船で十分だから。
 ある意味で、科学性が恐ろしく低いのに税金をバカスカ拠出する調査捕鯨に近い存在といえちゃうかもしれません・・・

 工学では超音波兵器ネタ。
 基地や船内への攻撃は、水中・金属隔壁・内部の空気というインピーダンスの差が非常に大きい三層構造だと、反射・吸収による減耗がかなり大きくなるように思います。直角に当てると自分に跳ね返って危険だし、角度を付けると余計入射しないし。
 位置を探るエコロケーション用ソナーの方は、当然攻撃用ソナーより出力を絞らなければいけませんが、低周波は指向性が低く精度が粗くなります。船内のニンゲンの器官に照準を定めるのはやっぱり厳しいんじゃないかしら。
 逆に、ニンゲン側も、体表の斑紋・傷の位置や形状、数などを主な指標とする個体識別は、基本的に視覚に頼るため、音響ソナーの分解能・反射映像でそれをやろうとするのはちょっと無理かなあと。
 低い出力でより効果を上げる方法の一つは、隔壁に頭部を接触させる方法。それと、小説内でも使われていた複数個体で焦点を合わせるやり方。まさに知能・コミュニケーション能力の発達したダイマッコウならではの協調攻撃ですね。後は、ブリンの「ガイア」にあった(こっちは重力波だけど)周波数を対象の固有振動に合わせる方法。音を吸収するゴムのような素材を過負荷にして発火させる手などもありそう。
 なんて、これじゃまるでニンゲンよりダイマッコウを応援してるみたいだけど。。。
 ちなみに、拙作に登場するネオシャチ・ネオマッコウらが使う超音波レーザーなんか、昔のロボットアニメの必殺技のレベルだからニャ〜(汗) 大体、レーザーって原子のエネルギー遷移を利用して発生させる位相の揃った単色の光(電磁波)のことですもんね。。
 ごまかしの利くファンタジーしか描けない筆者としては、これ以上のツッコミはやっぱりできませんね(^^;;


 8月末には『深海大戦』が刊行。藤崎先生の今後の作品にぜひ注目していきたいと思います。


参考リンク:
−深海大戦|角川書店
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201103000949



◇リンチ殺人テロを賞賛する凶悪反反捕鯨漫画「予告犯」の正しい読み方


■予告犯|ジャンプ改Web
http://jumpx.jp/w/yokoku/special.html
■予告犯|ウィキペディアJP
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%88%E5%91%8A%E7%8A%AF


■Tsunami|シー・シェパード(SSCS)元代表ポール・ワトソン氏のフェイスブック
https://www.facebook.com/captpaulwatson/posts/10150154562665932
■石原都知事  天罰発言|ユーチューブ
http://www.youtube.com/watch?v=-0yM309YxKk
■石原都知事「アニメエキスポ震災で全部パーになった。ざまあみろ。」 |〃
http://www.youtube.com/watch?v=jYjiR4DnICY
■石原知事「津波は天罰、我欲を洗い落とす必要」 ('11/3/14,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110314-OYT1T00740.htm
■石原"不謹"慎太郎の「津波は天罰」という妄言を批判する|松永英明氏 ('11/3/15,BLOGOS)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110314-OYT1T00740.htm
■よみがえる「天譴論」〜石原天罰発言の超克|Kousyoublog
http://kousyoublog.jp/?eid=2569


東京都の石原慎太郎知事(78)は14日、東日本巨大地震に関連し、「津波をうまく利用して『我欲』を洗い落とす必要がある」「これはやっぱり天罰」などと述べた。(引用〜読売)
しかし、こちらの解釈を行なうならば、石原都知事はポピュリズムや我欲批判をするのに「天罰」というような被災者感情を無視した言葉を発すること自体が不要であったはずだ。被災者感情(あるいは被災地に親族や友人知人がいる人たちの思い、あるいはあの被災の映像を見て一人でも多く助かってほしいという願い)を踏みにじる言葉であることは言うまでもない。村井嘉浩・宮城県知事も「塗炭の苦しみを味わっている被災者がいることを常に考え、おもんぱかった発言をして頂きたい」と発言したと報じられている。
「津波で我欲を洗い流せ」と言ったら、津波の被災者は洗い流された「我欲」という連想が働いて当然である。そういうことに思いが至らない石原の言葉づかいにはまったく賛同できる余地がない。
そこでもう一つの読解が可能である。石原は本当に天罰だと思っている、と。
古い考え方では「為政者が悪政をするから災害が起こる」という考え方、大正の関東大震災の際には「民衆が堕落したから災害が起こった」という考え方が流行したという。つまり、ノアの大洪水のように、大災害が起こったのは堕落した人類を懲らしめるためだという思想である。
石原の場合、民主党ではなく日本人への天罰だと言い切っているので、関東大震災後の民衆堕落批判としての「天譴論」に当てはまるといえよう。
こう言い換えればわかりやすいだろうか。石原慎太郎は「煩悩にまみれた日本人へのカルマ落としとしてこの大震災が起こったのだ。だから日本人は悔い改め、石原慎太郎を支持しなければならない」と主張したのである。
(引用〜BLOGOS)


 以前のブログでボロクソにけなしたら、この作品を擁護するクレームをいただきました。。
 ので、さらに詳細なツッコミを入れておきたいと思います。

 まず、集英社・筒井氏によってほぼ特定される形で、具体的にパロディにされた元ネタのSSCS・ワトソン氏の詩について。
 最初に、筆者はSSCSのやり方を支持しておらず、ワトソン氏も個人的に嫌いなタイプだとお断りおきましょう。もうひとつ、私の作品でも環境保護団体・(一部の)反捕鯨運動に対するかなり痛烈な風刺を取り入れています。
 作品中のシー・ガーディアンなる団体の代表はボブ・パーカー。スペル一字違いのボブ・バーカーは実際のSSCSの船名であり、同団体の大口スポンサーである著名なTV司会者の実名。日本のSSCSたたき動画では「バ」ではなく「パ」の誤表記も多く見られます。
 筒井氏が勘違いでニコ動を真に受け「パ」にしたのか、狙って一字変えたのかは定かでありませんが・・
 さて、リンクのワトソンのフェイスブック、詩の原文そのものを見ればわかるとおり、彼の詩には「天罰だ」とも「ざまあみろ」とも一字も書かれてはいません。
 日本、東北等固有の地名も含まれてません。ま、311に書いた以上、特定の津波にインスピレーションを受けて書いた詩であることはまず間違いないでしょうけど。
 詩の中にはポセイドンという単語が一度使われるだけ。
 天罰というのは、もし発言者が字義通りの意味をこめているとすれば、その人物の宗教観・信教・道徳観の反映であるはずです。
 ワトソン氏は伝え聞く限り、プロテスタントでもカトリックでもありません。どうやら日本の八百万信仰や先住民族のアニミズムに共感しているようですね。
 仮に隠れキリスト教徒だとすれば、ポセイドンなんて異教の神の名前が出てくるわけありません。といって、ギリシャ神話の世界を真に受け、ゼウスやポセイドンを信仰しているわけでも当然ありますまい・・
 ギリシア神話に慣れ親しんだヒトであれば、これは比ゆ的表現としてあり得るでしょう。実際、メジャーなギリシャ神話のメジャーな登場人(神)物なんですから。
 確かに、古代の人々、信仰心の厚いヒトは、普通に津波や地震、噴火を神の天罰だと思い込むでしょう。「思うこと」を他人が否定しても意味はないわけです。それは、相手の信仰や信条、価値観の否定でしかありません。
 ワトソンが日本に悪意を抱いているかどうか、災害に見舞われたことで「ざまあみろ」と思っているのかどうか──それは他人には決してわかりようがないことですが──いずれにしても、それは本人の良心の問題です。
 ワトソンの失言を「ざまあみろ」と思ってここぞとばかり攻撃して愉悦に浸っている反反捕鯨論者が山ほどいたとしても、それがこのアホどもの人間性の問題にすぎないのと同じこと。
 筆者の目には、「天災の前では高度な文明を発達させたニンゲンといえど無力な存在だ」という嘆きの詩というふうにも受け取れます。
 日本の反反捕鯨論者でも、SSCS支持者でもない、捕鯨問題に関して特定の意見を持たない世界中のニュートラルな人たちにこの詩の感想を尋ねれば、おそらく7、8割方筆者と同じ答えが返ってくるだろうと思いますけどね。
 繰り返しますが、本人がどう思っているかは、本人しかわからないことです。しかるべき立場の人物が、しかるべき場で発言した「言葉そのもの」ではなく、含むところのある他人が「言葉」の裏を勝手に勘繰ってあれこれ議論するのはナンセンスです。
 「この詩は『東北大震災は天罰だ、自業自得だ、ざまあみろ』と言いたいに違いない!」との主張は、そういった主張をしているヒトたちの純粋な主観です。自分の物差しで他人の内面を決め付けることしかできない、一部の狂信的な反反捕鯨論者たちの。
 詩というのは得てしてそういうものです。作者の意図をそっくり受け取る必要もありませんし、読者が想像をたくましくするのも自由ですけどね・・
 無神経だと思うヒトはいるでしょう。特に実際に被害に遭われた方は。
 しかし、文字どおりの天罰発言が、記者会見の席上ではっきりと「天罰」の二文字を明言する形で、ニュースで聞くだけの外国人と異なる日本の首都の首長の口からあったとするならば、話はまったく違ってきます。
 それも、表現力、想像力ともに日本で最も磨かれた人物であっていい、言葉・日本語の使い方が誰よりも洗練されているはずの、それが可能であって当然の、日本の売れっ子作家であったとするならば。
 石原氏の天罰発言がいかに#災者のみならず日本人全体を傷つけるものだったかについては、松永氏のブログ記事で詳細かつ適切に論じられているので、そちらをお読みいただくことにしましょう。
 ポール・ワトソンの無神経さの程度は、明らかに日本人・政治家・作家であるところの石原慎太郎元都知事には遠くはるかに及びません。
 当事者とそうでない者の感覚の違いというのは、「国籍によらず」共通です。
 ワトソンの詩について取り上げた日本のマスコミは産経のみ(記者は佐々木氏)。本人と日本の狂信的な反反捕鯨論者たちがネットでは広めましたが。
 一方、石原発言は各マスコミにそれなりに大きく取り上げられました。ネットでも。こちらでは支持者層もいましたけど。。
 「天罰発言」そのものをもしパロディとして取り入れるとするなら、ニュートラルな表現者/メディアであれば、対象は石原元都知事にしかなり得ないでしょう。まあ、両方知っていれば、石原とワトソンを9:1くらいでミックスした登場人物を作るのもアリでしょうけど。
 「予告犯」作者の筒井氏と、集英社の「ジャンプ改」筒井氏担当編集者は、石原発言に関する報道を知らないほど、新聞・テレビ・インターネットから隔絶された環境にいたのでしょうか? でもって、ワトソンだけはファンでフェイスブックで友達申請でもしてた??
 ありえませんわな。耳をまったくふさいでいたら、この作品自体成立しなかったでしょう。いくら中身がボロボロのガラクタだろうと。
 つまり、筒井氏はとんでもない色眼鏡の持ち主なのです。
 石原の天罰発言は、筒井氏の脳を右から左へとすり抜けていったのです。
 『予告犯』作者筒井氏(及びこの作品中の登場人物たち)が許せないのは、「津波は天罰」と発言した外国人のみなのです。
 ほかに何か理由がある? 別に他の属性でもいいんだけどさ。いずれにしろ、石原はスルーでOKなんだよね、この筒井という作家、集英社という出版社は。
 実在の事件・団体・個人を読者の大多数が特定できるほど、あまりにも具体的にすぎる内容を、ここまで偏った形で取り上げるのは、作者・掲載誌・出版社の思想・信条の反映と受け止める以外ないでしょう。
 あるいは、石原をパロディにして名誉毀損で訴えられるのは怖いけど、ワトソンなら集英社及び筒井氏を訴えることはまず考えられないから、いくらでもネタにしてしまえるという判断が、作者と編集者/編集長の間にあったのでしょうか?
 だとすれば、卑屈な意気地なしの謗りは免れないでしょう。
 ちなみに、威力業務妨害で指名手配を受けているワトソンは、日本に上陸した日本の警察によって逮捕される可能性が高いわけですが、海外で彼を逮捕する義務が生じるのは、日本との間で犯罪人引渡し条約を締結している米国と韓国だけなんですよね。
 フランス等でもこの「予告犯」は同国語版が刊行されているということですが、そちらでワトソンが集英社・筒井氏に対して、ほぼ特定できる形で勝手に犯罪被害者にさせられ、団体・個人を名誉を傷つけられたと訴えたら、その国の名誉毀損罪に該当する罪で刑事・民事告訴に至る可能性もゼロではないでしょうね。日本では『石に泳ぐ魚』の判例もありますし。

 さて、この漫画の内容の稚拙さについても指摘しておきましょうか。一応個人の感想としてですが。
 日本の警察のサイバー担当部署が手も足も出ないほど優れた一流のハッカーなら、黴の生えた誰もが知ってるチャチなツールを使ったり、ネカフェを踏み台になんかしないよね・・。すぐ足がつきます。
 莫大の予算と人員をかけ、ネカフェのチェーンまで特定しながら、指名手配のポスターで気づいた一般人に犯人を逃がされるシチュエーションもあり得ません。店舗の前で最初から£」ってるでしょうに。アホかいな。
 ジャンルとしては警察漫画なんでしょうが、警視庁を恐ろしく無能な存在として書いているに等しいです。現実味がまったくありません。被害者の相談を受けて「捕鯨文化論」をぶつ警察官もいないけどね・・
 当然ながら、登場する被災者は凶悪犯罪者を匿った犯人隠避の罪で問われなければなりません。この作品は、被災者の感情を前面に押し出す形で作中のモチーフとして利用したうえ、被災者を凶悪なリンチ殺人犯の共犯者として扱った漫画なのです。
 さて、シーガーディアンなる架空の反捕鯨団体に対して行ったのは、脅迫とPCの乗っ取り、さらし。
 これ、脅迫罪、不正アクセス防止法違反、名誉毀損罪、威力業務妨害罪等に該当するでしょう。シーガーディアン及びボブ・パーカーに対する。
 犯行が行われた状況によっては、出身のカナダなり団体本部のある国で同罪に該当する罪が適用されます。ここで仮に米国とすると、米国の司法当局が捜査に着手し、IPCOを通じて日本の捜査当局に協力の要請があることになります。日本の警察は「へい、かしこまりやした」と米国の指示通りに粛々と犯人を逮捕し、米国に送致することになるでしょう。それでおしまい。


 この作品の最悪の部分は反反捕鯨ネタではありません。
 前述のとおり、筆者はSSCSがボロクソに叩かれたところで別にどうでもいいですし。
 その問題点については、この作品を読んだすべての読者、そして人権・死刑問題、あるいはテロ問題に取り組んでいる人々に対して、強い警鐘を鳴らす必要を切実に感じます。こんなガラクタ漫画が日本で読まれているという状況に対し。
 実は、この作品の最終回について、筆者はある予想を立てていたのです。
 まあ、1割くらいは認めてやってもいいかなあという感覚で。
 主人公のシンブンシが、自らの手で人を殺めたことに対する罪悪感に苛まれ、自滅するというパターンを。
 初回で、この主人公らは、凄惨なリンチ殺人を実行しました。自分自身があたかも法の執行者であるかのように振る舞ったのです。
 相手は日雇、外国人労働者をこき使っていた工事現場監督。労基関係の法規はいくつか破ったでしょう。ただ、この人物は病死した外国人労働者の死体を遺棄させようとしただけです。
 日本に低賃金労働者を提供しているアジアの国の格差、元請と下請の関係、この国における外国人の人権問題、様々な社会的背景があったはずなのです。
 彼がそうした人物になったのは、生まれつきでも、100%彼個人の責任でもないはずなのです。それは司法の場においては考慮されること。
 何より、ステレオタイプの悪役、単細胞の読者には殺してもすっきり溜飲が下るようなキャラとして描かれている、間違いなくニンゲンでありながら人間味が感じられないこの現場監督にも、生い立ちがあり、妻や子供、家族がいたでしょう。
 そのことに気づき、自分が人の命を奪ったことに対する罪悪感が日増しに大きくなっていき──まともなニンゲンであればそれは当たり前の心理のはずですが──計画犯罪の遂行に支障を来し、あるいは自ら罪を償おうとする衝動に駆られる。
 そういうパターンの展開を、ほんのちょっぴりは期待≠オていたのです。
 悪い奴に相応しい最期だったなとか、悪人だからって自分で決め付けて殺したり制裁したら、やっぱり自分に跳ね返るもんだよなとか、ありきたりではあるけど、読者が人間性・常識の枠からはみ出ない薬≠ニしての価値を、ほんのわずかであっても示してくれるだろうと。
 最低限、そのくらいの尻拭いはしてくれるのだろうと。漫画表現者として。プロのクリエーターとして。大手出版社として。

 見事に裏切られました。
 最終回、この主人公は正義の行いの末殉死するという展開でした。
 罪を憎むはずの警察官からも、あたかも高潔な人物であるかのように悼まれます
 日本は一応先進国の中で数少ない、死刑容認国です。しかし、人を殺していいことになっているのは国だけです。一応。
 警察のニンゲンが、好感≠抱いてどうすんの??
 身勝手で独善的な正義≠フ感覚に酔い痴れ、よってたかって凶悪残忍な人殺しを行ったリンチ殺人犯が、この作品では正義の殉教者として最後の最後まで美化されたままで終わってしまったのです。
 心の底から驚きました。震えが走りました。
 逆に「感動した」という感想があるともまったく思えないけど。もしそんな読者がいたとしたら、本当に世も末だよ・・・
 SSCSあるいは架空のシーガーディアンとも異なる、正真正銘のテロリスト。日本の法律上のテロの定義は前回の記事で紹介したとおりですが。
 正義≠フためには人殺しさえ自らに許してしまう。狂った犯罪者。まさにカルト集団。
 フィクションの中だけのお話なら、まだ笑って済ませられたかもしれません。
 残念ながら、戦前の日本の軍国主義、現代でもサリン事件を引き起こしたカルトや一部のイスラム過激派が示すとおり、自分たちの定義した正義≠フ名の下にヒトの命を奪ってしまう狂信者たちは現実に存在するわけですが。

 前回の批判でも述べましたが、別にいいんですよ? どれほどくだらない漫画を描き、世に問おうと。
 ただし、くだらない漫画は、どうしようもないガラクタだ、クズ漫画だとさんざんに叩かれ、さっぱり売れずに終わるのが健全な社会というものです。ニッチ市場くらいはつかめるかもしれませんが。
 もし、この漫画が売れているとしたら、それは日本の社会がまさに末期症状を呈していることを意味しているといえるでしょう。
 恐ろしいことです。
 想像力の欠如。
 想像力の欠如した作家と、想像力の欠如した編集者・出版社と、想像力の欠如した読者によるコラボレーション。
 悪人がなぜ悪人になったのか、なぜ罪が引き起こされたのか、その背景に思いをめぐらせる想像力が欠如したまま、悪に死という制裁を加えることを単純に善≠ニし、正義≠ニし、クライマックスではその正義≠フ執行者を殉教させて偶像化してしまう。
 それが、ブラックな不条理ギャグ漫画としてでもなく、社会派漫画として社会に受け入れられてしまう。まさに社会の不条理。

 実に恐ろしい。
 集英社、少年ジャンプは「はだしのゲン」を出せたところなのにね。一年で打ち切りとはいえ。
 ざっとネットを見回しても、まともな批判がろくに見当たらないのが、余計怖いんですよね・・
 筆者としては、若い世代がこの『予告犯』を正しく読んで≠ュれることをひたすら願うばかりです──



◇口直しに「銀の匙」!

http://www.shogakukan.co.jp/pr/ginsaji/

 さすがは本物のエンターテイナー荒川弘氏。
 正真正銘の社会派漫画として、常識に真っ向から挑む作品。
 豚丼のエピソード、殺しの正当化が命の授業≠セと勘違いしてる大人たちと違い、主人公はあくまで答えを出さず悩み続けます。読者に、子供たち自らの意思にその答えを託します。
 これこそが本物の表現者。
 まあ、動物福祉的にはかなーり問題のあるばんえい競馬のヨイショなど、パーフェクトじゃありませんが。
 8巻p82、p83、ストレートですが、活動家や市民団体がどんなに頑張って、口を酸っぱくして説教しようとしたところで、やはりここまでたくさんの人の胸に染みこむメッセージにはなりません。
 この酪農家の借金の構図、背景を簡潔明瞭に説明しましょう。
 日本の一次産業が、農家・漁師を借金漬けで首が回らなくするスタイルを取るようになってしまったのは、命より金を優先せざるを得なくなったのは、JAと全漁連の所為です。
 そして、霞ヶ関と自民党の所為です。
 その背後で蠢いているのは米国。
 日本の一次産業をすっかり駄目にしてしまったのは彼らです。
 ついでに、カニで一攫千金を狙うヒトが増えれば、カニの資源が細るだけ・・

参考リンク:
−捕鯨カルチャーDB(拙HP)
http://www.kkneko.com/culturedb.htm
−コントロール下にあるのは言論とメディア(拙過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/75670669.html
−本日は捕鯨問題からちょっぴり離れてオタクな話題・・・(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/33169420.html
−命の授業関連ツイート
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-130305

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2013年09月21日

NHKと産経の奇妙な「ロシアv.s.GP」報道

 先にHP更新のお知らせから。

■捕鯨カルチャーDB
http://www.kkneko.com/culturedb.htm


 久しぶりにネカフェで追加ネタを仕入れてきました。
 追加は「鯨の王」(+2)、「青の祓魔師」(+1)、「波打際のむろみさん」(−3)、そして以前の記事でファンからクレームコメントが付いた「予告犯」(−3)。
 「青の祓魔師」で筆者の一番お気に入りキャラはもちろんクロちゃんだニャ〜。次点が神木の使役する白狐。
 「予告犯」は単なる反反捕鯨という以上のトンデモナイ問題作(本当なら−300点くらいにしたいところ)。「鯨の王」のダイマッコウ考、「予告犯」詳細な批判については、次回の記事でまとめます。
 あと、なぜかニャガトへのアクセスが急増・・
 ということで、本日はニュースネタの解説をば。


◇NHKと産経佐々木氏のトンチンカンな「ロシアv.s.GP」報道


■ロシアでグリーンピース活動家逮捕、海上石油掘削基地に侵入 (9/19,AFP)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2969167/11368546
■ロシア武装部隊が乗員を船に監禁 グリーンピース発表 (9/20,AFP)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2969444/11377870 
■Russia's Arctic: Mission to protect wildlife (8/26,BBC)
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-23794232
■Russia 'seizes' Greenpeace ship after Arctic rig protest (9/20,BBC)
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-24170129


■北極海でロシアがグリーンピースの船を連行した本当の理由。ロシアのダブルスタンダード外交|GPJ
http://blogos.com/article/70365/
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/dblog/blog/46705/


https://www.facebook.com/SeaShepherdCoveGuardiansOfficialPage/posts/239976266152611

http://textream.yahoo.co.jp/message/1834578/a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa?comment=65017


■ロシア グリーンピースの船を拿捕 (9/21,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130921/k10014714631000.html
■クジラ保護で地震探査延期 サハリン2の事業主体 ('09/4/28,共同)
http://www.47news.jp/CN/200904/CN2009042801000820.html
■ロシア:サハリン−2問題をどう見るか?|JOGMEC
http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=0612_out_j_ru_sakhalin2.pdf&id=7
■サハリンII問題リンク集
http://homepage2.nifty.com/birding/hogo/sakhalin.html

ロシア政府とグリーンピースは、かつて、日本の大手商社など外国資本がサハリン沖で進めていた石油ガス開発プロジェクト「サハリン2」については、足並みをそろえて環境問題を追及しましたが、北極圏開発では、ロシア政府がグリーンピースの抗議行動を押さえつけようとする姿勢がうかがえます。(引用〜NHK)

・日本側報道においては、環境問題を口実にしたロシア政府による管理強化・資源統制、更にはガスプロムのサハリン−2参加問題での揺さぶり、PS契約破棄の画策といった憶測がなされた。しかし、ガスプロムの参加とPS契約下でのコスト・オーバーランの処理問題に関しては2005年の7月から議論されていることであり、2006年夏に発生した環境問題と結びつけるのは無理がある。
・環境問題に関しては、既に10月20日、サハリン・エナジー側が改善を約する書簡を天然資源省に提出して問題は解決に向かいつつあり、事業の停止や大幅な遅延は避けられる見込みである。
・ロシアの政策において環境保護は高い優先度を持っており、東シベリア・パイプラインの例に見るように、環境問題を理由に大きな計画変更がなされることがある。これは、寒冷地が環境破壊に非常に脆弱であるという、現実的な問題から来ている。
何故、2006年の8月に大きな問題となったかといえば、この時の査察でパイプライン建設現場での著しい環境破壊が明らかになったという事実に尽きる。
今回のサハリン−2に関する問題は、石油・ガスパイプラインの建設現場における著しい環境破壊と、同プロジェクトで持ち上がったコスト・オーバーランのPS契約下での負担の不平等、そしてガスプロムの参加問題の3要素が意図的に結びつけられて報道されている。
しかし、中核的な問題はあくまで環境問題である。他の2つの要素に、環境問題が影響を与えることはあっても、それは結果であって、一部の報道にあるような「目的」ではない。
(引用〜JOGMEC)

■露沿岸警備隊、グリーンピース活動家2人を拘束 (9/20,産経)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130920/erp13092021210007-n1.htm
■グリーンピース、テロ行為で立件か?ロシア石油掘削基地抗議で|Cool Cool Japan !!!
http://sasakima.iza.ne.jp/blog/entry/3189367/

沿岸警備隊は数回、威嚇砲撃したが、船は停止しなかった。(引用〜産経)
アークティック号は、かつてグリーンピースが南極海の調査捕鯨船団への妨害活動を行っていたときに、南極海に派遣された船です。
アークティック号は、日本の捕鯨船と衝突し、国際的な問題になったことがあります。
グリーンピースはこうして、ターゲットに近づき、メッセージの横断幕を持って、活動家が抗議しているという写真を収める活動を行います
グリーンピースのクミ・ナイドゥ事務局長は「平和的な反乱だ」として、露当局の対応を批判しています。
一方、ロシア連邦保安庁(FSB)の担当者は、露メディアに「活動家はテロ行為の罪で立件される可能性がある」と述べました。
ロシアでは反体制派やNGOへの取り締まりが集中的に行われており、今回のグリーンピース活動家の捜査にも、こうした社会の雰囲気が反映されているような印象を持ちます。
(引用〜佐々木記者個人ブログ)

 プーチン大統領の息のかかった巨大な半国営企業ガスプロムの石油掘削事業により、北極海の自然に影響を与えるとしておなじみの国際環境保護団体が抗議活動を実施、武装したロシア警備隊に拘束された事件。詳細はGPの発信、AFPの報道をご参照。
 BBC記事(リンク3番目)で、予備探査が行われた場所のすぐ近くにあるセイウチホッキョクグマの繁殖コロニーでの調査に同行取材した模様が伝えられています。これは調査捕鯨と対照的な非致死のいわゆるバイオプシー。WWFの研究者は、気候変動の影響とともに、同海域の石油・天然ガス資源探査・掘削事業は二つの種の存続にとって大きな脅威になると指摘しています。記事中では3つ目のダメージとなり得る北極航路の問題にも触れています。
 GPも福島の原発事故やフロリダ沖のBPの油田事故を例に挙げていますが、北極・南極・深海は自然の聖域としてヒトが手を出すことを厳に戒めるべき。生態系自体が脆弱なうえに不明な部分が多く、回復がそれだけ困難になるからです。何より、予防≠ナきず悲劇が起きた厳然たる事実≠ェあるわけですし。
 未だに覇権主義が色濃いことを伺わせるロシアの強権的な姿勢には困ったもの。銃を突きつけるマフィアじみた拿捕の様子が全世界に流されれば、海外の市民から大きな反発の声があがるのは必至ですが、国内のメディアはコントロールできてるから大丈夫、というつもりなのでしょうか? この辺は日本の捕鯨関連の政府対応と報道によく似てますけど・・・

 その日本、海外では大きなニュースになっていますが、対照的に国内での報道は少なく、内容も変。NHKと産経だから仕方ないけど。。。
 捕鯨翼賛報道に最も執心しているマスコミ2社だけしか注目しないとなると、日本国内では公平な情報が伝わることはおよそ期待できません。他社は何やってんでしょうね?
 背景の問題をとりあえず無視すれば、外国人活動家・外国船籍船による禁止海域、建造物への不法侵入ということで、香港活動家の尖閣諸島上陸と拘束・強制送還(不起訴のままでしたが)に通じる部分もありますし、何しろ北方領土係争の相手であるロシアの話なのですから、日本国民の関心事とはいえるはずです。たとえ北極の自然保護への関心が低かろうと。
 とりあえずNHK・産経両報道のおかしな部分をツッコんでおきましょう。

 NHKは最後の一段まで淡々と事実を伝えるのみでしたが、突然突拍子もない論説をぶちはじめます。それが上掲の引用。
 まず日本語が変ですね。「足並みをそろえて環境問題を追及した」??? 冗談言っちゃいけません。
 サハリン2に関しては、鯨研の販売員殿のツイートもあったりして、筆者もブログやツイッターで幾度か取り上げているところ。
 もともとはロシア政府自体が極東開発の一環として外国資本を呼び込もうと国際入札を行いプロジェクトがスタートしたのです。資本率は下がっても、その後も共同出資プロジェクトのまま。待ったをかけたのは管轄する天然資源省内の一部局。グリーンピースは問題を指摘した多数のNGOの一つというだけ。
 JOGMECの資料に詳しい解説がありますが、権益の配分をめぐってシェルとガスプロムとの間で綱引きがあったものの、アセスの不備やパイプライン事故等に基づく監督局の工事中断指示とは無関係。穿った見方の出所は実はロシア国内で、日経をはじめとする日本のマスコミがそれを借用し、国内で陰謀論が流行した次第。
環境問題の観点からの批判はGPに限らず、WWF、IUCNをはじめとする多くのNGOからあがっていました。日本野鳥の会など、国内のNGOからもです。ニシコククジラばかりでなく、日本に渡ってくるオオワシなど稀少な野鳥への影響も懸念されていたからです。
 大体追及≠チてのは、汚職とか不祥事に対して使う用語だよね。復興予算の流用とか、調査捕鯨のくせに儲かる漁業名目で補助金を赤字穴埋に使っちゃったりするのを追及≠キるってのはわかるけどさ・・・
 この文章ではまるで、ロシア政府とグリーンピースが結託して日本企業を罠にはめ、後で仲たがいしたみたいじゃないですか・・・
 ただ、この記事を書かせたNHKの相応の立場のニンゲンは、明らかに本気で陰謀説≠信じているかに見えますね・・・
 もちろん、サハリンやバイカル周辺のパイプライン問題のときと違い、ガスプロムによる北極圏開発だけは環境への配慮を求める声を無視するロシア政府の姿勢は糾弾に値します。
 きわめて残念なのは、NHKの報道がロシア・プーチンの身贔屓に対する単なる当てつけ≠ノしかなっていないことです。
 北極圏もサハリン同様脆弱で、開発に際して慎重な配慮が必要なのであり、だからこそ<鴻Vア政府のダブスタはいただけない──そうした問題提起には程遠い解説です。
 これでは、「サハリンでもビョウドウに♀ツ境への配慮なんかしないで開発させなかったのはサベツ≠セ!」という怨恨の声にしか聞こえません。
 要するに、NHKというマスコミは、環境問題に関心を持つ市民と認識を共有する気も、環境問題への理解を視聴者に広める啓蒙の役割を担う気も端からないということ。

 一方の産経、記事を書いたのはご存知佐々木氏。ロシア支局担当、環境テロ≠ェご専門のようなので、今回の記事を書いてもらうにはうってつけ(?)だったんでしょうが、記事は200字もない短信のうえ、佐々木記者の主観では引用した一文が一連の事件で最も注目すべき点だったようで・・
 で、自ブログではタイトルに「テロ」の一語をわざわざ入れています。
 自著があるからでしょうが、つくづくテロという用語が好きですね、佐々木記者は。
 テロの定義は国によってさまざま。先日の秘密保全法案では以下のとおり。元は自衛隊法81条の2第1項。


政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊する行為を行う活動(引用)


−(別紙)特定秘密の保護に関する法律案の概要
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000103648


 もちろん、ロシアの定義は日本のそれと異なり、それ故に「テロ行為の可能性で立件される可能性がある」(引用)と露メディア(佐々木氏ではなく・・)に述べたのでしょうね。
 日本で法律上定義されるところのテロ行為は、特定の動機による殺人・傷害・器物損壊罪に相当するもので、今回のGPのアクションのような建造物侵入ではテロとして位置づけられないということになるでしょう。たぶん。
 海外のメディアがまったく注目しない斬り口を見つけ出す佐々木記者の感性は、実にたいしたものだといつもながら感心します。もっとも、佐々木氏は、「日本とロシアでテロの定義が違う」ということを訴えるために、このセンセーショナルな見出しを付けたわけではなさそうですね・・。
 あと、GPのアークティック・サンライズ号の略称をアークティック号にするのは変ですね。縮めるならAS号とでもすればいいのに。
 そのAS号について、佐々木氏が一行だけ触れている、調査捕鯨母船日新丸との衝突事故については、国際条約上日新丸側・すなわち日本側に非がある可能性が濃厚です。
 
鯨研のサイトでは、なぜかGP船との衝突問題についてのページが英語のみ。COLREG条約の文字は一字もなし。公海上の船舶の衝突事故については、刑事手続の権限があるのは船籍国となっていますが、海難審判を開くには当事者双方の同意が必要。一応当てられた側の鯨研は訴えられるはずなんですけどねえ、自分たちが正しければ。もちろん、GP側は必ず応じたはずですよ。
 ま、そういうわけで誤魔化されてしまったわけです。詳細は以下もご参照。

−グリーンピース 捕鯨反対は「日本人差別」が根底 |そうなのかな
http://huhcanitbetrue.blogspot.jp/2008/01/blog-post_9710.html
−アークティック・サンライズ号衝突の経緯(拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/34240502.html


 その下の表現は、まるでGPの活動が横断幕と写真にあると言いたげ。キャンペーンの9割は下地となる地道な調査活動です。どこのNGOであれ。まあ、SSCSなど逆予定調和系の団体では数字の比率が違ってくるでしょうけど。それよりむしろ、研究機関のはずの鯨研のほうが、写真や動画を用いた副産物ないしプロレス興行のPR活動をメインにしているように見えるんですけどね・・・
 続いて「反乱」なる事務局長の言葉、これも露メディアからの引用でしょうか? 本人が直接インタビューしたのでしょうか? 記者のくせに本っ当にいい加減な書き方だね・・・
 AFPでは、GP側の声明として、「『平和的な抗議』に対する不相応な実力行使」(引用)と紹介しています。
 「反乱」なんて物騒な台詞を本当にGP事務局長が口にしたんですか、佐々木殿? 原語ではなんと? 発言はどこで? いつ? 誰に対して? どういう質問に対する答えだったのですか?
 どこの独裁国カマリアだよ・・
 見出しに使った「立件の可能性」も、相変わらず他メディアからの引き写し。
 ところで、GPコピーライトの写真をバシバシ使ってますが、これってGPがプレスに対して提供したものじゃないの? 産経新聞なら一応OKするんだろうけど、そちらもよく見たら写真はロイターの配信だよね?
 佐々木殿、コピーライトの表記はあるけど、勤務先の新聞ではなく個人ブログで使用する旨、ちゃんとGPに伝えて了承をもらったの??
 GPのスタッフは確かにお人好しすぎるけど、これが鯨研だったら、ぜっっったい貸してないよ。。。
 最後の段落には、佐々木氏の個人的な印象≠ェ述べられています。GP側に同情的にも見えますが、産経記事では一言も触れてないよね・・
 いずれにしろ、背景についての分析にしては短すぎ。本当にジャーナリストとは思えない記事です。
 ロシア支局の新聞記者なら、「反体制派やNGOへの取り締まり」の具体的な事例、「社会の雰囲気」を具体的に伝える市民の声や感想などをきちんと取材し、まともな記事の形にすればよかったんじゃないですか?


参考リンク:
−米国海洋法条約未加盟を知らない佐々木正明
http://textream.yahoo.co.jp/message/1834578/a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa?comment=62399
−海賊取締法関連拙ツイート
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-130412
−御用新聞のトホホ記者・佐々木氏の珍解説(拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/70152801.html
−元産経木村正人氏もやっぱりトホホ反反捕鯨記者(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/73531621.html

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2013年09月17日

秘密保全法パブコメ文案

筆者は以下で送付しました。
市民活動への弊害には特に触れてませんが、参考にしてみてください・・

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「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見書

 
2013年(平成25年)9月17日
 
  内閣官房内閣情報調査室御中
 
 
特定秘密の保護に関する法律案について、以下の理由に基づき、法律の制定を見送るよう求めます。
 
1.「拡張解釈の禁止に関する規定」に具体性がなく、違反した場合の罰則等にも触れられていません。一方、別表に記された事項には「その他の」「等」「関する」といった拡大解釈の余地がいくらでもある表現が散見されます。また、行政機関の長に特定秘密を指定する権限が委ねられ、拡張解釈に該当するか否か第三者によって監査する仕組みが設けられていません。よって、この法案では国民の基本的人権を保障し得ないと考えます。
 
2.「外国の利益」と国民の利益が常に一致するとは限らず、国民が不利益を被る可能性のある場合、国民の知る権利が大きく損なわれる恐れがあります。「外国の利益」に関わる情報が、特定秘密として恣意的かつ容易に国民の目から秘匿されるようになれば、仮に国民の利益より「外国の利益」を優先する候補者・政党が選挙に出ても、国民は正確な情報に基づく審判を下すことができず、間接民主制が機能しなくなり、国民の主権が奪われる恐れがあります。
 

以上

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参考リンク:
−【拡散】日弁連 秘密保全法パブコメ文例公表
http://nohimityu.exblog.jp/20725356/
−やりたい放題〜動物と自然の味方は要注意!(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/75815825.html
−動愛法関連改正パブコメ(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/70657008.html

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2013年09月16日

豪米戦略のターゲットは中国or捕鯨ニッポン?

◇やりたい放題〜動物と自然の味方は要注意!

■「機密」拡大解釈の恐れ 秘密保護法案 見えぬ意義 (8/29,東京)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013082902000143.html

問題は「特定秘密」の範囲。政府は「防衛」「外交」「安全脅威活動の防止」「テロ活動防止」の四分野と説明する。「安全保障に支障の恐れ」という定義はあいまいで、拡大解釈される余地が十分にある。しかも、この「特定秘密」を決めるのは大臣などの各省庁や行政機関の長だ。
この法案が成立すれば、政府は重要な情報を、これを盾に隠すことができる。
例えば、収束のめどが立たない東京電力福島第一原発など原発に関する情報について、政府が「公表するとテロに遭う危険がある」との理由で国民に伏せる事態も想定される。
実際、原発事故の直後には、政府は「直ちに健康に影響はない」などと繰り返し、国民が知りたい情報を積極的に公表せず、信用を失った。外交でも、沖縄返還の際に財政負担を米国に約束した沖縄密約問題の情報は明らかにしなかった。同法案はそうした傾向をさらに強めかねない。
(引用)

 きましたね・・。これが安倍政権の目玉。画餅のアベノミクスに目がくらんだ国民の選択の結果。
 東京五輪候補決定で呑気な人々が浮かれ騒いでいる間に、ひたひたと押し寄せるファシズムの軍靴の音。
 アンダーコントロール=B汚染水ではなく、公務員、国民の。
 良心に基づき、国民が知るべき情報を発信しようとする人たち、報道の自由・知る権利を求める人たちに対するコントロール=B
 調査捕鯨に関しては、これまでも「テロ」という馬鹿げた口実を掲げて情報提供を阻んできた水産庁。三陸沿岸調査の採集地点すら明らかにしなかったほど。
 テロの定義をいくらでも恣意的に設定できる以上、財務関連等これまでオープンにされてきた情報さえ今後は伏せられる恐れが出てきそうです。権限があるのは下関がお膝下の族議員・林農相ですしね・・。
 「沖縄」のジュゴン。「五輪」の葛西。すべて安全保障、テロを口実に情報を非公開にされる可能性あり。
 現代における国家とは、国民にかしずき、税金という対価と引き換えに公的サービスを提供する機関たるべきです。
 国民の上に君臨する権威であってはなりません。

   <<<環境保護・動物愛護活動に携わる皆さんへ>>>

例えば、内外で問題に取り組むNGOや個人によって、法に触れたり物損を生じるような「過激と映る」活動が一度でもなされた場合、対象の分野すべてがテロを口実とした情報秘匿の対象となり得てしまいます。
捕鯨・イルカ猟問題は、すでにその先例≠示しています。
法案が通れば、NGO・市民活動全般が情報を入手できなくなったり、あえて入手・公開することで厳しい刑事処罰を下されかねません。
ことは原発、TPP、基地問題に限りません。
犬猫の味方、野鳥の味方、森の味方、クジラ・イルカの味方の皆さんは、他人事と思わずぜひ注目してください。


【拡散】日弁連 秘密保全法パブコメ文例公表
http://nohimityu.exblog.jp/20725356/



◇台風縦断

 竜巻の被害を受けた地域はダブルパンチ。各地の河川増水は護岸やダムがどう影響しているのでしょう?
 災害対策、「国(民)を守る」とはどういうことなのか、真剣に見つめ直す必要があるのでは。
 予算付けの優先順位、いろいろ間違っていませんか?
 農作物も、米や秋の味覚もろもろが大きな被害を受けそうです。農家にはJA共済と国・自治体からの補償もあるでしょう。
 水産業も漁船や養殖筏、内水面漁業の簗などの各種漁具が被害に。それも全漁連と水産庁はきっちりバックアップしてくれるんですよね?
 トータルの被害金額で比べれば、アザラシやシカ、イノシシなど野生動物の被害など、気象・気候災害の足元にも及ばないわけです。
 自分たちの力の及ばないお天道が相手のときには、懲罰・制裁を加えることも、抜本的解決策を講じることもせず、空を見上げて祈るばかりで後でお上の補償にすがるのであれば、弱い動物たちが相手のときだけ「殺してしまえ」と拳を突き上げるのはやめにしませんか?


http://twilog.org/Happy11311

週末、週明けの台風で一気に海に流れてしまうでし。
来週、濃度が下がってたら海に流れたってことだね。
(引用)


■ロシア、福島第一原発との関連で、極東の海水魚への監視強化 (9/16,The Voice of Russia)
http://japanese.ruvr.ru/2013_09_16/121401777/


 学校の運動会のテントくらいちゃちく見える県の放射性廃棄物中間貯蔵施設も気になりますが、今度の18号は福島第一を直撃。
 溜まった雨水を放出するという報道がありましたが、検査は2箇所きり。ドサクサに紛れて薄めようとか思ったりしてないでしょうね・・。それもコントロール≠ネのかもしれないけど。
 安倍首相の嘘なんて世界は誰も信じちゃいません。口先の言葉で誤魔化せるのは、目先の自分たちのことしか考えてないIOCのスポーツ貴族くらいのもの。「風評被害」などと言い募るほど、ますます信用を貶めるばかりです。
 この国には「後は野となれ山となれ」なんて無責任な慣用句がありますけど、放射性物質は消えてくれるわけではありません。セシウム137とストロンチウム90は約30年、プルトニウム239は2万4千年経っても半分になるだけです。
 駄々漏れ状態でも、後で発覚しても、その場で測って薄ければいい。
 東京さえ、日本さえ、自国の200海里水域さえ安全≠ネら「どうでもいい」。薄めて外へ流してしまえばいい。

 それが安倍氏の言うコントロール≠フ意味だと、内外の市民にはすべてバレています。
 時間軸に関しても、東京五輪までの7年間、あるいは安倍氏の任期中、表立って異変が表れなければ、誤魔化せる範囲であればいい、なんて思っていやしませんか?
 近海の、沿岸の汚染が徐々に減っているように見えたとしても、それは外洋や深海にその分の汚染が拡がっていることを意味するだけです。
 カシパンやクモヒトデやゴカイ、深海ザメたちが、そのうち愚かなニンゲンに報復するようなことにならなければいいんですけどね・・・



◇豪米戦略、ターゲットは本当に中国? それとも捕鯨ニッポン?


■(攻防太平洋 動く南の大国)豪、米戦略の最前線 中国みすえ最大演習 (9/15,朝日)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309150445.html
■日豪の安全保障パートナーシップ:その意義と今後の課題|日本国際問題研究所('07/07)
http://www2.jiia.or.jp/RESR/column_page.php?id=134
■検証・日豪安保協力宣言 (1) ('08/7,『世界』)
https://www.iwanami.co.jp/sekai/2008/03/077.html
http://kkneko.sblo.jp/article/34000727.html

今年の演習で目玉となった「ウォーゲーム(作戦演習)」には、不思議なシナリオがあった。
「独裁国カマリアが豪北部にモンニール、東部にレガイスという傀儡政権を設立。人権侵害で多数の難民が出た。国連安保理は・・・」
(以下略、引用)
今年4月、豪フリゲート艦シドニーが米海軍の第7艦隊に初参加した。(中略)「米国が初めて豪州を北東アジア戦略に組み込んだ、大変な出来事だ。仮に米中が戦争状態になれば、集団的自衛権が発動され、また前線へ送られる可能性がある」と話す。(引用)


 タウンゼンドはオーストラリア(AUS)東海岸、サンゴ海に面したグレートバリアリーフの中ほどにある島ですね。標高はないようですが、島固有の植生や、周りのリーフにもたくさんの生き物たちが住んでいたでしょうに。
 こんなところでオスプレイを飛ばしたら、ザトウやドワーフミンクだってえらい迷惑でしょう。
 周辺にはいくつも国立公園がありますが、軍の聖域≠フ所為で台無しです。海兵隊の駐留するダーウィンも、観光で有名なはずなのにね。
 これ、政権を設立され、(殺害ではなく?)人権侵害が起き、国連決議が通る状況に至るまで何も阻止できなかったという想定≠ナいいの?
 仮想敵国「独裁国カマリア」の侵略なんてアホみたいな想定で自然を破壊するのは、日本とは比べ物にならないほど自然を大切にする海洋保護文化の国・AUSに相応しくありません。
 悪いオトモダチ関係。US親分、一番の子分AUS、そして煽てると調子に乗るので扱いやすい使いっぱしりの三下子分・日本。 
 米国の軍需産業の持続的繁栄のために、大西洋から、思いやり予算をふんだんに提供し、ブチブチ文句言いつつも商品を押し付けられる相手である日本のいる太平洋へとシフト。そのために必要なのが仮想敵国£国。日中が対立している限り、商売繁盛なわけですから。
 カマリアだのモンニールだのレガイスだの、あまりに荒唐無稽な設定は、まさにそれこそが真実であることを示しているわけです。
 そういえば、AUSは変な農場主が勝手に独立宣言をして頭を悩ませていたんじゃなかったっけ? しかも、シドニー近郊なんでしょ?
 あんたたち、そっちを相手に外交交渉術を磨くか、さもなきゃ家に帰ってシミュレーションゲームでもやってなさいよ・・。


 朝日の記事は変ですね。カマリア=中国だって言ってるホワイト教授は、前のハワード保守政権時代の国防次官。
 下の引用も、正確には「第7艦隊との合同訓練に参加するため派遣された」でしょう。「海上自衛隊が第7艦隊に参加」なんて言わ(え)ないですもんね・・。
 もっとも、ホワイト氏の場合、上掲のとおり、自国が巻き込まれる危険性について警鐘を鳴らしていると受け取れます。朝日は一面で「中国みすえ」に絡めてますが・・。引用部分は2面の下のほう。
 米豪ないし米豪日3国の軍事演習は以前から行われていました。太平洋の東経160°以西は全部第7艦隊の縄張り。
 このホワイト氏の台詞、以下のようにも受け取れますね。
「仮に日中が戦争状態になれば、(集団的自衛権が発動され、米中が戦争状態になる。)以下同文」
 2番目のリンクは外務省所管のシンクタンクによるハワード政権時代の記事ですが、安保をにらんだ防衛調達協定は日豪間で交わされているわけです。
 で、今年の3月には安倍の安保ブレインの1人が産経の取材(…)に「日本が米国だけでなく韓国とオーストラリアが攻撃を受けても集団的自衛権行使の次元で自国が反撃できる」とか述べたりもしたわけです。間の米中のワンクッションも要らないんだと。
 憲法の拡大解釈が進められつつある日本では、それも当然の話だと言っているヒトたちがいるわけです。
 憲法の縛りがなく、イラク等の実績もあるAUSであれば、日中でことが起これば必然的に巻き込まれてしまうということ。
 
 おそらく、ホワイト氏もそういうニュアンスを込めていたはず。問題は朝日のツッコミ不足ですが。
 ギラード前政権の敷いた中国との関係改善及び軍縮への取り組みが頓挫し、返り咲いた保守政権により再び軍拡が進められれば、そのリスクは無視できないものとなりかねません。
 AUSが直接、いきなり中国に侵攻されるシチュエーションがあり得るなどとは、どれほど疑心暗鬼な妄想家だろうと考えますまい。
 あえてケンカをしたがっている国がいるから、せざるを得なくなった面があるんじゃないですか?

 もうひとつの理由。それは「孤立を深める日本を米豪が共同して監視し、正しく方向付ける」意図。
 右傾化が一気に進む状況に対し、米国は手綱を引き締める必要を切実に感じていることでしょう。その際、米国のバックアップができるのはもちろんAUS。
 そうしてみると、「独裁国カマリア」は、半世紀少し前に実際にそうした行為に着手しようとした専制国家、いまなお南半球の自然にまで傲岸に自国の価値観と文化を押し付けようとする超拡張主義国家を想定していると考えたほうが、よりしっくりきませんか? 中国よりも。
 いざ暴発≠オた際、いつでも抑えられるようにとの訓練。
 詳細は『世界』の論説と拙過去記事をご参照。

 日本の捕鯨推進・反反捕鯨思想の裏には、アングロサクソンとの非妥協性と異文化に対する優越感、戦争に負けた過去に対するルサンチマンが、明瞭に浮き出ています。
 米豪が日本を本当には信用できないとしても、無理からぬことでしょう。
 相互不信による腹の探り合い。相手を利用し、出し抜こうとする騙し合い。
 それで世界に平和が築けますか?
 国境も文化の違いも超えた価値・自然と命をすべてに優先し、武力に一切頼らず、平和を構築する不断の努力を続けるべきなのではありませんか?
 日本も、中国も、米国も、豪州も、お互い謙虚に譲り合い、歩み寄ることによってしか、真の平和は達成できないのではありませんか?

posted by カメクジラネコ at 19:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2013年09月14日

コントロール下にあるのは言論とメディア

◇コントロール下にあるのは言論とメディア──報道の使命と表現の自由が危機に立たされる日本

■高放射線量地域で生物に異変、奇形疑われるツバメも (9/11,TBS)
http://news.tbs.co.jp/20130911/newseye/tbs_newseye2012585.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter
※閲覧注意 ■【チェルノブイリ原発事故】奇形動物・奇形児の写真・動画|NAVERまとめ
http://matome.naver.jp/odai/2136757661925759101

■東京五輪選手に腕3本 仏紙、汚染水で風刺画 (9/12,東京)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2013091202000126.html
■腕が3本ある力士の風刺画 仏紙、五輪と原発事故やゆ (9/12,朝日)
http://www.asahi.com/international/update/0912/TKY201309120040.html
東京五輪選手に腕3本描く 仏紙が汚染水風刺画 (9/11,産経)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130911/erp13091121520005-n1.htm
■汚染水風刺画の仏紙「謝罪しない」 日本大使館は抗議 (9/12,産経)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130912/erp13091221460005-n1.htm
■カナール・アンシェネ|ウィキペディアJP
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%8D

5,6,7ページは、社会問題(環境問題など)、背景、一般的なユーモアや風刺、漫画「カビュの肉」と、文学・演劇・映画などの批評が掲載されている。
政治的に左派の傾向があるが、現在の新聞社のオーナーは、いかなる政治・経済のグループとの結びつきはない。また、いかなる提携からも強く独立を守っていることで、犯罪の告発といった記事や、偏りのない政党批判を展開している。
注目すべきは、フランスの政治と財界のスキャンダルに焦点を当てている点である。
(引用〜Wiki)

https://twitter.com/daphnezeyo/status/377353477006950400/photo/1
ドイツからの風刺、「私たちの東京五輪は1000年は延期しないとダメです。」と書いてある。(引用)

■『はだしのゲン』は「つくる会」と3K新聞の共通の敵らしいが(Sep 12, 2013)|flagburner's blog(仮)
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/06f37e6643ac0bbc1598e53dad11a019

■ウルトラセブン幻の12話とは
http://wotawota.nomaki.jp/wotaku/Eps_12th.htm
■ウルトラセブン第12話についての基礎知識
http://homepage1.nifty.com/H-YAMATO/spel.html

 最近の日本のマスコミは、本来の役割である権力の監視どころか、自警団的ネトウヨと一緒になって、内外で国家の権威を貶める輩がいないかどうか目を光らせることに忙しいようですね・・
 チェルノブイリやセラフィールドでも様々な野生動物、家畜に奇形が見つかっており、水頭症などヒトの奇形が効率で発生していることも報告されています。6本とか8本足の獣の写真も出回っていますよね。奇形は放射線によらずとも一定の確率で発生しますが、放射性物質や有機塩素化合物など変異原性のある汚染物質により発生率が格段に上がるわけです。
 被災地を傷つける? そりゃいわゆる繊細チンピラってやつなんじゃないの、菅殿?
 「アンダーコントロール」「港湾内でブロック」という一国の首相の卑劣きわまる嘘の方が、よっぽど被災地の人々を苦しめているのと違いますか?
 韓国その他アジア各国の、家族が戦争の犠牲になったり、屈辱の日々を送らされた人々の気持ちを、日本の右翼政治家たちがどれほど心無い言葉で傷つけてきたか、自分たちはそういう想像力を働かせないで、相手にだけ要求するの?


 ゴジラは知ってますよね? 野球選手じゃなくて本家の、かつては邦画の稼ぎ頭の一つだった特撮映画。核実験の放射能が原因で生まれた怪物です。キャラ誕生のきっかけは第五福竜丸の被爆。
 社会風刺と受け取る能力のないヒトには、立派な風評被害にあたるんでしょうけど。 
 「ウルトラセブン幻の12話」ってご存知ですか?
 実は筆者、学生時代に自主上映会を観に行ったことがあります。こちらは自主規制されてしまったほう。番組とは別に売られたカードで「ひばくかいじゅう」という解説が付けられたこと、ケロイドを思わせるデザインがもとで抗議を受けたのが理由とされていますが。
 そして不朽の名作「はだしのゲン」。
 一部の過剰なデフォルメは、むしろニンゲンの感性、人間性にとっては真実そのものです。無機的な数字以上の。
 海外でも絶賛された、世界に発信できる最高のメッセージというべき作品を、子供たちの目からひたすら隠そうとする人々が、なぜ当の被爆国の足元に巣食っているのか、まったく理解に苦しみます。

 例の三本足のやつは、確かにつまらないです。
 もう1枚、絵を紹介しているのは三紙のうち産経のみですが、「五輪のプールはもうフクシマに」の方はまだ少しウィットが感じられます。だって、安倍首相いわくそこで全部ブロックしているという、原発前の汚水溜め(プール)もあるし、4号機も使用済燃料のプールで問題が起こったんだものね・・。
 もう少しね、安倍や招致委員長の具体的な発言にフォーカスした風刺漫画が欲しかったところ。座布団はあげられないかな。
 あと、日本と同じ原発推進国であるフランスのメディアとしては、自国の原子力政策の批判がなかったとしたら、確かに片手落ちといえるでしょうね。媚びないことが売りで環境問題も得意分野のカナール・アンシェネなら大丈夫でしょうけど・・。
 ドイツの方なんか、絵としてもうまいし、日本の市民の声をきちっと代弁してくれてるじゃないですか。これなら座布団あげていいでしょ。
 朝日や産経、東京はなぜこちらの方を取り上げなかったんでしょうね?
 というか、一連の汚染水問題発覚の最中の五輪招致運動、どうしようもない安倍の嘘八百に対して、スパイスの利いた風刺漫画を日本のメディアが掲載できない状況こそ、背筋が寒くなります。本当にまるで戦前にタイムスリップしてしまったようで。

 風刺は尖ってナンボ。反発を覚悟で徹底的に叩いてこそ風刺漫画。
 気に入らないヒトは、「つまらん」「センスがない」とこき下ろせばいいのです。好きなだけ。
 もっとくだらない軍国礼賛サブカル作品だって最近はボチボチ増えてるしね・・・
 表現の自由は最優先で保障されるべき自由の一つ。ごく一部の例外を除き、決して規制されるべきものではありません。
 例外にあたるのは実名誹謗中傷。公人と一般市民とで差はありますし、線引きに際してはグレーゾーンもあります。柳美里氏の「石に泳ぐ魚」については、最高裁の司法判断の方に危うさを感じました。「沖縄ノート」訴訟では作者の側に軍配が上がりましたけど。いずれにせよ、本人の発言・筆記や写真等の裏付けのある事実に基づかない限り、名指しの誹謗中傷による名誉毀損は明白な一線を越える犯罪。そして、それらは現状でも刑事・民事の形で厳然と裁かれているわけです。
 それ以外の表現は、どれほどくだらないもんだろうと、右も左もエロもグロも、表現自体は認められていいのです。レベルの低い表現に対しては、社会、鑑賞者による自浄作用≠ェ働くのだから。まあ、社会の側の批評眼も低下してますけど、せっせと批判作業をこなすしかありません・・
 もちろん、反反捕鯨漫画だってOKです。ニタリクジラの種名も知らず、好適な家庭環境を求めて日本を脱出しオーストラリアに移住した雁屋氏がくだらないグルメ漫画でアングロサクソンを攻撃したって、別にかまわないのですよ。たかが漫画です。
 まだありますね。集英社のジャンプ改で連載された「予告犯」は、素朴な反反捕鯨プロパガンダを盛り込んだどうしようもないガラクタ作品でした。SSCSのポール・ワトソンの例のトンチンカンな詩を批判しているのですが、集英社と作者の筒井氏は海の向こうのガイジンは攻撃できても、「天罰発言」の石原を叩く度胸は欠片もありませんでした。日本人でありながら驚くほど無神経な発言をした老害政治家に対しては、媚びへつらうことしかできない意気地なしというわけです。それ以前に、好感を抱く余地のまったくない殺人テロリストが主人公で、そもそも捜査や犯行の手口などのディティールでも、警視庁やサイバー対策室が恐ろしく無能だといっているに等しい、警察物というジャンルの作品としてもあまりにお粗末な代物でしたが。社会派作品にまったく値しません。まさにクズ漫画です。
 それでも、筆者は「どうしようもないクズ漫画だ」とこき下ろしてはしても、「出版するな」「掲載するな」といった規制を要求する気は毛頭ありません。その手のガラクタが好きなヒトは読めばいい。
 まあもっとも、SSCSのパロディであることは明白なシー・ガーディアンの代表の名に、SSCSの船名であるボブ・バーカーを一字もじっただけで使ってしまったあたり、集英社がいくら「実在の団体とは関係ありません」と予防線を張ったところで、SSCSが名誉毀損で訴えたら司法の判断は微妙だったでしょうね。連中が訴え(られ)ないと承知の上で、こういうえげつない命名をしたわけです。石原発言不問と合わせ、この辺りが作者の人間性を表しているといえるでしょう。
 表現≠ヘ、ニンゲンが唯一イルカ・クジラを含む他の動物種より優れているといえる特性の一つ(絵を描くゾウやオランウータンもいるけど、そこは目をつぶりましょう・・)。想像力を失ったニンゲンは、力のみで他の生き物を制圧する暴君でしかありません。
 国家権力は個人の表現の自由を侵してはなりません。線引きのあやふやな規制の口実は断固として許してはなりません。

 児ポ法改正も、自分は無関係のつもりでいましたけど、前にアップした漫画の主人(狐)公の着物の裾丈が短いのを突っ込まれるかもしれないと、最近思い直し始めたところ。。短くなったのは、別にエロを狙ったんじゃなくて、単にデッサン力がない所為なんですけどね。いや、本当ですよ。。。

 拙小説に登場するネオシャチ特攻隊のメンバーや〈毛なしのアザラシ〉の主人公たちも、ゴジラやウルトラセブンに登場する異星人に負けず、〈死の精霊〉を浴びて変身しています。沖縄近海での米軍の核事故、日本海でのロシアの核投棄、そして福島の原発事故が拙作の風刺対象。脳がベーコン化した反反捕鯨論者や、同じく脳が筋肉でできている精神マッチョ、「放射脳」という無意味なレッテルが好きなホルミシス教信者の皆さんは、描写に不満があれば批判大歓迎ですよ。


参考リンク:
−クジラが問う311
http://www.kkneko.com/
−ヒトとライオンとイルカの心・その2
http://kkneko.sblo.jp/article/20494608.html



◇コントロール?


 台風18号が接近中。予報針路を見ると、福島を直撃しそうですね・・
 汚染水が漏れた原因、まだ特定されていないんですよね? 拙速に突貫で立てた貯蔵タンク、大丈夫なんですか?
 「コントロール」できるんですか? 台風を。地下水の流れを。生物圏の物質循環を。
 タンクからの漏出と汚染された地下水の港湾外≠ヨの海への流出は、後から気づいたことです。制御下にある意図的な放出ではありません。海水中の濃度は計算に基づき人為的に調整された値ではありません。子供でもわかることですが。
 安倍氏と彼を擁護する東電・経産省の言葉遊びにはうんざりです。
 究極のオプティミスト。根拠のない自信の固まり。
 自然も、科学技術も、ヒトも、ヒトの心も、命も、すべて「コントロール」可能だと思い込んでいる人たち。
 環境破壊と戦争はまさに、そうした人間の思い上がり驕りが招いたのだと、世界中の多くの人たちが気づいたはずなのに。
 21世紀には前世紀までと同じ過ちは繰り返すまいと。そのために、真剣な反省のもとに、謙虚に自然から学び、自然を損なわない文明のあり方を再構築しようと。次の世代のために、と。
 核の力をコントロールできるとの傲慢が悲惨な原発事故をもたらし、南極の自然・野生動物をコントロールできるという驕慢が乱獲の悲劇を招いたのです。

 自然から、歴史から学ぶ謙虚さをかなぐり捨て、巧みとすら言えない演出とコトバで、虚構のユートピア目指して突き進もうとしている暴走ニッポン。
 過ちを正視できないヒトは、必ず同じ過ちを繰り返します。もっとひどい過ちを。
 このままでは、更なる災厄によってたくさんの命が犠牲となりかねません。
 自然も民衆も命もコントロールしてしまえる、してしまえ──そういう人物には、国の舵取りを絶対に委ねてはなりません。
 同じことは、私たち一人ひとりの市民、NGOについてもいえます。
 自然、野生動物、犬猫、命、ヒトの心は、コントロールできる、していいものではありません。
 人類には、ヒトという未熟な動物には、そんな能力などないのです。この先も、そんな力など決して手に入りはしません。
 厳しく自己を戒めましょう。

posted by カメクジラネコ at 16:08| Comment(1) | TrackBack(0) | 社会科学系