2015年04月03日

乱獲も密漁もなかった!? 捕鯨ニッポンのぶっとんだ歴史修正主義

 先日NOAA(米国海洋大気庁)からとある発表がありました。
 私が見つけたときはNOAAのアカウントがツイってから5日経ってましたが、まだ数件しかRTなし。けど、クジラ/捕鯨問題ウォッチャーにとっては重要な内容。
 旧ソ連の衝撃的な違法捕鯨による申告漏れ分を可能な範囲で補正した、20世紀の全期間にわたるクジラの捕獲統計です。

-New Report Estimates Extent of 20th Century Industrial Whaling 
http://www.st.nmfs.noaa.gov/feature-news/3-million-whales 

-First Estimate of Number of Whales Killed During Industrial Whaling 1900-1999 
http://www.afsc.noaa.gov/news/soviet_whaling.htm 

-Emptying the Oceans: A Summary of Industrial Whaling Catches in the 20th Century
http://spo.nmfs.noaa.gov/mfr764/mfr7643.pdf

 殺しも殺したり、その数たるや2,894,094頭
 悲壮なタイトルが示すとおりの、人類の業と罪。

 そのうち、北大西洋が276,442頭、北太平洋が563,696頭、合わせて北半球分が840,138頭
 そして、南半球分が2,053,956頭。北半球の約2.5倍。もっとも、主犯は北半球の国々ですが……。

 NOAAのレポートには国別捕獲統計がなく、正確に同期の取れた数字ではありませんが、前世紀に最も多くクジラを殺した国はノルウェーで約23%、次いで日本が約20%、ロシア(旧ソ連)が発覚した違法捕獲分でイギリスを抜いて3位の約18%、イギリスが約15%
 上位4カ国で、実に全体の3/4以上を占めています。
 日本は百年かけた捕鯨オリンピックで見事銀メダルに輝いたわけです。21世紀に入っても、日本とノルウェーの2ヵ国が引き続き金をめぐって争っているという状況……。

 この1世紀で一番多く殺された鯨種はナガスクジラ(874,068頭)。2番目に殺されたのがマッコウクジラ(761,523頭)。
 この2種だけで、全体の半数以上(56.5%)を占めています。
 以下、3位シロナガスクジラ(379,185頭)、4位イワシクジラ(291,540頭)、5位ミンククジラ(283,905頭)と続きます。
 ※注 ミンクはクロミンクとの合計。イワシクジラには同定される以前のニタリクジラの捕獲が含まれているとみられます。

 ではここで、同レポートの日本に関する言及部分をいくつか抜き出してみましょう。
 まずは、旧ソ連より先に暴露された日本の沿岸捕鯨スキャンダルについて。(背景色引用)

The Japanese were catching many undersized whales in their coastal fishery and falsifying their reports in order to conform to IWC regulations (Kasuya, 1999; Kasuya and Brownell, 1999, 2001; Kondo and Kasuya, 2002).
日本は沿岸捕鯨で(捕獲が禁止されている)体長制限以下の小さなクジラを捕獲していたうえに、IWCに対して虚偽の申告を行ってきた。
(中略)
Finally, it is important to note that some catch totals for the North Pacific are likely to be incorrect to an unknown degree.
The IWC database still contains data from the Japanese coastal fishery that are known to be falsified, notably for sperm whales (Kasuya, 1999); furthermore, analyses of sperm whale length data have raised suspicions about the reliability of the pelagic Japanese catch statistics for this species (Cooke et al., 1983).

 日本の不正な捕鯨と虚偽申告の所為で、このレポートの数字には不確実な部分が残っています。たぶん、金メダルを取れるほどではないでしょうけど……。
 続く記述では、南氷洋捕鯨時代のパナマ船籍の捕鯨船オリンピック・チャレンジャー号のずさんな操業についても触れています。ペナルティに鯨油差し押さえを食らい、売りに出された同号を買い取ったのが、日本の極洋。
 その後、他の大手捕鯨会社もこぞって外国捕鯨母船の枠付購入に走り出します。
 それは、南氷洋の荒廃を決定づけた日本の役割を象徴する出来事でした。(後述)

When this vote was taken in 1982, there were 10 countries still in the business of whaling. Iceland, Norway, Spain, Portugal, and Korea were whaling in the north, while Brazil, Peru, Chile, and the USSR were operating in
the south. Only Japan still had operations in both hemispheres.
(1982年以降)南北両半球で捕鯨を行っている国は日本のみである。

 これこそ、捕鯨国の中で日本がとくに£@かれる理由のひとつ。
 「なぜ日本は南半球でまで捕鯨を続けるのか?」という世界の問いに、日本は誠実に答えた試しがありません。

The following year whaling operations attributed to the Philippines were initiated.
Research into this endeavor has indicated that Japanese nationals owned and operated all facets of this business, which was terminated in 1986.

 商業捕鯨禁止が決まった翌年、マルコス政権下にあったフィリピンが突然商業捕鯨参入を言い出して世界をびっくりさせます。
 案の定、裏で糸を引いていたのは日本の水産貿易会社でした。
 この一件で、「日本は常に規制の裏を掻く国だ」と世界に強く印象付けることになったわけです。

Japan initially objected to the moratorium but withdrew this objection under U.S. threat of fi sheries sanctions
and thereafter exploited Article VIII of the Convention, which permits member states to issue permits
to kill whales for scientifi c research (so-called “scientific whaling,” see Clapham, 2014).

 日本の調査捕鯨は、世界にはもはや、「いわゆるカガク捕鯨」という皮肉な但し書きなしには見られないわけです。
 大方の日本国民も、そういう見方しかしてないでしょうけど……。

Once the moratorium took effect with the 1985–86 Antarctic whaling season, all nations, other than Norway,
Japan, and the USSR ceased industrial commercial whaling.
Japan, Norway, and the USSR all lodged objections to the ban (under the Convention, an objection lodged within 90 days means that the objecting nation is not bound by any decision of the IWC, and this includes the moratorium).

 いわば悪の御三家的な位置づけですね。この後ソ連が抜けて、代わりにアイスランドが加わるという形ですが。
 あるいは、核(潜在的開発能力)保有国に相当する位置づけといえばいいでしょうか。
 もっとも、商業的にペイする公海/南極海母船式捕鯨に関する限り、その能力を有する国は日本も含めてもはやゼロ。
 それは、名乗りを上げる企業が存在しないことと合わせ、足かけ30年にわたる調査捕鯨という名の社会的実験=i自然科学ではなく)によって日本が自ら証明したこと。
 21世紀に成立し得る捕鯨のスタイルは、聖なる食文化≠ニいう大仰な建前のもと、莫大な税金を投入することによって可能になる官製捕鯨のみ。

After 1966, another 87 blue whales were killed by ships registered in Denmark, South Africa, Australia, Chile, Japan, and Spain (Allison, 2012).
Two of the ships registered in Spain, the Sierra and the Tonna, were actually pirate whaling ships that were not registered with an IWC nation but whose operations were linked to Japan (Clapham and Baker, 2008).

 かの悪名高き海賊捕鯨船、シエラ号トンナ号
 1世紀分の捕鯨について記された報告書にわざわざその名が刻まれるほど、重みのある2隻の船の名。
 その裏で蠢いていたのも、やはり捕鯨ニッポンだったのです。
 えっ!? あのシエラ号の名を知らない??
 世界では捕鯨産業の暗黒史として必ず登場するキーワードなのに。
 「聞いたことはあるけど、海賊シーシェパード(SSCS)に船沈められた被害者だろ」とおっしゃる?
 おやおや・・・なぁんにもご存じないんですねぇ・・・・。
 産経のパクリ記者・・もとい、SSCSバッシング本でウハウハ・・じゃなかった、SSCS評論家であらせられる佐々木正明記者に聞いてみてごらんなさい。
 え? 彼は「クジラはごちそうかカリスマか問題」にしか興味がなさそう? そんな、マツコのローカルネタじゃないんだから(汗)
 まあ、しょせん食い物にしてるだけの評論家だからしょうがないか。。。

 SSCSを過激派たらしめたものこそ、日本の大手捕鯨会社と鯨肉市場をバックに悪行の限りを尽くし、国際規制を有名無実たらしめた海賊捕鯨にほかなりません。
 まあ、SSCSなんて、元代表が海賊ぶってるだけのマニアみたいなもんで、妨害の非人道性でもいま辺野古で海保がやってることに比べりゃかわいいもんですけどね・・・

−最も成功した歴史修正主義|3500-13-12-2-1
−やる夫で学ぶ近代捕鯨史−番外編−その3:戦後繰り返された悪質な規制違反

 フィリピン捕鯨参入の件も合わせ、海賊捕鯨とぐるみ違反に関するさらに詳しい情報は『ザ・クジラ』(原剛著、文眞堂)をご参照。

 捕鯨オリンピックによって大型種から順に壊滅させていった南氷洋捕鯨の歴史については「やる夫で学ぶ近代捕鯨史−番外編−」で勉強してもらうことにして、ここで国毎の捕獲統計に基づくグラフをもとに、日本が乱獲に果たした責任の重さについて、改めて検証してみることにしましょう。

catchfin.png

 捕獲量ランキング1位と4位のナガスクジラ、イワシクジラについては、『南氷洋捕鯨史』(中公新書)の著者で捕鯨賛成派の板橋守邦氏も、資源収奪の責任が日本にあると指摘しています。
 ナガスクジラの捕獲量をみると、日本はノルウェー、イギリスに続いて銅メダルの3位、全体のおよそ2割というところ。数字だけでいえば、ノルウェーの方がトータルで倍近く捕っていることになります。
 しかし、年間捕獲量の記録で言えば、チャンピオンはやはり日本でした(13,060頭、1962)。2位のノルウェーも僅差とはいえ(12,974頭、1954)。
 さらに、資源状態の悪化の様相が濃くなる後期になればなるほど、トータルの捕獲量に占める日本の割合がどんどん高くなっていきます。
 日本の捕獲量は、1950年代に入った頃は1割だったものが、最盛期の1960年代半ばには5割超にまでに膨れ上がります。
 グラフを見れば一目瞭然。そして、これはほぼすべての対象種についていえることでした。

catchsei.png

 こちらがイワシクジラの捕獲数に占める日本の割合。
 規制がやや厳しくなってから主要なターゲットになった鯨種ですが、このイワシクジラの捕獲比率に関しては、日本がダントツの1位で5割に達します。
 ニタリクジラも同じく日本の比率が圧倒的に高く、5割弱。ミンクとマッコウは、旧ソ連と日本で1位、2位を分け合う格好。
 まさしく、乱獲の総仕上げ、息も絶え絶えの状態にあるクジラたちにトドメを刺す役割を果たしたのが、後発国の日本と旧ソ連だったのです。
 もっとも、大洋漁業ソ連事業部≠ニ揶揄された同国の鯨肉も日本市場向け。
 マグロやウナギと同じく、世界中の乱獲を支えてきたのが日本人の胃袋だったわけです。

 では、日本が主役の座を奪う前に、すでに追い詰められていたシロナガスとザトウについてはどうでしょうか。

catchblue.png

 日本の貢献≠ヘおよそ1割。シロナガスに関する限り、絶滅寸前に追いやった主要な責任がノルウェーと英国にあるのは否定できません。
 しかし……グラフを見て、皆さんはあることに気付きませんか?
 日本の捕獲の比率は、戦前の一時期に急激に膨れ上がります。ちょうど太平洋戦争が始まる1941年、日本は3280頭のシロナガスを殺してノルウェーから首位の座を奪い、束の間の栄光に輝きます。
 そう……第二次大戦と戦後の中断さえなければ、この順位も入れ替わっていたかもしれません。
 シロナガスクジラは、その大きさ故にナガスクジラより先に狙われたため、日本が参入した時点で先攻組に壊滅的なダメージを被っていたわけです。
 もし、南氷洋進出の西洋捕鯨国とのギャップがもっと短ければ、あるいは戦争のタイミングがずれていたら、ナガスと同じく最終的に引導を渡す役割を果たした捕鯨国が日本だったことは、想像に難くありません。
 付け加えれば、捕獲禁止後にシエラ号が密漁したシロナガスやナガスの鯨肉の行き先も、日本にほかなりませんでした。

 これらのグラフから示される日本の捕鯨のもうひとつの際立った特徴、それは多くの鯨種でトータルや他の捕鯨国に比べて捕獲数のピークが後ろにずれていること。特に顕著なのがナガスクジラですが。
 日本がもし、持続的水産業の模範国であったなら、対象資源の危機を素早く察知し、警報が鳴る前に自ら捕獲数を絞ることができていたはず。
 実際に日本がやったことといえば、国際機関の規制にとことん抵抗することばかりでした。
 まさに持続的利用の落第生であったことを、近代捕鯨史は如実に示しているのです。
 残念ながら、その悪しき伝統は、今日の日本の水産業に広く受け継がれてしまったのが実情です。マグロ、ウナギからホッケに至るまで。漁業問題ウォッチャーが正しく認識しているように。

 このように、密漁に関しても、乱獲に関しても、捕鯨ニッポンの責任はきわめて重大なのです。

    ◇ ◇ ◇

「油目当てにクジラを乱獲したのは西洋人だ! 日本の捕鯨は伝統で乱獲なんてするはずがない! もちろん、密漁なんてするわけない!」
 ネット上ではしばらく前から、そうした100%事実に反する誤った歴史認識が横行しています。
 ごく一握りの狂信的な反反捕鯨論者が叫んでいるだけだったら、まだ無視してもいいでしょう。
 しかし、国を代表する立場にある安倍首相の発言を聞くと、不安を覚えざるをえません。少なくとも、「海洋哺乳類を冷酷に乱獲していた」のは厳然たる事実なのですが……

安倍首相は9日、海洋哺乳類を冷酷に乱獲しているとの海外の認識とは違い、捕鯨を行っている地域は漁の期間が終わる時には必ず鎮魂の儀式を行い捕獲の対象を敬っていると説明した。「このような日本の文化が理解されないことは残念だ」(ガーディアン)

−商業捕鯨再開を安倍首相が示唆 “日本文化”を理由に、国際判決に背くのか?海外メディア反発 (NewSphere,'14/6/10)

 自民党をはじめとする各党の捕鯨族議員らが、ICJ判決直後に鯨肉パーティーを盛大に開いて気勢を上げたときも、彼らがあまりにも素朴な捕鯨ニッポン性善説に毒されているようにしか見えませんでしたし。
 捏造された歴史に酔いしれる日本人が急増しているとしたら、それはとても由々しき事態です。

 いま、ヒトラーを髣髴とさせるウルトラナショナリズム首相の威勢のよい啖呵に呼応するかの如く、アジア諸国への侵略行為を中心に、この国の負の歴史を書き換えようとする動きが、これまでになく活発になっています。
 南京大虐殺、従軍慰安婦、沖縄集団自決、etc.etc...
 そんな日本の歴史修正主義に対しては、隣国の韓国・中国のみならず、欧州や同盟国である米国でも、眉をひそめる見方が少なくありません。
 負の歴史から目を逸らし、過去の過ちを正当化しようとすれば、日本は国際的信用を失うだけです。
 反省なしの未来志向などありえません。
「うるせえな、昔のことでグチグチ言うんじゃねえよ。そんなことより前行こうぜ、前」
 国のトップがそんな態度を示せば、むしろ、国際社会から強い疑念を呼び招いて当然でしょう。再び過ちを繰り返さない保証はどこにもないのですから。

 繰り返しになりますが、乱獲においても、密漁においても、日本が世界で最も悪質な捕鯨国のひとつだったことは否定の余地がありません。
 国際司法裁判所(ICJ)にはっきりと違法認定を受けたにも関わらず、水産庁長官の国会発言(「刺身にすると美味いミンク鯨肉の安定供給のため」)もスルーして、反省と検証ひとつなく、再度看板をすげ替えただけの密漁捕鯨を繰り返そうとしているのだから、過去形とすら呼べません。現在進行形

 以前は国際会議の場において、河野談話・村山談話に相当する「乱獲への真摯な反省」を代表団も口にしていたものです。
 そのころはまだ、「調査捕鯨はかつて乱獲を招いた商業捕鯨とはまったく違うんだ」と世界を納得させるために、世界に対して二度と過去の過ちを繰り返さないと表明することが最低限必要不可欠だと、担当者も理解していたということかもしれません。
 残念ながら、最近ではそうした表向きの反省の言葉さえ、滅多に聞かれなくなりましたけど……。
 ある意味で、日本の商業捕鯨と調査捕鯨は、旧日本軍と自衛隊の関係の相似形ともいえました。
 二度とあのような戦禍を引き起こさないという約束が、自衛隊の存在を内外に認めさせるうえで、絶対に必要なものだということは、日本国民であれば誰しもうなずくはずです。
 調査捕鯨の方は、ICJ判決が示すとおり、化けの皮が剥がれてみれば、ほぼ商業捕鯨と変わらなかったわけですが。
 その調査捕鯨同様、自衛隊が再び侵略戦争への道を開く実質的な軍隊とイコールでないことを、一国民としては祈るばかりです。
 つい先日、安倍首相が「わが軍」と口走っちゃったばかりですけど……。
 本川長官が国会で「ミンクは刺身にすると美味い!」と言っちゃったように………。
 
 確かに、西洋の捕鯨国も過ちを犯しました。
 乱獲の悲劇を起こした責任を、彼らは負わなければなりません。
 二つの大戦・ファシズムによって、あまりにも多くの人命を犠牲にした責任から、彼らが決して逃れられないように。
 しかし、それは日本の捕鯨が招いた乱獲や悪質な密漁に対する免罪符には、一切なりえません。
 日本が、自らのファシズム・アジアの国々に対する侵略戦争の加害責任を否定することが、断じて許されないように。
 「いや、その2つはまったく違う。西洋の捕鯨は悪≠セが、日本の捕鯨は善≠ネんだ」という主張は、八紘一宇ではないけれど「西洋の戦争・全体主義は悪≠セが、日本がやったのは正義≠フ戦争であり、侵略もファシズムもなかったんだ」という主張とそっくりそのまま重なります。
  
 私たち日本人は、日本人であるが故に、戦争責任の否定とまったく同じ流れで流布される根拠のない日本の捕鯨性善説≠全力で打ち消さなければなりません。それは世界の恥です。
 自らの犯した罪と真正面から向き合うことをしない限り、本当の未来は決して手に届かないのですから。
posted by カメクジラネコ at 01:43| Comment(5) | TrackBack(0) | 社会科学系

2015年03月07日

To sympathizers for Japan

Let's travel to Japan after it withdraw whaling on the high seas! 
Let's enjoy "Washoku" after Japan cease to impose its values on Southern Ocean! 
Let's buy Japanese brands after Japan plead guilty to the charge of illegal whaling concluded by the ICJ and apologize to the world!

ツイッターでも「『ねえ、俺のいいとこどこ?』って女子に聞いてる奴みたいでキモイ」と卓見を述べていた方がいらっしゃいましたが、ともかく世界から褒めそやしてもらわないと気がすまなくなってしまった今の日本。
ゴールデンタイムのTV番組は、各局こぞって「日本バンザイ!」「日本イチバン!」の大合唱。まるで、手近にいる大人たちのもとに次々と駆け寄っては、不安げにその顔を見上げる幼児。もし、「よくできたわね〜」「えらいわね〜」と頭をなでてくれなければ、「自分がこの世から消されちゃう!」と信じているかのよう・・・
そもそももてなし≠チて相手の立場を汲み取り、気を配ることのハズなのに、これもやっぱり『ねえねえ、俺のオモテナシ気持ちよかっただろ!? 気持ちよかったよな!?』と、自分はテクニシャンだと勝手に思い込みつつ確認せずにはいられないイタイ奴そのもの。カノジョとしては、内心では思いっきり冷めていても、曖昧に返事するほかないでしょうけどね。。目をギラギラさせて、オモテナシのスバラシサに対するコメントを求めるレポーターに辟易する外国人たちには、心から同情するばかりです・・
大多数の国民は、「穴があったら入りたいほど恥ずかしい」のが本音ではないでしょうか?
クールジャパン症候群の病因は至ってシンプル。
マスコミはスポンサーの大企業のため。大企業は投資家のため。そして、投資家は金儲けのため。
国の資産、通貨の価値がいくら下がっても、富がどんどん流出していこうが、投資家たちに向けて当座の利益をもたらすことをPRできさえすればかまわない。
それがアベノミクスの病理
今日も一時1ドル122円台にまで値下がりましたが、円〜日本ブランドの割安感が長続きするわけもなく、消費増税と合わせて国民の大多数を痛めつけながら、日本売り≠ェ進行していくことになるでしょうね。
海外投資家たちにすれば、円は常に基軸通貨ドルの都合のいい一時退避先でしかなく、日本の持続的成長を本気であてにしているはずもなし。
5年後に予定される国を挙げてのお祭り騒ぎが、本当に滞りなく無事に済むとも思えないのですが、一過性のイベント頼みで、その後深刻な飢餓感に陥るであろうことは、誰でも容易に想像がつくはずです。
国の基盤である財政・社会保障のシステムは、将来世代のための痛みを伴う改革を敢行するどころか、格差の恩恵を享受してきた世代の刹那の享楽のために阻まれ、虫の息。どれほどの楽観主義者が見ても、もはや破綻は不可避。
進む侵蝕。
そして、ますます大きくなる軍靴の響き。
破滅──日本終了≠フ予感。
終わらせないための唯一の方法は、背伸びをせず、正直に、真実に向き合うことだけ。
現実から目を背け、空疎な夢を追いかけるのをやめること。
コマーシャリズムに誘導され、他者から奪い取るジユウ≠、本物の自由だと勘違いするのをやめること。
311で、それに気付けてよかったはずなのに。
逆バネが働き、目の前の崖も目に入らず、虚構のミライ<w突き進む道を選んでしまった哀しい国。
いま、日本ブランドに「Amasing!」と喝采を送っている若い外国人たちは、そんなうわべばかり飾り立てた、実在しない幻の異国のイメージに憧れ、惹きつけられているにすぎません。
「Under Control」真っ赤な嘘が象徴する、虚飾の日本。

日本ファンの皆さん。
今、あなた方が賞賛を浴びせることは、私たち日本人、この国にとって、まったくためになりません。
本当に日本が好きなら、闇に蝕まれ、息も絶え絶えにあえいでいる、この国の真の姿を、目を逸らさずに正視してください。
在日外国人や先住民アイヌの人たちに向けられるヘイトスピーチ。
沖縄。
豊カサ≠フ代償として消えていく本物の伝統文化と自然。
追い詰められる野生動物と、虐げられる動物たち。
あなた方が本物の日本ファンなら、きっと思うはずです。
「ここを直したら、もっと日本を好きになれるのに……」と。
遠慮する必要など一切ありません。
バッシングすると逆ギレしないかって?
心配無用。むしろ、一大イベントを控えてマイナスイメージに神経を尖らせ、「また世界にパッシングされやしないか」と不安に怯え、評価に飢えているいまこそ、襟を正すよう促す絶好のチャンスです。捕鯨問題に限らず。
はっきりと、大声で、メッセージを伝えましょう。
(でないと、聞こえないフリをする人たちもたくさんいますから・・)
posted by カメクジラネコ at 19:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2014年11月08日

倭人にねじ伏せられたアイヌの豊かなクジラ文化

 今回はアイヌの捕鯨について徹底的に検証してみたいと思います。といっても、現在もなお続いている太地や南極海での捕鯨と異なる視点で。主なソースは以下。
@アイヌ民族クジラ利用文化の足跡をたどる(岩崎,'02)|北海学園大学人文論集21
http://hokuga.hgu.jp/dspace/handle/123456789/1351
Aアイヌの捕鯨文化(児島,'10)|神奈川大学
http://icfcs.kanagawa-u.ac.jp/publication/ovubsq00000012h5-att/report_02_008.pdf
Bアイヌの鯨類認識と捕獲鯨種(宇仁,'12)|北海道民族学#8
http://www.h6.dion.ne.jp/~unisan/files/ainu_whaling.pdf

 北海学園大学の文化人類学者・岩崎・グッドマン・まさみ氏は、以前当ブログで取り上げたNHKのトンデモ番組に登場した秋道氏との共著や、鯨研通信への寄稿もあったり、沿岸捕鯨の文化の側面を強調する仕事をなさってきた、立ち位置としては捕鯨推進側の方。一方、児島恭子氏は札幌学院大学のアイヌ研究者の方。宇仁氏は東京農大の博物館学芸員の方。
 今回の視点で検証する分には、岩崎氏のも含め、ニュートラルな資料と受け止めることができるでしょう。(以下、引用は@ABとします。強調は筆者)
 これらの文献からは、アイヌやニヴフの人々を含むオホーツク圏の先住民が、海獣と非常に豊かな関わりを持っていたことがわかります。
 トリカブトの毒を用いた噴火湾での捕鯨は有名ですが、離頭銛のほか弓矢も使われたようですし、地域によって利用の形態にも幅がありました。

 しかし、上掲の文献にも示されているとおり、アイヌの捕鯨に関する史料は曖昧で断片的なものしかありません。
 伝統文化が口承で受け継がれたこともありますが、もうひとつ、大きな理由があります。
 それは言うまでもなく倭人(和人)の影響
 江戸時代の松前藩による搾取と抑圧、明治に入ってからの同化圧力(まさに文化と価値観の押し付け!)。そして倭人の近代捕鯨会社による資源の収奪。
 倭人に妨げられることなく残ってさえいたら、今私たちがそれを目にすることが出来たはずですからね。
 アラスカのイヌイットや、ロシアのチュコト族、デンマークの自治領グリーンランドの先住民の生存捕鯨が、国際社会に受け入れられているように。(ちなみに、グリーンランド捕鯨に関してIWCで揉めてるのは、流通形態が他の地域とさして変わらなくなった一方でザトウの捕獲枠増を求めていることが理由)
 倭人に虐げられ、衰退させられたが故に、伝統産業そのものに加え、それを受け継ぐために必要な言葉までも奪われたが故に、現在(いま)の所作として語り継ぐのではなく、過去形の形で一部の年配者の記憶の片隅に留められるにすぎなくなってしまったのです。

 具体的にどのようにしてアイヌの捕鯨が倭人の手で潰されていったか、それは上掲の資料からもつぶさに読み取れます。

クジラが松前藩の重要な産物として流通するようになると、寄りクジラの権利を規制する掟が布達され、アイヌの人々は寄りクジラを発見した場合に待ち奉行所に報告する義務が課せられるようになったと記されている。つまりこれまでのようにアイヌの人々がクジラを利用することは処罰の対象となり、アイヌ民族のクジラ利用は幕府に管理されるようになっていくのである。(〜@P119)

さらにこの地域の場所請負制度はアイヌの労働力搾取に大きく偏り、その結果アイヌの人々は生業を失い、漁労や狩猟の自主性を失っていくこととなった。(〜@P120)

クジラは解体後にその3分の1は上納され、発見者であるアイヌには3分の1が渡されると記録されている。(〜@P120)
↑つまり3分の2は倭人に取られるってこと・・。これは安政4年(1857年)の紋別の2頭の寄りクジラの例。

アイヌ捕鯨の終わりを決定的にしたのは明治4年(1871年)の毒を用いた狩猟の禁止である。この禁止令によりクマ猟やシカ猟と同様に、アイヌの人々が巨大なクジラを得るために、最も効果的な方法であったトリカブト毒を失った。(〜@P120)
↑実は、明治初期にガンガン乱獲してあっという間にエゾシカを絶滅寸前に追いやったのも入植した倭人。そのために敷かれた保護措置でアイヌが割を食ったわけです。ただ、おそらく被支配民に抵抗のための厄介なツールを与えないという裏の動機もあったでしょうね・・

この当時すでにアイヌは寄りクジラを利用する権利を失っており、クジラが浜に上がると、その地域の漁業権を持っている漁業者が優先的にクジラを得る権利を主張し、伝統的なアイヌの権利は認められなかった。(〜@P125)

 このとおり、アイヌの人々のかけがえのない伝統文化を強圧的に、強引に変質させたのは、倭人に他なりません。
 そのこと自体は、白人とイヌイット、アボリジニ、マオリ、ハワイ先住民など多くの少数民族との関係についてもいえることでしょう。
 ただし、先進各国の中でも、少数民族を抑圧した加害の歴史を正しく教えることをせず、権利回復の動きが遅れているのが、世界に捕鯨文化を声高に叫び、人種差別の被害者だとことあるごとに訴える捕鯨ニッポンだといわざるを得ません。
 何しろ、「アイヌなんていない」妄想に憑かれたトンデモなヒトが札幌で市議を務めてしまえるという、惨憺たる有様ですからね・・。

 反反捕鯨論者が口を開く度に唱える「日本の捕鯨9千年!」(中国4千年じゃないけど・・)の代名詞。
 しかし、縄文時代の海獣類の利用とつながり得るのはアイヌの捕鯨(例の秋道氏も述べているとおり)。倭人の捕鯨ではありません。
 化石での大量出土といっても、例えば能登の真脇遺跡から出土した小型鯨類の骨は、集落が存続した4千年の期間で3百体弱程度。縄文時代のそれが、偶発的・散発的な寄りクジラの利用であったことは疑いの余地がありません。石器等での捕獲があったとしても、岸に近づいたものを仕留める、文字どおり寄りクジラ+αの利用。
 寄りクジラで利用できるのは集落で年数頭、10頭も上がれば“大漁”。
 つまり、その形態は後世のアイヌの捕鯨にこそ連なるものであれ、技術革新を重ね、組織的に鯨組単位で年間数十ないし数百頭も捕獲し、莫大な収益を上げて藩の財政にも大きく貢献した、銅鉱に匹敵する一大産業と呼ばれるほどきわめて商業的色彩の濃かった倭人の捕鯨とは、超えがたい断絶があるのです。
 ついでにいえば、古式捕鯨に用いられた技術は中国をルーツにするという説もあり。
 積極的か消極的かという点は主観的、相対的な指標にすぎませんが、アイヌの捕鯨は古今東西の人類によるクジラの利用の中でも、きわめて抑制の効いた、最もクジラに対して優しい(というよりフェアな)捕鯨だったということができるでしょう。
 何より大きな違いは、文化としての継承性、連続性です。
 そして捕鯨の性格。つまり、文化の本質そのもの。

この頃(昭和の終りから平成)のアイヌの人々の記憶には、積極的に海に出て行く捕鯨の話は出てこない。しかし寄りクジラを利用した数々の体験が記録されている。(〜@P113)

(「雄武町の歴史」の)著者はアイヌの先人たちの捕鯨と寄りクジラに関して、非常な危険を伴う捕鯨は地形的に恵まれた地域でのみ行われたと考えるのが自然であろうと述べている。(〜@P114)

寄り鯨は以前に比べて少なくなったことが書かれているが、減産は困るからといって積極的に捕鯨をしたという記録は今のところ見つからない。(〜AP116)
↑そう・・アイヌはまさに太地とは正反対だったわけです。自然に対する向き合い方が。

 児島氏は以下のように指摘しています。

人間の行為としては与えられた鯨の利用と捕りに行くことは別のことである。(〜AP117)

 ここで、倭人とアイヌの捕鯨に関する、非常に象徴的な、そしてあまりにも対照的な記述を紹介しましょう。

(安房で捕鯨を始めた「関東における捕鯨の祖」醍醐家7代目定継が北海道で捕鯨業開始を試みた記録)
蝦夷人の突棒捕鯨の幼稚さに比べて、ずっと進歩した洋式捕鯨の実施を見る日があれば、この地においてのこの事業は驚くほどの成果をえるものと、定継は自ら心を励ました。(〜@P121)

北海道の海にはクジラが多いがアイヌはカムイと呼んでそれを捕獲しないが、シャチなどに追われたクジラが浜にあがると、それを食料としたり、油をとった(『蝦夷土産』安政4年)(〜@P121)

クジラをまず捕るという気で捕るということはあまりない。(白老、アイヌ古老)
沖ではレプンカムイは獲物を横取りされたと思っているのか知れないけどキーキーと泣いて海上をポンポン跳ねていた(寄りクジラの状況 白老、アイヌ古老)(〜@P124)

(クジラ送りの様子)
祈りの言葉はレプンカムイに対して大しては大きなフンベをくれた事の感謝の後、このように祝って送るのでまた来てくれることを願う祈りをする。ハシナウカムイにはフンベの魂が無事に帰ることができるように祈る。(〜@P133)

 フロンティアのつもりでやってきて、目がこぉんな具合(¥v¥)になった倭人と、何世代もそこで暮らしてきたアイヌの人々のクジラ観の差が、如実に表れているといえるでしょう。西洋の捕鯨の収奪的性格を、文明の進歩≠ニいう感覚でうらやむ目でしか見ていなかったことも。
 《カムイ》でもある動物と目線が等しいアイヌに対し、当時から動物を《カネになる資源》としか考えていなかった倭人の、なんという途方もない差。
 アイヌの人々にとって、森の生態系の頂点シマフクロウとヒグマ、そして海の生態系の頂点シャチは、特別なカムイとして一目置かれていますが、表現が微笑ましいですよね・・。クジラ送りではシャチとクジラだけでなくキツネの神(ハシナウカムイ)にも祈りを捧げます。「海の幸は他の動物たちと分け合うものだ」という感覚があればこそでしょう。@P138の「寄りクジラの踊り」には、スカベンジャーとして自然界に欠かせない役割を果たしているカラスも登場します。

 ちなみに、ノコルフンベはアイヌ語でミンククジラを指す呼称。実は和名のコイワシクジラは近代に入って命名されたもので、古式捕鯨時代の倭人はこの種を認識できていませんでした。クジラに限らず花鳥風月の感覚で自然・野生動物を大雑把にしか把握せず、クジラの尾鰭の縦横も判然としないヘタレ絵を描いてたくらいですから・・
 また、アイヌ語にはミンクを指すと見られる呼称が複数あり模様(B)。捕獲時の体長や体色等の違いを反映したのでしょうが、年齢や体色の個体差だけでなく、JとOの区別もついてたかも? あるいはひょっとしたら、明治期に激増した倭人のノルウェー式捕鯨船の乱獲の所為で現在は絶滅してしまった亜種・個体群があったのかもしれませんね・・
 AP119では、「シマフクロウが人間のためにシャチに寄りクジラを頼む神謡」が紹介されています。

シャチが鯨を送り届けてこそ人間が得られるのであって、人間が直接鯨を獲るのが常態であればこれらの口承の物語の内容は成り立たない。(〜AP119)
つまり、鯨を人間に恵むのはシャチであり、シャチへの崇拝が捕鯨文化に作用しているのである。(〜AP120)

 古老の口で語られた「キーキー泣くレプンカムイ」の表現には、彼らの価値観が明瞭に表されています。
 クジラは「まず第一にシャチの獲物」であり、ニンゲンはその「お裾分け」をいただいているにすぎない──
 獲物が減ってもなお自分の獲り分を強引に確保しようとすれば、気高きレプンカムイが飢えることになります。アイヌの人々は、それを自らに許すことなど認めなかったに違いありません。
 それこそは、野生動物と対等に向き合ってきた先住民の知恵にして哲学、自らの存立を支えてきた基盤となる自然の真の持続的利用=サステイナブル・ユースの手本といえるのではないでしょうか。

 補足すると、直接的な規制による抑圧のみならず、横取りする形で奪ったのも倭人といえます。
 鯨種のうちでも北海道方面のアイヌの利用が多かったのはミンククジラとみられます。江戸時代以前には、種名がないことからもわかるように、本州以南の倭人の捕鯨の対象ではありませんでした。古式捕鯨の主要な対象鯨種であるセミやザトウに比べ、泳速が速く、餌場が近かった北海道ほど岸に寄らず、噴気も見分けがつきにくかったのが理由でしょう。ゼロではなかったでしょうが・・
 ただし、ノルウェー式捕鯨が導入されてからは、ミンク船と呼ばれる小型捕鯨船によって日本海を中心に大量に捕獲されるようになりました。
 西洋から押し寄せていた帆船捕鯨は、主要なターゲットがマッコウで、セミもボチボチ獲りましたが、鯨油も乏しくすばしこいミンクは当然対象外。競合の形でアイヌの捕鯨を衰退させたのも、やはり倭人の捕鯨だったことは間違いありません。

 ひとつはっきり言えることがあります。アイヌの捕鯨は、たかだか2、3百年ぽっちの間にめまぐるしく様態を変え、そのたびに収奪的性格を濃くしていった倭人の捕鯨とは、根底から異なるのです。
 対照的な倭人の捕鯨にまつわる伝承をここで再度紹介しましょう。(詳細解説は下掲リンク)

−長崎県の民話・第三話:くじら長者(西彼杵郡)
http://www2.ocn.ne.jp/~i-talk/minwa3-3.htm

 ある日のこと、クモの巣に一匹のこがね虫がかかった様子を見た与五郎。
 「これじゃ、クジラを網(あみ)で捕るのじゃ」と、さっそく大きくて、じょうぶな網を作りました。
 くじらを網で捕る方法は大成功。 毎年、数百頭のクジラが生け捕られました。 与五郎はたちまち日本の長者番付にのるほどの大金持ちになり、りっぱな鯨御殿(くじらごてん)を建てました。
 それから後のある夜、一頭の親くじらが与五郎のまくらもとに現われて、
  「与五郎どの、わたしは子もちのクジラです。 かわいい子を生むために、どうかお助けください」と、涙ながらに頼みました。
 しかしよく日、与五郎は、子もちのクジラを捕らない様に伝えるのをうっかり忘れてしまいました。
 夕方、子もちクジラと子鯨が浜にあげられました。 それを見て昨夜の夢を思い出した与五郎はたいそう悲しみました。
 それからというもの、プッツリと鯨が捕れなくなり、浜はすっかりさびれてしまいました。 あれほど栄えた鯨御殿も荒れはてて、与五郎は六十歳でこの世を去りました。
 そして、子孫(しそん)に不幸が続いたそうです。(引用)

 古式捕鯨の商業的性格の詳細については、下掲の秋道氏主演のNHK捕鯨擁護プロパガンダ番組の批判記事をご参照。
 アイヌ捕鯨と古式捕鯨との間には、かくも埋めがたい差がありました。
 しかし、その江戸期の古式捕鯨も、明治期以降の事業家によるノルウェー式捕鯨の乱獲体質とは比べ物になりません。
 古式捕鯨に引導を渡したのも、さらに桁違いに捕獲数を急増させて資源枯渇を招いた近代捕鯨そのもの。
 北海道や全国各地に棲む陸上の野生動物も、サステイナブル・ユースの感覚とは無縁な倭人の所為で、同時期に憂き目にあったわけですが・・
 それはクジラ観の違いにも明白に見て取れます。
 まずこれが、曲がりなりにも人間らしさを保っていた古式捕鯨時代。

嘗て鯨をとりしが子鯨、母鯨にそうて上となり下となりて其の情態甚だ親しく、既に母鯨の斃る頃も、頑是なき児の母の死骸にとり付きて、乳を飲む様にも見えたり、よって屡々これを取除かんとすれども遂に離れず、拠無く子・母共殺すに至る。いかなるものもその様を見てはその肉を食うに忍びず、此処に葬りて墓を建て供養せり、定めてこの墓の鯨もザトウなるべし。(引用)

−鯨文化:鯨を弔った鯨墓・鯨塚など
http://www.geocities.co.jp/NatureLand-Sky/3011/kujirahaka.html

 古式捕鯨時代はまだ、命を奪うことへの畏れ、疚しさを完全には失っていなかったということですね・・。自民党の族議員のセンセイは、世界に供養の話を広めたいとかおっしゃってましたが、ご自身がまず日本人のクジラ観の多様さを一から勉強し直す必要がありそうです。。
 続いて、大手捕鯨会社による戦後南氷洋捕鯨の大乱獲期。監督官を務めた日本の鯨類学の第一人者の体験談。

※ 乳腺にミルクがあり、泌乳していたことを示す。しかし、この場合は、乳腺は退縮中で、泌乳活動を終えつつあるとみなして、仔連れ鯨捕獲の違反の疑いがあるのを目こぼしした。このようなことは日本の捕鯨では普通のことであり、会社や行政からも目こぼしを期待されたが、研究者にとっては耐えがたいことでもあったので、後には研究者は監督官を兼任しないケースが増えた。(補注)
(中略)大きな白の二頭連だと思ったら、小さい三分の二位のが小さい息をまぜて居る。船の連中は、あれは長須が混って居るので、子連れでは無いと言ふ。雌の肥り方。噴気。背鰭。背色等長須の様でもあり、子供の様でもある。しかし、私より実際に目の肥えた連中であり、しかも、監督官の面前で禁令を破って見せる様な事もあるまいと、その侭追尾させる。始めは小さいのが後からついて泳いで居たが、敵(捕鯨船)に追ひかけられたと気がついてからは、小さいのを前にして大きな白が後から揃って泳いで行く。そして、大体の場合♂が敵に近い方に居て♀を守ってやって居る。此の前第三文丸に乗った時は二頭連(夫婦)は一回も見なかったのだが、今日はどうも二頭連ばかりでその中の一頭をやっつけるのは可哀そうだ。しかし可哀想がってばかり居ては漁は出来ないし、当方が可哀想になる、早く帰れる為に犠牲になってくれよと祈ってやまぬ。そして今日の親子(?)の愛情又は夫婦の愛情を見せられては、それを打ち壊して自分の利益にのみ汲々として居る人間達。捕鯨業が嫌になった。母船では感ぜられない嫌な気分だ。遂に追尾成功。♂鯨はあへない最後をとげてしまった。それは大きな、♂にしては全く稀な程大きな85,6 feetもある奴ではあったが、それをやっつけた時、そして私に自らの功を話に来た時の、砲手の喜色満面ニタリとして残忍な笑ひを忘れる事は出来ない。私が、それと全く反対の気持ちで居るのも知らないで。それでもまあ♂で良かった。あれが♀であり、あの小さいのが、長須では無くて、子供だったら。小さいのは育たないかも知れない。此の点が国際協定のやかましく言ふ所であり、鯨を如何に可愛がるかと言ふ点だ。♂が自分が倒れても♀と子を守らうと言ふ精神、次代に示す♂の愛情は生物界いづれも変わらないだらう。犠牲になった♂の冥福を祈り、その犠牲によってのがれ得た♀の、そして小さき者の幸福を祈るや切。引用〜『南極行の記』(北泉社)

 ・・・そして行き着くところまで行き着いた、非人間的な調査捕鯨がこれ。。。

注5.「親子」と豪州政府が報道した鯨は、実際には単に捕獲された2個体の体長に差があっただけである。(〜鯨研プレスリリース)

 スリップウェイを挙がる未成熟と成熟個体の写真が報道され、国際的な非難を浴びるや、当の鯨研は涼しい顔でこんなことを言ってのけました。古の鯨捕りが耳にしたら、伝統の後継者を名乗る子孫の仏の罰を恐れぬ所業に、悲嘆のあまり卒倒したことでしょうね・・
 実際のところ、調査捕鯨の捕獲対象の半数は未成熟個体だったのですが。
 江戸時代の鯨捕りの抱えた激しい内心の葛藤など、もはやどこ吹く風。

 アイヌの捕鯨、江戸時代の古式捕鯨、明治期に輸入されたノルウェー式近代捕鯨、そして現代の、科学の美名を騙りながら「美味いミンク刺身の安定供給のため」(〜本川水産庁長官)に行われている調査捕鯨を、同じ捕鯨文化としてひとくくりにすることは、絶対に許されることではありません。

 アイヌの人々にとって、クジラはレプンカムイ(シャチ)からの授かりものでした。
 大陸渡来人の血とともに、アイヌ・琉球と同じ縄文人の血も引く倭人も、自然の恵みに対する感謝の気持ちはあったでしょう。
 しかし、現代人の口にする「感謝」や「供養」は、もはや正当化のための空々しい言い訳以外の何物でもありません。
 昔は、水害から救ってもらったお礼にウナギを口にするのを戒める、そんな地方もありました。
 いまや、絶滅危惧種に指定されてさえ、乱獲に、欲望にまともに歯止めをかけることすらできない有様。
 便利さや潔癖症の感覚と引き換えに、世界の食料援助の総量を上回る膨大な食糧を捨てている、人口当りで最悪の飽食大国。
 水産庁の担当者は「国産」と平気で嘯きますが、南極産鯨肉は、日本人が自然から授かった恵みではありません。
 地球の裏側の自然から強奪してきたものです。
 ICJ(国際司法裁判所)できっぱり認定されたとおり、捕鯨ニッポンは盗人国家なのです。
 大量の重油を燃やして地球の反対側にまで押しかけ、奪ってきているのです。
 公海・南極海とEEZ内という違いだけで、中国の宝石サンゴ密漁船と何ら違いはありません。
 しかも公海といっても、日本が批准を拒み続けているボン条約の観点からは、渡り鳥と同様に国際的に保護されるべき対象なのです。
 そして、当事者には罪を犯した自覚が欠片もなく、国際社会に対して懺悔し、ペナルティを引き受けるどころか、国庫補助金を増額させ、ますます手厚い庇護に浴するばかり。零細沿岸漁業者の苦境も差し置いて。

 アイヌに対する倭人による差別の構造は、今に至るまで引き継がれています。
 アイヌの人々は、和人(アイヌ以外の日本人)によって土地も言葉も奪われ、ずっと迫害の対象となってきました。現在でも、国はアイヌを先住民族として公式に認めていません。2008年には、前年に国連で先住民族の権利に関する宣言が採択されたのを踏まえ、アイヌを先住民族とみなすよう求める国会決議がなされましたが、日本政府自身は先住民という言葉の定義の問題に終始して明言を避けています。
 さらに、2014年には自民党所属札幌市議(当時)の金子快之氏が「アイヌはもういない」と宣言して物議を醸しました。これはもはや、食文化どころかアイデンティティとしての文化そのものを否定する発言にほかなりません。
 この元議員のみならず、日本人全般に他の民族、他の国の文化に対して無頓着なところが果たしてないといえるでしょうか? 半世紀前にアジア諸国の人々を同化≠オようとしたことも未だに反省していない人が大勢います。それなのに、南極の野生を貪ることを世界に向かって文化≠セと大声で叫んでいるのは、何とも奇異に感じられます。
 そして、そのサベツ意識がきわめて露骨な形で現れているのが、捕鯨問題に他なりません。

「我々はいつも首尾一貫しているとは言えない。誰でも全ての点で完全であることは出来ない。それがたまたまアイヌの問題でそれが起こったのだ。」(森下氏のコメント)

−米国紙がみた調査捕鯨とアイヌ|無党派日本人の本音
http://blog.goo.ne.jp/mutouha80s/e/a863ac35990df463fce164c7633863d5
−Japan's whaling logic doesn't cut two ways (LATimes,2007/11/24)
 現IWC日本政府代表・国際水産資源研究所所長・森下丈二氏が、海外メディアの質問に対して正直に言い放った超無神経発言
 捕鯨でのみ奇妙奇天烈なジゾクテキリヨウ原理主義の完全適用を世界に要求する森下氏は、日本でのアイヌに対するダブスタをして「たまたま起こった」の一言で済ませているわけです。
 なるほど、これが自民党の族議員に「基礎」(?)をレクチャーし、外野の反反捕鯨層にも「ネ申」と奉られるMr.捕鯨問題の国際感覚、人権感覚というわけです。
 NHKニュースウォッチ9での英国とガボンに対する「トロイの木馬」発言といい・・。
 政府代表の立場でクジラ食害都市伝説を否定したのは、彼の唯一評価できる面でしたが、肝腎の族議員に「基礎」を教えないんじゃ話にならないよね(--;;
 「調査捕鯨はオゾンホール発見に匹敵する科学的偉業」だとか抜かすくらいは、まだ“お笑い鯨人”のレベルで済むでしょう。
 しかし、この発言は笑い事で済まされるものではありません。
 他の先進国だったら、“国の恥”と認識されて、国際交渉担当から外されて当然でしょう。
 レプンカムイやコタンコロカムイに比べ、なんと情けないネ申≠烽「たものです・・・・

 仮にもし、アイヌの捕鯨がIWCで申請されたら?
 公海母船式捕鯨を護る盾として使われる、黒に近いグレーとしか認識されていない倭人の捕鯨会社の沿岸捕鯨と違い、反捕鯨国も異を唱えることなどしないでしょう。
 米国のイヌイットやオーストラリアのトレス海峡諸島民と、日本の先住民アイヌとの間に線を引く理由は、彼らには何一つないのですから。
 唯一警戒されるとすれば、「倭人の捕鯨のカモフラージュにならないか?」の一点だけでしょうね。

 従来から表明しているとおり、筆者はアイヌをはじめとする先住民の捕鯨・狩猟・漁労に反対するつもりはありません。
 一番大きな理由は、筆者自身が、彼らから多くの者を奪ってきた加害者である倭人の一員だからです。
 およそあらゆる動物・自然搾取産業にとって効果的な防波堤の機能を提供してきた反反捕鯨プロパガンダのご神体、日本の公海調査捕鯨に終止符が打たれたとき、環境保護・動物愛護/福祉の市民運動のうちクジラに(相当無駄に!)注がれてきたエネルギーは、それを必要としている方面に振り向けられるべきですし、そうなることでしょう。
 倭人や白人の動物や自然に対する振る舞いを、その知恵を引き継いできた先住民の人たちに恥じないレベルにまで導くことに。

参考:
−「縄文からの関わり」の裏◆文化的不連続と持続性のなさ(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/72247285.html
−太地の捕鯨は中国産!? 捕鯨史の真相(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/18025105.html
−民話が語る古式捕鯨の真実(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/33259698.html
−NHK、久々に捕鯨擁護色全開のプロパガンダ番組を流す(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/31093158.html
−鯨塚の真相(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/71443019.html
−捕鯨の町・太地は原発推進電力会社にそっくり(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/78450287.html
−二人の鯨類学者/西脇氏(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/18205506.html
−驚き呆れる捕鯨官僚の超問題発言(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/30322511.html
−捕鯨問題総ざらい!!! 16. 伝統のアイヌ捕鯨は別だよ!(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/29976279.html
−非科学的な動物"愛誤"団体──その名は「鯨研」 〜仔クジラ殺しを伏せる鯨研発プレスリリースの読み方〜
http://www.kkneko.com/icr.htm
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2014年09月19日

捕鯨礼賛大本営放送NHKがニュージーランドに宣戦布告!?

◇捕鯨礼賛大本営放送NHKがニュージーランドに宣戦布告!?


 ツイッターでの反応はこちらに。
■NHK、ニュージーランドにケンカを売る
http://togetter.com/li/720977

 スロベニアで開かれているIWC(国際捕鯨委員会)総会を取り上げた、9/17のNHK「ニュースウォッチ9」の特集の中で、度肝を抜く解説が。
 視聴者の目に飛び込んできたのは、画面いっぱいにまでデカデカと書かれた「ニュージーランド真のねらい 日本の国際イメージ悪化」のキャプション──。
 さて、同じ太平洋の島国として、報道の自由度をはじめ民主主義の各種指標で高く評価され、非核の道を貫き、地震の痛みをともに分かち合う、かけがえのない友好国であるはずのNZと同国市民に、思いっきり拳を振り上げてケンカをふっかけたNHKの真意は何なのでしょう??

 まず、背景を説明しておきましょう。
 この間、NHKをはじめとする日本のメディアは、同国提出の決議を「先延ばし」を狙ったものだと盛んに報じてきました。大本営の指示どおりに。しかし、実際にはその内容は、単なる先延ばしを目的としたものではありません。調査捕鯨の計画審査にあたり、その妥当性について、科学委員会(IWC-SC)の上位組織となるIWC総会にチェックさせる機能を求めるもの。
 なにしろ、ニュージーランド(NZ)はオーストラリア(AUS)とともに、この3月末ICJ(国際司法裁判所)によって日本敗訴の判決が下された調査捕鯨裁判の当事者なのです。皆さんとっくにご承知のはず。
 調査に名を借りた日本の違法な捕鯨を食い止めることのできなかったIWC-SCに対し、ICJの判断を踏まえてより厳格な運用を求めることは当然のことでしょう。もう一方の当事者に反省の姿勢が微塵も見られないのであれば、なおのこと。

 NHKの主張は、きわめて合理性に欠けるものです。
 友好国を攻撃的に貶めるのであれば、吉田調書や慰安婦証言以上に徹底した精査が求められて当然でしょうに。
 NZの決議に賛成した国は35カ国。一番の“お友達”である米国、AUS、EU諸国、南米諸国をはじめ多数の国々が、NHKいわく日本を貶めようとしているNZに同調したことになります。
 一体、彼らはみな、NZの“悪意”を見抜けなかったのでしょうか? あるいは、彼らもまた、日本の失墜させようと企んでいるのでしょうか?
 その中で、NHKがNZのみをことさらにあげつらったのは一体なぜでしょう? NZの日本に対する悪意が中でも飛びぬけていたから??
 ていうか、NZ、米・AUS・EU・南米諸国等がこぞって、日本に対するイメージを悪くさせようと働きかけている“世界”って、どこなの?? 中国や韓国? ロシア? このやり方で効果ある? それらの国に対して、これ以上日本の評価を貶める意味あるの????
 それを言うなら、国連から勧告を受けたヘイトスピーチや、(否定された一部以外の)慰安婦問題への対応、海外メディアで報じられている極右と政府関係者のリレーションのほうが、よっぽど日本のイメージダウンにつながっているよね・・少なくとも、報道の扱い方を見る限り、NHKはNZの陰謀≠ノ比べれば瑣末なことと思っているらしいけど・・

 第一、日本が決議を遵守さえすれば、国際ルールを守る姿勢を見せさえすれば、国際的イメージの悪化を防ぐことは簡単に避けられます。
 今回のNZの決議以前に、これまで日本の調査捕鯨に対してはIWCで何度も非難決議が採択されてきたわけです。
 捕鯨に伴う「国際的イメージの悪化」は、賛成反対双方がずっと指摘してきました。それを招いたのが、NZの陰謀などではなく、南極海調査捕鯨に固執する日本の姿勢そのものであることも含めて。
 そして、「国際的イメージの悪化」を懸念する声が、霞ヶ関の中からさえも聞こえていたわけです。
 米国・AUS・NZはじめ価値観を共にするハズの友好国に対するイメージを悪化させる、国際協調のつまづきの石としての負の側面と、捕鯨サークルの業界益ないし森下政府代表の言うところの「政治的ニーズ」という、二つの国益を斟酌し、「大きな国益の方を優先するほうが賢明なのではないか?」という声が挙がっていたわけです。
 今年NZが決議を出す以前から。日本国内で。例えばこれ。

−メディアが伝えぬ日本捕鯨の内幕 税を投じて友人をなくす|WEDGE

 今回最初に社説を出した毎日新聞も、「南極海での捕鯨に固執して参加国の反発を招き、沿岸での捕獲枠設定まで否定されるという負の連鎖からは脱却する必要がある」(引用)と指摘しています。
 その点に関していえば、NZは日本の沿岸小型捕鯨再開要求に対し、「南極海での捕鯨をやめるなら検討の余地がある」と日本に対する理解ある見解をはっきりと述べているのです。
 もちろん、日本はやっぱり国際法規を遵守する、敬意を払うに値する国だったのだな、と世界から賞賛を浴びる機会はありました。そう、ICJ判決の直後に。
 ところが、日本は国際的イメージを大幅にアップさせるまたとない機会を、自ら棒に振ってしまったのです。
 商業捕鯨モラトリアム決議から30年以上、「国際的イメージ悪化」などどこ吹く風という態度で、聞く耳を持たなかった捕鯨ニッポン。
 いまさら「国際的イメージ悪化」を気にしてどうするのでしょう?
 公共放送を通じてあからさまに他国の責任に転嫁する真似をしているようでは、その「国際的イメージの悪化」に拍車がかかるばかりに違いありません。
 何より、日本の恥を世界に晒したのは、国際裁判の判決文の形で後世にまで汚名を刻み込まれることとなった、本川水産庁長官の国会答弁・「刺身にすると美味いミンククジラ鯨肉の安定供給のため」にこそ、日本は南極海での調査捕鯨にこだわっているのだ──という、身も蓋もない本音の吐露に他なりません。

 NHKはニュージーランドという国、その国民の皆さんを侮辱しました。その侮辱を通じ、受信料の納付者、国民の信頼を裏切りました。
 中立・公正・公平とは程遠い、朝日吉田調書報道と比べても悪質さと外交への影響の点で比べ物にならない、北朝鮮国営TVもびっくり顔負けの偏向報道の責任を、NHKにはきっちり取らせるべきです。
 ニュージーランド政府はNHKと日本政府に対し、公式かつ厳重に抗議すべき。BPO(放送倫理・番組向上機構)にも審理を申し立てるべきです。
 番組の制作過程に徹底的にメスを入れたうえ、ニュースウォッチ9は打ち切り、ディレクターとトップも引責辞任を。

参考リンク:
−ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
−クローズアップ2014:IWC「調査」先延ばし可決 日本の捕鯨、岐路に(9/19,毎日)


◇追記:森下代表、ガボンとイギリスにケンカを売る

 NZに対する陰湿な誹謗中傷に負けずひどかったのが、ガボンに対する解説。
 中でも看過できないのは、森下代表の「トロイの木馬」発言。
 英国がガボンに戦争を仕掛けている。ガボンを乗っ取ろうとしている──そう受け止められても仕方のない発言です。
 では、実際の経緯を見てみましょう。
 ガボンは2002年にIWCに加盟。期を合わせるように、2003、04年と立て続けにランバレネ零細漁民センター整備計画の名目で水産ODAが供与されています。そして、2009年にはリーブルビル零細漁業支援センター建設計画の名目で11億円を超える水産ODAが供与されています。
 実は、ガボンは石油が採れることもあり、アフリカの発展途上国の中では所得が高く比較的恵まれた国。そうすると、援助要件が変わってくるわけです。ところが・・政治優先の水産無償は、それらの条件を無視して貸付ではなく贈与の形で供与が可能。水産無償はガボン宛の累積援助総額の実に9割を占めていました。詳細は下掲リンクの拙水産ODA問題解説をご参照。
 破格の厚遇があればこそ、「ヨロシク」の一言が利いてくるのです。
 今回、多くの発言で存在感を示したドミニカ同様、援助とセットで押し付けられた日本の身勝手極まる価値観の呪縛から解放されたのが真実。
 今もなお、日本の用意した甘い汁に惑わされ、片棒を担がされている国々が多くあるわけですが・・。
 公正・公平が大原則であるべきODAを、「美味い刺身」という我欲のために捻じ曲げ、アフリカをはじめとする地域の主権国家の尊厳を踏みにじり、国際会議の場で道具≠ニして利用しているのは、一体どこの国なのでしょう?
 ガボン政府と英国政府もまた、NHKと日本政府に強く抗議するべき。
 森下丈二氏には、日本の外交を担う資格はありません。まさに国の恥。コミッショナーを解任すべき。

 
参考リンク:
−国別プロジェクト概要 ガボン共和国
−捕鯨推進は日本の外交プライオリティbP!?──IWC票買い援助外交、その驚愕の実態


◇追記:BPOに意見を送ろう!

 NZ、ガボン、英国の人たちと仲良くしたいと思うみなさん(そう思わない人なんていないはず!)、BPO(放送倫理・番組向上機構)に意見を送りましょう!
 宛先と文例はこちら↓ 

posted by カメクジラネコ at 04:27| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会科学系

2014年08月07日

クジラたちの海─the next age─☆オマケイラスト

挿絵3枚UPしました。
1作目は全章にイラストを付けたのですが、今作はもう息切れでこの辺が限界。。
どのシーンかは読んでみてください・・
ご感想お待ちしてますニャ〜m(_ _)m

posted by カメクジラネコ at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2014年04月18日

調査捕鯨継続なら、本川水産庁長官は更迭、林農相も辞任すべし!

◇調査捕鯨を継続するなら、林農相は本川水産庁長官を更迭し、自らも辞任せよ!──多額の税金をどぶに捨て、自ら敗訴を招いた大失策の責任を取ろうとしない厚顔無恥な捕鯨官僚&族議員


■第180回国会 決算行政監視委員会行政監視に関する小委員会 第3号(平成24年10月23日(火曜日))
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025318020121023003.htm


○本川政府参考人
ミンクというのは、お刺身なんかにしたときに非常に香りとか味がいいということで、重宝されているものであります。 (中略)
したがって、ミンククジラを安定的に供給していくためにはやはり南氷洋での調査捕鯨が必要だった、そういうことをこれまで申し上げてきたわけでございます。
(引用、強調筆者)


 はあ・・読む度にため息が漏れますね。。
 上掲引用で略した部分では、売れ行きが悪くて在庫がかさんでいる北西太平洋産のイワシクジラやニタリクジラ(IKANニュース51号参照)、地元では干し肉の形で消費しており都心の料亭で刺身にするには向かないツチクジラについて説明されています。でもって、それじゃ永田町のグルメ議員らの舌を満足させられないから、「美味いミンクを食い続けるためにも、南極まで行って捕ってこなきゃ駄目だ!」という本音につながる形。むしろ、質問に立った議員たちに対し、「やっぱり南極でやるのが大事なんですよ、だって美味いミンク食べたいでしょ?」と媚を売る発言にも聞こえますね。食道楽垂涎の的、ナガスの尾の身にはさすがに触れてないけど・・。
 無論、本川長官の責任は免れようがありません。しかし、佐々木副大臣、小野寺氏をはじめ委員会に出席した十名余りの国会議員らも、「調査捕鯨の合法性に疑義をもたらしかねない重大な発言だ」と撤回・訂正を求めることをしなかった以上、当然彼らも同罪です。

■孤立無援の日本の「捕鯨」、どうすれば伝統漁業を残していけるのか|JBPRESS
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40449

私は水産庁の「鯨類捕獲調査に関する検討委員会」の委員として、捕鯨についての政策論議に関わったことがあるが、豪州の日本提訴について、水産行政に関わってきた人たちの見方は「盗人たけだけしい」といった認識で、日本が負けることはあり得ないという楽観論がほとんどだった。(引用、強調筆者)

 論者は朝日新聞石巻支局長を務めた「さかな記者」高成田亨氏。
 「水産行政に関わってきた人たち」にとってみれば、南極海、南半球、というより世界のクジラはぜーんぶ俺様のモノ。だから、彼らの目には、自分たちのクジラをオーストラリア人が横取りしようとしているかに見え、平気で盗人呼ばわりしているわけです。
 なんというジャイアンな性格!
 こういう感覚の人たちが長年にわたって日本の水産行政を牛耳ってきたとすれば、ウナギ、マグロが瀬戸際に追いやられるのも当然の成り行きでしょう。

■調査捕鯨のオウンゴール 建前を貫く覚悟が大切 (4/13,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO69790750S4A410C1TY7000/?dg=1

 日本政府も科学的調査を目的に掲げて調査捕鯨を実施してきた。だが本川長官の発言では別の目的がはっきりしている。本音と建前に当てはめるなら、科学的調査は建前で、鯨肉の安定供給が本音という構図だ。
 この使い分け自体が見苦しいのは言うまでもない。が、それに劣らず問題なのは、日本の捕鯨政策の責任者が公の場で、建前をないがしろにする本音を開陳したことだろう。
(引用、強調筆者)

 浅はかさと傲慢さによって自ら墓穴を掘った完敗に近い敗訴。その決め手となった、水産庁トップの致命的な国会答弁は、国際司法裁判所(ICJ)の判決文の中にしっかりと記されました。日本は国際裁判史上前例を見ない恥ずかしい当事国として、永久にその名を歴史に刻みつけられてしまったのです(判決文#197,p58)。

■JUDGMENT|WHALING IN THE ANTARCTIC (AUSTRALIA v. JAPAN: NEW ZEALAND INTERVENING)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18162.pdf

 一部の有識者、そして筆者をはじめICJの口頭弁論をウォッチした市民は、科学性の粗をパフォーマンスと論点外しで必死にごまかそうとする日本側の戦略を見て、「このままじゃ旗色がかなり悪いぞ」と昨年の段階から警告していました。その筆者らの予想さえ上回るほどの完敗の背景には、自らの非を認め、襟を正すという、人としては当たり前の能力が根本的に欠如した捕鯨サークルの恐るべき体質があったわけです。

■日本の調査捕鯨が国際司法裁判所で弾劾される日|天木直人氏 ('13/6/27,BLOGOS)
http://blogos.com/article/65118/
■ICJ調査捕鯨訴訟で日本は負ける|拙ブログ
http://kkneko.sblo.jp/article/70305216.html
http://www.kkneko.com/english/icj.htm
■調査捕鯨国際裁判敗訴は全て安倍と自民党捕鯨議連の責任|Togetter
http://togetter.com/li/650580

 この間政府関係者は、少なくともざっと一通り判決文に目を通しているはずで、この致命的な発言がしっかり入れられてしまったことも当然知っているはずです。
 ところが、敗訴の責任については、安倍首相が鶴岡代表を厳しく叱責するパフォーマンスのみで、すっかりうやむやにされてしまった感があります。知名度の高い国際弁護士数名に何千万円ものギャラを支払ったというのに。
 マスコミも、上掲のオンライン論説1本以外、本川長官と水産庁の重大な責任に触れた報道がひとつも見当たりません。
 TVは調査捕鯨が商業捕鯨に他ならなかったという事実を追認するように、鯨肉料理屋や客の怒りの声を流し続け、「このままでは伝統の食文化が・・」と危機感を煽るばかり。従来と何も変わらない捕鯨擁護論ばかりが伝えられ、ICJの判決の中身を詳細かつ冷静に分析する報道は皆無に等しい状態です。
 外務省の三段構えの戦術は、筆者ら捕鯨ウォッチャーの目には見苦しいものに映りました。それでも、公平性・公正性を世界で最も重んじるICJ判事たちの目を、本川長官の「ミンクは旨い!」発言からいかにして逸らすかという無理難題に対し、彼らはそれなりに善処したといえましょう。「自分たちは正しいのだから、負けるわけがない」と高を括り、建前と本音の使い分けさえできない自らの不始末を放置しながら、すべての戦略を外務省に丸投げした捕鯨サークル関係者や族議員には、他省の尻拭いに負われ、TPP交渉と掛け持ちで忙殺された外務官僚の苦労など理解できるはずもないでしょうが。

 ただ……一連の経緯からは、外務省がひたすら損な役回りだったかに見えますが、必ずしもそうとばかりは言えないかもしれません。
 レベルの低すぎる捕鯨官僚が負うべき責任を、外務省は自らの面目を思いっきり潰される形でかぶってやったわけです。当分の間、農水省/水産庁は、外務省に対して頭が上がらないでしょう。
 何しろ、水産庁長官の「ミンクは旨い」発言のせいで、「国際裁判初戦完敗」という永久に消えない屈辱を外務省に与え、看板に泥を塗ったも同然なのですから。
 農水省/水産庁は、外務省にあまりにも大きな借りを作ってしまいました。「クジラ」で。
 日豪EPA交渉で、直前にクジラで負けた相手でもあるAUSから、日本は対米交渉に有利なカードをも渡してもらいました。各所で指摘されるとおり、こちらのEPAについても、畜産農家やサトウキビ農家など、日本の農業者にとっては苦渋の選択を強いられる内容がいくつもあったようですが。
 ここのところ、靖国参拝や河野談話見直し等で米国の失望を買いまくり、今度のオバマ米大統領来日に際しても「国賓待遇なんて要らないから」と冷たい反応を返されるほど、ガタガタになった日米関係を修復することこそ、外務省にとって何よりも最優先すべき課題
 オバマ氏に対して、日本は相応の貢物を差し出す必要に迫られています。
 いま日本の手元にあって、大統領来訪中に差し出すことが可能なものは、2つしかありません。
 TPP日米交渉の大幅な進展、もしくは公海調査捕鯨からの撤退。
 TPPで米国の要求を丸呑みするならば、日本の一次産業従事者は、稲作農家、畜産農家以外も含め、一握りの起業家向きの人を除き、窮地に追いやられることになるでしょう。
 永田町では、捕鯨サークル主催の鯨肉パーティーを兼ねた族議員の決起集会が開かれ、衆参両院で調査捕鯨継続を求める決議を提出されました。TPPに関しても同様に5品目の聖域確保などを求める決議が出されましたが、威勢のよさでは「クジラ」が主食の「米」をも上回った感がありますね・・

 もうかる漁業補助金の超優遇をはじめ、捕鯨サークル最優先の陰で常に割を食わされ続けてきた沿岸漁業者の方々を含む、日本全国の一次産業従事者の皆さん。
 農水省/水産庁は、「クジラ」で取り返しのつかない愚策を犯したうえに、その責任をすべて外務省に押し付けてしまいました。
 外務省は「じゃあ、そういうことでかまいませんね?」と、米国にあなた方を売り渡すでしょう。彼らにとっては、それが省益にも重なる最大の国益にほかならないからです。
 いま、農水省/水産庁は、「クジラというご神体≠ウえ死守できれば、後はどうなろうと別にかまわない」という、驚くべき姿勢を示しつつあります。
 本川水産庁長官による「ミンクは旨い」発言が招いた国際裁判完敗の恥辱に対し、見て見ぬフリをする形で。そのあまりにも重大すぎる責任を一切負おうとしないことで。
 世界最高の国際司法機関から国際条約違反と断じられた擬装商業捕鯨である調査捕鯨を延命させんがために。
 当たり前のことですが、外務省は農業にしろ捕鯨産業にしろ、潰してやろうなどと考えているわけではありません。国際外交の場で日本にとって国益にかなう、最も有利な選択は、日米同盟を堅固に保つことだ──というのが、彼らの揺るぎない信条です。彼らにとって、農業あるいは捕鯨産業は、日米同盟の維持によって日本が生き延びるためなら、場合によっては差し出してかまわないカード≠ニいうこと。
 先の記事で最悪のドツボにはまる可能性について指摘したとおり、外務省サイドも調査捕鯨訴訟がまさかここまで完敗に至るとは考えていなかったと思われます。ただ、TPP交渉の進展が捗らない中、オバマ訪日とまさにぴったりのタイミングで、農水省を完全に抑えこめたことで、「棚からぼた餅ならぬクジラ」と、一部の外務関係者はほくそ笑んでいるのではないでしょうか?
 もし、族議員らの決議を慮って、日本政府が北西太平洋での調査捕鯨を強行するならば、米国への手土産はTPP/農業で確定です。日本の一次産業の未来も。美食の追求のために南極の野生動物を屠る行為とは対照的に、地域の風土と文化に密接に結び付き、環境保全にも一定の役割を果たしていたはずのこの国の農業は、米国のそれに似たビジネスの形でしか生き残れません。それはもはや、かけがえのない日本の伝統文化である農業とは相容れないものです。私たち日本人の魂のよりどころだった、日本の原風景である美しい農村も、失われていくばかりでしょう。

 本当にそれでいいのですか!?


 日米関係を大きく修復させ、なおかつ、日本が被る損失を圧倒的に小さくできるカードはあるのですよ。筆者ら少なからぬ日本国民にとっては、そもそもお荷物でしかなくメリットのほうがはるかに大きいものですが。
 確かに、識者が指摘したとおり、ICJから日本の調査捕鯨が違法認定された時点で、「南極海捕鯨からの撤退」というカードは失われてしまいました。裁判所に言われたことをただやるだけ、ではカードになりようがありません。
 しかし、ほんの少し上乗せするだけで、不人気の民主党オバマ政権を大いに喜ばせ、米国市民の日本に対する評価・好感度を一気に上昇させるのに十分なサプライズになるはずですよ。
 安倍首相が、オバマ大統領の隣で、世界に向かって「公海調査捕鯨からの完全撤退」を宣言するならば、同氏と日本の株は飛躍的に上昇することは間違いありません。
 お隣のいくつかの国には、面白くないと思う人もいるでしょう。けど、中国・韓国の市民だって、戦前の帝国主義を彷彿とさせる強硬な捕鯨政策を日本が改めるならば、見直す方も決して少なくはないはずです。


 日本の一次産業従事者の皆さん。
 独善的な捕鯨サークルの業界益のために、あなた方が犠牲になる必要はありません。なるべきではありません。
 もし、日本政府が公海調査捕鯨の続行を表明し、代わりに農業そのものを米国に差し出すならば、あなた方は一丸となって、外務省に頭が上がらなくなる原因を作った主犯である本川水産庁長官の更迭と、林農相の辞任を農水省に対して求めるべきです。
 また、海洋環境・野生動物に関心のある内外の市民は、ICJに対し米中韓三カ国共同で日本の北西太平洋調査捕鯨を提訴するよう働きかけるアクションが必要になってくるでしょう。

参考リンク:
■「鯨肉が売れない!」〜鯨研自らが公表した、入札結果の惨状〜|IKA-net
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/whaling/250-sluggish-sales-of-whale-meat
■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html
■捕鯨ニッポンが最悪のドツボにはまる可能性
http://kkneko.sblo.jp/article/93046598.html

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2014年04月13日

捕鯨ニッポンが最悪のドツボにはまる可能性

◇捕鯨ニッポン、最悪のドツボにはまる!?──ICJ完敗が外交にもたらす深刻な影響

 おかげさまで、前回の記事へのアクセスが掲載後1日で1万アクセスを突破しました。やはり、調査捕鯨国際裁判に対する皆さんの関心はそれだけ高いようです。
 マスコミ記者の方も、判決文中の例の箇所に着目してくれました。タイトルはちょっと変ですが(国際社会を前に建前を貫かれるのも困るし・・)、外国人技能実習制度の問題も例に挙げ、よくまとまっています。アナログ版でも掲載してほしいところ。


■調査捕鯨のオウンゴール 建前を貫く覚悟が大切 (4/13,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO69790750S4A410C1TY7000/?dg=1


 日本政府も科学的調査を目的に掲げて調査捕鯨を実施してきた。だが本川長官の発言では別の目的がはっきりしている。本音と建前に当てはめるなら、科学的調査は建前で、鯨肉の安定供給が本音という構図だ。
 この使い分け自体が見苦しいのは言うまでもない。が、それに劣らず問題なのは、日本の捕鯨政策の責任者が公の場で、建前をないがしろにする本音を開陳したことだろう
 この発言の2年前、日本の調査捕鯨の実態は商業捕鯨だと主張するオーストラリアが、国際司法裁に中止を求めて提訴していた。係争中だったことを長官は知っていたはずで、ワキが甘いと言うしかない。周知の通り日本は豪州に敗れた。
(引用、強調筆者)
 
 この日経記事で「やっと出てきた」という感じですが、判決文とその波及効果について、きちんと冷静に分析したメディアがまだ少ないのは残念なことです。
 国際司法裁判所(ICJ)の公表したプレスリリースをわざわざ訳してくれたのは、律儀な反反捕鯨活動家君ですし、筆者も判決文のごく一部を紹介しただけにすぎません。本来なら、外務省/日本政府が率先して判決文全文の和訳版をホームページ上で公開し、広く国民に知らしめるべきだと思うんですけどね。鶴岡代表の冒頭と最終の口頭弁論はしっかり載っけてるんだし。
 まあ、これ以上恥をさらしたくないという気持ちもわからなくはありませんけど・・。でも、一流国際弁護士の高額報酬分を含め、多額の税金をつぎ込んだ国際裁判デビュー戦の試合結果≠ナある以上、敗因の分析も含めて国民に詳細に説明するのは国の義務のはず。
 ただ、そんな余裕すらないほど、彼らは切羽詰まった状況に追い込まれているのかもしれません。


■宮城沿岸などの調査捕鯨 実施か慎重に検討 (4/11,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140411/k10013656931000.html


 これらの海域での調査捕鯨は、中止を命じた判決の直接の対象にはなっていません。
 しかし政府は、捕獲する頭数など調査の方法などによっては、今後、判決が適用される可能性があるとして調査方法の検証を始めており、予定通り調査捕鯨を実施するかどうか慎重に検討を進め、来週にも結論を出すことにしています。
(引用)


 皆さん、奇異に感じませんか?
 JARPNU(北西太平洋調査捕鯨)三陸沖沿岸調査の名目で行われるこの調査、事業主体は共同船舶ではなく、沿岸捕鯨事業者の組合に相当する地域捕鯨推進協会です。工船モラトリアム違反に該当する捕鯨母船・日新丸を運用するでもなく、操業場所もサンクチュアリ決議違反に当たる南緯60°以南の南極海からは遠い日本の二百海里内、目標捕獲数は60頭前後で対象種はミンククジラ1種のみですから、JARPAUで追及された対象種拡大・捕獲枠増大の問題も、相対的には大幅に小さいといえるでしょう。唯一引っかかるとすれば、胃内容物等の生態解明を目的とした調査手法について、非致死的な代替案を検証したかどうか。実際、バイオプシーによる脂肪酸解析という手法があり、この点は確かに突っ込まれても当然なのですが・・。
 いつも居丈高な水産庁が、内外の誰の目から見ても、少なくともかなりマシ≠ノ見える沿岸調査で、「慎重な検討」を強いられ、実施するかどうかさえ明言を避けたのには、それなりの理由があるはずです。

 一方、それと対照的な反応を示したのがこちらの当事者。

■15年度以降に調査捕鯨再開へ 鯨研、米地裁に意見書提出 (4/14,共同)
http://www.47news.jp/CN/201404/CN2014041201001846.html


 日本政府は、捕獲頭数削減など計画内容を変更し15年度以降の再開を目指す考え。鯨研は内容の異なる計画で、15年度以降の調査捕鯨実施は、これまでの計画を対象にしたICJの判決に背くものではないと説明している。(引用)


 見出しの前半分だけ見ると、国際裁判にずっと注目してきた人たちはみなギョッとしたところでしょうが、これは明らかに鯨研の先走り。国際条約附表に基づき審査する国際捕鯨委員会(IWC)ではなく、一組織の事情で因縁の相手と争うことになった米国地裁に対して、「自分たちは再開したい! するつもりだ! するぞ!」という意見を送っただけ。
 そうでないはずがありません。当の水産庁が、ジリジリしながら待たされている沿岸捕鯨事業者に対し、直前まで実施を明言できないのですから。
 むしろ、水産庁トップの致命的な発言をはじめ、自業自得で調査捕鯨再開の可能性が刻一刻としぼんでいく中で、破れかぶれの反応を示した、というのが正解かも。族議員や外野の応援団が、シーシェパード(SSCS)とのプロレスに引っかけたSOS要請≠ノ応じ、南極海での続行のゴリ押しを手伝ってくれるものと、期待してのことでしょう。

 莫大な税金を投入して債務超過団体に転落した身を引き上げてもらった当事者が、どれほど「絶体絶命のピンチ」を叫ぼうと、国民も、合理的な現実主義者が多数を占めていいハズの政府関係者も、今回ばかりは「じゃあ、救済してあげる」と二つ返事で請け合える状況にあるとは、筆者は思いません。
 賢明にして優秀なる外務官僚諸兄は、きっとお気づきになられたでしょう。
 今回のほぼ完敗に近い敗訴が、日本の外交戦略に致命的な打撃をもたらす爆弾となりかねないことを。
 いざという場面で使うはずだったカードがゴミ屑と化し、代わりに敵の手に有用なカードを渡してしまったかもしれないことを。

 前回の続きになりますが、いま日本政府の頭を悩ませているのは、他の国からJARPNUまでICJに訴えられやしないか、ということです。
 最初に思いつく候補として米国を挙げ、なおかつ米国自身が提訴する可能性は高くないかもしれないと指摘しました。そして、他にも該当する国があると──。
 ここで、その2つの国を、仮にA国B国としておきましょう。
 そして、日本との間で懸案になっている問題を、A国とのT島問題B国とのS諸島問題として
おきましょう。
 ・・・・・・。
 バレバレな感じですが、まあいいよね(^^;;
 訴えるはずがない、とおっしゃる?
 そうとばかりも言えないことを、これから説明していきましょう。

 A国B国は、ともにIWCに加盟しています。そして、ともに北西太平洋に面しています。
 しかも、両国はユニークな位置づけにありました。日本の主張にそっくり右へ倣えしてきた、カリブ海、太平洋、アフリカの加盟国は、日本の水産ODAと引き換えにIWCの票を売っただけで、自分たちが南極海などで捕鯨を始める可能性はゼロです。そんな中で、A国とB国だけが、独自のスタンスを取っていたといえます。アイスランド、ノルウェー、デンマーク(フェロー諸島)、ロシアとは別に。
 ちなみに、ロシアが日本を訴える可能性もありますし、その戦略的意味合いもこれから述べるA国B国のそれに近いものがあるかもしれません。
 これまでのIWC報道では、二国はどちらかというと日本に同情的、と報じられてきました。しかし、この2国はただ自国で捕鯨を行う可能性を吟味していたにすぎません。潜在的捕鯨国というわけです。
 A国では現在でも地方で鯨肉が消費されており、主に問題の大きな混獲という形で提供されています。B国では現在捕鯨は行われていませんが、伝統捕鯨はありました。そもそも、日本に古式捕鯨の技術が伝わったのは同国からだったという説もあります。また、B国がある意味で最も商業捕鯨参入のポテンシャルが高い国であることも、日本国内の一部の関係筋が指摘しているところです。
 「捕鯨国同士はいつでも利害が一致する」というのは、もちろん意味のない前提です。他の産業を見ても、歴史を振り返ってみても。それは、現在南極海・母船式捕鯨になど興味のないノルウェーとアイスランドが、常に日本と同じスタンスだったわけではないことからも明らかでしょう。
 
実は、A国は日本と同じように「調査捕鯨をやりたい」と、IWCの場で表明したことさえあるのです。それはつい昨年のことでした。
 そして、内外の反発を受け、反対派の意見に真摯に耳を傾けたうえで、いったん出した宣言を引っ込めたのです。まさに捕鯨ニッポンとは対照的な振る舞い。捕鯨に限らず、ここまで大人の対応ができる政治家は、残念ながら今の日本にはいそうもありませんね・・。


■韓国の調査捕鯨参戦宣言が招いた波紋 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/56904118.html
■韓国調査捕鯨断念報道 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/67764403.html


 記事中に国名が入っちゃってますが、とりあえず気にしないでください。。。
 続いてB国ですが、IWCでの立場はやや日本よりだったものの、同国内では捕鯨に対しさまざまな意見が聞かれます。今回のICJ判決に対しても、日本に同情的な声から辛辣な批判まで多様な主張がある模様。ネットメディアの捕鯨報道に関する限り、B国は別に検閲などしておらず、日本よりむしろジャーナリズムの公平性が保たれているくらいかも・・。


■調査捕鯨に中止命令、中国では矛盾指摘の声も=中国版ツイッター|Searchina
http://news.searchina.net/id/1528607
■違法な捕鯨が暴き出す“日本人の腐った根性”―中国メディア|ZINHUA.JP
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/379038/
■中国発捕鯨批判 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/34860899.html 


 こちらも国名が入っちゃってますが、同じく気にしないでください。。。。
 では、両国が本当に日本を訴えられるのか、またその気があるかどうか。
 まずA国自身が国際的な批判を受けて調査捕鯨計画を撤回したにもかかわらず、AUS・NZとの裁判で違法認定された日本が、ほとんど同じ内容の大規模調査捕鯨をいけしゃあしゃあと北西太平洋で続行するとなれば、同国とその市民にとっては面白いはずがありません。
 しかも、おそらく同国の計画した調査捕鯨の内容は、近海に限った小規模なもので、少なくとも日本のJARPAUに比べればはるかに違法性が少なかったはずなのです。
 つまり、A国にはJARPNUをICJに訴える大義名分が十分にあるのです。
 そして、同じくB国にとっても、北西太平洋の資源を日本が事実上占有している状態に、いい顔をするはずはないでしょう。ICJが違法性を指摘した以上、B国がここぞとばかり追及しない道理はないわけです。
 今回の訴訟では、B国出身の判事も含まれていました。某週刊誌がどうでもいい記事を書いてるようですが。。
 また、A国はハーグで大使を傍聴させていたことを、捕鯨擁護記者が確認。

■元産経木村正人氏もやっぱりトホホ反反捕鯨記者 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/73531621.html

 前回も指摘しましたが、両国が今回の日本とAUS・NZの訴訟の経緯を、細心の注意を払って見守っていたとしても、何ら不思議はありません。
 この訴訟への対応が、T島S諸島の問題を睨んだものだということは、当の日本政府関係者もマスコミも、あっけらかんと言いふらしていたわけです。聞いていないはずがないでしょう。


 両国とも、上記したとおり大義名分はあります。
 しかし、建前とはまったく別の理由で、日本を提訴することが大きな意味を持つと考えるかもしれません。日本が公にしていた裏の動機と同じく。
 ICJはすべての国連加盟国に開かれ、さまざまな国に活用されているとはいえ、訴訟コストはバカにはなりません。日本はこれまでICJで争ったどの国よりも、無駄金を投じたといえそうですけど・・。
 とはいえ、A、B両国は、その価値に十分見合う対価とみなすことでしょう。しかも、このケースに限っては、非常に低コストで済む可能性が高いわけです。事前提出資料はAUSのそれを参考にすればよく、後述するように、審議の準備の方は不要にさえなるかもしれません。
 また、AUSとNZのように、タッグを組むことも可能。むしろそのほうがお互いメリットになるでしょう。


 さて、A国B国が、「日本のJARPNUは国際捕鯨取締条約違反だ」とICJに訴えたとします。内容はAUSとほぼ同じ。
 この両国は、ICJに対して義務的管轄権受諾宣言を提出していません。
 ですから、AUS戦と異なり、日本はあっさりと逃げられます。AUSに対しては先決的抗弁を使う手法があり、そのほうが合理的だったのですが、その手続さえ不要です。
 確実に負けるとわかっているのですから、合理的に考えるなら、応訴しないで無視するのは当然のこと。
 しかし……そこで「日本は逃げたぞ!」と言われるわけです。
 国際司法裁判所に違法性を指摘されながら、間違いなく同様に違法な調査捕鯨を、対象外だという理由で別の場所で強行してしまう。判決に従うどころかICJの権威に泥を塗る、国際法規を重んじる精神など欠片も持ち合わせない国として、徹底的に批判されるでしょう。ついでに、相手がAUSのときは応じたのに、同じアジア諸国であれば無視する点も、一種の差別という謗りを免れないでしょう。
 話はそこで終わりません。
 今度は日本側がいよいよT島S諸島問題で両国を訴えようとしたとき、やはり彼らは同様に簡単に逃げることが可能です。
 しかし……そこで両国には格好の言い訳が与えられます。
「おあいこじゃん」
「先に逃げたのはそっちでしょ?」
「判決を守ろうとしない、調子のいい国の相手なんかしてられないよ」

 国際社会も、「まあ、どっちもどっちだね」という評価を下すでしょう。

 そもそも、日本政府が調査捕鯨裁判を、自国の絡む国際紛争(とりわけT島、S諸島)を処理するためにICJを活用するモデルケースとみなしたのは、次のような狙いとシナリオがあったからでした。
 本音では重要な国益だとは考えていないクジラで、引き分けに近い、あるいは実質勝訴といえる軽い#s訴を受け入れ、国際社会に対して自分たちが国際法規を尊重する模範的な優等国なのだということを精一杯アピールする。
 そして、本丸≠ナAB両国を土俵に引っ張り上げ、あるいは逃げられたとしても、そのことによって自分たちの正当性を声高に世界に知らしめる
──という。
 ところが、日本の思惑は大きく外れてしまいました。軽い#s訴で済むはずが、重い#s訴になってしまったのです。水産庁長官ら、捕鯨サークルのポカで。

 ここでもし、族議員や捕鯨サークルのわがままを受け入れ、JARPNUを小手先の変更で済ませたり、南極海での再開を強行するようなことになれば、国際社会から「なんだ、日本は口では守ると言いながら、判決に従う気なんて全然ないじゃないか」と強い批判を浴びるでしょう。優等生であることをアピールするはずが、脱法国家のイメージがさらに強化されてしまうのです。そうなれば、AB両国を睨んだ日本の戦略は台無しになってしまいます。
 逆に言うなら、日本からICJオプションを奪う、少なくともその効果を大きく減殺してしまえる非常に有効な手段を、日本はAB両国に対して与えてしまうことになります。

 日本には、両国のJARPNU提訴に対し、逃げずに受けて立つという選択も一応あります。AUSの提訴に対してそうしたように。
 しかし、その場合、200%負けが確実の茶番と化すわけです。 まさに究極の不合理。
 いくら高いギャラを積まれたって、海外の弁護士は絶対に日本の依頼に応じるはずもなし。免責事項がついても、看板に傷がつくのは誰だってごめんです。お人好しのワロー氏に代わって証人を引き受けてくれる海外の研究者なども、見つかりはしないでしょう。前回負けた京大の法学部教授他、代表団は全員日本人で構成するしかないでしょうね。
 顔ぶれは変わっても、ICJ判事たちはそれこそうんざりするでしょう。「AUSとの裁判で既に指摘されたことを、なぜ守ろうとしなかったのか?」と、日本が一段と厳しく責任を問われるのは間違いありません。
 内外のメディアはシラケるばっかり。欧米豪の市民は、特にクジラ好きでなくたってAB両国を応援するでしょう。各国政府も沈黙するしかなし。
男なら、負けると分かっていても戦わなければならないときがある(〜某昔のアニメ)! どうだ、逃げずに戦ってやったんだぞ、偉いだろ! もう1回、(領土で)尋常に勝負!!」
 満身創痍でそんな見得を切ってみせたって、ウケるのは国内のサブカル世代のネトウヨだけでしょうね・・。
 裁判に応じようと応じまいと、日本のイメージダウンは必至です。
 最近の日本の首相の猪突猛進ぶりに業を煮やしているAB両国にとっては、低リスクで得るものの大きい、検討に値する戦略だと思いませんか?

 

 正直、筆者自身は領土のことなんて知ったこっちゃありません。
 大切なのは、命、自然、そして平和。
 日中双方の識者が指摘するとおり、尖閣諸島の主権をめぐる問題で、両国にとって恩恵を最大化できる選択は「永久棚上げ」です。
 台湾との間で、水産資源管理の点では十分とはいえない、当の八重山の漁業者にも納得のいかない拙速な漁業協定を結べるくらいなら、日中台で公平・公正かつ厳格な資源管理に基づく漁業協定を結ぶべきであり、またそれは可能なはず。
 日中および米国が真剣に取り組むべきは、緊張緩和・軍縮のための膝詰めの交渉のはずです。
 韓国との間の歴史問題等にしても、未来志向といいつつ談話を見直そうとしたり、バカげた観測気球を打ち上げ続けたり、やってることは常に後ろ向きでは、米国に愛想をつかされて当たり前です。竹島は韓国が実質的な施政下に置いていますが、交渉の前提となるはずの慰安婦問題をはじめとする歴史認識で復古主義を前面に押し出すようでは、相手を硬化させるばかりで、対話が進むはずがありません。

 とはいえ、とくに保守主義の立場でなくとも、領土問題に関しては非常に強い関心をお持ちの方も少なくないでしょう。そんな諸兄のために、この問題をA国B国に利用されないようにするための対処法を提案したいと思います。
(「領土なんかより鯨肉のほうがずっと大事な国益だ!」と言えちゃうヒトたちには、筆者から申し上げることは何もありませんけど。。)
 日本が、自らの犯した重大な失策を埋め合わせる方法は、やはりひとつしかありません。
 国益としては(少なくとも領土に比べれば)実に瑣末でチッポケな、特定の事業者と癒着した官僚・族議員の利権のためでしかないクジラを、きっぱりとあきらめること。
 可及的速やかに、疑念を差し挟む余地がないほど判決を遵守するのがベター。要するに、一番手っ取り早いのは、公海からの完全撤退です。詳細は前回の記事をご参照。
 JARPNUをほとんど内容を変えずに今年強行したり(もう時間はあまり残されていませんが)、再来年の南極海での再開を宣言するなどは、もちろんもってのほか。
 そのとき日本は、クジラなんぞよりはるかに大きなものを失うことになるかもしれませんよ──。


 領土問題で、3国がお互いに頭を冷やしたうえで、罵り合いにならない実のある話し合いのテーブルに着くまでには、まだまだ長い時間を要することでしょう。
 日本はここで、最低限の自制心を、クジラから、今回のとても痛い敗訴から、真剣に学ぶべきです。


参考リンク:
−メディアが伝えぬ日本捕鯨の内幕 税を投じて友人なくす|WEDGH Infinity
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/721
−ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン (前回記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html


 次回は今年の小笠原のザトウクジラの画像をお届けしますニャ〜

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2014年04月12日

ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン

◇ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン

■JUDGMENT|WHALING IN THE ANTARCTIC (AUSTRALIA v. JAPAN: NEW ZEALAND INTERVENING)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18162.pdf

 国際司法裁判所(ICJ)の調査捕鯨訴訟、筆者も政府関係者に倣って判決文を精査しているところですが、読めば読むほど日本側に不利なことが明らかになってきた感じ。
 例えば、ICJが認めているのは、国際捕鯨取締条約(ICRW)8条に書かれた定義上の調査捕鯨のみで、第一期のJARPAについては本件の争点ではないと判断を完全に保留しています。双方の言い分を一応紹介したうえで、「今回の件とは関係ないから、あんたたちの意見の不一致にコートは取り合わないよ」といっているわけです。巷で言われているように、決して日本の調査捕鯨を認めたわけではありません(#99-108:ICJ判決文)。認めたのはIWCへの事務手続きだけ。

 The legality of JARPA is not at issue in this case. #99(p35)

Overall, the Parties disagree whether JARPA made a scientific contribution to the conservation and management of whales. The Court is not called upon to address that disagreement. #108(p37)


 また、非致死調査の検討がきわめて不十分だったことについては、AUS側の主張をそのまま認めており、「ザトウとナガスの致死調査なしでも一定の成果が挙がっているのに、なぜクロミンクで致死調査にこだわるのか?」と問題視しています。「ザトウとナガスを計画数どおりに殺せ(さ)なかったことが問題で、もっと増やしゃよかったんだ」という擁護派の主張は明らかに誤っています(:ICJ判決文)

The Court also notes Japan’s contention that it can rely on non-lethal methods to study humpback and fin whales to construct an ecosystem model. If this JARPA II research objective can be achieved through non-lethal methods, it suggests that there is no strict scientific necessity to use lethal methods in respect of this objective. #211(p62)

 その中で、敗訴を決定付けた日本側の致命的なポカを発見しました。


The use of lethal methods in JARPA II focuses almost exclusively on minke whales. As to the value of that species, the Court takes note of an October 2012 statement by the Director-General of Japan’s Fisheries Agency. Addressing the Subcommittee of the House of Representatives Committee on Audit and Oversight of Administration, he stated that minke whale meat is “prized because it is said to have a very good flavour and aroma when eaten as sashimi and the like”. Referring to JARPA II, he further stated that “the scientific whaling program in the Southern Ocean was necessary to achieve a stable supply of minke whale meat”. In light of these statements, the fact that nearly all lethal sampling under JARPA II concerns minke whales means that the distinction between high-value and low-value species, advanced by Japan as a basis for differentiating commercial whaling and whaling for purposes of scientific research, provides no support for the contention that JARPA II falls into the latter category.
  #197(p58)

 これはオーストラリア(AUS)側が昨年6/28の口頭弁論時に指摘してみせたもの。

■Public sitting held on Friday 28 June 2013, at 10 a.m., at the Peace Palace, President Tomka presiding, in the case concerning Whaling in the Antarctic (Australia v. Japan: New Zealand intervening)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/17400.pdf

60. As recently as October 2012, the Director of the JFA openly admitted to a Japanese Parliamentary Subcommittee that maintaining its purportedly “scientific” whaling program in the Southern Ocean was necessary to perpetuate the market in minke whale meat. (Tab 108):
“Minke whale meat is prized because it is said to have a very good flavour and aroma when eaten as sashimi and the like . . .
. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
[T]he scientific whaling program in the Southern Ocean was necessary to achieve a stable supply of minke whale meat.”12
 (p18)


 で、該当する国会答弁はこちら。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/025318020121023003.htm

第180回国会 決算行政監視委員会行政監視に関する小委員会 第3号(平成24年10月23日(火曜日))

○本川政府参考人
 少し補足をさせていただきます。
 被災前でありますが、調査捕鯨として大体八割、三千八百トン、七百トン前後をとってきておりますが、そのうち南極海が二千トンであります。ただ、これはミンククジラというものを中心にとっております。ミンクというのは、お刺身なんかにしたときに非常に香りとか味がいいということで、重宝されているものであります。
 それから、北西太平洋で千七百トン程度、二十二年はとっておりますが、そのうち百二十トンが沿岸の調査捕鯨であります。千五百トン強はいわゆる鯨類研究所がとっている鯨であります。ただ、こちらはイワシクジラとかニタリクジラというものを中心にとっております。
 それから、沿岸の小型捕鯨というのが二十二年で四百十七トン捕獲しておりますが、これはツチクジラという、イルカに非常に形が似た鯨でありまして、ジャーキーのような、干し肉になるようなものでございます。この前、鮎川に行かれたときに、鮎川の捕鯨の方がとっておられましたが、これはまさにツチクジラをとる業を営んでおられる方でありまして、この方が南氷洋でとられるミンククジラを扱うということはまずないのではないかなというふうに思っております。
 したがって、ミンククジラを安定的に供給していくためにはやはり南氷洋での調査捕鯨が必要だった、そういうことをこれまで申し上げてきたわけでございます。
 それから、今のデータにつきましては私どものホームページで公開させていただいております。積極的に提供申し上げなかったことについては申しわけないというふうに申し上げたいと思います。
(中略)
○小野寺小委員
 長官、これは誰が見たって今回違和感がありますよ。復興の予算でこうやってつけるというのはおかしい。だから、もうこれはだめということになるんだけれども、迷惑しているんだ、あなたのおかげで。
 誰が迷惑しているかというと、鯨産業の人全体が迷惑しているんですよ。こうやって、何か捕鯨がいかにも復興予算の流用の悪い人にとられてしまったら、捕鯨事業全体が困ってしまう。実際、この石巻地区だって、日本だって、やはり捕鯨というのは大事な文化ですよ。ですから、あなた方がそういう変なことをするから逆にこういうことに迷惑がかかるんだから、しっかり必要な予算はとっていく、しかも本予算でとっていく、それをはっきり言っていただきたい。
(引用、強調筆者)

 まあ・・誰がどう見たって、調査捕鯨が商業捕鯨に他ならないことを自ら白状しているとしか思えませんわな・・・
 とはいえ、ここで本川長官個人のうかつさを責めたてても始まりません。「そういうことをこれまで申し上げてきた」とは、歴代の水産庁長官が調査捕鯨についてそのように説明してきたことを意味するのですから。
 そして、質問に立った国会議員らも、「調査捕鯨に対する疑義を招きかねない問題発言だ」として撤回・修正を求めることなど誰もしていないわけです。風評被害≠心配して啖呵を切った代表的な捕鯨族議員、小野寺氏も含め。
 これは言わば、捕鯨サークルという組織の慢心からきた身から出たサビ

 このときの衆院委員会質疑は、東北大震災復興予算流用に関するもの。
 水産官僚だって、族議員に「何とかしろ」と尻をたたかれ、深刻な鯨研の赤字問題を解決するために復興予算に飛びついたんでしょうが・・。

■日本鯨類研究所(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%AF%A8%E9%A1%9E%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80

震災復興資金流用への批判
税金投入問題に派生する形で2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の震災復興資金のうち、石巻の復興の為として約23億円が調査事業費として計上され、うち18億円が調査捕鯨の費用に、5億円がシー・シェパード対策に使われた事実に対する批判があり、当の石巻市からも地元に恩恵がない、当地の関係者から調査捕鯨で捕った鯨は一頭も流通していないとされており。この件で衆院決算行政監視委員会の理事である自民党の平将明衆院議員は調査捕鯨の必要性を訴えられたが調査したら鯨肉の在庫は余っており、役所に嘘をつかれたと非難している。また、2012年10月23日の衆院決算行政監視委員会で、水産庁の本川一善長官は18億の調査捕鯨の費用で当時の8億7千万円の債務超過を解消してゼロにした旨を答弁した。尚、この件は最初に英豪メディアで取り上げられたものの、この報道を見て災害の義援金が使われたと誤解した人からの抗議が豪日本大使館に殺到した為、義援金使用に関しては否定のコメントを出した。
(引用、強調筆者)

 調査捕鯨の本質を最もわかりやすい形で、当事者の口から、国会という場で説明させたのは、まさに復興予算を平気で流用してしまう捕鯨サークルの体質でした。
 この問題が海外メディアに取り上げられたことで、AUS政府にも証拠として提供されることになったのでしょうね。
 ちなみに、AUS側の審議前の提出資料には含まれていないため、隠し玉として用意されたのでしょう。AUSの今回の提訴が、国内受けを狙った内向きのパフォーマンスではなく、本気で結果を出そうと知恵を絞った証ともいえますが。
 してみると、水産庁の最高職から自爆発言を引き出し、ICJに思い切った判決を下させるうえで大きな貢献を果たしたのは、ほかでもない、捕鯨サークルや国会議員たちを復興予算流用問題から逃れられない状況に追い込んだ日本国民、ということになるでしょう。具体的には、調査捕鯨に対して特に含むところがあったわけではなく、震災復興予算の使われ方への関心と公平な視点を持ち、調査捕鯨が聖域≠ニして見過ごされることをよしとしなかったジャーナリストと研究者、そして取り上げざるを得なくなった多くのマスコミ、「これはひどい」という正常な反応を示してくれた、被災地を始めとする全国の国民の皆さん。まさに殊勲賞ものですね。

 ほぼ完敗といえる敗訴に至った理由は、まず一義的には、演出によるイメージ戦略でもって不利な戦況を乗り越えようとした外務省の戦術のマズさにありました。しかし、勝ち目のない負け戦をあえて受けて立たせたのは、理をわきまえず「ともかく勝て!」とせっついた自民党捕鯨議連であり、TPP首席担当と兼任させる形でわざわざ外務官僚のエースを起用した安倍政権に他なりません。
 しかし、最初から勝ち目のない戦にしてしまった主因は、もちろん捕鯨サークル自身にあるわけです。責任の大きい個人の名を挙げるとするなら、自爆発言の本川一善現水産庁長官と、ICJ/AUS&NZにツッコミどころを山ほど提供したJARPAUを立案・主導した小松正之氏ということになるでしょう。AUSが口頭弁論で用意したプレゼン資料の中には、小松氏の「It's none of your business!(余計なお世話だ!)」発言や、「捕獲枠拡大のおかげで鯨肉が安価に提供できるようになった」と紹介する自著なども入っていました。クジラ本、山ほど書かれましたもんね・・。
 いずれにしても、こんなバカげた訴訟の負担を国民に強いた責めを負うべきは、族議員と歴代官僚を含む捕鯨サークルであることは間違いありません。

■調査捕鯨国際裁判敗訴は全て安倍と自民党捕鯨議連の責任|Togetterまとめ
http://togetter.com/li/650580


 さて……あるとき、とある国が何年もの間、赤道を越えた南極に向けてぶっ放し続けていたのは、人工衛星などではなく、国際条約に違反するミサイルだったと、世界で最も権威ある司法機関からきっぱりと駄目出しを受けました。
 ところが、「人工衛星か? ミサイルか?」が問われていたにもかかわらず、その国の中ではどういうわけか、「うちのミサイルは、中世の花火に歴史をたどれる美しい伝統技術だ! 南極に向かって打ち上げ続けろ!」というわけのわからない屁理屈をマスコミが盛んに流し続けています。国民の大多数が、「あれが花火でも人工衛星でもない、ミサイルだってことは、とっくにわかってたさ・・」とつぶやいているのに。
 前約束で、国際法を遵守する旨宣言した以上、「仕方ない、これ以上ミサイルを南極に飛ばすのはやめよう」と、現実に向き合う政府関係者も多い中、なおも「うるさい! 国際条約機関から脱退してでも、ともかくミサイルを南極に飛ばすんだっ!」と息巻いている人たちもいます・・

 一体日本は、そんな目も当てられない国だと、世界から白い目を向けられるようになってもいいのですか??

 アイルランドの提案、米国の打診、外部専門家を招き多くの関係者の時間と労力を注ぎ込んだIWCでの歩み寄り交渉──あたかもミサイル人工衛星と嘯き続ける近くの独裁国家と見まがうような、強硬な唯我独尊の姿勢を貫き、テーブルをひっくり返してきたのが、捕鯨ニッポンに他なりません。

 先日、地方紙の一紙で産経のポエムとは比較にならない、思わず読者をうならせる名コラムが掲載されました。以下はその一説。


 (デ・ソト提案に沿った交渉の)当時「南極海での調査捕鯨中止」は、日本にとって強力な交渉カードだった。もし、このカードを交渉で切っていれば、得られたものは大きかったはずだ。だが、今回の判決でこのカードの意味はなくなってしまった。(引用〜岐阜新聞・時言「捕鯨をめぐる幻の妥協」)


 指摘されているとおり、裁判所で国際条約違反と認定されてしまった時点で、日本は立場も、代わりに何かを要求する権利も、すべて完全に失ってしまったのです。その時点では、一定範囲の沿岸捕鯨を許容してもらえる余地もまだあったというのに。
 しかも、国際裁判至上にいつまでも汚名を刻み込まれる形で。

 日本が自らの愚策の果てに失った誇りを取り戻すには、一体どうすればいいのでしょう?
 なすべきことは、ひとつしかありません。
 それは、世界中の人々に対し、ミサイル人工衛星だとずーーっと偽り続けてきたことを、深々と頭を下げて心の底から謝ることです。
 何年も国際条約を破り続けてきたことが明らかになったのに、一言の謝罪もなく、「失望した」などと逆ギレしたうえ、一切のペナルティなしに済ませようとするのは、あまりにも虫が好すぎるんじゃありませんか?
 もし、日本との間で係争を抱えている国が、同じような振る舞いをしたなら、国内で増殖しつつある新世代のナショナリストたちはきっと、怒り狂って暴動を起こすことでしょうね・・・
 実際、政府関係者はICJでAUS・NZを迎え撃つにあたり、今回の訴訟対応を、対中国・対韓国の領土問題を念頭に置いたICJでの紛争処理のモデルケースとして捉えていると、臆面もなくメディアに語っていたわけです。最強布陣の必勝体制で臨み、負けるはずがないと高を括っていたからなのでしょうが。
 中国や韓国の人々はもちろん、今回のICJ判決を受けて日本がどのように振る舞うかに、非常に大きな関心をもって注目しているはずでしょう。

 無論、世界の日本に対する評価を気にするならば、口先だけの謝罪と反省で終わらせるわけにはいきません。国際社会に対して自らの犯した罪をきちんと償う必要があります。それを具体的に行動で示さなければなりません。

1.南極海からは即時、完全に撤退すること。
 一年間だけ休んだら再びクジラたちの楽園を脅かすべく舞い戻ろうなどとは、二度と金輪際考えないことです。

2.北西太平洋からは段階的に撤退すること。
 カードは失われてしまいました。南極海撤退だけで目こぼしをもらうことを、国際社会に乞うことはもうできません。
 AUS・NZ・米国等には、あらかじめお願いして了承を取り付けることが必要でしょう。現実的な観点から、各国には土下座しつつ、少しばかり猶予期間をいただきましょう。せいぜい3、4年の期間が目処でしょうね。
 その間に、市場縮小のロードマップを提示し、副産物≠セったハズのものの需給を調整するとともに、共同船舶の船員の一時補償と再雇用の支援を国が確実に行うこと。繰り返しになりますが、捕鯨批判派を含め、復興予算流用に厳しい目を向ける国民だって、誰一人文句を言いやしません。
 副産物≠ノついては、都市部の食通どもがネット通販で取り寄せていいものではありません。全量沿岸捕鯨地に回すべし。江戸時代から続くという意味では、資格があるのは太地と和田浦くらいですが、鮎川、釧路は含めていいでしょう。そして、東北の被災地を尻目に自分たちだけ20億の経済効果にありつこうとした、同情の余地など一片もない下関ではありますが、大マケにマケて一定の期間は認めてもいいでしょう。
 どーしてもどーしてもどーーーーしても鯨肉が食べたい!という人は、沿岸捕鯨地に出向いて、現地にさまざまな形でカネを落とし、地域経済に貢献することです。
 学校給食への活用などは無論禁止。こどもたちに食べさせるべきは、地産地消の究極のアンチテーゼというべき南極産の野生動物の肉などではなく、雑穀、地域野菜、地先の海で取れる小魚です。
 捕鯨協会/国際PRがでっち上げた虚飾の鯨肉食ブンカは、ドングリ、ヒトデ、ヒザラガイなどと同じ、地産地消の文化に反しない、身の丈にあった地域の食習慣の水準に回帰するべき。

3.沿岸捕鯨については、乱獲と規制違反の歴史に対する真摯な謝罪と反省を世界に表明したうえで、国際機関の厳格な管理のもと、小規模な地場利用の形で認めてもらうよう、お願いすること。
 今回のICJ判決報道の中で、和田の捕鯨会社は「罪悪感を伴うものにならなければいいが」などとコメントを寄せ、捕鯨業者でありながら日本の伝統捕鯨の精神の真髄を何も理解していないことを露呈してしまいました。あまりにも情けないことです。何のための供養碑だと思っているのだろう? 自分たちも先祖に倣ってやっていることは、形式だけのパフォーマンスにすぎないと思っているのでしょうか?
 また、太地は凝りもせずに次回IWC総会への外遊予算を確保したとのこと。国際会議への出席は、本当に必要ならば政府が費用をもって代表団に加えればいい話。視察に名を借りた地方自治体の議員・首長らの海外旅行は、市民オンブズマンの批判を浴びて久しいですが、どこ吹く風という感じですね。伝統の真珠養殖を潰して画餅の「鯨の海構想」を強引に推し進めることといい・・。太地はご神体への自縄自縛の状態から自らを解放しなくてはなりません。

4.イルカ猟については、追い込み猟を突きん棒猟に切り替えること。また、国連海洋法条約に則りIWCの管理下に置いたうえで、水産庁はデータが不足している対象種・個体群をきちんと調査し、厳格なPBRに基づく捕獲枠を設定しなおすこと。
 
捕鯨と同様、イルカ猟も国際法の観点から問題があることは明らか。イルカフリークの皆さんには申し訳ないと思いますが、筆者はここであえて、かなり譲歩した現実的な提案を示します。ガイアツで追い込まれる前にきちんと襟を正すことが生き残る唯一の道だと、関係者は胸に刻むべきです。


 いやだとおっしゃる? どーしてもどーしてもどーーーーしてもいやだと?
 日本はカードを失ったのですよ。そんな贅沢なことを言えた立場ではないのです。
 東北大石井准教授が指摘されていますが、JARPNU(北西太平洋調査捕鯨)は間違いなく、今回違法認定を受けたJARPAUと同様の問題を抱えています。NHKが報道したように、事業者も海域も船の規模も捕獲数も捕獲対象種も異なる沿岸調査にさえ、水産庁が慎重な検討を強いられているのは、もちろんそれが理由。もっとも、族議員の反発が少ない沿岸調査にしわ寄せをできる限り押し付け、共同船舶の母船式捕鯨の傷をなるべく少なく済ませようとの意図もあるのかもしれませんが・・。
 北太平洋の捕鯨に対して日本を訴える相手といったら、思いつくのはやっぱり米国。ただ、みなさんもご承知のとおり、日米関係は主軸となる貿易・防衛問題で重要な局面を迎えており、米国がクジラで日本にイチャモンをつける余裕はないかもしれません。
 なら安心だと思いますか?
 いや・・ワイルドカードも考えられます。
 もし、どこかの国どこかの国が、日本のJARPNUをICJに訴えたとしたら──日本はクジラよりはるかに大きなものを失うことになるかもしれませんよ?
 次回は、日本がはまりかねない最悪のドツボについて、詳細に検証してみたいと思います。
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2014年04月06日

今こそ南極海捕鯨から全面撤退のとき 日本政府は英断を!

 日本の調査捕鯨をめぐる国際裁判・日本VSオーストラリア&ニュージーランドに対する国際司法裁判所(ICJ)の判決が示されました。

■ICJ Press Release 2014/14
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18136.pdf
■JUDGMENT|WHALING IN THE ANTARCTIC (AUSTRALIA v. JAPAN: NEW ZEALAND INTERVENING)
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18162.pdf


 正直驚いています。ここまでの判決が出たことに。
 敗因については、直後に毎日が触れ、また3日には朝日が2面で大きな特集を組んでいます。毎日ブリュッセル支局の斎藤記者は以前かなり偏向した記事を書いたことがありますが、今回はとても冷静かつ的確にまとめてくれています。朝日の編集委員小山田記者は、今のマスコミの中では一番の捕鯨問題通の一人といえそう。これまでも興味深いネタを発掘してきてくれました。いつもミスリードの意図が見え見えな産経記事とは対照的に、記事自体は淡白で、そこはプロのジャーナリストならでは。


■叱責の首相・釈明する担当者…調査捕鯨、日本完敗の訳は (4/3,朝日)
 ※ アナログ版記事見出し:捕鯨外交 自信が裏目 「最強布陣にあぐら」
http://www.asahi.com/articles/ASG42630CG42UTFK01B.html


最低でも数千万円単位の弁護報酬を支払い、世界的権威の弁護士を雇った。完敗はあり得ないとなめていた」(政府関係者)と打ち明ける。(引用、強調筆者)
 欧米諸国では、日本に批判的な記事が目立つ。フランスのフィガロ紙は1日付で「日本は(商業)捕鯨を継続できるよう調査捕鯨プログラムを『でっち上げた』」ために豪州から訴えられたと批判的に報じた。米ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は「判決は南半球のみが対象。クジラを守る戦いは終わっていない。日本は国際的な非難を待たず、すべての捕鯨をやめるべきだ」と同日付の社説で論じた。オランダのトラウ紙は同日付の記事で「中国との尖閣諸島の問題で日本は『国際法のもとで解決を』と強く主張している。ICJ判決を無視すれば、日本の外交的信頼に大きくマイナスになるだろう」とした。 (引用)

■調査捕鯨中止:「透明性欠いた」点、受け入れられず (3/31,毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20140401k0000m030115000c.html


 一方、捕鯨を批判する欧米やオセアニアとの外交交渉で捕鯨問題が常に障害となってきた事実は否定できない。日本が調査捕鯨を断念すれば、外交的には評価を受けることになりそうだ。(引用、強調筆者)

 その傍らで、戦前を髣髴とさせる大本営愛国放送と化しつつあるNHKは、今回の訴訟と関係ないハズの北西太平洋調査捕鯨の画像と主張を混ぜ込んで、実にえげつない誘導解説記事を出しています。主張自体デタラメですが・・。解説の解説≠ノついては下掲リンクをご参照。

■くらし☆解説 「調査捕鯨国際司法裁判所判決の意味は」 合瀬宏毅解説委員 (4/1,NHK)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/184379.html


 こちらはニュースですが、IWC副議長の傾聴に値するコメント。


■IWC副議長 捕鯨方法の抜本的見直しを (4/2,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140402/k10013430391000.html


この中でシュメイ副議長は、「国際司法裁判所の判決は、IWCの加盟国の間で政治的な理由から停滞してきた議論の論点を中立的な立場から明確にした」として、判決を歓迎しました。
そのうえで、日本は現在のやり方のままでは調査捕鯨を続けられなくなったことを踏まえ「鯨を殺さないで行う調査をほかの国と連携して実施するなど、ほかの選択肢があると思う」と述べ、日本は調査捕鯨の方法の抜本的な見直しが必要だという考えを示しました。
(引用、強調筆者)


 今回の調査捕鯨国際裁判については、筆者も市民の皆さんとともに昨年6、7月に行われた口頭弁論を国連ウェブキャストで傍聴し、固唾を飲んで行方を見守ってきました。
 結果的には、筆者の予想(というより期待)にかなり近い判決となったわけです。
 当時の筆者が指摘した問題点と合わせ、判決を受けての筆者と多くの市民の皆さんの感想を、以下のまとめサイトで取り上げていただきました。
 マスコミ記事の細かいチェックまで、大変なまとめを引き受けてくれた富さんに改めて多謝m(_ _)m


■調査捕鯨国際裁判敗訴は全て安倍と自民党捕鯨議連の責任|Togetter
http://togetter.com/li/650580
■調査捕鯨の科学性を解体する|Togetter
http://togetter.com/li/486896
■ICJ調査捕鯨訴訟で日本は負ける|拙ブログ
http://twilog.org/kamekujiraneko
http://b.hatena.ne.jp/entry/kkneko.sblo.jp/article/70305216.html
■Japan will lose the legal suit on of whaling in the Antarctic at the ICJ|拙HP
http://www.kkneko.com/english/icj.htm


 裁判の結果が大きく報じられたこともあり、拙管理サイトにも大きな反響がありました。
 拙ホームページには3日に2100、ブログには2日に1900、3日に2500を超えるアクセスが。これは、ウヨガキ君たちが殺到した調査鯨肉横領(世間的には窃盗)事件のとき以上。はてなブックマークの方にも多くの皆さんに指定をいただいたところ(Ika-netブログのブクマはさらに1桁上ですが)。
 そして、まとめのほうはなんと3日間で驚きの28,000アクセス超え。お気に入り120、つぶやき回数も700以上。
 別の野生動物関連のコンテンツで1万以上の方のご訪問をいただいたことはありましたが、クジラ関連では新記録(^^;;
 数よりも驚いているのは、横領事件のときとは対照的に、非常に多くの方から筆者の指摘に対するご賛同、好意的な反応をいただいたことです。
 判決後のツイッターのタイムラインにも、座布団をみんなにサービスしたいほど名言・名句の数々が流れ、筆者としてはうれしい悲鳴をあげていた次第。

 やっぱりみんな、わかってたんだよね・・・本質を。

 その辺りの事情はマスコミに関してもいえるでしょう。これ以上捕鯨サークルをかばいだてすることが困難な状況になったことが、各紙の社説からもうかがえます。
 残念ながら、これまで精一杯応援してきた後ろめたさが尾を引いているのか、「大変だ、なんとかしなきゃマズイ!」と言いつつ、結論が不明瞭で歯にものが挟まったような言い方が多数。そのせいか、読売、朝日、日経、東京とも、社説に関しては論調が驚くほど似通ってしまっています。どちらかというと、声が大きい捕鯨擁護派に配慮してぼやかした印象。どれも食文化論や食害論、漁業規制脅威論などトホホな主張をこれまでどおり入れちゃってますね(--;; 一方で、過剰鯨肉在庫、収益悪化、復興予算流用問題など、「調査捕鯨に問題がある」ということも、ほとんどのところがはっきりと指摘しています。捕鯨報道のあり方としては、従来からのかなり大きな前進といえるでしょう。
 その中で、一歩リードといえるのが、毎日新聞と宮城県中心の地方紙・河北新報
 河北新報は沿岸捕鯨地である鮎川が圏内にあることから、これまで捕鯨擁護色の強い主張が目立っていました。むしろそれだけに、事態の厳しさも肌で感じたのでしょう。復興予算の流用が象徴するように、東北の沿岸捕鯨者と中央の公海捕鯨事業者との利害はときに相容れず、その際苦汁を味わわされてきたのはいつも沿岸でした。それはこの社説の文中からも明瞭に読み取れます。
 鹿児島の南日本新聞の社説も、冷静なトーンで良質な内容。

■社説:調査捕鯨で敗訴 南極海から撤退決断を (4/2,毎日)
http://mainichi.jp/opinion/news/20140402k0000m070169000c.html

食文化を守るために南極海で商業捕鯨を再開する必要性は乏しい。そのために年間数十億円の国費を使って調査を続ける意味はないだろう。政府は今回の判決を受け入れるとしながらも撤退の意思を明確にしていないが、もう決断すべきだ。(引用)

■調査捕鯨敗訴/「文化」守りつつ政策転換を (4/3,河北新報)
http://www.kahoku.co.jp/editorial/20140402_01.html

 ただ、今回の判決で捕鯨に向けられる視線が厳しくなるのは必至で、国際的な批判にさらされながら調査が続けられるかどうかは疑わしい。
 数年前、国際捕鯨委員会で日本が調査捕鯨を停止する代わりに、捕獲数を大幅削減した上で沿岸や南極海で事実上の商業捕鯨を認める案が出され、各国が前向きに議論したことがある。
 南極海の調査捕鯨から全面撤退し、その代わりに伝統文化とも深く関わる沿岸商業捕鯨の再開に道を開く案を提起する。そうした政策転換もあっていい。(引用、強調筆者)

■[調査捕鯨敗訴] 根本から見直す機会に (4/4,南日本新聞)
http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201404&storyid=55918

 そもそも捕鯨国と反捕鯨国の勢力が拮抗きっこうし、不毛な対立に終始しているIWCの現状をみると、商業捕鯨の再開は望めそうにない。国内では鯨肉離れが進み、ビジネスとして成り立つ見込みも薄い。
 捕鯨政策はとうに曲がり角にきていたといえる。今回の敗訴を根本から見直す機会にすべきだ。(引用)

 ただ一紙、ポエムを2日連続で声高に唱えた産経は、まあサンケイですから・・・

 インターネットメディアになると、熱烈な捕鯨サークル応援団のばら撒くゴミの割合がやや高くなり、サンケイと変わらず斜め方向に思いっきり捻じ曲がった解説もチラホラ。
 しかし、オンラインの論評の中でも、コラムニスト小田嶋氏のコラムが光っています。熱烈な鯨肉ファンに反発を受けることを覚悟のうえ、中途半端に彼らに媚びることなく、ストレートにご自身の考えを述べられており、若い世代を中心に、脳がベーコン化していない日本人の多数が共感を持てる内容です。日経BPのID持ってる方は必見!


■クジラの凱歌|小田嶋隆のア・ピース・オブ・警句
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20140403/262310/


 振り返ってみれば、当の捕鯨サークル・日本政府関係者も、筆者を含むウォッチャーにとっても、予想だにしなかった判決をICJが下した一番のポイントは、ここにあるのではないかと、筆者は思うのです。
 すなわち、私たち日本国民の大半が、程度はどうあれ、調査捕鯨がいかがわしい代物だと感じていた、ということ。
 いかに御用メディアのNHKや産経が、あたかも北朝鮮の統制報道のごとく、国内の捕鯨礼賛派の声ばかりを取り上げ、批判の声を封じ込めようとも、国民の大半が冷静に判決を受け止めるであろうことを、ICJ判事たちは確信していたのでしょう。


 翻って、本当に残念でならないのは、安倍首相と自民党捕鯨議連の反応です。詳細はTogetterをご参照。
 これでは本当に世界の恥

 族議員たちのぶち上げた脱退の主張は非現実的の一言に尽きますが、身内(票田)を意識したくだらないパフォーマンスによって、確定した司法判断にケチが付けられることはあってはなりません。

 これから日本に求められるのは、真摯な反省の姿勢です。
 かつて、米国が内々に持ちかけたり、IWCでも外部専門家を招いて歩み寄りが促されるたびに、日本は唯我独尊の姿勢を貫き、強硬に突っぱね続けてきました。
 日本国民にとっても決して小さくない財政負担を敷いた、科学を擬装した商業捕鯨の延命工作が、こうして脆くも崩れ去ったいま、潔く進退を決するのが、日本人らしさではないのですか?


 日本がやるべきことについて。
 まず、北西太平洋調査捕鯨(JARPNU)について、「今回の判決とは無関係」の一言で済ませず、JARPAUと同様の問題点が存在することは明らかなのですから、自らの手で徹底的に検証することです。本来なら休止が望ましいところですが、最低でも今漁期については大幅に捕獲数を削減すること
 もし、自制心を働かせ、エゴイスティックな振る舞いを改められなければ、そのときは、米国等に北太平洋での調査についてもICJの判断を仰ぐことになりかねませんよ。そしてまた、日本の脱法姿勢は、判事たちの心象をさらに一段と悪化させるであろうことは、想像に難くないでしょう。
 モラトリアム成立時と同じく、外圧によってしか解決できないとすれば、日本人としては無念の一言に尽きますが。
 そして、南極海からは完全に撤退すること。ICJで日本側証人のノルウェーの鯨類学者、ワロー氏が正直に「less than 10」と認めたとおり、また条約そのものが起草時に想定していたとおり、許容範囲は年間数頭です。
 「生態系の解明」を掲げ続けるのであれば、科学的にナンセンスな4鯨種モデルは放棄し、カニクイアザラシ等鰭脚類、ペンギン等海鳥各種、魚、イカ等を含むオキアミ捕食者について、等しい精度で致死ないし非致死の調査を行うこと。いま致死調査を優先する必要があるとは思いませんが・・
 ICJでもこれ見よがしに成果として自慢した、「クロミンククジラの脂皮厚減少の発見!」も、単一種のみの調査では、それがいかなる環境変化の応答なのかという肝腎な答えが得られません。STAP細胞と同じ
 有害物質汚染の調査も、「薄く広く」がこの分野の常識。GPJも声明で指摘していますが、本物の生態系調査・環境調査こそがいま南極圏で求められているのです。


 ようやく花道が用意されました。
 いまなら、「お疲れ様」と関係者の労をねぎらうことができます。
 日本は全国民の雇用が完全保障された共産主義国家ではありませんが、復興予算流用とは異なり、国が関係者に補償することに対しては、筆者のような捕鯨反対派も含め、異を唱える人は日本には一人もいないはずです
 いまなら、国際社会も「日本は英断を下した」と勇気を讃えることができます。
 これ以上、みっともない真似をするのは、世界にをさらすのは、終わりにしましょう。
 いまこそ南極海捕鯨から撤退を!

posted by カメクジラネコ at 21:53| Comment(8) | TrackBack(0) | 社会科学系

2014年03月29日

調査捕鯨に貢がされた「もうかる漁業」補助金

◇捕鯨ニッポンの深い闇──おかげでウハウハ、調査捕鯨に貢がされた「もうかる漁業」補助金

■Press Release 2014/13 The Court to deliver its Judgment on Monday 31 March 2014 at 10 a.m.
http://www.icj-cij.org/docket/files/148/18094.pdf

■土俵際の調査捕鯨 国際司法裁、31日判決 (3/26,朝日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11049088.html
■調査捕鯨、科学か商業か 国際司法裁、31日に判決 (3/28,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2701Z_X20C14A3PP8000/
■Big threat to Japan whaling: Declining appetites | APMobile
http://m.apnews.com/ap/db_306485/contentdetail.htm?contentguid=cDVDpbVo

■そろそろそろそろ国際司法裁判所の判決が|ika-netブログ
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2014/03/post-2f85.html
■03/10/14 Campaign to Alert About Ruling of the Century for Whales
http://www.ccc-chile.org/articulo-15-1112-031014_campaign_to_alert_about_ruling_of_the_century_for_whales.html


 いよいよ秒読みの段階に入ったICJ(国際司法裁判所)調査捕鯨裁判・捕鯨ニッポンVSオーストラリア&ニュージーランド。
 26日の朝日はやや大きな扱いで、一般の読者がわかるよう、調査捕鯨の現状をコンパクトにまとめた記事になっています。
 一方、日経は朝日と趣向がガラリと異なり、判決の予想がメイン。残念ながら、少々認識不足というのが筆者が受けた印象。
 両記事へのツッコミについては拙ツイートをご参照いただくことにして、ここでは朝日記事にあった注目すべき情報について、取り上げたいと思います。
 それがこれ↓

省エネ漁業にする制度を「特例」として適用され、年45億円を12年度から3年間受け取る。(引用〜朝日記事)

 何しろ庶民には縁のない桁なので、どうにも頭がついていきませんけど、それでもこの数字に注目しないわけにはいきません。庶民としては。
 これまで調査捕鯨に対しては、SS対策を主な名目とした円滑化事業という呼称で予算がつけられていました。当初は年約3億円でしたが、やがて約8億円に、近年では年約11億円にまで膨らんでいます。
 ここに、東北大震災のあった2011年、被災地復興を名目とした補正予算に便乗する形で、調査捕鯨事業安定化推進費なる予算が付け加えられます。その額、約23億円
 震災復興予算の流用に対しては、従来から捕鯨問題に取り組んできた市民団体のみならず、これまで捕鯨に同情的だったはずのマスコミからも、いっせいに批判が巻き起こります。詳細はNGOの発信、拙過去記事をご参照。
 その後、捕鯨サークル(水産庁&鯨研/共同船舶)もさすがに懲りた──かと思いきや、あまり表沙汰にならないよう別のカネの出所を求めました。
 それが、漁業構造改革総合対策事業、いわゆるもうかる漁業&竢赴焉B
 その金額について詳細は不明でした。
 元水産参事官の言じゃないけど、環境テロリストの妨害を口実に、法制定前から特定ヒミツ扱いだっただけに、審査の過程は完全非公開。税金を元手にした基金であるにもかかわらず。
 23億でさんざんたたかれたのだから、引け目を感じて多くても10〜20億円くらいだろうと(それでも十分大きな金額ですけど)、筆者はにらんでいました。過去記事にあるとおり、当時の水産紙報道でも15〜20億円程度という見方。
 ところが、蓋を開けてみれば、流用で非難されたハズの震災復興予算23億円のほぼ2倍もの額。
 3年間のトータルの金額の間違いじゃないかと、最初は目を疑ったほどです。朝日の小山田記者はこれまでの実績もありますし、APの記事もこの金額を裏付ける格好ですから、間違いないでしょうけど。
 厚顔無恥も、ここまでくれば脱帽するしかありません。


 が・・実は驚くのはまだ早すぎるのです。
 東北の被災者をダシにし、彼らのために使われるべき税金を赤字解消というエゴイスティックな目的でふんだくった捕鯨サークルは、同様の手口で、またしても政治的な弱者を足蹴にしていたのです。
 他の犠牲者とは、他でもない中小の漁業者。
 苦境にある東北の沿岸漁業救済のために設けられた「がんばる漁業」に一部の事業を移した結果、60億円分の余剰が生じた件については、以前のブログ記事でも取り上げました。その空席の3/4が調査捕鯨に当てられたことが、今回発覚したわけです。
 以下はもうかる漁業の受付機関となっている水産庁の外郭団体、水産業・漁村活性化推進機構(水漁機構)の資料。下の二つは水産庁。


■平成21年度補正予算において設けられた基金の執行状況等について
 基金名:水産業体質強化総合対策事業基金|水漁機構
http://www.maff.go.jp/j/budget/pdf/1800225-1.pdf

■平成24年度水産関係予算概算決定と税制のポイント|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/budget/pdf/24_point2.pdf
■漁業構造改革総合対策事業|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/budget/23_hosei/pdf/111226_kouzou.pdf


 45億円に該当するものが見当たりませんが、上半期・下半期で分散したのかもしれません。4月の21億円と3月の24億円が足すと45億円。怪しいですね・・。事業実施者数を見ると、やや辻褄が合わない感じですけど。
 1事業者当りの平均補助金額はこの’12年度で5千5百万円ほど。鯨研/共同船舶への補助は単年度でその80倍
 最後のページに国庫補助金の総計がありますが、基金創設時の2009年度に積み立てられた額が約50億円。トータルで約500億円ほど。
 海面漁業生産の1%に満たない捕鯨業に分類される(ほんとは漁業じゃなく科学調査のハズだけど!)調査捕鯨への補助が、いかに大きな割合を占めるかがわかります。
 同支援事業の執行額は、'11年度の計約189億円から、翌'12年度には約174億円と15億円減。震災復興を目的とするがんばる漁業に移った分が60億円なので、その差は45億円
 ぴったりですね・・。
 KKPの話がまとまった1年前の4次補正で新たに積み増されたのが138億円
 45億×3年間で、135億円・・。
 はたして、要求時に調査捕鯨への梃入れまで念頭に置いていたのかはわかりませんけど・・。いずれにしろ、増資分が捕鯨サークルにほぼそっくり飲み込まれた格好です。
 その後、同基金への国庫からの増資は減っていきます。'12年は本予算・予備費・補正合わせて110億円、’13年は20億円+補正25億円。これも合わせて45億円になりますけど・・。
 一方で、沿岸漁業の体質強化のために設けられた水産業体質強化総合対策事業基金は'12年4月で廃止。漁場機能維持管理事業基金は'10年7月に廃止。
 八方塞がりの状況に喘いでいる沿岸の漁民を差し置いて、捕鯨サークルだけが破格の厚待遇を受けているということです。


 高齢化、燃料高騰、汚染に乱獲に温暖化、流通・小売業界との歪んだ関係、無知な消費者、無策の水産行政・・・・
 この現状を打破し、沿岸漁業の明日を切り開こうとする真摯な若者に、援助の手を差し伸べるのであれば、誰も文句はありません。
 しかし、残念ながら、水産庁が「漁業者のため」と嘯き、導入してきた基金や制度の運用状況を見る限り、本来必要とされる対象ではないところに、手厚い支援が施されているといわざるをえません。
 日本の水産業界・水産行政を堕落させた張本人たる捕鯨の亡霊がいつまでものさばり、それと引き換えに、海も、漁民も、未来がますます見えづらくなるばかり。
 国民、そして漁業者の皆さん、このような不公正を本当に許していいのですか?


 
 朝日記事の指摘したように土俵際の崖っぷちにまで追い詰められた日本の公海調査捕鯨、結果はICJの判決次第ですが、赤字のほぼ9割を国に肩代わりさせることまで平然とやってのける捕鯨サークルのこと、正直筆者は不安を拭えません。気がかりなのは、農相の地盤下関市を中心にした母船更改につながる動きですが・・
 プルトニウムとクジラの闇については、拙小説『クジラたちの海』の続編『the next age』の七央人編を中心に詳細に描いたつもりですが、現実はフィクションをとっくに超えてしまっているかもしれません・・・


参考リンク:
−漁船漁業構造改革の検証|東京海洋大学・濱田氏
http://www.gyokei.sakura.ne.jp/D.P/Vol4/No4_1.pdf
−r氏提供情報|Yahoo!BBS
http://textream.yahoo.co.jp/message/1834578/a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa?comment=68731
−マスコミが伝えきれない調査捕鯨への復興予算流用問題(拙HP)
http://www.kkneko.com/ryuyo.htm
−東北の被災地を足蹴に復興予算をせしめた厚顔無恥な捕鯨サークル(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/59017147.html
−調査捕鯨の正体は「儲かってないけど儲けたい商業捕鯨」だった(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/58981151.html
−拙ツイログ
http://twilog.org/kamekujiraneko

posted by カメクジラネコ at 22:13| Comment(10) | TrackBack(0) | 社会科学系