2013年06月28日

ICJ調査捕鯨訴訟の核心─憲法とICRW/御用新聞のトホホ記者・佐々木氏の珍解説

◇ICJ(国際司法裁判所)調査捕鯨訴訟の核心──日本国憲法とICRW(国際捕鯨取締条約)

 今回の調査捕鯨「日本VS豪州・NZ」国際裁判の争点は、日本の調査捕鯨が、ICRW8条で認められるところの調査捕鯨に該当するか、です。
 時代状況の変化に応じて、改めて「調査捕鯨(特別許可捕鯨)とは何ぞや?」ということが再定義されなければなりません。そこが今回の訴訟の意義であり核心です。
 国際条約のもとで加盟国に認可権が与えられる「科学研究目的の捕鯨」として、相応の高い♂ネ学性を有しているか否か? 科学的研究を主*レ的とする行為であることが瞭然か否か? そうしたことが、外部の司法専門家の目から改めて問われなければなりません。 
 国際ルールが時代状況に合致しない場合、すなわち商業捕鯨と実質的に変わらない調査捕鯨が継続的に行われるという、条約起草時にまさしく想定外だった事態が起こり、条約の実効性が損なわれるに至った場合、本来なら条文そのものを改正すべきなのですが、政治的な事情でそれが阻まれるなら、次善の方策として、法解釈と運用を改善≠キることで対処する必要があります。
 日本の調査捕鯨が、商業捕鯨禁止を受け、延命を図るために「科学調査」を隠れみのにした行為であるのは、もはや疑念の余地がありません。科学調査活動の結果「副産物」の鯨肉が生じ、処理しているのはなく、主産物たる鯨肉を収獲する活動のために、付随的にちこっと間に合わせのサンプル収集をやっているだけです。
 必要とされない、レベルの低い科学を副次的目的として行われる商業捕鯨、それが日本の調査捕鯨/特別許可捕鯨なのです。
 言葉のうえでは、日本の調査捕鯨は(一応ギリギリ)科学"的"行為」であり、なおかつ「科学を隠れ蓑にした行為」なのです。そして、どちらがより実態を表しているかが問われるわけです。
 中身はほぼそのまま、商業捕鯨から調査捕鯨へ。そして、今回の裁判を機に、日本は「特別許可捕鯨」の名称に置き換えようとしている気配がうかがえます。科学性を追及されると分が悪いものだから・・。
 なんてったって、「儲かる漁業」補助金もらっちゃったもんね!

 そう……この問題の本質は、日本の憲法にも通じているのです。
 法のヒエラルキーの最上位に位置する憲法において、「戦力・軍隊の永久放棄」を謳いながら、事実上の軍隊である自衛隊の存在を認めるのと同じこと。戦力の定義が「足の長さ」になったり、国民の常識の感覚が通用しないのと一緒。もっとも、日本の平和憲法は趣旨からいえば逆の不適合ですが・・。
 時代状況に即して、法律には法律としての定義の見直しがあっていいわけです。
 ICRWにおける調査捕鯨も。そして、ICRWの前文も。「whaling」の定義も。
 こんなことをいうと、「日本の立場を有利にするだけでは?」と言われそうですね(--; そして、「護憲派としてどうよ?」とも・・。
 調査捕鯨のロジックと自衛隊のロジックをそのまま対置させてみましょう。ロジックとしては逆なのですが、こういった形で条文を解釈するのはアリだということです。


 憲法9条  − 戦力不保持  − 時代状況に合わせて、実質軍隊の自衛隊は戦力に含めない
 ICRW8条 − 調査捕鯨OK − 時代状況に合わせて、実質商業捕鯨の日本の調査捕鯨は調査捕鯨に含めない


 正直、筆者は「自衛隊"も"要らない派」なので確かに悩ましいのですが……。平和憲法の下で自衛隊の存続が長年許されてきたのは歴史的事実です。そして、法解釈で凌いでこれた以上、別に今更変えなくていいわけです。自衛隊はOKの方の護憲の立場なら、現実との整合性は十分取れていることになります。
 改正は危険なだけなので、改正せずに平和を探求する。
 ICRWは、条文を100%額面どおりに受け取るなら、やはり豪州側に不利といわざるを得ません。逆に、今回の訴訟で豪州が勝つ唯一の道は、調査捕鯨の再定義しかありません。
 改正が実現不可能(危険もある)なので、改正せずに海洋生態系の保全を探求する。
 同様に、WW(ホエールウォッチング)等クジラという資源を非致死的に有効利用する産業をすべて「whaling」に含める再定義化も可能でしょう。現実に合わせて。

 豪州のICJ提訴がリスクの低くない賭けであることは、以前から各所で指摘されてきました(筆者を含め)。
 しかし、走り出した以上、最善の結果≠求めなくてはなりません。やっちまった以上、豪州には責任を取って、全力で成果を挙げてもらわないと困っちゃいます。
 ICJでは環境問題に関わる係争が増えているとのことですし、判事の皆さんは、高所から現実を見極める視点を持ち合わせているはずです。ぜひ、国際社会が受け入れられる、時代状況を反映した条約の法解釈を提示してください。日本を含む世界中のたくさんの市民が、踏み荒らされた南極の自然に真の平和が訪れることを待ち望んでいます。


参考リンク:
−ICJ調査捕鯨訴訟解説(拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/69890851.html
−クジラの敵はオバマとラッド(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/38814709.html
−ミナミマグロ事件の事例検証(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/34240502.html



◇御用新聞産経のトホホ記者・佐々木氏によるICJ(国際司法裁判所)調査捕鯨訴訟の珍解説


■捕鯨裁判はギャンブル@豪紙記者、アンドリュー・ダービー |Cool Cool Japan !!!
http://sasakima.iza.ne.jp/blog/entry/3116286/


 先に目に余るヒドイ日本語を直してあげましょうか・・。書いた本人の意図を汲んであげる形で。


誤: 反捕鯨国のメディアは、シー・シェパードのポール・ワトソンを初めとする反捕鯨団体により、虚偽の情報広めており、そうした環境元で過ごした裁判官たちの先入観をいかに排除するかがポイントになるでしょう。(引用)


正: 反捕鯨国のメディアは、シー・シェパード(ポール・ワトソン元代表)を初めとする反捕鯨団体の発信する虚偽の情報を広めており、そうした環境の元で過ごした裁判官たちの先入観をいかに排除するかがポイントになるでしょう。


 佐々木氏は文章を扱うプロのはずの新聞記者。いくら個人ブログとはいえ、ここまでてにをはがボロボロで、よくやっていけるものだと呆れ果ててしまいます。産経新聞に所属する記者の質の問題ですが・・

 アップする前に確認したら、さすがに修正されていましたね。ここまでひどい文を最初から書くのも、掲載前にきちんと確認しないのも、プロのマスコミ人としてはいただけません。団体と個人の区別がつかないおかしな文章なのは変わってないし・・。
 グーグルで"反捕鯨国のメディアは、シー・シェパードのポール・ワトソンを初めとする反捕鯨団体により、"で検索すると、修正前の文章が以下のように表示されます(キャッシュが残っている間)。

 

sasaki.png

 市井のネトウヨが相手ならかまう必要もない話ですが、いくらトホホ記者の四流記事とはいえ、大手新聞社記者の発信情報として一定の影響力がある以上、ここは誤解を招かないよう解説の解説≠ェ必要でしょう。
 まず、先に添削した一文については、内容も含めてジャーナリストらしい公平な視点に基づいて書き直すなら、以下のようになるでしょうね。


 ICJの裁判官は16人。そのうち1人は捕鯨国日本の出身、10人は反捕鯨国出身の裁判官です。
 捕鯨国のメディアは捕鯨擁護の一方的な論調を伝え、反捕鯨国のメディアは捕鯨批判の一方的な論調を伝える傾向にあります。そうした偏った情報環境のもと、捕鯨国・反捕鯨国出身のICJ判事は、一定の先入観を持ち合わせているかもしれません。双方の先入観をいかに排除するかがポイントになるでしょう。


 さらに、公平な視点のみならず、背景となる事実に基づけば、元の文章が原型を留めないほど書き直しが必要になります・・
 まず、ICJ判事は、他の国連機関のすべての職員と同様に、いずれかの国の出身者であり、出身国の影響を受けてはいるでしょう。しかし、ICJ判事は、一国の司法担当者以上に、公平性を担保するべく、個人の価値観・信条を自ら排除する能力の高い国際法のプロ中のプロが就く仕事です。小和田氏やNZ出身のキース氏は、自国ビーキの判断にならないよう、強い自制力を発揮することでしょう。でなければ、最初からICJ判事たる資格はありません。
 もちろん、限界はあるでしょうが、それは周知のことであり、なおかつ捕鯨問題に限った話ではありません。すべての事案に対していえることです。出身が紛争当事国・同盟国・友好国かどうかもさることながら、戦争に反対か、核に反対か、信教、保守かリベラルか、経済政策におけるスタンスの違いもすべて、個々の係争の処理に際して影響を及ぼすとはいえるでしょう。
 大体、捕鯨に対する考え方にしたって、いわゆる反捕鯨国の中でも個人によってそれぞれです。誰もが豪州政府の主張と一から十まで同じわけではありません。反捕鯨国、当の豪州内でさえ、少なからぬICJ提訴への批判があったことからも明らかです。そして、それは日本においても同じことです。
 マスコミの情報からも、出身国の政策からも、最も注意深く距離を置いているはずのICJ判事が、「先入観で動く」と頭から決め付けているのは、ICJと判事たちに対してきわめて失礼な話です。
 佐々木氏の主張は、以下のように言い換えることができるでしょう。


 日本以外の国では、反捕鯨団体をバックにしたマスコミによって情報が統制され、国民はすべて完全に操作され、同じ価値観に縛られている。ICJ判事とて例外ではない。
 

 これはジャーナリストである佐々木氏の、驚くべきジャーナリズム観の反映ともいえます。
 そのジャーナリズム観とは、次の2つのいずれかでしょう。


 A.国民は容易に操作・洗脳してしまえる。マスメディアにはその能力がある。
 B.日本人以外の民族は、容易に操作・洗脳してしまえる。
 B’.日本人以外の民族は、(捕鯨問題についてのみ)容易に操作・洗脳してしまえる。


 まあ、Aについては、ある意味で筆者も認めざるを得ません。何しろ、国際PR/日本捕鯨協会の大手新聞編集委員を抱きこんだ反反捕鯨世論醸成の輝かしい業績を、この目でしっかり見ていますから・・
 戦前の軍国日本や中国・北朝鮮のみならず、現代のどの先進国でも、マスコミと政治権力の癒着、情報コントロールは普遍的な課題です。米国機関の盗聴問題然り。日本の原発・沖縄米軍基地問題における世論誘導も然り。
 しかし、すべての国、すべての問題で、相当数の流されない市民もいることもまた事実です。マスコミを過信・妄信せず、一定の距離を保つ免疫力を養えば、誰でもできることです。日本人であれ、それ以外の国の市民であれ。
 自身がジャーナリストでありながらAというのは、相当の自負とも受け取れます。豪ダービー氏のように脇が甘く公平さを捨てきれない海外記者と違い、自分たちは抜かりなく操作できているのだ、との。それこそ、情報の受け手である市民に、自国の報道のあり方を顧みる余地さえ与えないほどに。
 産経新聞関係者は佐々木氏に限らず、安倍首相に擦り寄ってせっせと世論を煽った成果がいま着実に上がっていると、肌で実感しているのかもしれませんけど・・
 一方、Bだとすると、佐々木氏は日本人と反捕鯨国(国際PR梅崎氏曰く「アングロサクソンの国々」)との差異ばかりに目がいってしまうタイプだといえるでしょう。


 日本人は全員健全な情報リテラシーを有する優れた民族で、日本のマスコミは常に公平公正な客観報道を心がけるジャーナリズムのお手本だが、反捕鯨国の国民とマスコミはそうではない


 こう言いたいわけです。
 要するに、わかりやすい右翼的思想ですね。コンプレックスの裏返しである欧米に対する優越感に支えられ、ニンゲンとしての普遍性より日本人の特殊性に重きを置きたがる人たち。
 B’は、反捕鯨国も捕鯨問題以外では日本と変わらずマスコミも国民も健全だが、捕鯨問題に限っては「マスコミが騙し、国民がみんな騙される」特殊な状況にあるという、合理的でない見方。何しろ、それらの国々にとっては日本の天皇制以上に、クジラが触れてはならない神聖な対象だということになっちゃいますからね・・。なので、とりあえず考慮しなくていいでしょう。
 もっとも、佐々木氏は他の問題ではここまで欧米諸国に噛み付かず、産経記者らしい米国シンパぶりも見られるので、かなりB’的に見えますが・・

 裁判の論点を一言で言うのなら、日本の調査捕鯨が科学的行為なのか、それとも、商業捕鯨が禁止され、延命をはかる上で「科学調査」を隠れみの行為なのか、ということです。
 国際捕鯨取締条約8条には、加盟国が調査活動を行う権利が認められています。日本側は淡々と、ルールにのっとった行為であることを訴えれば、必ずや光明が差すはずです。(引用)


 相変わらず日本語がグダグダですが・・。この二者択一の表現は、佐々木氏が捕鯨問題の文脈を理解していないか、すり替えているか、いずれかを意味しています。すり替えだとしても巧妙ともいえませんが。
 繰り返しになりますが、言葉のうえでは、日本の調査捕鯨は「(一応ギリギリ)科学"的"行為」であり、なおかつ「隠れみの行為」なのです。そして、どちらがより実態を表しているかが問われるわけです。詳細については、先のトピックで解説したとおり。


 豪州側は多額の資金をかけて、今回の裁判に臨んで来ているようです。(引用)


 SSの免税措置云々についても同様ですが、佐々木氏はまるで自分が米国や豪州の納税者であるかのような口ぶりですね・・。余計なお世話です。
 日本側の関係者は、海外から多数の証言者を確保し、「万全の体制で臨んでいる」と再三公言しています。今回のICJ訴訟に一体いくらの予算が使われているのでしょうか?
 実は、日本側の主要な主張の一つが「ICJの管轄圏外」。応じる必要なかったけど、わざわざ応じてやったんだよと、そんなことまで日本側の提出文書には書かれているのです。あえて税金を無駄にしたということ。
 上掲の佐々木氏のような批判は、日豪の双方の予算を比較して、初めて意味を帯びることです。日本が今回の訴訟でどれくらいの予算を注ぎ込んだのか、なぜ問題提起することをしないのでしょう? 新聞記者でありながら、どうしてそうした視点が抜け落ちてしまうのでしょう?
 当たり前のことですが、日本の納税者が関心を持ち、マスコミが追及しなければならないのは、日本政府の予算が公平・公正に使われているかどうか。免税制度に関心があるなら、宗教法人の問題でも取り上げればいいものを。
 今回の訴訟費用も含め、毎年毎年調査捕鯨関連予算と水産ODAに巨額の費用が使われていることを、佐々木記者はこれまで一切追及しようとはせず、ひたすらよその国の予算の使われ方の心配ばかりしてきました。これじゃ、日本の震災復興予算が原発温廃水養殖事業や鯨研の赤字補填に回されていることを、豪州のダービー記者にも思いっきり突っ込んでもらわないといけませんね・・。


 ICJ判事までもが先入観に駆られると注意を促していた佐々木氏ですが、そこから先ガラリと打って変わったように、当の豪州でICJ提訴に批判が噴出していると言い出します。豪州国民はICJ判事に至るまでSSCS発の虚偽の情報に振り回されていると言いながら、豪州政府がSSCSを突き放しているとも。オージーの皆さんは、政府の言うことに一切耳を貸さず、SSCSの言うことばかり真に受けていることになっちゃいますね・・
 今回のICJ提訴への豪内外の批判も、先述のとおり今更な内容です。豪を含む各反捕鯨国のSSCS非難も。


 佐々木氏はこのブログ記事のタイトルに同業者の名前を担いでいます。
 虚偽の情報を広めている反捕鯨国メディアのジャーナリストとして、あえてダービー氏を名指ししているわけです。
 その下はダービー氏の記事の引き写し。
 他人からの借り物で、産経読者に重なる捕鯨擁護論者たちの耳に心地よいことばかりを取捨選択して提供する、これが佐々木記者のスタイルなのかもしれません。こういう具合に。


−大手新聞社外信部記者でも誤訳をするのだ|ドイツ語好きの化学者のメモ
http://blogs.yahoo.co.jp/marburg_aromatics_chem/62734352.html
−パクリ捕鯨擁護記者サンケイ佐々木氏(拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/34692147.html
−捕鯨擁護記者のビックリ仰天パクリ記事(拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/34841650.html


 ダービー記者が単なる取材源としてワトソンと交流があるのか、友人なのかどうか知りませんが、SSCS本で印税ガッポリの佐々木氏ほど持ちつ持たれつの関係ではありますまい。


 いつもの老練な文章による強気の主張はどこへやら。少し不安げな論調で、「実は今回の裁判はギャンブルに値する」と報じています。(引用)


 よっぽど含むところがあるのかしら? 主観的表現が散りばめられていますが、ダービー氏の記事を読めばわかるとおり、自国の政府に媚びることのない、非常に客観的で冷静な分析を提示しています。ワトソンの友人だとしたら、それこそ見上げたジャーナリストといえるでしょう。
 対する佐々木氏はどうでしょうか? 「稚拙な文章による強気の主張」ばっかり。ダービー氏と比べるのは失礼なほど。


 ウィキリークスに関しては、以下の拙記事と佐々木記者の記事を対比してみてください。
 タイムリーな時事ネタでもって引っ掛けようと思ったのでしょうが、大間違い。本丸の辺野古移設交渉をめぐる外交文書が公開され、狙い撃ちなどまったくしていないのは皆さんご承知のとおり。ウィキリークスは以前アイスランドにサーバーを置いてましたし、ノルウェーでノーベル平和賞候補に推薦もされました。ご存知のとおり、ともに捕鯨国。
 佐々木氏はよほど分厚いビン底メガネを通してしか、世の中を見ることができないタイプなんでしょうね・・


−ウィキリークスによって明らかになった赤松元農相の問題発言|JanJanBlog
http://www.janjanblog.com/archives/38718
−捕鯨問題を“狙い撃ち”したウィキリークス ('11/1/11,産経)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110111/amr11011107400036-n1.htm
−ウィキリークスが捕鯨問題を狙い撃ち アサンジの意向か? |Cool Cool Japan !!!
http://sasakima.iza.ne.jp/blog/entry/2106783/


 実際、ダービー氏とは比較にならないほど情熱的≠ノ、ひたすら偏向した情報ばかり流しているのは、産経佐々木氏に他なりません。
 ジャーナリストとして長らく捕鯨問題を取材してきた佐々木氏が、日本の調査捕鯨政策の問題点を自ら具体的に指摘したのを、筆者は一度も見たことがありません。SSCS(シーシェパード)には興味がないし、捕鯨問題に関する一次情報があるとは思えないので、佐々木氏の著書をまともに読んだことはないのですが・・
 筆者が知っている唯一の例は、以下の一言だけです。


 捕鯨推進か捕鯨反対か、調査捕鯨は適切な活動なのか、そして、親方日の丸をバックにした捕鯨産業のあり方は?(引用)


−【SS続報】世界のメディアが報じたシー・シェパード、レーザービームの写真@第2昭南丸カメラマン撮影  |Cool Cool Japan !!!
http://sasakima.iza.ne.jp/blog/entry/1385020/


 捕鯨問題に関わり、著書も発刊した新聞記者として、しれっとクエスチョンを投げかけながら、調査捕鯨が適切な活動なのか、自らの目で取材し、市民に対して提示した形跡がまったくありません。「親方日の丸をバックにした捕鯨産業」なんて、ずいぶん死語的な表現だけど・・
 佐々木氏は、たとえ目の前にネタが転がっていたとしても、日本の捕鯨/調査捕鯨は善であるという強固な「先入観」故に、何も目に入らず素通りしてしまう人なのでしょう。
 市民ブロガーの方や海外記者のネタをパクってばかりいることも併せ、ジャーナリストとしての資質を大いに疑わざるをえません。


 一点、筆者も佐々木記者と意見を一致する点があります。
 仮に今回のICJ裁判で豪州が負けた場合、捕鯨ニッポン対SSCSのバカげたプロレスが果てしなく続くことになりかねません。
 ま、SSCS本をまだ出し続けられる佐々木記者にとっても、その方が美味しい話かもしれませんね。利権という意味では、巨悪の捕鯨サークル、中悪のSSCSに比べ、SSCSネタ本で本業以外に印税を稼いでいる御用記者は小悪にすぎませんけど・・・


 佐々木氏のプロレス本が売れようが売れまいがどうでもいいことですが、調査捕鯨の固定化だけは絶対避けなければならないことです。豪州・NZ政府にはベストを尽くしてもらわなければなりません。

posted by カメクジラネコ at 20:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2013年06月23日

ICJ調査捕鯨訴訟解説/キツネとクジラ

◇クジラ国際裁判、捕鯨ニッポンの強気は慢心? 勘違い?

■調査捕鯨:国際司法裁で26日から口頭弁論…南極海対象 (6/23,毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20130623k0000e030130000c.html
■日本、調査捕鯨の正当性主張へ 国際司法裁で手続き (6/18,河北新報)
http://www.kahoku.co.jp/news/2013/06/2013061801001987.htm
■日豪、調査捕鯨で裁判へ…国際司法裁 (6/14,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130614-OYT1T01552.htm


■【在オランダ日本大使館】イルカ漁などに伴うデモの喚起 (6/19,オランダニュース)
http://www.portfolio.nl/article/show/5324


■TPP首席交渉官、鶴岡外務審議官を軸に調整 (3/20,産経)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130320/plc13032016050009-n1.htm
■鶴岡公二|Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B6%B4%E5%B2%A1%E5%85%AC%E4%BA%8C


 南極海での調査捕鯨をめぐり、オーストラリア政府が国際司法裁判所(ICJ)に日本政府を訴えた国際クジラ裁判。いよいよ今月26日に審理が開始されることになり、何紙か報道もされています。
 調査捕鯨の実態≠ヘ9割9分商業捕鯨(詳細は記事下掲のリンク資料@他をご参照)。
 しかし、法律は原則として1本の線を引き、白か黒かをはっきりさせるもの。
 国際法のもとで、日本の調査捕鯨が9割9分贋物である以上、明確に「科学調査ではない」と断じるか、1分の理をもって「科学調査」と言い切ってしまうか──そこがこの裁判の注目ポイント。
 主張の要点は以下。


 豪州:
   A.殺さなくても調査はできる
   B.殺す数が多い
   C.鯨肉を売っている


 日本:
   A.殺さなくては難しい
   B.必要な数だ
   C.売っていいことになっている


 Aには二つのポイントがあります。
 まず、現行の改訂版管理方式(RMP)は、目視調査のみで捕獲枠を算出できるモデルを採用しており、捕殺調査はそもそも必要がありません。日本の調査捕鯨がやっているのは、あくまでオマケの調査(詳細は参考リンクC及びH)。しかも、捕殺調査に著しく偏った形でリソースが注ぎ込まれることで、繁殖海域の特定や、過去のバイアスの検証など、優先順位の高い作業がなおざりにされているのです。
 もう一点、いま野生動物の捕殺調査は日進月歩の発展を遂げています。殺さないのが当たり前の時代(詳細は参考リンクD)。水産資源学の分野における調査でさえ、以下のように「生態を乱さない」利点から、致死的調査から非致死的調査への切り替えを推進しようという動きがあるわけです。日本で、魚で、ですよ?
 長年にわたって要請され、提案されていながら、切り替えの努力を拒み続けてきた日本の水産庁・鯨研が、怠慢の謗りを免れないことだけははっきりしています。


−全自動ロボット、海底の魚を撮影 東大などのチーム (6/19,朝日)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201306190748.html


 上掲トップの毎日記事では「捕獲しないと正確な調査は難しく」とありますね。「捕獲しないとできない」ということがもはやできなくなっているわけです。
 ──できなくはないけど、難しいから殺し続けます──
 脆弱な南極圏の大型野生動物の調査に際して、そんな主張が罷り通る時代だと思っているのでしょうか?
 実際には、「難しい」という主張さえ誤謬があります。捕殺調査は、長期観察で得られる膨大な知識の宝庫を≠ずかなスナップショットのために破壊してしまう手荒でずさんな手法。例えば、その場限りの情報でしかない胃内容物調査は、バイオプシーによる脂肪酸解析より不正確。調査捕鯨では、銛によって胎児の組織などが破壊され、重要な情報が得られないことも。


 Bの数の問題については、日本側が致命的なボロを出しました。


−鯨類捕獲調査改革推進集中プロジェクト改革計画書
http://www.jf-net.ne.jp/fpo/gyoumu/hojyojigyo/01kozo/nintei_file/20121002_kujira.pdf


 23ページにご注目。「儲かる漁業」補助金を受けるにあたって、副産物の採算性をもとに生産量の目標が設定されたわけです。歩留まりを1頭当り4トンとすれば600頭ですか・・。この数字はJARPAU(南極海調査捕鯨)・JARPNU(北西太平洋調査捕鯨)を併せた年間の生産量ということになるのでしょうけれど。
 JARPAのTからUへの大増産も、売れない鯨肉が冷凍倉庫に直行して赤字を増やしただけで、科学的成果が倍増したとは到底いえません。千頭近い計画目標は、RMPで試算された日本の操業海域2海区における商業捕鯨捕獲枠に匹敵します。ランダムサンプリングで未成熟個体が多いことから鯨肉生産量はやや低くなりますが。
 ほとんど同じ数を獲って、商業利用に備えた事前の予備調査だなどという言い訳が通用するはずがありません。
 もともと、国際捕鯨取締条約(ICRW)の起草時に念頭に置かれていた調査捕鯨は、単発で数頭というレベルでした(詳細は参考リンクB)。日本の調査捕鯨は、まさに想定外の脱法行為なのです。


 CのICRW8条の問題については、同じくリンクB、E、Fをご参照。

 ま、赤字穴埋を優先して、「儲かる漁業」だと臆面もなく白状した時点で、副産物ではなく主産物だったことはバレバレです。

 上掲4番目のリンクに、ICJのあるオランダ・ハーグでのデモへの日本大使館による邦人向けの注意喚起があります。トルコやブラジルと異なり、オランダ市民が暴徒と化すことも、あるいは日本の大久保のように、日本人に対して「殺せ!」と罵声が浴びせられることもないはずですけどね・・・


 さて、ICJに向けた日本側の取り組みについて、お馴染み捕鯨業界の御用新聞サンケイさんが3月に報じた記事の内容を見て、筆者は首を捻りました。
 このICJ調査捕鯨訴訟を担当する鶴岡外務審議官が、TPPの首席交渉官やサミットの首相付シェルパ(首脳会談等をセットする事務方トップ)にも抜擢された豪腕と称される方だったからです。まさに局長級の大べテラン、事務次官になる日も近そうですね。「複雑な利害関係を豪腕でまとめるタフ・ネゴシエーター」という産経記事の表現は、Mr.捕鯨問題担当の元水産官僚で現政策研究大学院大学教授の小松氏を思わせます。小松氏には大変失礼ながら、渉外能力では氏や森下氏の上ということでしょう。
 もっとも、赴任先はインドネシア以北でほぼ北半球(Wikipedia)。TPPと同じく過去にもウルグアイラウンドの首席交渉官を務めたほか、国連代表代理や条約局長を歴任しているところを見ると、貿易・経済と国際法には強そうですが、捕鯨・水産分野は畑違いに見えます。
 国際法廷に日本がわざわざトップクラスの人材を送り込むのは、一体どういう了見なのでしょうか?
 というのも、TPPでの対米交渉(トレードオフ)とICJでの対豪対決は、性格をまったく異にしているからです。

 TPPは文字どおり政治の綱引き。族議員の票田と、同じく一連托生の財界、そして防衛面における最重要パートナー、まっこうから利害の対立する三者(あるいは二者)に対するパフォーマンスが求められる場。相容れない利害を調整するというより、体面と実利をイコールであるかに見せかけるテクニックが要求されるといったほうがいいのでしょうが・・。
 そう、ジャイアン(米国)に媚びるスネオ(日本)の台詞の台本を書いてきたのは外務官僚であり、米国とのパイプを押えることで民主党の脱官僚政治主導を粉砕したのもこの人たち。日本の中で誰よりも米国の利益を最優先で慮る彼らが、米国をねじ伏せる豪腕≠発揮するはずもありますまい。TPPの帰趨については、誰もが予想がついているはずです。
 米国にベッタリおもねりつつ、国内向けには善戦≠オたかに思わせる手腕こそが、ここでいう豪腕≠ノなるのでしょう。
 確かに、オーストラリアも、日本にとって経済・防衛両面で重要なパートナーであり、米国の次に大切なトモダチのハズ。しかし、ことこの問題に関しては、文字どおり対決であり、交渉の二字が出る幕はありません。残念ながら、その段階はすでに過ぎ去ってしまったのです。
 実際には、国際捕鯨委員会(IWC)の場で、米国と外部専門家のデソト氏を仲介役に現実的な落としどころを探る交渉は進められていたのです。しかし、日本側はその時点で調整能力の高い人材を充てることをせず、終始内向きで歩み寄りの姿勢を欠いていたため、折り合いをつけることができなかったのです。
 国際法廷で、豪腕の利害調整役が一体どのように腕を振るう余地があるのでしょう? 「本当は殺さなきゃならない南のザトウを、わざわざ殺さないでやるっつってんのに、豪がごねてやがるんだ」なんて口にしようものなら、判事の心象を悪くすることは請け合いでしょうに。


 ここで、「敗訴すれば南極海での調査捕鯨ができなくなる」という毎日記事の記述について捕捉しておきます。確かに、判決は当事国を法的に拘束するのですが、「判決を遵守させる機関」が存在しないため、現実には必ずしも判決通りになるとは限りません。
 代表例がニカラグア事件。いかにも米国らしい反応といえますが・・。核実験事件のフランスもICJの仮保全措置には耳を貸しませんでした。このとき、大気圏内核実験を中止するよう訴えたのは、今回日本の調査捕鯨を提訴したのと同じオーストラリアとニュージーランド。被爆国日本ではなく(詳細は参考リンクJをご参照)。
 ICJの事例や限界については、朝日GLOBE特集3ページ目をご参照(参考リンクI)。
 そういうわけで、仮にICJで南極海調査捕鯨中止命令が出たとしても(一審のみなので控訴審はなし)、日本が頑として従わないことも一応可能です。
 ただし、その場合は、日本は「南極のクジラを屠るために国際法規を無視するとんでもない国」だと、汚名を着せられることになるでしょう。そしてまた、南極の野生動物を殺し続けることが、日本にとって譲れない核心的利益であると、世界に対して声を大にアピールすることをも意味します。あたかも、1970年代当時の米国の反共政策やフランスの核政策のように。いまでいえば、中国の一党独裁やイスラエルのシオニズムのように。
 世界中の市民は、そこに戦前の拡張主義の亡霊の復活を見て取ることでしょう。

「判決は争った政府だけでなく、両国の一般の人たちも納得させ、法律の専門家の検証にも堪えられなければいけませんから」(ICJ所長ぺテル・トムカ氏〜参考リンクI)


 上掲のように、ICJという国際機関の性格を考えるなら、結論の範囲は自ずから限られてくるでしょう。ICJは、秩序を乱し対立を煽るために存在する機関ではないからです。
 豪側の詰めの甘さと、ICJの律儀さが、筆者にとっては不安要素です。
 仮に、ミナミマグロ事件のケースのように、白黒の結論を出したうえで、日本側に自制と譲歩を求める勧告を付け足した場合、日本政府・マスコミは国民向けに諌言部分を注意深く取り除き、誇らかに勝利宣言をして終わってしまうことになりかねません。
 逆の場合は、上記のように日本が暴発するリスクが伴います。


 日本の外交を司る専門家集団が、ICJの位置づけ、国際社会の動向を読むこともできず、大切なパートナー相手に「打ち負かしてやる」と息巻くばかりだとすれば、それはあまりにも情けないことです。
 外交政策の意思決定のプロセスが見えない(というよりあまりにも愚かなことを考えているように見える)程度が、戦前の状況を彷彿とさせるのが、何より恐ろしく感じるのです。

 ICJにはぜひ、可能な限り調査捕鯨の本質を明らかにする答えを提示して欲しいと願ってやみません。
 しかし、真の解決は、日本が自ら矛を収め、南半球の自然にまで強欲に食指を伸ばすのをやめることによってしか得られないのです。
 日米、日中の「win-win」もそもそもご都合的な見せかけですが、日豪の捕鯨法廷闘争に「win-win」はありません。
 勝ちも負けも要りません。
 南極の自然が平和を取り戻し、ニンゲンが自然に対する節度を取り戻す──それが求める答えであるべきではないでしょうか?


参考リンク:
@調査捕鯨の科学性を解体する
http://togetter.com/li/486896
Aミナミマグロ事件関連(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/34240502.html
B実態に見合わない国際捕鯨取締条約は改正すべき(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/25798112.html
C調査捕鯨は不必要or商業捕鯨は不可能(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/54058582.html
DペンギンバイオロギングVS調査捕鯨(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/46531519.html
E調査捕鯨の正体は「儲かってないけど儲けたい商業捕鯨」だった(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/58981151.html
F完全商業捕鯨化に向けKKP発進(拙HP)
http://kkneko.sblo.jp/article/60376356.html
G無価値に等しい調査捕鯨の科学性(拙HP)
http://www.kkneko.com/paper.htm
H調査捕鯨自体が否定した3つのトンデモ論(拙HP)
http://www.kkneko.com/jarpa.htm
I国際司法裁判所特集 (3/17,朝日GLOBE)
http://globe.asahi.com/feature/article/2013031400006.html?page=3
J紛争の平和的解決
http://itl.irkb.jp/il/gPecefulSolution.html



◇キツネとクジラ


■奇跡の原っぱ「そうふけっぱら」の豊かな自然を守ろう!|亀成川を愛する会
http://www.kamenari-love.com/
http://blog.livedoor.jp/kamenarigawa/

■「そうふけっぱらのキツネを守れ!」全国的にも重要な草地の保全を訴える緊急シンポを開催しました。|日本自然保護協会
http://www.nacsj.or.jp/diary2/2013/02/post-320.html
■全国的にも貴重な「そうふけっぱら」が危機に! 工事の中断と保全を求める要望書を提出しました。|日本自然保護協会
http://www.nacsj.or.jp/katsudo/shimousa/2013/03/post-8.html
■キツネが暮らす千葉の草原を残すため、署名活動にご協力ください!【全国・署名・〜2013.6.30】|BD10.jp
http://www.bd10.jp/2013/05/02/news/


■<奇跡の原っぱ>絶滅危惧種のホンドギツネが生息 (6/20,毎日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130620-00000022-mai-soci
■千葉ニュータウン:「奇跡の原っぱ」消滅危機 キツネ/トンボ…絶滅危惧27種 40年ぶり宅地造成で (6/16,毎日)
http://mainichi.jp/feature/news/20130616ddm041040047000c.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130616-00000006-mai-soci
■千葉ニュータウン:市民ら署名集め開始 造成工事本格化で希少生物危機、URに工事中断など求め (3/31,毎日千葉版)
http://mainichi.jp/area/chiba/news/20130331ddlk12040147000c.html


■都心部まで一時間なのに、すぐそばに里山がある贅沢な空間|UR都市機構
http://www.ur-net.go.jp/chiba-nt-tomonokai/machi/makinohara/town/art_01.html
■経営改善計画の進捗状況|UR都市機構
http://www.ur-net.go.jp/ir/info_torikumi.html
■「31日放送予定」「問題が多過ぎてシリーズ化しないと無理」…TBS噂の東京マガジンで千葉ニュータウンの開発失敗|白井市速報
http://blog.livedoor.jp/shiroish/archives/24880854.html


■ごんの気持ち、伝わった 南吉オリジナル版テキスト作成 (6/18,朝日)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201306180501.html


 北はいちゃもんのつけようのない絶滅危惧種のゼニガタアザラシから、北限の下北のニホンザル、同じく北限の辺野古のジュゴン、全国のシカやクマたちまで、「殺せ」の大合唱が聞こえる殺伐とした国、捕鯨ニッポン。先進国の中でも、日本ほど野生動物が住処を奪われ、狩り立てられ、限界以上に追い詰められている国はないでしょう。

 ゼニガタアザラシの昨年度の漁業被害は4500万円とのことですが、台風一つでも百億単位の被害が出ます。
 一方、解説記事が載った翌22日の朝日、「日豪EPA先送り」と同じ紙面に「エサ代支援100億円」の見出しが。
 損失額を単純に比較するなら、自分たちが生きるための行いしかしない野生動物以上の実害を一次産業に与える敵は、枚挙に暇がないはずです。
 台風や、米国や、政財界のような、かないっこない強者が相手のときは泣き寝入りし、補助金にすがっても、相対的には微微たる被害でしかない野生動物という弱者が相手のときは、長期的な実効性を見極めることもなく「まず殺せ」では、万物の霊長の名が泣きませんか?


 昔の日本人は決してこうではなかったはずなのです。


 ここで、最後の朝日記事のリンクをご一読。
 文学作品の受け止め方は人それぞれでいいのですが、筆者がこどもの頃『ごんぎつね』を読んだときの感想は、教科書版・自筆原稿版それぞれの模範解答のいずれでもありませんでした。
 野生動物に対して、「いたずら」「贖罪」の部分だけ妙に擬人化されすぎている一方、こどものいたずらに死をもって報いるやり方は明らかにヒトのそれではない、つまり擬人化とはいえないことに、大きな矛盾を感じたのです。せいぜい判断能力のない未成年者の業務上過失致死、母の病死に対するトータルの責任は兵十の方が重いはず。。
 相手が野生動物という弱者であれば、逆のパターンならまだ頷けるのですけどね・・
 もちろん、作者の新美南吉が悪いわけではなく(黒井健氏作画の絵本の雰囲気は大好き)、それは私たちの社会における動物と(動物の一種にすぎない)ニンゲンの一方的すぎる関係に対する素朴な疑問だったのですが・・
 昭和を代表する童話作家新美南吉の作品には、それでも、ヒトと(ヒト以外の)動物との距離の近さが表れています。それは賢治の作品についても然り。
 それらのベースにあったのは、「目線の低さ」を特徴とする、日本人の旧き良き動物観でした。


 さて、日本の民話で主役級の登場獣物に抜擢されることの多いキツネ。
 筆者は正直、クジラよりネコ目の動物のほうが好みのタイプ。キツネももちろん例外に漏れず。
 食用としての捕獲もゼロではなかったようですが、狸以上に食べた話は聞きません。キツネにとっては幸いなことだったでしょうが。稲荷神信仰が各地に伝わることもあり、大切にしてきた動物だったのでしょう。移入動物であるネコとともに、農作物を荒らすネズミを捕食する益獣としての位置づけも関係していたのかもしれません。
 キツネの民話は全国に数多いのですが、それらの物語に登場するキツネはどれも本当にユニークで、世界中の人々に胸を張って堂々と語り聞かせてあげたいものばかりです。
 ただし・・・当のキツネから生息地を奪い、どんどん追い詰めているようでは話になりません。

 タヌキは新宿御苑の辺りに出没するとTVで何回か取り上げられたりもしましたが、キツネは食性と行動圏の違いから、類縁の近いタヌキに比べ現代の都市環境には馴染みにくいようです。

 そんな中、千葉ニュータウン内でとても美しいキツネの姿が撮影されました(毎日記事写真)。
 食害問題の根っこにあるのは、種の多様性の喪失、自然の貧困化です。自然が不安定になったから。いわば自然のしっぺ返し。可能な限り多くの種が生きられる自然を残すことが、ヒトと野生動物との調和を取り戻すことにつながるはず。
 多様性を最もバランスの取れた状態に保つ里山については、最近比較的クローズアップされるようになりましたが、同様の機能を持つ生態系ながら、日本ではほぼ消滅しつつある半自然が草原。
 千葉ニュータウンの開発が当初の計画どおりに進まなかったため、偶然残された形といえますが、それだけに「奇跡の原っぱ」といえるでしょう。

 せっかく残った奇跡が、いま無残にも根こそぎにされようとしています。
 千葉ニュータウンは独立行政法人のUR都市再生機構(旧宅地開発公団→住宅都市整備公団)と千葉県企業庁の共同事業。半世紀前に策定された計画の期限がまもなく切れるということで、駆け込みの開発が急ピッチで進められ、亀成川の水源の森にも伐採の手が及んでいます。
 会計検査院に未利用地を処分しろとURが指摘されたようですが、土地は県の所有。アベノミクスで民間の金利・住宅ローンは逆に上がり、マイホームを考えていた人が慌てている中、これから造成してマンションを建て、売りに出すころには、住宅需要は最悪のどん底になってたりしませんか?
 会計検査院は、長期的な財政収支を検証しないでいいのですか? それで果たして改善≠ノなるのでしょうか?
 URはその経営改善計画の中でも「不採算事業の見直し」を謳っています。開発の再開にあたって採算性をチェックしたのでしょうか? 少なくとも、十分な検証をするまでは一時中止するべきではありませんか?
 このままでは不良資産がますます増え、その一部は千葉県民が負担を余儀なくされるのではありませんか? 県有地にすることで、URの損失を実際いままで被ってきたわけだよね・・
 『平成狸合戦ぽんぽこ』の舞台のモデルとなった多摩ニュータウンと同様、千葉NTも初期入居区は街自体の老朽化が進行しています。『東京マガジン』で取り上げられた暫定商業施設問題、訴訟になっている住民の足・北総鉄道の高運賃問題、印西市の放射性廃棄物中間処理施設設置問題、羽田対抗と千葉市のクレームでルートと時間帯が変更されたことによる成田発着便の騒音問題etc.etc. 千葉NTはそうしたさまざまな問題を抱えています。県とURは、住みよい街づくりが道半ばのまま、既存の住民のアメニティを置き去りにしたまま、他の郊外マンション地域と客の奪い合いに奔走するのでしょうか?
 それはURの名に入っている都市再生からはかけ離れた事業なのではありませんか?


 上掲リンクにあるとおり、URは自身のサイトで「都心部まで一時間なのに、すぐそばに里山がある贅沢な空間」と謳っています。しかし、里山以上に固有の自然をより強調できるそうふけっぱらの自然を潰して、「贅沢な空間」を売りにすることはできません。
 ちなみに、URに担がれてしまったナチュラリストのケビン・ショート氏も、亀成川を愛する会にはガイド役として自然観察会に度々参加しています。


 昔の計画を見直さず、貴重な自然の価値に配慮しないやり方は、ある意味ダム開発を思わせます。川野辺ダムのケースでは、熊本県知事が行政の庁として英断を下しました。
 元知事の沼田武氏は、弟の沼田眞氏が今回の運動を担っている日本自然保護協会の会長を務めていたこともあり、ゴルフ場農薬禁止等の条例を打ち出しました。同じく元知事の堂本暁子氏は国会議員時代から環境派として知られ、三番瀬の埋立計画を白紙に戻しました。
 現職の森田健作知事の環境政策、誰かパッと思いつく県民の方いますか? 不法投棄問題でも千葉の悪名は高いままだし・・。
 投票率がジリ貧の県知事選挙、次に新顔が出てきたらヤバイことになりませんか? 三選をもし目指すなら、ここらでイメージアップをはかりませんか? 県内外の市民の注目が集まっている「奇跡の原っぱ」を残すという英断を下してくれれば、県民の好感度も一気に増すこと間違いなしですよ?
 「そうふけっぱらのきつね」という民話の中には、菓子屋さんが登場します。県企業庁で、きつねブランドのお菓子でも売り出しませんか? 原作に従えば和菓子だけど、焼き菓子のフィナンシェなんかもきつねのイメージにピッタリですよ。そうふけっぱらを残すことでブランド価値を高めれば、事業としてはとても無難だと思いませんか? マンションみたいな大博打と違って・・。
 こんな時代なのですから、事業の多角化もありでしょう。「自然と調和する住宅都市の再生」は、URの事業として決して不釣合いなものではないはずです。
 森田知事、ぜひ英断を!


参考リンク:
−そうふけっぱらのきつね
http://www.inbaryu.sakuraweb.com/
−ハクビシンとクジラ(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/36133867.html
−害獣ゼニガタアザラシ、でも「希少」 (6/21,朝日)
http://digital.asahi.com/articles/TKY201306200641.html
−家畜エサ代支援100億円 円安で高騰 農水省、緊急対策 (6/22,朝日)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201306210592.html
−台風とクジラ(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/32901480.html
−筆者を見舞ったワンコ事件(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/31241524.html
−動物観・自然観をよその国々と比べてみると・・(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/14521088.html
−東洋VS西洋?(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/15855631.html

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2013年06月08日

橋下発言に見る反反捕鯨的発想/調査捕鯨と下関利権

◇橋下発言が示す反反捕鯨思想の底流

■慰安婦発言「説明不足だった」=橋下氏、街頭演説で釈明−東京・渋谷(6/6,時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013060600823


 慰安婦問題をめぐって物議を醸した大阪市長/日本維新の会共同代表・橋下氏の一連の発言。欧米、韓国、沖縄の反応を読めない時点で、政治家としての資質が強く疑われます。しかし、それは彼が内側しか向いていない$ュ治家であり、日本ではいくら国際感覚が欠如していようと人気政治家としてやっていけるということも意味するのでしょう。
 ネット市民・識者の多くが「宣伝効果」について注意を促したとおり、筆者も観測装置付の巨大アドバルーンという印象を強く覚えました。結果として自民党を大きく利したのを見ても、誰か氏を唆してその気にさせた"回し者"が周辺にいたのではないかと勘繰ってしまいます。
 軍国主義に縛られた戦前の日本は「国家体制のひとつ」にすぎず、慰安婦問題は「国家が引き起こす戦争が招いた人権侵害の事例」にすぎません。韓国であれ米国であれ(内のはずの)沖縄であれ、世界の市民は誰も、慰安婦問題をニッポン/ニホンジン≠フ異質性・特殊性に結び付けようとしているわけではありません。
 慰安婦制度に関する政府の公式記録の有無に拘泥するのは、残りの拉致被害者が存在しないという北朝鮮の言い分をそのまま受け入れるのと何一つ変わりありません。特定失踪者は状況証拠のみ。強制連行された韓国の被害女性の証言と同じ。北朝鮮による拉致は人権問題だが、日本の慰安婦は人権問題じゃない──そんな主張が国際社会に通用すると思っているのでしょうか?
 国連の委員会が問題発言を注視し、日本政府に苦言を呈するのも無理からぬことでしょう。
 それにしても、橋下氏は「自分がどう見られているか」を常に、強烈に意識するタイプなのですね。「誤解」をめぐる弁明はあまりに痛々しいものでした。
 まあ、橋下氏個人が風俗を必要とするかなんて、誰も興味ないことですが……じゃあ、彼自身が銃弾雨あられの状況に置かれたなら、性的エネルギー(?)の発散を必要としたのでしょうか? その欲求不満を解消する方法は、慰安婦制度以外になかった≠フでしょうか? だから、「当時は必要だった」??
 で、今は必要ない? だったら、なんで米軍にわざわざ風俗利用を勧めたの??
 結局、感性・感覚がもう、元防衛局長の「犯す前に言うか」や、暴行事件後の米軍司令官の「買えばよかったのに」と変わらないんですよね・・
 そして、彼を援護する石原氏の発言からは、国家と自己のアイデンティティを同化する意識が顕著にうかがえます。彼らの主張にシンパシーを覚える右翼層も、きっと同様の思考回路の持ち主なのでしょう。
 「僕は違う」「僕だけじゃない」──「僕がかわいい」「僕がかわいそう」──そこが彼らの出発点なのですね・・・


 ところで、「お前らもやっていたじゃないか」という主張、どこかで聞いた気がしませんか?

   橋下氏の主張する米軍等の現地女性の利用 ─ 戦前の日本軍による慰安婦強制連行
   帆船捕鯨等欧米の過去の捕鯨産業の乱獲 ─ 
戦前〜戦後の日本の大手捕鯨会社による南氷洋での乱獲と規制逃れ

 まさにそっくりですね。では、答えは「ビョウドウに正当化しろ」なのでしょうか? 風俗のススメ発言も、《女性という資源の有効活用》につながるのかもしれませんが・・
 この共通の構図はさらに敷衍することができるでしょう。


   A.日本国憲法 / 旧日本軍 / 自衛隊
   B.国際捕鯨取締条約−モラトリアム決議 / 商業捕鯨 / 調査捕鯨


   A.平和運動・反基地運動〜戦争への反省 / 過去の内外の軍国主義 / 自衛隊国防軍化の動きと侵略戦争・慰安婦等の正当化
   B.自然保護・動物愛護運動〜自然破壊・絶滅への反省 / 過去の内外の捕鯨産業による乱獲 / 調査捕鯨への多額の国費投入と動物福祉否定


 憲法で放棄を明確に謳い、持てないはずの「戦力」を、日本はさまざまな屁理屈を付けて持ってしまっています。そして今、この際憲法の方を都合よく変えちゃおうと言っているわけです。侵略の歴史をすっかり忘れて
 それは、国際捕鯨委員会の決議により現在禁止されている商業捕鯨に代わり、科学調査の名目で実質商業捕鯨と変わることなく鯨肉を市場に流している調査捕鯨と、そのまま重なります。国防軍化に相当するのが、商業捕鯨再開の主張にあたるわけですが。とくに、自国の捕鯨産業も重大な責任を負っている乱獲の歴史を戒める姿勢が欠片も見られなくなったところは、本当にそっくりですけどね。
 対外的な関係としては、米国/米軍に対するIWC・米国(捕鯨のほうが日本の好き勝手にやってますけど)、拡張主義の犠牲になった中韓等アジアに当たるのがオーストラリアを始めとする南半球諸国ということになるでしょうか。
 もっとも、まだ縛りのある自衛隊と国防軍の差に比べると、調査捕鯨は実体からして「ほぼ商業捕鯨」ですけど・・


 橋下氏に対しては、「こんな人だったのか・・」と愛想をつかされた方も多いはず。筆者はむしろ彼らしいやと思ったけど・・
 八尾空港の話も、むしろ普天間の危険性を軽視しているだけで、沖縄の負担軽減になってませんし。この辺も、弱者にだけコウヘイに負担を強いる「まず犠牲ありき」という発想が、いかにも反反捕鯨的なのですが・・
 橋下氏の捕鯨論は聞いてませんが(同じ維新の会所属議員の中田宏元横浜市長は捕鯨推進派で知られてますけど)、慰安婦問題と同じ論の立て方をするなら、たぶん聞くまでもないでしょうね・・
 それより、彼の慰安婦論に首を捻った方は、クジラ/反反捕鯨思想についても、ぜひもう一度じっくり考え直してみてください。


参考リンク:
−やる夫で学ぶ近代捕鯨史−番外編−
http://www.kkneko.com/aa1.htm
−日本の鯨肉食の歴史的変遷
http://www.kkneko.com/rekishi.htm



◇調査捕鯨と下関利権


■調査捕鯨船で出前授業 下関海洋アカデミー、本村小児童らに(5/17,山口新聞)
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2013/0517/5p.html
■下関市:鯨肉買い取り、モニター販売 事業費2640万円計上へ(6/4,毎日山口版)
http://mainichi.jp/area/yamaguchi/news/20130604ddlk35010489000c.html
■ことば:下関と捕鯨(6/7,毎日地方版)
http://mainichi.jp/area/fukuoka/news/20130607ddlk40100385000c.html


 前のトピックに絡みますが、南極海を荒廃させた商業捕鯨の乱獲の歴史から目を背け、その最も歪んだ負の側面を思いっきり持ち上げている自治体があります。そう、調査捕鯨城下町♂コ関市
 同市と調査捕鯨の関係については、これまでも当ブログ記事で何度も取り上げましたが、他の沿岸捕鯨地域とは別格の、中央の捕鯨サークルの中核をなす存在となっています。沿岸捕鯨地でもある石巻をはじめ、311で被災した地域に手厚く盛られるべき復興予算が、鯨研の赤字穴埋めなど無関係な事業に回される中、「自分たちの町にこれだけの経済波及効果があるから」という利己的な理由で調査捕鯨母港化を国に再三申し入れるほど、深〜い「オモイヤリ」を持った自治体です・・。しかも、経済波及効果20億円とやらも、蓋を開ければ紙切れ1枚の薄弱な根拠で、利害を持つ特定の事業者を除けば、市民から見れば税金の形で金が出ていくばかり。
 鯨肉がさっぱり売れず、南極プロレス(VSシーシェパード)もコアなごく一部のファン以外見向きもしない状況の中、下関は存在感を増し、調査捕鯨政策を動かす中心的な役割を帯びてきた感があります。世間の関心が低くなるのは、こういう場合諸刃の剣でもありますね・・
 下関市民の負担の例は、上掲のモニター事業などの記事が端的に示しています。税金でカバーして大幅に値下げ、他の農水産物とはまさに別格の扱いです。もっとも、さも高尚そうに食文化の錦の御旗を掲げていたのが、「国際B級グルメ大会」などと謳うようになったのは、伝統の退廃を象徴するよう。結局、広告宣伝を含めたこの手のイベントの経費に、下関市民の浄財が充てられているのです。余談ですが、記事中にある「急速冷凍に比べて」は急速解凍のことですね。記者の間違いでしょうけど。

 では、クジラで潤っているのは一体下関の誰≠ネのでしょうか?

 ここで最初の記事に着目してみましょう。いわゆる出前授業の話ですが・・。
記事中に出てくる下関海洋アカデミーは同市にある水族館「海響館」を運営する公益財団法人。石川氏は捕鯨問題ウォッチャーならご存知でしょうが、調査捕鯨団長を務めたこともある元鯨研の研究者で、昨年開設された鯨類研究室に室長として入られた方ですね。鯨研が大赤字で口減らしを余儀なくされたという事情も背景にはあったのでしょうけど。


−公益財団法人下関海洋科学アカデミー定款
http://www.kaikyokan.com/teikan.pdf


 上掲は同機関の定款。保護・保全のための普及啓発ではなく、捕殺・利用の普及啓発事業をやっちゃってるのは悲しいですけど・・。ところで、最後のページに「最初の評議員」のリストが載っています。理事長は中尾友昭市長
 で、6番目の林俊作氏、大津屋(醤油メーカー)の社長で林芳正農相の従弟の方。でもって、俊作氏は昨年委員長代理も務めた下関教育委員会委員にして、山口県のPTA連合会会長だったりもするわけです。こうした人脈を通じて出前授業が行われているのでしょうね・・


−林芳正|Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%97%E8%8A%B3%E6%AD%A3


 ご承知のとおり、参院山口選挙区選出の参議院議員・林芳正氏は、安倍政権で農相の座を見事射止めました。彼は自民党の捕鯨議員連盟の幹事長を務め、最も熱心な捕鯨推進族議員。威勢のいいアンチSSの国会質問も目立ちましたが、捕鯨族議員の中ではパーティーに呼ばれてナガスの尾の身をつつくだけではない事情通のお一人とはいえたでしょう。それは母船式捕鯨の町・下関の地盤があってのこと。
 Wikipediaによれば、林一族は県内のバス会社、ガス会社などを経営する名家ということで、一見水産関係とのリレーションはなさそうに見えますね。
 が・・前述の林俊作氏が経営する醤油メーカー・大津屋さん、こんなこともされてました。


−水産大学校訪問記(^O^)|〜MARUSO の 想い〜下関・大津屋まるそ醤油
http://ohtsuya.blog129.fc2.com/blog-entry-39.html
−世界初。くじら醤油はこうして生まれました。|ヤマカ醤油
http://yamaka1872.bi.shopserve.jp/yamaka_brand/
−マル幸商事 会社概要
http://www.marukou-inc.co.jp/pc/contents22.html


 水産大学校とのふく醤油・くじら醤油共同開発プロジェクト、最初に手がけてたのはここ。その後、魚醤やポン酢などに特化し棲み分けている同業者のヤマカ醤油に引き継がれましたが。ちなみに、ヤマカ醤油のHPには「地産地消にこだわります」などと書かれていますが、南極産調査鯨肉はまさに地産地消の究極のアンチテーゼ。それに、搾りかすはどうしてるんでしょうね・・
 さらに、同プロジェクトを追っていくと、水産大学校、山口県食品開発協議会とともに、仕掛け人のある企業の名が浮かび上がってきます。下関の鯨専門店・マル幸商事
 同社の主要取引先にご注目。共同船舶の名があるのは当然として、南極海で大乱獲を繰り広げた大手捕鯨御三家のマルハニチロ系列会社に極洋。そしてウナギ偽装事件を引き起こしたうおいちと同じくマルハニチロ子会社の神港魚類の名も。
 これが、デントウショクブンカの担い手。下関の政治と業界の関わり、です。
 調査捕鯨母港化によって、市が税金をつぎ込んで販売促進イベントを行うことで直接潤うのは、マル幸商事のような特定の事業者。後は東京など域外の事業者。

 中尾市長と林農相の選挙等における緊密な協力関係については、以下もご参照。


−市民の反応に見る 市民の底力見せた下関市長選の結果|人民の星
http://ww5.tiki.ne.jp/~people-hs/data/5365-3.html

−中尾友昭|Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%B0%BE%E5%8F%8B%E6%98%AD

 経済効果を謳った母港化は、「おらが国に空港/高速道路/新幹線/原発を!」という我田引水利益誘導型の政治のまさに典型。それらの事業は、得てして住民の真の利益に寄与するとは限らず、政治家と癒着した特定の事業者を一時的に潤すばかりで、後は負担ばかりがのしかかるというパターンに。同じように、調査捕鯨という一大国家事業がダシにされているのです。競合自治体が名乗り出ないだけ、政治家が「業績」を看板にするのも楽勝。それを前面に出せてしまう辺りが、安倍氏のお膝元でもある保守地盤の政治風土らしいといえますが。


 下関市民の皆さん、それでいいのですか? 税金の無駄遣いくらい目を瞑る? 
 けれど、このままでは下関市は、世界から「南極の自然を食い物にする町」という烙印を押されることになりますよ。本当にそれでいいの!?


 最初に掲げた記事の三番目をご覧いただきましょう。「下関と捕鯨」の関わり──それは、実業家が天然資源で一発当てようとして始めた、炭鉱と同レベルの伝統と無縁な近代捕鯨です。同市が最も賑わった最盛期の60−70年代ですが、シロナガスクジラが徹底的に衰微し、遅すぎる捕獲禁止措置が講じられたのはようやく64年のこと。日本は後発国として参入が遅れたことが理由で、シロナガスに対する責任は小さいとはいえ、『南氷洋捕鯨史』でも指摘されているとおり、ナガスクジラ乱獲に対する責任は世界で最も重い捕鯨国です。無秩序な大乱獲、南極の荒廃と引き換えに下関市の繁栄があったといっても、過言ではないでしょう。
 過去に対する深い反省、強い戒めなしに、手放しで捕鯨を礼賛することが、日本の中でどの地域よりも許されないのが下関市です。いまの下関市の前のめりな捕鯨推進行政は、世界に対してあまりに恥ずかしいものです。


 出前授業を受けた子供たちへ。
 悲惨な歴史を招いた戦前と同じように、おとなが偏った考え方で、公平・公正に情報を伝えることをせず、君たちを一つの方向へ誘導しようとしているとしたら、とても悲しいことです。あるいは、おとなに対する幻滅を味あわせることになるかもしれません。どうか一部のおとなの言うことだけを決して鵜呑みにせず、自分で真実を確かめるようにしてください。


参考リンク:
−中尾 友昭下関市市長の下関港「調査捕鯨」団基地化計画?|flagburner's blog(仮)
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/63f388ec5de4364d6979e3020a0d7381
−東北の被災地を足蹴に復興予算をせしめた厚顔無恥な捕鯨サークル(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/59017147.html
−復興予算を食い物にしようとした調査捕鯨城下町・下関市(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/56253779.html
−捕鯨ニッポンの縮図──下関市(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/17238001.html
−林芳正代議士の車が当て逃げ|長周新聞
http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/hayasiyosimasadaigisinokurumagaatenige.htm

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2013年05月16日

韓国調査捕鯨断念報道/沖縄は独立を!

◇韓国調査捕鯨断念について

■韓国、調査捕鯨を断念 国内外の批判考慮(5/15,朝日)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201305140646.html


 朝日記事ですが、韓国政府が撤回したのなら一大事ですけど、単なる再確認なので、目新しいネタではありません。経緯については拙過去記事をご参照。
 「国内」に批判があることをきちんと認め、考慮できる──それだけでも、韓国の先進性が示されたといえますね。単に野生動物保護・動物愛護・生態学の調査のトレンドの観点のみでなく、国際社会に対する協調姿

勢、開かれた透明な行政、マスコミの報道、それらすべてにおいて、日本は韓国にすっかり水をあけられてしまいましたね・・
 日本は国際条約の抜け穴を利用し続け、共有財産に対する拡張主義的な占有意識を捨て去ることができずにいます。まるで3/4世紀以前のまま思考が凝り固まってしまったかのように。
 韓国の朴槿恵大統領と我が日本の極右首相殿との米国訪問時の「待遇の差」に象徴されるように、このままでは日本は韓国と対照的に、欧米をはじめ他の先進国から格付けをどんどん落とされていくでしょう。
 それでいい? 欧米は所詮価値観の違う敵だから? 価値観の一番近いトモダチのフリをするのは、"準備"が整うまで中国を牽制してもらうためだから? そろそろ米国に尻尾を振るのをやめて、自分で軍隊も核も持

つ気でいるから? 
 民主主義度・環境/動物に優しい国度で韓国と競い合うならいざ知らず、このままでは北朝鮮と唯我独尊度で比べられることになっちゃいますよ? 


参考リンク:
■韓国、捕鯨断念も 政府代表、反対派にも意見聴取('12/7/12,朝日)
http://www.asahi.com/international/intro/TKY201207110743.html
■世界でますます孤立することになる日本の調査捕鯨|天木直人のメールマガジン#348
http://foomii.com/00001/2013051508581615534
■韓国の調査捕鯨参戦宣言が招いた波紋('12/7/6,拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/56904118.html
■国際捕鯨委員会2012総括('12/7/14,拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/57038734.html
■北は人工衛星という名のミサイル、日本は調査捕鯨という名の商業捕鯨('12/7/6,拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/60752017.html



◇右が常識破りの挙に出るなら、左も緑も壊しちゃえ


■「沖縄独立」ヤマトよ聞け 本土に不信、学会発足 きょう復帰41年(5/14,朝日)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201305140722.html


 橋下氏の一連の発言は、観測装置の付いた巨大アドバルーンだよね・・・
 彼の感覚は、更迭された元防衛局長の発言にも通じますね。
 沖縄で、韓国で、米国で、どのように受け止められるかを「計算できない」、これは政治家として致命的な資質の欠如だと思いませんか? 現・前都知事も一緒だけど・・
 ところが、日本では選ばれてしまう。人気者になってしまう。
 「どういう国なの、日本って???」世界中がそう思ってしまう。
 この国の民度が、感性が問われています。世界が注目しています。次の参院選に。
 この手が通用するなら、しちゃう国なら、リベラルも緑も、もう自己規制する必要ないんじゃないですか?

 天皇制要らない。現役を終身外務員にしておしまいに。
 自衛隊要らない。本当に役に立つ災害救助隊に。
 もちろん原発要らない。
 銃要らない。ゆくゆくは警官も警棒とサスマタで。銃捨てるまで米国とは絶交。

 まあ、こういうのは「可及的速やかに」が限界でしょうけど、中でも現実味を帯びているとすれば、「沖縄独立論」でしょうか。
 学会の記事でスコットランドの運動に触れてますが、既に政治的な争点となっているカタルーニャ(スペイン)の方が事例として参考にできるのでは。クジラ関係では、ゴンドウクジラ猟を行っているデンマークのフェロー諸島やグリーンランドも、反捕鯨国で入植・抑圧の歴史があるオーストラリアのトレス海峡諸島も、自治国に近い位置づけで、司法も含めた強い自治権を確立しており、沖縄は十分参考にできるはずです。
 中国とも日本とも米国とも等距離を保ち、かつ対等な、非武装を謳う豊かな自然に恵まれた観光立国として生まれ変われれば、世界中から祝福を受けられるでしょう。
 一点、朝日記事にあった社民党照屋氏の「では、本土は基地を引き受ける覚悟を持っていますか?」とのコメントについて。
 残念ながら、照屋氏自身が常識に縛られています。「基地ありき」という。
 沖縄が独立を掲げ、「基地NO!」と突っぱねることで、あくまで原則を貫くことで、「やっぱそんなもの要らないよね。平和が一番だよね」という声を本土にも広げられるのではないのですか?
 「どこかに基地作らなきゃね」「本土作れないね」「じゃあ沖縄しかないね」そこで思考停止。
 そんな「ジョーシキ」こそ、堂々とぶち壊さなくてはいけないんじゃないの?
 橋下市長のように、後でみっともない言い訳をする観測気球アドバルーンじゃなく。
 従属でいい、カネさえ落ちればいい、日本という権威によりすがりたい、沖縄が本当にそう思っているなら、仕方がないかもしれません。
 上や外から、他人事として「独立しろ」と言っているのではありません。
 貴方たちは本当に「従属」でいいの? 独立を叫ばないと、本当に「何も変わらない」よ?
 ぜひ真剣に考えてください。

 参院選で、独立を掲げる政党・候補者を立てて、数字を出す。自治権を憲法改正をめぐる主要な争点として提示する。そういうことまで視野に入れてもいいのでは。
 


◇クジラの味方・・


 これまでブログやツイッターで銃については再三批判してきましたが、「バランス云々」言った所為で、どうやら銃肯定派と受け止められてしまったみたい(--;
 確かに、核、兵器、銃を否定して、捕鯨砲を否定しないのは、「バランス的にどうよ?」とツッコまれるかもしれませんね・・
 捕鯨砲なら、銃と違って犯罪や事故で人命が失われる可能性はほぼゼロに等しいとはいえ。
 あまりバランスバランス言い過ぎると、それはそれでハマりますから(汗)、まあほどほどにしておきましょうか。要は、MFも複数揃えて硬軟カバーできるのが理想的なんですけど・・
 多様な捕鯨批判派の中で、穏健からラディカルまで、動物も環境もリベラルも、間を結べるMFになれる人、そういう人材が出てきてほしいなあ・・・


 来月にはIWC科学委の会合が開かれますが、本会議のように決議を通す性格のものではないので大きなニュースにはならないと思われます。
 HPの大改修、CMSは使えそうにないので(そこまで投資したくもないので)、フリーのテンプレでも使おうかニャ。。
 次のネタが飛び出すまで、しばらく小説の執筆に専念したいと思います。
 ツイッターに慣れると、ブログまとめんのは大変(--; 両方まめにやってる人たちはえらいニャ〜

posted by カメクジラネコ at 17:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2013年05月14日

求ム「クジラの味方」!

 例年ならそろそろクジラの季節≠ノ向けた準備に入る頃・・ですが、今年はIWC年次総会はなし。捕鯨関連のニュースを検索エンジンでチェックしても、拾われるは全然関係のないゲーム誌の記事のみ。。
 そういうわけなので、調査捕鯨の問題点については、こちらで(↓)勉強してくださいね。来年に向けて・・

■調査捕鯨の科学性を解体する
http://togetter.com/li/486896
■マスコミが伝えようとしない調査捕鯨の負の側面
http://www.asyura2.com/10/senkyo77/msg/177.html
■マスコミが伝えきれない調査捕鯨の復興予算流用問題
http://www.janjanblog.com/archives/84065

 


◇求ム「クジラの味方」!


 以前、このようなチャートと解説を用意しました。


■捕鯨をめぐる勢力図/賛成派と反対派の属性
http://kkneko.sblo.jp/article/22515238.html
■いのちを大切にする捕鯨賛成派???
http://kkneko.sblo.jp/article/29480333.html


 最近では、調査捕鯨反対を掲げる市民デモを行ったり、太地までリサーチに行ってくれる行動派の若い方たちが出てきてくれ、筆者としてはとても頼もしい思いです。以前から、日本国内でブログ等を通じ、調査捕鯨に対する批判的な見解を表明してくれる市民の皆さんは大勢いらっしゃいました。
 ただ、そうした批判層にはいくぶん偏りが見られます。
 上掲のチャートで示しましたが、捕鯨批判派の属性は主にリベラル系・環境保護系・動物愛護系・フリーク系に大別されます。多くの方は、4Dの座標空間のどこかに位置づけられるわけです。属性の詳細については、過去記事をご参照。
 このうちリベラルはどちらかというと副次的要素で(主の方もいますし、もっといてもいいと思うのですが・・)、主な柱は環境と動物の二本ということになります。フリーク系はちょっと特殊で、どうしてもクジラ・イルカ特化型になりがちなため、ここでは省きます。もちろん、運動にエネルギーを注ぎこむうえで対象を「好き」なことも欠かせませんから、他の要素も持ち合わせている限りOKなのですが・・
 そう、問題は、環境派か動物派に関心層が二分されちゃうことなのです。
 サッカーでいえば、MFのポジションを務められるプレイヤーがいないんだよね(--;

 捕鯨問題は、環境問題・動物問題の中でも特殊な位置づけにあります。
 環境・動物・リベラルという三要素のどれもが欠かせないからです。
 野生動物保護・生態系保護にしても、動物愛護にしても、右左が問われたり、政治が前面に出ることはあまりありません。実際には裏で政治が大きく関わっている面もしばしばありますが、支持を広げるためにも、NGOはノンポリ路線を取るしかないわけです。
 犬猫の保護活動等を行っている方々の中には、最近の外交懸案をめぐって保守派の典型と同様の主張をされる方も少なくありません。WWFJの総裁はどっかの誰かさんだったりしますし・・
 まあ、一応それでいいわけです。対象の動物や自然のことさえ考えていれば。
 ところが、クジラではまったく事情が変わってきます。
 海外の人たちが「対象の動物のことだけ考えて」日本に強い外圧をかける形の運動を展開したおかげで、それを逆手に取って対抗する巧妙なプロパガンダを打たれてしまいました。
 捕鯨問題をめぐる経緯・背景の説明だけでも、政治を語ることが抜きにできないのです。
 政治に関しては、税金・ODAの使途、政官業の癒着という視点もさることながら、拡張主義・復古主義的要素、資源ナショナリズム的要素、ルサンチマン的嫌米要素を多分に含むため、リベラル層への注意喚起という側面も必然的に帯びることに。その一部は、捕鯨業界と不可分の体質というより、「保守層へのPRが有効」という判断で持ち込まれたものではありますけど・・
 プロパガンダの中では、環境問題・動物問題における相対化・逆差別化という戦術も取られてしまいました。中身はツッコミの余地が山ほどあるのですが、環境・動物への理解の浅い人たちの耳にとってもわかりやすい=A業界に都合のいい主張を彼らは並べ立てたわけです。
 つまり、彼らの反反捕鯨プロパガンダに対抗するためにも、クジラだけに特化した関心と知識を持つだけでは駄目で、三分野に跨る事情通であることが求められるわけです。
 「○○の問題はどうなんだ?」といった指摘に、ある程度切り返せるように。内外の陸棲野生動物の現状、南極生態系・海洋生態系の諸問題(クジラ以外)、地球温暖化や原発、生体販売・畜産・動物実験・動物園等動物愛護関係のトピック。それらの概要から最近の動向まで。
 面倒な荷を背負い込まされるのも、すべて日本捕鯨協会と国際PRのおかげ、ということですが・・・・

 ここでもう一点、重要な要素があります。これも相対化・政治問題化と絡んでくるのですが。
 バランス感覚です。
 捕鯨業界は世論操作のためにマスコミを思いっきり活用しました。また、業界内に大きな格差と軋轢があるにも関わらず、霞ヶ関−業界団体のコネクションを利用することで、水産業界全体を見事に味方につけてしまいました。
 しかし、漁業者・水産関係者は、本来クジラ側の応援団に入ってもらうべき対象です。不可欠のメンバーとして。いままさに危機的状況を迎えている水産業界そのものが、捕鯨という一セクションの所為でものすごく割を食ってきたのは厳然たる事実だからです。
 漁業者を相手に問題を認識してもらうにあたって、クジラ特化・急進的な動物愛護(環境保護も)の姿勢を示すことは、返って障害になりかねません。
 沿岸捕鯨に関しては、稀少なミンククジラ個体群への影響、混獲、過去の違反操業、IWCで要求している伝統捕鯨としての容認要請と実態との乖離など、手放しではとても受け入れられない多くの問題があることも事実です。
 しかし、水産関係者、そして国民とそのパイプとなる国内メディアに対して、「沿岸捕鯨NO」と言い切ってしまえば、理解を得る余地が十分ある多くの人たちにさえそっぽを向かれ、クジラにとっての自殺点となるでしょう。
 外圧によって拙速にモラトリアムを強行したために、調査捕鯨の形で公海母船式捕鯨の長期延命を許した愚を、捕鯨批判派は自ら強く戒めなければなりません。
 「動物問題・環境問題の中での捕鯨問題」を訴える中で、条件付の沿岸捕鯨を許容するとすれば、ある程度整合性を保つ必要も出てきます。
 漁業者を味方につけるには、良い漁業、悪い漁業をきちんと整理したうえで、提示できなければなりません。ここでいう良い悪いは、もちろん環境・動物福祉の観点からということですが。同じように、狩猟と畜産についても、相対的な視点を持てることが大事です。
 一次産業仲間と認識されている狩猟・畜産すべてに対してNOと言ってしまえば、漁業者はやはりひいてしまいます。本当はコンペだとしても・・

 特に動物愛護に関しては、中心になって活動している人たちが、外目からは「急進的」に映りかねないスタンスを取っていることも、否定できません。
 純ヴィーガンベジである私の立場でさえ相当に急進的です。しかも、ARに偏っています。。
 バランスを保つには、ある程度自分の本音を抑制できなければなりません。犬猫等では決して珍しくない反応ですが、たとえ「一頭たりとも傷つけてほしくない、殺してほしくない」と内心思っていたとしても、その感情は押し殺す必要も出てきます。かといって、動物福祉オンリーでもいけません。
 もちろん、急進的な人たちがいくらいたっていいのですよ。しかし、急進的な主張は、クジラに関しては明らかにマイナスです。そうした方々には、他の分野で前に一歩進めるために注力していただきたいのです。結果が出れば、クジラにとって必ず後押しになりますから。
 ただし、どの分野であれ「言いたいことを言う"だけ"」では、価値観の異なる層、無関心層にはメッセージが届きません。戦術・戦略はどの動物・自然が対象であれ、絶対に必要になります。クジラでしっかり勉強した人は、きっとどのジャンルでも通用する逸材になると思うんですけどね・・
 動物フリークの皆さんに改めてお願いしたいのは、「クジラをのけ者にしない」ことです。
 特に、日本の市民運動の中では層の厚みだけは十分ある「犬猫問題」の関心層の皆さんは。行政殺処分の問題は、捕鯨の人道的捕殺問題とストレートに関係することです。ぜひ関心を持ち、応援≠してください。それに次ぐ、動物実験関心層、ベジタリアン層も。捕鯨をめぐる議論は、推進派の取った戦略の故に、すべての動物に対して必ず跳ね返ってきます。だからこそ、無関心でいることは許されないのです。

 もうひとつ厄介なのは、日本の環境派の動物問題に対する認識(関心と知識)の低さ。内野のプレイヤーも含めて、低"すぎる"人が多すぎます。
 動物と環境は、捕鯨問題の両輪です。動物派からは「純動物問題(環境問題ではない)」、環境派からは「純環境問題(動物問題ではない)」との声も聞かれます。これはどちらも間違いです。相互の認識不足に基づく。戦術的に「正しい」と考えている向きもあるようですが、やはりそれは過ちです。
 もちろん、主に外野の外縁にいる動物派も、環境問題に対する認識がもうちょっと欲しいところ。とはいえ、意識の高い人はそれなりにいるので、環境派の動物愛護意識よりマシかもしれませんけど・・

 日本では全体として少数派といえる捕鯨批判派で、環境派と動物派の間に大きな溝があることは結構深刻です。別に対立しているというわけではなく、共闘ができないレベルでもないけれど、言ってることがバラバラになるので、ある意味向こうの思う壺に。これをせめて補完的協力関係に格上げしなくてはなりません。
 動物派と環境派の仲立ちをし、動物派には環境問題全般の、環境派には動物問題全般の意識を高めさせ、双方の底上げができる、そういう強力なクジラの味方となれる人材が必要です。バランス感覚のあるミッドフィルダーが。
 優秀な若手を発掘して育成する作業を、古株の市民運動関係者は怠ってきました。一番責任が大きいのは海外の反捕鯨派ですが。
 他の動物の保護を訴えるよりも格段に厄介で、負担が大きいかもしれません。クジラ好きであるだけでは足りません。「すべての動物の味方」「すべての自然の味方」でないと、本当にクジラのために力になることができないのです。しかし、逆にいうなら「クジラの味方」は「すべての動物の味方」「すべての自然の味方」になれる人です。
 他にも、支援能力、戦闘力と耐久力、ネットワーク力など、市民運動を手がける際に必要な素養は、他分野以上に必要になってきますが。
 高いハードルにあえて挑戦したいという志のある若い方、どなたかいらっしゃいませんか?
 多少のバックアップはいたします。
 我こそはという方は、ホームページのメールフォームまでm(_ _)m



 求ム「クジラの味方」!──ということで、最近のマルチブラウザ対応になってない黴の生えたホームページの大改修に入る次第。日新丸じゃないけれど。。。
 若い世代に訴求力を持てるようにしないとニャ!


 小説「クジラたちの海──the next age」も執筆中。現在第V部リュウキュウ・ジュゴン編まで。感想よろしくニャ〜

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2013年04月09日

調査捕鯨船団帰港報道について/吉高の桜

◇調査捕鯨船団帰港報道について

■南極海の調査捕鯨が終了 捕獲頭数は過去最低に (4/5,産経)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/130405/mca1304051824033-n1.htm
■調査捕鯨終了、捕獲頭数は計画を大幅に下回る (4/5,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130405-OYT1T00544.htm?from=ylist
■捕鯨数、過去最低=SS妨害で南極海調査−水産庁 (4/5,時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013040500546
■調査終えた捕鯨船、下関に入港 妨害で捕獲数は過去最低 (4/7,朝日)
http://www.asahi.com/national/update/0407/SEB201304070009.html
■調査捕鯨終え下関に帰港 母船に傷、へこみ残る (4/7,共同)
http://www.47news.jp/CN/201304/CN2013040701001499.html
■調査捕鯨船団が下関入港 (4/7,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/lnews/yamaguchi/4063699331.html (リンク切れ)
■「調査は妨害で崖っぷち」 捕鯨船団下関入港、捕獲数は最少 (4/8,共同)
http://www.47news.jp/news/2013/04/post_20130408162911.html
■調査捕鯨船団お帰り 下関で入港式、鯨肉陸揚げ (4/8,山口新聞)
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2013/0408/3p.html
■捕鯨数 妨害で最少に 103頭  調査船下関に帰港 (4/8,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/yamaguchi/news/20130408-OYT8T00067.htm
■調査捕鯨終え帰港 下関、母船に傷やへこみ (4/8,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0701F_X00C13A4000000/


 7日に日新丸を始めとする調査捕鯨船団が下関に帰港しました。少しウロウロしてたのは、怪しい人物が桟橋とかをウロウロしてないか警戒してたのでしょうか・・
 マスコミ報道をざっとチェックしたうえで、問題点を6つ指摘しておきたいと思います。

※ 筆者の見落としていた重要な要点(E)について、flagburnerさんにご教示いただきました。Bも追記。

@減産はそんなに大ごと?


 各記事の見出しや、記事の中身でも「目標の900頭の約1割だった」(朝日)「計画していた850頭程度を大幅に下回った」(時事)といった具合で、減産の程度をかなり大げさに報じているところが目立ちます。
 しかし、これらの目標や計画の数字にはもはや何の意味もありません。KKP(クジラ改善プロジェクト)では目標生産量2400t、大幅減産を折込済なのです。今年は減らしてナンボ。
 KKP、儲かる漁業補助金を得たことについては、昨年12月に日経、今年に入って2月に東京新聞が取り上げただけ。捕獲頭数の数字の伝え方をみても、多くのマスコミ関係者は理解できていなかったようです。


A減産はぜーんぶSSCS(シーシェパード)のせいだった?


 さらに、この減産については、大本営に沿ってSSCSの妨害の責任にしていることが大半。この点は、「調査船の燃費を上げる改造に時間がかかり、例年よりも出港が1カ月程度遅れたことも影響した」(引用)と記述した、鯨研のオトモダチ新聞産経の記事が比較的マシでした・・。
 とはいえ、昨年の出港時にも改修の影響については指摘されていたのです。そして、林農相らは「影響はない」と回答していました。少なくとも報道機関は、なぜ事前の読み違えがあったのかと、追及して然るべきはず。
 

B本当は休むはずだったのに・・


 Aに関係しますが、水産庁は当初今季の出漁を取りやめ、老朽化した母船日新丸を大改修する予定でした。ところが、それを聞いた族議員たちが「中止だなんてけしからん!」と大激怒。大慌てでスケジュールを無視した小幅改修で済ませ、船団を南極海に送り出すことに急遽決めたのです。
 筆者が当初心配したような突貫工事による事故が起こらなかっただけ、まだ幸いでした。しかし、短い漁期でもやる羽目になったのは自民党の族議員たちの責任に他なりません。
 もう一点、おそらく今後、日新丸はドライドックに上げ、予定がずれ込んだ大改修を行うつもりなのでしょう。儲かる漁業の補助金をそのために付けたのですから・・。つまり、例年夏季に行う裏作≠フ北西太平洋調査捕鯨(JARPNU)の方は、休漁になると思われます。族議員たちは改修のための中止によって、反捕鯨国・NGOから批判されるのを恐れたようですが、どちらをやめても同じことです。
 休めるような調査であれば、無理に続ける必要もありません。

−調査捕鯨の正体は「儲かってないけど儲けたい商業捕鯨」だった(続)
http://kkneko.sblo.jp/article/59017147.html

C復興予算流用問題はどこへ?


 昨年、あれだけ捕鯨への復興予算の流用が槍玉に上ったにも関わらず、そのことについて触れたメディアは一件もありませんでした。
 また、今回帰港先として、内外に正当性をPRしやすいはずの被災地石巻港等東北が検討されることなく、すんなり下関市に決まった背景についても追及がありません。大体昨年は、中尾下関市長の要請に対して一度検討の姿勢を示しながら、配送の問題などを挙げて断っていたはずなのです。昨年見送った理由である課題は、今年になって克服されたという意味でしょうか??
 帰港先が、内外の理解も得やすい被災地石巻港等東北ではなく、東北への思いやりなどそっちのけで母港化による経済波及効果20億を謳い、農相林氏のまさにお膝元である下関市への入港が決まったことに対し、政治的な背景を分析する姿勢がマスコミにはまったくありませんでした。
 一応、昨年NGO等から批判されたことを受けてか、キャッチャーの1隻・第三勇新丸は塩釜に入ったようですが、復興予算問題に触れずにいかなくなるのを恐れてか、報道された様子がありませんね・・  

−東北の被災地を足蹴にして復興予算をせしめた厚顔無恥な捕鯨サークル (拙過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/59017147.html


DSSCSによる被害をやたら強調


 日経や共同の記事、見出しなどでは、SSCS船舶との衝突による被害を受けたことが強調され、写真が紹介されています。しかし、’09年に転落事故が起きた際には、帰港時に詳細な扱いをしたメディアはありませんでした。
 ついでにいえば、入港式での式典の様子や農相他関係者のコメントなどを見ると、まるで戦地に赴いて傷つき、還ってきた兵士を労うかのようで、彼らの口にする「危険」とは別の意味で、筆者は危険≠ネ印象を受けました・・・

−ヒトの命に関わるリスクまで背負った飽食の国の鯨肉という食品 (拙過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/25212992.html
−異常に高い調査捕鯨事業における死亡事故リスク
http://kkneko.sblo.jp/article/30992331.html
http://kkneko.sblo.jp/article/34484278.html


E補給船は韓国船籍のサン・ローレル号だよ!

 忘れてはいけないのがこの船の存在。鯨研は写真のキャプションを削除、NHKのニュースは「別の船」といって誤魔化そうとしましたが・・。
 SSCSの妨害をことさらに強調するのであれば、いちばん被害を被った補給船に関する詳細な情報もマスコミは国民に伝えるべきだったはずです。
 詳細はflagburnerさんの記事をご参照。

−Operation Zero Tolerance: Epilogue|flagburner's blog(仮)
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/4fe9b8c07e1e9c2d1bf3cfe0f0074dcb
−南極海>>尖閣領海!? 日本の調査捕鯨強硬政策は狂っている
http://kkneko.sblo.jp/article/62765769.html

 その他気づいた点。
 8日には各紙が入港式の模様を主に山口県版で伝え、船長や地元選出の林芳正農相の言葉も伝えています。林氏は族議員の中でも最も通≠ネ方だけあってか、言い回しに慎重な部分も見られました。「認められた我が国の権利」(調査捕鯨が国際社会に認められているのではなく、権利として勝手にやっている)、「海賊にも類する行為」(海賊行為ではない)等。
 産経報道ではナガス捕獲がゼロだったとも。これは救いといえますが、「このままじゃ、南極産"極上ナガスの尾の身"が食べられなくなっちゃう!!」と永田町のグルメ議員たちに発破をかけるつもりかも・・・



◇吉高の大桜

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 今年も会いにいってきました。
 昨日、一昨日の大風のせいで葉桜・・というより葉っぱだけ(--;
 でもまあ、葉っぱだけでも紅葉のように美しいのがこの桜。
 今日も風が強く、手振れ補正も効かず(--;
 松虫寺のしだれ桜も例年はかなり見事なのですが、今年は見る影もなく・・。八重は間に合いましたが。
 今日は快晴で筑波山もくっきり拝めました。

 過去記事は下掲リンクをご参照。
 昨年も実は行ったのですが、今年よりマシながら、嵐の後で花がだいぶ散っていたので記事にせず。。


(2011)
http://kkneko.sblo.jp/article/44389907.html
(2010)
http://kkneko.sblo.jp/article/37285308.html
(2009)
http://kkneko.sblo.jp/article/28833920.html
(2008)
http://kkneko.sblo.jp/article/14961110.html


 311以降は、この桜に会うのも今年で最後になるだろうと思い続けて3年目。
 今年も気持ちはまったく変わりません。むしろ本当に見納め感が強まった感じ。
 地震・津波は自然災害で避けようがありません。しかし、原発事故と戦争は避けることができるはずです。
 そのためにやるべきことは、一つしかありません。
 原発をなくし、基地をなくすこと。
 それ以外に、ニンゲンが叡智ある万物の霊長であることを示す道はありません。

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2013年02月21日

南極海>>尖閣領海!? 日本の調査捕鯨強硬政策は狂っている

◇南極海>>尖閣領海!? 日本の調査捕鯨強硬政策は狂っている

■中国船に追われた 尖閣周辺の領海、日本漁船の船長証言 (2/21,朝日)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201302200796.html


■シー・シェパード、「日本の捕鯨船に攻撃された」と主張 (2/21,CNN)
http://www.cnn.co.jp/world/35028524.html
■捕鯨めぐる衝突で日豪双方が提訴の構え、主張に食い違い (〃)
http://www.cnn.co.jp/world/35028562.html
■日本調査捕鯨一時中止発表 (2/21,日豪プレス)
http://nichigopress.jp/ausnews/world/47051/
■シー・シェパードの抗議船と日本の捕鯨母船が接触 (2/21,AFP)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2929814/10317754
■シー・シェパードの船が妨害 調査捕鯨船に被害 (2/20,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130220/k10015657801000.html
■捕鯨妨害、許し難い=林農水相 (2/19,時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013021900193
■捕鯨とクジラ保護 - Yahoo!ニュース
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/science/whales_and_whaling/


 今年は最後までプロレスなしでやってもらいたかったんですけどねぇ、やれやれ・・。
 他の国内各メディアの関連報道については、上掲のYahoo!ニュースまとめないしGoogleニュース検索をチェックしてみてください。
 先に一点補足しておきましょう。
 SSCS(シーシェパード)の妨害行動のターゲットになっている、日新丸の給油係≠ヘ韓国船籍のタンカー、サン・ローレル号です。AFP通信の記事では、船名も記事中できちんと明記されています。ところが、どういうわけか、国内メディアはどこも、船団の他の船と別扱いで「給油タンカー」とのみ伝えています。NHKに至っては、「別の船」・・(上掲リンク)。映像で英字の船名を読もうと思えば読めますが、一般のTV視聴者がいちいちチェックするはずもありませんし。
 これはおそらく、水産庁から「名前を出すな」という指示があったのでしょう。国策調査捕鯨事業で、共同船舶の下につく下請の形とはいえ、税金の一部が韓国の船会社に支払われていることが広く知れわたるのは、うまくないと考えたんでしょうね・・。
 衝突の経緯については、'10のアディ・ギル号の衝突沈没事故の際は詳細に検証しましたが、今回は触れません。前回の事故に関するAUS、NZ政府の見解は、上掲の日豪プレス記事をご参照。筆者がワトソン船長の立場だったらもっとうまく指示してますが・・(そうは言ってもプロレスはやっちゃいけませんけどね・・)。中国・新華社通信の「事故責任について双方が非難し合っている」という記述がいちばんニュートラルな取り上げ方といえるでしょう。

 ここで、一番上のリンクの朝日記事にお目通しいただきましょうか。捕鯨の捕の字もクジラのクの字も出てきませんが、公海調査捕鯨に直結するとても重大な内容が含まれています。皆さんはお気づきになりました?
 引用しながら、少し詳しく解説していきましょう。
 記事は、今月18日に尖閣諸島周辺の日本の領海≠ナ発生した、日本の漁船・八重山漁協の第11善幸丸と中国の海洋監視船2隻との接近トラブルを報じたもの。
 (反反捕鯨右翼に叩かれるのを承知で)あらかじめお断りしておきますが、尖閣諸島(釣魚島)問題に関しては、ほとぼりが冷めるまで日中双方が領有権について完全に棚上げし、船も飛行機も周辺に一切近づけないことが、最も理性的な、ニンゲンらしい解決の道だという立場です。残念ながら国内では少数意見ですが・・。そのうえで、同海域が日本の領海であるとの日本政府の公式見解を踏まえ、今回の事件を検証します。


 漁船の船長は中国公船に追い回されたと主張している。海上保安庁も中国公船と漁船との接近を確認しているが、「追跡中だったのかはっきりしない」としている。(引用)


 NHK等他メディアも指摘していますが、追跡されたのは疑いの余地がありませんね。漁船にはチェコの記者とカメラマンも搭乗、記録も取られたはず。調査捕鯨船は鯨研関係者がビデオをメディアに提供しているわけですが・・。朝日は、日本の海保巡視船による外国漁船への対応と同様に、中国監視船が日本の漁船を排除する行動に出た可能性がある、と解説しています。つまり、海保は政治問題化を避けるために、「追跡」と具体的に断定することを避けたわけです。筆者は賢明な判断だと思いますが・・。
 記事中では、海保から漁船に対し無線連絡による細かい指示があったことが記されています。これは何を意味しているのでしょう? 


 海保の任務は日本人の安全を守ること。だから危険な衝突が予測されれば回避という道を選ぶのは当然のことです。(引用〜『諸君!』'09/2)


 上掲は、ジャーナリスト富坂聰氏による捕鯨ルポルタージュ中の海保関係者へのインタビュー(リンクは下掲)。
 まさに海保は使命に忠実に従い、トラブル回避を最優先にし、中国公船から離れるように、逃げるように、漁船に対して細かい指示を与えたわけです。


 海保にはいつも「島に近づくな」と言われるが、この時は違った。(引用)


 この時は違ったというのは、島影に隠れろという意味にすぎません。要するに、いつも「島に近づくな」と言ってるわけですね。日本の領海なのに。ま、筆者は賢明だと思いますが・・。

 一時は目算で60mほどにまで迫られ、海保の巡視船「あかいし」が、中国公船との間に割って入る場面もあったという。(引用)


 SSCSは460m以内への接近でギャーギャー言われているわけですが・・。


 (石垣港に戻った後)海上保安官が尋ねてきて、「尖閣周辺にはなるべく行かないでください」と注意された。(引用)


 近場の漁師が、領海内で操業しようとしたら、「行かないでくれ」と注意されたのです。理由は上述のとおり、日本人の安全を守ることが最優先だからです。たとえ領海であっても。普通の漁師が生業としている漁であっても。ま、賢明な判断だと思いますけどね・・。
 いま、国を挙げて日本の領海だぞと声高に宣言している、問題が存在していない領海にすぐ近接している尖閣諸島周辺で、ふつうの漁業者が操業することに対し、安全を最優先して逃げる道を選び、近づかないようにと釘を刺したわけです。日本政府は。
 筆者は正しいと思いますよ。沈着冷静な、合理的判断だと思いますよ。
 しかし……尖閣以上に「なるべく行かないで」と注意すべきは、南極海ではないのですか??
 領海でもなんでもない、地球の裏側の南極の海では、それとまさに正反対のことをやっているわけです。この国は。
 中国の監視船とSSCSとは違う? つまり、中国相手だとビビッて逃げるに越したことはないが、相手がオーストラリアやチンピラ団体であれば高圧的に出てOKだと? コソコソ逃げ帰らせ、「なるべく行くな」という注意する代わりに、毎年7、8億円もの国家予算をつけてLRADやら警告弾やら放水砲も装備させ、威嚇的に追突の真似をさせることまでやらせていいのだとおっしゃる? そんなことを言われちゃ、海保はじめ尖閣関係者は甚だ不快だと思いますがね・・。
 林農相は「捕鯨船や乗組員に対する極めて危険な許し難い行為だ」と非難していますが(〜時事)、SSCSの妨害とはまったく無関係に、調査捕鯨事業の中で尊い人命は失われているのです。0度前後の氷付けの海で数分のうちに心臓麻痺を起こす南極海と異なり、尖閣の辺りならまだ数十時間漂流しても助かる見込みはあるでしょう。農相殿、日本の漁業者が領海内で漁ができない状態に対して、「妨害許すまじ」と言って円滑化事業予算をつけますか?
 自国の領海では、トラブルを招く前≠ノ、操業を中止させてでも引き揚げさせるという、賢明な判断ができていながら、なぜ南極ではそれが出来ないのですか?
 石垣の漁業者は守るに値しないと? 公海捕鯨は下っ端の漁民とは別格なのだと?
 それとも、南極海は尖閣周辺の領海とは比較にならないほど、地政学的に重要な、日本にとっての縄張りだということなのでしょうか?
 八重山の漁師と違い、共同船舶は国威を世界に知らしめる、南極という前線で戦う兵士の位置づけだから、ですか?
 でも、「儲かる漁業なんだから補助金ちょうだいよ」って言ってたよね・・・
 北と南の海で同時に起きた二つのトラブルは、日本の強硬的な調査捕鯨推進政策がどれほどとち狂ったものかを、浮き彫りにしたといえます。
 AUSが何を言おうとICJで訴えようとどうでもいいことです(米国はそうもいかないでしょうが・・)。私たち日本人の手で、このバカげた事業を潰さなければ、いずれこの国は計り知れない損害を被ることになるでしょう。


参考リンク:
−『正論』v.s.『諸君!』──保守系オピニオン誌の捕鯨関連記事 (拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/28972939.html
−異常に高い調査捕鯨事業の死亡事故リスク (拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/30992331.html
−異常に高い調査捕鯨事業の死亡事故リスク・2 (拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/34484278.html



◇その他クジラ関連トピック・クリッピング


■今日はクジラ保護の日 (2/19,The Voice of Russia)
http://japanese.ruvr.ru/2013_02_19/105323295/


 ロシアの環境保護団体の動きを伝える記事。記事中に解説されていますが、ロシアは南極海で母船式捕鯨を行っていた最後の2つの国の1つ。先にやめただけエライといえますね。
 サハリンの研究グループの非致死的調査の記事も。サハリン周辺に生息するのは、主に日本の新旧の捕鯨によって絶滅寸前に追い込まれ、未だ危機を脱していないニシコククジラ。ただ、記事中の解説にある回遊ルートは東のコククジラですね・・。サハリンU中止については、コククジラやオオワシ等稀少な渡り鳥の生息地としての重要性に配慮された経緯があるのですが、鯨研の西脇販売員殿は「陰謀のせいだ!」と吠えております・・・
 とりあえず、北極圏開発にあたっては、鯨類はじめ野生動物の生息を脅かさないよう、十分配慮していただきたいものです。


■“上限”  (さあ!諸君!捕鯨問題だ!)
http://textream.yahoo.co.jp/message/1834578/a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa?comment=62252


 儲かる漁業補助金を受けるため、KKP(クジラ改善プロジェクト)なる経営改善プログラムが用意され、年間生産量の妥当なラインを設定されてしまった′フの苦しい弁明のお話。
 +−が付く上限がどこにあるんじゃ!!!
 日本語として正しい使い方をするなら、上限はミンク935頭ということになりますけどね。
 科学としても、(日本語)文化の点でも、ここまでお粗末なのが調査捕鯨なのです。

posted by カメクジラネコ at 23:04| Comment(5) | TrackBack(0) | 社会科学系

2013年02月06日

日本の調査捕鯨に反対するデモ行進

日本の調査捕鯨に反対するデモ行進

【日程】
2月9日(土)
【時間】13:00(開始) 13:30(集合)
14:00(デモ行進出発) 15:00(デモ行進終了)

15:10(解散)
【集合】
宮下公園北側(フットサルコート横)
渋谷駅ハチ公口から三千里薬局の方向に道なりに進み、山手線の陸橋をくぐってすぐのところにある階段を登ってください。歩いて渋谷駅から徒歩で5分程の距離です。解散場所は宮下公園のとおり向いのファミリエ神宮前の公園です。
http://goo.gl/maps/xXVYt

【主催】 海洋哺乳類を守る会〜Action for Marine Mammals〜

 もうすぐです。
 
 日本の市民が主体となり、世界に呼びかけることで実現した、歴史的なデモです。
 皆さんもぜひ参加、応援してください!
 厚かましくも、被災地のための復興予算まで自分たちの赤字穴埋めに利用した捕鯨サークルに、これ以上好き勝手に南極の自然を貪らせるわけにはいきません。
 脱原発、脱米軍基地、脱捕鯨の声を届けましょう。
 メディアの方は、取材と記事のほうをぜひよろしくお願いします。
 

 筆者は当日参加できないため、バックアップだけさせていただきますm(_ _)m


◇クジラ関連ニュースクリッピング

■捕鯨船で日本に不快感=豪環境相 (2/1,時事)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201302/2013020100680
■日本船がEEZ進入と抗議 反捕鯨のオーストラリア (2/1,産経)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130201/asi13020113280001-n1.htm


 接続水域をウロウロする中国監視船に対する日本の政府・メディア・市民の反発と、同じように受け止められていることを、日本ははっきりと認識したほうがいいでしょう。

■渡辺容疑者は鬼の鯨屋「普通の人じゃない」 (2/1,日刊スポーツ)
http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp0-20130201-1079401.html


 鯨肉販売事業者が引き起こした例の凶悪事件、鯨研にも問い合わせがあったそうな。。販売員の西脇殿は、「これがマグロだったらどうすんだ!」とメディアに応えたそうですが・・
 この件はブリーダーによる愛犬家殺人事件と照らし合わせて背景を探っていく必要があるように、筆者には思えます。


参考リンク:
−筆者のツイログ
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-130201



◇クジラたちの海──the next age


 執筆のほうは順調に進んでおります。
 「第T部 南緯70°」クジラパートは終了。<毛なしのアザラシ>パートの方が骨が折れますが・・
 この後、「大鯨研」の東和木団長や真面目すぎる海保職員、TVディレクターなどのキャラも登場する予定。
 (本作品はフィクションです・・)
 前作読んでないとワケワカメですが、暇な人は感想送ってニャ〜


http://www.kkneko.com/nvl/novel.htm

http://www.kkneko.com/nvl/nmokuji.htm

posted by カメクジラネコ at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系

2012年12月14日

北は人工衛星という名のミサイル、日本は調査捕鯨という名の商業捕鯨

 北朝鮮のミサイル発射、いったん"秒読み"が止まったかと思いきや、見事に裏を掻かれましたね。無惨な失敗に終わった4月と異なり、今回は"無事"に物体が周回軌道に乗った模様。人工≠フ衛星≠ニいう、まさに言葉の定義どおり。韓国が失敗したロケットのコースとほぼ変わらず、IMO(国際海事機関)に対しても落下予測地点を通報し、手順に則っていますし。一方で、再突入関連の技術、搭載のための核の小型化など、クリアする必要のある課題がいくつかあるため、弾道ミサイル/核ミサイルとしての定義を"まだ"満たしているとはいえません。その意味においても、「ミサイルではなく人工衛星」との北朝鮮の主張は「正しい」とはいえるでしょう。
 米国と水面下で協議中に面子を潰された格好となった中国も、これまでにない強い調子で今回の発射を非難。ただ、国連安保理では、中国やロシアが制裁決議案に反対すれば、法的拘束力のない議長声明レベルの非難に留まる見通し。
 強気の制裁に難渋を示す中国に対し、日本国内では「米国ゾーンと隣接する"脅威"を避けるべく、北朝鮮を緩衝帯・カードとして利用している」との見方が専ら。しかし、この主張にはいくつもの飛躍があります。強気の制裁をすれば、一気に北朝鮮が韓国と統一され、米国の支配権に取り込まれる、という前提がそもそもおかしいでしょう。北朝鮮に対する北風外交≠ヘ実効的な成果を挙げていません。公平を期せば太陽外交≠燗ッ様ですが・・。これは、強硬路線が常に正しいとする特定の立場からの一つの見解にすぎないわけです。また、まるで統一後の朝鮮、あるいは日本が、独自の外交方針を打ち出せない米国の属領であるかのような言い草。曲がりなりにも民主主義の大国で、国境紛争や核をめぐる対立も抱えるインドとも、中国は既に隣接しているわけです。両国は新興国のリーダー同士として、政治経済など多方面で連携してもいます。国境を越えてサービス・ヒト・物が行き交う時代、物理的な国境の接続は大きな意味を持たないでしょう。少なくとも今以上には。中印、あるいは現在の日韓(経済的結びつきも深く、対日外交でも協調・・)と同様、中朝も中米・米朝とは別個の、互恵主義に基づく独自の外交関係を進展させればいい話。多様な二国・多国間関係のあり方を無視し、東アジアを大国中米の対立構造のみに集約する、きわめて短絡的な見方です。
 常識的に考えるなら、北朝鮮の体制崩壊によって大量の難民が発生するなどすれば、経済的にも隣接地域の住民にも甚大な被害をもたらすことが明らかだからこそ、中国としては「刺激して暴発されるのを防ぎたい」わけです。中国と韓国/北朝鮮との間にも一部領土問題があるようですが、体制と無関係ですし、日中・日韓ほどこじれることはありますまい・・。むしろ、米軍駐留の大きな根拠がなくなる利点の方が大きいでしょう。中国にとっての利益は、朝鮮半島問題のソフトランディングのはずです。
 もう一方の米国はどうでしょうか? 長距離弾道ミサイルの射程内といっても、本当の脅威≠ニ化すまでにはまだ数年かかると見込まれています。北朝鮮が技術開発をさらに進展させるという前提ですが。体制存続に対する保障や制裁解除/支援を引き出すいつも通りの手法≠セということも、当事者は理解しているはず。米国にとってはまだ遠いアジアの片隅の出来事で、差し迫った危機との認識はないでしょう。米国がこのところ、日本を慮るかのように太平洋での軍事プレゼンスに言及しているのは、明白な理由があります。中国が脅威だから、ではありません。欧州・中東に代わり「拡大の余地がある市場」だからです。北朝鮮・中国を防衛産業の利益につなげるカードにしているのは、むしろ米国。手厚い思いやり予算にオスプレイ導入、次期主力戦闘機の選定に至るまで、赤字財政の中で頼れるお得意様である日本へのリップサービスが、理に適った行動だから。もっとも、イラクやアフガンの泥沼のような、よその戦争≠ナカネ・死者を出すことへの国内の反発を回避するには、緊張を一定水準に抑え、冷戦状態で維持することが不可欠。付け加えれば、日本が国防軍や核を持ち、アジア情勢を激変させて緊張を一挙に高めることなど、米国の識者は誰も望んでいないはず。安保の枠内で手懐けつつ鎖でつないでおくのが一番。
 では、日本は? 世界が自分たちの味方をして、寄ってたかって北朝鮮をイジってくれれば溜飲が下がり、沽券を守れる、という程度にしか見えません。保守政治家・論壇は脅威を排除するどころか、「目には目を」と自衛隊の国防軍化や核シミュレーションを訴えるばかり。勇ましくも空疎な彼らの言葉からは、ミサイル/戦争の脅威をどうすれば減らし、なくすことが出来るのか──という視点が何一つ見えてこないのです。
 もしかして、先制攻撃で一気に敵を叩き潰し、国内の被害をゼロにすることが可能だとでも思っているのでしょうか? バカげています。イスラエルとパレスチナのように、幼い子をはじめ命を奪われる被害者の数が、相手側の方が圧倒的に多いとしても、拉致をも上回る重い罪です。東アジアを、中東を越える危険地帯、世界の火薬庫にしたいのでしょうか? 世界で幾度も繰り返されてきた、互いにいがみ合い、憎しみ合い、血で血を洗う暴力の連鎖を、「暴力によって断ち切れるかどうか」、まだ試し足りないというのでしょうか?
 現実的な対応として考えられるのは、まず標的となれば甚大な被害をもたらす原発の即時廃止。そして、挑発に対して挑発でやり返す、危機を加速しかねない内向き外交をやめることです。冷静に得失を判断することです。中韓米ロと緊密に連携し、東アジア地域のすべての市民の平和と安全という実益≠確実に引き出すべく、粘り強く交渉を続けることです。日本の気象・通信衛星等を用いたサービスの一部を提供する、代わりに衛星を打ち上げてあげる、宇宙開発分野で技術協力する、その見返りとして民主化を進めさせる(拉致問題の詳細な経緯に関わる情報も公開させる)──戦争を阻止するためのそうしたアイディアはいくらでも考えられるはずです。大義≠ネどどうでもよろしい。実益≠アそが唯一の大義≠ネのですから。その意味でも、脳が戦時中の状態で化石化したままの元都知事の、わざわざ中国との間に火種を撒いた愚かなパフォーマンスは、まさに「百害あって一利なし」でした。
 北朝鮮も、そして中国も、民主化は避けて通れない課題です。チベット、台湾の問題もあります。自由と権利が保障されない両国の市民にとっては切実でしょう。しかし、たとえ時間がかかっても、民主化はあくまで非暴力的な、民主的な℃闥iで達成されなければなりません。多数の犠牲と引き換えにでも拙速に結果を求める、ということはしてはいけません。ついでにいえば、日本・米国を含む先進国でも、市民の権利保障に関わる問題が残っていないわけではないのですから。
 孤立して怯え、意固地になっているのが今の北朝鮮だとすれば、いままさに台頭しつつある日本の保守勢力の主張には、米中と肩を並べる「大国でありたい」との願望が顕著に表れています。中国に対する蔑称を連呼する狂った老人の稚児じみたヒステリックな反応からは、「かつての∴ミ信を取り戻したい」との妄想に等しい野望すら透けて見えます。GDPで抜かれたことに対する中国へのやっかみ、戦争に負け、未だ安保の鎖でつなぎとめられたままでいることに対する米国へのルサンチマン。今の日本に核と(自衛の呼称を外した)軍隊を持たせたら、アジア・太平洋諸国、中国・米国・韓国・豪州はじめ世界の国々にとって、北朝鮮よりはるかに厄介で危険なお荷物≠ノなりかねません
 もっとも、奇妙なことに、ミサイル問題の一連の経緯については、「全部(大国である)米中の責任で、(大国でない)日本に責任はないんだ」と言わんばかりの解説が専ら。自ら責任を負おうとしない国が、大国を名乗るに相応しいと果たしていえるでしょうか? いずれにせよ、いま安保理が抱えている問題は、日本を常任理入りさせて大国の仲間入り≠ウせることでは何ら解決しません。地理的・歴史的に縁があり人的・経済的交流も深い中国、韓国など周辺の国々ではなく、太平洋・アフリカ・カリブなどの経済力の乏しい国々に対し、ODA・札束を用いて自国の安保理入りに賛同するよう働きかける姑息な手段しか使えない国が、仮に常任理事国になったとしても、世界にとってろくなことにはならないでしょう。どのみち、米国の票を2票に増やすだけですし。日本が米国とのスタンスの違いを強調するのは、公海捕鯨のみなのですから。
 もう一点、北朝鮮の主張は、確かに筋が通っています。前述のとおり、現時点では「ミサイルではなく人工衛星」。そして、弾道ミサイル技術や核を現に保有する大国があるにも関わらず、「なぜ北朝鮮だけ≠ェ非難されるのか? これは差別≠セ!」という主張。NPT(核拡散防止条約)は、核保有国とそれ以外を峻別する、明々白々な差別的条約です。国連の安全保障理事会もまた然り。特定の大国にのみ絶大な権限を与えており、まさに不合理の極みといえます。公平でないといえば、日米安保条約もそうですが。北朝鮮が危険な専制国家であるのも事実ですが、中国も一党独裁国家。そして、民主主義のリーダーを自認する米国も、蓋を開ければ銃と宗教に支配される、特定の主義・思想に異常なほど凝り固まった国であり、筆者の目には北朝鮮や中国に決して引けを取らないオソロシイ国に映ります・・。いずれにせよ、北朝鮮を罰しようとする世界の側が、決して公平・公正の原理に基づいてなどいないことは明らかです。
 「それが現実だから」と、敢えて触れるのを避けるのがオトナのやり方なのでしょう。しかし、道理を引っ込めるのであれば、やはり北朝鮮を非難する資格はないのではありませんか? 北朝鮮に対して核・ミサイル技術の即時放棄を要求するのであれば、既存の核大国には核廃絶に向けたより真剣で加速的な取り組みを求め、イスラエル・パキスタンのような新規例外≠絶対に認めず、日本のような平和名目の原子力技術保有国に対しても査察を強め、核オプションを手に入れさせないことを確実に保証するのがスジというもの。もちろん、テロへの利用、標的としての危険性など様々な要因を考慮しても、核と表裏一体の原発そのものを世界からなくしていく選択が最善といえますが。


 少し長々と北朝鮮ミサイル問題を論じましたが、ここで本題に戻りましょう。本題といっても、核問題・今回の衆院選をめぐる問題の前では、調査捕鯨は小さなトピックでしかありませんが・・
 従前から主張してきましたが、北朝鮮のミサイルと日本の調査捕鯨はまさに瓜二つなのです。
 弁明の苦しさでいえば、北朝鮮以上=Bミサイルと必ずしも言い切れない部分がある北朝鮮の人工衛星(打ち上げロケット)に比べ、日本の調査捕鯨は文字どおり商業捕鯨。兼業≠ナ、質の低い、必要のない、ムダでバカげた体裁だけの調査をやっているだけ。副産物≠ニいう名の鯨肉を市場に販売しているのは紛れもない事実。そして、発生した赤字を日本国民の税金で埋め合わせしている点で、公共事業的性格を帯びた商業捕鯨だということ。ご丁寧にも、水産庁自らが「儲かる漁業」として認定したくらいですし・・。以前指摘したとおり、まさしく「儲かってないけど儲けたい商業捕鯨」なのです。
 そもそも、最初に国際捕鯨取締条約(ICRW)の条約案が起草された時点では、調査捕鯨の規模は数頭〜10頭程度と想定されていました。「商業捕鯨と同規模の調査捕鯨」などという想定外≠ヨの配慮がなかったために、縛りを入れなかったのです。そこが条約の抜け穴となり、日本や旧ソ連によって悪用されてしまったわけです。詳細は下掲の2番目のリンクをご参照。
 下の中国メディアの報道ですが、IWC(国際捕鯨委員会)で認められているのが「小規模な調査捕鯨のみ」との記載は誤り。悪意のある記事ではありませんが。IWC/ICRWで規制対象外として扱われ、規模を限定されないからこその悪用。そこがまさに日本がつけ込んだ「ルールの隙」というわけです。

■韓国の調査捕鯨見送り、「ルールの隙につけ込む日本と違う」―グリーンピースが歓迎の意 (12/11,新華社)
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/politics_economics_society/325750/2/


 国際機関、決議をめぐる経緯も同様。北朝鮮は既にNPTを脱退していますから、日本のステータスは、NPTに留まりつつ「平和利用」を掲げ、核開発を進めるイランに近いといえるでしょう。反反捕鯨論者の唱えるIWC脱退路線は、「北朝鮮のステージまでもう一歩進めろ!」という話。海外の市民の反対の声を無視し、発射ならぬ出漁を強行する姿勢は、既に北朝鮮レベルといえますが。
 ひとつ注意いただきたいのは、日本国内では「国際機関が調査捕鯨を許可している」と誤解されがちですが、発給許可は当該国。調査捕鯨をやりたい国が勝手にやるのを、IWCが「止められない」というのが正解。条約の付表改正で、調査捕鯨の結果をIWCに報告し資料を提出することがようやく義務付けられたにすぎません。
 北朝鮮に対しては、’06年の核実験後に日本の強い働きかけで経済制裁を盛り込んだ強い決議が通りました。IWCでは年次会議の度に日本の調査捕鯨に対する非難決議が採択されてきました。ここ数年はデソト提案に基づく交渉を優先すべく票決は見送られていましたが。あまり効を奏していないのは同じ。安保理決議が中ロの反対・棄権でなかなか通らないのも(パレスチナ問題の足を引っ張るのは米ですが・・)、条約改正に必要な3/4をめぐり日本と反捕鯨国による綱引きが続き膠着状態に陥っているのも、コンセンサスの理念が政治力学の現実に負けることによる機能不全という点では同じ。
 この他、北朝鮮のNPT脱退と日本のボン条約(移動性野生動物種の保全に関する国際条約)未加盟問題、「公海からの持込はCITES(ワシントン条約)違反」との国際法学者ピーター・サンド氏の指摘に対する日本側の反論など、多くの点で北朝鮮と捕鯨ニッポンの相似形が見て取れます。下掲のリンク先の過去記事もご参照。
 鯨研の調査部長兼販売員氏らが唱える「差別論」も、まさに北朝鮮の言い分そっくり。稀少鯨類保護などをネタに、「こっち来るな、あっち行け!」と必死のツイートを連発していますが・・。実際には、例えばメコン川流域のカワゴンドウの個体群も絶滅寸前ですが、WWFなどNGOが保護の取り組みを住民とともに懸命に進めているにもかかわらず、日本はあろうことにもCITESで留保しているのです。鯨研の御用学者らは、研究者として国に働きかけることさえしようとはしません。結局、彼らは自己保身しか考えていないのです。決してSSCSを口撃できる立場にはありません。産官学一体の利権構造を死守するためであれば、専制体制の維持に躍起になる北朝鮮と、裏側の事情まで瓜二つといえますね・・。
 北朝鮮のミサイルも、日本の調査捕鯨も、外から叩くだけで解決はできませんし、どちらも公平でないという見方も一理あるでしょう。核廃絶・軍縮・銃規制、野生動物の保護・環境負荷の観点からの食生活の見直し、どちらも国際社会が継続的に取り組み、前進させなければならない大きな課題です。であればこそ、まず北朝鮮の核と日本の公海捕鯨の問題を片付けるべきでしょう。それによって、市民やメディアのリソース・エネルギーがこれ以上ムダに浪費され、敵対的共存関係にある受益者の存続に寄与するのを防ぐことができるのです。大事なのは、常に地球にとって、市民にとっての結果であり、実効性なのですから。
 米中日も含めたすべての国の核・軍需産業、あるいはすべての動物・自然の敵≠ノとって、時間稼ぎのためのありがたいの役割を果たして"くれて"いる、北朝鮮の核と日本の捕鯨。手っ取り早く潰せるに越したことはありません。
 ただし、くれぐれも留意していただきたいのは、上から、外から目線で、拙速にオール≠求めてはならないということです。外交関係樹立一歩手前で破綻させた日本の対北朝鮮政策。内発的な世論醸成を怠ったままで外圧によるモラトリアムを急いだ結果、手だれの広報コンサルに入られてマスコミを抱き込まれ、対抗策のない調査捕鯨を継続させたうえ拡大増産まで招いた反捕鯨運動。同じ過ちを繰り返してはなりません。アメとムチは常に必要ですが、非難するだけで果実は決して得られません。非民主的な体制が一定期間残存するのも、沿岸捕鯨を容認するのも、大きな不満を覚える向きはあるでしょう。しかし、段階を経たソフトランディング以外に、真の解決策はありません。その過程を省けば、永久に足踏みを続けた挙句、待っているのは悲劇だけです。


 遺憾なことに、北朝鮮はミサイル発射を思いとどまることができませんでした。調査捕鯨船団の南極に向けた出港も秒読み段階ですが、母船改修という合理的理由すら族議員の反発で引っ込め、自制心を欠いたまま強硬姿勢を貫くなら、やはり日本も北朝鮮と同水準≠ニの謗りはまぬかれません。国民の1人としてはひたすら残念でなりません。
 つい先日も女性週刊誌で記事が出たように、マスコミも臆することなく継続的に復興予算流用問題を追及するようになりました。また、9日の日経の記事では、「儲かる漁業」事業対象としての異質さ、情報の不透明さなど、調査捕鯨への国費投入の問題点が的確に指摘されています。国内の流れは明らかに変わってきています。原発・沖縄・TPPなど、国の将来に関わる重大事とは比較にならない些末事・南極プロレス≠ノ、国民はいい加減うんざりしています。北朝鮮のミサイルと同じ、国威発揚のためのただのパフォーマンスを、大多数の国民は冷めた目で見ているのです。変わっていないのは永田町と霞ヶ関だけ。
 北朝鮮との唯一の違いは、国家主席を無理やり賛美させられている同国の市民と異なり、日本人は自国の政府が誤ったことをしでかしたら「NO」と言えることです。今度の選挙結果次第では雲行きが怪しくなりそうな気配ですが・・。
 まだ間に合います。中止してください。北朝鮮と同等の愚行を、自ら犯すような真似はしないでください。


参考リンク:
■北朝鮮と瓜二つの捕鯨ニッポン──ミサイル発射問題に見る両国の同質性
http://kkneko.sblo.jp/article/27984976.html
■実態に見合わない国際捕鯨取締条約は改正すべき
http://kkneko.sblo.jp/article/25798112.html
■調査捕鯨の正体は「儲かってないけど儲けたい商業捕鯨」だった
http://kkneko.sblo.jp/article/58981151.html
■中国発捕鯨批判/捕鯨ニッポン、ヤクザ並に豪州を恫喝/鯨肉教育
http://kkneko.sblo.jp/article/34860899.html
■稚拙な反反捕鯨論で顕になった海洋学の権威・山田吉彦氏の正体
http://kkneko.sblo.jp/article/58646271.html
■マスコミが伝えようとしない調査捕鯨の「負の側面」
http://www.asyura2.com/10/senkyo77/msg/177.html
■クジラ捕獲量が半減へ 鯨肉売れず在庫過剰に 妨害活動を警戒、調査抑制 (12/9,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFB0701U_Y2A201C1000000/?df=2&dg=1
■鯨研西脇氏の関連ツイート
http://twilog.org/Ryosyuisanakuma/ 
■筆者のツイート
http://twilog.org/kamekujiraneko/

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2012年11月27日

調査捕鯨への復興予算流用問題/科学オンチの小松氏

◇調査捕鯨への復興予算流用問題は終わっていない

■マスコミが伝えきれない調査捕鯨への復興予算流用問題
 3.作られた18億円の数字──算定根拠への疑問
http://www.janjanblog.com/archives/84065


 市民新聞記事を更新、追加の章を加えました。長官と副大臣の発言など、一部の誤りも訂正しています。
 鯨肉土産も復興予算も横流しする捕鯨サークル。今回の問題は、マスコミや野党議員の指摘する「バケットの違い」にとどまりません。18億円という金額自体が、不当に高い要求といわざるを得ません。
 これを機会に、調査捕鯨につぎ込まれてきた多額の補助金は、会計検査院など第三者機関の手で徹底的に洗い直されるべきなのです。



◇科学オンチの捕鯨推進教祖・小松正之氏


■「後退する捕鯨外交」−小松正之(中国新聞に寄稿)|周防大島郷土大学のブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/kyoudodaigaku108/14224576.html

 調査捕鯨政策立案に関わった元水産官僚で現政策研究大学院大学教授の小松正之氏が、「後退する捕鯨外交」と題して中国新聞のオピニオン欄に自論を寄稿。
 自らの手で調査捕鯨計画の二期目への移行を仕切った手前、自身の思い描いたシナリオから大きく外れ、捕鯨サークルが苦境に陥ってもがいている現状を見て、苦々しい思いに駆られたのでしょう。もっとも、鯨研の収益を悪化させた一番の原因は無茶な拡大増産であり、すなわち小松氏自身の責任に他ならないのですが。
 小松氏自身にとって、捕鯨政策を担った中心人物として世界を相手に強硬姿勢を貫いたことは、自らの「輝かしい業績」であり、きっと強い自負を抱かれていることでしょう。おかげで、『ニューズウィーク』の100人の日本人≠ノも選ばれたわけですし・・。もっとも、以前『AERA』が記事にした、小松氏の暴走≠ノ対する事実上の左遷人事から推察する限り、水産庁側の評価は氏の自己採点と食い違ったようですが・・。
 国民の立場から言わせてもらえば、彼は高速道路やダムを造りまくった国交官僚と同じく、捕鯨業界と癒着して国民に高いツケを背負わせた悪玉官僚の代表でしかありません。復興予算流用問題はまさにその象徴といえます。

 さて、問題の寄稿文に目を通してみると、一線から退いた所為なのか、ずいぶんと粗が目立ちますね・・。
 2段落目に「わが国は」とありますが、アガディール総会におけるいわゆるデソト提案は、IWCが中立の米国主導のもと外部専門家を入れ、日本と豪州等強硬路線の反捕鯨国に対して提示したものであり、日本は交渉のテーブルに着いただけで「妥協案を示した」わけではありません。交渉の場では駆け引きのために、非公式に議長案に対する対案を出しはしたでしょうが。いずれにせよ、最終的にこれを蹴ったのです。さらに、この調停案の内容は、事実上の無規制捕鯨である調査捕鯨の定義替え、(小松氏が強引に拡大した)南極海での捕獲枠の縮小と一種の見返りとしての沿岸捕鯨容認でした。おそらく、自らの功績を台無しにされることへの危機感なのでしょうが、小松氏の記述はあまりにも公平を欠きます。議論された2年前当時も、IWCにおける決定プロセスに対し、水産業界紙上でものすごい剣幕で噛み付いているのですが。
 3段落目、南極海での大規模な母船式調査捕鯨は日本独自のもので、アイスランドとノルウェーは進出する気など元々微塵もありません。日本の超拡張主義と一緒くたにされるのも、鯨肉の輸出先としての日本市場で競合する調査鯨肉の価格を下げられるのも、面白くないだけでしょう。デソト提案の内容を見れば一目瞭然、海域も形態も規模も異なる両国の捕鯨とは無関係で、期待するところなど何もないのです。あまりにも素朴にすぎる食糧資源云々については、食糧問題の文脈で決して相手にされるレベルではないので無視しますが・・・
 4段落目、SSの妨害に対する海保巡視船派遣などの主張は、小松氏が事業の必要性や拠出額の妥当性に関する議論を無視した強硬な原理主義者だというだけ。「何ら実効策を講じてこなかった」と主張していますが、実際にはその後年間7、8億円もの巨額の税金を投じ、LRADを搭載したり海保職員を搭乗させるなどの対策が取られたものの、軍拡競争¥態で実効が上がらなかったということです。南極海でのプロレスにさらなる国民の血税を注ぎ込んで、本当に血生臭い武力抗争のレベルにエスカレートさせろ、というのが小松氏の主張なのでしょうか?
 5段落目、小松氏は「冷凍能力やクジラの引き上げ能力の低下が著しい」と指摘。まるで、老朽化で冷凍庫が駄目になり、すぐにも腐りかねないかのような言い草ですが・・。しかし、「儲かる漁業」審議会に提出されたKKPの計画書では、船体リフレッシュの項目として「急冷室床板の交換」を掲げているだけ。関連設備が旧式で、小松氏レベルの舌の肥えた最近の美食家への訴求力がないため、彼らの欲求を満たすよう新式の設備と入れ替えて品質を向上させろ、という話なのです。
 次節からが今年の年次会議に関する内容。2段落目に、「米アラスカ先住民による生存捕鯨の捕獲枠が検討され、認められた」とあります。事情を知らない方が読めば、「今まで認められなかったものが、今回突然遡上に上り、捕獲していいことになったのか」と誤解しかねない記述ですね。実際には、従来の捕獲枠が5年毎の区切りで「更新」されたにすぎません。確かに、アイヌの捕鯨再開を求める機会にはなったかもしれませんが、日本の捕鯨会社による商業捕鯨とは一切関係ないのです。ついでながら、日本側は例年どおり沿岸小型捕鯨の捕獲枠要求をくり返しています。
 問題は、3段落目以降の南極海ミンククジラ(クロミンククジラ)に関する部分。まず、個体数の調査年度の記述(生息数の次の括弧とじの部分)が間違っていますね。国際鯨類探査十ヵ年計画(IDCR/SOWER)の2周目(CP2)の実施年は1985/86-1990/91、同じく3周目(CP3)は1992/93-2003/04。目視調査は一度に1海区分しか行えないため、6海区分のデータがそろうまで最低でも6年以上かかります。資料を見て早とちりしたのでしょうが、基本を忘れてしまうのは困りもの。
 さらに、「30%の減少は統計的に意味のある差ではないと科学委員会で結論付けられた」とありますが、ものすごく乱暴な"異訳"です。もし、報告をきちんと読んだのであれば、恣意的なすり替えといわざるを得ません。
 以下に国際捕鯨委員会科学委員会(IWC-SC)の今年の報告の該当部分を抜粋しましょう(リンクは記事末)。

The confidence interval for the ratio of the total estimated abundance from CPII and CPIII included 1.0
and thus a null hypothesis of no change in overall abundance between the two periods would not be
rejected. Nevertheless, the Committee considered that a change was quite likely, and discussed possible reasons for a decline in the estimated abundance of whales in the surveyed areas.(引用)

 小松氏は前段の部分のみ抜き出した上で"異訳"したわけですが、同じ科学委の結論である次のセンテンスの指摘はすっぽり抜け落ちています。
 統計では、例えば信頼区間を95%とした場合、2周目と3周目の調査時の(実際の)生息数が同じだったと仮定して、無作為に標本を抽出した場合に、測定値と同じく20万頭以上もの差が生じる確率が5%以上(6%や7%だろうと)あれば、「虚無仮説が棄却されない(有意性がない)」という見方をします。有意性の解釈(数学的な有意性と、実質科学的な有意性との区別がつかない非専門家の誤解)については、下のリンクもご参照。
 いずれにしても、この結果は、「データが30%に及ぶ減少を示したとしても、元となる生息数に変化がない可能性も(統計的に)無視することはできない」といっているにすぎません。そして、「変化している(約20万頭、30%分減少している。実際に減っているか、別の理由で)可能性が高い」と科学委は明確に結論付けています。調査データの精度が粗いため、間違いなく減っていると断言できない、というだけなのです。「安定している」などという結論は報告のどこにも書いてありません。日本側は確かにそう(「全部氷の下に隠れてるんだ!」と・・)主張し続けてきましたが、十分な根拠のない定性的な仮説にすぎず、科学委の総意としての結論は得られていないのです。
 ところが、小松氏は、その科学委の報告を無視し、「つまりミンククジラは資源として安定し、持続利用が可能である」などと勝手に断定してしまったのです。
 繰り返しになりますが、南極海に生息するクロミンククジラの生息数についての、両陣営の科学者による数年に及ぶ議論で明らかになったのは、調査の結果として10年ほどの間に30%もの減少が示され、「実際に減っている可能性がある(ただし、変化していない可能性もゼロではない)」ということです。
 「科学的」「持続的」というフレーズが好きな小松氏ですが、彼の最も大きなの一つは、クロミンククジラに対し「海のゴキブリ」という非科学的な呼称を付け、「間引かないと増えすぎて大変なことになる」などと科学的根拠などかけらもない俗説を流布させたことでした。減少を強く疑わせる結果が示されたこの調査期間中にも。一体いつから「安定」でいいことになったのでしょうか? 水産ODAによるIWC票買い疑惑に関する見解もそうでしたが、まさしく信用の置けない霞ヶ関官僚の典型と言わざるを得ません。
 復興予算流用問題に対する、「復興予算は全部東北のものという権利主張のつもりか」という官僚擁護の発言も、まさに小松氏が霞ヶ関的思考回路の持ち主であることを示していますが。
 2節目の最後の段落で、小松氏は国際捕鯨取締条約(ICRW)8条、調査捕鯨に関する条項を引いて、「国民への十分な鯨肉供給量を賄えない」と結んでいます。ICRWは加工と取得金の国による管理を義務付けているだけ。「売って儲けろ」なんて一言も書いてません。「調査の結果生じた"副産物"を売った金は、きちんと調査経費に充てろ」というのが主旨。副産物の供給のために調査をやるのではまさに本末転倒。科学調査の名を借りた商業捕鯨以外の何物でもありません。ついでに、在庫が有り余っている以上、国民への供給量を賄えない状態にはなりません。水産庁側の説明も「畝須等の高級品だけが売れている」。つまり、国民のためなどではなく、高級料亭を利用するほんの一握りの美食家のために継続を目論んでいるのが調査捕鯨なのです。
 最後の節、韓国の調査捕鯨参戦宣言については、7月6日及び14日の拙ブログ記事をご参照。
 同2段落目、まるで民主党の所為であるかのような言いぶりですが、自滅です。その責任があるのは小松氏。仮に3年前に自民党が勝って政権交代がなかったとしても、大勢は何も変わらなかったでしょう。民主党政権になる前から、坂を転げ落ちる予兆は十分にあったのですから。
 最後の段落は、本当に無責任の一言に尽きます。

「以上のような捕鯨外交のつけを回すために、巨額の補助金を投入するのでは、国民の理解は得られまい」(引用)

 確かに、小松氏が水産庁を去った後、同庁はきわめて中途半端に、消極的に軌道修正し、現状黙認路線を取ってきました。しかし、巨額の補助金が必要になったそもそもの発端は、小松氏が先導した誤った捕鯨外交の強硬拡大路線に他なりません。ツケを回したのはまさに小松氏自身。この論説そのもので同氏が主張しているように、海保巡視艇派遣や諸々の追加設備投資、販促活動等を国の肝煎りでやるとなれば、補助金がますます膨れ上がるだけです。それこそ国民の理解が得られるはずなどないではありませんか。

 小松氏が100人の日本人≠ノ選ばれたのは、外交手腕が優れていたからではありますまい。対米追従が基本の日本の外交官の中で、彼が異色のキャラだったというだけの話。そして、昨今の政治家の如く、威勢のいい強腰の姿勢がウケたというだけ。
 真に優れた外交官とは、耳に心地よいばかりの言を弄して外交上も財政上も高いツケを国民に背負わせた小松氏のような無責任な官僚ではなく、駐中国大使の丹羽氏のように、極右政治家の愚挙に対し、たとえ苦い薬であっても大局的見地から真に国のためになる諌言を勇気を持って呈することのできる人物ではないでしょうか。


関連リンク:
■鯨類捕獲調査改革推進集中プロジェクト改革計画書
http://www.jf-net.ne.jp/fpo/gyoumu/hojyojigyo/01kozo/nintei_file/20121002_kujira.pdf
■Report of the Scientific Comimittee:IWC/64/Rep1
http://www.iwcoffice.org/cache/downloads/6r8jq8llm4cgso0sc0k000w8c/64-Rep1rev1.pdf (リンク切れ)
http://iwc.int/index.php?cID=2893&cType=document
■統計学入門・有意性検定の考え方
http://www.snap-tck.com/room04/c01/stat/stat01/stat0105.html
■捕鯨政策の裏側(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/13459966.html
■持続的利用原理主義さえデタラメだった/小松氏ウヨガキ化?(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/37285308.html
■小松氏(@romakomatsu)の復興関連ツイート
https://twitter.com/romakomatsu/status/215292321204404224
■筆者のツイート
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-121030



◇お知らせ


 柿もハヤトウリも今年は不作。生り年に原発にやられた感じ・・。
 さて、日新丸はいつ出港するのやら・・選挙期間中にこっそり出そうですね。今期は小幅改造で事故の心配はしなくてもいいのかもしれませんが・・。
 今後も、「完全商業捕鯨化に向けKKP発進・アンチSSからバレニンにキャッチを変更」「シャチとザトウクジラの深すぎる愛(NHK特集関連)」など、お伝えしたい内容はたくさんあるのですが、余裕がなければTwilogへのリンクで済ませるかもしれません(汗
 もうひとつお知らせ。『クジラたちの海』の続編、『クジラたちの海──the next age』の執筆にかかる予定。
 前作は米軍の核事故がメインテーマでしたが、今回はもちろん「311・フクシマ」です。ジュゴン(沖縄基地問題)も登場予定。毛色がまったく変わり、いろいろ辛い内容になるかもしれません。詳細は次回以降に。

posted by カメクジラネコ at 03:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系