2011年04月17日

福島第一原発とクジラ(その5)/最後の花見

◇福島第一原発とクジラ(続き)

 文科省のシミュレーションについて補足。前回述べたとおり、「4/12以降の放射性物質放出なし」との前提はとっくに崩れています。
 シルトフェンスは拡散を遅らせるのみ。"仮設"の止水板や"猫砂"入り土嚢もまだ作業中。そもそも漏出箇所が確認された取水口側のピットだけなのか、甚だ疑問ですが。30km沖合の海水モニタリングの結果を見ても、観測点によりばらつきはあれ4/13日になっても半減期8日のヨウ素131の検出濃度にさほど変化はありません(同日の最高値は64.1Bq/L)。
 「大気からの降下は考慮しない」の部分は、シミュレーションが出来ないためでしょうが、SPEEDIのデータを見ても、実際に高い濃度が観測されている陸上の北西方面と同じく、東向きに陸から海へと向かう風によって流される成分がかなり大きいことがわかります。海水表面に降下した化学物質は、プランクトンに非常に取り込まれやすく、そのまま食物網へ移行していきます。
 ついでにいえば、今回の震災では大量の重油が海に流れましたし、瓦礫(相当量の有害物質を含むはず)は流出して1年後にはハワイに達し、その後いわゆる北太平洋のゴミベルト地帯に集まるという予測も。海の生態系にとっては二重・三重の被害といえるでしょう。瓦礫に関しては、特に海鳥、ウミガメ、鯨類への影響が懸念されます。

■福島第1原発:海水、ヨウ素濃度6500倍 2号機取水口 (4/17,毎日)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110417k0000m040093000c.html (リンク切れ)

 これは直近の報道。保安院の見解のまま「シルトフェンスの効果」と伝えるメディアが多いようですが、ピットの海面上の流出はとっくに止まっているのに前日の6倍にいきなり濃度が上昇するのはおかしな話。止水板を設置した際に海底の砂泥中にいったん沈殿していた分が巻き上げられたのかもしれませんが、「半減期8日のヨウ素が長く滞留することは考えにくく、見えないところから漏れている可能性も否定できない」とする解説のほうがうなずけます。水ガラスにしろ止水板にしろ、実際にはやっつけ仕事で閉じ込め機能は限定的。
 3/11の本震によってプレートに新たな張力が加わったため、早ければ1ヶ月以内にも大津波を引き起こすだけのM8級の地震が起こり得るとの報道もありました。2号機トレンチの高濃度汚染水については集中環境施設の修復が進まず移送作業が難航する中、水位が再び上昇。次の津波なり台風が来れば、いくら冷却用の電源を確保できたとしても、建屋やトレンチなど各所に溜まった汚染水はまた海洋中に拡散してしまうでしょう。高濃度汚染水がぎっしり入った集中環境施設やメガフロートを津波が直撃すれば、すさまじい量の放射性物質が一気に海に流れ出ることに。原子力に限っては、「最悪のケース」について想像力を逞しくさせたうえで、先手を打つことがどれだけ大事か、今回の事故で明らかになったはず。



◇最後の花見

 今年も会いに行ってきました。
 たぶん、今回が最後になるんだろうなあ・・・・
 300歳の老木ということもあり、去年は花芽が少なくて心配だったのですが、養生も手伝って今年は元気に咲いてくれました。
 けれど、福島第一からの放射性降下物が混じっているかと思うと、花吹雪の風流も半減。
 都道府県別の放射線量で数字が発表されているのは市原ですが、ここから近い佐倉ではもっと高い値が出ていました。
 スペースシャトルに積まれて宇宙線浴び(させられ)た桜が地上に戻ってから急成長した、という話がありましたが、放射能が強ければ開花時期がずれたり花びらの数が違ったりしてくるかな。
 訪れるミツバチやムクドリなどの野鳥たちの方が影響はシビアだろうけど。
 去年も紹介したけど、戦時中危うく薪にされかけた名桜。
 ニンゲンは本当にどこまでも愚かな動物だ。
 コントロールなど出来もしないくせに、えばりくさって出来るフリをする。
 木々たちのように何百年も生きることの出来ない、そうしたスケール観を持ち得ない短命な動物が、津波や地震の起きる可能性や廃棄物の処理のことを、考えずに済ませることの許されない技術に手を出しちゃならんのだ。

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 いま自粛の代名詞にされてる花見だけど、近隣から多くの方が訪れていました。
 この時期設けられる臨時の駐車場は、桜の木からだいぶ離れた場所にあり、みんな歩いていきます。
 私は自転車(風が強くて大変だった)。使ったのはデジカメのバッテリーの電気だけです。
 近所の農家の皆さんが出店を開いて野菜や漬物やお餅を売っているだけで、自販機もありません。
 で、写真はマンドラゴラ大集合・・ではありませぬ。
 茶目っ気のある農家のおじさんが、大根で落書きしてたのさ。ナイスバディ・・なのか(汗)「3日前までは美人だったんだよ!」と繰り返していたけど・・

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 吉高の桜に負けず見事な松虫寺の枝垂れ桜も、今年は例年にも増して美しかった。
 こっちは客がまったくおらず、入り口で筆者と逆順のコースを辿ろうとしていたおばさんに道を聞かれただけ。
 もったいないなあと思いつつ、1人で堪能する贅沢を味わわせてもらうことに。
 寺の向かう途中でサシバと思われる猛禽を発見。ヒバリにセッカにキジ、ウグイスと、声はいくらでも聞けたのですが、今回じっくり姿を見せてくれたのはハシボソさんとムクさんくらい。ハシボソはつがいで巣材を集めていました。
 願わくば、バカなサルが退場してカラスたちの時代になってほしいもの。
 けど、ゴミ問題の罪をなすりつけて虐殺してきた都知事は4選しちゃうし、原発周辺の被災地でもこの子たちはウロウロしているので、被曝も心配・・・

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 本来なら緑と寺社を楽しめる散策にはもってこいのフィールドなのだが、成田スカイアクセス線の走行音が耳障りで、長閑な雰囲気ぶち壊し。
 JRに加え、京成電鉄だけで2本も成田空港と都心を結ぶ路線を作るというふざけた計画を強行し、北印旛沼に生息する稀少な野鳥サンカノゴイを犠牲にしたのは、環境派を売りにしていた前知事堂本。
 ちなみに、松虫寺の近くには、原発下請け会社・関電工の営業所があったりします・・

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以下は過去記事
(2010)
http://kkneko.sblo.jp/article/37285308.html
(2009)
http://kkneko.sblo.jp/article/28833920.html
(2008)
http://kkneko.sblo.jp/article/14961110.html



 さて、福島第一に関しては、表面上大きな動きが見えなくなってきました。
 安定するまでに要する数ヶ月なり数年の間、関係者が必要な作業をパーフェクトにこなせば、このまま大事故につながる可能性が徐々に減っていく・・のでしょう。そう祈りたいものです。
 しかし、プライオリティの点で原子炉本体のより大規模な損傷を避けることが優先されている以上、海の放射能汚染が静かに進行し続ける事態は、当面変わらないように思います。
 「事態の沈静化」は今後、安全宣言や「海は広いから薄まる」「濃縮しない」といったもっともらしい説明を駆使し、影響を「目に見えないところ」に追いやる作業へと移行していく・・のでしょう。
 周辺の住民、とくにこどもたちの内部被曝についても警鐘が鳴らされていますが、事態が明らかになる頃には数年ないし十数年の歳月が流れている・・のでしょう。
 責任は誰が取るのか、そもそも取れるのか、その時に議論してももう遅い。
 にもかかわらず、地方選はこの結果。コクミン・シミンの原子力に対する不信と怒りがピークに達していたはずなのに。
 日本国民の大多数は、公共放送、あるいはその他のマスコミの言うことを額面どおりに受け取るヒトで占められています。
 テレビがいつものお笑い番組を映し、電車がダイヤどおりに運行し、街がいつもの賑わいを見せはじめたことに、「これでようやく日常に戻れる」と安堵を覚えているヒトが。手っ取り早く不安を解消してくれる、その「装い」を提供してくれる、よりどころになってくれる存在を求め、すがりついてしまうヒトが。
 後のことはおえらいさんに任せよう、石原慎太郎や池上彰のような、ハキハキ物を言う頼りがいのある人物たちに任せようと、自分で考えることをやめてしまうヒトが。
 国家やカリスマに対する信頼、帰属することへの安心感は、イヌ・オオカミの順位制、あるいは他のサルの仲間の社会性とは似て非なるものではあれ、間違いなくニンゲンという動物種に顕著に示される特徴のひとつ・・なのでしょう。
 チェルノブイリを止められず、フクシマもまた止められなかった。
 市民派、脱原発サイドはリスタート、リセットだというけれど、相手方は「咽喉元過ぎて熱さ忘れる」のを待っているだけ。
 「ややこしい問題」をすっ飛ばし、放射能をレントゲンと比較してみせ、「快適な生活」だの「エコ」だのフレーズをうまく並べて、テレビ・新聞とタレントの宣伝力を総動員すれば、その他大勢を元通りの鞘に収めるのは簡単なこと。「レスキュー隊よくがんばった」とハンカチを取り出すだけで、コロリとひっかかるくらいなんだもの。
 政官財のタッグを覆す、実効性のある方策はあるのでしょうか? そのロードマップは? リソースで圧倒的に差がある相手方の戦術のシミュレーションは?
 1万人のデモを毎月繰り返せば、2ヶ月後、3ヶ月後に2倍、3倍と増えていくだろうか?
 残念ながら逆でしょう。ニンゲンは動物。慣れる。テンションは下がる。100%確実に。
 有名大学出の官僚・政治家・学者たち、演出の巧みなマスコミ人、有識者と呼ばれる人たち。事実やスキルではなく、カタガキやヒトガラに魅了されて動くのがニンゲンという動物。


 捕鯨サークルも、SSCSや、捕鯨サークルとの共存共栄が続く状態を「クジラの大勝利」と高らかに宣言したりした一部の共存共栄団体も、小原子力村そのもの。
 以下は震災からおとなしかった(石巻に寄ったタイミングでSSCSの妨害ネタを出しただけ)鯨研の直近のプレスリリース。

■2010/11年南極海鯨類捕獲調査で得られた調査副産物の販売について (4/15,ICR)
http://www.icrwhale.org/110415ReleaseJp.htm

「国民各層にできる限り安価な鯨肉の提供を行うべく製造原価の削減を図り、価格転嫁を避けました。」(引用)

 ・・・。いままでずっと製造原価削減の努力を怠って価格転嫁してきたっていってるの??
 これはむしろ捕鯨応援団の皆さんが怒るべきことだと思いますけどね・・・
 一方、欧米の運動方針と理念をそのまま持ち込んだだけの動物愛護(誤)系団体の中には、非常に深刻な野生動物への放射能汚染より、命と自然をどのように生かし、守るかということより、よりによって家畜たちの安楽"死"に税金その他のリソースを注ぎ込めと、大方の日本国民が首を傾げる運動を展開しているところもある模様。被災していない自治体での口蹄疫対応がどれほど行政にとって負担だったか、そんな簡単なことさえ考えられない。新たな計画的避難区域のために家畜の移送も、現在政府・自治体の側で検討されていますが、その前に「さっさと積極的アンラク死させろ」とすぐに殺しに飛びつく、いかにもキリスト教的な「神に遣わされたニンゲンの僕に対する配慮」という感覚。

◇◇◇

 サクラは何も語らず、ただ年毎の務めを果たすのみ。
 クジラは何も知らず、汚れた魚を食べ続けるのみ。
 カラスはニンゲンのあまりの愚かさをただ嘲うのみ。

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2011年04月13日

福島第一原発事故とクジラ(その4)

◇福島第一原発事故とクジラ──クジラたちがフクシマの最初の犠牲者かもしれない

 余震と放射性物質の流出のせいで、「原発さよなライオン ぽぽぽぽーん♪」と街中で挨拶し回っておまわりさんに呼び止められたり、「ホウレンソウ食いてえな」と歌ったり、「がおぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぉん!」と3日くらいつぶやきたくなるよーな日々が続いていますね・・・・・

■東電から「福島原発」分離=公的資金で清算会社―政府・民主案 (4/13,時事)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110413-00000012-jij-pol (リンク切れ)

 出ると思ったんだ、チッソのパターン。株反発したね〜。地方選の影響も大きかったろうけどね〜

 さて、放射性物質の海洋生態系への影響、特に鯨類の被曝について、追記しておきます。
 4/12日に文部科学省が放射性セシウムの拡散予測を発表。
 これ、「4/12以降は放出されない」とか「大気中に放出された放射性物質の海面への降下は考慮しない」とか、まったくあてにならない前提をもとにしたシミュレーションなんですけどね。
 で、筆者が以下の図を作成しました。出典は文部科学省発表資料と、例年大体4月中旬から1ヶ月ほど行っていた三陸沖でのミンククジラの捕獲調査の資料(〜日本鯨類研究所)。沿岸調査捕鯨については、昨年から実施主体が鮎川等の事業者を中心にした地域捕鯨推進協会にバトンタッチしてます。

■(参考)海域における放射能濃度のシミュレーションについて (MEXT,4/12)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/04/12/1304939_0412.pdf (リンク切れ)
■2008年度JARPNII 三陸沖鯨類捕獲調査の結果概要報告 (ICR,'08/5/22)
http://www.icrwhale.org/080522ReleaseJp.htm
minkecs.png

 ベースは文科省資料(p5)の4/15のCsの拡散分布。紫色は基準濃度の90Bq/Lを越える箇所です。そして、赤い点が'08/4/14〜5/18の間のミンククジラの捕獲地点。捕獲調査を行ったのが仙台から50海里ということで、実際の分布は外側にも延びています。
 ここで鯨研資料の図5を併せてご参照。紫色がどの辺に該当するか・・本当に背筋が寒くなってきますね・・。文科省資料の図に避難区域のひとつ相馬の字が見えますが、いわき、北茨城と、コウナゴの分布は高い濃度の放射性ヨウ素、放射性セシウムが検出された海域につながっているわけです。ミンククジラの分布は、この時期の主要な餌生物であるイカナゴの分布と重なっています。ミンククジラだけの話ではありません。鯨研にいまさら言われるまでもなく当たり前の話ですが、この時期常磐沖でイカナゴ漁がピークを迎えるのと同じ理由で、イカナゴを主食とするスナメリ他イルカ類も、海鳥も、大型魚類も、みんなイカナゴを目当てにこの付近に集まってくるのです。
 海の野生動物たちにとって、これが一体どれほど深刻な事態なのか、理解していただけたでしょうか。
 一点補足、実際にはこれ地方名のはずなんですが、鯨研の資料では便宜上かイカナゴの幼魚をコウナゴ、成魚をメロウドとし、両者併せてイカナゴとなっています。
 続いて、同日に発表された、沖合30km地点の表層水の検出結果について。

■海水の放射性物質、最高値 福島第一の30キロ沖 (朝日,4/12)
http://www.asahi.com/national/update/0412/TKY201104120617.html (リンク切れ)
■福島第一原子力発電所周辺の海域モニタリング結果 (文科省,4/12)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/04/12/1304149_0412.pdf (リンク切れ)
■福島原発周辺の海水(表層)の放射性物質濃度
http://atmc.jp/plant_sea/under/
■Sediment Distribution Coefficients and Concentration Factors for Biota in the Marine Environment (IAEA,2004)
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/TRS422_web.pdf
■水産物の放射性物質の検査結果について (水産庁)
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kakou/kensa/pdf/110411_data_sheet.pdf
■農林水産省の発表する食品中の放射性物質の検査結果 (農水省)
http://www.maff.go.jp/noutiku_eikyo/mhlw3.html
http://atmc.jp/food/

 バックグラウンドの水の値が放射性セシウム71Bq/L、これをIAEAの資料(p70)にある鯨類の筋肉中のCsの濃縮係数、300倍を使って計算すれば、21,300Bq/kgということに。これまで食品から出ているセシウムの最高値(田村市のホウレンソウ)を上回ります。Csの暫定基準値500Bq/kgで割れば、実に42倍。乳児基準値100Bq/kgなら213倍。筋肉のカタマリ、愛好家垂涎の尾の身ともなれば、とんでもないことになりそうですね・・。食べるヒトの被曝は筆者の知ったこっちゃありませんが。
 前々回汚染の実態調査が必要だと提言しましたが、鯨肉消費者がPuもHgも無害だと主張する狂人レベルばっかりだったら、風評被害などものともせずに高値で売れるかもしれないね。ま、さすがに水産庁もそこまでアホじゃなかろうし、どのみち厚労省がストップをかけるでしょうけど・・。
 もう1本。

■国際漁業資源の現況-平成21年度現況-48 ミンククジラ オホーツク海―西太平洋|水産総合研究センター
http://kokushi.job.affrc.go.jp/H21/H21_48.html
■北西北太平洋産ミンククジラ捕獲調査(JARPN)及び第2期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPNU)|日本鯨類研究所
http://www.icrwhale.org/03-B-JARPN.htm

 北太平洋に生息するミンククジラ(Oストック)は12月〜1月くらいに低緯度地方で出産し(偏向調査のせいで繁殖生態に関しては他の野生動物と異なり間接情報しかありませんが・・)、その後日本の東北沿岸を北上していきますが、ミンククジラは性・年齢状態による棲み分けが発達していて、メスはオホーツク海に入り、オスは外洋に広く拡散します(FRA資料の図5参照)。つまり、汚染度の高い沿岸より(調査設定海域では7海区)ほど、発ガンの影響を受けやすいこどものクジラが多いということです。仙台湾の捕獲調査でも岸よりほど未成熟個体の比率が高くなっています。成長期に放射性ヨウ素やセシウムをたっぷり含んだコウナゴをたくさん食べて育つと・・。捕獲調査では妊娠メスも確認されています('08の調査では60頭中6頭)。授乳期間に関してはろくな資料がありませんが、クロミンク等他種の記録を考慮すれば4ヶ月はかけているでしょう。今ちょうど生まれて間もない当歳児に乳を与えている頃合です。子連れのメスはおそらく春先に日本の東太平洋側の沿岸でイカナゴ等を利用し、その後夏までにオホーツクに入るのでしょう。
 以下は前回リンクで紹介したもの。

「一般に放射線に対する感受性には人と動物で大きな差がないことが示されており、被曝の種類・年齢によりガンの発症率は変わります」(引用)

http://www.dogactually.net/blog/2011/03/post-59.html

 放射線に対する感受性については、種差よりむしろ個体差(個ジン差)が大きいということですね。乳幼児や妊婦はよりセンシティブ。アレルギーはじめ、疾病の罹患率や薬の効果が体質によってどれほど開きがあるか、体感している皆さんは、「放射能の安全性ばかりをしきりに強調するメディアの話を鵜呑みにするな」という文脈にすんなり頷かれることでしょう。要は、ヒト以外の動物でも同じということ。

■放射性ヨウ素の母乳への影響*
http://ameblo.jp/pinkpoodlexx/entry-10839465157.html

 そこで、授乳によって新生児に移行する放射性ヨウ素についても試算してみました。5日にミンククジラが1年間に受ける累積被曝量を放射性ヨウ素で32〜64mSvとしましたが、線量換算係数(Sv/Bq)を成人より一桁高いニンゲンの0歳児のそれに、同じく摂取量の4分の1が母乳に移行すると仮定、母体が4,080Bq/kgのイカナゴを食べ続けた場合に仔クジラが受ける被曝量を試算してみました。期間を1ヶ月とした場合、4〜8mSvに上るという結果に。母親がどれくらいの期間、高濃度に汚染されたイカナゴを食べ、授乳し続けるかによりますが、離乳した後も、汚染されたイカナゴを直接摂取していくことで、仔クジラの受けるトータルの被曝量は上積みされていくわけです。
 以下、一点補足。

■基準値の根拠を追う:放射性ヨウ素の暫定規制値のケース (産総研,4/12)
http://www.aist-riss.jp/main/modules/column//atsuo-kishimoto009.html

 テレビに洗脳されているヒトが非常に多いですが、上記リンクは必読です。これでもややわかりにくいかもしれませんが、「1回のイベントのみの汚染」、つまり上掲文科省のシミュレーションと同様、事故が収束して追加の放射性物質が完全に止まることを前提にしているため、排出が完全に止まっていない場合にこの暫定基準値を鵜呑みにすると大変危険だということ。産総研の研究者の方は「継続的に排出がある場合の許容線量限度」として「飲料水の放射性ヨウ素線量は12Bq/kg」とおっしゃっていますが、水道水からかなりの濃度が検出された関東圏を含め、小さいお子さんのいらっしゃるご家庭は要注意!!
 ちなみに、筆者がミンククジラとスナメリについて行ったのは、こちらの方が「乳児の暫定規制値の100Bq/Kg を1年間飲み続けたら、甲状腺等価線量135mSv/年になってしまう。」といってるのと同じ計算。セシウムについては過小評価だと思ってください。
 魚についても「セシウムは濃縮しない」などと平然とのたまう御用学者がいますが、「多重防護があるので事故のリスクは天文学的にゼロに近い」てのと同じ。ここまでくるともうきわめて悪質なデマですね・・
で、リンクのソースで内部被曝に関する計算式の解説がありますが、これについても補足。式をパッと見てわかる人に説明は要らないと思いますが・・
 指数関数を使った数理モデルは、事故が収束して放射性物質の放出がストップした後、減少の推移を見るうえで有用なものです。例えば、水産学者・勝川氏の試算は、水産物の消費者が水産物の摂取を控える(あるいは行政・関係者が出荷を規制する)期間の目安として参考にするための材料。が、現段階では上掲の理由により、精度を上げる意味はあまりないといえます。コメントで解説したとおり、とくにI131の場合半減期が短いため、簡単な計算でも積算被曝量の差は大きくありません。Cs137については、流出が長引けば長引くほどどんどん値が上積みされていくものと思ってください。
posted by カメクジラネコ at 20:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系

2011年04月10日

事故レベルを引き上げたのは東電・日本政府/福島第一原発とクジラ(その3)

◇福島第一原発事故関連:水素爆発による事態の深刻化を招いたのは、東電・経産省自らによる地震後の対応ミスだった

 福島の原発事故をウォッチし続けていて、筆者にはずーーーっと引っかかっていたことがあるのです。
 12日の1号機、14日の3号機の水素爆発は、一体なぜ起こったのか?
 先に結論を述べると、東電がベント作業をマズったせいだと。それも2回。内外で「ベント開始の遅れ」が指摘されていますが、そうではなく、むしろ慎重さを欠いた拙速な作業の故ではないか
 水素発生のメカニズムについては、全電源喪失後、冷却水の循環が止まり、ジルコニウム被覆管が腐食、空気中の水蒸気に触れ酸化する過程で水素が出る、と。水素と酸素が一定の割合に達すれば、ちょっとしたきっかけでボンです、と。ここまではいいでしょう。
 その水素がなぜ建屋内に溜まったのかといえば、テレビ各局のニュース番組に出演していた御用学者連中いわく、圧力容器、格納容器をすり抜けていた、と。あたかも幽霊のごとく。「まあ水素は軽いから、溶接部か制御棒の穴かどこかから抜けたんでしょう」というようなごく簡単な説明で済んでいたのですね。これは素人が見たって、どう考えてもおかしい。建屋のほうが圧力容器・格納容器より堅牢だという解説自体ヘンな話。
 何よりもオカシイのは、現在1、3号機で進められている窒素注入作業とその動機です。(再び、今度は炉内で)水素爆発が起こるのを防ぐためだと。水素の漏出場所を特定し、塞ぐ作業をしたのか? その結果として、格納容器から水素が出ることがなくなり、冷却のため注入し続けている海水の塩分による効果もあいまって、12日以後も継続的に発生し続けている水素が、格納容器内に充満する一方になったのか? そりゃあり得ない。水素が幽霊みたく漏れ続けていたのなら、建屋が吹っ飛んだ時点で、むしろ水素爆発については懸念する必要がなくなった、はずです。ある時点では実際そういう説明をしていた御用学者もいたかと思いますし。
 一方、「ベント作業時に放射性物質の外部への直接流出を回避するため、あえて♀i納容器と建屋の外壁との間に排出したのではないか」という見方もあるようです。つまり、住民の不安に配慮してわが身を危険に晒そうとした東電の健気さが裏目に出た、と。
 もっともに聞こえますが、これもちょっとおかしい。以下は毎日記事。

■検証・大震災:初動遅れ、連鎖 情報共有、失敗 (4/4,毎日)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110404ddm010040035000c.html

 東電の原発事故時のマニュアルには手順も書かれているが、放射性物質を含んだ水蒸気を原発の外部に出すという初の事態に「福島の現場も東京の東電本店も緊張した」(保安院幹部)。しかも、停電で原子炉から水蒸気を放出するための圧力弁は自動では作動せず、放射線量が高い格納容器周辺に作業員が行き、手で弁を開く必要があった。停電で真っ暗な中での準備作業は難航。首相の視察後もなお現場は「ベントを開始できるまで、どれだけ時間がかかるか分からない」という状況だった。(引用)

 常に自己保身を最優先する東電の行動心理、いつもの放射能に関する安全性に対する彼らの解釈、その後の作業のやりにくさを考慮しても、外気中に拡散・希釈させた方がよっぽど「安全」という判断だったはずです。真っ暗な中、作業員がバルブを開く作業をするその同じ空間に、直接放射能を含む水蒸気を放出するというのは、作業員の被曝・物理的事故の危険性を考えても、やはりどう考えてもあり得ない話でしょう。
第一、1号機と3号機で行ったのはウェットベントということですが、減圧プールからの配管は建屋外部の排気塔につながっているはずです。中で開放なんて考え方は設計当初なかったでしょうし、事故後に急遽建屋内に開口部を作る作業をしたとも考えられません。そして、「外部に出す」という事態に備え、外≠フモニタリングを強化していたはず。
 では、なぜ最初の水素爆発が起こったのか? 水素はどこから、どうやって、漏れて建屋上部に溜まったのか?
 最初筆者は、水素の発生源として各炉の使用済み燃料プールを疑いました。なぜなら、定期点検中で炉心に燃料がなかったはずの4号機でも、ほぼ1号機、3号機に近いくらい破壊的な火災≠ェ発生したからです。当初から、(15日に4号機がボンするまで)マスコミの説明図からすっぽり抜けていた、この使用済み燃料プールの状況を懸念・注意喚起する方もおられましたし。とくに1号機については、この使用済み燃料プールに関する情報がほとんど出てきていませんし。ただ、状況は不明となっているものの、燃料棒の数量と使用後の日数を考慮すると発熱量は4号機より1号機の方がかなり低く、プールの水が全部こぼれて真っ先に空焚き状態になった、というわけでもないようなので、これは一応除外していい、のでしょう。4号機の火災も間違いなく、「運転してないから」と同機の使用済燃料プールの監視を怠った東電の重大な落ち度ですが。
 ヒントがありました。

http://www.ustream.tv/recorded/13572861

 地震直後、津波が来る前に、一時冷却系の大口径配管が破断を引き起こしていた、というやつです。
 地震時の弱点ということで従来から反対派より指摘されていたことであり、また「想定外の津波」の所為にして収めようという政府・東電側の思惑に反して、そもそも耐震設計自体不十分だったという、今後の原子力/エネルギー政策の行方を大きく左右する内容。
 少なくとも表向きは「大地震が来ても大丈夫」だったはずの冷却水の配管さえやられた・・ということは、「直接関係ない」と耐震性能をより低く見積もられていたに違いない、ベント用の配管の接合部や弁の一部が損傷を受けていた可能性は大だったはず。
 保安院発表の時系列イベントを見ると、はたして、1号機では水素爆発の起こる12日15時の5時間前(着手なので実際に弁を開けたのは直前の1時間前)、3号機でもやはり水素爆発の起こる14日11時の6時間前(これも実際には直前でしょう・・)に、ベント作業が行われています。2号機ではドライベントまで試みたもののうまくいかず、水素漏れは起こさなかったけど格納容器内の圧が抜けずにサプレッションプール損傷に至った、ということでしょう。要するに、一部のデマ≠フようにベント作業がなかったのでも、遅れたのでもなく、拙速にやっちまったのが原因ということ。

http://atmc.jp/plant/detail/
http://www.meti.go.jp/press/index.html

 上昇した炉内の圧力を下げるためには、確かにベント作業が必要でした。しかし、ベント作業を行った東電、許可を与えた保安院は、初期データをもとに、冷却系配管損傷の可能性→ベント配管損傷の可能性→ベント作業を行った場合の水素漏出の可能性→水素爆発の可能性、まで全部見越したうえで、水素が漏れたとしてもうまく抜けるよう、作業を行う前にあらかじめ水素濃度の監視と建屋上部の開口を行っておくべきでした。菅や海江田に要求するのは無駄にしろ・・
 この水素爆発があった所為で、放射性物質が飛散するとともに施設内の損壊が拡大、電力・冷却機能の復旧作業に重大な支障を来し、高濃度汚染水の流出を招き、安定的な収束がはるかに遠のいた。
 ベント作業時、格納容器がピンチなうえにトラブって慌てていたのは確かでしょう。そんなのはしかし、言い訳にはなりません。
 1号機の爆発の2日後、3号機でもベント→水素爆発というまったく同じ過ちを犯すに至っては、まさに致命的なミスです。
 大津波を想定しなかったこと、耐震設計が甘すぎたこと(複雑・繊細な配管系の耐震強化が不可能なのは最初からわかっており、誤魔化しに他ならないとの指摘が正しいでしょうが)、外部電源の早急な確保を優先しなかったこと、冷却系配管の損傷に対して正しい対応をしなかったこと、管直人のベンキョウ視察及び廃炉を気にしてゴネた所為で海水注入の判断が遅れたこと、使用済み燃料プールの監視・冷却が遅れたこと、放水した後の水の行き先を考えなかったこと(これも当たり前だけど)、拙速な低レベル汚染水の大量排出──人為的なミスが重なった所為で、INES(事故評価尺度)レベル6にまで、あるいは今後の展開次第ではチェルノブイリと同じ7になりかねないほど、事故が深刻化したことは否めないのではないか。逆に言えば、東電・保安院が迅速・適切・慎重に対処できていれば、スリーマイルと同程度のレベル5で済んでいたのではないか。
 海外在住の方からも不安の声が寄せられましたが、窒素封入の作業、果たして手落ちなく、抜かりなく出来るのでしょうか?
 8日には1号機の格納容器の表面温度が上がり、放射線強度が100sVと極端に急上昇。ふくいち定点カメラに放射能スモッグみたいな雲が映って、中継が一時中断したもんだから、さすがに焦りました。実際にはただの水滴だったみたいですが。圧力抑制室の値に変化がないので計器の故障の可能性が高いとのことですが、温度上昇とセンサーが壊れた原因は不明。前日の大きな余震で、炉内のグチャグチャデロデロがシェイクされたから?
 ともかく、再臨界・水蒸気爆発という最悪の事態に陥らないことを祈るばかりです。
 御用学者とマスコミ、永田町も含めて、責任を厳しく、徹底的に、何より正しく℃謔轤ケることができるか? 果たして日本の再生が可能≠ゥ否かは、まさしくその一点にかかっています。
 新聞紙にオガクズにオムツの中身、果ては入浴剤と、東電が笑えるネタを提供してくれたおかげで、三流ブロガーレベルの各紙論説委員たちが大喜びだけど、みんなゼオライトを救世主呼ばわりしてますね・・それ、ニャンコのトイレ砂だよ! そんなもんで、だだっ広い海、食物網中に拡散したセシウムを回収しきれると、本気で思ってるの??
 そのノーテンキさが事故を招いたのと違うのですか?
 「頑張ろう」とか「一つになろう」とか、ふざけたかけ声は、少なくともフクシマが収束するまで自粛しましょう。10年先か30年先かわからんけど・・。
 常に後手に回った対応、判断の甘さ。
 大企業・霞ヶ関の日本屈指の超一流のエリートたちが、英知を結集して対応に当たっているはず・・じゃなかったの!?
 ・・いや、彼らがまさに国で最も優秀な人材であることは間違いありません。
 真に愚かなのは、自分たちの愚かさを自覚して身を慎むことのできない、ニンゲンというサル目の1種の動物です。知能の低さと傲慢さで動物界チャンピオン確定。
 バカなサルは、草っ原で骨でも放り投げてりゃよかったんです。
 原子力に手を出そうなどと、身の程知らずな真似をせずに。
 高木氏が存命だったら、この状況を見てどう思うだろうねえ・・・


◇福島第一原発とクジラ(その3)

 一応続報。4月7日にいわき沖のコウナゴ(イカナゴ)で放射性ヨウ素1,700Bq/kg、放射性セシウム570Bq/kgが検出されています。ヨウ素で微減、セシウムで微増なのは、福島第一からの流出量がやや減少して半減期の差が出たのでしょう。

■水産物の放射性物質の検査結果について|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kakou/Q_A/kensa_kekka.html (リンク切れ)

 前回の1年間仮に食べ続けた場合の試算を、今回検出値が上回ったセシウムについて当てはめると、ミンククジラで3〜5mSv、スナメリで8mSvとなります。
 放射性セシウムの濃縮係数については、海鳥400倍、鰭脚類400倍、鯨類300倍等の数字があるようです(いずれも組織による)。

■Sediment Distribution Coefficients and Concentration Factors for Biota in the Marine Environment | IAEA
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/TRS422_web.pdf
■Radionuclide Bioconcentration Factors and Sediment Partition Coefficients in Arctic Seas Subject to Contamination from Dumped Nuclear Wastes | Environ. Sci. Technol.
http://lib3.dss.go.th/fulltext/Journal/Environ%20Sci.%20Technology1998-2001/1999/no.12/12,1999%20vol.33,no12,p.1979-1982.pdf

ま、海鳥や鰭脚類、鯨類を食される方には気になる数字かもしれません。が、筆者は放射能を撒き散らした身勝手なニンゲンより、当の野生動物たちの受ける被害の方が気になります。
さて、その身勝手なニンゲン以外の動物への被曝の影響についてチェックしてみたら、こんなのが出てきました。

■犬への放射線問題を理解する
http://news.nifty.com/cs/item/detail/da-20110323-11002/1.htm (リンク切れ)
http://www.dogactually.net/blog/2011/03/post-59.html

 「現在一般に放射線に対する感受性には人と動物で大きな差がないことが示されており」とあります。それ以外の記述はニンゲンの市民への不感症的大本営発表と大差ない感じですが・・
 あと、野生動物の場合長寿命の鯨類等への影響は無視できないと前回述べましたが、「犬猫の場合発ガンリスクについて気にしなくていい」というのはおかしな話。ペットフードメーカーはじめ関係者はこれまで、「(顧客の)寿命が20年に届くほど伸びてきている」と情報発信してきたはずですが。まるで手のひらを返したように、「犬猫なら10歳も生きれば長生きな方だし文句はねえだろ」と言わんばかり・・。それから、「チェルノブイリでは小児の甲状腺ガン以外の発ガンリスクは証明されていない」という通説を真に受けるのは勝手ですが、10年以内に放射能によるガン発病はないと言い切れる証拠も同じようにないはず。
 公で発表されている大気中の空間線量ですが、計測機器は大体地面からかなり高い位置に設置されています。土壌に降り積もった放射性降下物からの線量は、当然地面からの距離が近ければ値が高く、体躯の低い犬や猫その他の動物への被曝は人間より大きくなるはずなので要注意。とくに雨の後など。尻尾の生えた家族と一緒に暮らしていらっしゃる方は、夏場の熱射病対策と同様に考えていただければよいでしょう。草や土、落ちている物体への接触、あるいは過った摂取の可能性もニンゲンよりかなり高くなるはず。犬種によりますが、もともと鼻吻や足裏はガンになりやすいデリケートな部位でもあります。
 ヒトやイヌ、ネコたちへの不安によるストレスをなくして寿命を延ばすためにも、原発はやめるべきだね!
 おまけその2、損失余命に関する議論。

■寿命をちぢめているもの|社会実情データ図録
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1820.html
■放射線リスクへの対処を間違えないために|横浜国立大学・国立環境研究所・岡敏弘氏
http://gcoe.eis.ynu.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2009/10/jjj1.pdf

 Svと同じく、数字だけ見て安心できる方向けの資料ですね・・
 しかし、これ、経済的要因その他をすべて含んだ平均余命、事故、ガン、心臓病あるいはその他の疾患をすべてゴッチャにして並列してしまうという、実にムチャクチャな話です。運悪く&射線が原因でガンに罹ったヒトの余命が、あたかも何分程度縮まるだけだとの誤解を与えかねません。しかも、QOLの観点をまったく無視。煙草など発ガン性が寿命損失の要因となっているものと比較するのであれば一応妥当でしょう。しかし、職業、酒・煙草等の嗜好品、その他諸々のライフスタイル、あるいは、レントゲンやCRTなどメリットを伴う放射線暴露など、自己選択的なリスクと、人為が関与しない不可避の自然なリスク、政治的に押し付けられるリスクとを、一つの物差しで比較することはやっちゃいけません。原子力によってのみ得られる電気によるベンリな生活(?)という恩恵との交換条件として、全国民が事故・被曝のリスクを納得しているとでも言いたいのでしょうか? 国民投票にでもかけるのがスジじゃないですか。
 ちなみに、「大きな死亡要因に埋没するからかまわんのだ」という話は、RMPで「環境汚染の影響を無視してよい」という話と、数学的にはそっくりそのままリンクしています。


◇オマケ

 玄米カレー食いながら原稿をまとめてたら、石原当選のニュース速報が飛び込んできて、大ショック・・・
 ポールじゃない石原どん、あんたのこれまでの発言の中で、一つだけとてもまともでいいこと言った、と私が思ったのは、この間ご苦労にもやってきたパンダに関する「最初の」談話だけだったよ。

■リベラル派と保守派、脳構造に違いがあった 英研究 (4/9,AFP)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2794777/7061810


 なるほどねえ・・まあ下手するとまた優生主義につながりかねん話ですが。ちなみに、捕鯨の賛否でこれやったらさぞかし面白いデータが取れそうだ・・日本と海外とで微妙に違うかもしれんけど・・
 日本の首都には社会性哺乳類型よりも爬虫類型の右扁桃体の容積が大きいタイプがよっぽど多いみたいだね・・・
 日本がこのまま転がり落ちるか、悪い方向に再生するか、いい方向に再生するか、震災・原発震災以後初の選挙結果が一つの指標になると思ってたんだけど・・・・

 日本を脱出して菜食天国の台湾に脱出したいニャ〜・・と思ったけど、台湾も原発あるし(しかも福島第一くらい古いヤツ)(--;;;;
posted by カメクジラネコ at 22:22| Comment(1) | TrackBack(0) | 自然科学系

2011年04月07日

緊急記事:福島第一原発事故とクジラ〜いちばんトバッチリを受けたのは海洋生態系

◇緊急記事:福島第一原発事故とクジラ〜いちばんトバッチリを受けたのは海洋生態系

 もともと反核団体のGPがそっちにかかりっきりですし、あまりフォローされていない問題について、一応こっちで取り上げておきたいと思います。
 今回の事故の生態系への影響という点では、野鳥たちの被曝にも懸念を覚えます。福島、茨城周辺は渡り鳥の多く通過するルートでもあり、直接付近を通過したり、餌の植物や昆虫、あるいは魚を摂取することで放射性物質を体内に蓄積させる危険が高いでしょう。さらに、汚染は食物網を通じて猛禽類や哺乳類にまで拡がっていく恐れがあります。鳥たちにしてみれば、鳥インフル(風評被害含む)との二重苦ともいえるでしょう。
 で、ついに怖れていたものが出ました。
 4月4日、北茨城沖でサンプル採集(福島第一原発からの距離は70km)されたイカナゴ(コウナゴ)から、4,080Bq/kgの放射性ヨウ素(I137)及び447Bq/kgの放射性セシウム(Cs139)が検出されました。

■東電“無計画放流”で房総沖は…恐怖の食物連鎖が始まる? (4/5,zakzak)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110405/dms1104051616023-n1.htm (リンク切れ)
■拡散「最初は南北沿岸」仏が予測 仙台湾到達後東西に (4/5,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110405-OYT1T00586.htm
■海から2キロの田んぼにイルカ 市民・ボランティア救助 (3/23,朝日)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103220507.html

 上掲読売記事の仏研究機関の発表を見ると、やはり放射性物質は単純には希釈・拡散せず、南北方向の沿岸沿いに濃度の高いベルトとなって伸びていく傾向が読み取れます。
 心配なのは、やはり仙台湾で一定期間留まって索餌するミンククジラの個体群への影響。確かにミンククジラは回遊して行く先々の資源を利用する摂餌習性を持っていますが、毎年ほんの数ヶ月留まるだけでも、結局数年できわめて高い被曝量に達してしまうことになります。
 常磐沖にはイルカ類が回遊してくることも述べましたが、潮目にあたり海溝に向かって傾斜が続くため生物相の豊かな同海域は、ツチクジラやマッコウクジラなどの底生魚食性のクジラの生息域にもなっています。カレイ等の底魚については当面高い値は出ていませんが、食物連鎖を通じた濃縮は高位に行くほど遅れて進行するので、数ヶ月経ってから影響が目に見えてくるはずです。茨城の漁船を締め出した銚子漁協などは早々と安全宣言を出しましたが(生産者同士の間で風評被害とは皮肉な話・・)、少なくとも放射性物質の逸散が止まって1年の間は、厳重な警戒が欠かせません。いつになったらその目途が立つのかも定かでありませんが・・。
 いちばん心配なのは、やはり定着性の強いスナメリ。鹿島沖によく顔を出しているのは数家族程度の小さな群れかもしれませんが、日本列島の東側に生息するとても貴重な個体群のはずです。今回の津波では、仙台市で海岸線から2キロの田んぼの真ん中にはまったスナメリの幼若個体が発見・救出されたとの報道もありました(上掲朝日記事)。仙台湾が分布の北限だと確認されたというオマケ付きですが、上掲のとおり福島第一原発発の放射性物質は北方にも流れています。せっかく助かっても、放射能にやられてしまうのでは・・。西の瀬戸内の個体群も、上関原発の建設で迷惑を被っていますし。スナメリたちにもしものことがあったら、東電/経産省に二度と「エコ」言わしむべからず。
 ここで少々、前回の速報記事の補足をしておきたいと思います。

■緊急速報:福島第一原発事故とクジラ(暫定版)
http://kkneko.sblo.jp/article/44152745.html

 放射能による影響については、不妊など生殖器官への影響が非常に気になります。オスの場合は100mSvのオーダーでも精子の減少がみられるとのこと。もともと繁殖率のきわめて低いデリケートな動物であるクジラたちにとっては、深刻な痛手に。もう一点、多くの野生動物は一般的に寿命が数年程度と短いため、晩発性の発ガンリスクについてはそれほど気にする必要はありません。しかし、クジラは動物界でも最も長寿の部類に入り、成熟するまでに10年以上かかる種もあります。つまり、放射能に限らず、汚染物質の発ガン性については十分考慮しなくてはならないのです。寿命が比較的長いのは、海鳥や他の多くの魚食性の大型動物についてもいえることですが。
 シーボルト(Sv)は人体への影響を考慮した線量当量ですが、グレイ(Gr)との違いは線種(α、Β、γ、中性子etc.)によるもの。国際放射線防護委員会(ICRP)の定める実効線量は、組織によって異なる放射性核種毎の蓄積の度合や、放射線に対する感受性を考慮して決められています。ですから、基本的なパーツの構成が等しい哺乳類に関する限り、放射線の影響にほとんど差はないと考えていいでしょう。もっとも、放射線に耐性を持っている真核生物は、休眠モードのクマムシくらいのもんでしょうけど・・。
 同じニンゲンの中でも乳児や妊婦が放射線に対してデリケートなように、何mSvで具体的にどのような障害が起きてくるかに関しては、確かに生物種毎の細かい差はあるでしょう。放射線の影響は距離の二乗に反比例しますが、クジラの場合身体のサイズが大きいため、蓄積する部位次第では致死的なガンが引き起こされる割合はニンゲンより若干低い・・かもしれません。ほとんど気休めですが・・。
 体内摂取・蓄積した放射性物質の周囲にある組織の細胞核に与えるダメージは、ニンゲンであろうとクジラであろうと差はありません。気になるのは、鯨類の皮膚が特に紫外線に弱い点。水そのものに放射線に対する高い遮蔽効果があるとはいえ、汚染水中でのごく近距離の外部被曝は果たしてどの程度に及ぶものか・・。
 この間、飯舘村の土壌や原乳、私の出身県千葉のホウレンソウや水道の数値にもずいぶん気を揉まされたものですが、筆者としては水産物の値の方がずっと気がかりでした。数回のドライベントと水素爆発、パラパラ程度の雨が1、2回ほどあっただけの陸上では、大気や水に関しては一応値が下がってきている感じですが、海のほうは放水口付近の海水から基準値の数千倍に達する放射性物質が観測され続けています。そのうえ、1,000mSv/h以上になると、実際のところは計器の針が振り切れちゃってわからんという、格納容器が破損した2号機由来のとんでもない高濃度汚染水が、何日もの間奔流となって海に注ぎ込まれていたわけです。5日に取水口付近で採取された水の放射性ヨウ素は基準値の750万倍。流れ出た放射性物質の総量は、大気より海のほうが桁違いに多かったはず。おまけに、東電曰く「背に腹は替えられぬ」と、タンクにあった大量の低レベル汚染水も自ら排水してしまったし。
 トレンチだのピットだのとカタカナ言葉が次から次へと出てきますが、二次冷却水のパイプや取水口のフィルター等諸々の電動設備用のケーブルが敷地中に所狭しと敷き詰められ、それらはみな直接埋設されるのでなくメンテナンス用の共同溝のようなものに収められていたということですよね。そこが汚染水のルートとなったわけです。オエライ、カシコイ御用学者たちであれば、放水を始める前に水の行き場についてもチェック・対処できていてよさそうなものです。そもそも最初の水素爆発の件もそうだけど。
 福島第一原発を見舞った加速度500ガルの揺れに1m近い大きな地盤変化、圧倒的破壊力の津波、激しい水素爆発と、トリプルの物理的ダメージにより、地上部でも排気筒そのものが外れてたくらいです。同様に、地下の配管でも接合部が外れたり、それ自体汚染された瓦礫の破片が突き刺さったり、あるいはコンクリートの部分に亀裂が生じ、そこから汚染水がドボドボ漏れ出しているのは疑いの余地がありません。地下の透水層が怪しいと固化剤を投入したところ、ピットからの見た目上の流出は一応止まった、とのことですが・・そんなことしたって水がよそへ行くだけでしょう。原子炉建屋かタービン建屋か、あるいはトレンチなりから地下に漏れ出した高濃度汚染水は、ピットの内側のどこかの亀裂を通って下から上っていき、あれだけの勢いで噴出していたわけです。水面下の亀裂から直接海に流出していれば、それを確かめることも困難なら、被曝を避けつつそこを塞ぐのは実質不可能でしょう。流出が一応止まった後、建屋とトレンチの汚染水の水位に変化はないということですが、果たして5、6号機の方にまで汚染された地下水が上がってきていることが発覚。東電の会長は未練タラタラでしたが。
 核反応の暴走こそなけれ、海洋汚染の深刻度という点でいえば、フクシマが間違いなくチェルノブイリの上を行ってしまったことは否めません。この先、陸のチェルノブイリに対する「海のフクシマ」が環境災害・原発惨事の代名詞として、歴史に刻まれることになるんでしょうね……。日本人としてはきわめて遺憾なことですが。


◇原子力と捕鯨〜産官学政報コングロマリットの相似形

 最近は必要な一次ソース以外チェックしていないのですが、市民レベルで実感している方はきっと大勢いらっしゃることでしょう。以前から多くの方々が指摘してきたことでもありますが。
 この間のマスメディアによる原発事故関連報道を見ていると、地上波キー局の流す官製報道・偏向報道ぶりに背筋が寒くなる思いがします。初期のほんの数回だけ原子力資料情報室の伴氏をゲストに呼んだとこもあったけど。最悪なのはやはり大本営発表メディアNHKでしょう。TV・新聞に頼らずネット等で主体的に情報を収集しているヒトと、TVニュースをそのまま受け止めてしまうタイプのヒトで、別の国にいるくらい認識にズレがありそうです。
 現状では、軍部/軍閥と大政翼賛会、経産省/東電と原子力推進マスコミの組合せはあまりに似すぎていて、2011・3・11後、一体日本は70年前にタイムスリップしたの? と強い不安を掻き立てられます。テレビ付けるたびに「がんばろうニッポン」だの「日本は強い国」だの連呼する人々の姿を見ると、吐き気や眩暈を覚えます。
 以下2点要約。後藤氏や日隈氏の出演した朝日ニュースターの特集などをご覧になった方には、改めて説明の必要もなかろうと思いますが。

○「科学」が広報の看板として大活躍、最初に結論ありきで数字が操作される。

 耐震設計・多重防護・統計のカラクリ。いわゆるパラメーターの辻褄合わせ。
 事故前後の東電/経産省/御用学者たちの態度の豹変ぶりを見ていると、笑いを通り越して切なくなってきます・・。ただし、事故後も、SPEEDI、避難指示(諸外国との距離の違い等)、遅れたり引っ込めたりされる諸々の東電発表データと、これだけの事故があっても基本的な体質が変わることは期待できませんね。いや、むしろだからこそなのか。言い訳・言い逃れのこれまた巧みなことといったら・・筆者も見習いたいくらいです。
 原子力推進の数字合わせ、カガクのカラクリ・裏が読み取れた方には、多くを語る必要はまったくないでしょう。要は、調査捕鯨に関してもこれとそっくり同じことが行われてきたということです。JARPA2の増産・生態系アプローチ・お笑い自然死亡率。水産庁・鯨研による数字作りの手口は、原子力工学者・経産官僚タッグとまさに瓜二つ。お互いに密接な親交・情報交換があったとしても不思議はないほど。
 「リスクマネジメントは畑違い=vといわんばかりの発言も目立つ超無責任な原子力御用学者たちですが、日本の大手捕鯨会社が繰り広げた南極海での壮絶な乱獲を、事実上ただ指を加えて眺めていただけの水産御用学者たちもまた、その白々しい態度は共通しています。
 捕鯨推進に関わっている一部の水産系の学者さんに対しては同情もしています。わかっていてやっていること、苦痛や疑問を感じてもいるだろうことが、少し垣間見えたので。根っからダメなヒトもいますけど・・。

参考リンク:
−持続的利用原理主義すらデタラメだった! (拙HP)
http://www.kkneko.com/sus.htm
−沿岸調査捕鯨が日本の漁業の役に立つ!? んなアホな!! (拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/29420593.html

○マスコミ各社による報道統制コンセンサスが成立している。

 おそらくこれは原発・捕鯨・拉致だけでしょう。
 わかるヒトにはわかる、というやつですが。
 福島県知事汚職事件の真相と、環境保護団体の鯨肉窃盗事件をめぐる取扱(ex.東京地検捜査人事、検察審査会の審議のタイミング、地裁判事人事等の一連の非常に奇妙な動き)。見事な符号ですな。さらに、事故当時東電会長がマスコミ幹部OBらをゾロゾロ引き連れて中国に遊びに行ってたことも発覚しましたが、この辺りはIWC票買い接待や国際PR/梅崎氏主導の懇親会等による抱きこみ作戦にそっくりそのまま通じるものがあります。
 年間十億単位の水産ゼネコンによるODA利権は決して小さくはありませんが、利権/カネのみでこれだけの結束力、推進力が生まれるとは、確かに考えにくいことではあるでしょう。もっとも、それは原子力も同じこと。
 根っこにあるのは、ルサンチマン〜アングロサクソン・コンプレックス。
 米国に対する愛憎・引き裂かれた自己。
 北洋漁業交渉時の敗北感・怨恨と、敗戦以来引き摺ってきたプルトニウム/核に対する渇望・憧憬
 この辺りがキーワードになるでしょう。
 ニンゲンという哀れな動物の負の性向というものは、群れになるとそれはそれは凄まじいパワーを発揮するものです・・・

−やる夫で学ぶ近代捕鯨史−番外編−・1〜4
http://www.kkneko.com/aa1.htm


◇再び福島第一原発とクジラ

 3月4日に鹿嶋市で約50頭のカズハゴンドウが座礁する事件がありました。「今回の大震災の予兆か?」と注目されたようですが、一方で科学的根拠なしと否定する向きも。
 ですが、筆者は必ずしもそうともいえないと思っています。実際いわゆるマスストランディングは当のカズハゴンドウ含め多くの鯨種で、また世界各地で、何度も起きている現象ですが、その原因についてはケースバイケースで複数の要因が考えられるようです。地震との関係も、そうしたストランディングの理由の一つと考えられなくもありません。
 一つの注目点は、カズハゴンドウはイカ類を主食とし、ときには1000mも潜水する能力を持つ、マイルカの仲間としては深海への適応度の高い種だということ。リュウグウノツカイなどの深海魚が地震の前に打ち上げられることがあるのは有名な話で、岩盤から発生する電磁波をキャッチしているのではないかといわれていますが、カズハゴンドウも同じ反応を示した可能性があるかも。
 まあ、自然からの警告だったとしても活かせなければ意味がありませんが・・。地震予知も、原子力事故のリスク管理も、海洋生態系管理も、ニンゲンの未熟な科学には手に余りすぎるテーマなのかもしれません。
 ところで、今回の日本の大震災により、国際捕鯨委員会(IWC)の先行きも不透明になってきましたね・・。正直、何らかの進展があるとは思えません。「ワトソンに苛められたよ〜」と泣きながら途中で南極から引き返した今年、いつもの面々が予想もつかぬ寸劇を用意してるんじゃないかと、3・11前までは睨んでいたのですが・・。まあ実際のところ調査捕鯨中止は、敵対共存関係のお手本SSCSの思惑というより、捕鯨サークル側が在庫解消と右翼の焚きつけを狙い、ショック療法を試したというのが真相でしょうけどね・・。
 それにしても、石原がワトソンと同じくらいアホで助かったよ!

−漁船保険、数百億不足か (4/4,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/enterprises/manda/20110404-OYT8T00719.htm (リンク切れ)

 さて、上掲記事を読むまでもなく、南極くんだりまで船を出している場合ではありません。多数の零細漁業者が壊滅的な被害を受けた中で、農水省も身内の外郭団体向けのバカげた事業に税金を注ぎ込む余裕はないはずです。
ついでに以下もご参照。

−捕鯨とぎょさい関連 (拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/32901480.html

 今年度の南極海調査捕鯨(JARPA2)中止は当然ですが、一方の北西太平洋調査捕鯨(JARPN2)に関しては、筆者は今年以降の10年間ほどの間、あえて実施するよう提唱したいと思います。
 ただし、内容を大幅に修正したうえで、ですが。
 まず、今回の福島第一原発事故による放射能汚染の調査一本に目的を絞り、捕獲対象を食物網のマーカーとなる代表的な指標生物すべてに広げ、データの精度を統一・最適化すべく各種数頭/年(体重の軽い小型の海棲生物は多めに)捕獲し、各種の放射性物質の各個体・組織中の濃度や病理を徹底的に調査・監視すること。つまり、クジラオンリーを差別する実にけったいなカガク調査ではなく、純粋な本来の科学調査としての調査捕「海洋生物」調査にする、ということです。
 網羅的な標本採集は、実際に南極海(極地研)や南硫黄島(東京都)などで行われた実績もありますから、無体な話ではありません。対象はミズナギドリやカツオドリ等数種の海鳥、アザラシ、ウミガメ、サメ類、大・中回遊性魚類、小型浮魚類、底生魚類、中深海性魚類、甲殻類、頭足類、貝類、その他底生生物、海藻類、オキアミ・カイアシ他各種プランクトン。非商業漁獲対象種も含める必要があります。そして、筆者が警告したとおり汚染がひときわ懸念されるミンククジラ、沿岸性の高いニタリクジラのヒゲクジラ2種のほか、イルカ類、ネズミイルカ類も当然含めるべき。致死的調査の対象となる他の野生動物同様、気の毒な話ではありますが、今は当のクジラを始めとする海洋野生動物たちのためにも、科学的プライオリティが優先すると考えます。細心の注意を要する絶滅危惧種スナメリについては、研究者の慎重な判断に委ねましょう。日本のホエールウォッチャーに人気の高いザトウクジラについては、おそらく今回の事故の影響はほとんどないと考えられるので対象外でいいでしょうが、回遊性の高いイワシクジラはミンク、ニタリに比べると影響は小さいと考えられるものの、モニタリングはした方がいいかもしれません。
 期間は10年とし、仮に汚染が深刻であることが発覚した場合には、残念ながら少数の調査捕獲をセシウム137の半減期である30年以上、続けざるを得ないでしょう。その分の予算はJARPA2の廃止分を回すのがよろしい(それだけじゃ足りないだろうけど)。放射能で汚染されている可能性のある副産物≠市場に流すべきか否かは、筆者にとってはどうでもいい話なので水産庁にお任せします・・。他の食品ではお目にかからない特有の消費者層は大体風評被害を気にしないクチなので、吹っかけて調査費用を浮かせるのも手だと思いますけどね。
 もう一つの注文は、さんざん儲けて御殿を建てた腐れ解体屋らをクビにして、代わりに石巻等で被災し苦境に立たされている沿岸漁業関係者を(従来から引き受けてきた鮎川の捕鯨会社以外も)、調査員として加えること。
 捕鯨問題に関して物申したいことは以上で終わり。

・・・・・

 実は筆者は震災が起きる前まで、今年のIWC年次総会に向け、水産ODA関連情報更新版をマスコミに直接リリースする予定でおりました。外務省の追加発表資料をもとに、あの西松建設の復活に貢献したODAの調達データ、かの池上彰センセにならった報道の自由度・民主主義等のランキングに基づく捕鯨支持国と非捕鯨支持国とのびっくり仰天の格差データ等、いろいろ面白いネタを用意するはず、だったんですけどね・・。
 ちなみに、チェニジア、エジプト、リビアに続く民主化の波は同レベルの王政モロッコ(昨年の年次会議開催国にしてタコを乱獲した漁業後進国、要するに捕鯨ニッポンの大のオトモダチ)にも飛び火しそうな気配。ノルウェーにまで代表団を送る余裕なんてあるんですかね? 深刻な財政難の折、農水/外務省も、票売りに味を占めた低民主度国家の腐敗役人相手に「カネくれ」「女よこせ」とせっつかれながら、それでも手数を揃えられなくなってきて、震災がなくてさえ頭を抱えていたに違いありません。実際、昨年のアガディール総会以降の新規加盟国5カ国のうち味方はガーナ1国のみ、長年捕鯨ニッポンがナワバリにしていたカリコムのドミニカ共和国までコスタリカ等中南米の環境先進国と歩調を合わせ敵側に。対抗勢力とのバランスは再び崩れ始めてきていますから。
 ですが・・今年はもうやめようと思っています。
 捕鯨サークルも、日本自体も、それどころじゃあないでしょうから。
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2011年04月05日

緊急速報:福島第一原発事故とクジラ(暫定版)

◇緊急速報:福島第一原発事故とクジラ(暫定版)

 皆さんご承知のとおり、福島第一原発がクリティカルな状況にあり、海洋生態系への深刻な影響が懸念されます。
 4月4日、北茨城沖でサンプル採集(福島第一原発からの距離は70km)されたイカナゴ(コウナゴ)から、4,080Bq/kgの放射性ヨウ素(I)及び447Bq/kgの放射性セシウム(Cs)が検出されました。
 イカナゴは大型魚類、海鳥、鰭脚類、鯨類等、多くの高次捕食者を支え、海洋生態系の基盤をなす代表的な表層魚の一つです
 ここでは、イカナゴを主食とする2種の鯨類、仙台湾で沿岸調査捕鯨の捕獲対象とされてきたミンククジラと、鹿島灘で観察されているスナメリについて、放射能の影響をざっくり試算しました。
 以下は、仮定に基づいたごく大雑把な算定であることをご了解ください。
 仮に同程度に汚染された魚を食べ続けた場合、ミンククジラが1年間に受ける累積被曝量は放射性ヨウ素で32〜64mSv(ミリシーベルト)、放射性セシウムで2.1〜4.2mSvに上るとみられます。
 また、同じくスナメリが1年間に受ける累積被曝量は放射性ヨウ素で96mSv、放射性セシウムで6.4mSvに上るとみられます。
 上記2種の数字は、海水からの直接の外部被曝を考慮しない経口摂取による内部被曝のみの値です。
 これとは別に、三陸沖で突きん棒漁の対象となっているイシイルカについて、放射性セシウムの生体濃縮が海水の約88倍に上るとされています。
 福島第一原発から50kmの地点で観測された海水サンプルの最高値、約80Bq/Lを適用した場合、1個体当り10,400〜16,000Bqの放射性物質を体内に持つことになります。
 放射能による障害は受けた放射線の総量に比例し、効果が累積することが、大型の野生動物である鯨類にとっては特に大きなマイナス要因となることが考えられます。
 常磐沖には、他にもバンドウイルカマダライルカなどの表層魚食性の歯鯨類が回遊しています。
 このほか、陸上の原発敷地内で検出された非常に毒性が強く半減期が2万4千年にも及ぶプルトニウム239、骨中に蓄積されやはり半減期が約30年と長いストロンチウム90、海藻・植物プランクトンとそれらを食べる貝類やシラス類に蓄積されやすいルテニウム106やセリウム144、必須元素として生体中に多く摂り込まれる亜鉛65や鉄55(原子炉壁等に中性子が当り放射化してできる誘導性核種)などについては、海洋への流出に関するデータが不明のままです。
 福島第一原発2号機では燃料棒の損傷に加え原子炉格納容器が破損し、そこから高濃度の汚染水が流出、取水口付近では放射性ヨウ素で基準値の750万倍という非常に深刻な海水の汚染が明らかになっていますが、流出を食い止める有効な手立てもなく、収束の目処は立っていません。
 放射性物質は単純に気圏・水圏に拡散するわけではなく、底質と海水、食物網の間で循環し続け、海流だけでなく生物による移送も考慮しなくてはなりません。重金属や有機塩素と比べれば生体濃縮の比率は小さいものの、たとえ汚染が将来解消されたとしても受けた影響(DNAの損傷)はそのまま残って累積されていくという放射性物質特有の事情もあります。
 そもそも個体数が少なく絶滅が危惧されているスナメリをはじめとする野生動物、あるいは脆弱な深海生態系への影響に対しては、とりわけ注意深く、長期間にわたって見守っていく必要があります。当たり前の話ですが、政府の規制や勧告は、動物たちに対してはまったく意味をなさないのです・・・・


注:試算の前提
ミンククジラの1日当り摂餌量=100〜200kg(田村2003)
スナメリの体重60kg、摂餌量は1日当たり体重の5%前後


*参考資料
−沿岸調査捕鯨が日本の漁業の役に立つ!? んなアホな!!
http://kkneko.sblo.jp/article/29420593.html
−持続的利用原理主義すらデタラメだった!
http://www.kkneko.com/sus.htm
−スナメリの生態
http://aquadb.nrifs.affrc.go.jp/~aquadb/cgi-bin/speciesinfomain.cgi?LANG=jp&TTAXID=34892&TARGET=1
−全国の放射線濃度一覧
http://atmc.jp/
−シーベルト(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88
−内部被ばくに関する線量換算係数
http://www.remnet.jp/lecture/b05_01/4_1.html
−東海村事故のリスク
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak61_65.html
−放射性セシウムの海洋汚染が人体に及ぼす影響を数理モデルで試算してみた
http://katukawa.com/?p=4198
−海産生物と放射能
http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=radioisotopes1952&cdvol=48&noissue=4&startpage=266&lang=ja&from=jnlabstractRT
−放射性核種の生物濃縮
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-01-04-02


〜詳報及び今年のIWC対応等については後日掲載予定〜

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2010年03月09日

ハクビシンとクジラ/捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!・2

◇ハクビシンとクジラ〜ニンゲンサマが第一! 野生動物と共存できない西洋かぶれのエコ最貧国・捕鯨ニッポン

■天使か悪魔か家がつぶれる!?…雷獣大暴れ! (3/7,TBS「噂の東京マガジン」)
http://www.tbs.co.jp/uwasa/genba/20100307.html (リンク切れ)

 ときどき八ッ場ダムに象徴される大開発を擁護して自然の敵になり、しばしば野生の獣や鳥の敵になるこの番組、今回の放映内容は中でも最悪の一つでした。いつもなら「何しらばっくれてやがんだこのタヌキめ(タヌキさんごめんm(_ _)m)」と他の視聴者同様茶の間で舌打ちしているところですが、今回だけは困惑している役所の担当者の方々に心底同情しちゃいましたよ・・・
 “住民目線”を売りにしている副作用というべきか。こういうのって、地域エゴとも紙一重ですけどね・・。方向はちょっとずれますが、野生動物がテーマになるとニンゲンのご都合主義が前面に押し出されるのは、環境省にいちゃもんを付けたブラックバス愛好家・業界関係者の意向を反映してんじゃないかとも勘繰ってしまいます・・・
 HP上では、ディレクター殿が何やらハクビシンの味方めいたことを書いています。が・・番組の内容があそこまでひどくては、さすがに白々しさを感じるのは否めません。番組の制作方針は、この方お一人で決められるわけではないでしょうけど。タイトルに「天使か悪魔か」と入っていますが、中身は完全に悪者扱い。庭のブドウに被害を受けたけど、写真が撮れたので「憎さとかわいさ半分」と同情してくれた、心優しい住民の方がお一人いらっしゃっただけ。
 番組中の間違いについて、いくつか指摘しておきましょう。特定外来生物の対象種は、必ずしも移入年代によって定義されるわけではありません。環境省は「概ね明治元年(1868年)以降に我が国に導入されたと考えるのが妥当な生物」(第二次特定外来生物)としていますが、最終的には諮問を受けた専門家のワーキンググループが生態系への影響を評価したうえで認定することになっています。

■第二次以降の特定外来生物等の選定の作業手順 (環境省)
http://www.env.go.jp/nature/intro/4document/sentei/mamm_bird04/mat01-1.pdf (リンク切れ)
http://www.env.go.jp/nature/intro/4document/sentei/07/ref07.pdf

 で、現在のところハクビシンは在来種か移入種か定かでないわけです。自治体によって“勝手に”外来種認定しちゃっているところもあるようですが、少なくとも国の定める特定外来生物としての選定基準からは完全に漏れています。Wikipediaで「1945年の静岡県でのものが最初の確実な報告」とありますが、環境省資料ではそれ以前にいたことが確認されています。少なくとも明治より前にいたということですね。


日本には、古くは1833 年にボルネオ島から持ち込まれた記録があり、現在ハクビシンが生息していない山口県で1842 年に捕獲された記録がある。
(引用)

■外来種対策事例等に関する調査|環境省自然環境局野生生物課
http://www.env.go.jp/nature/intro/4document/report/mitigation_cases_annex.pdf

 それにしても、かつての天然記念物(長野県及び山梨県)が外来種・害獣扱いとは、世も末です。在来種のニホンカモシカからニホンザルまで、この国じゃ同様の憂き目を見ていますが・・。
 ハクビシン(白鼻芯)というのは中国名。番組のHP解説にある雷獣がハクビシンのことを指すのではないかという説もありますが、空を飛んで落雷とともに表れる空想上の動物とゴッチャにされてますから、まあ憶測の域を出ません。じゃあ、ハクビシンはやっぱり日本在来の野生動物ではないのでしょうか?
 過去記事で取り上げたことがありますが、狢(ムジナ)というのは、キツネ・タヌキ・アナグマ・テン・(おまけとして空想上の動物)をひっくるめて指した総称。花鳥風月のイメージ先行型で科学的観察眼に欠ける、実にいい加減な野生動物観を有していた日本人らしい呼称といえますね。ディレクターさんも指摘するとおり、この中にハクビシンが含まれていた可能性は大いにあります。ちなみに、形態的には似ていてもハクビシンは、ジャコウネコ科で他の4種と類縁関係は遠く、どっちかといえばネコに近い食肉目(ネコ目)の仲間。
 ハクビシン在来種説を否定する根拠として、化石の出土がない、考古学的文献にも登場しないことが挙げられます。ただ、前述のように、またクジラ関連の史料を見てもわかるとおり、野生動物に対する知見があやふやこのうえない日本の古文書は、はっきり言ってあてになりません。明治あるいは江戸時代以前にいなかったとする証拠もまた何もないといえます。
 日本に現生するハクビシンのルーツを探る試みは、考古学以外に生物学・遺伝学方面からも行われています。

■ハクビシンはどこから来たか〜ハクビシンの遺伝的変異|『どうぶつと動物園』'09冬号
−どうぶつと動物園HP
http://www.tokyo-zoo.net/member/index.html
■ハクビシン|Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%AF%E3%83%93%E3%82%B7%E3%83%B3

 同誌で北大准教授の増田隆一氏による研究が紹介されています。他の野生動物でも遺伝子解析による系統判別手法としてしばしば用いられているミトコンドリアDNA内のチトクロームb遺伝子の変異の解析結果によれば、日本産と東南アジア産のハクビシンの塩基配列の差異は大きく、起源を等しくする地域集団とはいえないこと、日本国内のハクビシンでも中部地方と関東地方にそれぞれ複数のタイプが認められ、ある程度の遺伝的多様性が認められることがわかっています。これは外来種説には分が悪い結果です。Wikiでも、体色などの特徴から他地域の個体群と日本の個体群との差異が大きく、独立亜種である可能性が高いとする仮説が紹介されていますが、少なくとも近年になってペットや産業目的で持ち込まれた一部個体をルーツとする説は過ちといえそうです。ちなみに、この研究は体毛を用いた非致死的研究です。当然だけど。
 ハクビシンが、日本列島が形成され、最後に大陸から切り離される以前の地質時代から生息していた日本固有の野生動物種だとは、たぶんいえないでしょう。これから化石が発見される可能性もゼロじゃありませんけど・・。化石がなくても、現在広く日本国内に分布する動植物はいるわけです。例えば、野生動物というと語弊がありますが、奈良時代に移入されたとみられるネコなんかもそうですね。Wikiの外来種の項目には、史前帰化動植物としてモンシロチョウ、アカザやナズナ、スズメ、アブラコウモリ、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミなどの家ネズミ類、ジャコウネズミ等々と列挙されています。
 筆者が思うに、古墳時代から江戸時代にかけてのどこかの時期に、人の手によってか人知れずかはわかりませんが、日本列島に入ってきてたんじゃないでしょうか? それもかなり前のほうで。ほぼ完全な夜行性で、昼間は樹洞や屋根裏にじっと潜み、見た目はタヌキやテンとの区別がつきにくかったハクビシンのこと。灯りの乏しかった時代、もともと野生動物に疎い日本人がずぅーっと気づかず、たまに見かけたとしても、素性の知れぬ“あやかし”、それこそ雷獣のイメージと結び付け、畏れから正体を明らかにしようと努めなかった──そんなところじゃないかと筆者は想像するわけです。目は暗闇の中で炯々と光り、先住民のデザインした仮面を思わせるコントラストの鮮やかなあの顔の紋様が、たまたま稲光の中にパッと浮かび上がるのを目にしようものなら、そりゃ雷様の遣いか何かだと思い込んで、「触らぬ神に祟りなし」とそっとしておくのもむべなかろう、と──。
 人間によって持ち込まれた経緯については、正確な記録がないので、軍需による毛皮・食肉目的とか研究用とか愛玩用とか諸説紛々たる状態。SARS騒ぎでも名前が挙がりましたが、広東州などでは他の野生動物ともども食用にされています。。増田氏の解説によれば、「日本でも食した記録があり、その味は非常に美味ということ」・・・。肉食動物はマズイというというのがセオリーだけど、果物好きだからかしら? というより、いつの時代どこの国でもゲテモノ嗜好者はいるものなのか(--;; 輸入された食文化があっさり消えて、ハクビシンには幸いだったかもしれませんね。ま、ショクブンカなんて所詮その程度のくだらない代物です。
 番組に話を戻しましょう。近年急速に分布(目撃情報)が拡大しているハクビシンですが、確かにクロミンククジラとは比べ物にならないほど繁殖力は旺盛にしろ、正確な個体数の推移のデータはありません。タヌキやテンとの競合を懸念する声は研究者の中にもあるようですが、当のタヌキも最近東京都心に出没してネコとケンカしたりしてTVなどで話題になってるし・・。半樹上性である点や食性なども考慮すれば、ニホンザルとカクニイザル、ホンドリスとクリハラリス(タイワンリス)、そしてアライグマとタヌキのような、在来種と強く競合して排除してしまういわゆる侵略的外来種とは異なり、ハクビシンとタヌキとはある程度棲み分けているようにも見受けられます。近代以前帰化説が正しいとすれば、少なくともごく最近まで両種が共存できていたことは間違いありません。
 それよりむしろ、個体数動態のこうした傾向はシカ、カラス、ムクドリ、ヒヨドリなどと同じく、人為的な環境変化(劣化)と種の多様性の喪失が招いた帰結のひとつといえないでしょうか? 明治維新後、そして戦後、日本の自然は大幅に改変され、人為的環境への適応力に応じて生態系の種構成にも著しい変化が生じたわけです。ハクビシンは、カラスやムクドリと同様適応力が比較的高かったために“悪者”にされただけなのではないか──筆者の目にはそう映るのです。
 個人的にハクビシンはかなーり好きなタイプだったりします。果物フリークだし。アライグマに比べるとかなり扱いやすい動物で、人にも慣れます。原則として野生動物の飼育はオススメしませんが・・。
 さて、アイヌなど世界各地の先住民とも、科学的合理主義に基づき体系的に自然を捉えてきた近代ヨーロッパ圏とも異なり、ズボラでズサンな動物観・自然観を特徴とする日本人ですが、利点=救いもありました。自然に対する畏れ敬いから距離感を保っていたため、人為的な環境改変が限定され、野生動物と人間が適度に共存できる環境がある程度保たれていたのです。
 ところが、近代に入るや否や、その唯一の美徳・優れた文化をさっさとかなぐり捨て、節操もなく自然制圧的な思考・文化・技術にあっさり鞍替えし、山はスギとヒノキだらけに、海辺はコンビナートとテトラポッドだらけにし、オオカミやカワウソやアシカやトキを絶滅させ、公海の漁業資源を根こそぎにし、世界中から熱帯木材や野生動物製品を買いあさる国に成り果ててしまったわけです。日本という国は、「内の悪いところを矯めて良いところを伸ばし、外の良いところを見習って悪いところは他山の石として省みる」のと、まさに真逆のことをやってしまったわけです。和魂洋才などという聞こえのいい言葉のオブラートで包み込んで。節度やモラルを抜きにした“デントウ”こそたちの悪いものはありません。その象徴こそは捕鯨に他なりませんでした。
 今回の東京マガジンの出演者、制作者、取材を受けた人たちのほぼ全員が、西洋合理主義・キリスト教的世界観に由来するニンゲン至上主義にどっぷり侵されちゃっていましたね・・。動物を対等の存在とみなし、自然に畏敬の念を払っていた古来の日本人の奥ゆかしさ、つつましさは、欠片も感じられませんでした。動物や自然との共存という歯の浮くキャッチフレーズだけ独り歩きする中で、「ちょっとは野生動物の立場に身を置いて考えてみる」ということを誰一人せず、実態を見極める前に“害獣”というレッテルを張り、短絡的に“駆除”に結び付ける……。
 NHK教育で放映された秋道智彌氏プロデュースの「ニッポンはエコ」と高らかに謳う捕鯨礼賛番組と、今回の東京マガジンを、もし世界中のすべての人が見比べたとしたら、「ああ・・日本人って、なんてステキな多重人格者なのかしら・・・」と溜息をつくでしょう。
 ポーランドやイギリスなどの伝統を守って野生動物と共存する“いまの”農家の人たちと比べると(リンク参照)、日本人の一人としては本当に涙が出るほど情けなくなってきます・・・・

 もう一つ、クジラとハクビシンのリンクネタをお届けしましょう。ここまでの記事を読んで、既にお気づきになった方もいるかもしれませんね。
 そう、ハクビシン外来種説に待ったをかけた遺伝的多様性の分析結果。少数の特定集団から個体数が短期間で急増した場合、遺伝的変異は追いつかないので均質であるという、ボトルネック効果(創始者効果)。ハクビシンの場合、中国産が大量導入され、各地でいっぺんに野生化したという可能性もまだ残されていますが、そうは問屋が卸さないのが南極海生態系の事情。
 ハクビシンは1産1〜4仔で通年繁殖しているのに対し、どっかの誰かさんがゴキブリと呼ぶほど大型鯨類の中では繁殖率が高いとされるクロミンククジラでも、1産1仔で最低でも性成熟に7、8年もかかり、繁殖率はパンダ(性成熟年齢は4〜6歳、1産2仔が多い)やコアラ、ペンギンその他多くの野生動物よりずっと低いのが事実。パンダをゴキブリ呼ばわりする人は世界中どこを探してもいませんよね・・。繁殖率がはるかに高い競合種を差し置いて、高々1世紀の間に10万頭未満から70万だの100万だのに激増するなんて、そもそも無茶すぎるのは誰の目にも明らかなことでした。

■南極海、ミンククジラ増えず 調査捕鯨に米研究者が反証 (2/9,共同)
http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010020901000171.html
■The end of the Krill Surplus Hypothesis? (1/25,flagburner's blog(仮))
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/7b85221dcb67c1525083986924511bb1
■Are Antarctic minke whales unusually abundant because of 20th century whaling? ('09/12/17,Molecular Ecology)
http://www3.interscience.wiley.com/journal/123216925/abstract??CRETRY=1&SRETRY=0

 英文のアブストラクトは3番目のリンクに掲載されてますが、以下にaplzsiaさんの解説があるので、flagburnerさんのブログの赤いハンカチさんのコメントと合わせてご参照。木村資生氏は中立説で有名な方ですね。

http://messages.yahoo.co.jp/bbs?action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=34665
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=34680&thr=34665&cur=34665&dir=d
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=34700&thr=34665&cur=34665&dir=d
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=34702&thr=34665&cur=34665&dir=d

 さて・・flagburnerさんが教えてくれましたが、鯨研が反論を出してます。共同通信記事が配信されたため、慌てて出したのかもしれませんが、なぜかこっそり英語版のサイトでのみ・・・・

■ICR comments on the paper “Are Antarctic minke whales unusually abundant because of 20th century whaling? ”By Ruegg et al., Molecular Ecology. (1/20,鯨研HP)
http://www.icrwhale.org/100120Release.htm

 なんとまあ、不確実性をこういうときだけ都合よく持ち出してますね〜。ここまで恣意的に使い分けることのできる二枚舌ぶりには脱帽するほかありません。ゼロになったりはたまたマイナスになっちゃうお笑い自然死亡率よか全然マシだと思うけど。IWC-SC(国際捕鯨委員会科学委員会)のは、「遺伝子解析手法を用いる際は慎重にね!」という注意書き。鯨研のコレはただのステートメントで、学術的な反証を何一つ出したわけではありません。
 上掲のハクビシンはじめ、陸上野生動物の場合における遺伝子解析を目的としたサンプリングに比べ、56検体は決して少ないとはいえません。例えば、絶対数が少ないツシマヤマネコやイリオモテヤマネコの解析も行われ、他種との遺伝的比較や種内多様性に関する研究結果としてきちんと学会で報告されているわけです。第一、一番プライオリティが高いはずの(たまに自分たちでも偉そうに正当性を訴える道具にしますが・・)、乳腺や胎児、腎臓中の重金属・有機塩素その他の有害物質分析用に用いられている試料数より多いしね・・。母集団に対するサンプル数の比率の問題はありますが、統計上の有意性が問われる(より多くのサンプルで解析する必要がある)のは、「遺伝的多様性が少ない」という逆の結果が出た場合のみ。
 何よりこの反論が反論にも何にもなっていない最大の理由は、より精度の高いデータを鯨研は持っているはず、出せるはずだからです。研究者であれば、当然わかっているはずのこと。にもかかわらず、明確に白黒付けられるだけの証拠を出さない。毎年毎年あれだけのサンプルを収集しているのに。否定する材料があるはずなのに、肝腎の証拠を突きつけることをせずに、口先だけで誤魔化しているわけです。一体何のための致死的調査、調査捕鯨なのか!?
 実に卑劣きわまる、許しがたいことです。日本鯨類研究所は、科学研究機関の風上にも置けません。
 日本で唯一まともな鯨類学者といえる元帝京科学大学教授粕谷俊雄氏は、以下のように述べておられます(背景着色部分引用)。

IWC総会で日本代表が、SCが調査捕鯨を好意的に評価している旨の発言を日本語でおこない、通訳はむしろ批判的なSCの評価を正しく英語で引用するのを私はロンドンで体験した。当時、総会の様子が日本に送られていたことを知れば、これは国内向けの自己宣伝であると理解される。かつて我々を大戦に導き、鯨を乱獲に追い込んだ日本社会の構造はまだ生きていると見る。('08/6,Japanese Journal of Human Animal Relations)
昔、研究費を稼ぐための調査捕鯨もありえるSCで発言した日本の科学者がいた。いまではそのような発言はないが、SC科学者の多くは、日本の調査捕鯨をそのように見ている。これまで科学的な観点から調査捕鯨計画に意見を述べてきたSC科学者も無益であるとして今年は意見表明をやめた者が多い。調査捕鯨の意図を外から推し量るのは難しいので、@科学者が自主的に調査捕鯨計画を決めているか、A科学者の判断で非致死的方法を選択する自由があるか、B捕獲調査継続へ外部の圧力があるかなどで判断せざるをえない。@は疑わしい、Aはほとんど自由がないとみる、Bは圧力が大きいとみる。(中略)毎年1000頭以上の大型野生動物を捕獲する研究を続けることが研究者倫理にかなうのか、研究者のエゴではないかという疑問がある。調査捕鯨成果の掲載を拒否する学会があるのは、いまの学会の倫理観が60年前の条約のそれとは違ってきたことを示している。私が思うに、このような事業を長く続けるのはよくない。何よりも担当研究者を苦しめるし、腐敗発生の恐れもある。昔、調査捕鯨計画に発言する機会をもった科学者のひとりとして責任を感じている。日鯨研の研究部局は捕鯨行政から切り離して然るべき海洋研究組織に移し、後方・宣伝部局は水産団体に移すのがよい。('05,エコソフィア)

 腐敗は報道された監督官らの“土産”授受、あるいは共同船舶の内部告発者が赤裸々に語ったランダム・サンプリングの虚偽の形で端的に示されるとおり、既に相当根深く進行していると見た方がいいでしょう。ウヨガキを彷彿とさせる御用学者らの自画自賛的すりかえ要約ではない、調査捕鯨のSCによる評価が知りたい方は、以下をご参照。

■科学委員会報告 国際捕鯨委員会 アンカレッジ2007年 (抄訳)|東京大学先端科学技術センター 米本研究室
http://yonemoto.rcast.u-tokyo.ac.jp/PDF/Report_of_the_Scientific_Committee_2007_J_.pdf
■調査捕鯨自体が否定した3つのトンデモ論 (拙HP)
http://www.kkneko.com/jarpa.htm

 ついでにいえば、オキアミ余剰仮説を証明してくれる動物はいないわけじゃありません──クロミンククジラの代わりに。過去の商業捕鯨の乱獲によって引き起こされた南極海生態系の撹乱の証ともいえますが、実際に個体数動態に変化が見られた可能性が高いと考えられる動物種がいるからです。急増したことが確認されているカニクイアザラシとミナミオットセイ(オットセイ自体の乱獲からの回復も含みますが)。それらの種からサンプルを採取し、遺伝的変異の幅を提出されたクロミンククジラのデータとつき合わせれば、ボトルネック効果が果たしてあったかどうかという問題の科学的な決着は容易でしょう。姑息なゴマカシを図るくらいなら、資源としてはクロミンククジラより“頑健”なのは否定の余地がなく、南極条約の下で厳格に(捕鯨ニッポンに言わせればサベツ的に)保護されているとはいえ、科学的な正当性があれば研究目的の捕獲許可も下りるはずのオットセイ、アザラシ、ペンギンを対象に、科学的精度を高めるための大規模な経年致死的調査をやりゃいいんです。IWC下の鯨類資源管理/業態管理という目的の上でも、科学的に枯れきった現行の調査捕鯨なんぞより優先順位ははるかに上。
 んでもって、「日本が誇る焼き鳥文化だ、何が悪い!」と世界に声高に言いふらしつつ、長崎ペンギン水族館の前で副産物をフライドチキンならぬフライドペンギンにでもして売りさばきゃいいんですよ。「カワイイが保護色」系写真集が売れ動物園のアイドルに群がる動物愛誤大国ニッポンで、もしできるものなら。
 ま、ハクビシンからクジラまで、「殺すなというのは差別だから一切まかりならん! 何でもかんでも好きなように好きなだけ殺せるのが平等だ!」と吠えて殺しまくる、自然や生命に対する伝統的な畏敬の念をすっかり失くしてしまった、あまりにも変わり果てた捕鯨ニッポンでなら、調査捕アザラシも調査捕ペンギンもできない相談じゃないかもしれませんがね・・・・
 それが出来ない(しない)以上、ガラクタ仮説はとっくにゴミ箱行き!!

関連リンク:
−調査捕鯨で絶対わからない種間関係の生物学的重要性 (当ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/16989845.html
−動物保護先進国イギリスと後進国捕鯨ニッポン (〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/26786878.html
−東洋VS西洋? (〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/15855631.html
−シカとクジラ──神聖な動物を邪魔者扱いする捕鯨ニッポン (〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/19808644.html


 
◇捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!・その2

http://kkneko.sblo.jp/article/35896045.html

 前々回、炭素循環/地球温暖化防止の観点からすれば、クジラが森林“以上”にきわめて重要な役割を担っているということをお伝えしましたが、どうも大いなる誤解をされている方が少なくないようです。確かにややこしい話ですし、理解できてもいない反反捕鯨論者のミスリードが容易な点もありますが、これは環境問題の観点から捕鯨を論じるうえで欠かせない視点ですので、改めて補足しておきたいと思います。
 炭素を除去する生物ポンプの担い手として重要なポストを占める大型鯨類(ニッチの近い他の大型海洋動物含む)の保全が、森林保全以上に重要だという点については、前回の記事を復習していただければ十分でしょう。

@1世紀前に比べて激減している多くの大型鯨種を速やかに初期資源状態に持っていく必要がある。

 言い換えれば、そのために汚染・乱獲・乱開発にきちんと歯止めをかけ、海洋生態系のバランスを健全な状態に持っていく必要があるわけですが。アザラシやペンギンなどを間引く必要があるかについては保留・・。クロミンク間引き説には前述のとおり科学的根拠はもはやありませんが、こちらも効果のほどは疑問。ま、日本を含む国際世論の反発がなければ、やりたいヒトがやりゃいいんじゃないでしょーか・・・

A他の鯨種が回復せずバイオマス(〜炭素輸送量)が不十分な当面の間、クロミンククジラを保全する重要性はいや増して高くなる。
 クロミンクは、無責任極まりない捕鯨業者のを一手に被ってくれているありがた〜い存在です・・・・。彼らにしちゃいい迷惑でしょうけど・・・

B鯨類の炭素固定能をフルに活かすためには、自然死亡率を最大化、すなわち人為死亡率を最小化する必要があり、商業捕獲枠はゼロが最適。

 素朴な反反捕鯨原理主義者らの説く再生産云々は、そもそも乱獲を阻止できなかった時代のカビの生えたMSY理論の話で、母船式捕鯨で正しく運用できた試しがありません。いずれにしろ、再生産率の増加は人為死亡が自然死亡分を「食う」ことで働くとゆー理屈です(一般の方には少々理解が難しいかもしれませんが)。ここが落とし穴で、生物ポンプ機能の観点からは、自然死亡率を下げてもらっちゃ困るわけです。
 初期資源状態で適度な自然死亡が発生してこそ、炭素固定・除去という自然な元素循環の過程が最大限保証されるわけです。それは同時に、深海生態系の種の多様性保持にきわめて重要とされる鯨骨生物群集への継続的なリソース供給という側面も合わせ持っています。
 最も安全とされる現行のRMP(改訂版管理方式)ですが、海洋環境・生態系の重要な機能である生物ポンプに果たす鯨類の役割については、残念ながらまったく考慮されていません。

 お断りしておきますが、これはあくまで最善・最適という話です。「木を一本も切るな」という主張と「クジラを一頭も捕るな」という主張は、確かに科学的根拠があるとはいえない原理主義に基づいている意味で同レベルでしょう。それでも、森林も海洋大型生物も、可能な限り保全することが望ましいことは議論の余地がありません。さらに、より長期の炭素固定&除去機能があり、植林という人為的な更新手段がない点で、鯨類(その他海洋大型生物)保全の重要性は森林より一段高いということはできます。炭素固定のためには、森林より鯨類保護のほうが効率的ということ。両方やる必要があるのは当たり前のことですがね。
 森林伐採や捕鯨(サメ漁・マグロ漁などを含む)については、代替資源の模索や産業利用のあり方の再検討(e.x.伐採に代わるゴム採取、WWのような非消費的利用、飽食廃食大国ニッポンの真剣な反省・・・)とともに、社会的必要性について十分吟味する必要があります。公海上であれば、必要性のレベルが国際的に検証されるべきであるのは当然のこと。また、知床、白神山地、屋久島、南硫黄島、白保などのように、あるいは南極海のように、固有性・稀少性がより高い自然環境であれば、生態学的なモニター以外の理由で手をつけないことが合理的な最適解であるということができます。前回の記事で指摘したように、生物ポンプとしての機能がとくに高いと考えられる南極海の鯨類と取り巻く生態系をサンクチュアリとして保全することには、二重の意味できわめて高い正当性があるのです。
 「海の森林」として鯨類を保全していくことの重要性については、WWFノルウェーも環境保護先進国である同国できちんと市民に説いて理解を広めてくれるでしょうし、温暖化から南極保護関連まで、地球環境保全の文脈で開かれる様々な国際会議の場で今後取り上げられていくことになるでしょう。もちろん、IWCの場でも。
 言っときますが、ニンゲン風情がサメやシャチのポジションを奪って代行(一部のみ利用して大半を海底投棄)を買って出ようったってダメですよ。採算性・需要を度外視してサメやシャチに“嗜好”を合わせようってんならいざ知らず、進化史を経てその座についた正統な天敵である彼らを困らせ、生態系のバランスを崩すだけです。自然死亡がどの時期どの海域でどの程度発生しているか等、この先半世紀くらい輸送のメカニズムを研究したところで、どのみち天敵代行なぞ不可能でしょうけど。
 もう一点、一般の読者には聞かせる必要のない余談ですが、ネット依存症患者の鯨肉フェチの中には、トトロの森やアファンの森の木を守ってもCO2吸収量は微々たる物だから「保護を訴えることは罷りならん」というレベルの、常軌を逸した主張を展開している人物もいるようです。反反捕鯨論者の異常性の前では、演出の意味を弁えているシー・シェパードすら霞んで見えますな・・・・

 

◇クジラとジュゴン・リンク署名、進捗のご報告

 おかげ様で日本語版が160名、英語版が380名に達しました(3/9現在)。
 オーストラリア在住のYさん、中東在住のNさんには、現地で邦人と地元の方々に呼びかけていただきました。賛同ブログ・HPにもたくさん名乗りを挙げていただいています。海外版の署名には、世界中のありとあらゆる国にお住まいの方がサインをしてくださっています。ご協力いただいたたくさんの皆様に感謝m(_ _)m
 日本語版の方をもうちっと頑張らないといけませんね・・。ブロガーさんへの告知、沖縄報道等の確認、プレスリリース配信、NGOさんへの連絡など、手が10本あっても足りない状態(--;;
 一点、お詫びとお知らせがあります。書名のお知らせ欄でお伝えしましたが、沖縄普天間飛行場移設問題に関しては、一部の新聞で「現行案断念を米に伝達」と伝えられるなど、情報が錯綜している状態。

1.米側の担当者は「現行案が最善」との立場を崩しておらず、辺野古沖(米軍キャンプ・シュワブ沿岸)案が撤回されるかどうかは5月末の決着まで予断を許さない状況にあること。
2.キャンプ・シュワブ陸上案については、演習や開発工事による生息海域の汚染の激化に加え、非常にデリケートな動物であるジュゴンに対する騒音の悪影響は陸上であっても看過できず、ジュゴン保護の立場からは容認できないこと。
3.うるま市津堅島周辺(米軍ホワイト・ビーチ沖合)案については、貴重な干潟である泡瀬干潟の沖合にあたり、豊かな藻場がジュゴンの餌場となるため、やはりジュゴン保護の立場からは容認できないこと。


 2.3.など取り沙汰されているいくつかの移設先候補は、ジュゴンの生息を脅かす点で辺野古沖案と何ら変わりありません。
 1.の理由から引き続き辺野古沖移設反対を前面に掲げますが、この署名の主旨はあくまで「ジュゴンを守ってほしい」ということですので、日米両政府に対しては「辺野古沖を含む、沖縄のジュゴンに悪影響を及ぼす米軍基地移設計画のすべて」に対して中止を求めていきます。沖縄の人たち、ジュゴンたちの側に立ってくれる皆さんであればご理解いただけると思いますが、ご了承のほどお願いいたします。

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2010年03月03日

捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!/署名英語版もスタート!

◇捕鯨は森林破壊以上の環境破壊!!!!

@大型クジラは炭素を貯蔵する海の森林? (2/27,フリーランス英独翻訳者を目指す化学系元ポスドクのメモ)
http://blogs.yahoo.co.jp/marburg_aromatics_chem/62925350.html
A低炭素社会のためにも捕鯨をやめよう/クジラの骨SUGEEEEEEEE (2/27,蝉コロン)
http://d.hatena.ne.jp/semi_colon/20100227/p1
BWhales and sharks as carbon credits? (3/2,flagburner's blog(仮))
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/2a955711fe2eaac06b895caaf376f346
CCarbon credits proposed for whale conservation (2/26,Nature)
http://www.nature.com/news/2010/100226/full/news.2010.96.html
DWhaling worsens carbon release, scientists warn (〃,BBC)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8538033.stm
E生物ポンプ|Wikipedia
ポãƒ3ãƒ−">http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%83%97
F生物ポンプが地球を救う!? (2/1,リバコミ!)
http://livacomi.jp/item_2204.html (リンク切れ)
G海洋表層の海の森/“生物ポンプ”によるCO2の循環
http://www.asahi-net.or.jp/~ZU5K-OKD/house.12/control/control.3.htm
H海洋の炭素循環|気象庁
http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/db/co2/knowledge/carbon_cycle.html
I炭素循環|Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%AD%E7%B4%A0%E5%BE%AA%E7%92%B0
J陸期限微量元素の海洋生物ポンプに果たす役割に関する研究|東大海洋研
http://www-aos.eps.s.u-tokyo.ac.jp/kyosei/member/pdf/16-3-2sano.pdf

 非常に興味深い科学的知見が明らかになりました。まずは、上掲@ABのブロガーさんの記事をご一読。一次ソースはCDのリンク。
 一言で言えば──


>この炭素量は温帯の森林11,000平方キロメートル分に匹敵するのだと言っています。だから捕鯨は大規模な森林伐採に等しいのだ!
(A〜)
>捕鯨をやめてクジラが増加すれば、陸上の森林のように炭素固定に利用できると考えている。
つまり捕鯨というのは、燃料用に木を切ることと同じ行為だという。
クロマグロなどの大型魚類も含めて、捕獲をやめた分を 「炭素クレジット」 とすることも提案されている。
(@〜)

 ──ということ。
 筆者はここで、炭素循環/地球温暖化防止の観点からすれば、クジラが森林“以上”にきわめて重要な役割を担っているということを解説したいと思います。
 生物ポンプについては、EFG辺りを読んでさらっと勉強しといてください。炭素循環の比較的わかりやすい図として、HIも合わせてご参照。
 海中のプランクトンが吸収する炭素量は、当然ながら研究者によってデータの取り方が違うので数字には幅がありますが、大体400億〜500億トン程度とみられています。

海洋性の植物プランクトンと、陸生の植物全体が、ほぼ同量のCO2吸収量(G〜)

 とあるように、数字だけ取ってみても、海洋生態系が森林に匹敵する役割を帯びていることはおわかりいただけるでしょう。ただ、いま地球温暖化の文脈で生物ポンプが注目されているのは、海洋生態系に森林にはない機能があるからです。それが炭素の除去
 Wikiの図解では6100億トンとありますが、これが陸上の植生に貯蔵される炭素量。実は、この一時的な貯金は、木が枯死するなどして分解される過程で全部大気中に戻ってしまいます。貯金が有効なのは、せいぜい十年から百年のスパン。それに対し、海洋の生物ポンプによって蓄えられる炭素は、最大の貯蔵庫ともいわれる中深層海水中の溶存炭素(炭酸塩・重炭酸塩含む)の形で貯蔵される分で千年。さらに重要なのは、一部が海底に堆積して循環のサイクルから完全に外れるということです(実際には岩石圏経由で還元しますが、数百万〜数億年先の話)。
 Aにある生物ポンプで運ばれる炭素量400億トンというのは、おそらく吸収量の間違い。こちらも幅があって気象庁(一次ソースはIPCC2007)の図解では110億トンとなっていますが、大体年間数十億トンとされているようです。比較するなら、海洋生物の貯蔵量(バイオマスとしての分)30億トンのほうですね。確かに鯨類の900万トンというのは、割合としては大きくないように見えます。
 ところが、この数字には実は非常に大きな意味があるのです。ポイントは、海洋生態系の中で鯨類が占める特殊な位置づけ。
 生物ポンプの担い手は主に3通り。ひとつは、有孔虫や放散虫などに代表される海洋プランクトンの死骸(総量としてはこれが大部分)。ふたつめはサンゴや貝などの炭酸カルシウムの骨格。そして、第三の担い手こそクジラなのです(クジラに近いニッチの、天敵が少ない長寿命大型海洋生物を含む)。
 『死んだ魚を見ないわけ』という一般向けの教養書が流行りましたが、それ以外の生物を経由する炭素は、食物連鎖をめまぐるしくめぐってすぐに表層海水・大気中に放出されます。一方、自然死した大型鯨類は、鯨骨生物群集が示すように、表層の炭素をダイレクトに深層に持っていく役割を果たすからです。
 そして、もうひとつ重要な点。プランクトンの発生量〜炭素固定量は短期的な変動が非常に大きいのに対し、繁殖率が低く長寿命で食物連鎖の上位を占める鯨類は変動が緩やか(ニンゲンの介入さえなければ、ですが・・)。気候変動の過程で生物ポンプが温暖化を加速する方向に働くのか、それとも抑制するのか、どちらでもないのかについては、諸説あって議論が分かれているところですが、少なくとも地球温暖化を食い止めるためには正のフィードバック(加速)を避けたいもの。サンゴなどは、海水の酸性化と水温上昇により温暖化するほどダメージを受けるので無理。プランクトンの増殖は栄養塩類の供給に左右されるのであてにできない一方、富栄養化−>赤潮というニンゲンにも他の海洋生物にも好ましくない状況に依存することに。その点、「海の森林」たる鯨類その他の大型海洋動物の保全は、ニンゲンが過剰漁業、汚染、沿岸乱開発をやめ海洋生態系が健全な状態にさえ保たれるなら、最も優れた炭素固定の手法といえるでしょう。
 さらに重要な点をもうひとつ。ここで資料Jをご覧いただきましょうか。


>他の陸起源微量元素と同様に河口域などで活発に除去され、外洋域への水平輸送はそれほど大きくないと考えられてきた。しかし、本研究の結果は、南極海において水平方向への輸送が比較的遠い範囲にまで及んでいることを示している。


 これは何を意味しているのかというと、実は海洋生物による炭素固定は一義的には栄養塩類の供給量に依存していて、その栄養塩類の供給が海中の有機物由来である場合は炭素収支としては差し引きゼロに等しいのです。つまり、森林と同じで、一時的に貯蓄はできても減らすわけではないということ。しかし、栄養塩類が陸上から供給される場合は、その分ストックを追加していくことができるわけです。通常、河川を通じて供給される陸上由来の栄養塩類は、表層・沿岸の生態系で消費され、やはり大気や表層海水中に還元されてしまいます。しかし、南極では豊富な深海からの湧昇流中の栄養塩に加えて陸上起源の栄養塩類が広域に供給されるため、南極海生態系の食物連鎖を通じて最終的に深海へと、その分追加で炭素を運搬・除去していることになるわけです。その中で、鯨類こそは生物ポンプの要として、欠くことのできない役割を演じているのです。
 総量としては、確かに鯨類がカバーしてくれる炭素量は、すべての森林による吸収量、あるいは産業由来CO2排出量に対して大きいとはいえません。しかし、重要なのは単位生物体量当りで見た炭素固定・除去量。Natureの記事にある「11000平方キロの森林に相当」という表現は、実際には上述の理由で「11000平方キロの森林“以上”に相当」というのが正解。寿命の長さや生態系における位置づけと深海への運搬プロセスの担い手という重要な要素が決め手となり、南極海のクジラは、まさに森林に勝るとも劣らない地球温暖化防止のカギを握る存在なのです。
 化石燃料の燃焼などニンゲンの産業文明に由来する炭素は、自然の炭素循環の動的平衡状態を崩すもの。経済に例えるなら、通貨の需要と供給のアンバランスが生じて入超となったインフレ状態。リーマン・ショックじゃないけれど、産業界(生物圏全体)が特定の一企業(ニンゲンという動物の一種・・)の所為で大迷惑を被っているわけですね。森林に蓄えられる炭素はいずれ大気中に戻るので、収支は常にプラマイゼロ。短い定期預金みたいなもん。ニンゲンによる増分の炭素まで貯めておくには、森林の面積をどんどん“増やす”必要があります。それに対して、ニンゲンが増やした超過分の炭素を取り除いてうまく平衡状態に戻してくれる可能性があるのが、この生物ポンプなのです。貨幣価値がどんどん下がり、物価が上げる一方のインフレの最中となれば、いまのうちに物に替えとこうと買い溜めに走るのが消費者心理というもの。そんな中で、市場にあふれた余剰通貨を回収し、箪笥預金にしてずぅーっとしまいこんでくれるありがた〜い存在がクジラたちってとこです。
 地球温暖化を防止するためには、省エネの推進、自然エネルギーへの転換、排出削減のための技術開発、原生林の保全、植林、砂漠化防止etc.etc.と全方位的な対策が必要。もちろん、あらゆる産業と同じように、農業も畜産も漁業もその例外ではありません。大事なのは、社会システムと価値観のパラダイムシフト。「森林保全か捕鯨禁止か」という二者択一はナンセンスな命題。両方やらなくてはなりません。
 その中で、森林保全以上に大きな意味を持つ捕鯨禁止、鯨類と彼らを取り巻く海洋生態系の保全が、とりわけ率先して取り組むべき課題であることは否定の余地がありません。なぜといって、捕鯨禁止は、森林保全にかける少なくない経済的・社会的負担の一部を効率的に軽減してくれるのですから。同等の炭素固定量分の面積の森林保全/造成よか、バカげた補助金漬け国策事業をとっとと廃止するほうがよっぽど簡単なのは、誰が考えてもわかることでしょう。年間2千万トンの食糧を廃棄する飽食大国で、カガクだかブンカだかもよおわからんくだらん事業にかけている財政負担が減るんだから、納税者としても万々歳ですし、長年続いてきた官民癒着の悪しき弊害も炭素と一緒に除去できるとなれば、これはもう一石三鳥ですね。
 繰り返しますが、地球温暖化を食い止めるためには、豊かな海の生態系のバランスを取り戻し、その中で健全な役割を果たせる状態にまで鯨類の個体数を回復させることがきわめて重要なのです。

 

◇「いっせいのせ」でやめよう!! 辺野古移設と調査捕鯨!!〜英語版署名もスタート

■Stop Henoko Relocation & Research Whaling|Care2
http://www.thepetitionsite.com/1/protect-dugongs-and-whales

 告知が遅れましたが、英語版も開始しました! 海外のお住まいのお知り合いにぜひお知らせください。最終的には日本語版・英語版セットで鳩山首相とオバマ大統領に宛提出しますが、重複署名も可です。
 3/1現在の署名の数は、日本語版92人に対し英語版204人。個人が始めたインターネット署名としてはまずまずの滑り出しだと思いますが・・。翻翻訳しただけで中身は一緒なんですが、日本語版は専ら国内の日本人の方向けなのに対し、英語版は米国向けだけではありませんし、市民運動の浸透度からしても差が出てくるのは仕方ないですね・・。そうはいっても、一日本人としては“譲り合い合戦”で遅れを取りたくないもの。メールやツイッターなども通じて、お友達にもぜひお知らせください。

 引き続き皆様のご支援・ご協力をお願いいたしますm(_ _)m
posted by カメクジラネコ at 01:19| Comment(2) | TrackBack(2) | 自然科学系

2010年02月09日

捕鯨御用学者のトンデモ珍説ゴミ箱行きに/赤松農相と並んで岡田外相も赤点

◇カガクから科学へ──捕鯨業界付き御用学者のご都合主義的トンデモ仮説が瓦解

■南極海、ミンククジラ増えず 調査捕鯨に米研究者が反証 (2/10,共同)
http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010020901000171.html
■The end of the Krill Surplus Hypothesis? (1/25,flagburner's blog(仮))
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/7b85221dcb67c1525083986924511bb1

 flagburnerさん、猫玉さん、marburg_aromatics_chemさん、Adarchismさん始め市民ブロガーの皆さんが継続的にチェックし伝えてきてくれたことですので、捕鯨問題に関心を持ち拙ブログにお越しいただいているほとんどの皆様にとっては既出の内容ですけどね・・。とはいえ、食害論やら間引き論といったトンデモ仮説が大手を振ってまかり通っている国内では広く伝えられるべき科学的根拠に基づいた情報であり、またこれまで偏向著しかった日本のマスコミには率先して報道する義務があるといえるでしょう。大隈御大はじめあまりにも素朴で牧歌的な主張を唱えてきた捕鯨サークル付きの御用学者たちの幻想は脆くも崩れ去りました(もう何度目かだけど。。。)

参照リンク:
■特設リンク・捕鯨問題総ざらい!!! ■トンデモクジラ食害論を斬る!
http://kkneko.sblo.jp/article/29976279.html

 

◇沖縄とリベラル派の期待を裏切りまくったFBI(フランケンベーコンイオン)外相ももちっと勉強してよ!

■調査捕鯨―互いの食文化を尊重して (1/2,岡田かつや TALK-ABOUT)
食文化を尊重ã−ã|.html">http://katsuya.weblogs.jp/blog/2009/12/%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E6%8D%95%E9%AF%A8%E4%BA%92%E3%81%84%E3%81%AE%E9%A3%9F%E6%96%87%E5%8C%96%E3%82%92%E5%B0%8A%E9%87%8D%E3%81%97%E3%81%A6.html

 個人として様々な観点から捕鯨問題を追及しておられる平賀さんより、岡田外相のあまりにトンチンカンな記者会見&個人ブログの見解に対する痛烈なご批判のコメントをいただきました。ご了解を得て拙ブログでもご紹介させていただきます。なお、平賀さんが投稿された2本の追記コメントの方は削除された模様・・。どうでもいいけど、ネトウヨの諸君は外相に対しては一言も文句を言わないねぇ〜

(投稿1・1/2に上掲ブログのコメント欄で掲載)
 捕鯨問題を食文化問題として解釈するのはとんでもないまちがいだとおもいます。民主党がこのようなまやかしの論理に乗ってしまうということは、8月の総選挙において、政権交代のために一所懸命に働いたものとしては無念の極みであります。戦後食糧難の時代日本人は鯨に助けられましたが、鯨を中心にした食文化など、少数の特定地域のローカルな食習慣以外には、存在していないことは自明なことだと思います。
 岡田さんの、あるいは岡田さんの知人の家庭には「鯨を中心とした食文化」が存在しているのでしょうか? 多分まったく存在していないでしょう。岡田さんの知人からさらに範囲を拡大してみても同じことであり、日本人全体にそれを拡大したとしても同じことでしょう。
 戦後の一時期私が食べた鯨料理といえば、しょうが焼きか、竜田揚げです。それも牛肉は論外で、鶏肉、あるいは豚肉ですら高価であって、鯨は安かったことから、庶民の食卓に上がったものと解釈しています。
 捕鯨問題の本質は、食文化ではなく、一つには日本人のたんぱく質食材の経済問題であり、二つには商業捕鯨が経済的に成立で切るビジネスモデルとして存在しうるのかの事業性問題であり、三つには調査捕鯨における「科学」の本質がどこにあるのかということにあります。この三つの本質を除外して、食文化を土台にした論理を国際舞台に持ち込に調査捕鯨をごり押しすることから、国際的な外交問題に発展してしまうのです。水産庁のお役人はこの三つの本質に目をつぶって、分かったようで分からない食文化を前面に持ち出しているのです。この食文化に関しては外国人が実証的に反論することがほぼ不可能なことだからです。官僚らしいずるさの極みがここにあります。
 岡田さんは調査捕鯨の目的をごらんになったことがありますでしょうか?いつまでも結論を出すことができないであろう課題が挙げられております。従って永遠に「科学的」調査捕鯨とされる実質的商業捕鯨が継続されてしまうことになります。岡田さんは何十年も継続してきた「科学目的」の調査捕鯨の科学的成果をご覧になったことがありますでしょうか? 多分ないでしょう。多くの鯨を犠牲にしながら成果はほとんどないのです。この部分こそ似非科学として世界中の識者の眉をひそめさせている部分です。私はこれを日本人の恥と感じています。ノーベル賞学者を継続的に輩出している科学大国日本の恥ずべき行為がこの調査捕鯨なのです。
 岡田さん、目を覚ましてください。真っ白なベースから、調査捕鯨の本質を考え、科学的調査捕鯨の実績を利害関係を持たない外部の識者の意見を入れて精査してください。

(投稿2)

 私は以下の岡田君の見解に大変な憤りを感じています。役人の言い分のまったくの受け売りではないですか。
食文化を尊重ã−ã|.html">http://katsuya.weblogs.jp/blog/2009/12/%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E6%8D%95%E9%AF%A8%E4%BA%92%E3%81%84%E3%81%AE%E9%A3%9F%E6%96%87%E5%8C%96%E3%82%92%E5%B0%8A%E9%87%8D%E3%81%97%E3%81%A6.html
 私が民主党の応援に入った第一の動機は中南米、南太平洋諸国に対して、ODAを恣意的に使う政官業の癒着構造を見たからです。脱官僚を標榜する民主党の主要幹部が、無批判に官僚の主張に乗っかり、これほどの思考停止状態を示していることに大変な落胆と憤りを感じています。
 調査捕鯨問題の中に私が発見したことは、日本は予算を決めるのも執行を行うのも、官僚が支配権を握っているという意味において官僚主権国家であるということでした。
 民主党は官僚主権国家を廃し、国民主権国家を作ってくれるものと期待して、暑い夏の総選挙で地域の民主党候補の応援に走り回りました。参議院の補欠選挙においても、候補者に関する知識がまったくないままに、一所懸命に活動を行いました。地域の衆議院議員に対する忠誠を示すためでした。
 自分の頭で考え、自分の目で事実を見ない岡田君の意見のようなものが訂正されない限り今年の参議院選挙では私はボランティア活動を行うことを拒否します。
 このことについては、この選挙区の民主党衆議院議員にはっきりと申し上げるつもりです。

(投稿3)
 岡田さん、「非常に友好的に議論をしてきたスミス外相が、その瞬間に顔がこわばり、黙ってしまいました。」と貴殿のブログに記しています。
 顔がこわばった理由をどのように解釈しましたか?
 私は貴殿が言い古された言い訳を持ち出したことから、スミス外相が貴殿を議論の相手にならないと落胆をした結果だと思います。
 貴殿が言ったことは、長らく日本が言ってきたことです。これを持ち出せば、今までそうだったようにこれ以上の進展は望めないことをスミス外相は知っているのです。
 貴殿はオーストラリア人のカンガルー食についても言及しています。
 カンガルーの肉を食うオーストラリア人に、鯨を食べる日本人を批判する理由がないとする立場も日本人が長らく主張してきたことです。私はこれを目くそ鼻くその議論だと理解します。次元の低い世界の話です。大変に情けないかつ幼稚な精神構造から出てくる言葉です。。これを持ち出すことを断じて止めていただきたい。なぜならば、外相がこれを発言することは、日本人全体がこのような目くそ鼻くその次元の低
い論理を振り回す、文化程度の低い国民だと思われてしまうからです。
 今回のスミス外相との会談で、日本の外相は相手方からの貴殿に対する個人的信頼も、日本の信頼も得ることができなかったものと判断します。外国は鯨問題に関するオーストラリアと日本とのやり取りを、冷ややかに、また面白半分に見ていることでしょう。
 考えてみてください。調査捕鯨は「科学」として行われているのです。科学的成果に誇るべきものがあれば、外国もそれほど目くじら立てることはないものと思います。そこに見るべきものがないことから、実質的商業捕鯨として非難されているのです。科学的成果に見るべきものがないにもかかわらず、屠殺する鯨の数が多いことに多くの人が憤っているのです。
 第二に、日本には沿岸捕鯨の伝統があったことは事実です。しかしながら、このことを理由にして、沿岸よりも1万倍以上遠い、公海上での船団方式の『捕鯨』の権利を主張することには明らかな無理があります。さらには、公海上の資源に関して日本だけが、ありもしない「食の文化」を論拠にして公海上で捕獲、屠殺した鯨を食する権利を主張することにも大変な無理があります。
 ミンク鯨が絶滅の危機に瀕していないことは事実でしょうが、世界市民の共有の資源であるミンク鯨の資源は、多くの国が食材として利用できるほどには豊富ではないことも事実です。このような中で日本だけがその権利を主張する理由を私には理解ができません。
 日本における伝統捕鯨(沿岸捕鯨)、ヨーロッパから持ち込まれた船団方式の捕鯨の歴史、生物多様性の一つの象徴である鯨の絶滅への道など、調査研究なされ、外交上どのように振舞われるべきか良くお考えいただきたいと思います。
 くれぐれも、民主党の方針に反して、官僚の浅知恵を鵜呑みにした発言を外国首脳の前で行われませんようお願い申し上げます。

posted by カメクジラネコ at 18:27| Comment(4) | TrackBack(0) | 自然科学系

2010年01月08日

マスコミが伝えようとしない調査捕鯨の「負の側面」/しょこたんとクジラ

◇マスコミが伝えようとしない調査捕鯨の「負の側面」

■マスコミが伝えようとしない調査捕鯨の「負の側面」 (10/7,JANJAN)
http://www.janjannews.jp/archives/2188034.html (リンク切れ)
http://www.asyura2.com/10/senkyo77/msg/177.html

 半年ぶりに市民インターネット新聞JANJANに記事を掲載していただきました。というか、急遽投稿せざるを得なくなったんですが。。アホどものおかげでまた徹夜しちったじゃニャーきゃ(--;; 
 前回アラシによるSS顔負けの執拗な攻撃を受け、編集部に多大なご迷惑をかけたため、今回はご意見板を設置しません。高い給料もらってしょうもないガセネタ記事やゴミコラムを書いてばっかりいるサン流ケイ薄新聞のウヨ記者と違い、少人数でハードワークをこなしている市民メディアさんに負担をかけるわけにいきませんから。といいつつ、少々痛いポカがあったのでまたご迷惑をおかけしてしまいましたが(汗) 記事へのご意見・ご質問があれば、当記事のコメント欄かフォームメールまでお寄せくださいm(_ _)m
 違反の件ですが、2006年に起きた日新丸とGPのアークティック・サンライズ号との衝突事故では日新丸側の非は免れないものの、今回のケースの場合、第二昭南丸側が避航船としての義務を果たさなかった一方、アディ・ギル号側も保持船としての義務を果たしていないので、結局ここでも豪ギャレット環境相の言うとおり、ケンカ両成敗が妥当な線ということになりそうです。
 筆者も未チェックでしたが、GPも日新丸のCORLEG条約違反を認識していた模様。SS指名手配で、不審船撃沈の責任まで問われるギャンブルだと危惧する声もある中、国内法の域外適用にまで踏み込んだ日本の警視庁を見習って、再度日新丸を訴え直しゃいいのに。

 

◇しょこたんとクジラ・・の骨の謎

■深海の巨大奇怪生物を捕獲せよ!「飛び出せ!科学くん」 (1/4,TBS)
http://www.tbs.co.jp/jump_kagaku/

 地球の裏側でドンパチやってペンギンやクジラたちに迷惑をかけている連中はとりあえずほっといて、拾い物の情報をば。
 深海生物ネタというので久しぶりに観た「科学くん」。巨大生物というから何じゃと思ったら、ただのタカアシガニだった(--;; まあ、3mといったらそんなもんだよねぇ。同番組ではこれまでも何度か深海ザメ漁の取材企画をやっていますが、正直筆者はちょっぴり悲しくなります・・
 別にね・・ナヌカザメを丸めるなとか、タカアシガニをにするなとか、うるさいことは言いませんよ(褒められもしないけど・・)。でもねぇ。。
 捕鯨問題担当の森下水産庁参事官が“自白”しているように、いま日本沿岸の漁業資源の多くが危機的な状況にあります。主要な原因の一つは乱獲。そんな中で、これまで手付かずのフロンティアに近かった深海漁業がにわかに脚光を浴びるようになりました。しかし、各種のサメ類を始めとする多くの深海生物の生態は、クロミンククジラの冬季の生態と同じくらいほとんど把握されていないのに、化粧品や健康食品市場に高値で売れると群がる漁業者も。資源管理・漁業者の監督の前提となる、資源量と生態把握のための学術研究が一体どれだけまともに出来ているのか。何せ、沿岸の水産資源の調査研究に配分されている予算は、全部ひっくるめて調査捕鯨の1/4ですからね。。(前回のブログご参照)。深海漁業の資源管理については、3年前にやっとFAOでガイドライン策定に着手され始めたばかり。規制方針の採択も2年前のことにすぎません。
 以下は、三重大の水産学者・勝川氏の言。


>残念ながら、成長率が遅い深海資源に適切な管理手法は、現在のところ存在しない。


−水産庁のNZレポートを徹底検証する その10 ('09/4/7,勝川俊雄公式サイト)
http://katukawa.com/2009/04/1190.html
−深海漁業管理のための技術ガイドラインを策定を合意 第27回FAO水産委員会 ('07/3/9,EICネット)
http://www.eic.or.jp/news/?act=view&serial=15510
−深海漁業を規制する国際指針、FAOが採択 ('08/9/4,AFP)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2513654/3289308
−深海底生態系の保護と漁業規制の新たな動き|海洋政策研究財団
http://www.sof.or.jp/jp/news/151-200/170_2.php

 サメっていいよね。個人的には、クジラよかずっとビューティフルだと思います。3億年の進化史が練り上げた、ニンゲンの設計したどんな飛行機も船も、ブッ壊れたSSのヘンテコシップも、足元にも及ばない洗練されたデザイン。卵のユニークなフォルムもお茶目だし。ユメザメとかのパッチリオメメもラブリーだし。まあ、カワイイとかお茶目とかラブリーとかはどうでもいいんですが、クジラと同じく生態系の上位捕食者で、繁殖率が高いわけなし。中にはニンゲンより妊娠期間が長い種もいます(正確には卵胎生だけど)。
 で、主役のタカアシガニですが、別名水ガニと呼ばれるほど「水っぽくてマズイ」とされ、20年くらい前までは食用としてほとんど見向きもされなかったとのこと。かつてネコマタギとして敬遠されたマグロや、今現在の鯨肉と同様、物好きなゲテモノグルメ愛好家くらいしか需要がなかったんですね。カニには詳しくありませんが、脱皮を繰り返して少しずつ大きくなっていく生物ですし、深海底に生息するスカベンジャータイプなので代謝も低く、成長が早いとは思えません。そういえば、百歳のロブスターが海外ニュースで話題になりましたっけ。当日捕獲された個体の最大サイズ(脚の端から端までの全幅)は130cm程度。小型化は、クジラ、魚その他の水産生物と陸上の獣や鳥とを問わず、乱獲の最もわかりやすい証拠。回復ペースを無視してジャンジャン獲っていたら、3m級なんて遠い昔の話になってしまうでしょう・・
 番組中ではクジラの映像が登場。といっても、既に海底に沈んで骨と化し、タカアシガニの群れにきれいに掃除されつつあったのですが。いわゆる鯨骨生物群集の一つですね。元ネタはお馴染みJAMSTEC(海洋研究開発機構)。宣伝用のニンゲンと人工物の映像ばっかりメディアにばらまくエセ研究機関・鯨研とは大違いで、教養に資してもらおうと個人からメディアまで貴重な学術的映像資料を気前よく提供してくれる本物の研究機関です。
 小型潜水艇ハイパードルフィンが、2004年に鹿児島湾の水深250m辺りで撮影した映像がネットで観れます。検索画面で「タカアシガニ」「鯨骨」で引っかかってきます。

−深海映像データベース|GODAC
http://www.godac.jamstec.go.jp/jedi/public/Sec101.jsf

 深海ザメではないけど、サメの美しい映像もセットになったnaokiさんのブログ記事は以下。

−絶滅の恐れのあるサメ類 ('09/12/26,紅海だより)
http://inlinedive.seesaa.net/article/136645465.html

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2009年09月14日

調査捕鯨ミステリー〜副産物鯨肉が途中で蒸発!?/捕鯨礼賛番組で10枚座布団持ってかれたNHK、1枚分取り戻す

◇鯨肉在庫最新情報──水揚されたのに倉庫に入る前に消えちゃった???

■冷蔵水産物流通量 (農水省HP)
http://www.maff.go.jp/www/info/bunrui/bun06.html (リンク切れ)

 10日に発表された農水省の鯨肉在庫統計について、読者の方から注意喚起をいただきました。

 まず、6、7月の入庫が493トン及び381トンと異常に少なくなっています。この両月はJARPN2(北西太平洋調査捕鯨)分鯨肉の水揚月に当たっています。年度によって漁期がずれますが(サミットを避けるとかつまらん理由だったりするけど・・)、昨年まではピークで千トン超の数字でした。今年の調査では、母船日新丸が6月26日に函館にいったん寄港、終了後の7月29日には東京の大井埠頭に入港し、鯨肉を積み下ろしたと見られるため、両月合わせて2千トン弱程度の数字が挙がっていなければならないのです。
 都市別在庫の方を見ると、確かに6月の函館が急増して3位に浮上していますが、増加分は350トン程度でしかありません。また、7月の東京は逆に350トンほど減ってしまっています。本来であれば、この両月のJARPN2分の入庫で、ピークに達した鯨肉在庫は5千トンを突破して3年前の水準にまで逆戻りしていても不思議はありません。というより、そうでなければおかしな数字ということになります。
 考えられるのは、過去記事でもお伝えした、7月大井埠頭での鯨肉積み下ろし作業の際発生した人身事故のために、当月入庫としての計上報告が遅れた可能性。もっとも、それだけでは函館入荷分が少ないことは説明できません。筆者らがアヤシイと睨んできた、調査対象外倉庫へ消す形で数字の操作が行われた可能性もかなり高いと考えられます。なぜなら、前年に比べると少し頑張ったとはいえ、昨JARPA2では船員転落事故等の影響で予定捕獲数には達しませんでした。にも関わらず、鯨肉在庫の方は再び5千トンの大台に乗ってしまったとなれば、マスコミや市民団体の注意を引くことは確実で、国民の鯨肉消費離れの実態を隠したい捕鯨サークルとしては、それは避けたいわけです。
 昨年も同様に、統計上の入出庫の数字をいじくって、従来ピークだったJARPA2後の4、5月ではなく9月に年間の最大値がズレるようにして、見かけ上在庫が増えていないように細工した疑いがありました。水揚時の一次入荷用には、統計調査対象の大型倉庫を使用しないわけにはいかないはずですから、もし来月になっても一連のおかしな数字が変わらなければ、罰則規定がないのをいいことに彼らが帳簿上で行った悪質な統計操作疑惑は濃厚ということになるでしょう。
 ただ、転売の操作とは異なり、入庫の数字がここまで大きく実情と食い違うのは異例。市民の監視の目も意に介さず、オトモダチ新聞産経熱狂的なシンパがヨイショ番組を作ってくれるNHKなどマスコミを味方につければOKとたかをくくり、同じ誤魔化すにしてもかなり大胆になってきたことの表れかもしれません・・。
 さて、来月の在庫統計で前月の数字が修正されているか、あるいは8月分として計上されているか、それともシラを切って誤魔化し通すか。鯨研が出す副産物販売時のプレスリリースの“副産物”量の数字と合わせて要チェック!
 もう一つの注目ポイントは、今年に入ってからの出庫量。いやはや少ないですね・・。1月から7月までの数字を昨年と比較してみると75%、2年前の’07年と比べるとなんと54%にまで落ち込んでいます。JARPA2増産後の出庫ピーク7月の数字653トンは、2年前の約半分、3年前の3分の1程度でしかありません。
 ちなみに、今年は5月だけ奇妙に出庫量が増えており、654トンと例年のピーク7月より1トン上。都市別で見ると、石巻にあった在庫が400トンも忽然と姿を消しており、これまたの出庫増・・。この5月以外の月間出庫の前年度比の平均は63%にすぎません。2、3年前の数字は、共同船舶社内に発足した販促別働隊「鯨食ラボ」大出血サービスにいそしんでいたおかげといえますが、もはや体力がまったく残ってないんでしょうか。昨年の販売状況についても、水産業界紙上で共同船舶社長が、赤肉は慢性的に売れてないけど白手物は昨年前半はそこそこ売れた(でも結局後半は落ちた・・)と弁明していましたが、今年はさらに厳しい数字となり、関係者もさぞかし青ざめていることでしょう。で、7月に出てきたのが、北海道新聞などが報じた「最大2割もの大幅値下げ」という措置だったわけです。
 前回の記事で取り上げた農水補助金の件と合わせ、Mさんが以下のように分析してくれています。


調査捕鯨の新規補助金ですが、今年の鯨肉販売の値下げ分に相当しているように思えます。販売の細目がないので概算ですが、キロ当たり平均100円の値下げとすると2億円の減収だと思われます。大口取引での割引もあるため、約3億円の新規予算追加は、伝統的「補助金」の性格を証明しているようなものですね。(Mさん)


 別の関係筋によると、7月発表の大幅値下げは、主に飲食店向けの比較的スジっぽい安物部位がメインで、社長発言で少しは掃けたとしている白手物の一部は値上げした模様。さらに値下げに踏み切ったのは、解体加工用の自動カッターを母船に積み込んだおかげでコストダウンできたという裏があるとの情報も。もはや食ブンカもへったくれもありませんが、辞めていく社員が続出していることとも合わせ、共同船舶にとっちゃ一石二鳥ということでしょう。
 この点について筆者は、ある強い疑念を抱いています。1台2千万円(業界の方はそれでも高すぎるとコメントしていかれましたが)しかしないLRAD装備だけでは合理的説明がつかない、H20の補正及び昨年の本予算の「円滑化(SS対策)事業」、保安上の理由で詳細が一切明らかにされない3億+8億円もの巨額の国庫補助金が、実は共同船舶・鯨研の赤字対策に流用されていたのではないかと──。

−調査捕鯨の闇がまたひとつ──不可解な鯨肉大幅値下げ、そのコストを負担するのは一体誰!!?? (拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/30322511.html
−増える在庫/消える在庫 鯨肉在庫統計のカラクリを読む (市民ニュースJANJAN)
http://janjan.voicejapan.org/living/0811/0811140481/1.php
−グラフで解る鯨肉在庫のカラクリ (拙HP)
http://www.kkneko.com/zaiko.htm
 

◇NHK、少しはクジラの宣伝もしたけど、捕鯨業界礼賛偏向番組にはかなわず・・

■大迫力!水を飛ばすクジラ|ダーウィンが来た! (9/13 19:30-,NHK)
http://www.nhk.or.jp/darwin/program/program162.html
http://www.nhk.or.jp/darwin/report/report109.html

 オルカでも有名なバンクーバーに近いカナダ西海岸・クイーンシャーロット諸島周辺のザトウクジラ。北太平洋の個体群は、繁殖海域は沖縄、小笠原、ハワイ、メキシコ沖と分断されていますが、索餌海域はアリューシャン、アラスカからカナダ西海岸にかけて重なっており、尾ビレ標識撮影による個体識別では、異なる繁殖海域間を移動する個体も観察されています。解説フリップで表示されたのはハワイとメキシコだけでしたが、太平洋西側の日本の沖縄・小笠原のグループとの間でも交流はあるでしょう。
 その北太平洋のザトウの個体群に大きなダメージを与えたのは、古式時代から近代に至る日本の捕鯨産業に他なりませんでした(ウヨガキ君やNHKの別のディレクターは史実を無視したがりますが・・)。今では国内のウォッチャーも多く、人気の高い野生動物となった感のある、その同じザトウクジラの南半球の個体群に対しては、「殺すのが当然だが見逃しておいてやる」などという不届き千万なメッセージを、世界に向けて大声で発信しているのが水産庁なわけです・・・。
 番組のメインテーマは、これまでメディアで紹介されなかった、尾ビレで水面をたたくザトウの不思議な行動。いつものオヤジキャラと下手でわかりにくいCGは要らないんだけど、今回の解説では、餌のオキアミを集めるための行動と威嚇用のテイルスラップとの違いを映像で並べてわかりやすく説明していたので◎。フリッパリングを「機嫌がよい」ときの行動とするのはちょっと誤解を生みそうですが、大目に見れる範囲でしょう。番組中でも紹介されたバブルネットフィーディングと同様、音声による情報伝達で連携をとるチームプレイに加え、30年ほど前から新たに行動のレパートリーに追加されたということですから、非常に高度な後天的学習行動といえます。このような非定型的行動の進化は、サルやササゴイなど野生動物の多くで見られるもので、取り立ててクジラが賢いというわけではないのですが、それでも他の社会性野生動物と同様に知的であることは間違いないところ。
 エソロジーの観点からも興味深いものですが、番組ではエコロジーの切り口からも取り上げられていました。この行動の変化、実は主要な餌生物種がニシンからオキアミに変わったことで、“開発”を余儀なくされたものだったのです。「生きるために仕方なく」というNHKの解説はやや大げさだけど(無理やり駄洒落に合わせようとしなきゃいいのに・・)。で、その原因を作ったのは、他でもないニンゲンによるニシンの乱獲でした。カナダの自然保護団体の研究者の調査活動に同行取材して制作した番組であれば、もちろん別の部局に生態学のセの字も知らないディレクターがいたとしても、非科学的なトンデモ論を流布する真似はNHKとしても出来ないでしょう。

 解説は評価できるのですが、問題があったのは、30分番組なのに休憩代わりに挟んでる蛇足のコーナー。餌のオキアミについて、魚よりバイオマスが多いという説明に加え、「“養殖餌”として役に立つといって結んでしまったこと。主題でニシンの過剰漁獲が野生動物であるクジラたちを食糧難に追いやったと言ってるのに、なんでそっちに向かっちゃマズイでしょ(--;; 実際、地球温暖化の影響も懸念されている中で、養殖用の需要増に合わせオキアミ漁の漁獲量も増えており、クジラのみならずアザラシや海鳥など番組中でも取り上げられた多くの野生動物を脅かしかねない状況にあるのだから、どうせならそっちを紹介すりゃいいのにね・・。
 もう一点、天敵としてシャチの映像がチラッと出ましたが、今回の取材とは無関係の資料映像で、映りが悪く判然としませんでしたが、放り上げて捕食されていたのはおそらくネズミイルカと思われます。シャチは昨今ではタイプにより複数の種もしくは亜種に分けられるとする学説が出てきていますし、同海域には主にサケなど魚を摂餌する小型の定住タイプも生息しています。
 で、登場したザトウの母親の尾ビレにあった傷跡を、番組ではシャチの噛み跡と称していたのですが・・これ、ホントに研究者に確認した?? シャチはグループで駆りを行い、泳速もザトウより速いので、実際に狙われたらあんな噛み跡だけで済むか、少々疑問です。むしろあの傷痕は、マナティーなどでよく見られる船のスクリューによるものではないかと、筆者には思えました。要するにこれも人為的要因ではないのかと・・。

 いくつか注文をつけましたが、番組全体としては及第点。Webで掲載されているスタッフの裏話を読むと、同じ会社に勤める誰かさんと違い、環境問題に理解のある常識的な方であることがわかります。


なぜ、クジラが水を飛ばすのか?その理由として分かってきたのは、ザトウクジラの主要な食べもののひとつ、ニシンの減少です。ニシンと言えば、おせち料理には欠かせない「数の子」の原料となる魚。実は、私たち日本人の食卓とクジラの生態は、意外なところで繋がっていたのです。この番組をきっかけに、海と人間の関係はどうあるべきか、見つめ直して頂ければ幸いです。(取材ウラ日記から引用)

 今回の監修は、以前の土佐のニタリの回と同じ東京海洋大のヘンな里海論者加藤秀弘氏かと思いきや、川口創氏。過去に調査捕鯨にも参加した経験があるようですが、水産総合研究センター等を経てオーストラリア南極局へ行かれたオキアミ研究者の方のようです。ま、同名の鯨研理事「いつ機関銃が火を吹くんですか」発言の石川創氏よりゃマシでしょう。
 野生動物が環境に応じて柔軟に行動を変化させること、生態系の種間関係は可塑的かつ安定的な動的平衡を保っていることは、トンデモ理論にしがみついている無知なウヨガキ君と同レベルのNHKの別番組の制作担当者以外の、『ダーウィン』を観ている生物フリークであれば理解できることと思います。長期的なタイムスパンで眺めれば、ニッチにおける種の遷移は進化史の中で絶えず起こってきたことですが、永い生物の歴史を根底から覆したのはただ一種、自然の法則とはメジャーの異なるまったく別のルールを持ち込んだニンゲンのみです。クジラではありません。
 5千万年の間他の生物種と共存してきた鯨類のうち、ミンククジラやクロミンククジラ、ザトウクジラという特定の種がごく近年になって突然生態学の法則から外れるエイリアンと化すというバカげた話はありえないのです。皮肉にもJARPAの結果自体が明らかにしたように、クロミンククジラの個体数は安定しており、遺伝子解析によっても急増した可能性は完全否定されました。JARPNの結果が出る前からわかりきっていた話でしたが、クジラたちは他の野生動物と同様、それぞれのニッチでその時々に最も利用しやすい餌生物を利用します。この番組で紹介された、北太平洋ザトウのニシンからオキアミへの切り替えのように。再生産率が非常に低く、急激な個体数変動が起こりえない大型動物に相応しく、機動性とある程度の餌生物のバリエーションの広さ、そして発達した知能と社会性によってもたらされる臨機応変な適応行動によって、進化史を生き延びてきたのが、クジラという動物なのです。
 これも以前NHKの番組で紹介されましたが、シロナガスの亜種ピグミーシロナガスの個体群は、南極海まで回遊せずにオーストラリア南岸で浮魚を捕食する適応行動を示すようになりました。シロナガスの個体数がなかなか回復しない理由はただ一つ。ミンクにニッチを乗っ取られたなどという非科学的なトンデモ学説ではなく、絶対数の減少が社会行動など様々な理由で繁殖率の悪化に直結しているからです。未曾有の乱獲によって南極の海に住むクジラたちを軒並み追い詰めたニンゲンが、間引きなどという更なる愚挙を重ねれば、一層生態系のバランスを崩して(おそらく繁殖率の高い他の各種オキアミ捕食者を増やすことで)ますますシロナガスを苦境に追いやるのは必至。天下りなどで結び付いた業界の利益ばかりを慮り、結果に責任をとることを一切しない水産官僚たちと、業界に寄生するだけの無能な学者の所為で、日本人は「海のコンサベーション・ギャング」の烙印を押されて未来永劫非難され続ける羽目になるでしょう。そんなことは絶対に許してはなりません。
 致死的調査でいくら胃内容物を調べようと、得られるのは前述の当たり前の結論だけ。番組で紹介されたカナダの長期的な非致死的研究は、野生動物のユニークな行動生態を明らかにするにとどまらず、その行動変化の背景を探ることから海洋生態系に起きている変化まで推測することができる点で、日本の調査捕鯨とは比較にならない優れた研究といえます。特定の種に限って大量捕殺を毎年毎年繰り返しても、生態系の調査、漁業への影響を調べるうえではまったく意味をなしません。乱獲・汚染・開発という専らニンゲンの仕業による漁業資源への影響とそれに対する実効性のある対策から漁民・国民の目を逸らし、すなわち水産庁が負うべき責任を回避するのにはうってつけのスケープゴートかもしれませんが・・。
 生態学や行動学に関する知識や関心もなく、致死的資源学のアプローチのみを唯一至上の科学として崇拝する反反捕鯨論者たちは、こっちが何を指摘しようが馬耳(鯨耳垢)東風でトンデモ学説にいつまでもしがみつくでしょう。その彼らにネタを喜んで提供している鯨研の連中も、他でもない自らの組織の延命のために、長期観察によって初めて成果を得られる科学的資源を、スナップショットでしかない情報取得のみのために破壊してしまう低レベルの捕殺調査を続けようとするでしょう。
 付けるクスリのないウヨガキ君らはほっとくよりしょうがなし、科学を隠れ蓑にした鯨研と水産庁の官僚たちは引き続き責任を追及していくしかありませんが、問題は公共放送NHK。正直、今回のダーウィンだけなら2、3枚座布団をあげてもよいとこなんですけどね〜・・・。
 この件に関して、同じ番組をご覧になったMさんから、以下のお便りもいただきました。


ニシンが激減した原因として、「人間の乱獲」のみが挙げられていました。ニシンの減少にはレジームシフトも関係していると思いますが、ニシン激減の原因が人間であるという説を紹介したわけで、番組スタッフが違うと、こうなるのですね。「クジラ食害論」を信じている人たちは、NHKに抗議するのでしょうかね。


 どれのことを言っているか、皆さんにもおわかりになりますね。そう、近年の捕鯨プロパガンダ作品として最優秀賞を収めそうな例の同局制作番組。

■知る楽歴史眠らず・くじら物語 (8/11 22:25-,NHK教育)
http://www.nhk.or.jp/shiruraku/tue/index.html (リンク切れ)

 そして、筆者の問合せに対するNHK視聴者コールセンターからのブッ飛んだ再回答が以下。


いつもNHKの番組やニュースをご視聴いただき、ありがとうございます。
「カメクラジラネコ」様からいただいたお問い合わせにつき、ご回答申しあげたところ、さらに、番組ホームページのフォームに再質問(追加質問)をいただきましたので、次のとおり、お答えいたします。
「カメクジラネコ」様は「当番組の内容が事実に反する」というご意見ですが、当番組は、今年6月、ポルトガルで開かれたIWC(国際捕鯨委員会)での議論等をふまえ、「そもそも日本人は、古来どのようにくじらと関わり、どのような文化を育んできたのか。そして、なぜ今もくじらを捕ることにこだわるのか。また、反捕鯨国はなぜ日本を非難するのか。くじらと日本人との関わりを、国の歴史、地域の歴史の中に探る」番組であり、事実に反する内容ではありません。
また、「『知る楽』制作担当責任者の氏名・役職を教えてください」とのことですが、これについては、番組で表示しているとおりです。
そのほかの個別のご質問事項に関しては、すでに先の回答で説明は尽くしていると考えますので、さらなる回答は控えさせていただきます。
なお、今後同様のご質問をいただいた場合でも、当方の判断で回答しない場合がございますのでご了承ください。
今後とも、NHKをご支援いただきますようお願いいたします。
お便りありがとうございました。
「知る楽」制作担当 NHK視聴者コールセンター


 こういうのを慇懃無礼というのですな。ここまで視聴者をバカにした態度もないでしょう。「説明は尽くしている」「当方の判断で回答しない」などと視聴者無視も極れりの対応は、企業のCS担当部署なら即刻クビですな。まあ、ウヨガキ君たちからいっぱい応援メールをもらってることもあるんでしょうが・・。
 Mさんもおっしゃるとおり、逆にクジラを異常に差別したがる連中から大量の迷惑メールがダーウィン宛に送られ、正しい野生動物の生態を伝える番組の中で今後クジラだけ例外的な扱いを受けることになりかねませんね。。
 さて、当ブログ上で5回にわたって詳細に記してきたように、番組で主張された秋山氏の素朴な性善説は明らかに誤りであり、各種の姑息な演出も含め、制作者サイドが「客観性・中立性に配慮」したとはまったく思えない内容。日本の捕鯨は古式時代からですら、発祥地の三河や三浦を始め、各地で乱獲・競合により自滅し、過剰漁獲に陥りやすい商業的性格のきわめて濃い産業であったことは史実として明白であり、番組はその事実に真っ向から反するものでした。もはやあの森下参事官ですら認めざるを得ないように、非科学的なトンデモ食害論は科学界で否定されIUCNで勧告も出されましたが、まともな引用すらされてるとは思えない大隈御大の珍説や、日本の野生動物絶滅史をご存知ない新聞記者の個人的な主観を引き合いに対論をまったく示しませんでした。これが民放局であれば、スポンサーの意向次第で多少内容の偏った番組を提供しようと勝手でしょうが、従軍慰安婦訴訟番組で重要シーンをカットし右系オピニオンの論説を挿し込んだあのNHKが、徹頭徹尾一方的なヨイショ番組をこしらえるとは一体どういう了見なのでしょう??
 制作責任者=回答責任者と思われますが、上記に関して「どうやって客観性・中立性を確保したのか」という筆者の問いには一切答えず、卑劣にもこんなしょーもない逃げの回答を寄越してきたわけです。
 同番組の番組総括谷口雅一氏は番組制作局のディレクターで、「その時歴史が動いた」などの日本史系ドキュメンタリーにタッチしているほか、『「大化改新」隠された真相』などの著書もあるようです(番組をネタにしているくせに、なぜか版元はNHK出版ではなくダイヤモンド社・・)。もともと基本的に日の丸ニッポンバンザイ系のヒトなんでしょうが、捕鯨協会やPRコンサルタントを務めてきた梅崎義人氏との間にどんな接点があるのかも気になるところ。現在、「NHK視聴者コールセンター」への苦情窓口を教えなさいと再々問合せをしていますが、回答を寄越す気がなさそうな気配なので、今後場合によってはBPOやNHKの放送番組審議会等にさらに掛け合う必要があるかもしれませんね・・・

−谷口雅一氏のコラム (NHK)
http://www.nhk.or.jp/bs/fc/col/tue50802.html (リンク切れ)

 ダーウィンの方のウラ日記では、船の女性コックさんが紹介されていますが、「大の日本好き」で「鎌倉の尼寺で精進料理を教わったこともある」とのこと。日本の素晴らしい菜食文化が、エセ鯨肉食ブンカに負けてるのを知ったら、さぞかしショックでしょう・・。いくら「日本で野生動物としてのクジラの生態を知ってもらうんです」と説明しても、教養がメインの3chでこれほど歪んだ偏向番組を作ってせっせと捕鯨業界の宣伝をやっていたことを、カナダの自然保護団体が知ったとしたら、果たして今回の取材をOKしたでしょうか?

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