2014年02月10日

米大使ツイート騒動/フォアグラとクジラ/都知事選とクジラ

◇反反捕鯨祭りで終わり? 米大使イルカ猟反対ツイートのその後

■キャロライン・ケネディ駐日米国大使のツイート
http://twilog.org/CarolineKennedy/date-140118


 先月1月18日に発信された、ケネディ駐日大使のツイート。
 騒ぐだけ騒がれたけど、議論らしい議論は何もなく、ただお互いに言いたいことを言い合っただけに終わっちゃった感がありますね。ディベートの最も悪いお手本というところでしょうか・・

 当の大使のアカウントは、五輪等のイベントもあるけど、1月末以降更新なし。もともとツイートの頻度はそれほど高くないですけど。もしかしたら嫌気が差したかも? 日本語のツイートがセットになっているので、作業は大使館の秘書の方がなさってたんでしょうけど。
 ツイッターに対するウンザリ感もさることながら、大統領選への貢献の論功行賞ともささやかれた駐日大使職が、こんなに割の合わない仕事だとは思わなかったかもしれませんね。
 日米の接着剤として過剰な期待を主に日本側から押し付けられる一方、ちょっと気に入らないことを口にすれば、途端に掌を返したように噛み付いてくる──そうした日本人の気質・民族性(?)にじかに触れたことで、いままで抱いていた好感度が一気にダウンしてしまったかも
 ただひたすらいいところを褒めそやしてくれればいいのだ。悪い部分に目を留め、ほじくり返すような真似は、誰も頼んじゃいないんだ──日本が米国に対して求めているのは、お互いに悪いことを諌め合い、相手の批判にも真摯に耳を傾けることのできる真の友人関係≠ナはなく、まさに表面的なオトモダチ≠フ関係だということを、少なくともケネディ大使個人は薄々感じ取ったのではないでしょうか?
 大使に向かって浴びせられた罵詈雑言が、日本人を代表する意見ではなく、国家とメディアに踊らされたニホンジン≠フ声にすぎないことを、せめて彼女が理解してくれればいいのですけど・・・
 もっとも、かくいう筆者も、ツイッターで彼女に注文を付けた1人だったりしますが(--;;

 さて、話を戻しますが、「お互い言いたいことだけ言い合った」状況を、環境外交がご専門の東北大石井敦准教授が的確に指摘されています。


■石井氏のツイート
https://twitter.com/ishii_atsushi/status/426586862493245441


大使が指摘している「非人道性」についての議論がほとんど聞かれないのは非常に残念です。これでは真摯な議論ができません。やはり「ニッポンには対話がない」のか(引用、強調筆者)


 確かに、マスコミ・著名人のレベルになると、動物福祉問題についての議論はもう可聴域外≠ニいう感じで完全にスルーされていますね。
 多少なりとも踏み込んだ意見を表明しているのは、むしろ一般のネット市民のほうでしょうか。

■【イルカ漁】ケネディ駐日大使のつぶやきから考えた「人道的な屠殺」という問題|トゥゲッター
http://togetter.com/li/618222#c1353011

「それなら家畜を殺すと きはいいのかよ」という非難がなされ、この説明に宗教や文化的な違いを上げることがこれはそのままだと間違っていると思う。
近代以降は動物愛護意識の向上以外にも作業環境の改善や 肉質の向上などのために過度に動物を苦しめるような屠殺法は忌避され、なるべく一撃で仕留める屠殺法が各国で取 られている。
以上の観点からイルカの追い込み漁を見ると、「明らかに 意識がある状態で苦しみを与える形で殺している」という点家畜の屠殺に比べて多くの苦しみを与えている≒非人道的な狩猟法という非難はまぬがれそうもない。
(引用)

 もっとも、この辺りは、工場畜産や動物実験、犬猫の殺処分問題に関心のある方々にすれば、「何を今更」と首を振るレベルではあるでしょう。
 屠殺については環境省のガイドラインまで引っ張っていますね。しかし、そこまでたどり着きながら、人道性の議論がなぜ先進国で具体的な法整備の段階まで推し進められたのか、追求するところまでいかなかったのは残念なこと。その後は反反捕鯨派の主張に重なる「価値観の違い論」に逸れており、認識不足のまま終わってしまっています。
 作成者は工学系の学生の方。他のまとめやツイートからは、脱原発に懐疑的なちょっとシニカル保守の属性が入っているのがうかがえますが。

 当該まとめに対しては、念のため筆者が補足を付け加えておきましたが、以下は一次ソース、当事者である太地発の情報です。

■和歌山県太地町のいるか追い込み漁業における捕殺方法の改善(水産総合研究センター遠洋水産研究所、太地町漁協)|太地漁協スーパー
http://www.cypress.ne.jp/jf-taiji/geiruihosatu.pdf

致死の判定基準は、作業者の便宜から運動と呼吸の停止とした。(引用、強調筆者)
脊髄切断法の開発者は楔による血液の体内保持は致死を遅くする恐れがあると指摘している。今後フェローと同じ指標(散瞳)で致死時間を再検討する必要はあろう。(引用、強調筆者)

表1 捕殺に要した時間
スジイルカ 
槍+脊髄切断 例数4 捕殺時間:最短5秒 最長30秒 平均17.5秒 (従来法 例数1 捕殺時間:300秒) (引用、強調筆者)

 脊髄切断法は2000年にフェロー諸島に倣って太地でも導入が試みられましたが、スジイルカ、マダライルカ、カマイルカ等には適用できませんでした。スジイルカについては、2008年にやっと脊髄切断法に切り替えられます。ただし、表に示されるとおり、この時点では槍を併用していました。水研センターの公表している「国際漁業資源の動向」中でも明記されていますが。
 2009年には、岩場をビニールシートで覆い、そこへ追い上げて保定することで、完全適用≠ナきたと謳っています。槍を併用せずに済んだかどうか言及はありません。そして何より、その完全適用に基づいた捕殺時間のデータは示されていないのです。2008年の捕殺時間のデータもわずか4例にすぎず、この数字に意味があるとは到底言えないのですが。
 おそらく槍の使用はやめたんでしょうが、代わりにわざわざ切断創に楔を打ち込んでいます。上掲リンク資料に画像がありますが、金槌で後頭部にパックリ開いた傷口に楔を当てて、ガンガン叩き込んでますね・・。まるでB級ホラー映画。まあ、他の犬猫の殺処分にしろ、家畜の屠殺や狩猟時の処理にしろ、「どうせ同じだ」と目に映るヒト、それらすべてに対して何も感じず、歓迎すらしてしまうヒトもいるのでしょうが、筆者としてはそうした不感症のニンゲンがほんの一握りにすぎないことを祈るばかりです。
 左側の画像に、「水中で落とした際の目印」となる浮きも示されています。皮膚を切り裂いた後の傷口、柔らかい皮下の組織に直接打ち込むのですから、しっかり固定されるはずがありません。少なくとも木材に釘を打つほどには。ビニールシートの上に追い上げるのに、それでも水中でなくす可能性が否定できないわけです。どの程度固定されるのか、その精度についても一切言及がありません。やっぱり暴れて弾き飛ばされる可能性があるから、でしょうかね? 作業者が押さえ込むのであれば、槍を使うのと作業の危険性はさして変わらないでしょう。
 致死時間の計測の仕方にも問題があります。心拍・呼吸の停止は、実際にはその前から微弱かつ変則的になっているので、測定者にとって判定するのは容易ではありません。瞳孔散大・対光反射の確認の方がより明瞭。通常はその3つを指標にしているわけです。皆さんもわかると思いますけど、これはヒトという哺乳動物でもまったく一緒なので、獣医方面のみならず医師の方にとっても常識の話。運動に至っては論外。組織が厚い大型動物の場合、心拍・呼吸判定の難易度はもっと上がることでしょう。そのうえ、イルカは潜水するのでただでさえ呼吸間隔が変則的で長いのです。
 しかし、太地ではこのわずかなデータを正確に測定することさえ、「作業者の便宜」を優先して渋ってしまいました。要は面倒臭がった、ということです。

 上掲のとおり、調査に当たった当の水産庁の外郭組織・水研センターの職員すらも問題点を挙げざるを得なかったわけですが、彼らがあえて触れなかった点についても、指摘しておかなければなりません。
 太地と並んで世界から非難を浴びているフェロー諸島ですが、渋々、かなり遅れて、中途半端な形で導入を図った日本の太地と異なり、脊髄切断法の開発や致死時間の測定指標について、曲がりなりにも動物福祉に配慮する姿勢を示そうとしたわけです。その理由は、各加盟国も国際機関としても動物福祉に関して厳しい法規制を進めてきたEUの一員であるデンマークの自治領ということもあるでしょう。

 以下はCNNのインタビューに対する安倍首相のコメント。

■安倍首相、イルカ漁を語る (1/24,CNN)
http://www.cnn.co.jp/world/35043008.html?tag=top;topStories

漁の仕方については、「相当な工夫がなされているという風に聞いている。この漁についても、あるいは漁獲方法についても、厳格に管理されている」と述べた。(引用)
 東京五輪招致の際の、例の原発事故・汚染水に関する「アンダーコントロール」とまったく同質の発言ですね。何も知らずに、官僚に渡されたメモの通りに回答しているだけにすぎないわけです。現地に視察に行って、東電の担当者にブロックできる港湾の範囲を教えてもらうのと同じように、太地の組合からイルカの苦痛の「コントロール」、放血の「コントロール」について説明を受ける気は、彼にはないでしょうけど・・


 動物福祉面を考慮した屠殺法を開発したフェロー諸島の関係者が「致死を遅くする恐れがある」と指摘する楔による放血制御を、なぜ太地はあえてやったのでしょうか?
 ひとつはっきり言っておかなければならないのは、楔による放血制御は動物福祉上の配慮とは一切無関係だということです。太地のライバル(?)にあたるフェロー諸島の関係者が、「むしろ逆だ」とはっきり言うほどなのですから。
 水研センターの担当者は「海面の血液による汚染防止や血液の工業的利活用の可能性を拓いた」と理由を挙げています。
 かつては捕鯨会社に対する漁民の焼き討ち事件が発生したように、温血動物の大量の血液が海水の停滞しやすい港湾に流れ込むことは、まさに「海洋汚染」に他なりません。捕鯨会社はまさに汚染水を垂れ流す汚染物質排出事業者、公害企業だったわけです。
 もっとも、こんな楔が完全に′潔tの流出を止められるはずもなく、汚染防止の効果は程度の問題にすぎません。BOD・CODを計測してデータを比較すれば、多少は説得力があるんでしょうけどね。ついでにいえば、海を汚すことで直接被害を受けるのは太地の漁業者です。水質の影響をもろに受ける伝統の真珠養殖業は、三軒町長によって引導を渡されることになったので、もう関係ないということになるんでしょうが・・。
 工業的利活用の可能性≠ノ至っては、コストを無視した非現実的な画餅にすぎません。家畜の血液は従来残滓、つまり産業廃棄物として金をかけて処理されてきたため、コストを浮かすために有効活用が求められ、ときに肥料に回されることもあります。ただし、獣臭・魚臭の除去がネックとなり、良質な肥料として重宝されるものではありません。さらに、その工程自体がコストに跳ね返ります。太地の組合が事業としてイルカ肥料≠売り出したとして、一体買う農家がいるでしょうか? 収支を考えれば、ビジネスとして成り立つはずもないわけです。
 まあ、当の捕鯨サークルが、過年度在庫が積み上がっている鯨肉在庫事情を公文書中で正直に告白してすら、未だに鯨肉が売れているという都市伝説≠ノしがみついている経済音痴の反反捕鯨論者たちには、理解できなくても仕方がないでしょうが。。
 とはいえ、「鯨体の完全利用」などと高々と謳いながら、実際には完全利用など全然出来てなどいなかった事実を示す、これも明らかな証拠の一つといえるでしょう。水銀まみれだから仕方ないとはいえ、腎臓・肝臓は産業廃棄物ですし。太地はイルカやゴンドウの頭骨を沖合に投棄して、海上保安庁に不法海洋投棄との指摘を受けたことさえあります。

 では、なぜ太地は放血を制御をしたいのでしょう? 致死時間の測定さえ「作業者の便宜」を優先して渋るヒトたちが、「太地の海を汚すな」なんて誰からも頼まれていないのに、余計な手間をかけようとするのでしょうか?

 皆さんなら、説明しなくてもおわかりでしょう。
 海面がイルカたちの血で染まる様、その映像が内外に流出して一般の人々の目に触れることを、彼らは阻止したかったわけです。つまり、イメージの悪化≠恐れたのです。


 太地のイルカ猟関係者とその応援団は、「苦痛を長引かせるのはかわいそうだから、少しでも早く楽にしてあげよう」と考える、感じる能力がすっぽり抜け落ちてしまっているのです。
 「俺たちは命をいただいてるんだ! 供養塔も建ててるんだ! 文句あっか!!」
 これが太地のイルカ猟なのです。そして、若者を中心に多くの日本人が、彼らを日本の輝かしい伝統を体現する選ばれし人々であるかの如く、熱烈に崇拝・賛美しているわけです。
 人道性の問題を置き去りにしたまま。

 まあ上掲のまとめサイトの一番下のコメントを御覧なさいな。。


したり顔の白人共腹立つ。俺激おこ(引用)


 脳の髄までマチズモに毒された、彼ら狂信的な反反捕鯨ネトウヨ君たちにとって、捕鯨・イルカ猟はまさにご神体というわけです。
 「尖閣や竹島の領土問題、靖国参拝と同じく、日本という国にとって絶対に譲れない一線なのだ。米国大使はその逆鱗に触れ、日本人の怒りを勝ったのだ」──そのようなメッセージを、彼らは堂々と世界に向かって発信してしまったわけです。
 ケネディ大使ご本人は、顔を顰めたかもしれませんが、イルカ猟を批判したことでしたり顔などするはずがないでしょうに・・。

 太地のイルカ猟の問題点については、NGOが以下の声明で簡潔に要領よく説明してくれています。

■太地のイルカ猟に関する声明|イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク(IKAN)
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/coastal-small-whales/292-statement2014-taiji-dolphine-hunting


 日本の環境省は、動物の福祉に関して「動物の愛護と管理に関する法律」で管理を行っています。しかし、この動愛法においては、海の生物のほとんどが環境省の管轄外であることから、鯨類捕獲に関しては動愛法の対象とはなっていません。この違いは、きわめて政治的、経済的な見地からもたらされたものです。環境省の福祉基準を鯨類にも当てはめることは、イルカ捕獲の非人道性への検証となると思われます。(引用)

 捕鯨の人道性の側面に関わる、日本の動物愛護法の問題点については、以下で筆者が詳細に指摘していますので、合わせてご参照。

■動愛法改正関連パブコメ|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/70657008.html

 このほか古式〜近代捕鯨史、太地のイルカ猟の社会学的側面については、下掲の参考リンクに示した過去記事もご参照。

 さて、イルカを含む鯨類は国連海洋法に定められるとおり、本来なら国際機関の管理下に置かれるべき対象です。
 今では顧みる人もいなくなったドングリ食や、水産庁に抑圧されているアイヌのサケ漁とは異なり、きわめて歴史が浅いうえに持続性をまったく確立できなかった太地の捕鯨・イルカ猟をして、不可侵のデントウと崇めると同時に、ヒト以外の動物の取り扱いの人道性、動物福祉に関する議論をバッサリ切り捨ててしまう──国際社会で広く認知されている価値観を全否定し、「特殊なブンカの存在とその絶対的優位性を認めよ」という突飛な価値観を世界に押し付けようとする日本。
 「これこそが日本なのだ、日本人なのだ」というイメージが、世界中の人々に改めて植え付けられてしまったのです。
 今回のケネディ駐日大使のツイートがきっかけで。

 日本出身のエンターテイナーとして、日米両国民に対して高い発信力を持つオノ・ヨーコ氏も、以下のとおり強い憂慮を示されています。

■オノ・ヨーコさん、イルカの追い込み漁に訴え (1/20,AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3006905

 オノさんは「(イルカの追い込み漁は)中国やインド、ロシアといった大国やその子どもたちに、日本を悪く言う口実を与えてしまう。簡単なことではないと思うが、私たちの国の力をそぐ機会を常に探している、多くの強国に囲まれた日本の将来の安全のためにどうか考えてほしい。政治的に非常に敏感な今、(追い込み漁は)世界の子どもたちに日本人を嫌わせる」と述べている。
 また「何年も、何十年も私たちは、日本に対する真の理解を世界から得るために懸命に努力してきた。しかし今、享受しているものは、文字通り1日にして壊れ得るものだ。原発事故の後の私たちの国の不安定な状況をかんがみてほしい」とも述べた。
(引用、強調筆者)

 しかし、本当にそうなのでしょうか?
 まず、日本の異常性≠伝えるメッセージを積極的に発信したのは、明らかに過剰反応を示した日本側でした。その点、映画『ザ・コーブ』公開のときとも状況は少し異なるでしょう。

 確かに、「これはケネディ大使の打ち上げた一種の観測気球≠セった」との推測も成り立つかもしれません。日本の民主主義の成熟度、国際感覚を測るための。
 後述する識者も指摘していますが、ツイート1つに対してオーバーヒートを起こさず、さりげなくかわすことが出来ていたなら、まだしも及第点といえたでしょう。
 しかし、日本が示したのは、まさに最悪の反応と呼べるものでした。
 中国・韓国を敵視し、米国に対して「オトモダチなんだからこっちの味方をしてくれ」としきりにねだりながら、その中国・韓国に対するのと何一つ変わらない敵意を平気で剥き出しにしてしまう。
 相手が隣国だろうが国防上のパトロンだろうが、エゴをコントロール≠ナきない唯我独尊の国民性(?)をあらわにしてしまったのです。

 より重要なのは、はたしてこのイルカ猟賛美が日本人の総意なのか? 本当に日本人の大多数が、捕鯨・イルカ猟を自国のアイデンティティと同一視しているのか?──という点です。
 これは、歴史認識や靖国参拝等をめぐる議論において、安倍氏・橋下氏・石原氏・田母神氏の主張に代表されるウルトラナショナリズムと国民の感覚との間にズレがないのか? それとも、ごく一握りのヒトたちの過激な思想にすぎないのか?──という問題とも重なってきます。

■安倍首相が「イルカ漁」に言及 日本は海外からはどのように見られているのか|ハフィントンポスト
http://www.huffingtonpost.jp/2014/01/25/shinzo-abe-dolphin_n_4663655.html
■米国人にとっての捕鯨・イルカ漁|中島聡氏/BLOGOS
http://blogos.com/article/78897/
■コラムニスト・小田嶋隆氏のツイート
http://twilog.org/tako_ashi/date-140125
■現代史研究家・山崎雅弘氏のツイート
http://twilog.org/mas__yamazaki/date-140120
■三重大水産学者・勝川俊雄氏のツイート
http://twilog.org/katukawa/date-140131
http://twilog.org/katukawa/date-140203
■【島人の目】日本のイルカ漁 (2/7,琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-219207-storytopic-1.html

 このとおり、日本人全体が諸手を挙げてイルカ猟に賛成しているなんて、そんなバカな話はありません。日本でも民主主義、言論の自由はまだ何とか機能しているといえそうです。
 筆者は主な意見の一部をピックアップしただけですが。一般のツイッターユーザーの方々の意見も、himiさんが丁寧に拾ってくれています。
 おそらく、一般の日本人の大半はほとんど関心を持っていないでしょう。そして、イルカ猟に賛成している人々の多くは、漠然とした認識しか持たず、欧米に対するかすかなコンプレックス・被差別意識から、動物福祉について深い考えもないまま、牛やカンガルーと比較する浅薄な主張にうっかり同調してしまっただけに違いありません。熱烈に支持しているのは、在特会のような極右に重なる一握りのネトウヨ層だけでしょう。
 もっとも、慰安婦銅像撤去署名(主導したのは日本の反反捕鯨運動の強力な助っ人、テキサス親父殿ですけど・・)や、雪にもめげず元航空幕僚長氏に票を投じにいった東京都の20代が示すとおり、彼らのすさまじいエネルギーは侮れませんが・・。

 そして、以下のようなご意見も。

https://twitter.com/kabutoyama_taro/status/426368546126327809
鯨問題だと結構なインテリでさえ橋下化(「慰安婦制度は日本だけじゃない」)するから不思議だ。(引用、強調筆者)

 著名人や鬱屈した若者世代が、最も大切な同盟国・米国に向かって声を大に叫んでしまうのは、一体何故でしょう?
 彼らを煽動している犯人は、「日本人=愛捕鯨」との誤った認識を世界に植え付けようと画策した犯人とも符号するはず。
 みなさんはもうおわかりですよね。そう、マスコミ。国際PRの時代から、世論操作はお手のもの。

 ここで少し、内外のメディアの反応を見てみることにしましょう。

■US ambassador Kennedy draws nationalist ire with tweet condemning Japan dolphin slaughter (1/20,South China Morning Post)
http://www.scmp.com/news/asia/article/1409735/us-envoy-touches-nerves-after-tweeting-concern-japan-dolphin-slaughter

 上掲は香港の南華早報。ある意味で、日本からも米国からも等距離の視点を一番提供してくれそうなとこですね。
 香港メディアが中立軸からどれくらい日本もしくは米国よりにブレるか、筆者としては非常に気がかりだったのですが、中身は至ってニュートラルなもの。双方の主張を並列で扱っています。日本側の主張に軍配を挙げるような偏向記事にはなっておらず、安心しました。
 もっとも、記事中で大使館職員がわざわざ要らないコメントを出しているのは、捕鯨論争の文脈を十分に理解してない感じですが・・

 一方、下はブルームバーグのオピニオン記事。評者個人の意見ですが、日本側を思いっきりヨイショ。
 ネオコン・テキサス親父殿の存在が示すように、日本と同様米国でも捕鯨に関する意見が多様であったとしても、そのこと自体は何の不思議もありません。
 ただ、なんとも奇妙なのは、言ってることが捕鯨サークルの主張の引き写しになっていることです。

■Whaling Ban Befuddles U.S. (2/8,Bloomberg)
http://www.bloomberg.com/news/2014-02-07/outdated-whaling-ban-befuddles-u-s-.html

 ヒントはここにありました。

■イルカ漁・捕鯨と外交 米大使ツイートの波紋 (2/5,プライムニュース|BSフジ)
http://www.bsfuji.tv/primenews/movie/index.html?d140205_0
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-140206
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-140207

 鯨研の役員に関係者を送り、捕鯨サークルと長年蜜月関係にあった御用新聞・産経の系列・BSフジの報道番組。出席者は鶴保庸介参議院議員(自民党和歌山選挙区選出)、藤崎一郎前駐米大使、お馴染みMr.捕鯨問題・小松正之氏(国際東アジア研究センター)、唯一批判者側(といってもほとんど中立に近いけど・・)の立場で招かれた東大の日本文学教授ロバート・キャンベル氏。日本通で知られるキャンベル氏ですが、とかく肌の色で見られがちな日本社会で、批判者がガイジン1人のみなのは、さすが産経系列というべきか。
 討論のまとめの部分で、前中米大使の藤崎氏が「見えない広報」というわかりやすいフリップを掲げながら、海外メディアのオピニオンリーダーに接触する布教活動について、かなり露骨に語ってくれています。
 要は、国際PR〜捕鯨協会が日本の新聞等の論説委員に対して行った働きかけを、海外でも展開したというわけです。国費・外交官を使って。
 上記のほか、北米局長まで務めた元外務官僚の藤崎氏は、日本語だから大丈夫と思って気が緩んだのか、割と赤裸々に本音の一部を語ってくれました。
 気になるのは、最後に掲げた「当然視しない」「気を遣って感謝の気持ちを忘れない」との発言。
 藤崎殿、それって自戒の意味を込められたのですか? なら、筆者も同感ですがね・・。それとも、ひょっとして米国に対するアテツケのつもりでした?
 「何でも米国の言いなりになると思うなよ」「思イヤリ予算だって貢いでやってるし、今度沖縄にも基地作らせてやるの、忘れたわけじゃあるめーな?」──それが、米国との外交交渉を担当した外交官トップの認識だったという理解でいいのですか?
 米国政府関係者は、こんな番組なんて見やしないだろうと、高を括られたのかもしれませんけど・・・。
 小松氏は残念ながら相変わらずで、自説を曲げませんでしたが、フリップで「対話と敬意」を掲げたように、以前よりわずかに丸くなったかも。対話については、藤崎氏ら後に続く外交官にお手本を示した、押しの強いプレゼン≠もって対話のつもりなんでしょうけど。。
 そして族議員を代表する鶴保氏。素朴な捕鯨ニッポン性善説にしがみついている鶴保氏には、ニコル氏が目撃した太地の捕鯨業者の規制違反など目に映らないのでしょう。
 最後のフリップ「来て見て」に至ってはもうムチャクチャですね。SSCSその他の人たちは、実際に「見るために来て」いるのではないの? 「来て、食って、金を落として、でも都合の悪いところは見ないでってのが太地の本音でしょうに。
 キャンベル氏は大変示唆に富む指摘をいくつもしてくれました。
 米国内の反応については、「大使のただのツイート1件に対してではなく、それに対する日本側の過剰反応に驚いている」
 米国の駐中大使の抑制ぶりとケネディ発言を対比したのも、非常に興味深かったです。むしろ、靖国参拝をはじめとする安倍政権の極度の右傾化に対し、対中バランスを考慮して直言できない状況で、ケネディ大使は仕方なくイルカ猟でチクリと警告した──という見方も成り立つかもしれません。
 番組ではサラリと流され、他の論者も聞き流しましたが、「日本人の中にも、こういう漁の仕方を考え直そうという意見もある」とも。
 それにしても、キャンベル氏がコメントするたびに、刺すような目つきで睨みつける鶴保氏の顔がそのまま放映されており(前半14分13秒、後半14分10秒)、筆者は正直背筋が寒くなりました。。。。和歌山県の有権者は要チェック。
 ちなみに上掲動画公開は期間限定とのこと。拙ツイログもご参照。


 安倍政権に変わってから、マスコミに対する締め付けは倍化し、いまやNHKまで産経化する危機的状況に。捕鯨サークルも右傾化の流れにうまく便乗しようと考えているかもしれません。
 しかし、中韓アジアに対する優越感を歴史の修正で、欧米/白人に対する優越感を反反捕鯨で満たそうとする振る舞いは、日本の孤立化をより一層招くだけです
 米国は見ています。世界の市民は見ています。多くの日本人も、「これはおかしい」と気づいています。
 日本の真の理解者になってくれるであろう、ケネディ大使やキャンベル氏らに、これ以上愛想を尽かされないよう、真剣に自省したほうがいいと思いませんか?

 反抗期の小児のようにダダをこね続けるなら、必ず大きなツケとなって跳ね返ってくることでしょう。
 たかがクジラで、たかが鯨肉で、真の友人を失うのは、あまりにも愚かなことです。


参考リンク:
−捕鯨の町・太地は原発推進電力会社にそっくり|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/78450287.html
−「The Cove」騒動と捕鯨の町|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/36872863.html
−民話が語る古式捕鯨の真実|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/33259698.html
−捕鯨のメッカ太地のイルカ漁V.S.「THE COVE」|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/33105405.html
−捕鯨のメッカ太地のイルカ漁V.S.「THE COVE」2|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/33346665.html
−太地−ブルーム姉妹都市騒動の背景|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/31722747.html
−NHK、久々に捕鯨擁護色全開のプロパガンダ番組を流す|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/31093158.html
−太地の捕鯨は中国産!? 捕鯨史の真相|〃
http://kkneko.sblo.jp/article/18025105.html



◇ユネスコ、捕鯨問題については沈黙〜フォアグラとクジラ


■An Open Letter to UNESCO about the Registration of "Washoku"
http://www.kkneko.com/english/unesco.htm
■「和食」の無形文化遺産登録に関するユネスコへの公開質問状
http://www.kkneko.com/unescoj.htm
■ユネスコさん、捕鯨も世界遺産「ワショク」にブッコミでOKなのですか!?
http://kkneko.sblo.jp/article/84796741.html


 個人ブロガーの方から、公開質問状へのご賛同をいただきました。Lさん、多謝m(_ _)m
 一ヶ月待ちましたが、残念ながらユネスコからの回答はなし。うちのサイトにはユネスコのIPアドレスからこっそり20回ほどアクセスがあったんですけど。。
 いくつか国際的な反捕鯨団体・動物福祉団体から問い合わせはいただいたのですが、皆さん抱えている問題で手一杯なのと、ワショクの実態がなかなか伝わりにくいこともあって、なかなか一定以上の理解はいただけないようで・・。
 残念ながら、出直すしかなさそうです。


 もっとも、クジラとジュゴン・リンク署名と同様、このアプローチが重要なのは変わりありません。
 クジラ・イルカにとっても。すべての動物・自然にとっても。

 期を合わせるように起こったフォアグラ弁当騒動。仕掛けたのは日本の老舗の動物権団体。


■「フォアグラ」はコンプライアンスの問題|オルタナ
http://www.alterna.co.jp/12514
■「フォアグラの飼育は残酷」と抗議する人たちは「非常識」なのだろうか?
http://fujipon.hatenablog.com/entry/2014/01/25/170122


 上の要領を得たオルタナ編集長のコラムも、下の個人ブロガーさんの率直な意見も、イルカ猟反対大使ツイート騒動と同じく、国内の多様な見方を反映するものといえるでしょう。
 ツイッター等における賛否の議論では、ほぼそのままフォアグラ弁当支持=反反捕鯨=反動物愛護という構図が見受けられましたが。

 当然のように捕鯨・イルカ猟問題が引き合いにされましたが、まさにこの問題はリンクしています。
 上掲トピックの太地イルカ猟に関する人道性の議論は、そのまま多くの国で生産・販売等に法的な禁止措置が取られているフォアグラをめぐる議論に重なってきます。
 どちらにもお墨付きを与えているのが、ユネスコという権威ある国際機関である以上、各方面からより厳しく糾弾されて然るべきです。世界遺産審査にあたっての情報の透明性や公平性、公正性についても検証が求められるところ。
 ユネスコさん。包括的に生態系全体を保護し、捕獲等の産業利用を規制するサンクチュアリ型の自然保護のアプローチに普遍的な価値を与えたのは、貴機関の世界遺産の取り組みによるところが大きいでしょう。その意味で、生態系や野生動物保護において貴機関が果たす役割を、筆者は評価してきました。
 しかし、このままではユネスコは動物の敵です。世界の人々にそのように認知されてもかまわないのですか?



◇都知事選とクジラ


 宇都宮氏、残念でした。
 名護では風が吹いたけど、東京は雪に封じられた?
 それにしても、低い投票率には溜息を禁じ得ません。
 組織票、無関心。
 既得権益を守ろうとする壁が、いかに分厚いものかを示してもいるのでしょうが。中でも大きな役割を果たしているのはマスコミですけど・・


 蓋を開ければ、宇都宮氏が細川氏と僅差で2位。足しても舛添氏には届きませんし、細川氏が断念していても、その分はやはり宇都宮氏と舛添氏に分散するだけだったでしょうけど。 
 マスコミの出口調査がどの程度正確に実態を反映しているのか、首を捻りたくなる部分もありますが、若い世代の共産党アレルギーはそれほど強くはなさそう。偏狭なナショナリズムに対するアレルギーが、左に対するそれよりもっと強くていいと思うのだけど。政策が一致する家入氏タイプのパートナーが現れてくれれば、もう少し結果が違ったかもしれませんね。
 小泉氏は、今回の都知事選ではなく、先回の衆院選、遅くとも参院選の段階で、旗を掲げて自民党と民主党をぶっ壊すべきでした。
 脱原発票を足しても届かないといった見方もありますが、言うまでもなく間違いです。
 311以来、原発に嫌気が差した人で、舛添氏の「脱原発依存」という主張を素朴に真に受けた方も、きっと多くいたに違いありません。
 ただ、推進メディアの「それ見たことか」報道が端的に示すとおり、与党と電力業界を喜ばせた舛添氏が、東京を原発に依存しないで済む街へと生まれ変わらせることなど、できるはずないでしょうに。
 そして、細川氏が仮に当選していたとしても、即時全廃どころか、脱依存すら達成できなかったことでしょう。
 なぜなら、原発は、私たちを取り巻く社会のさまざまな問題と切っても切り離せないからです。
 私たちニンゲンの社会が、自然・命を征服し、コントロールする方向へ向かうか。それとも、ニンゲンが動物の一種にすぎず、自然の一部にすぎないという事実をわきまえ、自らをコントロールする術を身に付け、暴君として君臨するのではなく、慎ましく生きる道を選択するか。
 福島の原発事故は、まさにその問いを私たちに突きつけているからです。

 捕鯨問題はもちろん都知事選の争点にはなり得ません。原発問題と同じく、決して無関係とはいえないけれど。
 ただ、大きな共通項があります。
 昨年夏以降明らかになったストロンチウム汚染隠し問題も何のその、「アンダーコントロール」と世界に向かって大嘘を吐いた安倍首相らは再稼動に向けて突っ走ろうとしています。彼らの無神経さは、弱者から公平に°zい上げ、政官業学報の強固なリレーションに加わった一部の人々のみが富を享受できるシステムにそのままつながっています。南極の自然を支配し、制御することが可能だと信じ込むことも、原子核の扉をこじ開けて無尽蔵に富を引き出せるとの幻想に浸るのも、根っこはすべて同じです。共存する以外にない近隣諸国、在日外国人の人々、あるいは沖縄に対する高慢な姿勢は、そのまま声なき自然、動物たちに対する横暴の数々とも重なっています。

 原発・エネルギー政策は、最重要課題といってもいいでしょう。東京都にとっても。五輪のような一過性のお祭り騒ぎと比べても。
 しかし同時に、原発問題はシングルイシューではあり得ません。
 ヘイトスピーチから葛西臨海公園開発、戦略特区問題に至るまで、すべてはリンクしています。

 日本の社会は根から腐りかけています。
 そのことを象徴しているのが、原発に他なりません。

 だからこそ、原発は最重要テーマであるべきでした。なおかつ、シングルイシューにもすべきではありませんでした。
 根が腐っているにもかかわらず、枝葉を勢いよく伸ばし、その先に黄金の実を付けることが可能なのだと嘯く、稀代のペテン師たちの言葉に、これ以上騙されてはならなかったのです。
 最初から脱原発の姿勢を明確に掲げ、なおかつ総合的な政策をきちんと提示していた候補者は1人だけだったことに、気づかれていた都民の方も少なくなかったはず。
 もう1回悲劇が起こらないと思い知ることができないほど、日本人が愚かだとは思いたくないのですが・・・・

posted by カメクジラネコ at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系
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