■海へ流出、最大30兆ベクレル=ストロンチウムとセシウム−東電試算・福島第1原発 (8/21,時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013082100829
■セシウム・ストロンチウム海洋漏出 管理値の100倍超 (8/22,東京)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013082202000140.html
■坑道から海に最大30兆ベクレル 福島原発、基準値の140倍 (8/22,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS21050_R20C13A8EA1000/
■福島第一 タンク漏水300トン 高濃度、限度の数百万倍 (8/20,東京)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013082002000230.html
■タンク汚染水、海流出か 底から漏れた可能性 福島第一原発 (8/22,朝日)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201308210765.html
注意点@:タンクから漏れた高濃度汚染水の海洋流出分は別!
漏れが判明したのは20日に発覚したタンクとは別の汚染水。(日経〜引用)
東電は、原発専用港の外へは汚染は広がっていないとの認識(東京上〜引用)
連日の発表で誤解されかねませんが、日経記事のとおり、地下水からの汚染の算定とタンクからの汚染水漏出は別件。要整理です(狙ったわけじゃないんでしょうけど・・)。
そのタンクから漏れた汚染水ですが、ストロンチウム90(Sr90)の値が1リットル当り8千万ベクレルということは、300トン分であわせておよそ24兆ベクレルのSr90が環境中に放出されたということですね。しかも、現在もこれは増え続けているわけです。
地下水からの10兆ベクレル分は、東京新聞記事にある東電の弁明を信ずるなら、外海への流出をある程度防止する措置が取られている専用港に留まっているのでしょうが、朝日記事にあるように、タンクから漏出した汚染水のほうは、拡散防止措置の取られていない専用港外に、排水溝から直接流れていたことになります。
注意点A:セシウム比に基づく仮定は禁物!
これまで分析が難しいという理由で放射性ストロンチウムのモニタリングは十分に行われてきませんでした。食品等の規制基準を設けるにあたっては、代わりに事故による放出量をセシウムの1/10程度(Sr90では1/20)と想定し、その放射性セシウムの測定値をもとに計算してきたわけです。実際、土壌中の分析の結果からもセシウムの数百分の1程度(一部のホットスポットでは6%と高い値も出ている)と見られていました。
事故後の放射性セシウムの海洋への想定流出量が1900兆ベクレルだとすると、比率でいえば放射性ストロンチウム(Sr89+Sr90)の海洋への流出量はおよそ200兆ベクレル程度。以前の赤旗の記事では、このうちSr90の海への流出量の試算値として72兆ベクレルとの数字が出ています。
今回明らかになった地下水経由の汚染水は最大の見積でSr90が10兆ベクレル、Cs137が20兆ベクレルで、Sr/Cs比は1割どころか5割の値。タンクから漏れた汚染水と合わせ、これまで流出したトータルの量と比較しても、空恐ろしい数字だということがわかります。
直接放出された以外の汚染水は、セシウムをある程度除去・回収したうえで循環させたりストックしていたもので、その分ストロンチウムが高濃度に凝縮されているのですね。
トレンチから溢れだしていた72兆ベクレルに加え、地下水を通じて漏れ出していた10兆ベクレル、さらに新たに発覚したタンクからの漏出分24兆ベクトルも、一部は既に海洋に流出し、土壌に漏れた分も今後海へと浸出することは避けられないでしょう。
今回明らかになったSr90の放出量は、おおよその初期存在量に基づいて想定された値、規制基準のもととなった数字に新たに付け加わえられるものです。確かに、JANJAN記事でも指摘したとおり、ストロンチウムのみを過剰に怖れる必要はありません。しかし、土壌中の沈着率の数字のバラツキからも明らかなように、環境・生物圏におけるストロンチウムの挙動は理論に従うとは限らず、セシウムと必ずリンクするわけでもありません。少なくとも、「セシウムだけ観測すれば済む。ストロンチウムについてはたまにチェックすればいい」という発想は捨て、ストロンチウムについてもセシウム同様の観点でモニタリングを強化することは必須です。
下掲リンク2番目に新測定法の報道があります。おそらくコストは従来の手法以上に高くつくのでしょうが、いくら金がかかっても測定の頻度を上げ、対象品目等を充実させることのほうを優先すべきです。
そして、凝固剤を注入するだの、土嚢を積むだの、安上がりの小手先の対策で済ませようとせず、これ以上の汚染の拡大を食い止める抜本的な対策を打つ必要があります。
注意点B:「東電に対して国が主導を」の主張はすり替え! 税金投入するなら、原子力推進政策の責任を改めて追及すべし!
いま、マスコミを中心に「東電任せにせず、国が音頭を取れ」という奇妙な大合唱が起きています。
これは「国民の税金で尻拭いをしろ」ということです。「東電と株主ではなく、国民が責任を負え」ということです。
事故の評価尺度レベル3への引き上げ(海洋への流出を所外へのリスク≠ニ考えればもっと上でもいい)というのっぴきならない状況に対し、早急に手を打つ必要があるのは確かです。国土強靭化だのともったい付けて癒着業界にばら撒いている補助金・事業手当の類をすべて削ってでも、最優先で予算を付けるべきでしょう。もちろん、削る予算・事業の筆頭に挙げられるべきはガラクタ調査捕鯨ですが・・。
しかし、あたかも「五輪招致への風評被害を防ぐため」といわんばかりに、責任の所在を一切問うことなく、税金で処理させる流れに持っていこうとする風潮には、汚染そのものに勝るとも劣らない強い危惧を覚えます。
いま放射能に蝕まれているのは、環境だけではなく、この国の機構、社会風土なのではないでしょうか?
国が東電の汚染対策をバックアップする前提となるのは、核オプションへの幻想を含む原発神話と完全に縁を切り、国として速やかな脱原発を目指す方針を明確に掲げることです。再稼働も原発輸出も論外。
そして、政府・電力業界・マスコミ・経団連等にはっきりと「責任を取らせる」ことです。
最低でも、福島の原発事故が真の℃束を迎えるまで──たとえそれまで何十年かかろうと──アベノミクスの乱痴気騒ぎはお預けにすべきでしょう。
海を放射能まみれにすることに対し、痛みを感じようとすらしない国に、海洋国・漁業国のリーダーを名乗る資格があると、みなさんは思いますか? 南極のクジラを屠る資格があると思いますか?
海はニンゲンのものではありません。日本のものではありません。
海はクジラたちのものです。海の生き物たちのものです。
これからも海の幸をいただくつもりであれば、まず第一に原発を捨てること≠ナす。そして、慎ましさを取り戻すことです。
参考リンク:
−ストロンチウム汚染を正しく怖れるために(記事中の添付リンクもご参照)|JANJAN
http://www.janjanblog.com/archives/41617
−ストロンチウム 短時間で測定 (NHK)
http://www.asyura2.com/12/genpatu27/msg/784.html
−ストロンチウムは骨に蓄積されるので、危険だと聞きました。食品中のストロンチウム量についての規制は無いのでしょうか。(その1.規制について) |法医研・放射線被曝に関するQ&A
http://www.nirs.go.jp/information/qa/qa.php
−72兆(テラ)ベクレル流出 ストロンチウム‥2号機取水口汚染水99・9%外洋に ('11/5/30,赤旗)
http://www.jcpre.com/genpa-fukushima2011-3/2011-5-30gen.html
−土壌中のストロンチウム/セシウム比―文科省100地点調査と横浜マンション屋上のSr検出に関連して|togetter
http://togetter.com/li/199689
−ストロンチウムはどこへ?・・・東電魚介類調査から考える|明日に向けて
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9736fa788e839dcb237639ccda3027a0
−水産庁によるストロンチウム測定データ(とセシウム比)|こども未来測定所
http://memoli4future.com/kodomira/learn_radiation/external/entry-9208.html
◇翻訳協力者募集
現在、鉄砲の弾を撃ちこまれ続けている状況のため、Srの件はじめ行政へのアプローチはその道で飯を食ってる優秀なプロの人達にお任せすることにして、筆者は続編の推敲、表紙作成と小説「クジラたちの海」の英訳作業に専心します。
「クジラたちの海」英訳版の発行を本気で進めることにしました。現在1章分抄訳済み。
- Part 3: the Northeast Pacific Sea, Chapter 35. Moby-Dick, I -
http://www.kkneko.com/nvl/esec35.htm
まともに外注するとなると、この章だけでも20万以上、前編で1千万は下らないところですが・・。なんとかコストを低減させる手を模索中。「翻訳委員会」方式とか使えればいいんですが。適切な形で英語版を刊行できれば、ドイツで200万部のヒットを飛ばした「深海のイール」に負けず売れる自信はあるんですけどね・・・
上掲の抄訳をチェックしてくれる方募集中。校正料については3万円まで用意しますので、メール、HPフォーム、ツイッターでご応募くださいm(_ _)m