2013年08月11日

捕鯨礼賛に突っ走る毎日新聞

◇海を殺す国、捕鯨ニッポン・続

 事故が起きてしばらくはみんな、1年のうちに地下ダムでガッチリ固めて漏れないようにしてくれるだろうとか、そんなふうに思っていなかった?
 なんとかなる(してくれる)だろうと。 国全体が危機感・緊張感を持っていた当時でさえ。
 日本って、一言でいえば《原発が合わない国》なんだよね・・・ 
 世界中のどこの国よりも合わない≠フに、世界中のどこの国よりも前のめり≠ノなっている国。
 事故からたった2年しか経ってないのに……海洋汚染は他人事……節電意識もどこへやら……国あげて輸出ビジネス支援……核燃サイクルもカネを理由に止められず……除染も被曝健診も口先ばっかり……
 以前、姜尚中氏も指摘していたけれど、311は私たち日本人にとって、これまでの過ちに気づき、価値観を再構築するきっかけになるはずだったんだよね。それがいつのまにやら、311以前にも増して、現実から目を背け、受け入れるのを拒否する風潮が支配的になってしまった。いつのまにやらというか、選挙を重ねる度ごとに、という感じだけど・・・
 残念ながら、悲惨な戦争の過ちも、同じく悲惨な原発事故の過ちも、食い止めることはできませんでした。
 同じ過ちを再度繰り返すことは、日本人が、ニンゲンという動物が、万物の霊長を名乗るにはあまりにも愚かしすぎることの証明にほかなりません。



◇産経新聞の上をいく捕鯨礼賛紙に成り下がった毎日新聞

 
■なるほどヒヨコ:なぜオーストラリアは捕鯨に反対なの? (8/2,毎日小学生新聞)
http://mainichi.jp/feature/maisho/news/20130802kei00s00s011000c.html
■15歳のニュース:豪VS日本、調査捕鯨裁判 法律論も巻き込み注目 (8/10,毎日大阪版)
http://mainichi.jp/area/osaka/news/20130810ddlk27100484000c.html


 ICJ(国際司法裁判所)でのクジラ裁判以降、拙ブログにてランキングで偏向報道大賞を差し上げた毎日新聞が、あまりにも稚拙でレベルの低い捕鯨礼賛記事を連発・・
 上段の毎日小学生新聞の記事のほうは、ブリュッセル支局斎藤義彦記者の書いた7/15掲載の「質問なるほドリ」と変わりません。
 今月10日に掲載された大阪の地方版に掲載された下段の記事は、大阪本社編集局の山成孝治記者によって書かれたもの。
 裏をまったく取っていない間違いだらけの内容なので、以下に指摘しておきましょう。

@「縄文からの関わり」の裏◆文化的不連続と持続性のなさ

 まず、能登の真脇遺跡から出土しているイルカの骨ですが、堆積層中から発見されたのは285体程度。集落があったと考えられるのは今から6千年〜2千年前まで、そのうち中期以降としても、年間に捕獲した頭数がたかが知れていたのはいうまでもありません。地層中で保存されやすかっただけ。当時の人たちは利用できる食料を何でも利用しており、寄りイルカもその一部にすぎなかったというだけの話です。貝塚の貝の数を考えればわかるでしょう。
 いずれにしても、縄文時代のイルカ猟はアイヌ文化の系譜であり、アイヌの伝統捕鯨を認めない倭人の文化とは無関係です。
 実際には、江戸時代にも真脇地方でイルカ猟が行われていたのですが、散発的に千頭も捕獲するような、持続性とは縁もゆかりもないとんでもない代物だったのです。生存・生活を直接依存する貴重な資源として、時間をかけて自らを戒める形で持続性を確立してきた真の伝統漁労ではなく、たまたま手に入った「もっけもの」という感覚だったからこそ、こういう愚かな乱獲が出来てしまったのでしょう。それ故に他の地域と異なり、明治に入る以前に廃れてしまったのです。
 今日のウナギ・マグロをはじめとする水産資源の惨憺たるありさまに直結する、日本の乱獲漁業、持続的水産物利用の落第生ぶりを象徴するものだったといえるでしょう。
 中世の突取式捕鯨が、発祥地と初期の移植先で乱獲が祟って次々に自滅に至ったことなど、日本の古式捕鯨史の真相について無知なまま、あろうことにも「日本人とクジラは長く、しかも安定した多彩な関係を結んできました」(引用)と、まったく事実に反するガセネタを流してしまったのです。
 斎藤氏と同様、山成氏も大先輩たる原氏のバイブル『ザ・クジラ』には目もくれなかったのでしょう。

A「油目当てに乱獲」の裏◆日本は油目当てにも鯨肉目当てにも乱獲してきた

 捕鯨問題ウォッチャーにはすでに既知ですが、日本は戦前外貨獲得目当てに国際協定にも加盟しないままクジラを乱獲しまくり、肉も脂も無駄にしていると他の捕鯨国からクレームが出ていたほどでした。
 日本は51年に加わりましたが、この時期、世界は反捕鯨へ一転しました。(引用)

 もう笑うしかありません。捕鯨賛成派さえ、ここまで商業捕鯨史について無知な人間が新聞記者を名乗っていることに、開いた口が塞がらないでしょう。不勉強度に関しては、おそらく歴代擁護記者の中でも最強でしょう・・・
 その次のセンテンスは斎藤記者の記事と同じ内容で、筆者がツイッターで批判したもの。繰り返すと、AUS・NZの過去の捕鯨は均せば年400頭程度。日本の古式捕鯨も年間数百頭規模、多い時は800頭は獲っていたとみられています。マッコウ目当ての米国の帆船も来ていましたが、セミ、コク、ザトウは日本の乱獲が主因で激減したのです。
 日本が殺した南半球ナガスの数は、累計で12万頭を越えます。南半球で、ですよ!?
 山成氏も、斎藤氏と同じく、日本(の捕鯨産業)がどれほど大きな責任を有しているかには、一言も触れませんでした。
 これはいわば、日本の戦争責任に一切触れることなく、米国の原爆投下を非難し、「米国は歴史を踏まえて♀j軍縮など口にしてはならないし、日本の核保有を認めるべきだ」と主張しているのと、まったく変わりありません。
 自国の過ちを何一つ省みることなく、よその国の過去をあげつらう、山成氏や斎藤氏のような人物が日本で新聞記者を務め、記事を配信していることに、筆者は日本人の一人として恥ずかしい思いでいっぱいになります。本当に。

B「正当な訴訟か否か」の裏◆ICJとAUS・NZをコケにする日本の訴訟戦術の狡猾ぶり

 さて、山成氏は書き出しで「最終盤で注目を集めた」(引用)などと書いているのですが、これは同記者がICJを口頭弁論の内容をろくにチェックしていない証拠。日本はメモリアルで明記し、期間中もこの主張を混ぜ込む戦術を一貫して取ってきました。そもそもイレギュラーな手口。だれも注目なんてしていません。むしろ科学性の部分で不利が露呈したため、頼らざるを得なくなったとさえいえます。
 詳細はリンク先の過去記事をご参照。

C「捕鯨問題の主な主張」の裏◆トホホな食害論を唱えて墓穴

 双方に直接提示させないえげつないやり方ですが、非科学的な食害論を最後に付け加えることで墓穴を掘っていますね。野生動物保護、環境問題、生態学への理解が欠片もないことがモロバレ。
 この辺は捕鯨協会がソースなのでしょうけど・・

 勉強と猛省を促しても、ここまでレベルが低いともう無理でしょうね・・・ 

参考リンク:
−ICJICJクジラ裁判報道マスコミランキング (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/71016491.html
http://kkneko.sblo.jp/article/71443019.html
−やる夫で学ぶ近代捕鯨史−番外編− (拙HP)
http://www.kkneko.com/aa1.htm
−真脇遺跡|ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E8%84%87%E9%81%BA%E8%B7%A1

posted by カメクジラネコ at 01:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/72247285
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック