2013年08月09日

海を殺す国、捕鯨ニッポン/ミンクの非致死調査

◇海を殺す国、捕鯨ニッポン

■汚染水海洋流出は10年後「壁で防げる」…東電 (4/19,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130419-OYT1T01208.htm


 東電も同様の計算を独自に行い、汚染水の海への到達は100年以上かかるという結果を得た。(引用)


 ついこの間まで、こぉんなこと言ってたはずなんですがね・・・
 ここまで海を蔑ろにする国に、海洋環境保護・持続的水産業のリーダーを名乗る資格なんて、あるはずがありません。


参考リンク:
■規制委 福島第1汚染地下水検討へ「海に到達の疑い」 (7/11,赤旗)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-07-11/2013071101_02_1.html
■東電の汚染水対策がどう変遷してきたか:ハッピーさんの見解
http://togetter.com/li/543841
■放射能汚染水|3.11東日本大震災後の日本
http://tsukuba2011.blog60.fc2.com/blog-category-8.html



◇反反捕鯨論者の復習帳・その3


@ミンクもクロミンクも非致死調査はとぉっくに実施済!


Q:日本が調査捕鯨で捕獲しているクジラは、殺さないと調査できないのでは?


A:大丈夫です。できます。やってます。


 日本の調査捕鯨は、研究者同士で切磋琢磨する環境云々という以前の問題で、そもそも科学ではなく副産物≠フためにやっているものですから、十年一日の如く進歩がありません。日進月歩の勢いで進んでいる野生動物の非致死調査とは、月とスッポンなのです。
 以下の表は、バイオプシーを用いた鯨類の調査研究のリスト。


■Review of cetacean biopsy techniques: Factors contributing to successful sample collection and physiological and behavioral impacts
Table 1.  Summary of studies that used biopsy methods to collect specific samples from odontocete species.
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1748-7692.2011.00469.x/full


 たくさんありますね。多くの鯨種が対象になっています。ミンククジラももちろん遺伝情報、有害物質、脂肪酸の解析が行われています。もっと泳速の速いナガスクジラや各種ハクジラ類でできることなのですから、できないはずがないわけです。ちなみに、ミンクの個体識別も知床を含む世界各地で行われています。
 え? それは北のミンクでミナミのクロミンクじゃない?
 大丈夫。我らがオーストラリアのゲール博士が、6月に韓国で開かれたIWC-SC(国際捕鯨委員会科学委員会)の会合でもちゃんと報告してくれてますよ。以下、要約を全文引用しましょう。(リンク先、証明書エラーが出るので注意)


■IWC Meeting Portal
https://events.iwc.int/index.php/scientific/SC65a
https://events.iwc.int/index.php/scientific/SC65a/paper/view/398


During the austral summer of 2012-2013 we studied Antarctic minke whales in their  sea ice habitat in two regions of the Antarctic: the Ross Sea and the Western  Antarctic Peninsula.  In less than a month of field work, during which a portion  of time was dedicated to minke whale research we deployed 16 satellite-linked  data recorders; two short-term archival data recorders; obtained 19 skin and  blubber biopsy samples and took a large number of photo-identification images of  well-marked individuals.  We attached four types of biotelemetry tags using three  different attachment techniques: blubber penetrating satellite tags, dorsal fin  mounted satellite tags, dorsal fin mounted satellite and dive recording tags, and  suction cup mounted multi-sensor acoustic tags.  We believe that such dedicated  effort offers great promise to gain insight into many aspects of the movement  patterns, habitat use, behavior and life history of Antarctic minke whales.


 ま、そういうわけで、クロミンクだって、バイオプシーも個体識別もできちゃってるわけです。「もう面倒臭いから殺しちゃえ」なんて、挑戦もせずに投げ出す人は、そもそも野生動物研究者を名乗る資格などありません。魚でさえ、非致死調査の話が出てきている時代なのですから。
 膨大なデータを蓄積し、提供してくれる貴重な科学的資源を、ほんの一瞬のスナップショットのために破壊し、ときには捕鯨砲による損傷で胎児など有用なサンプルが入手できなかったり、莫大な税金を注ぎ込まないと調査ができなかったり、いろいろ欠陥だらけなうえ偏っており、次の設問で触れるように、まともな科学的成果も上げられないのが日本の調査捕鯨。
 それに対し、今後非致死調査がさらに進展すれば、(調査捕鯨が耳垢の山を築くだけだったせいで)これまでろくに明らかにされてこなかったクロミンクの生活史についても、ますます多くの知見が得られるに違いありません。ゲール博士もそう太鼓判を押してくれているわけです。


A系群判定に調査捕鯨は役立たず


Q:
調査捕鯨は系群解析にやっぱり必要なのでは?


A:
できてないうえに、「他をやれ」って言われちゃったのです・・


 調査捕鯨の理由のひとつにあげられていますが、20年以上かかっても必要な成果をあげられないうえ、「別の調査をしなきゃだめだよ」とIWC-SCに怒られちゃいました。いますぐ調査捕鯨をやめてそっちをやるべきなのです。

■調査捕鯨の科学性を解体する
http://togetter.com/li/486896


 今、捕鯨管理に必要なのは、南極海といったクジラが餌を食べる場所ではなく、子どもを生む場所のデータが必要だというのが国際捕鯨委員会の科学委員会の勧告です。これも日本政府は無視しています。(引用)

■Report of the Intersessional Workshop to Review Data and Results from Special Permit Research on Minke Whales in the Antarctic, Tokyo 4-8 December 2006
http://archive.iwcoffice.org/_documents/sci_com/SCRepFiles2007/59-Rep1.pdf


it was noted that the lack of samples from the breeding grounds precluded description of this as a completely comprehensive dataset for stock structure analyses, (SC/59/REP 1,p14)


Bクロミンクは減少している!


Q:ミンククジラって増えているんですよね?


A:
減っています。

 皮肉なことに、「調査捕鯨の数少ない成果のひとつ」ではあるのですが、日本が本格的に獲り始めた1970年代以降については「多くの観測・解析結果が減少していることを示している」とまで、IWC-SCのレポート上では明記されるようになりました。
 70年代以前については、確かに一時的に増えていたと推測されていますが、これは状況証拠による仮説。調査捕鯨及び目視調査による精度の高い解析の結論として、「現在減少局面にある」と考えられているのです。
 ミンクの減少の原因については、たぶん日本の捕鯨のせい「だけ」ではないのでしょう。カニクイアザラシやミナミオットセイなど他の競合捕食者も大幅に増えましたし、温暖化やオキアミ・南極海漁業資源の乱獲も響いているのかもしれません。調査捕鯨「だけ」では何もわかりませんけど・・
 ニンゲンが生態系全体を管理しようとして失敗ばかり繰り返してきた歴史を考えれば、最も遠く理解の及ばない自然≠ナある南極海で、「ミンクを間引けば(日本を含む捕鯨業者が乱獲で減らした)大型ヒゲクジラ類を回復できる」なんて、そんな単純な話ではないのです。


参考リンク:
■IWC Meeting Portal
https://events.iwc.int/index.php/scientific/SC65a
https://events.iwc.int/index.php/scientific/SC65a/paper/view/282
−ミンククジラの最新推定生息数の意味と南大西洋サンクチュアリ提案の意義 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/56853884.html
−国際捕鯨委員会2012総括 (〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/57038734.html

−ペンギンバイオロギングVS調査捕鯨 (〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/46531519.html


 政権再交代のせいで、嘆かわしいことに国全体の右傾化が進む中、ひところより素朴でおバカな反反捕鯨層が増えてきた感がありますね・・
 その水準を大きく越える狂信的反反捕鯨論者も若干1名みられるようですが、自作自演の好きなマルチハンドル狂人は9割方自分のばら撒いたゴミへのリンクを張っているだけです。何の価値もないガラクタなのに、権威ある一次ソースのつもりでいるのが哀れですが・・。残りの1割は、多少マシだけど311陰謀論にはまってしまった別の反反捕鯨論者の三次ソースと、黴の生えたごく一部の捕鯨サークル発信の一次情報だけ。
 捕鯨問題について知りたい人は、国際捕鯨委員会の発信する一次情報、同じく日本政府・鯨研の発信する一次情報(注意深い解析は必要ですが)、反捕鯨国・NGOの発信する一次情報、マスコミの発信する二次情報を、発信元の性格を理解したうえでチェックするようにしましょう。それ以外は、著名人も含め、単なる「個人の感想」です。



※ 別件で司法対応が必要になったので、しばらくツイッターでの発信はお休みいたします・・

posted by カメクジラネコ at 00:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系
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