2012年12月06日

南極海捕鯨は特殊な聖域/シャチとザトウクジラの深すぎる愛 /お知らせ

◇南極海捕鯨は特殊な聖域──文化も科学もとことん蔑ろにする捕鯨ニッポン

■懐かしの町並みを守るには〜失われる伝統的建築物〜|クローズアップ現代 (11/29,NHK)
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3281.html

 前回の記事では、科学を名目にした調査捕鯨にはふんだんに予算がつけられるのに、重要な基礎研究を担い国際的にも高い評価を得てきた極地研の南極観測事業が、あろうことにも財政難で危機に陥っている件を取り上げました。
 今回は文化。これまでもブログ・HPでくり返しお伝えしてきたことですが、文化先進国に向けた歩みはまったく進んでいません。もともと意識の高いヨーロッパ諸国とは常に比較されますが、先進国の中で日本ほど歴史的街並、由緒ある建築物の価値を蔑ろにする国はないでしょう。国や自治体は金を出さず、保存は個人・NPOの自腹。それでいて、身勝手な食文化の定義を、南極の自然や南半球の人々に強引に押し付けるのです。
 千葉県佐原市は歴史的な街並で有名ですが、東北大震災で壊滅的な被害を受けました。しかし、予算がつかないため、修復は未だに手付かずの状態。復興予算は、こうした伝統的な建築物の修復にこそ充てられるべきでした。ところが、あろうことにも、調査捕鯨という名のバカげた南極海でのプロレスごっこのために流用されてしまったのです。
 これは文化と科学に対する冒涜以外の何物でもありません。
 英語が得意な方、発信力のある方は、ぜひ情報発信を!


■クジラをたべたかったネコ(英語版)
http://www.kkneko.com/english/index.htm



◇シャチとザトウクジラの深すぎる愛


■大海原の決闘!クジラ対シャチ|NHKスペシャル
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/1125/


 映像も大変迫力があり、余計な演出もなく、近年のNHKスペシャルの中では珠玉の一作といえる出来でした。
 惜しむらくは、同海峡付近にやってくるクジラ(北太平洋のザトウとコク)の数、およそ4万頭が大きい数字であるかのように視聴者に受け取られかねないナレーションが一部にあったこと。シャチの200頭は言わずもがなですが、4万頭でも決して多いなどとは呼べません。もっと繁殖率の高い陸上の哺乳類の多くは、数万頭のオーダーで保護されているのですから。
 何より興味深かったのは、やはりシャチ(→血縁外のポッド)とザトウ(→コククジラの仔)に対する利他行動の映像記録。ともに血縁関係がなく、互恵性が非常に低いため、この種の社会行動が進化し得たと合理的に説明するのが難しいのです。
 シャチは「赤の他シャチ」をわざわざ招いて≠ィ裾分け。陸上の他種の哺乳類だと、食性を問わずまず考えられないことです。大抵の野生動物は、余裕があっても自分のための資源の確保を最優先する傾向にあります。譲る相手は、配偶者や自分の血を引く子、せいぜい血縁を同じくする群れの個体まで。ここのシャチたちの場合、食性の幅が広く、この海峡のクジラは季節限定(まさにハレのご馳走)でもあるので、「縄張り内の資源」に対するような執着はないのでしょう。余裕がある中で、分量的にどうせ食べきれないのだから・・ということなのでしょう。クジラが食卓に上る機会が少ないから、血縁のほとんどない群れ同士であっても、餌にありついた時は融通し合うことで、結果的に捕食効率をお互いに″b゚ることができる、ということがひとつ考えられます。その意味では、一応互恵性はあるといえるでしょう。あるいは、血縁外の群れとの関係を良好に保つことに、何か別の明白なメリットがあるのかもしれません。この手の推論は囚人のジレンマ問題がネックになるんですけど・・。いずれにしても、血縁外への飛躍は、シャチ以外の動物ではなかなか見られることではありません。
 一方、ザトウクジラによるコククジラの子の救出行動は、正直かなり驚かされました。あのザトウの群れの詳しい構成が知りたいものです。低緯度では、母子、または雄(単独〜複数)から成る、主に繁殖に関わる構成なのですが、高緯度ではバブルネットフィーディングのような共同作業を伴う漁≠するために数頭の群れを作ることがあり、その構成は低緯度の群れとはまた別だと考えられています。シャチの行動の方は、まだ何とか互恵性の説明がつくのですが、ザトウの救出行動の方は単純に見れば〈リスク〉でしかありません。集中攻撃を受けるあのスポットで、シャチの行動を牽制することにより、同種の血縁の未成熟個体のリスクを減らせるメリットもゼロではないかもしれませんが・・これはかなり強引な解釈。それよりむしろ、ザトウにとってみれば、シャチがザトウの仔を狙わずにコクばっかりを狙ってもらうのが都合がいいはずなのです。ついでにいえば、赤の他ザトウの仔の場合でも、やはり見て見ぬふりをする選択が進化行動学的な正解ということになるでしょう。
 さすがに、同種の仔クジラと勘違いしたということはありそうもありません。おそらく雌の群れで、少なくとも母親の経験のある雌がいた、と考えるのが自然でしょう。もしかしたら、シャチに子供を襲われた経験の持ち主が、群れの中にいたのかもしれません。陸上では、カバがインパラの子をワニから守った事例がTVで紹介されたこともあります。カバとワニは生息環境がバッティングする犬猿の中で、衝突の機会も多いのですが。実際、あれは明らかにワニに意地悪したようにも見えましたし、ご飯を逃したワニがかわいそうでしたけどね・・。
 これは進化行動学者、社会生態学者に対して、かなり大きな難題を突きつけたといえるかもしれません。科学的に説明がつかないのです。
 でも、もっとシンプルな見方もできます。要するに、ザトウクジラはバカなのでしょう。愛が深すぎて。
 犬や猫も、ゾウやカラスもクジラに負けず深い愛を持っていますけど・・・
 ニンゲンは、確かに動物の中ではずば抜けて知能は高いに違いないでしょう。しかし、はたしてそのことをもって他の動物より優れていると本当にいえるのでしょうか?
 沿岸に近い浅海に棲み、鯨種の中では研究がしやすいハズのザトウクジラやコククジラについてさえ、このように従来知られていなかった新しい発見が出てくるのです。まだまだ知らないことだらけなのです。ニンゲンはクジラについて、驚くほど無知なのです。南半球のクロミンククジラに至っては、繁殖海域すら特定できていません。低緯度の生態がわからなければ、調査捕鯨を続けても無意味だということは、IWC科学委で再三指摘されているのに。
 クジラは生態系の中で様々な役割を果たしています。NHKの番組でも取り上げられたように、ヒグマやカモメ、深海のゴカイたちまでつながっているのです。海鳥や回遊魚、サメたちの捕食にも役立っています。ニンゲンは、シャチの代わりも、クジラの代わりも決してできやしないのです。海の生き物たちと関わってなどいません。ただ一方的に収奪するだけです。
 番組の中では、コククジラの未成熟個体のシャチによる捕食が過半数と解説されていました。この数字自体は、他の野生動物と比べた場合決して大きくはありません。むしろ非常に少ないのです。ウミガメなんて、200頭の仔のうち198頭は捕食者に食べられる計算ですよ。クジラの乳幼児死亡率が低いことには、少なく産んで手塩にかけて育てるタイプだという、きちんとした理由があるのです。
 たくさんの仔や卵を産むタイプの野生動物なら、一握りの生き残りがいればいいのです。クジラはそうはいきません。数年に1頭の仔がシャチに捕食されれば、その年の繁殖機会は全部不意になってしまうのです。それだけセンシティブ。だからこそ、高々百年のニンゲンの捕鯨の圧力に耐えきれず、あっという間に絶滅の瀬戸際に立たされてしまったのです。
 アリューシャンの海を無数のミズナギドリが乱舞するシーンも紹介されました。海鳥たちの方が、個体数も、単位体重当りの摂餌量も、クジラより圧倒的に多いのです。もちろん、再生産率もクジラよりずっと高いのです。クジラを間引いたところで、海鳥その他が増えるだけ。どのみち、ニンゲンが「換金できる魚」と、海鳥やクジラたちが餌にする魚とは一致しません。「食害○億トン」は非科学的な誇張でしかないのです。
 確かに、この辺りの海でシーズン中に船の間にかすみ網でも張れば、効率的に、持続的に良質な蛋白質が得られるでしょうね。捕鯨をやるよりは。「日本の焼き鳥文化」と強弁することだってできちゃいますよ? 食糧問題解決にも資するんじゃないですか? いま飢えている国を救えますよ、きっと。鯨肉よりは。捕鯨と同じく、まったく「必要」なんてありませんけど・・・
 シャチの捕食について、一点付け加えておきましょう。獲物を窒息させるのは、大型ネコ等陸上の大型捕食者と同じ(そういうタイプばかりではないけれど・・)。行動を封じて消耗を避ける合理的な手法なのですが、苦痛に敏感なヒトの一員としては、自然の裁量に胸を撫で下ろす感もなきにしもあらずです。
 クジラは決して特殊で神聖な動物ではありません。ただの野生動物にすぎないのです。ライオンがシマウマを襲うのも、シャチがヒゲクジラを襲うのも同じこと。獲物が逃げる場合も、殺される場合もあります。そんなとき、子供が逃げてホッとする一方、捕食者が今日のご飯を食べられてよかったとも、筆者は思います。
 ヒト自身は、他の動物と違う万物の霊長を自称する以上、野生動物の水準で満足せず、最低でも即死を目指すのが人道≠ニいうものでしょう。捕鯨砲の致死時間短縮に不平をもらしたり、犬猫をガス室で苦しめるような真似は、万物の霊長のやることではありません。ヒトはシャチと違って、ただの野生動物ではないハズなのですから・・・

 以下、詳細については、拙ツイログをご参照。鯨研の販売員・西脇氏のツイートと併せてチェックしてみてください(手抜きでゴメンナサイm(_ _)m)


参考リンク:
■西脇氏のツイート
http://twilog.org/Ryosyuisanakuma/date-121128
http://twilog.org/Ryosyuisanakuma/date-121129
http://twilog.org/Ryosyuisanakuma/date-121130
■筆者のツイート
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-121130
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-121201
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-121202
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-121203
■ザトウクジラの社会性
http://kkneko.sblo.jp/article/24045343.html
http://kkneko.sblo.jp/article/24090035.html
■ヒトとライオンとイルカの心
http://kkneko.sblo.jp/article/20494608.html
http://kkneko.sblo.jp/article/20366571.html
■NHKの悪質な捕鯨推進プロパガンダ番組
http://kkneko.sblo.jp/article/31093158.html
http://kkneko.sblo.jp/article/31241524.html
http://kkneko.sblo.jp/article/31312410.html
http://kkneko.sblo.jp/article/31422606.html
http://kkneko.sblo.jp/article/31617239.html



◇お知らせ:『クジラたちの海』続編・『クジラたちの海──the next age』執筆開始


 以下、拙作をお読みでない方には意味不明の内容ですのであしからず。前作のあらすじ等はこちら。
http://www.kkneko.com/nvl/novel.htm

     〜 〜 〜 〜 〜

 物語の骨格部分をざっとご紹介してしまいましょう・・

 主人公は代替わりしてジョーイに。
 敵の親玉は、前作のクライマックスで行方をくらましたドクガン。
 旅の同行者(予定)はメル、クッキー(自称)、ジャンセン、〈表〉の老ジュゴン、〈最果ての郡〉の仔ジュゴン、迷子のスナメリ。
 クレアは……
 〈列島〉の〈毛なしのアザラシ〉を操作し、〈M11〉なる壮大な計画を推し進めようとするドクガン。〈洗礼〉を受けた〈御子〉であるジョーイは、彼から〈約束の海〉へと招かれることに。
 旅立って早々、一行は〈クジラ食の岩〉と〈謎の黒い岩〉との乱闘に巻き込まれます。そして、そこでリリが……
 大幅に迂回した前回のルートとは違い、北上して沖縄へ。別れと出会いを経て、旅の終着地へ。
 決着の舞台は……フクシマです。
 そう、前作のメインテーマは米軍の核事故でしたが、今作は≪311・フクシマ≫。
 辺野古移設問題も必然的に取り上げることになります。
 対決シーンでは、未来のザトウクジラも登場。
 物語のもう一つの柱が、前作同様、生と死の相克。
 前作では当たり前の生≠ニ偽りの死≠ニの対決でしたが、今作では当たり前の死≠ニ偽りの生≠ニの対決を描きます。
 今作では新旧キャラが多数命を落とします。
 旅の間、自然な死とヒトの手による死という二つの死≠フ意味について、ジョーイは悩み続けます。
 さらに、今回は旅の行程が短くなる都合もあり、地上で繰り広げられる〈毛なしのアザラシ〉=ニンゲンのドラマと交互で展開することに。(予定)
 『ウォーターシップダウン』に対する、『疫病犬と呼ばれて』の位置づけに近いかも。
 メインで登場する〈毛なし〉は、学生時代に理想を語り合いながらも袂を分かった3匹。1匹は、過激な団体のメンバーとして抗議船(〈黒い岩〉)に乗船。1匹は、穏健な団体で若くして国内支部長に。1匹は、ドロップアウトし商社の官公庁事業部で営業を担当。波乱万丈の半生をたどった3匹は、311でさらに数奇な運命に翻弄されることに。
 ジョーイは最後に、本物の死≠ニ贋物の生≠フどちらかを選択することになります。
 次の世代のために。
 前作は希望に満ち溢れたエンディングでしたが、今作は対照的になるかもしれません。
 最終的には、「今度の衆院選の結果次第」なのですが・・・・

 再来年の年次会議までに何とか上梓したいのですが、スケジュール的にかなり厳しいかも・・。他の作品が軒並みポシャッてしまったので、、モチベーションの維持が大変(--; 311後のさまざまな環境異変をブリン、クライトン調に料理したり、ツナミ・断層破壊の海中視点描写など、今の筆者には少々高いハードルもありますし・・前作の水準はキープしたいのですが。
 もっとも、発行元は未定ですので、完成したとしても、旧作改訂版と合わせてネット上で無償公開の形になるでしょう。
 311は、食えない物書きも食える物書きも、日本人なら挑まなくてはならない<eーマといえますが、高橋源一郎の『恋する原発』くらいで、あまりめぼしい作品が今のところ見当たりません。あれは副読本代わりに子供たちにも読ませたいくらいだけど、無理だしね。。。バルセロナでスピーチした村上春樹辺りはいずれ大作を出すでしょうが、時間かかりそうだし・・
 十代も対象に含めたフィクションは、ノンフィクションの映像や報道に代わることは決して出来ませんが、それでもフィクションならではのやり方があります。種を撒く作業です。
 肩書きの有無によらず、さまざまな伝え手が、さまざまな媒体を通じて、それぞれの方法でメッセージを伝えることが、いま求められているのではないでしょうか?
 先日には国内発のイルカ猟反対デモも行われましたが、ことクジラに関しては、水産庁他関係機関から情報を引き出し戦略的に対処できる人材が圧倒的に不足しており、筆者のように不得手なニンゲンまで引き受けざるを得ないのが現状。もっとも、リンク署名にしろODAにしろCdにしろ経済効果にしろ、発信力不足が響いてW/Lの投入量に実効がまったく見合わない始末。。早く優秀な℃瘤閧ェ出てきてほしいんですけどね・・・
 そういう次第ですので、優先順位を完全に切り替え、取材と執筆に全リソースを回すことにしました。水産庁その他へのアプローチは当面お休みにします。IWCでは年次会議が隔年になりましたし、すぐに捕獲数・消費が伸びることはなさそうですし。むしろ、政治の雲行きと原発・沖縄の方が怪しい雲行きですが・・。旧コンテンツについては、ちょこちょこ修正作業を続けます。
 
 既作は残念ながら興行的には大失敗に終わりましたが、読書系SNSなどでご感想をいただいた皆さんには感謝の念に堪えません。
 旧作改訂版について、また別館の動物ジュヴナイル小説・民話絵本にご興味のある方は、HPの問合せフォームないしツイッターのDMにてお知らせくださいm(_ _)m

posted by カメクジラネコ at 01:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系
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