2012年11月28日

完全商業捕鯨化に向けKKP発進/研究者の悲哀/調査捕鯨>>南極観測!!??

◇完全商業捕鯨化に向けKKP発進!! けど、キャッチコピーは・・・

■鯨類捕獲調査改革推進集中プロジェクト改革計画書
http://www.jf-net.ne.jp/fpo/gyoumu/hojyojigyo/01kozo/nintei_file/20121002_kujira.pdf

 
 復興予算の便乗ボッタクリ批判を逆バネに(?)、鳴り物入りで発進した捕鯨サークルのKKP(クジラ改善プロジェクト)。
 国の手厚い庇護を長年受け続けたにもかかわらず、鯨研が販売不振で債務超過団体に陥った経緯を踏まえ、広報戦略をガラリと変え、キャッチコピーも刷新した模様。
 「アンチSS」から「バレニン教」へ──。
 これまでは、プロレス観戦が趣味の血の上りやすい若い層をターゲットに、南極でのバトルをネットで実況中継するなどして、反捕鯨運動に対抗してきたわけです。この戦略はいわゆるネトウヨを中心に熱烈な支持を集め、物の見事に成功を収めた……かに見えました。
 しかし、捕鯨サークルにとって目算狂いだったのは、この手の反反捕鯨層はSSをこき下ろして自己満足に浸るだけで、鯨肉購買層と一致しなかったため、連中を煽っても一文の得にもならなかったことでした。
 そこで、次に彼らが狙いを定めたのが、生活習慣が原因で健康の悩みを抱えた中高年層。グルコサミンだのコンドロイチンだのそれっぽいカタカナを並べるだけで引っかかってくれる、(たとえ気休めでも)健康不安を手軽に解消できるなら出費を惜しまない、粗利の高いビジネスを考えている起業家にとってありがた〜い存在。

 さて、上掲リンクで示したKKPの計画書には、バレニンの効果を謳った日本捕鯨協会のパンフレットが添付されています(P62)。ちょっとチェックしてみることにしましょう。
 バレニンは、カルノシン、アンセリンとともに、動物の筋肉中に遊離アミノ酸の形で存在するアミノ酸結合体であるイミダゾールジペプチドの一種。抗疲労効果はこのイミダゾールジペプチドの作用。捕鯨協会はあたかもこの3種が別々の特徴を持っているかのように文体を変えて見せかける工夫をしていますが(P64)、実質的な違いなどありません。このうちカルノシンの比率が高いのは陸棲哺乳類、アンセリンが鳥や魚、バレニンはクジラの他ワニなど爬虫類にも多いとのこと。ちなみに、カルノシンの筋肉中の濃度が最も高いのはニンゲン・・。
 イミダゾールジペプチドの含有量自体の比較では、カツオ・カジキや鶏胸肉と大差なく、鯨肉は単に割高なだけです。ベジとしては、あんまりこういうことは言いたくないんですけどね・・。
 P65、66にはイミダゾールジペプチドの抗疲労効果(臨床データ)の資料を掲載。IPS騒ぎの例の人みたいな長たらしい肩書きの付いた特任教授とかがもっともらしく効用を説いている、健康食品のパンフレットそのもの、という印象ですね。しかし、よく読むと、32名の体感疲労、7名の腿上げ(2回)、マウスの遊泳時間や懸垂スコアが科学的根拠だそう、です・・。
 P65の上段の2つの結果は、血中乳酸の測定など定量的なデータを比較したのではなく、「どのくらい疲れたか」というアンケートへの回答を無理やり数値化しただけのもの。「気の持ちよう(プラセボの効果)」との疲労感の差は僅か。下段の2つ、「カルノシン+アンセリンの効果」は、被験者の少なさ(7名、10名)もさることながら、論文の出典が明記されていません。記載内容が非常に乏しく(フォントを大きくして字間・行間も空けている)、「疲労感の軽減」に至っては、比較対照データとしてのプラセボによる値が示されていません。はたして、期間中の被験者の生活条件を一定にし、チェックしたのかどうか。本当に研究者の手で厳正に行われた臨床試験なのか、甚だ疑問です。
 次頁のマウスの遊泳時間の延長に差が出たのは、4日目のみでした。慢性的に疲労感を覚えているヒトは、毎日飲み続けないと意味がないということでしょうかね・・。
 ちなみに、たった7個体ないし32個体分のサンプリングであっても、驚くべきことに、南極海のクロミンククジラの生息数の目視調査結果よりも統計上の有意性が高いことになっています。これはWilcoxonの符号付順位和検定が、サンプル群を母集団の平均と仮定せずに差だけを見ているため。つまり、あくまで被験者に限った話。「※個人の感想です」というわけです・・・


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 客観的にみれば、「バレニン教布教作戦」は「ネトウヨ煽動作戦」に比べ、確かに戦術的な有効性の点でやや勝るといえるかもしれません。メタボ解消やアンチエイジング、美容を謳った健康食品がそこら中に氾濫している中では、訴求力が弱くて埋もれてしまうのではないかという気もしますが・・。
 それにしても、伝統食文化崩壊も行き着くところまで行ったというか、「儲かる漁業」の活用といい、捕鯨サークルのなりふりかまわずぶりには本当に開いた口が塞がりませんね・・。
 駄洒落的ネーミングのサプリメントは既に市場に出回り、ネット通販されていますね。捕鯨サークルにとっては、冷凍倉庫に何年も積みあがったまま行き場のない在庫鯨肉を解消する手立てとして使えるのかもしれませんが。ひとつ気になることが。エキスを絞った残り滓の鯨肉は一体どうしているんでしょう? 「余すところなく利用する」が建前だったはずですが。コストを負担してでも、肥料や飼料としてきちんと再生利用しているのでしょうか? それとも・・・・やっぱり廃棄ですか? 
 何せ現代の日本じゃ、「サプリ教・デトックス教・メタボフォービア教・マイナスイオン教その他諸々」にすっかり席巻されて、「モッタイナイ教」は風前の灯ですし、ね・・。
 皆さんは、気休め+α程度の一時的疲労"感"回復のために、高い金を払って南極の自然を貪りたいですか? 広大な海原を泳ぐ野生動物を殺し、エキスだけ絞って肉を捨てたうえ、錠剤にして呑むことに、何の疑問も覚えませんか? それで心と体が癒されますか?


 KKPの問題は、もちろんバレニン教広報戦略だけにとどまりません。
 毎日新聞が報じ、多少誤解もあった直販アプローチ。いわゆる「中抜き」です。
 この計画書では、鯨研の赤字体質を解消するための「傾向と対策」が提示されています。しかし、中には正直に¥曹ゥれていないこともあります。資料16(p53)に鯨肉を取り扱う仲卸業者のアンケート結果が示されていますが、不評と取扱量減少の要因は、ここに書かれているものばかりではありません。日の丸を背負った殿様商売で無理やり引き取らせたため、業者の方はモチベーションにならなかったわけです。'07年に報じられた、冷凍食品大手・加ト吉による鯨肉の不正な循環取引、いわゆる鯨肉転がし事件は、まさにそうした歪みがもたらしたものでした。
 計画書には、一部で「業者との協力」の文字が入っているものの、資料17(p55)以降では完全に卸関係を飛ばした取引への切り替えを謳っています。鯨研の赤字は国がてこ入れして面倒見ても、これまでの取扱業者の収益減少は考慮外ということです。業者から見れば、クジラのしがらみから解放される方が助かるかもしれませんけど・・。これは、復興予算流用で被災地を、「儲かる漁業」審査過程で零細漁業者を押しのけたのと、まったく同じパターンに他なりません。捕鯨サークルは究極のエゴの固まりといえるでしょう。
 "余談"ですが、P21には「販売不振により、過年度在庫が発生している」と明記されています。「鯨肉が売れている」という"都市伝説"を妄信してきた狂信的な反反捕鯨論者たちには、農水省の国会答弁書と合わせ、トドメの一撃というところでしょうか。いまや完全に蚊帳の外に置かれた格好ですが・・。

 「儲かる漁業」の制度は、「儲けを優先して資源収奪に走らない漁業」を行政がサポートする仕組みであるべきでした。安定収入が保障されない共生型の沿岸漁業の不利を補い、付加価値を高め、消費者を啓蒙するのが水産庁の役割であるべきだったのです。ところが、そのためのエネルギーは、あろうことにも貪欲な捕鯨サークルの自己保身のために粗方つぎ込まれてしまったのです。日本の水産業にとって、これほどの不幸はありません。
 共同船舶は、もともと大洋・日水・極洋の大手捕鯨三社の捕鯨部門を統合させた合弁企業でした。調査捕鯨は、研究機関としての鯨研が実施主体となり、下請傭船会社の共同船舶から船と船員を借りてるだけ、という体裁をとることで、調査捕鯨の"建前"を通していたわけです。
 しかし、その両者が統合されれば、たとえそれが一時的であったとしても、実質「捕鯨会社」であり、彼らの行う捕鯨はすなわち定義どおりの商業捕鯨に他ならず、もはや調査捕鯨とは決して呼べません。日本の南極海母船式捕鯨は、モラトリアム以前の状態に戻ったということです。化けの皮が完全に剥がれたともいえるでしょう。元からバレバレでしたが・・。
 決して市場で切磋琢磨されることなく、国から「儲かる漁業」認定と多額の税金による補助をぬくぬくと受けつつ、南極の自然を高額健康食品に替えるビジネス──それこそが日本の調査捕鯨の正体なのです。

   隠れ蓑(K) 看破され(K) ポイ捨てしちゃった(P)
   かりそめの(K) 科学捕鯨は(K) 口実(pretext)でした(P)
   カッコワル(K) 科学捕鯨は(K) フリだけ(pretend)でした(P)


参考リンク:
■マスコミが伝えきれない調査捕鯨への復興予算流用問題|JANJANBLOG
http://www.janjanblog.com/archives/84065
■調査捕鯨の正体は「儲かってないけど儲けたい商業捕鯨」だった|拙ブログ記事
http://kkneko.sblo.jp/article/58981151.html
■筆者のツイート(下から順に読んでください)
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-121110
http://twilog.org/kamekujiraneko/date-121112



◇研究者の悲哀


■『ななつの海から』’12/9号|水研センター
http://fsf.fra.affrc.go.jp/nanatsunoumi/nanaumi3.pdf


 p15に野生動物の移動・分布の解析についてのシンポジウムの報告があります。ミナミマグロ、ツキノワグマからコビレゴンドウ等日本沿岸の小型ハクジラ類の事例までざっと紹介。専門的な内容ですが、移動パターンの解析をもとに種・個体群の分布域を推定する試みの話で、GPS機器などを用いた非致死的な調査手法が威力を発揮する分野です。
 p20からの同センター外洋生態系グループ長・清田雅史氏の連載コラムも、捕鯨をめぐる議論とも深い関わりのある内容なので、チェックしておきたいところ。
 で、本題。P13の『特集2:センチメンタルジャーニー:南氷洋ミンククジラ 個体数推定の思い出』。執筆者は同センター資源管理グループ長/鯨類資源グループ併任の岡村寛氏。捕鯨ウォッチャーならお名前をご存知の方も多いでしょう。ある意味、いちばん手強い"敵"。なぜなら、彼はカタギ≠フ研究者だから(鯨研の販売員・西脇氏と違って!)・・
 本文は、鯨研通信やIWC−SCのレポートで紹介されている議論と同じ、クロミンククジラの個体数推定に関する専門的な内容。興味のある方はお目通しいただきたいと思いますが、筆者が非常に興味深く拝読したのは、実は宇崎竜堂の歌詞をまじえたプロローグとエピローグ。
 その前に一点、「今後の課題」(P13)にも意義深い内容が。資源量(個体数)推定の改善のために、岡村氏自身が他の研究者とともに提案した「テレメトリーデータから得られた潜水・浮上パターンを利用して長時間潜水するクジラの個体数を推定する新しいハザード確率モデル」。何を言ってるかというと、バイオロギング(非致死的調査)の成果を活用することが、クロミンククジラをはじめとする鯨類の個体数推定の精度を上げることに貢献するという話です。調査捕鯨ではなく
 一方、調査捕鯨(致死的調査)はといえば、捕獲に時間を食うせいで目視調査の足を引っ張っていました(「JARPAレビュー報告」by藤瀬氏〜『鯨研通信』#438 p3)。
 そもそも致死的調査は、貴重な科学的資源というべき野生動物を、ほんの一瞬のスナップショットとして破壊し、得られたはずの豊富なデータをすべて無に帰してしまう、きわめてデメリットの多い手法なのです。日進月歩の進展を見せる非致死的調査分野と対照的に、十年一日の如く、耳垢栓のスライスや胃の中身を調べたデータを積み上げ続け、たまに鯨の精子を牛の卵にかけ合せるだのといったしょーもない研究に試料を提出し、論文に名前を出してもらうのが関の山。
 さらに、非致死的研究に対する長所とされてきた経費節減にも役立たないばかりか、振り回されて科学研究としての公正性・客観性を損ねただけだったことが、一連の鯨研の赤字拡大と多額の公金投入の経緯によって明らかにされたわけです。
 で、岡村氏がセンチメンタルな思い出を綴ったプロローグ。’01年当時の回想に登場する畑中氏は、鯨研、海外漁業強力財団、水研センター等の水産外郭団体の役員を歴任してきたいわゆる天下り官僚。なるほど・・こうやって若い研究者を焚きつけようとしたのですね・・。岡村氏曰く、頭から湯気が出ているかに見えたとのことですが・・。岡村氏は律儀にも、それから十年子泣爺を背負わされるハメになったわけですね。言い得て妙というか、筆者には捕鯨サークルの中核にいる連中の印象ともダブって見えますけど・・
 エピローグの文章を読んで、筆者はちょっと胸の詰まる思いにさせられました。学界事情に通じた方なら察しがつくでしょうが、OK法といっても8、9割以上は岡村氏の仕事に相違ありますまい。「すべての研究はそうなのかもしれない」と自らに言い聞かせるかのような台詞は、iPS細胞研究(まだ実質的な成果は出ていない)で賞賛を浴びる京大山中氏などと比べた場合、哀愁を帯びて聞こえます。
 ひょっとして、長年の白熱した議論に決着がつき、数字が提示されたにも関わらず、「なんで"増えたこと"にできなかったんだ!?」と、どっかの方面から怒鳴られたりしなかったでしょうか? パーティーでナガスの尾の身をつつくだけの永田町の族議員ら、ときには科学的なリングの上で「ルールに則った殴り合い」をしてもきた敵≠ニはレベルで比較にならない子泣爺たちに。ま、これは筆者の想像にすぎませんが・・。
 72万及び51.5万という数字を提示し、南極海に生息する大型鯨類の長期にわたる調査結果を比較可能な信頼できる数字のレベルに落とすという大変困難な作業に蹴りをつけたのは、科学的にも非常に大きな意義のある成果のはず。日本の調査捕鯨存続にとって有利か不利かなどという、低次元の政治的立場による評価がたとえどうあろうとも。
 正直、筆者なんて、表に出てくる中間報告からの経緯だけで判断して、「どうせ今年も引き伸ばすつもりなんだろう」と高を括っていましたから。まとまったこと自体、一つの奇跡といえるでしょう。
 岡村殿。貴殿はフェアすぎる。科学者として律儀すぎる。電力会社の寄付にたかる原発御用学者連中などとは比較にならないほど。
 政治の駆け引きに利用され、都合のいい数字を要求される科学。研究者として純粋たらんとすれば、苦しい立場に立たされ、心が引き裂かれる思いをすることもあるでしょう。そこで科学者としての矜持を貫ける人物がどれだけいるか。
 鯨研の自称販売員・西脇氏とは裏腹に、学生や若手にITや数学を講義・指導することには喜んで時間を割くけれど、イベントで売り子をやったり居酒屋に営業に回ったり、科学者にあるまじき仕事に時間を割くのは、きっとまっぴらごめんなタイプでしょうな・・・
 生態系アプローチの件では異論もありますが、岡村氏や、あるいは清田氏のような、学究肌のマットーな研究者に対しては、たとえスタンスが異なるとしても、リスペクトの念を抱かざるを得ません。軽蔑の念しか覚えない御用鯨類学者もいますけど・・・
 水産学界・水産行政は、真面目な研究者が、政治のしがらみに捉われることなく、自負を持って仕事ができる環境を用意すべきです。
 願わくば、岡村氏が研究者として満足のいく終着駅に到達できますように。


参考リンク:
■ミンククジラの最新推定生息数の意味と南大西洋サンクチュアリ提案の意義
http://kkneko.sblo.jp/article/56853884.html
 昨日の拙記事もご参照。



◇調査捕鯨>>南極観測!!??


■南極観測 ヘリの壁・財政難、一機に減り輸送に影響 (11/28,朝日夕)


 ピンチだそうです。族議員がいないから。ナガスの尾の身で釣れないから。
 これは科学に対する冒涜。許せません。
 調査捕鯨は科学の風上にも置けないただの「儲かる漁業」。ほっとけば潰れるところを、復興予算を流用してまで政治的に無理やり存続。
 学術的意義の極めて高い仕事をし、国際的にも多大な貢献を果たしてきた、極地研の南極観測事業をなおざりにし、南極プロレス興行が優先されるなど、絶対にあってはならないことです。国の恥です。
 バカげた健康食品ビジネスに科学の錦の御旗を使わせてはなりません。スパコンで1位を取る必要もありません。地球にとって、ニンゲンにとって、本当に役立つ基礎研究にこそ、国家予算は振り向けられるべきでしょう。
 日本政府は調査捕鯨をただちに廃止して、つぎ込んだ金は全部極地研に回しなさい!!!

posted by カメクジラネコ at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系
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