2012年10月10日

東北の被災地を足蹴に復興予算をせしめた厚顔無恥な捕鯨サークル

◇東北の被災地を足蹴にして復興予算をせしめた厚顔無恥な捕鯨サークル

 一連の報道の流れを追ってみることにしましょう。

 NGOの動きについては以下をご参照。

■復興予算の行方が話題になってきた|ika-net日記 (9/25)
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-8926.html
■今度は会計検査院あてに要望書|〃 (10/5)
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-b556.html


 先陣を切ったのは週刊ポスト。論功行賞ですね。


■19兆円復興予算をネコババした『泥棒シロアリ役人の悪行』 福場ひとみ氏(ジャーナリスト)とポスト取材班 週刊ポスト|ブログ拾い読み
http://www.paradigm2020.jp/blogw/1343641393.html

トンデモな復興予算はまだある。冒頭で紹介したシーシェパード対策費がそれだ。昨年度予算から、南極に行く調査捕鯨に18億円、それを妨害するシーシェパード対策費に5億円がすでに使われてしまった。
理由は「石巻はかつて捕鯨の町だった。石巻の再活性化のためにも商業捕鯨の再開がしたい」(水産庁国際課)からだという。が、
調査捕鯨船の母船は広島港から出港しており、石巻とは何の関係もない
そう記者が問うと、担当者は「南氷洋に行く乗組員には石巻周辺の人もいる」「石巻出身者には鯨を捌くのが上手な人が多いなどと、笑止千万の理屈を繰り出した。記者が「わかりました。石巻の復興と調査捕鯨費用は何も関係ないですね」と話を切り上げると、「クジラの町・石巻に、いつの日か捕鯨の復活で活気が戻ることを持ち望んでいます」と付け足す厚顔ぶりに、官僚の本領を見た(引用、強調筆者)

■20120909 #NHK スペシャル「シリーズ東日本大震災 追跡 復興予算 19兆円」
http://togetter.com/li/370308


 NHKにしては久々に優れたドキュメンタリーでした。神戸大・塩崎教授の事業リストのうち、農水省所管では反捕鯨対策が数少ない赤丸(被災地外)だった模様。

■シロアリが食い荒らす「震災復興予算」沖縄の国道工事や中央合同庁舎改修|(9/24,J-CAST)
http://www.j-cast.com/tv/2012/09/24147374.html

反捕鯨団体への対策費は妨害に屈しない姿が被災地の漁民を励ます(水産庁)(引用、強調筆者)

 国会議員の質問に対する、この時点での水産庁側の弁明をよ〜く覚えておきましょう。土産≠フ解釈よろしく、この後くるくる変わっていきます。当初、この程度の回答で国民は簡単に納得させられるものと、霞ヶ関は高を括っていたわけです。「国民の大半が捕鯨シンパなのだから、何をやっても目こぼししてくれる」という感覚だったのでしょう。
 ところが、復興予算詐欺*竭閧ヨの国民の関心は高く、マスコミもバックアップをやめました。国会での追及に際して、石巻の関連産業従事者が何人と、多少具体的な言い訳に変わってきたわけです。途中から。しかし、従来ならここで引き下がったはずのマスコミも、今回は追及の手を緩めませんでした。味方だったはずの石巻の水産関係者まで首を捻るのだから、ある意味当然でしょう。国民に増税を強いる被災地のための復興予算流用より、くだらん銅像のイタズラの方が一大事だという、一握りの狂信的な反反捕鯨論者を除いて、国民の誰もが「おかしい」という感覚を抱いてしまったわけです


■使途は被災地が最優先 (10/5,公明)
http://www.komei.or.jp/news/detail/20121005_9270

また、反捕鯨団体の妨害活動に対する安全対策「鯨類捕獲調査安定化推進対策」(23億円)については「2011年度補正予算(復興予算)で対応しないと南極海の調査捕鯨ができなくなる」と説明。井上幹事長は「本末転倒だ。現場が求めている港の復旧を優先すべきで、とんでもない話だ」と糾弾した。(引用、強調筆者)
 これも非常に重要な内容が含まれています。政党機関紙の我田引水記事なのですが、水産庁がここでうっかり本音を漏らしているのですね・・・

 こちらは共同配信。見出しに使われています。単独事業者に宛がわれた額としては最大の事業の一つでしょうから、当然といえますが。

■復興予算が調査捕鯨対策などに (10/6,共同)
http://www.47news.jp/CN/201210/CN2012100601001698.html

 鯨研に役員を送り込んでいた御用新聞産経さえも取り上げました(サラリとですが)。


■捕鯨の復興予算化、農相が釈明 「石巻市の人に大事と判断」 (10/5,産経)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/121005/mca1210051501015-n1.htm (リンク切れ)
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/121005/biz12100514490016-n1.htm (リンク切れ)

本来の復興の趣旨とは違うとして問題視する声が国会でも上がっている。(引用)
 毎日、東京、朝日と、各紙が競い合うように、地元の声を丁寧に拾い上げ、分析も加えたすぐれた記事を書いてくれました。東京は再掲。

■復興予算:「反捕鯨対策」に石巻から疑問の声  (10/5,毎日)
http://mainichi.jp/select/news/20121006k0000m040046000c.html (リンク切れ)

東日本大震災の復興予算から22億8400万円を投じ、農林水産省が昨年度実施した「鯨類捕獲調査安定化推進対策」に、捕鯨関連産業の盛んな被災地・宮城県石巻市の水産関係者が首をかしげている。事業の目的は石巻の復興を念頭に、反捕鯨団体の妨害対策を強化するなどして南極海で安定的に調査捕鯨を行うことだが、調査捕鯨で東北に揚がる鯨は震災前でも全国の1割台。被災地復興の費用対効果でみれば疑問符がつく。
石巻市や地元関係者によると、乗組員など調査捕鯨関係者の約1割に当たる25人程度が石巻市民。市内には鯨の加工品製造業者が2社あり、津波で倒れた巨大な缶詰形タンクで有名になった「木の屋石巻水産」は被災して県外で操業を再開している。
水産庁は「鯨の関連産業は大きくはないが一定ある。鯨肉の安定供給が復興につながる」と強調。5日の閣議後記者会見で郡司彰農相も「120社、1200人の従業員がいる」と述べたが、これは末端の小売店や料理店の従業員まで含めた数字とみられる。
今回の事業で水産庁が安定供給をうたう背景には、調査捕鯨の運営費不足がある。調査捕鯨は捕った鯨を調査副産物として販売し、その収入で運営。09年度収入は507頭で27億円だったが、10年度は反捕鯨団体「シーシェパード」(SS)の妨害で調査を打ち切ったため172頭、9億円にとどまった。
昨年度の第3次補正予算で認められた事業費のうち約18億円は、調査捕鯨の実施主体の財団法人「日本鯨類研究所」に支払われる調査経費の補助金。水産庁は「偶然」としているが、SSの妨害で目減りした収入とほぼ一致する。残りの5億円足らずが、SS対策のため水産庁監視船を派遣する費用だった。
ちなみに、鯨類研究所から乗組員に支払われる給料は、捕れた頭数に関わらず一定。しかも、今回の事業費が投じられた昨年度の調査捕鯨で、地元関係者は「石巻には一頭も入っていない」と話す。
石巻市水産課は「乗組員に市民がいるので、SS対策は市民の安全を守ることになる。現地の復興も捕鯨対策もどちらも必要だ」との見解。一方、木の屋石巻水産の担当者は「調査捕鯨全体の将来を考えると今回のような事業は必要だと思うが、それが『復興予算』と言われてもぴんとこない」と語った。

■復興予算届かない 被災地中小の申請 6割却下 (10/7,東京)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2012100702000084.html (リンク切れ)

東日本大震災で被災した中小企業の復旧を支援する今年八月の「第五次中小企業グループ補助事業」をめぐり、復興予算からの補助金交付を求めたグループの約63%「国の予算が足りない」などといった理由で申請を却下されたことが分かった。却下されたグループ数は二百三十一、申請額は千五百億円超。被災地と無関係な地域の工場への設備投資や、核融合エネルギー研究など復興予算になじまない使途に多くのお金が使われ、被災地への予算が圧迫されている。
◆地元で工場再建 なぜかなわない
 取引先の建設業者などに声をかけてメンバーを募り、賛同したグループの従業員数は百人を超えた。何度も話し合い計画書を県に出したが、選考からは、あっさり落ちた。皆、津波に流され、家も仕事場も失った事業者ばかりで、多額の借金を抱えながら仕事を再開させようとしている。「一体、何が足りないというのか」
 宮城県の担当者は「グループ補助事業は共同事業に重きを置いている。共同での除塩作業や太陽光発電など、地域の復興に貢献する事業があるかがポイントと説明した。
 田中さんは書類を書く技術で補助金の是非が決まっているのでは」と審査方法や基準の曖昧さに疑問を持った。「商店街など多くの事業者が深刻な状況を理解されず、認可を得られていないと聞く。国や県は事業者の現状を、実際に目で見て判断してほしい」と訴える。(引用、強調筆者)

■調査捕鯨・海外交流・沖縄の国道…復興予算、何でもあり (10/8,朝日)
http://www.asahi.com/politics/intro/TKY201210070389.html

東日本大震災の復興予算のなかに復旧・復興に役立つとは言いがたい事業が含まれている。調査捕鯨や青少年の交流事業に投じられたり、「防災」の名目で沖縄の道路整備にお金が使われたり。被災地からは「使い道がおかしい」という疑問の声も出ている。
復興予算のなかにはこじつけに近い事業がある。(中略)
11年末時点では鯨肉の国内在庫は石巻の使用量の10倍以上あった。業者は「鯨関連の商売はあるが、全体からみればほんのわずかと言う。(引用、強調筆者)
■復興相“復興予算は被災地に特化へ”(10/7,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121007/t10015575591000.html (リンク切れ)
この中で平野復興大臣は、東日本大震災を受けて、5年間で少なくとも19兆円規模をあてる復興予算について、「すべてが被災地対象ではなく、震災があった去年は、日本経済の落ち込みを防ぐことで復興を果たすという大きな意味で経済対策に予算をつけた。全国防災という形で、次の災害に備えるための予算も入っている」と述べました。
 市民・マスコミの批判を受け、平野復興相が弁明。しかし、調査捕鯨に使われた復興予算は、「日本経済の落ち込みを防ぐ」目的とも、「次の災害に備える」目的とも関係ありません。震災と無関係に自滅しかかっていた債務超過団体を救済するために復興予算が流用されてしまったのです。


■「何でもあり」復興予算のカラクリ 「日本の再生」拡大解釈 (10/8,東京)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012100890071438.html (リンク切れ)

東日本大震災の復興予算は、なぜ被災地の復興と関係がない使われ方が目立つのか。「何でもあり」のカラクリを解く鍵は、政府の復興基本方針に仕込まれた二つの文言にある。一つ目は「日本経済の再生なくして被災地の真の復興はない」この考え方の下「被災地に一体不可分として緊急に実施すべき施策」の実行を認めた。二つの文言を錦の御旗に、被災地と全国との関連づけを「作文」した不適切事業が次々に予算化された
「二〇一一年度からの五年で計十九兆円を震災の復興に充てる」との復興基本方針は昨年七月に決まった。その根拠は一カ月前に制定された東日本大震災復興基本法だ。
賛成多数で可決された基本法は、「単なる災害復旧にとどまらない活力ある日本の再生を視野に入れる」と規定。基本方針はこの理念を具体化した。
方針に盛り込まれた「日本経済の再生」の文言は政治サイドの要求で入った、とされる。震災直後は被災地に加え観光産業など全国の企業が海外からの風評被害に遭っていた。文言にはそれらも含めた日本経済を支える「狙い」があり、幅広い事業の予算化に道を開く形になった。こうして流れは整った。
「霞が関の人間は旗が立てば、わーっと群がる。頭を使い、財務省の目の届かないところでうまく事業を滑り込ませるのはわれわれの習い性だ」。ある官僚は復興予算の使い方をこう解説する。
実際、予算化に向けて事業の精査が行き届いたとは言い難い。昨年を振り返り、ある財務省幹部は「当時は復興を優先させるため、足りないより過分であった方がいいと査定をあえて甘くした」と認める。
食料の保管庫建設など、全国の防災・減災のための政策が「全国防災事業」として予算計上を認められた点も、「被災地以外に予算を使う道を開いた」との批判が多い。
ただ、全国防災事業には別の評価もある。一兆円に上る事業の財源を裏打ちするのは、復興増税に含まれた個人住民税への増税。住民税は地方税で、全国の自治体が執行する裁量を持つ。このため被災地以外の地元の防災事業に使って新たな震災に備えることは、あながち無駄とも言い切れない。
だが、復興と震災対策を名目に「予算の獲得合戦」に明け暮れる姿勢は厳に正すべきだ。「被災地の復興が最優先」という政府の方針に異論はない。問題は予算の使い方に国民の信頼が得られていない点にある。「被災地に寄り添う」との誓いを空虚にしないためにも、復興予算の精査が求められる。(引用、強調筆者)

 7日に続く東京の解説。昨日の記事で、霞ヶ関の法案・事業計画は要件をきっちり定められていると書きましたが、復興予算は逆のパターンで、ブッコミが可能なように逃げ道がしっかり用意されています。霞ヶ関の官僚たちは、本当に作文のプロですね・・・
 復興相と同じく、財務省幹部の言い訳が載っていますが、実際には「被災地には徹底的に辛く、被災地外にはやたら甘かった」といわざるを得ません。
 全国防災事業の解説のように、「住民税増税で全国民の負担を増やすのだから、東北のみで使うのはおかしい」との主張もあるでしょう。ですが、国全体で被災地を助けるのは国民の総意。鯨研の赤字のことなぞ、誰も知ったこっちゃありません。なぜ、彼らが勝手に背負った借金の肩代わりを、国が引き受けなければならないのでしょう!?
 また、トータルの額の大きい経産省分の話で、風評被害でダメージを受けた観光産業・輸出産業なども、確かに便乗には違いありません。それでも、自らに落ち度のない(原発推進に関しては全国民の落ち度だったといえるでしょうが・・)震災のダメージで苦しい事情は、まだ理解することもできます。しかし、鯨研/共同船舶の場合は、311とは何一つ関係ないのです。元からの赤字の埋合せのために復興予算をふんだくったのです。
 それにしても、政治主導を掲げて政権を奪取しながら、霞ヶ関の「習い性」を矯正するどころか、すっかり手なずけられて省益誘導を諮る官僚の番犬役にまで成り下がってしまった民主党の体たらくには、ため息が出るばかりです・・・


 ざっと見てきましたが、この件に関してはマスコミも捨てたものではないと感じます。終わったわけではありませんから、引き続き追及の手を緩めないで欲しいと思いますが。
 この件、NGOが22.8億円の用途・内訳を精査するよう、会計検査院に対して要望書を提出しましたが、水産庁・日本政府は「済んだこと」としてうやむやにごまかそうとせず、事実を詳らかにしなくてはなりません。
 23億円分の励ましを受けたことになっている東北の被災地の皆さんは、知る権利があるはずです。
 311以後、物心両面で日本を励ましてきた世界中の市民も、知る権利があるはずです。
 とりわけ、「石巻市の人に大事」と、口実に使われた石巻の市民は、南極海でのプロレスと、その宣伝ばっかりやってる東京の自称′、究機関の借金返済が、街と自分たちの生活の再建よりも「大事だ」といわれたことに対し、国に説明を求める権利があるはずです。

 ここで、調査捕鯨への予算23億円という金額が決められた背景にまつわる情報をいくつか提示しておきましょう。
 一点は、鯨研の債務超過団体への転落。


■日本鯨類研究所、債務超過に転落 設立以来初 (10/2,朝日)
http://www.asahi.com/business/update/1002/TKY201210010694.html

日本政府の調査捕鯨の実施主体である、水産庁所管の財団法人日本鯨類研究所(東京)が、2010年度決算(10年10月〜11年9月)で債務超過に陥ったことが1日、わかった。1987年の設立以来初めて。
 09年度は7億5千万円の正味財産(純資産に相当)があったが、10年度は8億7千万円の債務超過になった。負債が資産を上回る状況で、企業でいえば取引金融機関が融資を見合わせるなど危機的な状況。 (引用、強調筆者)

 これについては、上掲の各マスコミ記事で触れられているとおり。毎日が減収を「SSの妨害のせい」としていますが、NGOの発表や昨日の拙記事で解説しているとおり、収益悪化の主因は妨害ではなく「販売不振と在庫超過」です。
 鯨研は水産ODAリレーションで結ばれた天下り業界団体・海外漁業協力財団から実質無利子の多額の長期融資を受けてきました。上掲朝日記事中にあるとおり、銀行だったら貸し出しを拒まれるブラックリスト入り確実の債務超過団体となった鯨研ですが、実は過去にも10億円分の返済が滞っています('08)。水産庁からも呼び出しを食らい、経営合理化を要求されました。


■調査捕鯨、懐もピンチ 国からの融資10億円返せず ('08/2/2,朝日)
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=23599
■調査捕鯨の鯨類研、鯨料理店を閉鎖へ 資金繰り悪化で合理化案 ('08/11/11,日経)
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=40266


 しかし、結局は「儲かる漁業」を謳った公的な救済措置が取られたのです。昨日の記事で取り上げたとおり、その内容には生産設備の改造(小ロット化、熟成度の向上など)なども含まれていますが、立派に日本の食文化の維持を担っているはずの食品メーカーで、国によってこれほどの超優遇措置を施された企業が一体あるでしょうか??
 その他、9億円の不良資産と化した在庫問題の詳細等については、NGOの資料に譲りましょう。


 こちらは「捕鯨サークルの求めに応じて決められた数字」としての意味ですが、今度は、「同じ23億円を出すにしても、せめてもっと被災地にとって有効な事業にできなかったのか?」という角度で眺めてみましょう。それも、調査捕鯨関連≠ナ。
 実は、補正が決まって間もない昨年11月の時点で、石巻港では港内の浚渫作業が進められ、大型船舶の接岸までとりあえず可能になっていたのです。


■水深制限が解除された石巻港に大型船舶が入港!|塩釜港湾・空港整備事務所 ('11/11/18)
http://www.thr.mlit.go.jp/bumon/kisya/kisyah/images/38736_1.pdf


 無論、南極海に赴いていた調査捕鯨母船・日新丸を同港に帰港させるためには、一次搬入用の大型冷凍倉庫など関連インフラの復旧が不可欠。20億円程度では足りないでしょう。それでも、駄目もとでもいいから日新丸帰港を"目標"に、こちらに全額投入した方がマシだったはずです。今年春の帰港が無理だったとしても、工事のピッチを上げることで、次の北西太平洋、あるいは翌年の南極行の船団が帰港できれば、事業が石巻の復興に確実に役立ったことになります。副産物の取り扱いで優先権を与えられれば、周辺の加工業者等関連産業にとっても実質のある″v献になったでしょう。
 「もうかる漁業」では「今季の出漁に間に合うかどうかかわからないが、ともかくカネだけは確保しろ」と性急に動き、3年越しで船1隻を設備更新する事業を即決できてしまう水産庁。であれば、なぜ3年のスパンで石巻港と周辺施設の復旧を目指すことができないのでしょうか? まったく理解に苦しみます。
 そのうえ、母船帰港を事業の名目にして、現地の復旧工事を後押しすれば、石巻市民を本当に@繧ワす効果もあったでしょう。それこそ、地球の裏側のプロレスに回すよりははるかに。被災地に寄り添うことのできる捕鯨政策と、評価も上がったでしょう、クジラにとっては不利益かもしれませんが。
 にもかかわらず、沿岸捕鯨地・消費地としてそれなりに縁が深いはずの石巻市民にまで呆れられながら、捕鯨サークルは自らの借金返済を優先してしまったのです。

 一方で、この20億強の復興事業に便乗しようとした自治体もありました。「うちがちょうど20億円分潤うから、うちに帰港してくれ」と厚かましくも水産庁に申し出たのは、自民党総裁選に望んだ国会議員・林芳正氏のお膝元で、クジラの町を謳う下関市。結果的に皮算用に終わったものの、水産庁は当初前向きの姿勢を示していました。石巻市の窮状をよそに。詳細は以下の拙記事をご参照。

■復興予算を食い物にしようとした盗人猛々しい調査捕鯨城下町・下関市
http://kkneko.sblo.jp/article/56253779.html

 一部の反反捕鯨右翼は取るに足らない些細なことと決め付けているようですが(銅像破壊の方は重大事)、この復興予算便乗詐欺*竭閧ヘ、調査捕鯨の本質と切っても切り離すことができません。それはまた、日本という国が物事の優先順位をどのように判断するかという、価値観を内外に示すものでもあります。
 公明新聞の記事にあった、水産庁の本音。それは、震災後の財政難の中、「彼らにとって十分な」予算を捕鯨サークルが確保できなかったことを意味します。復興補正に便乗しなければ、存続が危うかったのです。それ故に、自分たちだけは予算にありつこうとしたのです。被災地の市民、中小企業、漁業者を押しのけ、踏み倒してでも。
 311の震災を受け、少なくとも昨年の日本は南極海に遠征できる状況にありませんでした。被災地救済か、赤字まみれの鯨研救済か、二つに一つでした。そして、あろうことにも後者を選んでしまったのです。日本という国は。
 311後の状況を鑑みれば、過半数とされる捕鯨容認派を含め、国民の圧倒的大多数は、南極海での「調査」を1、2年休んだところで文句を言うはずもなかったでしょう。被災地優先は当然」というのが、国民の良識のはずです。しかし、当の捕鯨サークルと族議員の圧力を受け、国が切り捨てたのは被災地の方だったのです。
 震災後の日本にとって大事なのは、聖域として死守すべきなのは、ともかく南極海で捕鯨(カガク捕鯨だろうともうかる捕鯨だろうと)を続けることであり、数多くの人々の生活を取り戻すことではなかったのです。
 今回の復興予算便乗詐欺≠ナ、調査捕鯨は明らかに国民にとって単なる無駄事業の域を越えました。被災地のために必要な予算すら掠め取る、あさましく、悪辣な捕鯨サークル(水産庁+鯨研+共同船舶)の正体が浮き彫りになったのです。



◇調査捕鯨の正体は「儲かってないけど儲けたい商業捕鯨」だった(続)


昨日の記事↓
■調査捕鯨の正体は「儲かってないけど儲けたい商業捕鯨」だった
http://kkneko.sblo.jp/article/58981151.html
■クジラ改善プロジェクトが中央協議会の審議をへて実施へ (10/1,水産経済新聞)
http://www.suikei.co.jp/recent_news/20121001/02.html


 調査捕鯨の「もうかる事業創設支援事業」認定を報じる水産業界紙の記事を読んで、筆者の脳裏にある不安がよぎりました。
 自民党の族議員の猛反発を受け、担当官僚・副大臣は実施に前向きの姿勢を表明していますが、農相が明言を避けたとおり「通常の出航時期である11月初旬に」間に合うかどうかは不明。あともう1ヵ月しかありません。にもかかわらず、記事中の小見出しは「南極海調査に向け、日新丸改造急ぐ」、鯨研理事長も「調査員・乗組員の士気を上げて」とコメントしています。
 捕鯨サークルとしては、審査のほんの数日前に自民党の議連総会で怒鳴られるまで、与党に合意を得た段階では、来年のJARPN2の出航まで半年の間に改修を済ませればいいというスケジュール感だったはず。族議員の無茶な要求に、造船会社を含む関係者は、正直頭を悩ませていることでしょう。
 おそらく、年内は小幅な改造に留め、場合によっては裏作にあたるJARPNの方を1漁期見送る気でいるかもしれません。エンジンの改修・付け替えをJARPA前に出来なければ、肝腎の燃費改善のメリットも薄まってしまいますが・・。
 本当に、間に合うのでしょうか? 間に合わせるつもりなのでしょうか??

 '07の火災や'09の転落事故など、調査捕鯨ではこれまでに何人もの人命が失われています。


■異常に高い調査捕鯨事業における死亡事故リスク
http://kkneko.sblo.jp/article/30992331.html
■異常に高い調査捕鯨事業における死亡事故リスク2
http://kkneko.sblo.jp/article/34484278.html


 「士気を高める」のも結構。しかし、族議員や一部の狂信的な応援団の突き上げに押されて、無茶なスケジュールでの突貫工事を迫られ、改修後十分な点検の間もなく出航したせいで、百名を越える乗員を乗せた船が南極海上でトラブルに見舞われたら、大事故につながる可能性も否定できません。
 311後、命を失うことの辛さを改めて思い知り、何よりも命を優先する社会を築かなければと、日本人の誰もが心に誓ったはずではないのでしょうか?
 つい先日も、若い訓練生を含む多数の乗員が行方不明となる、貨物船と漁船の衝突事故が遭ったばかり。
 尖閣・竹島で、右サイドからの声のボリュームが俄かに増したように感じる今日この頃。もともと大半をナショナリストが占める反反捕鯨応援団のみならず、鯨研の研究者(販売員)まで意気盛んに反中嫌韓ツイートを吐いているようですが・・
 しかし、1年の見送りがにっくきSS・白人連中に対する負けを意味することになるのを恐れるあまり、取り返しのつかない事態を招くのは愚かなことです。南半球での捕鯨から撤退したからといって、それが「ニッポンの負け=vになると思い込むのは、脳が化石化した超拡張主義者だけです。
 鯨肉の肴付きであっても、それは安酒の酔いでしかありません。
 原発であれ、軍用ヘリであれ、南極海での捕鯨操業であれ、事故が起こってからでは遅すぎるのです。「かっこ悪くて今更引っ込みがつかない」と考えるのは、むしろ子供じみています。愛国ムードに流されて、ヒトの命を粗末にしてはいけません。
 政治家の要求を無理やり呑まされる形での強硬スケジュールの改修が、本当に安全面を犠牲にしたヤッツケ仕事になってないか、海員の諸兄はきちんと情報を収集した上で乗船の判断されますよう。戦地に赴く兵士よろしく「お国のために」家族を泣かせることはありません。
 私は商業捕鯨・調査捕鯨そのものに反対の立場ですが、だからといって、悲劇的なハードランディングの形での最悪の結末など、誰も望んでいません。オーストラリアの人々だって。
 繰り返しますが、無茶な改修からやめるか、出漁の方を1年断念してください。

posted by カメクジラネコ at 02:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系
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