2012年07月14日

国際捕鯨委員会2012総括

◇IWC2012総括〜安全なはずのRMP(改訂管理方式)もこのままじゃ使えない・・・

 7月2日からパナマで開かれていたIWC(国際捕鯨委員会)年次会合が閉幕。
 今年開催を伝えたのは水産業界紙のみで、現地入りした報道機関も通信社1社のみと、日本国内での関心の低さをうかがわせました。みんな、大飯再稼働と消費増税&民主内紛でそれどこじゃないもんね・・。韓国の調査捕鯨計画のニュースが流れてから俄かに細波だったものの、大波にはならず。
 大きなトピックは次の6つ。

@南極海クロミンククジラの生息数推定値合意に関する科学委員会報告
A南米諸国による南大西洋サンクチュアリ提案(否決)
B先住民生存捕鯨の捕獲枠(ロシア、米国、セントヴィンセント・グレナディーンの3国共同案は採択、グリーンランド/デンマークは否決)
C日本の沿岸小型捕鯨提案(採決せず)
D韓国による調査捕鯨計画に関する意見表明
Eモナコによる国連との協議提案(決議は取り下げ、アプローチは推進)

 このほか、議長等人事や財政運営関連事項の決定と、ただの儀式でどーでもいい海上安全(決議等はなし)といった議題もありました。
 日本政府の公式発表を見ると、上記のうちどーでもいい海上安全は載ってますが、非常に重要な@とEについてはすっぽり抜け落ちてますね(リンク先参照)。韓国の調査捕鯨の件は1国の代表がちょろっと意見を表明しただけにすぎず、海上安全に至っては繰り返しの耳タコネタで右から左に送られただけなのに。国際捕海犬委員会じゃないっーの・・・

■「国際捕鯨委員会(IWC)第64回 年次会合」の結果について|水産庁
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/whale/iwc64_kg.html
■第64回国際捕鯨委員会(IWC)年次会合結果|外務省
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/enyou/120707.html

 このうち、BCEについてはNGO等の発信情報をご参照。@Aは前々回、Dについては前回の拙記事で取り上げましたが(リンク参照)、今回は@に関して問題点を追記しておきたいと思います。

■クロミンククジラの最新推定生息数の意味と南大西洋サンクチュアリ提案の意義
http://kkneko.sblo.jp/article/56853884.html
■韓国の調査捕鯨参戦宣言が招いた波紋
http://kkneko.sblo.jp/article/56904118.html


 51.5万頭という数字と前の周回からの減少の意味については過去記事で述べたとおり。ただ、未だに合意できていない部分、合意に至るまでに要した膨大な時間は、日本が表向き*レ指している商業捕鯨再開の議論と密接に絡んできます。
 世界の海を最後の砦・南極海に至るまで荒廃に導いた商業捕鯨をどうやって管理するか。その管理にことごとく失敗した苦い経験が、IWCでのモラトリアム決議の背景にあったわけです。で、日本捕鯨協会とその広告代理店を務めた国際PRは、環境NGOが掲げた「疑わしきは環境の利益に」という予防原則に対し、「不確実性=イチャモン」という文字通りのイチャモンを付ける広報戦術を採用しました。環境問題の文脈で、それを言っちゃあおしまいですけどね・・。もっとも、IWC科学委は別に手を拱いていたわけではなく、日本と反捕鯨国双方の研究者の協同作業で、不確実でも捕鯨ができるようにする新しい管理方式を編み出したのです。それがRMP(改定管理方式)
 詳しくはウィキペディアのIWCの項もご参照。

■国際捕鯨委員会|Wikipedia-JP
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%8D%95%E9%AF%A8%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A#cite_note-21

 以下は、RMPの元となるコンセプトを提唱した日本の田中昌一氏の解説(『鯨研通信』#391)。ちなみに、冒頭で「捕鯨の歴史は乱獲の歴史といわれる」と明示してらっしゃいますし、最近の販売員系の若手研究者よりずっとまともかも・・

 この方法は、資源モデルや生物学的パラメータ等は一切用いず、資源量の相対的指数の水準と変化の傾向だけで捕獲量を調整するというものである。(引用、強調筆者)

 門外漢には煩雑な統計理論に基づくモデルですが(銀行の利子のネタがよく引き合いにされる)、重要なのは田中氏も強調しているように、変化の傾向を見て、それを捕獲枠設定に逐次反映させていくフィードバック方式だから、頑健で(保護派の目から見ても)安全だということ。そして、最も重要なパラメータであり、かつ、入手も、統計処理等の解析も他のパラメータより容易なハズの、(推定)体数と過去の捕獲統計のみでOKということ。もちろん、この個体数の情報は捕殺に頼らず目視調査だけで得られるわけです。
 当然ながら、加入率・死亡率その他諸々のパラメータ(生物学的特性値)はすべて、母集団のサイズ、すなわち推定個体数に応じて統計的な信頼区間を規定されます。RMP以前のNMP(新管理方式)は、その不確実性を排除できずに失敗しました。日本が南極海と北西太平洋で実施してきた調査捕鯨(JARPAT/U、JARPNT/U)も、自然死亡率に関して(95%信頼区間の範囲で)負の値が取れてしまうといった問題が発生するなど、「より不確実な情報」を提供することしかできずにいます。そもそも不確実なデータに依拠せずに済むことを目指して構築されたのがRMPだったにもかかわらず、そのことをきれいさっぱり忘れ(というよりしらばくれて)わざわざ「不確実なデータ」を集めるために多額の税金をかけて無駄な作業≠しにいっているわけです。それというのも、とにかく南極海での母船式捕鯨事業を延命させたいがために。
 IWC科学委による日本の調査捕鯨のレビューでも、「科学的管理には一切必要のないデータだし、その不必要なデータも役に立ってない」と手厳しい評価を受けました。日本側がやっとのことで無理やりねじ込んだのが「潜在性」(ひょっとしたら、そのうち何かの役に立つこともあるかもしれないねっ!)の一言。生物学分野では異例の大掛かりな調査にしては、あまりにも情けない評価といえるでしょう。鯨研側は「調査捕鯨はRMPの改善に資する」と主張しますが、二つの入力情報だけでは管理がうまくいかないことが明らかになった時点で初めて必要になる話で、実際に運用されてもいないのに「改善」しても意味はありません。調査捕鯨の科学性については以下もご参照。

■調査捕鯨自体が否定した3つのトンデモ論
http://www.kkneko.com/jarpa.htm

 実際のところ、RMPはRMS(改定管理体制)が完成するまで適用しないことになっています。日本の業者を含め過去に多くの操業違反が明らかになっている以上、机上の数式≠セけではクジラを守れないということで、監視体制をどうするかという議論になったわけですが、日本側は受入を拒否。
 捕鯨協会/国際PRは「RMPに続く次の難癖」と盛んに喧伝し、応援団の族議員も「言語道断」と捲くし立ててきたRMS。ところが、今年の沿岸小型捕鯨の提案の中で、日本はなぜか、RMSベースの国際監視員やDNA登録等による監視制度の受入を表明してきました。ただし、科学委に提出した捕獲枠設定の方はRMPではなくNMPによるもの。
 RMSを受入さえすれば、商業捕鯨再開にゴーサインが降りる手はずになっていたのに。太地関係者いわく「本命」のハズの沿岸で素直にRMSを認め、「外堀」にすぎない南極海では受入を拒絶するとは、日本代表団の言動はまったく理解に苦しみます。ま、採決しても通らないことを見込んでのことなんでしょうが・・。
 このように(保護派・クジラにとって)安全第一を謳っているRMP。ちなみに、鯨研などは、その安全度を評して「陸上の動物で捕獲枠が算出される動物はいない」「厳しすぎて他の漁業には使えない」と表現。一産一仔で性成熟に7、8年以上かかるほど繁殖率の低い大型哺乳類のクジラと魚を一緒くたにされても困るし、多くの種がクジラよりはるかに繁殖率の高い陸上の野生動物で計算したら捕獲枠が出ないのに、クジラだったら使えるなんてどういうこっちゃ? と野生動物に関心の高い市民は首を傾げるところでしょうが・・。
 そうはいっても、RMPにも問題はあり、従来から指摘されてきました。
 一つはチューニング問題。IWCでモラトリアム決議に異議申立をしたおかげで(日本は米国との北洋漁業交渉の経緯で撤回)、いまでも北大西洋でミンククジラを中心にした捕鯨を続けているノルウェー。科学委で捕獲枠の削減が勧告されると、初期資源量に対する目標水準の比率を引き下げることで捕獲水準を維持。要するに、下げるのが嫌だから、モデルのほうを獲りたい数字に合わせて勝手にチューニングしちゃったわけですな。捕鯨国が恣意的にいくらでもハードルを調整できるのであれば、何のための管理方式かわかりゃしません。情報公開は日本よりずっと進んでいるとはいえ、水産資源保護先進国のはずのノルウェーにあるまじき姑息なやり方ですな。
 2点目は系群構造仮説。野生動物は個体群単位で保護管理しなければ意味がないのは、狂信的反反捕鯨論者以外誰もが認める環境保護の常識。日本の過去の操業海域と重なるJARPAの調査海域には、2つのクロミンククジラの系群(個体群)が回遊していると考えられていますが、分布の境界や両群が混交する海域とその程度など、詳細は特定されていません。RMPではカスケーディング、キャッピングという未分離状態でも影響を抑えて管理を可能にする手法も提示されてはいるのですが、もちろんわかるに越したことはないわけです。
 今回も、このクロミンク系群問題にまだ片が付いていないことが報告されています。実は系群構造の解明はJARPAの大きな調査目的の一つで、現在は非致死的手法によっても入手可能な遺伝情報の提供など一定の役割は果たしたものの、それ以上の進展には貢献できずにいます。科学委では「低緯度の繁殖海域における調査こそが必要だ」と再三にわたって指摘され続けているのですが。
 3点目、大元の理論が種間関係を考慮せず、環境収容力/初期資源量(個体数)を一定不変とみなしていること。これは水産資源学全般に関わる本質的な問題で、そのために提唱されたのが生態系モデル。
 これまた同じパターンで、日本が調査捕鯨継続の新たな言い訳として付け加えたのが生態系モデルの構築でした。しかし、日本が考えているのはヒゲクジラ4種の競合のみのあまりに単純化しすぎたモデル。これでは単一種管理と大差ありません。北西太平洋でクジラと合わせ30種ほどのデータを用いたエコパス(生態系モデルのひとつ)モデル開発に関する論文も出ています。が、これもかなりの眉唾モノ。三重大の水産学者・勝川氏は「パラメータの設定によって結果が大きく変わる生態系モデルは信用ならない。単一種で頑健なRMPを使うべき」とバッサリ斬っています。
 本来であれば、御用学者が数字をいくらでも恣意的に操作できるいい加減な生態系モデルではなく、実際の自然の生態系の変動を説明できるほど、精緻で厳密な生態系モデルを構築することが理想でしょう。大気モデル計算に用いられるような強力なスパコンでも使うなら、ある程度のシミュレーションはできるでしょうが、問題は元となる各構成種のデータが粗すぎることですね・・。
 以下もご参照。

■持続的利用原理主義さえデタラメだった!
http://www.kkneko.com/sus.htm

 そして4点目がフェイドアウト・ルール問題。個体数のデータは5年毎に取り直すことになっているのですが、なぜか8年まではデータが空白の状態でも許される仕様(それ以上の期間調査が行われない場合に漸次フェイドアウトさせるルール)。田中氏の解説からすると、「解析にさらに2年以上かかるかもしれないから」ということですが、5年もあれば、調査と解析はいくらでも並行でできます。これは受け入れた保護派の研究者たちの失態ですな・・。フィードバックの利点を説くなら、操業海域を従来どおりの2海区とすれば、採用する個体数データも2年置きに更新(反映は解析期間を考慮しその2年後)で問題ないはず。
 RMPのモデル構築・選択に当たっては、環境変動の影響についても一応シミュレートしたはずなのですが、例えば脆弱な南極海や繁殖海域で大規模な石油流出事故が発生するといった、ごく短期間の間にクリティカルな影響を受けるケースまで考慮されているとは思えません。そうした場合、次の目視調査の結果が出るまで最大8年もの間、捕獲枠を維持するとなれば、気づいたときには手遅れという事態になりかねません。捕獲統計に影響の一端が表れても、ノルウェーのようにチューニングして開き直られたり、共同船舶の元船員が証言したように、乱獲時代よろしくコソコソデータを改竄されれば、打つ手がなくなってしまいます。何しろ、南極海についてはRMSを受け入れないといっている日本なのです。運用に問題があるために、田中氏の提唱したRMPのフィードバックの利点が損なわれているといわざるを得ません。
 調査期間を短く取ってこまやかに情報を提供することは、資源管理に大きなメリットをもたらします。個体数推定の精度自体も向上します。獲りこぼし≠ホかりを気にする業界にとっても有利なハズなのです(乱獲ぼったくり型を目指すのでなければ・・)。そしてそれは、調査捕鯨によって「もたらされるかもしれない潜在的な貢献」を上回ることも間違いありません。
 もっとも、今回合意に至るまでの経緯を考えると、8年という大甘のルールでさえ実情に合わないことになりそうです。IDCR/SOWERの3周目分は'92/'93漁期から'03/'04で、最後の調査年がぎりぎり8年前。2周目の最初の1区に至っては、なんと'85/'86年漁期でプラス10年も経ってしまっているのです。しかも、51.5万はまだ過少推定の余地があり(繰り返しますが、真の減少の可能性もある)、その程度がまだ不明なため、同じモデルを適用しつつも単純に比較できないのです。合意に至ったといっても、個体数の推移をモデルに組み込む必要のあるRMPには今のままではまだ使えません
 過去記事で解説したとおり、2周目と3周目の差を説明する理由のひとつとして挙げられるのが氷(の下に隠れてるから見かけ上少ないんだ!)問題。定量的にこの差を説明できない限り、「本当はもっと多いハズなんだ!」といくら弁明したところで無意味です。結局、航空センサス等の手法を用いて、船の航行できない海域の個体数・分布密度を実測し、衛星等で各年の浮氷域を算出し、船舶からの目視データと足し合わせなければなりません。ただし、科学委のレポートによれば、衛星観測データなどにもいろいろ誤差等の問題があるようです。捕鯨船の目視オンリーに頼る以上に問題が大きいかどうかは疑問符が付きますが。結論からいえば、追加のデータ入手法と補正の計算式が完成するまで待つか、あるいは、「氷の下のクジラはどのみち獲れないクジラなんだ」諦めて納得する、すなわち減少≠ニみなすか、二つに一つということになります。
 次の調査データの解析までは、さすがに10年もかからない? いや、そうとは言い切れないでしょう。増えたり減ったりするだけで必ずまた揉めるはずです。結局のところ、今回とりあえずの合意を見たといっても、不確実性の問題を排除すべく、最も重要なパラメータである個体数のみにパラメータを絞ってさえ、観測と推定のモデルの完成度は、南極海の鯨類資源の管理という要求を満たせるほど高くはなかったということです。
 さらに、もう一つの重要データである捕獲統計についても、今回もまた科学委から「なぜ70年代のデータ解析の結果が提供されないのか?」と苦言が呈されています。調査捕鯨のデータが今回の減少理由の解明の一端につながると日本は主張していますが、これらは間接的な証拠にすぎず、しかもその証明のためにはやはり過去の捕獲統計のデータが必要なのです。鯨研は必要なデータをずっと出し渋る一方、不必要なデータはせっせと集めようとしているのです。W/Lの優先順位が完全に逆転していますね・・。調査捕鯨のデータは、最低でも議論の余地のない個体数と捕獲統計の数字が出揃ったうえで、追加の参考情報として提供されるべき筋合いのものです
 今回の総会に合わせてやっと£出された科学委のレポートは、商業捕鯨再開の前提となる管理方式(正確には必要となるデータの取り方)と、同じく再開を前提と謳って強行されている調査捕鯨の問題点を改めて浮き彫りにしました。商業捕鯨のための管理方式・RMPは、必要なデータの質が悪すぎ、南極海で運用できません。調査捕鯨は、RMPがまさに必要としているデータを提供できず、その代わりに多額の資金を費やして余計なデータをせっせと集め続けています。これほど大きな矛盾はありません。
 小型沿岸捕鯨提案に際して、日本政府代表からは「モラトリアムの撤廃を求めない」というビックリするような発言も飛び出しました(いつもながらの歌舞伎の大見得じみた勇ましい脱退示唆宣言もありましたけど・・)。合意を蹴って不意にしたはずのRMSを例外的に#Fめたり。かと思えば、必要なデータを得られないことで再開の大きな障害となっているにもかかわらず、解決のために早急に航空センサスの実施を求めることもせず(むしろ反捕鯨の急先鋒豪州の方が協力的)。目視調査はカネがもったいないからもうやめると言い出したり。
 日本の捕鯨サークルの一連の不可解な態度は、彼らの真の目的が商業捕鯨の再開などではなく「調査捕鯨の存続」とみなすなら、すべてすっきりと説明がつくのです。


 さて、次回の開催は2年後。
 隔年開催に関しては、農水記者会見でかなり勉強不足の記者が「すわ陰謀か!?」と言わんばかりのマヌケな質問をしていましたが、「お互い」委細承知の上です。具体的には、加盟国の分担金未払問題の解消が主要な動機。陣営を維持したい日本にとっては願ったり叶ったり。相手方も同様ですが・・リーマンショック以降どこも金ないからね・・。マイナス面があるとすれば、"クジラの季節"の宣伝効果が減じることでしょうか。このままじゃ、SSCSとのプロレスショー頼みになっちゃいますな・・。今年の状況を考えると、世間一般の関心がますます離れていくことは疑いないでしょう。


 韓国の調査捕鯨騒動ですが、その後時事や朝日等内外のメディアで報じられているとおり、IWCや環境団体の意見に耳を傾ける姿勢を見せ、「他の方法があれば強行しない」と撤回も示唆しました。韓国国内では市民から国会議員まで「世界の恥」と強い非難の声も上がり、朝鮮日報やハンギョレ新聞など大手紙が明快な批判の社説・論説を出しています。日本の捕鯨賛成論者の主張とよく似たナショナリスティックで粗雑な擁護論もありますが・・

■[社説]‘生きている海’で捕鯨をするのか|ハンギョレ・サランバン
http://blog.livedoor.jp/hangyoreh/archives/1644716.html
■【萬物相】捕鯨|朝鮮日報
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/07/13/2012071301250.html
■【時視各角】鯨の争いで腰がくだけた韓国(1)|中央日報
http://japanese.joins.com/article/501/155501.html?servcode=100&sectcode=120

 韓国の方が日本よりよほど民度が高い? まあ、それもあるのかもしれません。
 しかし、大新聞の論説委員や著名な文人・評論家らを懇談会に招いてレクチャーするなど巧妙な世論操作の手口が劇的な成功を収めた日本の国内事情の方が特殊といえるでしょう。鬱屈した反米・反アングロサクソン感情もその下地になっているわけですが。
 ただし、非妥協的な反反捕鯨運動を後押しし、IWCの膠着状態を招いた一因は、反捕鯨運動のこれまでのやり方にある点も否定できません。SSCSをはじめとする暴力的で演出過剰な活動と、内発的な成熟を待たずに、数・政治の力で強引かつ拙速に押し切ったモラトリアムが、調査捕鯨の存続につながったことは明らかです。


 モナコが提唱した国連との協議・連携については、小型鯨類が保護管理の枠外に置かれている現状はまさに憂慮すべき事態といえます。ノルウェー等4捕鯨国のみで運営されている(日本もオブザーバーで参加)NAMMCO(北大西洋海産哺乳動物委員会)は地域限定のうえ、利害の一致する関係国同士による、まさに軍事同盟のような性格。海洋法条約に示されるような国際機関には該当し得ません。ベースとなる国際条約もなし。ツチクジラ・ゴンドウクジラを対象にした捕鯨やイルカ漁を自主基準≠ナ行っている日本は、これまで「小型鯨類はIWCの管轄外」としてきた手前、かなり歯に物が挟まりまくったような言い方をしつつも、反対に回っています。
 はたして、北太平洋の小型鯨類の管理について、日本はどう解釈するつもりなのでしょうか? 本丸(?)の太地にとっては、外堀を丁寧に固めるのに拘りすぎた所為で、うっかり攻め込まれてしまった感もあるかもしれませんね・・。モナコのアプローチに国連が乗らないと高をくくるか。NAMMCOにすがりつくか。先方は困惑しそうですが・・。あるいは、カリコム、太平洋島嶼国など「ジゾクテキリヨウ」グループの寄せ集めから成る新機関$ン立を真剣に考え始めるか。今までは誰もが(狂信者を除き)ブラフだとわかっていましたからね・・。体裁だけで中身のない張りぼてになるにしろ、思いのままになるを築くための投資は馬鹿にならないでしょう。何より、間に入って仲裁役に努めてきた米国も、さすがに黙ってはいないはずです。外務省にとっては「たかが捕鯨」なのに相当厄介な頭痛の種となりそうですな・・・
 いずれにしろ、モナコの提案が国連で検討されるに至った場合でも、いきなり総会決議(1/2ならハードルはIWCの3/4より大幅に下がる)ではなく、まずは海洋法条約とICRW(国際捕鯨取締条約)の整理のための合同作業部会設置が妥当なところでしょう。お株を完全に奪うわけにいきませんし・・。
 ただ、日本の市民の中には、この動きに対し、対立を先鋭化させてモラトリアムの再燃になるのではないかと危惧する声もあります。筆者もその点には同感です。
 南半球諸国、移動性野生動物の回遊範囲に領海・経済水域を持つ諸国には、日本の公海捕鯨に異を唱える正当な権利があります。そうはいっても、外圧でバッシングするやり方は、特に日本のような歴史と民族性(作られたものとはいえ・・)を持つ国に対しては、およそ逆効果にしかなりません。
 国際会議の場で、1億の人口が総て捕鯨業者と美食家のみから構成されていると言わんばかりの主張を業界関係者が平然と唱え、国内の検討会も密室で、批判派の聴取はアリバイ作りの形式のみという悲しい現実。
 しかし、たとえそれが現実であっても、捕鯨サークルの思う壺にはまってはいけません。国対国、文化対文化の図式に持ち込むことをやめ、日本の市民をバックアップすることが、いま何よりも世界に求められているのです。
 日本が韓国に負けないバランス感覚を取り戻し、自ら南極からの撤退の道を選ぶことができるように。

posted by カメクジラネコ at 06:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系
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