2012年06月05日

復興予算を食い物にしようとした調査捕鯨城下町・下関市

◇復興予算を食い物にしようとした盗人猛々しい調査捕鯨城下町・下関市

 いろいろタイミングを逃してしまったのですが、「クジラの季節」に差し掛かったところで言及しておきたいと思います。同市が6/9にもお祭り騒ぎをやるとか言ってることもありますし・・

 まずは、報道とそのソースである下関市中尾友昭市長の定例記者会見をもとに、一連の経緯を振り返ってみましょう。(以下、引用文の強調は筆者)

◎下関市中尾市長定例記者会見(1/16)
http://www2.city.shimonoseki.yamaguchi.jp/www/contents/1314838975920/files/20120116.pdf

A調査捕鯨船団下関入港について
昨年12月に下関を出港しました第25次南極海鯨類捕獲調査船団についてでございますが、南極海における調査終了後、母船・日新丸を含む調査船団の下関入港(帰港)につきまして、昨年来、水産庁、(財)日本鯨類研究所、共同船舶梶A等の関係機関・団体等に要望をしております。
先週10日の東京出張の折にも、鯨研、捕鯨協会、共同船舶等に出向きまして、この件についてお願いをして参りました。
その結果、関係機関等からも前向きなお返事をいただいていることから、状況を見守りつつ、その実現に向けて事務作業をすすめているところでございます。
ご承知の通り、現在、反捕鯨団体による妨害活動が実際に行われており、調査船団を送り出しております本市といたしましても、非常に心配をしているところですが、南極海からの帰港が実現し、調査副産物が下関に陸揚げされた場合には、冷凍倉庫の保管料 や 各地への配送料、入港に関する代理店等、乗組員のご家族、関係者等の宿泊 等により、推定約20億円程度の経済波及効果が見込まれると思われます。
今後も、「日本一のくじらのまち」として、調査船団の恒久的な基地化を目指して参りたいと考えております。 (引用)

■捕鯨船団が下関港入港へ (1/16,NHK)
http://www.nhk.or.jp/yamaguchi/lnews/4065296481.html (リンク切れ)
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=56831

南極海で調査捕鯨を行っている日本の船団が調査捕鯨を終えたあと山口県の下関港へ帰港しクジラの肉を荷揚げすることを検討していることが分かりました。
毎年冬に南極海で行われている調査捕鯨の船団は例年3月から4月にかけて母船が東京港や横浜港に寄ってクジラの肉を荷揚げし、下関港にはクジラを捕獲するキャッチャーボート2隻が帰港しています。
近代捕鯨の発祥地と知られる山口県下関市ではクジラを観光の振興に役立てようと調査捕鯨を行っている日本鯨類研究所にすべての船を下関港に帰港させるよう求めていました。
その結果、研究所側から現在、南極海で調査捕鯨を行っている4隻の船団を下関港に入港させることを検討しているという回答が寄せられました。
下関市水産課によりますと調査捕鯨で捕獲される予定のおよそ900頭のクジラがすべて下関港に荷揚げされた場合、クジラの肉の売り上げや船の乗組員の宿泊費などでおよそ20億円の経済効果が期待できるということです。
下関市では今後、クジラの肉を保存する施設を確保するとともに船団の警備計画をまとめるなど準備を進める方針です。(引用)

■調査捕鯨船団が下関帰港へ (1/16,山口放送)
http://kry.co.jp/news/news8701737.html (リンク切れ)
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=56831

下関市の中尾市長は現在、南極海で調査捕鯨中の母船「日新丸」などが、この春、下関に帰港する見込みになったと発表した。
中尾市長は『(関係機関は)できれば下関に入港させたいという、前向きな返事を頂いている。状況を見守りつつ、事務作業を進めている』と話した。
下関に帰港する見通しとなったのは、調査母船「日新丸」やキャッチャーボートなど現在、南極海にいる調査捕鯨船団だ。
捕鯨基地として発展した下関市は調査捕鯨船団の母港を目指しているが、先週、日本鯨類研究所などから今年春の帰港について「前向きな回答を得た」という。
下関への帰港は3年ぶり。
ただし、反捕鯨団体「シーシェパード」による妨害の状況によっては取りやめになる可能性もある。
中尾市長は『IWCで認められた正当な調査活動。下関としてできることは限られているが、市民と一緒になって、アピールしていかなければならない』と話している。
調査捕鯨船団の帰港は、3月から4月ごろの予定。
帰港にあわせて、下関市では、イベントを開催し調査捕鯨への理解を呼びかけることにしている。 (引用)

■中尾・下関市長:調査捕鯨船団、下関港への入港要望 経済効果見込む (1/17,毎日山口版)
http://mainichi.jp/area/yamaguchi/news/20120117ddlk35010310000c.html (リンク切れ)
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=56835

下関市の中尾友昭市長は16日の定例記者会見で、南極海で調査捕鯨活動中の日本鯨類研究所や捕鯨船の運航会社などに対し、母船・日新丸を含む調査船団の下関港への入港を要望したと発表した。
南極海での調査捕鯨では、鯨肉などの副産物約3000トンを持ち帰る予定。近年、副産物は東京都で陸揚げされているが、市は副産物全てが下関港に陸揚げされた場合、市内での販売や冷凍倉庫での保管、乗組員の宿泊などで約20億円の経済効果があると見込む。市水産課は「下関市は、日新丸の母港である因島(広島県)に近い。船団にとっても、東京都に寄港して因島に帰るよりも便利ではないか」と説明する。
中尾市長によると、10日に東京出張した際、鯨研や捕鯨協会、共同船舶などに出向いて要望。その際、各機関・企業から「下関に入港させたい」など前向きな発言があったという。中尾市長は「下関市の鯨によるまちづくりが認められた。調査船団の恒久的な基地化を目指す」と語る。
ただ、調査船団は反捕鯨団体「シー・シェパード」による妨害行為を受けており、船の被害状況次第では帰国後も海上保安庁など捜査機関による検証のため東京都に入港しなければならず、下関港への入港は未定だ。(引用)

■捕鯨団、下関帰港に前向き (2/4,中国新聞)
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201202040019.html (リンク切れ)

下関市の中尾友昭市長は、南極海で調査捕鯨活動中の船団が、ことしは下関港へ帰港する可能性が高いとの見通しを示した。関係先との連絡で好感触を得たという。反捕鯨団体の妨害で途絶えている下関帰港は実現すれば3年ぶり。鯨肉の水揚げなどにより、試算では20億円の経済効果が見込まれる。
船団は母船・日新丸や目視採集船・勇新丸など計4隻。約900頭の鯨肉約3千トンを持ち帰る。毎年春に、母船は東京港で鯨肉を水揚げした後に母港の尾道市因島に、目視採集船は下関市に帰港をしている。
中尾市長は1月に上京した際、日本鯨類研究所(東京)や捕鯨船運航会社の共同船舶(同)などから「下関への入港を前向きに検討している」と伝えられた。今回は母船も含めて下関に帰港させ、水揚げを促す狙いという。
市水産課の試算では、鯨肉全てが下関市で水揚げされた場合、倉庫での保管や配送、鯨肉販売、関係者の宿泊などで20億円の経済効果が期待されるという。市は式典も開くことも検討している。
ただ、船団は反捕鯨団体「シー・シェパード」から妨害行為を受けるなどしており、下関港帰港の実現にはまだ流動的な要素も残っている。(引用)

◎下関市中尾市長定例記者会見(3/12)

B日新丸の帰港について
次に、話は変わりまして、調査捕鯨船団、日新丸の帰港についてです。
下関市は、市の動物を「くじら」と制定し、「日本一のくじらのまち」を目指し、母船・日新丸を含む調査捕鯨船団の基地化を目標にした「くじら文化発信事業」に取り組んでいます。
この度の議会の代表質問でも述べましたが、大変残念ながら、先般、共同船舶鰍ゥら、「妨害活動や陸揚げ後の配送、保管等諸問題から共同船舶側の事情により、今回の下関帰港は見送らざる得ない状況となった」という報告を受けています。
この度の下関港に帰港しないという決定は、帰港するのではという期待も大きかっただけに、大変残念なことではありますが、冷静に受け止め、次に繋げていきたいと考えています。
共同船舶鰍ニしては、最後まで、下関港に帰港したいと考えていただいていたようですが、荷揚体制、流通体制等により経費がかなり負担になる、ということが、下関港に帰港し、荷揚することの障害になったようです。
この荷揚体制、流通体制等に大きな経費がかかるということは、大きな課題でありますが、反対に、これがクリアできれば、今後の下関港への帰港、さらに調査捕鯨船団鰍フ基地化ということに、大いに期待もできるものと考えます。
下関市へのくじら肉の荷揚げ、調査捕鯨船団の帰港、基地化は下関市に大きな経済効果をもたらすものです。
「日本一のくじらのまち」を目指す下関市として、私としては、それらの問題を解決すべき、民間も含めた協議会を作って、その中で検討できないか、など、ひとつひとつ課題をクリアしていき、下関港への調査捕鯨船団の帰港、くじら肉の荷揚げ、ひいては調査捕鯨船団の基地化を目指していきたいと考えています。

■調査捕鯨:南極海調査船団の日新丸、下関寄港断念 (3/13,毎日山口版)
http://mainichi.jp/area/yamaguchi/news/20120313ddlk35040352000c.html

下関市の中尾友昭市長は12日の定例記者会見で、南極海から帰国中の調査捕鯨船団のうち、母船・日新丸が下関港に寄港しないことを明らかにした。
これまで市は、下関港が同船団の基地になれば鯨肉などの副産物の陸揚げと船員の宿泊で大きな経済効果が期待できるとして、捕鯨船を運航する「共同船舶」などに寄港を要望してきた。しかし、同社は「下関で陸揚げした場合、流通コストがかかる」などとして市に寄港断念を伝えてきたという。
これを受けて中尾市長は、調査捕鯨船団の誘致に向けた協議会を近く設置すると表明。メンバーは荷役や鯨肉取扱業者らを想定しており「鯨肉の流通拠点となれば市にとってビッグチャンスだ。協議会では(流通における)問題を話し合いたい」としていた。(引用)

■南極海捕鯨類捕獲調査船団 下関寄港を断念 (3/13,山口新聞)
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2012/0308/6.html

下関市の中尾友昭市長は7日、南極海で調査捕鯨に当たっている鯨類捕獲調査船団が調査終了後の下関寄港を断念したと明らかにした。
市は調査母船「日新丸」を含む船団の下関寄港を日本鯨類研究所などに要望して、1月に前向きな回答を得たと説明していた。しかし、船団を運航する共同船舶(東京都)が、調査の副産物として陸揚げする鯨肉の販売や配送で問題があるなどとして辞退を申し入れた。(引用)

 この件は、flagburnerさんが丁寧に追ってくれ、的確に問題点を指摘してくれています。

■中尾 友昭下関市市長の下関港「調査捕鯨」団基地化計画?|flagburner's blog(仮)
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/63f388ec5de4364d6979e3020a0d7381

「調査捕鯨」団側の言い分がどこまで本当か不明だけど、仮に「荷揚体制、流通体制等により経費がかなり負担になる」ってのが真実だとすれば、そう簡単に解決できる問題じゃないかと。
なにしろ、鯨肉の需要自体伸びる気配がない以上、設備投資する資金も出しづらいし。
奇特な資産家や日本政府からの支援が行われない限り・・・。
つか、下関港で「調査捕鯨」団が行う事業の多くを行うとなると、今まで東京で日新丸の積荷(要は鯨肉)を扱っていた業者があーだこーだ言う気がする。(引用)

 この東京(鯨研・共同船舶・水産庁──いわゆる「捕鯨サークル」)と下関の上記のやり取りを見ると、非常に不可解な点があることに気づきます。
 まるで、今まで一度も下関への帰港がなかったかのよう。ところが、実際にはflagburnerさんが指摘されたように、調査捕鯨船団は3年前の2009年にも、下関に帰港したことがあるのです。6年前の2006年・金沢帰港時には、ほぼ計画どおりの捕獲数でした。3年前は、クロミンク679頭+ナガス1頭。今回はクロミンク266頭+ナガス1頭。

 ここで少し脱線。


■第22次南極海鯨類捕獲調査船団(平成20年度)の入港について(水産庁)
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/enyou/090413.html
■2011年度南極海鯨類捕獲調査の調査航海の終了について(水産庁)
http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/enyou/120331.html


 どうでもいいけど、検索しづらいからフレーズ変えるのやめてほしいんだけどね。福島関連になると、資料の置き場所も頻繁に引っ越されますが・・
 さて、3年前、SSは16日間妨害を行ったとのことですが、当時10億も20億もSS対策予算を注ぎ込むことはしていませんでした。しかし、生産量はわずかに計画に達しなかった程度で済んでいました。
 で、多額の予算が付くようになった今年の水産庁のプレスリリースには、以下の記述があります。

捕獲調査そのものが、直接の妨害を受けることはなく、計画どおりの日程で調査は実施されました。(引用)
 莫大な国家予算を投じ、万全の対策を投じたおかげで妨害の影響を受けなかった──ということなんでしょうが、蓋を開ければ計画の1/3というトホホな有様・・。純粋に科学調査として見るなら、お粗末極まりない手法といわざるを得ません。調査・測定に影響を及ぼす外部要因の見積もりが甘く、データがまともに取れず精度が大きくぐらつくことがはっきりした以上、まともな研究者であれば計画そのものを変更するはずです。
 もちろん、円滑化事業の名目で多額の税金が充てられたはずなのに、それに見合う成果が上がるどころか、逆の結果を招いていることが最大の問題ですが。消費増税が話題になっているときに、まさに非効率の極み。
 もっとも、科学研究など最初から眼中になく、「見て見て! エコテロリスト相手にこんなにがんばっているんだヨ!」という具合に広報を目的とするなら、話は別ですが。その場合、費用対効果の目安となるのは、副産物の売れ行きということになるんでしょうけどね・・・

 話を戻しましょう。
 捕鯨サークル側の言い分、「荷揚体制、流通体制等により経費がかなり負担になる」は、少なくとも3年前には下関への帰港でも何の問題もなく、妥当な範囲内に収まっていたものが、今年は情勢が一変し、大井と下関との間で格差が生じるに至ったことを意味します。
 取扱量で見れば、今回の方が3年前より圧倒的に少ないのですから、下関側のキャパシティの問題ではありません。東京よりも下関の方が荷揚コストが割高、というのもおかしな話です。
 下関港は国内主要8港の1つに数えられ、金沢より格上のはずなのです。そして、6年前の金沢港帰港時は計画どおりの生産量でした。しかも、下関港は中尾市長が別の会見の中で「スピードを重視したサービスを展開し、荷主の信頼と評価を得ている」とセールスポイントを述べているくらいで、大井と比べて荷揚効率が圧倒的に劣るなどとはいえないはず。

 余談ですが、中尾氏は「積荷のチェックを簡素化してくれ」と国に強く要望している模様。別に後ろ暗いモノを取り扱っている、というわけではないでしょうにねえ・・・


◎下関市中尾市長定例記者会見(1/30)
http://www2.city.shimonoseki.yamaguchi.jp/www/contents/1314838975920/files/20120130.pdf


 つまり、断念の理由として荷揚体制を持ち出すことには、明らかに不合理な点があります。

 では、流通体制についてはどうでしょうか?

 これも、6年前、3年前のケースを考えれば、きわめて不合理といわざるをえません。
 鯨肉需要は西高東低で、中でも下関市周辺や北九州地方の需要が(相対的に)高いことから、下関はむしろ荷卸港としては好適地のはず。市長も「因島にも近い」とメリットを挙げています。

 ここで、捕鯨サークルの立場に立って好意的な(都合のいい)解釈をしてあげることにしましょう。

 実際に大井に比べて下関の方が流通体制の点で不利になる合理的な理由として考えられるのは、鯨肉需要がここ3年で急速に均質化し、西で下がって東で伸びたとする解釈。牽引役は、東京都心の高級料亭を中心とするグルメ、そして学校給食共同船舶の入札会で高級部位だけが2年前以上の価格で取引され、売り切れた(他は安値でも売れ残った)という事実も、そうした観測を裏付けるかもしれません。水産官僚自身も認めていた一部地域限定の食習慣から、格差社会を象徴する高級嗜好品&かつてのパン・牛乳・牛肉などと同等に位置づけられる国家の戦略的食糧へと、すっかり変質してしまったわけです。
 もう一点、共同船舶は自社の冷凍倉庫"でも"鯨肉を2年は保管していることを白状したわけですが、自社ないしコネの利く関係企業の冷凍倉庫を使用することで、コストを市場の適正価格より大幅に抑えられた、ということが挙げられるかもしれません。何しろ、帳簿が真っ赤っかの状態ですからね・・・

 ……繰り返しますが、これ、好意的な解釈ですよ。

 3年前にOKだったのがどうして?? という疑問に比べると、かなり苦しい言い訳です。「前向きに検討」するまでもなくわかっていたはずのことですし。
 ついでにいえば、上記が理由だとすると、下関が期待する今後の母港化の見込みは限りなくゼロに等しいでしょうね。


 もう一つの合理的な解釈、それはこの取って付けたような言い訳がデタラメだということ。
 報道を見ても、サークル側のコメントはあの鯨肉土産$゙盗事件のときと同様、二転三転していますし、ね・・。
 いくつかのマスコミ報道を受け、捕鯨サークルがある種の批判≠警戒し、適当に言いつくろってごまかした可能性があります。


 その件に触れる前に、下関市より入手した資料をご紹介しましょう。


shimonoseki.png

※ 20億円の経済効果内訳
 (南極海鯨類捕獲調査副産物3千トンが全て下関に陸揚げされた想定)
 @下関市内での鯨肉販売額(500トン) ・・・・・・・・・         約10億円
 A冷凍倉庫の入出庫手数料・保管料  ・・・・・・・・・・           約4億円
 B下関から東京、大阪等への配送料  ・・・・・・・・・・           約3億円
 C入港に係る代理店、式典、家族・関係者宿泊・飲食その他・約3億円
                                      計約20億円


 ご回答をお寄せいただいたのは、産業経済部水産課の岸本充弘氏。地元では鯨博士としても知られているようで、『関門鯨産業文化史』など捕鯨関連の著書もあります。中尾市長や林芳正議員の捕鯨関連ブレーンを担っている方かもしれませんね。

■山口の100人:/5 鯨と生きる 下関市係長・鯨博士、岸本充弘さん /山口(3/7,毎日山口版)
http://mainichi.jp/area/yamaguchi/news/20120307ddlk35040422000c.html
■下関における鯨産業発達史(岸本充弘/下関市立大学)
http://www.shimonoseki-cu.ac.jp/grad/paper/002001kisimoto.pdf

 捕鯨史に関して一言付け加えると、西海捕鯨は古式捕鯨の中でも乱獲色が非常に濃かったことも指摘されています。また、近代捕鯨史の文脈では、日本政府がIWCの場では認めているところの過去の乱獲と日本企業の責任について言及が見受けられないところを見ると、やはり過去の栄光を夢見ているだけで反省の色はまったくないのではないかと、疑ってしまいますが・・・

 こちらの請求に対し、送られてきたのは、A4の紙たった1枚。
 すぐにいくつもの疑問が思い浮かびました。


1.「数字の根拠」はこのたった1枚の紙切れに記載された数行の情報のみなのか?


 筆者が公開を要求した文書は20億の算定の「根拠となる資料すべて」でした。条例の主旨を考えれば、これ以外にメモすらも存在しないということになりますが・・。
 これでは、担当者が頭の中でざっくり弾き出した数字と理解するしかありません。それが、報道された中尾会見の中身だったということです。
 あまりにもテキトーすぎますね。

 最近でも、スカイツリーの経済効果約1700億円(東京都及び墨田区)と報道され、話題を呼びました。こうした数字はどうやって算出されているのでしょう?
 よく耳にする例を挙げると、今年’12年春季のプロ野球沖縄キャンプの経済効果の予想が85億円。数字自体は下関の4倍以上ですが、むしろ捕鯨船帰港効果の大きさの方が意外な印象ですね・・。この数字の場合、沖縄県がりゅうぎん総合研究所という銀行系シンクタンクの調査レポートに基づいて発表しているわけです。こうした数字は、選手・球団関係者及び観客による宿泊・飲食やグッズ購入などの直接支出効果、それらの物品・サービス販売業による原材料購入などから成る一次間接波及効果、それら関連産業の雇用・所得増によって想定される消費拡大に伴う二次間接波及効果等を丹念に試算し、積み上げて求められます。以下のリンクも参考例としてご参照。


■沖縄県内における 2012 年プロ野球春季キャンプ経済効果の予想(りゅうぎん総合研究所)
http://www.ryugin.co.jp/ryugin_souken/s_report/report/pdf/508.pdf
http://www.ryugin.co.jp/ryugin_souken/s_report/report/pdf/502.pdf


 20億円。宝くじと比較してもしょーがないけど、地方自治体の財政規模と比べても、決して小さくない数字ですね。報道でこの数字を目にした方は、同じくらい緻密な試算に違いないと、まさかペラ1枚でぶち上げられたなんて誰も思わなかったでしょうね。
 中尾市長の発表とその報道が、下関市民を含む一般に大きな誤解を招いたことは明らかです。

2.算定にあたって関係者にヒアリングを行ったか? その相手は??

 経済効果の試算に当たって当然行われるべきこと。本来なら、開示資料の中にヒアリングの結果もあるはずなんですけどね。事業者名が墨塗りであったとしても。
 その中に捕鯨サークル関係者が含まれていたかどうかも気になりますが・・


3.@の販売額10億円に、事業実施者による直接販売額は含まれるか?

 金額は経済効果の半分を占めますが、共同船舶の売上が相当の比率を占めているとしたら、「下関で動くお金」であったとしても、それで恩恵を受けているのは東京の事業者、ということになります。


4.A冷凍倉庫の入出庫手数料・保管料4億円の内訳について。


 保管量・保管期間をどの程度と見積もっているか、手数料は当然それによって変わってきますからね。(相対的)鯨肉大消費地の下関市で鯨肉がどう動いているかは、そりゃ気になるところですよ・・。ついでに、共同船舶の収益構造の一端も、ここから見えてくるんじゃないかと、ちょびっと期待したんですがね。


5.Bの配送料3億円のうち、事業実施者・船員他関係者による支出額はいくらか?


 土産*竭閧ノも関わる話。小口よりもやはり卸業者及び共同船舶自身の配送が大半でしょうが。となると、受注する運送業者も当然大手ですわな。「下関で動くお金」といっても。


6.Cその他4億円の項目にある、式典等に対する下関市の負担額はいくらか?


 市内のイベント関連業者に落ちる金ではあれ(参加者に大盤振る舞いする鯨肉代は東京に持ってかれますが!)、元は下関市民の税金ということです。

 このように、下関が皮算用で弾いた20億が、1.で挙げた経済効果の他の事例とは、内容的にもおよそ隔たりのある数字であることがわかります。

7.この20億円の経済効果による、下関市内の民間企業の収益増加及び各産業における雇用者の所得増加はいくらとみているか?

 1.で取り上げた2次間接波及効果に当たりますが、下関市民にとって本来大事なのはそっちの数字のはず。
 開示資料からは、かなりの部分が東京の事業者の懐に入り、独りで儲けている印象を受けますね。20億という数字だけが一人歩きし、同市の経済発展、住民の雇用増にどれだけ役立つのか、このたった1枚の資料だけで市民を納得させることが出来ると、同市と中尾市長は考えているのでしょうか? 出張にいくら使ったのか知りませんが、誘致のロビイングのために市長自ら東京まで出向くだけの価値があると、市民に認めてもらえるでしょうか?

8.この20億円の経済効果による、下関市の税収増加はいくらとみているか?

 賢明な下関市民の皆さんは、この7.と8.にこそ関心があると、筆者は思うんですがね・・。


 9.今年度第三次補正予算にて調査捕鯨事業に対し「震災地域の復興」を名目に約23億円の補助金が宛がわれたことを知っているか?


 20億円という数字を目にして、筆者がすぐさま連想したのはこちらの数字でした。
中尾市長にぜひ直接おうかがいしたかったところです・・。


10.震災復興の名目で23億円の国庫補助がなされた事業に対し、震災による直接被害のない下関市が20億円の経済効果を理由に招致活動を行ったことについて、市民・国民・東北の被災者の理解が得られると考えるか?

 おそらく、良識のある下関市民の皆さんの大半は、この経緯を詳細に知ったなら、「恥ずかしいことだ」と認識するに違いないと、筆者は思います。


11.「すべての調査副産物を下関市で荷卸するように」との要望を取り下げ、船団の船の一部を東北地域に回して復興に役立てるよう、水産庁その他関係機関への要請を自ら修正する考えはあるか?


 これも中尾市長に問いただしたかった質問。
 石巻港は昨年末の時点で大型船舶の接岸まで一応可能になったとのことですが、インフラと水産加工業者の設備は壊滅状態のまま、立ち直っているというには程遠い状態です。
 しかし、せめて八戸辺りにでもキャッチャーを一隻回すなどして、東北の業者と市民に還元する仕組みを考えることはいくらでも出来たはず。

 311後に、「3千トンが全て下関に陸揚げされたら、うちは20億も潤ってホクホクだってわかったんだ! だから全部頂戴♪」といけしゃあしゃあと言ってのける神経には、耳を疑うばかりです。
 自分たちが潤うこと以外、被災地のことなどまるで頭にないということでしょう。同市在住の善良な市民であれば、きっと憤りを覚えるに違いありません。

 一点、昨年の第三次補正発表の際、漁業復興支援の名目で調査捕鯨支援に23億が付けられたことに対し、NGO・自然保護関係者らが抗議を行っています。その時点で、被災した石巻港に帰港できる可能性、石巻市等への経済効果・具体的な復興効果の数字まで、彼らが追及できなかったことは、筆者としては残念に思っています。

12.仮に、調査捕鯨船団が同市に帰港した場合、下関市および市内企業にもたらされた収益の一部を、東北の被災地域に還元する考えはあるか?

 私は気づけませんでしたが、さる方が中尾市長のモットーは「思いやり」であることをチェックされてました・・・


13.下関市選出の国会議員林芳正氏は調査捕鯨問題に関する国会質問を度々行っている。今回の経済効果の発表と同市への招致活動が、林議員の活動によって恩恵を受ける関係機関による、同氏の地盤への政治的な見返りと受け取られるおそれはないか?


 保守王国で知られる山口。共産党の機関紙の情報ですが、中尾氏と林氏との関係は良好のようですね。

林派は林一族の合同ガスなどをつかってテコ入れをつよめ中尾選対の主導権をとった。(引用)

■市民の反応に見る 市民の底力見せた下関市長選の結果(人民の星)
http://ww5.tiki.ne.jp/~people-hs/data/5365-3.html


 林氏の国会質問は、大体威勢のいいSS口撃ばっかりだけど・・。20億円という経済効果の数字を前面に押し出すことは、捕鯨サークル支援に熱心な林氏への直截的な見返りと受け止められても仕方ないでしょう。産経はじめマスコミはヨイショしてくれるから、叩かれる心配すらないと思っているかもしれませんが・・。


14.下関市はブラジルのサントス市と姉妹都市関係を結んでいる。相手国の文化と価値観を尊重し、友好関係を維持すべく、ブラジルを含む南米諸国による国際捕鯨委員会での南大西洋サンクチュアリ提案に対し反対しないよう、日本政府に働きかける考えはないのか?

−下関市姉妹友好都市紹介
http://www2.city.shimonoseki.yamaguchi.jp/icity/browser?ActionCode=content&ContentID=1335252938219&SiteID=0&ParentGenre=1000000000193


 同市と姉妹都市関係を結んでいるサントス市のあるブラジルは、IWCで南大西洋サンクチュアリを提案したサンチャゴ・グループ。相手の国の経済水域内を回遊する野生動物の保護に対してまで、差し出がましい口を挟むのは、「友好の証」とは到底いえないでしょう。
 ちなみに、ピッツバーグも米国ですね。


15.下関市が市の動物としてクジラを指定した件、南半球のクジラまで含むのか???

 市区町村等自治体の動物といえば、大雑把な分類群ではなく特定の種であり、市内に生息し、市民がその生態を身近に観察する機会があり、稀少性があって、市民による保護活動が行われ、保護条例とセットで指定されることが一般的。これでは、下関は野生動物保護に無知無関心な自治体との謗りを免れないでしょう。
 市民に身近なクジラということでいうと、同市海岸へのストランディングの報告が上がっているのがスナメリ(野生下でなければ海響館にも飼育個体がいるけど・・)。ご存知のとおり風前の灯にある稀少種。同じ山口県内で持ち上がっている上関原発計画によっても将来を脅かされています。くだらんイベントに注ぎ込んでいる金を、全部スナメリの保護にあてる考えはないのでしょうかね・・

 下関市に対しては、1月末に情報公開請求に入ったのですが、筆者もこの手の行政へのアプローチにあまり手馴れていないこともあり、最終的に資料を受け取るまで3週間もかかってしまいました。こちらも気を利かせたつもりで(出るとしたら、数ページにまたがるだろうと実際思っていたこともあり)切手を何枚も送ってあげたら、再送を要求されそれでまた時間を取られる始末(--;;  地方公務員といってもしっかり仕事をしてくれるもんですわい。まあ、不開示不服請求も覚悟していた割には、あっさり出してきた感じですが、ペラ1枚じゃね・・。

 もうお気づきになられた方もおられるでしょうが、筆者が迅速に動けず連中に察知されてしまい、サークル側に回避されてしまった可能性もなきにしもあらずです・・・
 もっとも、筆者がいくらリリースを流したところでマスコミに相手にされないのはわかっていたはず。
 捕鯨サークルを警戒させたのは、複数のメディアが調査捕鯨への復興・補正予算の「流用」を問題視する記事を出したことが大きいかもしれません。
 オトモダチ産経を除くまともなメディアは、明らかに捕鯨ニッポンV.S.シーシェパードの八百長プロレスごっこに飽きてきています。同じ手が何度も通用すると思わない方がいいでしょう。


 今回、下関側はロビー活動の甲斐もなく足をすくわれた格好ですが、中尾市長は恒久母校化招致活動をあきらめるつもりはないようですね。
 心配なのは、民主党が霞ヶ関に完全に屈服して政治主導が無意味なお題目になり、消費増税の中新幹線から高速4車線化から何でもアリの利益誘導型政治が復活の兆しを見せていること(それも一種の政治家主導には違いないけど・・)。次の国政選挙の結果次第では、我田引水し放題ということになりかねません。
 国の予算を投じた「カガク事業」に便乗し、族議員の地盤にカネを呼び込む動きは、そうした大規模公共事業の影に埋もれてしまいかねません。額はたとえ小さくても、世界中の人々が関心を寄せ、地球の裏側の自然にまで影響を及ぼすことなのですが・・・・・


 ちなみに、前号の鯨研通信で「盗人たけだけしい」と豪政府に向かって吠えたのは、上級水産官僚〜南極海で大乱獲を担った元捕鯨大手日水副社長〜いくつもの水産系外郭団体役員という具合に渡り歩いてきた官業癒着の象徴的存在にして究極のルサンチマンの固まり米澤邦男氏。日本の捕鯨政策は、「日本のクジラは俺のもの、南極のクジラも俺のもの」というスーパー・ジャイアンによって牛耳られてきたわけです・・・

 今回、311で筆者も脳が煮えまくっていたこともあり、下関市への質問状が間に合わないまま、サークル側に「荷揚と流通が理由だよん」とサラリと逃げられてしまいました(--;;
 とりあえず、市民の皆さんに情報として知っておいていただく意義はあるとの判断のもと、ここに報告させていただく次第です。


参考:
-実は情報公開が嫌いな民主党議員ら、捕鯨推進する議員名簿の公開拒否('10/4/8,PJNEWS)
http://www.pjnews.net/news/166/20100407_10
-"実質ゼロ"日本人の鯨肉消費の実態(拙HP)
http://www.kkneko.com/shohi.htm
-捕鯨ニッポンの縮図──下関市(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/17238001.html


*****

 この件がかな〜りトホホな形で失敗に終わったのも一因なのですが、暫定的に非公開としていたHPとブログをまた復活させることになりました。
 ブログ記事はより良質なコンテンツになるよう、改善しつつ再アップしていく予定です。
 優秀な若手が育ってくれて、国内にもっと優れたコンテンツが十分に供給されるようになった時点で、今度こそ店じまいしたいと思ってますが・・・・

posted by カメクジラネコ at 03:01| Comment(0) | TrackBack(1) | 社会科学系
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中尾 友昭下関市市長の下関港「調査捕鯨」団基地化計画?
Excerpt: 今シーズン分の南極海「調査捕鯨」が終わり、日本に向けて航行中(多分)の日新丸。 その日新丸の到着先について、中尾 友昭下関市市長が「日新丸は下関港に来ない」という旨の発言をしていた・・・。
Weblog: flagburner\'s blog(仮)
Tracked: 2012-06-07 21:09