◇福島第一原発事故とクジラ(WWについて)
■捕鯨の灯、再び 石巻・鮎川港 (11/15,朝日)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201111150700.html
操業海域はイルカ・クジラウォッチング業者のある銚子の目と鼻の先、つまり石巻ブランドなどではありません。
里海の利用という観点からいえば、零細沿岸漁業者の目の前でごっそり魚を掻っ攫っていく倣岸な沖合漁業者という構図が、そっくりそのまま適用されるわけですが・・
ゴリラと同様、父系社会で繁殖から外れた高齢個体による養育行動なども見られ、非常に興味深い社会生態で知られるツチクジラ。気になるのは、福島沖で事故から半年後も1,000Bq/kg超 (Cs134/137)など、非常に高い放射性物質の濃度が検出されている底生性魚類がツチクジラの主食となっていること。銚子沖の群れも、秋頃 には常磐・三陸沖を経由して北海道沖合まで北上します。北海道・千葉など自治体の公開している測定結果は今のところND(不検出=検出限界以下)。計測実施主体が地域捕鯨協会&中央水研で、可食部が多いはずなのに内臓など測定部位に関する情報が一切ないのも気になりますけどねぇ・・
ツッチーの生息域は深度500mないし1000mの深い大陸斜面のライン上なので、“まだ”出ていないのかもしれません。が、食物網を通じた拡散はゆっくりと進行していきます。夏に行われた東京海洋大学の調査では、ゴカイやクモヒトデで依然として高い水準にあるとのこと。クモヒトデがかなり高くなっているのは、同じスカベンジャータイプといっても基本デトリタス食のゴカイより屍肉食性がより強いためでしょう。海の深い部分にはもっと遅れて汚染が伝わっていくものと予想されます。
重金属や有機塩素に対する感覚も同様に鈍く、水産庁の言うことを鵜呑みにして論語をブチブチ呟いていれば放射能の害はないと思い込んでいる捕鯨業者と消費者は、「よかった、これで安心だ」と心置きなく頬張るんでしょう。製法を考えると、濃縮されて値が上がらないか、タレでの測定もした方がいい気がしますが・・大きなお世話かしら?
ま、不自然な捕食者の健康被害はあくまで自己責任なので、筆者の知ったこっちゃないのですが、やはり気になるのが海洋生態系への影響。誰が出荷停止をしてくれるでもなく、汚染された餌を食べて生きるしかない野生動物は、子供たちと同じく純然たる 原発事故の犠牲者。以前の記事でも書いたように、児童から出たBq/kgの値を食品の暫定規制値と比較するのは愚か者のやることです。
ツチクジラよりもっと浅い海域を生息圏とし常磐沖を回遊ルートとするハンドウイルカやスナメリに対する影響はより深刻。スナメリはただでさえ危険な状態にある絶滅危惧種。10月にNGO主催のイベントが銚子で開かれていますが、たとえ業者が震災・津波被害から立ち直ったとしても、肝腎のウォッチング対象となる野生動物のほうが無事でいられるかどうか・・と暗澹たる思いに駆られてしまいま す。
ウォッチング関連のイベントなどは、国内の野生動物に対する意識転換を促す活動として、意義がないとはいいません。が、それは本来息の長い活動を経て、10年、20年と時間をかけて少しずつ成果が見えはじめるもの。双方の譲歩のもとに調査捕鯨を段階的に削減し、十年毎に評価するという現実的な動きに対し、「けしからん」と異を唱える姿勢とは、むしろ対極に位置するアプローチです。
捕鯨サークルは、「捕鯨と観鯨」の両立も以前から謳っています。曰く、「観光牧場でステーキを食べるのと何が違うのか?」と。実際、アイスランドでも日本でも、観ながら食べることに何の疑問・違和感も感じないという層は、残念ながら少なくないようです。筆者には、クジラであれ他の動物・野鳥であれ、そういうことの出来るヒトたちとはお近づきになりたかないですけど・・。
標語に使われがちな里海という言葉も、「南極海は里海だ」と平気で豪語するとんでもない御用学者がいるように、むしろ業界は利用価値があると考えるでしょう。たとえ実態は地産地消に反するよその海への侵襲行為であったとしても。残念ながら現状では、南房総の外房捕鯨の「こどもたちに解剖を見学させるアプローチ」と、共存共栄路線の関係を歩むことになりかねません。
イルカやクジラたちの本当の願いは、「どうぞ観に来てください」でも「どうぞ食べに来てください」でもなく、「どうかきれいな、元通りの海に戻してください」だと、筆者は思います──
◇アンケート集計結果
http://www.kkneko.com/cgi-bin/enq.cgi?id=kkneko
ご協力いただいた皆様、ありがとうございましたm(_ _)m
アクセス数は延べで約350件。
賛成と反対の比率10:7を見ると、巷の業界・マスコミの偏向世論調査、あるいはTPPのそれと比べても、反対派がやや多いですな(笑)。もっとも、層の厚みを考えると、たった10件というのはかなり少ないと見るべきでしょう。反反捕鯨派の皆さんはなかなか賢明な方揃いのようで・・別にわざわざお答えいただいた方々が無思慮だと言ってるわけじゃないんですけど。。
で、当コンテンツを残すか、削除するかの希望は9:8とほぼ拮抗。
実はアンケートの組み方をちょっとマズッて、Q2−1〜3を必須回答項目にしなかったため、Q1とQ2のリンクが取れず(- -;; 賛成派用と反対派用、2種類用意しておくべきでしたね。残留が賛成派1名以上、反対派2名以上、ということだけしかわ かりません。「賛成反対云々より、日本の市民の多様な意見のひとつとして、残しておいたほうがよい」が6名いらっしゃいます が、ウヨガキと呼ぶのが失礼にあたる理性的な捕鯨賛成論者がいらっしゃらないとは限りませんし・・。残りの意見は、「市民の多様な意見はもう十分だから、ココは潰してかまわない」というところでしょうか。
Q2−2も「気に入らない」のがどちらのサイドなのかわからないですね(--;; アホでした。反対派の意見はB1・B2に集約されるものと勝手に認識しておったのですが・・。
Q3については、それぞれ多いと見るか少ないと見るか、訪問者の皆様の判断にお任せしたいと思います。SSと一緒にされるのはヤダと思っている人たちはいるかもしれませんが。Q3−2・B3がないと、返って同情したくなる気もしますね・・。本日の記事で、言い残しの多かったIFAW批判だけはしておきましたが、糧になる批判だったかどうかは、本人たち次第です。
Q4、2ptはご愛嬌だからよいとして、6ptで同率1位エントリーの6コンテンツについて、まず評価いただいたことに対して改めて御礼申し上げます。原発事故関連記事がトップでないのは少々残念ですが。
「ジュゴンとクジラ・署名プロジェクト」:これは必要でありながらまったく十分でないアプローチです。捕鯨問題に関わってき た内外のすべての団体が、真剣に反省すべき点だと思っています。「切り離したほうがいい」と判断している人たちが依然として 多いのでしょうが。ブログでは何度も書いてきましたが、筆者は動物の中でクジラが特に好きなわけではありません。捕鯨問題を 捕鯨問題特化で、他の文脈──環境、科学、動物福祉、食、政治、文化、国際化etc.と切り離して考えていいという見方・考え方は、筆者にはまったく出来ません。捕鯨に限らず、社会問題はすべてリンクしている、根っこは一つであるというのが筆者の不変 の認識です。捕鯨問題に関する発信をしてきた理由の一つは、投入されるエネルギーのバランス、国内で圧倒的に少なすぎ、海外 では不必要なまでに多すぎる点。そして、水産庁/捕鯨協会/国際PRが元CITES事務局長などを担いで展開してきた反反捕 鯨アプローチは、他の業界の手本となる輝かしい成功事例であり、反環境保護、反動物福祉、愛国・拡張主義のバイブル的存在・ 防波堤として、すべての問題の進展を遅らせている元凶であると同時に、逆の見方をすれば道を拓くための鍵でもある──という認識があったからです。“平等に殺せ”という、すべての自然、すべての命にとってマイナスでしかない非常に危険な思想が日本で蔓延っていることに対し、深い憂慮を覚えたからです。タイミングが遅かった、主催者への信任など、反省すべき点は多いですが、これは 「誰かがやらなければならないこと」、「誰もやっていない、やろうとしないこと」でした。「すでにやられている」「もっと優れたことがなされている」という人が多数であれば、筆者として言うことは何もありません。
クジラたちを脅かす海の環境破壊:ステータスのある関係者・NGOが、もっと優れたコンテンツを提供すべきという一言に尽きるでしょう。主観を言えば、ホントろくなのがない(--;;
捕鯨と科学と価値判断:これも票を入れてくださった方々に感謝しております。残念ながら、批判派はすべて内外の別の科学者・権威のステータスに依存するアプローチを取ってしまっているため、そもそも科学とは、価値判断とは何なのか、市民の立場から物申すことが非常に軽んじられているのが現状。捕鯨問題に限らず、原発から何からそうですが。科学者は確かにプロですが、プロの基準がまた学会の都合で決まったり、結局玉石混交ですし、彼らが提供するのはあくまで参照情報なのです。殺すか生かすか科学が決める、そんな暴挙を許してはなりません。
無価値に等しい調査捕鯨の科学性:上とセットで読んでいただきたい内容。筆者自身は検証に相当リソースを費やしたつもり。市民ブロガーの皆さん以外の連中は細かいツッコミをしないから、具体的にどこがどういう具合におかしいのかの判断が人任せなんだよねぇ・・
間引き必要説の大ウソ:市民ブロガーの皆さんのほうがよっぽど目ウロコ快刀乱麻な解説が多いので、ぜひそちらをチェックしてください。
捕鯨報道・マスメディアランキング:どうなんですかね。これも本来は曲がりなりにもジャーナリストと呼ばれる人の仕事だと思いますが・・。近年は報道の関心がさらに下がり論調も単調になってきたため、まとめ甲斐もなくなってきましたけど・・
さて、最後の設問ですが・・オプティミストが13に対し、筆者と同じペシミストが4という結果に。なお、捕鯨賛成派の方は全員が「はい」とお答えになった模様です。筆者より若い方がペシミスティックだったりすると、それはそれで悲しいのですが・・。「はい」を投じた皆様に一言。楽観的な展望を持つためには、絶対必要な前提条件があります。現実から決して目を逸らさないこと、です。クジラや他の野生動物たちへの被曝の影響について、まったく無反応な世間に対し、筆者は深い失望を覚えました。事態は非常に深刻です。数年のうちに、悲惨な様相が次第に明らかになってくるでしょう。また、主体的に情報を収集しようとしなければ、それらの情報は水面下に隠されてしまうでしょう。
原発・TPP・沖縄・・この国は何もかも悪い方向に向かっています。霞ヶ関も永田町も手の施しようがありません。目の隅で何も知らずに遊んでいるこどもたちの姿を捉えつつ、目に見えない放射線を、計測器片手に調べていると、放射能に対する恐怖というより、現実との乖離の感覚に、眩暈がするほどのやりきれなさを覚えます。物理的・生物学的な存在・ただの動物にすぎないニンゲンが、なおかつ万物の霊長であらんための、あるべき社会・目指すべき社会とは、あまりにも程遠い有様に。
未来に希望を持っている人たち、若い世代に対しては、酷な要求かもしれません。でも、ごまかしはいけない。見たくないこと、自分の予想、思い描く理想と違うからといって。
言葉やフィーリングは、ときに真実の姿を曇らせます。大体、そういうのは捕鯨サークル/国際PRの得意分野ですからね・・。エコ・動物フリーク層と感性の異なる人たちに対して、処方箋にはなりません。そして、現在は先方のほうが圧倒的多数派なのも残念ながら事実。
「未来があるなどと思うな」と他人に強いる権利は、筆者にはありません。
筆者に見つからなかった答え(それは少なくとも、すでに転がっているものでは絶対にない)を、これからの世代が見つける可能性がゼロだとも断言できません。
ただ、前を向いて歩き続けたい人たちには、前「だけ」を見ないように、と忠言しておきます。そのために、当サイトはしばらく残しておくことにします。
削除を熱望されていた反反捕鯨派の皆さんゴメンチャイ。予想より賢明な方々が多かったことには脱帽ですが。
2011年11月20日
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