2011年06月26日

水産庁はただちに調査捕鯨をやめ、調査捕ヨコエビをやれ!/捕鯨日本終了

 東電の発表のタイミングを考えると、そろそろ水産庁からストロンチウムの検査結果の報告があっていい頃合ですが・・・


◇水産庁はただちに調査捕鯨をやめ、調査捕ヨコエビをやれ!

■富山湾の異変とダム排砂問題:ヨコエビ|科学に佇む よしなごとかきこみ所
http://dormb.blog55.fc2.com/blog-entry-472.html
■第19回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『不可解な事実 〜黒部川ダム排砂問題〜』(制作:富山テレビ)|フジテレビ
http://www.fujitv.co.jp/b_hp/fnsaward/19th/10-129.html
■ザ・ベストテレビ2011 − 第1部 − (6/25,NHKBSP)
https://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20110625-10-16056 (リンク切れ)

 富山テレビが制作した、民放連の報道ドキュメンタリー部門の最優秀賞受賞作。本放送は昨年夏、1月にフジで、つい先日NHKBSで紹介されました。電力会社・漁業者・社会のかかわりを深く考えさせられる、311後に改めて観る価値のある番組でした。
 予算が非常に限られたローカル局でも、優れたドキュメンタリーが作れるということを証明した一方、別部門で自画自賛したNHKは、財政云々以前にもはや社会派ドキュメンタリーを作る力量をすっかり喪くしてしまったようです。最近太地等捕鯨関連の番組ばっかり流してますが、当事者の一方の裏側を追及する姿勢は欠片もなし。視聴者にますますわかりにくいだけのCGばっか凝ってるしね・・。
 ともかくこの番組、捕鯨問題ウォッチャーは必見。直結する様々な問題が内包され、示唆に富んでいます。
 筆者自身の感想の一つは、「コクだったら大喜びしそうだなあ・・・」
 北西太平洋に生息するニシコククジラはヒゲ鯨類の中でも最も絶滅が危惧される種の一つ。絶滅寸前にまで追いやった責任があるのはロシア・韓国・そして日本(古式・近代とも)の捕鯨業者。かつては瀬戸内海に繁殖場を持っていたという説もありますが、生息数が十分だったら、ヨコエビを適当に除去する“益獣”の役割を果たしてくれたかもしれません。ご存知ない方のために解説すると、コククジラのエサの取り方はやや特殊で、海底の砂泥をふくんで中に棲むヨコエビやゴカイ等の小動物をヒゲで濾し取ります。まあ、ヘドロに含まれる有害物質にはやられちゃうかもしれないけど・・。
 それにしても、誰の目にも明らかなダム排砂と漁業被害の関連性について、御用学者の検討委員会は「因果関係は立証できない」の一点張り。訴訟は和解でうやむやに。
 番組をご覧になった方は、カレイに群がる肉食化した大量のヨコエビに、映像的にもショックを受けたでしょう。最初の県の水産試験場の調査では、ヨコエビの日周行動を把握しないまま、ちょっと採泥器ですくっただけで「いませんでした」と公式に大量生息を認めず。そうしたデータが紙の資料としてテーブルの上に並べられ、エライ先生方がそいつを眺めて“科学的な結論”をまとめるわけですね・・
 こういうのは諫早干拓事業・原発の温廃水問題にも通じる話。そして、疑わしきは弱者(零細沿岸漁民・海の生態系)ではなく、強者(電力会社・ゼネコン)の利益に」というのが、水産庁を含む日本政府による科学的不確実性の解釈だったわけです。
 そうなると奇妙なのは、トンデモクジラ食害論ですね。一部のホットスポットを除いて、海棲哺乳類と漁業との競合という珍妙な仮説は証明されていません。トドのケースのように、個体数減少が逆に漁業被害を拡大したという報告もあるわけです。黒部ダム排砂問題に関わった委員がJARPN2の計画書/報告書を読んだら、どういう感想を口にするか、是非聞きたいものですな・・。
 要するに、国(水産庁)にとって、捕鯨業界は電力会社・ゼネコンと同じ側に位置づけられる存在だった、というだけの話。
 赤松元農相は「害があるのはクジラぐらい」とあまりにも子供じみた非科学的発言をしましたが、エチゼンクラゲ、ナルトビエイ、バラスト外来生物、そしてヨコエビと、漁業に深刻な打撃を与えている生物は枚挙に暇がありません(それも元はといえば人為的な環境異変に基づくものと考えられますが)。ヨコエビの研究者は全国の水産試験場にほんの2、3人とのこと。バカげた調査捕鯨に投じられる補助金は、全額ヨコエビ研究に回して然るべき。日本の沿岸漁業者全体の利益のためにも。
 漁業者といってひとくくりにできないのは、富山湾のダム排砂問題においても同じ。関西電力は下流の内水面漁業者には補償金を払って口止めし、河口の外側の刺し網漁業者は無視という、漁業者分断の手法をとりました。こうすることで、補償を最少に抑えられるうえ、水産庁・全漁連とはお互い敵に回らずに済むわけです。原発の立地補償、温廃水養殖事業は、まさに共存を演出する手法の最たるものでした。重大事故が起こってから、全漁連・水産庁は東電に向かって拳を振り回すパフォーマンスをしてますが、放射能汚染そのものではなく風評被害というフレーズにすべてを丸め込もうとするのは、やはり沿岸漁民・海の自然をなおざりにし、原発維持・推進政策に乗っかっているからだといえるでしょう。
 考えてみれば、黒部ダムは水力発電、原発と対置される自然エネルギーに違いありませんが、いま注目されている小水力とは対照的に、事業の構造はむしろ原発に近い側の国家的プロジェクト・大規模開発事業でした。
 構図は小規模分散型・市民主導型自然エネルギー VS 一極集中自然征服型・経済至上主義型・政官民一体利権型《不自然》エネルギー
 漁業もやはり同じ。海・魚の立場を優先できる《自然に優しい漁業》 VS 捕鯨や遠洋巻網等の《自然収奪型漁業》という構図があり、国は常に後者を優遇してきたわけです。
 「乱獲につながるから」という理由で近代装備の導入を拒み、素潜りの伝統を頑なに守り続ける漁業者の鑑にして誉れ、海女漁は、深刻な高齢化・後継者不足に喘いでいます。小遣い稼ぎの位置づけで収入は低く、水産庁や全漁連にはなおざりにされてきました。魚を育む禁漁区を維持してきた沿岸漁民も産廃事業者の進出に頭を悩まされています。調査捕鯨に毎年多額の補助金を施し、資源管理・伝統漁業の落第生太地にばかり肩入れする水産庁ですが、真の伝統に忠実な全国の零細漁業者を真剣に守る姿勢は見受けられません。
 東北ではおりしも復興水産特区構想が持ち上がり、捕鯨推進のA級戦犯小松正之氏もエールを送っていますが、水産界の構造改革はノルウェー、あるいは豪州・NZ型の厳格な資源管理が先行していて初めて意味があります民の前に官が変わらないと話になりません。旧態依然とした乱獲体質に手をつけずに新規参入だけを促せば、良心的な沿岸漁業者は更に窮地に追い込まれ、素人が一次的に地先の海を荒らして撤退し従業員をほっぽり出す悲惨な結果を招くでしょう。それはまさに、今なお水産行政を牛耳る大手の前身となった捕鯨事業者が、全国であっという間にクジラを獲り尽くしたかつての惨状を、東北の海・魚全体で再現することに他なりません。同時に、わずかに残っているモラルとともに、水産業そのものが壊滅することを意味します。TPP推進派の政官財界は、一次産業がどうなろうと知ったこっちゃないのでしょうが。


◇捕鯨日本終了(ネタ)

■The Implementation of UNGA Resolutions 61/105 and 64/72 in the Management of Deep-Sea Fisheries on the High Seas (〜東北大石井氏のTweet)
http://www.stateoftheocean.org/pdfs/61105-Implemention-finalreport.pdf
■福島第一原発事故と海の野生動物への影響
http://kkneko.sblo.jp/article/44489047.html
■クジラたちを脅かす海の環境破壊
http://www.kkneko.com/osen.htm

 4/4にコウナゴのヨウ素・セシウムの濃度に関する報道発表があったとき、筆者は津波に押し流される家々や、1号機・3号機の爆発の映像を目の当たりにしたときに次ぐ、激しい衝撃を覚えました。そして、数日待ちましたが、この数字が野生のクジラたちを始めとする海の自然にとってどういうことを意味するのか、注意喚起する声がまったく聞こえてこないことに、3度目のショックを受けました。
 計算は科学者でなくてもできます(小学生でもできます)。検算も科学者でなくてもできます。仮定に基づく試算ですが、その数字が何を意味するのかは、やはり科学者でなくても理解できます。そうでなくてはなりません。
 名古屋COP10からまだ半年しか経っていないのに・・・・
 東北沿岸では津波によって保管されていたPCBも流出しました。イルカ・クジラ・アザラシ等の海棲動物たちには、放射能との二重のインパクトが与えられることになります。混獲・捕鯨と合わせればまさにトリプルダメージ
 IWC科学委では、鯨類を取り巻く環境異変についてどのように取り上げられているでしょう? WWFIは、氷縁で採餌するクロミンククジラはシロクマやイッカク、アデリーペンギンなどと同様、温暖化の影響をシビアに受けると指摘しています。繁殖率でも個体数でもクロミンクより圧倒的に上のアデリーペンギンですが、一部の営巣地では減少が始まり、警鐘を鳴らす研究者もいます。IDCR・SOWER3周目の減少も、あるいは気候変動と関連するかもしれません。
 非科学的な調査捕鯨への自画自賛評価と対照的に、そして先に取り上げたダム排砂・ヨコエビ問題と同様に、日本側の抵抗で気候変動の影響は資源管理に組み込まれていません。他人事のようにチラッと触れられるだけ。また、汚染についても──これは煙草や医療被曝ないし自然放射線と原発事故による放射能汚染との関係をめぐる議論に通じるものなのですが──「統計的に呑まれる」という一言で表現されるように、実は考慮されていないのです。実際には、有機塩素にしろ放射性物質による晩発性障害にしろ、死亡率の数字には含まれない、時差を伴った繁殖率低下という非常に深刻な影響を及ぼします。いざ影響が表面化したタイミングで捕獲を中止しても、長期的に回復せず、場合によっては生息数が減少し続けることも十分起こり得るのです。野生動物の絶滅は歴史的にも、しばしばこうした汚染や生息地破壊と直接的捕獲とのセットによって引き起こされてきたのです。

 原発も、捕鯨も、ニンゲンの傲慢さの象徴でした。
 自然の多様性、種の多様性を蔑ろにする人間中心主義。
 科学の力で、原子も南極の自然も管理できるという奢り。
 世界中に放射能を撒き散らしながら、なおも便利な生活、グルメを追求したいという身勝手。

 個人的には、福島第一原発事故の影響は、捕鯨なんぞよりはるかに重大だと認識しています。ただ、当のニンゲンの子供すら疫学的実験台にされつつある中、社会としては野生動物の命どころではないでしょう。そしてまた、撒き散らされた放射能を回収したり、被曝した野生動物に医療処置を施す術もありません。
 福島沖からかなり離れた海域で漁獲された回遊性魚種でも汚染がすでに発覚していますが、捕食者への影響が本格的に顕れるのは半年から1年後。クジラなど長寿命の動物に被曝の影響が出るのは数年後。そして、まだ事故は収束すらしていません。汚染水の処理もトラブル続きでギリギリの綱渡り状態。早晩処理が間に合わなくなって低濃度♂染水を排出するか、梅雨後半の大雨ないし台風で自然にあふれ出すかするでしょう。メルトスルーした核燃料の残滓は、岩盤と遮蔽版で囲う程度のことしかできず(それさえ東電は株価を気にして遅らせようとしてますが・・)、地殻変動や地下水の流れを考えると、プルトニウムの半減期に比べれば瞬きする間でしかない数百年さえ、もつ保証は何もありません。
 世界で最も多様な種が棲む海と賞賛された日本の海は、もう死亡宣告されたも同然です。
 ニンゲンは本当に、クジラにも牛にも犬にも猫にも及ばない、どんな動物にも及ばない、どうしようもなく愚かな動物です。
 それでも、何年先に再開できるかもわからずその間どうしたらいいかと途方に暮れている被災した農民・漁民をほったらかして、いつ甲状腺癌にかかるクジを引くかと怯える母子を差し置いて、何の罪もなくただ被害に苦しめられる野生動物に追い討ちをかけるような、愚かというよりとことん醜い見下げ果てた真似だけはしてほしくありません。日本人という以前に、ニンゲンとして。


 もうひとつ、原発と同じくニンゲンの愚かさの象徴が。
 日米両政府は米軍普天間基地の辺野古移転で合意。
 クジラたちを始めとする東北の海の野生動物たちと同様、沖縄のジュゴンもまた、ニンゲンの愚かさの犠牲にされようとしている。
 事故や恒常的汚染があっても原子力推進、事故や恒常的騒音被害があっても軍備増強。
 ニンゲンは本当に、クジラにもジュゴンにも犬にも猫にも及ばない、どんな動物にも及ばない、どうしようもなく愚かな動物です。本当に。

追記:
 最近なかった明るいニュースといわれる小笠原世界自然遺産登録について、ツイートをこっちにも再掲しときます・・
 勧告したのはIUCN。現地調査に入ったのは豪州の野生生物研究者。環境省は北半球のザトウクジラの繁殖海域としての重要性も挙げた。
 南半球ザトウ(島嶼系群の稀少性は小笠原・沖縄のザトウと同列)を政治カードにして卑劣な脅し≠かける真似を、日本政府は二度としちゃダメ!!

posted by カメクジラネコ at 19:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系
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