2010年04月05日

「The Cove」騒動と捕鯨の町/鯨研のイタすぎる布教活動

◇「The Cove」騒動でますます虚飾の殻に閉じこもった捕鯨の町

 やっと下火になってきた感のある「The Cove」騒動。先日NHK−BSで放映されたアカデミー賞受賞式は(別に興味ないので例年ならチャンネル回さないんだけど)、長編ドキュメンタリー部門の受賞部分だけしっかりカットされてて(放送時間は余ってたのに!)、「さすが親方日の丸公共放送」という感じ。そういうことやってっから、表現の自由が保障されない民主主義後進国の烙印を押されるんですよ・・。
 アカデミー賞自体、アメリカ映画の発展を目的に設けられたもので、最初から米国中心・西洋文化圏中心のイベントなのはわかりきったこと。「The Cove」のみが特殊なのではありません。筆者自身は、NHKが「カットしなかった演出」の方に正直うんざりしました・・。外国語映画賞という一部門にノミネートすらされなかった作品群の中には、作品賞を受賞したハリウッド製に勝る優れたものがきっといくつもあるはず。すべての受賞作と賞そのものを批判し、「その程度のもの」と割り切ってサラリと流すんだったらまだわかります。

 でもねぇ・・。北野武や宮崎駿が「世界に認められた」と国民こぞって得意げになり、2年前にはダブル受賞を快挙と褒め称えたのはどこの国? むしろワールドワイドな権威性を認(求)めていたのは捕鯨ニッポンなんじゃないの? 科学・正統派文学(ノーベル賞)から大衆文芸(アカデミー賞や金獅子賞)に至るまで。興行的にどっぷり依存しておきながら、こーゆーときだけ白人批判を展開するご都合主義には辟易します。
 手法や表現の問題にしても同じ。ドキュメンタリーというジャンルに共通するテーマでこそあれ、この作品に限った話ではまったくありません。NHKが各国放送局から山ほど買ってる海外ドキュメンタリー中の、多数の一般人を含む出演者の顔にどれだけボカシが入ってる? 慰安婦訴訟番組で、シンゾーセンセに阿吽の呼吸で改編を求められ、ヘイコラ従った公共放送のチュウリツ編集方針に比べりゃ、よっぽどマシってもんでしょ。力づくで公開中止を迫るやり方は、社会問題を告発・啓発する各種のドキュメンタリーの制作者への圧力、表現の自由に対する脅威でしかありません。捕鯨文脈から切り離されれば、日本人だって誰もが頷くことのはず、ですが・・。
 作品内容が「偏っていた」、あるいは「つまらんかった」という批判は、筆者は当然あっていいと思います。批判するのももちろん表現の自由(法律に違反しない限り、ですが。他人の庭=自分の庭、自分ルール=法、匿名掲示板=裁判所、自分=判事/警察官というイタイ妄想にとりつかれた深刻な自我肥大症・ネット依存症の反反捕鯨粘着ウヨガキ園児らは論外)。筆者自身、捕鯨ヨイショ文芸、ヨイショ番組をテッテー的にこき下ろしてますからね〜(^^;; しかし、右翼団体や業界関係者による法的根拠のない告訴の脅しや嫌がらせを含む政治的圧力によって、上映・公開が中止になる事態まで招くようでは、日本における表現の自由はまさに危機的状況にあると言わざるを得ません。太地漁協と外野の反反捕鯨応援団や極右との相似性は、むしろこの問題の本質を表しているのかもしれませんが。
 そりゃね、ついこの間も名古屋港水族館にシャチを5億円で売り払った太地にとっちゃ、水族館の来客に重なる一般人にこーゆー都合の悪いものを観せられちゃ困るんでしょうよ。でも、自分たちの主張によっぽど自信がないと思われるだけじゃん。せめて、国内のネトウヨにしか受けないセンス最悪ユーチューブ動画や、グルメ評論家学者監修のエセ教養番組なんかじゃない、捕鯨産業の歴史的・文化的側面に焦点を当てた、第三者の客観的検証と海外の市民の観賞にも耐えるだけのドキュメンタリーを作らせりゃいいのにね。他の伝統的な農作業、漁労作業と同じように、淡々とイルカ猟の模様を撮影してさ。そういう風物詩的映像作品はゴマンと転がってるでしょ。ノミネート先は日本アカデミー賞でもかまわんから(ロイヤルティは元祖アカデミーに支払ってるそうだけど・・)。本当に“正しさ”に自信があるのなら。胸を張れるんだったら。
 ま、クジラ・イルカ問題をともかくタブー視する風潮“新たなブンカ”として醸成することが、彼らにとっては至上命題なのかもしれませんが・・・・
 そもそも南極海調査捕鯨は、科学の名の下に行われる文化と無縁な国策事業のハズです。むしろ、地産地消という我国にとってかけがえのない伝統、南半球諸国の人々が野生動物・海の自然との間で築いてきた大切な文化と相反する伝統文化破壊・侵害行為に他なりません。太地町は幾度も予算を組んでIWC年次総会に関係者を出席させ、異質な文化を破壊する事業が「自分たちの伝統文化を守る“防波堤”として必須だ」と訴えてきました。「自分たちの聖なる特殊なブンカだけは、他を差し置いて尊重されネバナラナイ」という独善的な主張を恥ずかしげもなく展開してきたわけです。
 しかし、「The Cove」騒動は、彼らのロンリのあまりに大きな矛盾を改めて浮き彫りにするものでした。国策調査捕鯨とわざわざ一蓮托生・表裏一体の存在にしてしまったことで、伝統の看板に返って大きながつき、対抗勢力の勢いを増して一層注目を浴びる結果につながったとさえいえるでしょう。
 同地のイルカ追い込み猟は、商業捕鯨モラトリアムを受けた代替生産として“無理やり”拡大された側面があるのも事実です。公海調査捕鯨撤退とセットの沿岸捕鯨再開という昨年までの合理的な仲裁案が通っていたなら、批判を浴びやすいイルカ猟から捕鯨船によるミンク・ゴンドウ捕獲に切り替え、操業規模を伝統的な水準にまで抑えることで、国内外の多数の“まともな批判派”からは一定の理解を取り付けることができたでしょう。SSCSのような過激な団体も、やはりターゲットを失い寄付収入を大きく減らして、コソコソ隠れて映画を撮ったり逮捕覚悟で抗議船を送りつける余裕はもうなくなるでしょうし。
 結局、政・官・業・学から成る捕鯨サークルにとって、太地は《タメにするだけの宣伝の道具》=ブランドにすぎなかったということです。
 アイヌ、沖縄、在日外国人、同和出身者、障害者などへの陰湿な差別が未だに残り、格差が広がる中で不正規労働者をはじめたくさんの人々が弱者として社会から切り捨てられている自国の現状をまるっきり無視し、動物の取り扱いの問題こそがサベツ/ビョウドウ問題の最大のテーマであると被害者ヅラして声高に叫ぶ国。クジラを白人/IQの高いヒト、ウシを東洋人/IQの低いヒトに勝手に見立て、ヒト以外の動物の個体をすべて恣意的な生殺与奪の状態──店頭やネットで衝動買いした仔犬仔猫をニャンコ可愛がりしたり、飽きてポイして税金で炭酸ガス殺処分してもらったり、水族館に高値で売って客寄せアイドルにしたり、45分もかけてなぶり殺したりetc.etc.──に置くことが“ビョウドウ”であるとのおぞまじいリンリ/すさまじいロンリを世界に向けて説法する国。経済的にいくら豊かでも心の寒々しい人権後進国・捕鯨ニッポン。
 文化や人種差別問題へのすり替えは、日本捕鯨協会の委託を受けた広告屋・国際PRの梅崎義人氏(現水産ジャーナリストの会会長)らが考案したものですが、マスコミや知識人層と呼ばれる人々の多くがプロパガンダをすんなり受け入れてしまった、そういう土壌がこの国にあったという紛れもない事実は、日本人としてたいへん悲しいことです。
 日本という国の内省力、自省力の“完璧なる欠如”が、捕鯨というコンテキストに集約されていることには、改めて驚きを感じるばかり。核持込や沖縄米軍基地問題をはじめ重要政策での対米追従のツケを、南半球の野生動物に背負わせることでバランスを取っているということなんですかね・・。いっつも親分アメリカに尻尾を振ってヘロヘロ付き従い、親分がケンカを吹っかけた相手にゃけしかけられるままに吠えてみせるのに、器によそわれたドッグフードを飼い主が下げようとしたら、歯をむき出して怒る典型的なバカイヌ。ご飯を出してもらったのはもう半世紀以上前、鎖につながれたばかりの頃だけど・・・
 筆者の主張になぞ耳を貸したくないというヒトのために、環境問題に造詣の深い在日外国人としてこれまで日本の捕鯨の誰よりも心強い味方だったC・W・ニコル氏の意見を紹介しておきましょう。

■国際シンポジウム:捕鯨の文化歴史話し合う 神奈川大で始まる /神奈川 (3/28,毎日神奈川)
http://mainichi.jp/area/kanagawa/news/20100328ddlk14040166000c.html (リンク切れ)
■C.W.ニコルさん「勇魚の人々」を熱く語る-神奈川大学- (個人ブログ)
http://s-miyamoto.cocolog-nifty.com/nlc28m02/2010/03/cwwhalers-4b9d.html


「必要以上に迷惑をかけないことだ」
(引用)

 いいことおっしゃってるじゃないですか。
 映画「The Cove」はドキュメンタリーといっても、確かに情緒的なアプローチであることは否定できません。ルサンチマンが見え隠れするノスタルジックなブンカ論も、十分に情緒的・感傷的ですけどねぇ。いずれにしろ、殻に閉じこもったまま、外の世界の変化に見て見ぬふりをして関わりを拒むのは、こどものやることです。ソロモン諸島でのイルカ解放の動きなど、映画は既に国際社会に対して様々な影響を及ぼしているのですから。
 なお、“まともな批判派”による理性的なアプローチに関しては以下をご参照。

■乱獲の脅威にさらされるクジラ、イルカ、ネズミイルカ (3/23,JWCS)
http://wildlife.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-fead.html
■異常に多い混獲数/日韓Jストック (4/4,Yahoo!掲示板 - 環境と自然 - さあ!諸君!捕鯨問題だ!)
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=43320

 

◇“哀しいお笑い鯨人集団”鯨研がまたまた妙チクリンな布教活動を!?

■ICR comments on the paper “Are Antarctic minke whales unusually abundant because of 20th century whaling? By Ruegg et al. Molecular Ecology. (1/20,鯨研)
http://www.icrwhale.org/100120Release.htm
■米大学のDNAを用いたクロミンククジラ初期資源推定論文について (3/31,〃)
http://icrwhale.org/100331ReleaseJp.htm

 英文も結構ひどいけど、2ヵ月もたってやっと載せた日本語版は輪をかけてボロボロですね・・・


>本論文の一部で著者らは「漁業との競争を軽減するため及び過剰捕獲した鯨類の回復をサポートするためクロミンククジラを間引くことを主張する組織がある」としている。これは南極海で行われているJARPAIIの誤解に過ぎない。
(引用)

 国会議員から“B層”に至るまで誤解とやらを盛大に蔓延させ、放置しているのは一体どこの国???
 ていうか、言いだしっぺを未だに運営サイトで担いでるのはどちらさんですか?? もう喜寿も過ぎた大隈御大の30年も昔の牧歌的主張が、日進月歩の遺伝学研究の最新の成果にかなうはずがないのです。
 IWC−SCの報告・評価を“曲訳”しまくり、科学・生物学界全般の潮流からすっかり置き去りにされ、孤立しながらも、特権集団の一翼を担う御用機関として政治的に庇護され、自画自賛と国粋主義者顔負けの戦闘的表現あふれる、ふんだんな予算で作られた演出映像付きのプレスリリースを国内マスコミに配信し続ける奇妙奇天烈な団体は、やはり科学研究組織というより宗教教団にしか見えません。免税されてなくたって、国から毎年莫大な補助金もらって、常識ハズレの実質無利子融資もオトモダチの外郭団体から受けてるしねぇ・・。ウヨガキ君らから捕鯨サークルへの賽銭(ワンコイン募金)はたいしたことないだろけど、政治家たちから受け取ってる“お布施”は一体いくらなんだろね?
 これじゃ、理系研究者の方を含む市民の主張のほうがはるかに説得力がありますよ(以下、リンク先ご参照)。筆者のは別に無視してくれて結構ですが・・

■論文に反論するときはその雑誌上で議論すべきだ (4/2,ドイツ語好きの化学者のメモ)
http://blogs.yahoo.co.jp/marburg_aromatics_chem/63063172.html
■Re: お、珍しく鯨研が“科学”で意見w (4/4,Yahoo!掲示板 - 環境と自然 - さあ!諸君!捕鯨問題だ!)
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=43315&thr=43315&cur=43315
■DNAによる初期資源量推定 (4/4,〃)
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=43316&thr=41098&cur=41098&dir=d
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=43324&thr=43316&cur=43316&dir=d
■The end of the Krill Surplus Hypothesis? (1/25,flagburner's blog(仮))
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/7b85221dcb67c1525083986924511bb1
■ハクビシンとクジラ (3/9,拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/36133867.html

 もともと低血圧の筆者、歯抜いたせいで頭がクラクラしてます(--;; てなわけで手抜き・・・m(_ _)m

posted by カメクジラネコ at 02:09| Comment(5) | TrackBack(0) | 社会科学系
この記事へのコメント
今までも指摘されていますが、日本人の特徴として、「所属集団のソトからの指摘・批判を侮辱と感じ、意地でも立場を逆転させようとする」があります。
捕鯨関連の報道でも、ある日本人が、「子どものときは他に食べるものがなかったから食べた。今は食べたいとは思わないが、アメリカ人から道徳について説教されるのは気に入らない」と言っていました。

「The Cove」で問題のイルカ漁のシーンは5分もなく、主題は水銀汚染問題と、隠し撮りテクニックの紹介です。「隠し撮りを余儀なくされた」という流れは、純粋な好奇心の追求とも言えます。

水銀の場合、検出された総水銀濃度の信憑性がやり玉にあがっています。2000 ppm (正確には 1980 μg/g)という最高値は、実際はイルカ肝臓塩ゆで加工品で検出された値です。
肝臓は肉ではないと言う人もいますが、2008年にJAS法が改正されるまでは、肝臓などの可食内臓も食肉という分類だったはずで、少なくとも測定対象の肝臓加工品の販売時期では「食肉」扱いと考えられます。

何だか、靖国神社に関する映画でも、似たような反応がありましたね。こういった映画を脅威と感じる人たちは、日本人大衆のリテラシーは低く、海外発の情報を単純に信じてしまうと決めつけています。そしてリテラシーを向上させる運動ではなく、気に入らないものを潰す運動をしてしまいます。これでは何も進歩しないですね。
Posted by marburg_aromatics_chem at 2010年04月05日 07:57
>marburg_aromatics_chemさん
映画「YASUKUNI」のときと非常に似た構図ですが、取り上げるメディアがないのがまた不思議ですね。「ウチ・ソト」の概念や「意地」という、あんまし誉められない文化が実は主題なのかも・・・
Posted by ネコ at 2010年04月06日 00:51
こんにちは

そういわれたら…文化伝統って…。「人から説教されると主体性無く反発する」という文化伝統を守るためのキャンペーンかもしれませんね。

クジラはただのダシなんですかね。
Posted by NAOKI at 2010年04月10日 21:54
>受け取ってる“お布施”は一体いくらなんだろね?
>>捕鯨サークルだろうが反捕鯨だろうがお布施で金が集まるんだぜ?w
利益云々なんて言い出したらキリがない。論外。
Posted by マッサ at 2010年04月11日 00:10
>NAOKIさん
確かに。ほんとにこの問題は日本人の「国民性」(作られたもの含め)を映し出す鏡になってますね。いずれにしろ、南極の野生動物をダシにするのは恥ずかしいからやめてほしいです(--;;

>マッサさん
「どちらもお布施でお金が集まるんだろ」という意見は一理あるかもしれないね。でも、日本人は強制的に税金の形で無理やり徴収されてもいるわけだわさ。論外ってわけにゃいかんでしょ。少なくとも私や君らは。
Posted by ネコ at 2010年04月11日 00:36
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