2010年03月09日

ハクビシンとクジラ/捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!・2

◇ハクビシンとクジラ〜ニンゲンサマが第一! 野生動物と共存できない西洋かぶれのエコ最貧国・捕鯨ニッポン

■天使か悪魔か家がつぶれる!?…雷獣大暴れ! (3/7,TBS「噂の東京マガジン」)
http://www.tbs.co.jp/uwasa/genba/20100307.html (リンク切れ)

 ときどき八ッ場ダムに象徴される大開発を擁護して自然の敵になり、しばしば野生の獣や鳥の敵になるこの番組、今回の放映内容は中でも最悪の一つでした。いつもなら「何しらばっくれてやがんだこのタヌキめ(タヌキさんごめんm(_ _)m)」と他の視聴者同様茶の間で舌打ちしているところですが、今回だけは困惑している役所の担当者の方々に心底同情しちゃいましたよ・・・
 “住民目線”を売りにしている副作用というべきか。こういうのって、地域エゴとも紙一重ですけどね・・。方向はちょっとずれますが、野生動物がテーマになるとニンゲンのご都合主義が前面に押し出されるのは、環境省にいちゃもんを付けたブラックバス愛好家・業界関係者の意向を反映してんじゃないかとも勘繰ってしまいます・・・
 HP上では、ディレクター殿が何やらハクビシンの味方めいたことを書いています。が・・番組の内容があそこまでひどくては、さすがに白々しさを感じるのは否めません。番組の制作方針は、この方お一人で決められるわけではないでしょうけど。タイトルに「天使か悪魔か」と入っていますが、中身は完全に悪者扱い。庭のブドウに被害を受けたけど、写真が撮れたので「憎さとかわいさ半分」と同情してくれた、心優しい住民の方がお一人いらっしゃっただけ。
 番組中の間違いについて、いくつか指摘しておきましょう。特定外来生物の対象種は、必ずしも移入年代によって定義されるわけではありません。環境省は「概ね明治元年(1868年)以降に我が国に導入されたと考えるのが妥当な生物」(第二次特定外来生物)としていますが、最終的には諮問を受けた専門家のワーキンググループが生態系への影響を評価したうえで認定することになっています。

■第二次以降の特定外来生物等の選定の作業手順 (環境省)
http://www.env.go.jp/nature/intro/4document/sentei/mamm_bird04/mat01-1.pdf (リンク切れ)
http://www.env.go.jp/nature/intro/4document/sentei/07/ref07.pdf

 で、現在のところハクビシンは在来種か移入種か定かでないわけです。自治体によって“勝手に”外来種認定しちゃっているところもあるようですが、少なくとも国の定める特定外来生物としての選定基準からは完全に漏れています。Wikipediaで「1945年の静岡県でのものが最初の確実な報告」とありますが、環境省資料ではそれ以前にいたことが確認されています。少なくとも明治より前にいたということですね。


日本には、古くは1833 年にボルネオ島から持ち込まれた記録があり、現在ハクビシンが生息していない山口県で1842 年に捕獲された記録がある。
(引用)

■外来種対策事例等に関する調査|環境省自然環境局野生生物課
http://www.env.go.jp/nature/intro/4document/report/mitigation_cases_annex.pdf

 それにしても、かつての天然記念物(長野県及び山梨県)が外来種・害獣扱いとは、世も末です。在来種のニホンカモシカからニホンザルまで、この国じゃ同様の憂き目を見ていますが・・。
 ハクビシン(白鼻芯)というのは中国名。番組のHP解説にある雷獣がハクビシンのことを指すのではないかという説もありますが、空を飛んで落雷とともに表れる空想上の動物とゴッチャにされてますから、まあ憶測の域を出ません。じゃあ、ハクビシンはやっぱり日本在来の野生動物ではないのでしょうか?
 過去記事で取り上げたことがありますが、狢(ムジナ)というのは、キツネ・タヌキ・アナグマ・テン・(おまけとして空想上の動物)をひっくるめて指した総称。花鳥風月のイメージ先行型で科学的観察眼に欠ける、実にいい加減な野生動物観を有していた日本人らしい呼称といえますね。ディレクターさんも指摘するとおり、この中にハクビシンが含まれていた可能性は大いにあります。ちなみに、形態的には似ていてもハクビシンは、ジャコウネコ科で他の4種と類縁関係は遠く、どっちかといえばネコに近い食肉目(ネコ目)の仲間。
 ハクビシン在来種説を否定する根拠として、化石の出土がない、考古学的文献にも登場しないことが挙げられます。ただ、前述のように、またクジラ関連の史料を見てもわかるとおり、野生動物に対する知見があやふやこのうえない日本の古文書は、はっきり言ってあてになりません。明治あるいは江戸時代以前にいなかったとする証拠もまた何もないといえます。
 日本に現生するハクビシンのルーツを探る試みは、考古学以外に生物学・遺伝学方面からも行われています。

■ハクビシンはどこから来たか〜ハクビシンの遺伝的変異|『どうぶつと動物園』'09冬号
−どうぶつと動物園HP
http://www.tokyo-zoo.net/member/index.html
■ハクビシン|Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%AF%E3%83%93%E3%82%B7%E3%83%B3

 同誌で北大准教授の増田隆一氏による研究が紹介されています。他の野生動物でも遺伝子解析による系統判別手法としてしばしば用いられているミトコンドリアDNA内のチトクロームb遺伝子の変異の解析結果によれば、日本産と東南アジア産のハクビシンの塩基配列の差異は大きく、起源を等しくする地域集団とはいえないこと、日本国内のハクビシンでも中部地方と関東地方にそれぞれ複数のタイプが認められ、ある程度の遺伝的多様性が認められることがわかっています。これは外来種説には分が悪い結果です。Wikiでも、体色などの特徴から他地域の個体群と日本の個体群との差異が大きく、独立亜種である可能性が高いとする仮説が紹介されていますが、少なくとも近年になってペットや産業目的で持ち込まれた一部個体をルーツとする説は過ちといえそうです。ちなみに、この研究は体毛を用いた非致死的研究です。当然だけど。
 ハクビシンが、日本列島が形成され、最後に大陸から切り離される以前の地質時代から生息していた日本固有の野生動物種だとは、たぶんいえないでしょう。これから化石が発見される可能性もゼロじゃありませんけど・・。化石がなくても、現在広く日本国内に分布する動植物はいるわけです。例えば、野生動物というと語弊がありますが、奈良時代に移入されたとみられるネコなんかもそうですね。Wikiの外来種の項目には、史前帰化動植物としてモンシロチョウ、アカザやナズナ、スズメ、アブラコウモリ、ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミなどの家ネズミ類、ジャコウネズミ等々と列挙されています。
 筆者が思うに、古墳時代から江戸時代にかけてのどこかの時期に、人の手によってか人知れずかはわかりませんが、日本列島に入ってきてたんじゃないでしょうか? それもかなり前のほうで。ほぼ完全な夜行性で、昼間は樹洞や屋根裏にじっと潜み、見た目はタヌキやテンとの区別がつきにくかったハクビシンのこと。灯りの乏しかった時代、もともと野生動物に疎い日本人がずぅーっと気づかず、たまに見かけたとしても、素性の知れぬ“あやかし”、それこそ雷獣のイメージと結び付け、畏れから正体を明らかにしようと努めなかった──そんなところじゃないかと筆者は想像するわけです。目は暗闇の中で炯々と光り、先住民のデザインした仮面を思わせるコントラストの鮮やかなあの顔の紋様が、たまたま稲光の中にパッと浮かび上がるのを目にしようものなら、そりゃ雷様の遣いか何かだと思い込んで、「触らぬ神に祟りなし」とそっとしておくのもむべなかろう、と──。
 人間によって持ち込まれた経緯については、正確な記録がないので、軍需による毛皮・食肉目的とか研究用とか愛玩用とか諸説紛々たる状態。SARS騒ぎでも名前が挙がりましたが、広東州などでは他の野生動物ともども食用にされています。。増田氏の解説によれば、「日本でも食した記録があり、その味は非常に美味ということ」・・・。肉食動物はマズイというというのがセオリーだけど、果物好きだからかしら? というより、いつの時代どこの国でもゲテモノ嗜好者はいるものなのか(--;; 輸入された食文化があっさり消えて、ハクビシンには幸いだったかもしれませんね。ま、ショクブンカなんて所詮その程度のくだらない代物です。
 番組に話を戻しましょう。近年急速に分布(目撃情報)が拡大しているハクビシンですが、確かにクロミンククジラとは比べ物にならないほど繁殖力は旺盛にしろ、正確な個体数の推移のデータはありません。タヌキやテンとの競合を懸念する声は研究者の中にもあるようですが、当のタヌキも最近東京都心に出没してネコとケンカしたりしてTVなどで話題になってるし・・。半樹上性である点や食性なども考慮すれば、ニホンザルとカクニイザル、ホンドリスとクリハラリス(タイワンリス)、そしてアライグマとタヌキのような、在来種と強く競合して排除してしまういわゆる侵略的外来種とは異なり、ハクビシンとタヌキとはある程度棲み分けているようにも見受けられます。近代以前帰化説が正しいとすれば、少なくともごく最近まで両種が共存できていたことは間違いありません。
 それよりむしろ、個体数動態のこうした傾向はシカ、カラス、ムクドリ、ヒヨドリなどと同じく、人為的な環境変化(劣化)と種の多様性の喪失が招いた帰結のひとつといえないでしょうか? 明治維新後、そして戦後、日本の自然は大幅に改変され、人為的環境への適応力に応じて生態系の種構成にも著しい変化が生じたわけです。ハクビシンは、カラスやムクドリと同様適応力が比較的高かったために“悪者”にされただけなのではないか──筆者の目にはそう映るのです。
 個人的にハクビシンはかなーり好きなタイプだったりします。果物フリークだし。アライグマに比べるとかなり扱いやすい動物で、人にも慣れます。原則として野生動物の飼育はオススメしませんが・・。
 さて、アイヌなど世界各地の先住民とも、科学的合理主義に基づき体系的に自然を捉えてきた近代ヨーロッパ圏とも異なり、ズボラでズサンな動物観・自然観を特徴とする日本人ですが、利点=救いもありました。自然に対する畏れ敬いから距離感を保っていたため、人為的な環境改変が限定され、野生動物と人間が適度に共存できる環境がある程度保たれていたのです。
 ところが、近代に入るや否や、その唯一の美徳・優れた文化をさっさとかなぐり捨て、節操もなく自然制圧的な思考・文化・技術にあっさり鞍替えし、山はスギとヒノキだらけに、海辺はコンビナートとテトラポッドだらけにし、オオカミやカワウソやアシカやトキを絶滅させ、公海の漁業資源を根こそぎにし、世界中から熱帯木材や野生動物製品を買いあさる国に成り果ててしまったわけです。日本という国は、「内の悪いところを矯めて良いところを伸ばし、外の良いところを見習って悪いところは他山の石として省みる」のと、まさに真逆のことをやってしまったわけです。和魂洋才などという聞こえのいい言葉のオブラートで包み込んで。節度やモラルを抜きにした“デントウ”こそたちの悪いものはありません。その象徴こそは捕鯨に他なりませんでした。
 今回の東京マガジンの出演者、制作者、取材を受けた人たちのほぼ全員が、西洋合理主義・キリスト教的世界観に由来するニンゲン至上主義にどっぷり侵されちゃっていましたね・・。動物を対等の存在とみなし、自然に畏敬の念を払っていた古来の日本人の奥ゆかしさ、つつましさは、欠片も感じられませんでした。動物や自然との共存という歯の浮くキャッチフレーズだけ独り歩きする中で、「ちょっとは野生動物の立場に身を置いて考えてみる」ということを誰一人せず、実態を見極める前に“害獣”というレッテルを張り、短絡的に“駆除”に結び付ける……。
 NHK教育で放映された秋道智彌氏プロデュースの「ニッポンはエコ」と高らかに謳う捕鯨礼賛番組と、今回の東京マガジンを、もし世界中のすべての人が見比べたとしたら、「ああ・・日本人って、なんてステキな多重人格者なのかしら・・・」と溜息をつくでしょう。
 ポーランドやイギリスなどの伝統を守って野生動物と共存する“いまの”農家の人たちと比べると(リンク参照)、日本人の一人としては本当に涙が出るほど情けなくなってきます・・・・

 もう一つ、クジラとハクビシンのリンクネタをお届けしましょう。ここまでの記事を読んで、既にお気づきになった方もいるかもしれませんね。
 そう、ハクビシン外来種説に待ったをかけた遺伝的多様性の分析結果。少数の特定集団から個体数が短期間で急増した場合、遺伝的変異は追いつかないので均質であるという、ボトルネック効果(創始者効果)。ハクビシンの場合、中国産が大量導入され、各地でいっぺんに野生化したという可能性もまだ残されていますが、そうは問屋が卸さないのが南極海生態系の事情。
 ハクビシンは1産1〜4仔で通年繁殖しているのに対し、どっかの誰かさんがゴキブリと呼ぶほど大型鯨類の中では繁殖率が高いとされるクロミンククジラでも、1産1仔で最低でも性成熟に7、8年もかかり、繁殖率はパンダ(性成熟年齢は4〜6歳、1産2仔が多い)やコアラ、ペンギンその他多くの野生動物よりずっと低いのが事実。パンダをゴキブリ呼ばわりする人は世界中どこを探してもいませんよね・・。繁殖率がはるかに高い競合種を差し置いて、高々1世紀の間に10万頭未満から70万だの100万だのに激増するなんて、そもそも無茶すぎるのは誰の目にも明らかなことでした。

■南極海、ミンククジラ増えず 調査捕鯨に米研究者が反証 (2/9,共同)
http://www.47news.jp/CN/201002/CN2010020901000171.html
■The end of the Krill Surplus Hypothesis? (1/25,flagburner's blog(仮))
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/7b85221dcb67c1525083986924511bb1
■Are Antarctic minke whales unusually abundant because of 20th century whaling? ('09/12/17,Molecular Ecology)
http://www3.interscience.wiley.com/journal/123216925/abstract??CRETRY=1&SRETRY=0

 英文のアブストラクトは3番目のリンクに掲載されてますが、以下にaplzsiaさんの解説があるので、flagburnerさんのブログの赤いハンカチさんのコメントと合わせてご参照。木村資生氏は中立説で有名な方ですね。

http://messages.yahoo.co.jp/bbs?action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=34665
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=34680&thr=34665&cur=34665&dir=d
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=34700&thr=34665&cur=34665&dir=d
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=34702&thr=34665&cur=34665&dir=d

 さて・・flagburnerさんが教えてくれましたが、鯨研が反論を出してます。共同通信記事が配信されたため、慌てて出したのかもしれませんが、なぜかこっそり英語版のサイトでのみ・・・・

■ICR comments on the paper “Are Antarctic minke whales unusually abundant because of 20th century whaling? ”By Ruegg et al., Molecular Ecology. (1/20,鯨研HP)
http://www.icrwhale.org/100120Release.htm

 なんとまあ、不確実性をこういうときだけ都合よく持ち出してますね〜。ここまで恣意的に使い分けることのできる二枚舌ぶりには脱帽するほかありません。ゼロになったりはたまたマイナスになっちゃうお笑い自然死亡率よか全然マシだと思うけど。IWC-SC(国際捕鯨委員会科学委員会)のは、「遺伝子解析手法を用いる際は慎重にね!」という注意書き。鯨研のコレはただのステートメントで、学術的な反証を何一つ出したわけではありません。
 上掲のハクビシンはじめ、陸上野生動物の場合における遺伝子解析を目的としたサンプリングに比べ、56検体は決して少ないとはいえません。例えば、絶対数が少ないツシマヤマネコやイリオモテヤマネコの解析も行われ、他種との遺伝的比較や種内多様性に関する研究結果としてきちんと学会で報告されているわけです。第一、一番プライオリティが高いはずの(たまに自分たちでも偉そうに正当性を訴える道具にしますが・・)、乳腺や胎児、腎臓中の重金属・有機塩素その他の有害物質分析用に用いられている試料数より多いしね・・。母集団に対するサンプル数の比率の問題はありますが、統計上の有意性が問われる(より多くのサンプルで解析する必要がある)のは、「遺伝的多様性が少ない」という逆の結果が出た場合のみ。
 何よりこの反論が反論にも何にもなっていない最大の理由は、より精度の高いデータを鯨研は持っているはず、出せるはずだからです。研究者であれば、当然わかっているはずのこと。にもかかわらず、明確に白黒付けられるだけの証拠を出さない。毎年毎年あれだけのサンプルを収集しているのに。否定する材料があるはずなのに、肝腎の証拠を突きつけることをせずに、口先だけで誤魔化しているわけです。一体何のための致死的調査、調査捕鯨なのか!?
 実に卑劣きわまる、許しがたいことです。日本鯨類研究所は、科学研究機関の風上にも置けません。
 日本で唯一まともな鯨類学者といえる元帝京科学大学教授粕谷俊雄氏は、以下のように述べておられます(背景着色部分引用)。

IWC総会で日本代表が、SCが調査捕鯨を好意的に評価している旨の発言を日本語でおこない、通訳はむしろ批判的なSCの評価を正しく英語で引用するのを私はロンドンで体験した。当時、総会の様子が日本に送られていたことを知れば、これは国内向けの自己宣伝であると理解される。かつて我々を大戦に導き、鯨を乱獲に追い込んだ日本社会の構造はまだ生きていると見る。('08/6,Japanese Journal of Human Animal Relations)
昔、研究費を稼ぐための調査捕鯨もありえるSCで発言した日本の科学者がいた。いまではそのような発言はないが、SC科学者の多くは、日本の調査捕鯨をそのように見ている。これまで科学的な観点から調査捕鯨計画に意見を述べてきたSC科学者も無益であるとして今年は意見表明をやめた者が多い。調査捕鯨の意図を外から推し量るのは難しいので、@科学者が自主的に調査捕鯨計画を決めているか、A科学者の判断で非致死的方法を選択する自由があるか、B捕獲調査継続へ外部の圧力があるかなどで判断せざるをえない。@は疑わしい、Aはほとんど自由がないとみる、Bは圧力が大きいとみる。(中略)毎年1000頭以上の大型野生動物を捕獲する研究を続けることが研究者倫理にかなうのか、研究者のエゴではないかという疑問がある。調査捕鯨成果の掲載を拒否する学会があるのは、いまの学会の倫理観が60年前の条約のそれとは違ってきたことを示している。私が思うに、このような事業を長く続けるのはよくない。何よりも担当研究者を苦しめるし、腐敗発生の恐れもある。昔、調査捕鯨計画に発言する機会をもった科学者のひとりとして責任を感じている。日鯨研の研究部局は捕鯨行政から切り離して然るべき海洋研究組織に移し、後方・宣伝部局は水産団体に移すのがよい。('05,エコソフィア)

 腐敗は報道された監督官らの“土産”授受、あるいは共同船舶の内部告発者が赤裸々に語ったランダム・サンプリングの虚偽の形で端的に示されるとおり、既に相当根深く進行していると見た方がいいでしょう。ウヨガキを彷彿とさせる御用学者らの自画自賛的すりかえ要約ではない、調査捕鯨のSCによる評価が知りたい方は、以下をご参照。

■科学委員会報告 国際捕鯨委員会 アンカレッジ2007年 (抄訳)|東京大学先端科学技術センター 米本研究室
http://yonemoto.rcast.u-tokyo.ac.jp/PDF/Report_of_the_Scientific_Committee_2007_J_.pdf
■調査捕鯨自体が否定した3つのトンデモ論 (拙HP)
http://www.kkneko.com/jarpa.htm

 ついでにいえば、オキアミ余剰仮説を証明してくれる動物はいないわけじゃありません──クロミンククジラの代わりに。過去の商業捕鯨の乱獲によって引き起こされた南極海生態系の撹乱の証ともいえますが、実際に個体数動態に変化が見られた可能性が高いと考えられる動物種がいるからです。急増したことが確認されているカニクイアザラシとミナミオットセイ(オットセイ自体の乱獲からの回復も含みますが)。それらの種からサンプルを採取し、遺伝的変異の幅を提出されたクロミンククジラのデータとつき合わせれば、ボトルネック効果が果たしてあったかどうかという問題の科学的な決着は容易でしょう。姑息なゴマカシを図るくらいなら、資源としてはクロミンククジラより“頑健”なのは否定の余地がなく、南極条約の下で厳格に(捕鯨ニッポンに言わせればサベツ的に)保護されているとはいえ、科学的な正当性があれば研究目的の捕獲許可も下りるはずのオットセイ、アザラシ、ペンギンを対象に、科学的精度を高めるための大規模な経年致死的調査をやりゃいいんです。IWC下の鯨類資源管理/業態管理という目的の上でも、科学的に枯れきった現行の調査捕鯨なんぞより優先順位ははるかに上。
 んでもって、「日本が誇る焼き鳥文化だ、何が悪い!」と世界に声高に言いふらしつつ、長崎ペンギン水族館の前で副産物をフライドチキンならぬフライドペンギンにでもして売りさばきゃいいんですよ。「カワイイが保護色」系写真集が売れ動物園のアイドルに群がる動物愛誤大国ニッポンで、もしできるものなら。
 ま、ハクビシンからクジラまで、「殺すなというのは差別だから一切まかりならん! 何でもかんでも好きなように好きなだけ殺せるのが平等だ!」と吠えて殺しまくる、自然や生命に対する伝統的な畏敬の念をすっかり失くしてしまった、あまりにも変わり果てた捕鯨ニッポンでなら、調査捕アザラシも調査捕ペンギンもできない相談じゃないかもしれませんがね・・・・
 それが出来ない(しない)以上、ガラクタ仮説はとっくにゴミ箱行き!!

関連リンク:
−調査捕鯨で絶対わからない種間関係の生物学的重要性 (当ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/16989845.html
−動物保護先進国イギリスと後進国捕鯨ニッポン (〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/26786878.html
−東洋VS西洋? (〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/15855631.html
−シカとクジラ──神聖な動物を邪魔者扱いする捕鯨ニッポン (〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/19808644.html


 
◇捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!・その2

http://kkneko.sblo.jp/article/35896045.html

 前々回、炭素循環/地球温暖化防止の観点からすれば、クジラが森林“以上”にきわめて重要な役割を担っているということをお伝えしましたが、どうも大いなる誤解をされている方が少なくないようです。確かにややこしい話ですし、理解できてもいない反反捕鯨論者のミスリードが容易な点もありますが、これは環境問題の観点から捕鯨を論じるうえで欠かせない視点ですので、改めて補足しておきたいと思います。
 炭素を除去する生物ポンプの担い手として重要なポストを占める大型鯨類(ニッチの近い他の大型海洋動物含む)の保全が、森林保全以上に重要だという点については、前回の記事を復習していただければ十分でしょう。

@1世紀前に比べて激減している多くの大型鯨種を速やかに初期資源状態に持っていく必要がある。

 言い換えれば、そのために汚染・乱獲・乱開発にきちんと歯止めをかけ、海洋生態系のバランスを健全な状態に持っていく必要があるわけですが。アザラシやペンギンなどを間引く必要があるかについては保留・・。クロミンク間引き説には前述のとおり科学的根拠はもはやありませんが、こちらも効果のほどは疑問。ま、日本を含む国際世論の反発がなければ、やりたいヒトがやりゃいいんじゃないでしょーか・・・

A他の鯨種が回復せずバイオマス(〜炭素輸送量)が不十分な当面の間、クロミンククジラを保全する重要性はいや増して高くなる。
 クロミンクは、無責任極まりない捕鯨業者のを一手に被ってくれているありがた〜い存在です・・・・。彼らにしちゃいい迷惑でしょうけど・・・

B鯨類の炭素固定能をフルに活かすためには、自然死亡率を最大化、すなわち人為死亡率を最小化する必要があり、商業捕獲枠はゼロが最適。

 素朴な反反捕鯨原理主義者らの説く再生産云々は、そもそも乱獲を阻止できなかった時代のカビの生えたMSY理論の話で、母船式捕鯨で正しく運用できた試しがありません。いずれにしろ、再生産率の増加は人為死亡が自然死亡分を「食う」ことで働くとゆー理屈です(一般の方には少々理解が難しいかもしれませんが)。ここが落とし穴で、生物ポンプ機能の観点からは、自然死亡率を下げてもらっちゃ困るわけです。
 初期資源状態で適度な自然死亡が発生してこそ、炭素固定・除去という自然な元素循環の過程が最大限保証されるわけです。それは同時に、深海生態系の種の多様性保持にきわめて重要とされる鯨骨生物群集への継続的なリソース供給という側面も合わせ持っています。
 最も安全とされる現行のRMP(改訂版管理方式)ですが、海洋環境・生態系の重要な機能である生物ポンプに果たす鯨類の役割については、残念ながらまったく考慮されていません。

 お断りしておきますが、これはあくまで最善・最適という話です。「木を一本も切るな」という主張と「クジラを一頭も捕るな」という主張は、確かに科学的根拠があるとはいえない原理主義に基づいている意味で同レベルでしょう。それでも、森林も海洋大型生物も、可能な限り保全することが望ましいことは議論の余地がありません。さらに、より長期の炭素固定&除去機能があり、植林という人為的な更新手段がない点で、鯨類(その他海洋大型生物)保全の重要性は森林より一段高いということはできます。炭素固定のためには、森林より鯨類保護のほうが効率的ということ。両方やる必要があるのは当たり前のことですがね。
 森林伐採や捕鯨(サメ漁・マグロ漁などを含む)については、代替資源の模索や産業利用のあり方の再検討(e.x.伐採に代わるゴム採取、WWのような非消費的利用、飽食廃食大国ニッポンの真剣な反省・・・)とともに、社会的必要性について十分吟味する必要があります。公海上であれば、必要性のレベルが国際的に検証されるべきであるのは当然のこと。また、知床、白神山地、屋久島、南硫黄島、白保などのように、あるいは南極海のように、固有性・稀少性がより高い自然環境であれば、生態学的なモニター以外の理由で手をつけないことが合理的な最適解であるということができます。前回の記事で指摘したように、生物ポンプとしての機能がとくに高いと考えられる南極海の鯨類と取り巻く生態系をサンクチュアリとして保全することには、二重の意味できわめて高い正当性があるのです。
 「海の森林」として鯨類を保全していくことの重要性については、WWFノルウェーも環境保護先進国である同国できちんと市民に説いて理解を広めてくれるでしょうし、温暖化から南極保護関連まで、地球環境保全の文脈で開かれる様々な国際会議の場で今後取り上げられていくことになるでしょう。もちろん、IWCの場でも。
 言っときますが、ニンゲン風情がサメやシャチのポジションを奪って代行(一部のみ利用して大半を海底投棄)を買って出ようったってダメですよ。採算性・需要を度外視してサメやシャチに“嗜好”を合わせようってんならいざ知らず、進化史を経てその座についた正統な天敵である彼らを困らせ、生態系のバランスを崩すだけです。自然死亡がどの時期どの海域でどの程度発生しているか等、この先半世紀くらい輸送のメカニズムを研究したところで、どのみち天敵代行なぞ不可能でしょうけど。
 もう一点、一般の読者には聞かせる必要のない余談ですが、ネット依存症患者の鯨肉フェチの中には、トトロの森やアファンの森の木を守ってもCO2吸収量は微々たる物だから「保護を訴えることは罷りならん」というレベルの、常軌を逸した主張を展開している人物もいるようです。反反捕鯨論者の異常性の前では、演出の意味を弁えているシー・シェパードすら霞んで見えますな・・・・

 

◇クジラとジュゴン・リンク署名、進捗のご報告

 おかげ様で日本語版が160名、英語版が380名に達しました(3/9現在)。
 オーストラリア在住のYさん、中東在住のNさんには、現地で邦人と地元の方々に呼びかけていただきました。賛同ブログ・HPにもたくさん名乗りを挙げていただいています。海外版の署名には、世界中のありとあらゆる国にお住まいの方がサインをしてくださっています。ご協力いただいたたくさんの皆様に感謝m(_ _)m
 日本語版の方をもうちっと頑張らないといけませんね・・。ブロガーさんへの告知、沖縄報道等の確認、プレスリリース配信、NGOさんへの連絡など、手が10本あっても足りない状態(--;;
 一点、お詫びとお知らせがあります。書名のお知らせ欄でお伝えしましたが、沖縄普天間飛行場移設問題に関しては、一部の新聞で「現行案断念を米に伝達」と伝えられるなど、情報が錯綜している状態。

1.米側の担当者は「現行案が最善」との立場を崩しておらず、辺野古沖(米軍キャンプ・シュワブ沿岸)案が撤回されるかどうかは5月末の決着まで予断を許さない状況にあること。
2.キャンプ・シュワブ陸上案については、演習や開発工事による生息海域の汚染の激化に加え、非常にデリケートな動物であるジュゴンに対する騒音の悪影響は陸上であっても看過できず、ジュゴン保護の立場からは容認できないこと。
3.うるま市津堅島周辺(米軍ホワイト・ビーチ沖合)案については、貴重な干潟である泡瀬干潟の沖合にあたり、豊かな藻場がジュゴンの餌場となるため、やはりジュゴン保護の立場からは容認できないこと。


 2.3.など取り沙汰されているいくつかの移設先候補は、ジュゴンの生息を脅かす点で辺野古沖案と何ら変わりありません。
 1.の理由から引き続き辺野古沖移設反対を前面に掲げますが、この署名の主旨はあくまで「ジュゴンを守ってほしい」ということですので、日米両政府に対しては「辺野古沖を含む、沖縄のジュゴンに悪影響を及ぼす米軍基地移設計画のすべて」に対して中止を求めていきます。沖縄の人たち、ジュゴンたちの側に立ってくれる皆さんであればご理解いただけると思いますが、ご了承のほどお願いいたします。

posted by カメクジラネコ at 01:39| Comment(9) | TrackBack(0) | 自然科学系
この記事へのコメント
こんばんは。米軍基地移設問題についてはかなり気になっている所です…。
豊かな自然やジュゴンはもとより、長く米軍基地を押し付けられてきた沖縄の人たちにこれ以上負担をかけさせるような事にだけはなって欲しくありませんね。

赤松農相が、調査捕鯨において「獲りすぎだ」との発言をしたようです。
こちらの問題に関しても、少しずつ進展しているのだと信じています。
Posted by ちびた at 2010年03月09日 19:11
>ちびたさん
そうですね。ちびたさんのおっしゃられたことが、日本人の絶対多数の「本心」だと、私も信じたいです。誰かを犠牲にするのは、やっぱり本当の平和じゃないですよね。
赤松農相も、少なくとも「譲歩が必要だ」という当たり前のことは認識されているようですが、捕鯨サークルは最小の妥協で済ませようと必死になっているので、予断は許しません。
国内でもっと「おかしい」という声をあげて、彼らの好き勝手を許さないようにしないと。今回のリンク署名も、そのために役立って欲しいと願っています。
Posted by ネコ at 2010年03月09日 19:45
左翼のくせに民主批判とかハッキリしない人だな。
あんたもどうせ、マスコミの小沢さん批判とか信じてるような人なんですね?

民主党は自民党よりも捕鯨に反対しているのに。
あなたには失望しましたね。正直。
Posted by うわべだけですか。 at 2010年03月09日 22:57
>うわべだけですか。さん
民主党さんに対しては是々非々の立場で臨んでいます(どっかの党さんみたいだけど・・)
残念ながら、民主党捕鯨対策協議会は自民党以上に強硬な捕鯨礼賛だという話も耳にしています。
多様性がある点では自民党よりまだマシだと思いますが・・
>民主党は自民党よりも捕鯨に反対しているのに
政権取った後で動きがないんですよね・・
具体的な情報をお持ちでしたらぜひお知らせください。
Posted by ネコ at 2010年03月10日 02:13
がんばってますね!ごくろうさまです。
ぼくもハクビシンは好きです。
動物図鑑で見て、かわいいなあ、神さまのような名前だなあ、と思ったものです。

だいぶ以前に、テレビで見たのですが、“ハクビシン”が大量に中国で飼われていて、
「食用です」
と聞いた時はほんとうにショックでした。

なんでも喰らう国だな、と思いましたねえ。
日本でも有名な“チャウチャウ”犬を食用にしていたくらいですから。
(今もかも

ところで、思うのですが、捕鯨にやたら賛同しているやつって
言っていることがみんな同じ。
根拠が弱く、政府が裏にいるからなんでも言えるみたいな、
言っていい権利みたいなものが、本人たちの誤解と幻想の上で成り立っているような、
そんな気がします。

そういう連中に信条などかけらもなく、
たとえば政府が「明日から捕鯨は禁止します」と言ったらすぐに手のひらを返すのだろうな、と思いましたよ。

Posted by みっく at 2010年03月10日 21:30
>みっくさん
個人的にはパンダやらコアラやら商魂たくましい動物園のアイドルたちよかよっぽどカワイイと思うんですけどねぇ。捕鯨の方が一段落したら、犬猫やカラス、ハクビシンなど国内の野生動物問題の方にシフトしたいです・・
いわゆる反反捕鯨論者って、属性がはっきりしてますよねぇ。購買力ないから在庫は有り余ってるし、おっしゃるとおり政府がそっぽ向いたらこの業界に対する関心や同情はピタリとなくなりそうです・・そういう分析をしている識者は何人もいます。
Posted by ネコ at 2010年03月11日 00:41
三行に纏めろ
Posted by 長すぎる at 2010年03月13日 15:30
>長すぎるさん
ゴメンよ!
君は私と違ってTwitterが向いてると思うぞ
Posted by ネコ at 2010年03月13日 19:19
>いぬ殿
うちは記事の内容を読まない失礼な捕鯨擁護派にリソースを提供しない主義です。サーバースペースがもったいないので。
>捕鯨はIWCの決められた範囲内の頭数をとっているんだけど・・。
NOです。日本の調査捕鯨の捕獲数を決めているのはIWCではありません。勉強しなさい。
>日本が捕鯨するのは鯨食文化があるからだよ。
NOです。科学を名目にしたただの脱法行為です。勉強しなさい。
>非致死的方法な調査捕鯨でまともにデータが上がってきた事ある?
致死的方法な調査捕鯨でまともにデータが上がってきた事ないねぇ。豪・NZによる非致死的方法による調査結果は今年のうちに有用性が議論されますよ。
>日本は十分に個体数があるという結果を出したけど
NOです。ちゃんとHPと過去記事を読みなさい。IWC−SCのページも勉強しなおしてきなさい。
>別に捕鯨を支持することは世界では異論じゃないんだよ
日本が票を買収してる国じゃあねえ。勉強しなさい。
>調査捕獲の鯨をスーパーに流すのは、条約第8条第2項で決められてる通り。
NO。当たり前だがそんな記述はどこにもない。勉強しなさい。
>海洋調査研究としてはかなりいい方だってご存知?
「いい方」って何やねん。商売でやってる研究が他にあるかいな。沿岸の漁業資源調査にどれだけ予算が投じられているか知っているか。勉強しなさい。
>在庫が余るのは流通の為には当然。
NO。流通について詳しく無いなら、在庫に口出ししない方がいいですよ。
Posted by ネコ at 2010年03月18日 01:02
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