2010年03月03日

捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!/署名英語版もスタート!

◇捕鯨は森林破壊以上の環境破壊!!!!

@大型クジラは炭素を貯蔵する海の森林? (2/27,フリーランス英独翻訳者を目指す化学系元ポスドクのメモ)
http://blogs.yahoo.co.jp/marburg_aromatics_chem/62925350.html
A低炭素社会のためにも捕鯨をやめよう/クジラの骨SUGEEEEEEEE (2/27,蝉コロン)
http://d.hatena.ne.jp/semi_colon/20100227/p1
BWhales and sharks as carbon credits? (3/2,flagburner's blog(仮))
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/2a955711fe2eaac06b895caaf376f346
CCarbon credits proposed for whale conservation (2/26,Nature)
http://www.nature.com/news/2010/100226/full/news.2010.96.html
DWhaling worsens carbon release, scientists warn (〃,BBC)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8538033.stm
E生物ポンプ|Wikipedia
ポãƒ3ãƒ−">http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%83%97
F生物ポンプが地球を救う!? (2/1,リバコミ!)
http://livacomi.jp/item_2204.html (リンク切れ)
G海洋表層の海の森/“生物ポンプ”によるCO2の循環
http://www.asahi-net.or.jp/~ZU5K-OKD/house.12/control/control.3.htm
H海洋の炭素循環|気象庁
http://www.data.kishou.go.jp/kaiyou/db/co2/knowledge/carbon_cycle.html
I炭素循環|Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%AD%E7%B4%A0%E5%BE%AA%E7%92%B0
J陸期限微量元素の海洋生物ポンプに果たす役割に関する研究|東大海洋研
http://www-aos.eps.s.u-tokyo.ac.jp/kyosei/member/pdf/16-3-2sano.pdf

 非常に興味深い科学的知見が明らかになりました。まずは、上掲@ABのブロガーさんの記事をご一読。一次ソースはCDのリンク。
 一言で言えば──


>この炭素量は温帯の森林11,000平方キロメートル分に匹敵するのだと言っています。だから捕鯨は大規模な森林伐採に等しいのだ!
(A〜)
>捕鯨をやめてクジラが増加すれば、陸上の森林のように炭素固定に利用できると考えている。
つまり捕鯨というのは、燃料用に木を切ることと同じ行為だという。
クロマグロなどの大型魚類も含めて、捕獲をやめた分を 「炭素クレジット」 とすることも提案されている。
(@〜)

 ──ということ。
 筆者はここで、炭素循環/地球温暖化防止の観点からすれば、クジラが森林“以上”にきわめて重要な役割を担っているということを解説したいと思います。
 生物ポンプについては、EFG辺りを読んでさらっと勉強しといてください。炭素循環の比較的わかりやすい図として、HIも合わせてご参照。
 海中のプランクトンが吸収する炭素量は、当然ながら研究者によってデータの取り方が違うので数字には幅がありますが、大体400億〜500億トン程度とみられています。

海洋性の植物プランクトンと、陸生の植物全体が、ほぼ同量のCO2吸収量(G〜)

 とあるように、数字だけ取ってみても、海洋生態系が森林に匹敵する役割を帯びていることはおわかりいただけるでしょう。ただ、いま地球温暖化の文脈で生物ポンプが注目されているのは、海洋生態系に森林にはない機能があるからです。それが炭素の除去
 Wikiの図解では6100億トンとありますが、これが陸上の植生に貯蔵される炭素量。実は、この一時的な貯金は、木が枯死するなどして分解される過程で全部大気中に戻ってしまいます。貯金が有効なのは、せいぜい十年から百年のスパン。それに対し、海洋の生物ポンプによって蓄えられる炭素は、最大の貯蔵庫ともいわれる中深層海水中の溶存炭素(炭酸塩・重炭酸塩含む)の形で貯蔵される分で千年。さらに重要なのは、一部が海底に堆積して循環のサイクルから完全に外れるということです(実際には岩石圏経由で還元しますが、数百万〜数億年先の話)。
 Aにある生物ポンプで運ばれる炭素量400億トンというのは、おそらく吸収量の間違い。こちらも幅があって気象庁(一次ソースはIPCC2007)の図解では110億トンとなっていますが、大体年間数十億トンとされているようです。比較するなら、海洋生物の貯蔵量(バイオマスとしての分)30億トンのほうですね。確かに鯨類の900万トンというのは、割合としては大きくないように見えます。
 ところが、この数字には実は非常に大きな意味があるのです。ポイントは、海洋生態系の中で鯨類が占める特殊な位置づけ。
 生物ポンプの担い手は主に3通り。ひとつは、有孔虫や放散虫などに代表される海洋プランクトンの死骸(総量としてはこれが大部分)。ふたつめはサンゴや貝などの炭酸カルシウムの骨格。そして、第三の担い手こそクジラなのです(クジラに近いニッチの、天敵が少ない長寿命大型海洋生物を含む)。
 『死んだ魚を見ないわけ』という一般向けの教養書が流行りましたが、それ以外の生物を経由する炭素は、食物連鎖をめまぐるしくめぐってすぐに表層海水・大気中に放出されます。一方、自然死した大型鯨類は、鯨骨生物群集が示すように、表層の炭素をダイレクトに深層に持っていく役割を果たすからです。
 そして、もうひとつ重要な点。プランクトンの発生量〜炭素固定量は短期的な変動が非常に大きいのに対し、繁殖率が低く長寿命で食物連鎖の上位を占める鯨類は変動が緩やか(ニンゲンの介入さえなければ、ですが・・)。気候変動の過程で生物ポンプが温暖化を加速する方向に働くのか、それとも抑制するのか、どちらでもないのかについては、諸説あって議論が分かれているところですが、少なくとも地球温暖化を食い止めるためには正のフィードバック(加速)を避けたいもの。サンゴなどは、海水の酸性化と水温上昇により温暖化するほどダメージを受けるので無理。プランクトンの増殖は栄養塩類の供給に左右されるのであてにできない一方、富栄養化−>赤潮というニンゲンにも他の海洋生物にも好ましくない状況に依存することに。その点、「海の森林」たる鯨類その他の大型海洋動物の保全は、ニンゲンが過剰漁業、汚染、沿岸乱開発をやめ海洋生態系が健全な状態にさえ保たれるなら、最も優れた炭素固定の手法といえるでしょう。
 さらに重要な点をもうひとつ。ここで資料Jをご覧いただきましょうか。


>他の陸起源微量元素と同様に河口域などで活発に除去され、外洋域への水平輸送はそれほど大きくないと考えられてきた。しかし、本研究の結果は、南極海において水平方向への輸送が比較的遠い範囲にまで及んでいることを示している。


 これは何を意味しているのかというと、実は海洋生物による炭素固定は一義的には栄養塩類の供給量に依存していて、その栄養塩類の供給が海中の有機物由来である場合は炭素収支としては差し引きゼロに等しいのです。つまり、森林と同じで、一時的に貯蓄はできても減らすわけではないということ。しかし、栄養塩類が陸上から供給される場合は、その分ストックを追加していくことができるわけです。通常、河川を通じて供給される陸上由来の栄養塩類は、表層・沿岸の生態系で消費され、やはり大気や表層海水中に還元されてしまいます。しかし、南極では豊富な深海からの湧昇流中の栄養塩に加えて陸上起源の栄養塩類が広域に供給されるため、南極海生態系の食物連鎖を通じて最終的に深海へと、その分追加で炭素を運搬・除去していることになるわけです。その中で、鯨類こそは生物ポンプの要として、欠くことのできない役割を演じているのです。
 総量としては、確かに鯨類がカバーしてくれる炭素量は、すべての森林による吸収量、あるいは産業由来CO2排出量に対して大きいとはいえません。しかし、重要なのは単位生物体量当りで見た炭素固定・除去量。Natureの記事にある「11000平方キロの森林に相当」という表現は、実際には上述の理由で「11000平方キロの森林“以上”に相当」というのが正解。寿命の長さや生態系における位置づけと深海への運搬プロセスの担い手という重要な要素が決め手となり、南極海のクジラは、まさに森林に勝るとも劣らない地球温暖化防止のカギを握る存在なのです。
 化石燃料の燃焼などニンゲンの産業文明に由来する炭素は、自然の炭素循環の動的平衡状態を崩すもの。経済に例えるなら、通貨の需要と供給のアンバランスが生じて入超となったインフレ状態。リーマン・ショックじゃないけれど、産業界(生物圏全体)が特定の一企業(ニンゲンという動物の一種・・)の所為で大迷惑を被っているわけですね。森林に蓄えられる炭素はいずれ大気中に戻るので、収支は常にプラマイゼロ。短い定期預金みたいなもん。ニンゲンによる増分の炭素まで貯めておくには、森林の面積をどんどん“増やす”必要があります。それに対して、ニンゲンが増やした超過分の炭素を取り除いてうまく平衡状態に戻してくれる可能性があるのが、この生物ポンプなのです。貨幣価値がどんどん下がり、物価が上げる一方のインフレの最中となれば、いまのうちに物に替えとこうと買い溜めに走るのが消費者心理というもの。そんな中で、市場にあふれた余剰通貨を回収し、箪笥預金にしてずぅーっとしまいこんでくれるありがた〜い存在がクジラたちってとこです。
 地球温暖化を防止するためには、省エネの推進、自然エネルギーへの転換、排出削減のための技術開発、原生林の保全、植林、砂漠化防止etc.etc.と全方位的な対策が必要。もちろん、あらゆる産業と同じように、農業も畜産も漁業もその例外ではありません。大事なのは、社会システムと価値観のパラダイムシフト。「森林保全か捕鯨禁止か」という二者択一はナンセンスな命題。両方やらなくてはなりません。
 その中で、森林保全以上に大きな意味を持つ捕鯨禁止、鯨類と彼らを取り巻く海洋生態系の保全が、とりわけ率先して取り組むべき課題であることは否定の余地がありません。なぜといって、捕鯨禁止は、森林保全にかける少なくない経済的・社会的負担の一部を効率的に軽減してくれるのですから。同等の炭素固定量分の面積の森林保全/造成よか、バカげた補助金漬け国策事業をとっとと廃止するほうがよっぽど簡単なのは、誰が考えてもわかることでしょう。年間2千万トンの食糧を廃棄する飽食大国で、カガクだかブンカだかもよおわからんくだらん事業にかけている財政負担が減るんだから、納税者としても万々歳ですし、長年続いてきた官民癒着の悪しき弊害も炭素と一緒に除去できるとなれば、これはもう一石三鳥ですね。
 繰り返しますが、地球温暖化を食い止めるためには、豊かな海の生態系のバランスを取り戻し、その中で健全な役割を果たせる状態にまで鯨類の個体数を回復させることがきわめて重要なのです。

 

◇「いっせいのせ」でやめよう!! 辺野古移設と調査捕鯨!!〜英語版署名もスタート

■Stop Henoko Relocation & Research Whaling|Care2
http://www.thepetitionsite.com/1/protect-dugongs-and-whales

 告知が遅れましたが、英語版も開始しました! 海外のお住まいのお知り合いにぜひお知らせください。最終的には日本語版・英語版セットで鳩山首相とオバマ大統領に宛提出しますが、重複署名も可です。
 3/1現在の署名の数は、日本語版92人に対し英語版204人。個人が始めたインターネット署名としてはまずまずの滑り出しだと思いますが・・。翻翻訳しただけで中身は一緒なんですが、日本語版は専ら国内の日本人の方向けなのに対し、英語版は米国向けだけではありませんし、市民運動の浸透度からしても差が出てくるのは仕方ないですね・・。そうはいっても、一日本人としては“譲り合い合戦”で遅れを取りたくないもの。メールやツイッターなども通じて、お友達にもぜひお知らせください。

 引き続き皆様のご支援・ご協力をお願いいたしますm(_ _)m
posted by カメクジラネコ at 01:19| Comment(2) | TrackBack(2) | 自然科学系
この記事へのコメント
深海調査では、クジラの骨に群がる深海生物が発見されています。クジラが運んだ炭素源は、深海の生態系の中で循環を始めるため、表層に戻ってくるまでに相当な時間がかかります。このことから、陸上の森林よりも隔離能があると言っています。

ただしネット上では、クジラの死骸が分解して二酸化炭素の泡が上がってくるなどという話も広まっています。生物多様性年の今年は、生態系に関する啓蒙教育が必要だと感じています。

また、肯定的に引用する側も注意すべきなのは、1900年当時の炭素固定能の推定値を、現在のことだと勘違いしてはいけないことです。つまりクジラが減った現在では、炭素固定能は低下しているのです。そのためWWFノルウェーは、森林保護に資金を出すだけでなく捕鯨について再考してはどうかと提案しています。

あと、クジラの炭素固定が、人為的に排出される炭素の1%にも満たないことですが、この1%未満を無視するのか、それともニッチを重視するのか、議論の出発点にもなりますね。

日本では、環境省が興味を示したとしても、農林水産省はクジラを野生生物ではなく資源とみているので、議論すらさせないでしょうね。
Posted by marburg_aromatics_chem at 2010年03月03日 08:01
>marburg_aromatics_chemさん
一次情報のご提供ありがとうございました。
>ただしネット上では、クジラの死骸が分解して二酸化炭素の泡が上がってくるなどという話も広まっています。
はあ・・なんか溜息が出ちゃいますね(--; まさに生態学的啓蒙教育の後進国ぶりを象徴するようです。というよりそもそも理科教育のレベルですが。
化学者さんのおっしゃるとおり、現状で炭素固定能が低下していることは注意すべき点ですね。
炭素固定・除去の役目を一手に引き受ける羽目になったクロミンククジラの重要性と合わせ、乱獲の防止・漁業資源回復を始めとする海洋生態系の包括的な保全策を進めることで、他の鯨種を速やかに初期資源状態以上に持っていく重要性も増したといえるでしょう。
その点、WWFノルウェーの提案は実に頼もしい限りですね。もともと日本より環境問題に関する意識の高いノルウェー国民の理解も得やすくなるでしょう。
どっかのおバカさんのプリミティブな「一つ覚え」引用がいつまでも通用すると思ったら大間違い。。

他の読者の皆さんに「念のため」解説しておきましょう。
「泡」とやらは炭素収支としてはプラスマイナスゼロで温室効果への影響はまったくありません。実際には、分解して発生した炭素は高圧・低温で炭素不飽和状態にある深層水中に速やかに溶け込み、長期間ストックされます。これが森林以上の炭素吸収源とされる所以です。
理解できたかニャ〜?
Posted by ネコ at 2010年03月04日 00:51
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Whales and sharks as carbon credits?
Excerpt: 先月のことになるが、長年行われてきた捕鯨でクジラそのものから排出された CO2 の量を推測した結果が公表されたのだが・・・。
Weblog: flagburner's blog(仮)
Tracked: 2010-03-04 18:01