2010年01月30日

反反捕鯨論者のための復習帳・2冊目

◇捕鯨批判ブログ紹介他

 先に、livedoorにも配信されている市民メディアPJニュースの記事から。記者は環境ジャーナリストの方です。最少字数で要点がきっちりまとめられた、まさにお手本になる記事。筆者のとは対照的(スミマセン。。。m(_ _)m) 調査捕鯨問題、TVで映った南極での騒動にチラッと関心を持ったというレベルの方にはピッタリなので、そういうお友達がいたら紹介してあげましょう。

■なぜシー・シェパードは日本の捕鯨船を攻撃するのか? (1/9,PJニュース)
http://news.livedoor.com/article/detail/4540382/
http://www.pjnews.net/news/166/20100109_4
■クジラの肉、在庫が余るのに調査捕鯨再開を目指すのはなぜか? (1/27,〃)
http://news.livedoor.com/article/detail/4571022/
http://www.pjnews.net/news/166/20100125_7
■商業捕鯨は儲かるのか?融資を返せないほど厳しい財政事情 (1/29,〃)
http://news.livedoor.com/article/detail/4576048/
http://www.pjnews.net/news/166/20100128_13

 ただ・・同ニュースがやっつけで始めた世論調査は、Yahooや豪ヘラルド・サンと同じで、1人何票でも投票可能。全然世論調査などではないし、集計数も共同船舶の社員数より少ないし、意味ないニャ〜。。

■クジラを食べ過ぎると体に水銀が溜まる? (1/26,不条理日記)
http://himadesu.seesaa.net/article/139452176.html

 今月22日に報じられた朝日報道を取り上げてくれています。
 そっか・・前回取り上げた鯨研のヘンテコな「料理レシピ的マメ知識コーナー」、考えてみりゃ、これ見て「やっべ!」と思って、古いのかき回して掲載したんだね。。。

■The end of the Krill Surplus Hypothesis? (1/25,flagburner's blog(仮))
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/7b85221dcb67c1525083986924511bb1

 いつも「メディアが取り上げるニュースの裏側」と「メディアが扱わないニュース」という2種類の重要情報を拾ってくれるflagburnerさんには感謝してもしきれません。記事は最近の科学系雑誌に掲載された、オキアミ余剰仮説/クロミンク競合・間引き必要説が瓦解して大隈御大が恥かいたことを証明する論文を紹介。赤いハンカチさんのコメントも合わせてご参照。

■鯨問題は民族主義者とニューエイジャーの宗教戦争? (1/29,飛語宇理日記)
http://yanenoueno.seesaa.net/article/139705082.html

 距離を置いて捕鯨推進派と捕鯨批判派の対立の構図を眺めた面白い視点。


 

◇反反捕鯨論者のための復習帳・2冊目

 前回に続き復習シリーズだニャ〜。参照記事に付いているリンク先の一次ソースもしっかり読んでお勉強しましょう。

 
Q3:牛肉生産では1kg当りの温室効果ガス排出量が36.4kgだと聞きました。それと比べれば、捕鯨の方がやっぱりエコなのではないでしょうか?


A3:まず、この数字が掲載されているのは、つくばの畜産草地研究所という農水省所管の研究機関の研究者の論文です。牛肉1kg当り温室効果ガス排出量36.4kg(CO2換算)というデータは、モデル試算値にすぎず、日本における牛肉生産による温室効果ガス排出量の実測されたデータの平均値ではありません
 ちなみにこスウェーデンの論文(2003)によれば、有機農法型畜産を選択することによって排出量で40%、エネルギー消費では実に85%の削減が可能という結論です。つまり、システイン含有飼料との組み合わせを使えば、この算出条件で排出量を8kg以下に抑えることもまったく不可能ではないのです。
 まじめな研究者の方が地道に行った、畜産の環境負荷を軽減するための方策を探る社会的に有益な研究を、自分たちのタメにするためにここまで愚弄するのが、反反捕鯨論者(産経含む)の異常な性向だという一語に尽きますね・・。
 繰り返しますが、捕鯨産業の環境負荷が「(単位生産重量当りで)最大」かどうか、畜産より高いかどうかは、バウンダリー(境界条件の設定)を調整した専門家の手による比較研究が存在しないので、誰も回答を持ち合わせていません。
 捕鯨に関していえば、産経のあまりにもずさんなガセネタ報道については、水産庁と水研センターが存在を公式否定、筆者の試算(燃料消費分と冷媒関連で8kg/kg-CO2以上)は排出量の一部でしかありません。
 ちなみに、バウンダリーの調整が必要なのは「迂回生産」ではありません。「直接及び間接的な排出コスト」です。

■捕鯨は牛肉生産のオルタナティブになり得ない
http://www.kkneko.com/ushi.htm
■【「捕鯨はエコ」はデマだった】補足
http://kkneko.sblo.jp/article/29660865.html
■開き直った捕鯨ヨイショ新聞産経
http://kkneko.sblo.jp/article/29891813.html

 
Q4:単位生産重量当りの違いというのがよくわかりません。同じように船で運ぶのに、なぜ捕鯨とそれ以外とで差がつくのでしょうか?


A4:まず、単位をそろえる必要があることをご理解ください。「1kg生産するのにどれくらいの温室効果ガスが排出されるか」を、それぞれの排出活動で条件を同じにして比較しなければ意味がありません。
 少しやさしく解説しましょう。

<燃料消費>


1.スケールメリット
 船舶航行にかかる単位輸送量・距離当りの燃料消費、つまり燃費は、大型船舶になるほど改善されます。捕鯨船団の場合、輸送船が2隻もあって、輸送しない(一部除く)高燃費の小型船が多数含まれるので、きわめて不利になります。

2.片道と往復
 貿易輸送にかかる排出量コスト計算は片道です。これは環境省/経産省/国交省が定める温室効果ガス排出量算定基準に基づいています。簡単にいえば、貿易輸送の場合は通常往路と復路で異なる貨物が輸送され、また空荷航行の場合も燃料消費量は大幅に下がるからです。一方、漁業・捕鯨の場合は、港への往復航行時を含む操業中の燃料消費のすべてが活動に伴うエネルギー消費/排出量になるのです。単純計算で2倍を超える開きとなります。

3.フードマイレージ
 フードマイレージ自体は科学的に厳密な定義ではなく、食糧輸送にかかるエネルギー消費について一般市民にわかりやすいよう定義されたものです。
 燃料消費量/温室効果ガス排出量は輸送距離にほぼ比例して増大します(単位生産重量当り)。距離が遠いところから持ち運ぶほど輸送にかかる環境負荷はほぼ直線的に上昇するのです。沿岸捕鯨と遠洋捕鯨ではそれだけ大きな違いがあるということです。
 さらに、南極海調査捕鯨/商業捕鯨の場合は周辺の暴風圏を往復時に突破しなければならず、その分単純な航行距離以上に燃料消費がかさむことになるのです。

<冷媒>


1.スケールメリット
 容量に応じて電力消費、冷媒使用効率も変化します。容積と表面積の関係から、小型の冷凍設備ほど単位容積当りのロスする熱量が増え、冷房効率が下がるからです。

2.陸上倉庫

 反反捕鯨論者が鯨肉という商品の持つ特異性として認めるとおり、鯨肉の生産量に対する在庫の比率は際立って高くなっています。在庫保持率の指標となる年間最低月末在庫量の年間生産量に対する比率は、全水産物の平均が約12%なのに対し、鯨肉ではなんと50%を越えているのです(平均月末在庫量では80%超)。水産物といっても、加工原料/加工品、輸出入割合の高いもの、季節ものなど各種在庫傾向の異なるものがある中で、ここまで大きく数字が開いている品目は鯨肉以外存在しません。
 在庫比率が大幅に高いということは、当然ながら陸上冷凍冷蔵倉庫運転にかかる電力消費/冷媒使用による単位生産重量当り温室効果ガス排出量が、その分大幅に増えるということを意味します。

<LCA>


 各種の陸上設備の建設やメンテナンス、廃棄時等にかかる排出コストも、生産重量で割って計算しなければ比較できません。生産効率とスケールメリットが関わってきます。
 船舶については、建造とメンテナンス、廃棄にかかる排出を耐用年数×年間輸送量で割って単位を調整することになります。捕鯨船団は年2回の操業期間のみの生産のため、船舶(トン)当りの年間輸送量で大きく引き離され、単位生産重量当りで見れば、排出量が他の食品よりずっと大きいことになります。
 このように、輸送にかかる燃料消費/冷媒関連/LCA関連では、公海捕鯨の温室効果ガス排出量は《単位生産重量当り》で圧倒的に不利となってしまうのです。この環境負荷の高さが高コスト体質と直結するわけですが。
 正確に何倍、何十倍公海捕鯨の方がこれらの排出コストが割高になるかについては、水産庁/鯨研/共同船舶が正確なデータを公開し、研究者がバウンダリーを調整して比較考証することによって初めて明らかになることですが。

■地球温暖化とクジラ
http://www.kkneko.com/ondanka.htm
■グラフで解る鯨肉在庫のカラクリ
http://www.kkneko.com/zaiko.htm
■調査捕鯨による温室効果ガス排出量はやっぱり最低でも年間4万トン(C02換算)以上だった!
http://kkneko.sblo.jp/article/29682226.html

 
Q6:FAO(国連食糧農業機関)も「畜産が最大の環境破壊だ」といっています。それに比べればマシなはずの捕鯨がなぜ問題にされるのか、どうしても理解できません。


A6:まず先にA2とA3をご一読ください。
 牛肉生産が不利なのは、メタン排出(畜体及び排泄物由来)が主要な原因です。そのメタン排出を大幅に抑制・除去するシステイン含有飼料とメタン回収技術(発電利用でむしろマイナスに転じる)は既に「実用化」されています。メタン回収の方は国内のほか、途上国との排出権取引にも利用されています。既に市場があり、欧州の混合農業など伝統的畜産がモデルでもある有機農法とセットの有機畜産で堆肥のリサイクルが進めば、技術革新と合わせて飛躍的な負荷軽減が見込めるでしょう。もちろん、とくに先進国における過剰な消費量全体の削減も必要ですが。
 これらはすべて温室効果ガス排出問題に限っての議論です。
 水資源・森林資源等、温室効果ガス排出以外の畜産による環境負荷は、基本的に新興国・開発途上国のもので、日本の公海調査捕鯨はオルタナティブになる余地が文字どおり絶無です。反反捕鯨論者の多くが自ら正直に認めているように。
 FAO報告の指摘するように、畜産による環境問題の解決が遅々として進まない原因は、コストその他のオルタナティブ畜産の側の問題ではなく、「政治」です。
 ひとつは南北間の構造格差そのもの。もうひとつはアグリメジャー
 アグリメジャーの問題については以前から市民団体が取り組んできましたが、最近はマスコミ(海外)もタブー視せずに取り上げるようになりました。NHK等日本のマスコミも、自国の畜産の問題点は無視しつつもそうした情報を流すようになってきたので、捕鯨賛成派の方でもご存知の方はいらっしゃるはずですが。
 政治の話ですから、日本の公海調査捕鯨をさっさとお開きにして市民運動のリソースをそちらに振り向けることこそが、畜産環境問題への取り組みを飛躍的に進める最も合理的な解決策のひとつであることはいうまでもありません。
 あらゆる環境問題を定量化して優先順位を付けることのできる単一の指標というものはありません(環境倫理学者の議論は存在しますが)。化石燃料と異なり温室効果ガス排出がない(実際にはゼロなわけではない)原子力発電には、核移転・事故・放射性廃棄物の管理という決して無視できない問題があります。大型水力発電には、森林・水系生態系の破壊とそれに伴う生物多様性損失の問題があります。「化石燃料だけを問題にしろ、原発やダムには環境問題は存在しないから一切口を出すな」という主張が世に通らないのは、誰もが簡単に納得できることでしょう。エコ捕鯨論の誤った論法もそれとまったく同じです。
 鯨類は猛禽類や大型ネコ類、ゾウ、類人猿類などと同様、そもそも繁殖率が低く汚染(生体濃縮)の影響を強く受けるK種タイプで、重点的・優先的な保護が必要とされる野生動物です。他の大型野生動物の研究においてはまったくありえないことに、致死的調査にばかりリソース(カネとヒト)が大量に注ぎ込まれていますが、保護のために必要不可欠な、繁殖海域での生態、社会行動に関する研究はほとんど白紙の状態です。一方、南極圏生態系は固有性が高くやはり環境破壊に対して脆弱で、サンクチュアリとして優先的に保護管理されることが国際的に求められる生態系であり、鯨類と同様、二次捕食者のニッチを占めるペンギンやアザラシなどの大型動物は南極条約に基づき厳格に保護されています。半世紀以上前に発効した国際条約の硬直した運用上の欠陥によって、鯨類だけが差別的な扱いを受けているのが現状なのです。
 WWFなどの環境保護団体も指摘するとおり、南極圏生態系は気候変動によって深刻な脅威にさらされており、クロミンククジラとは生息数でも繁殖率でも比較にならないほど資源的に頑健なはずのアデリーペンギンさえ十年で絶滅しかねないと科学者たちは警告を発しています。ホッキョクグマやイッカク、アデリーペンギンなどと同じく、氷縁のニッチに適応したクロミンククジラは温暖化の影響を最も受けやすく、まさに絶滅が危惧される野生動物種なのです。その野生動物を身勝手極まりない理由で脅かす日本の調査捕鯨/商業捕鯨が、国際的に受け入れられる余地は微塵もありません。

posted by カメクジラネコ at 01:49| Comment(0) | TrackBack(2) | 社会科学系
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/35009447
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック

鯨問題は民族主義者とニューエイジャーの宗教戦争?
Excerpt: 鯨問題は正直、いまひとつ構図が分からないでいるのだが、捕鯨推進派には民族系や右翼が多いように見え、反対派は国内のリベラル系・エコロジスト・ニューエージャー・動物愛護主義者・豪州の民族主義者等の混成軍..
Weblog: 飛語宇理日記
Tracked: 2010-01-30 10:50

The end of the Krill Surplus Hypothesis?
Excerpt: 日本が南極海で行っている「調査捕鯨」で、捕鯨の対象となっているミンククジラ(minke whale)。 この南極海に棲むミンククジラの個体数増加については、競合する大型鯨類が減少したためエサのオキア..
Weblog: flagburner's blog(仮)
Tracked: 2010-01-31 20:41