2010年01月20日

捕鯨擁護記者のビックリ仰天パクリ記事

◇とてつもなく図々しいぞ捕鯨擁護新聞サンケイ佐々木記者(続)

 元客員論説委員を鯨研に役員として送り込んでいるオトモダチ新聞産経の外信部記者・佐々木正明氏が、呆れた記事を堂々と署名入りで産経紙上に掲載・・・・

【シー・シェパード抗議船がノルウェー船を偽装 ノルウェーが抗議】(1/18,産経)
http://sankei.jp.msn.com/world/asia/100118/asi1001182144003-n1.htm (リンク切れ)

 あれ? あれれれ?? ・・と読まれた皆さんは目を丸くされたでありましょう。。いかにも産経らしく独占スクープのように報じていますが、内容はほとんど既出・・。民主党嫌いの超保守紙を読んでるウヨガキ君たちが「アッパレ!」の喝采を送っているところに冷や水を浴びせるようですが、この佐々木氏の記事はミスリードを招く記述がいくつも見られます。下手をすると「産経/佐々木記者が過激な反捕鯨団体の犯罪事実を暴いた大手柄を立てた」と読者の方が勘違いしかねませんので、時系列に沿って情報を正しく整理してみましょう。

@1/5:
SSが「見事な演出だろ〜」と自分から自慢げにバラした(バカ)。
−"The Time is Right for Bob Barker to Rescue the Whales"(SS公式HP)
http://www.seashepherd.org/news-and-media/news-100105-1.html

A1/8:
ノルウェー紙Aftenpostenが記事を掲載。ロイター通信経由で鯨研の写真を使っていますが、同紙記者が自分で気づいてノルウェー外務省に問い合わせ、同国外務省側も確認したという格好。鯨研も産経新聞も出る幕なし。
−"Sea Shepherd seilte med norsk flagg"
http://www.aftenposten.no/nyheter/uriks/article3455668.ece

B1/11(午前):
化学者兼翻訳者で多国語を操るmarburg_aromatics_chemさんがノルウェーの報道に気づき、独自に俯瞰情報を収集・分析のうえ、ご自身のブログに記事を掲載。
−シーシェパードの捕鯨妨害船「Bob Barker号」がノルウェー国旗を掲げて偽装していた (1/11,ドイツ語好きの化学者のメモ)
http://blogs.yahoo.co.jp/marburg_aromatics_chem/62733737.html

C1/11(午後):
佐々木記者が自身の個人ブログでmarburg_aromatics_chemさんの記事の“一部”を転載。同ブログのイタイ誤訳記事にTBを送ったmarburg_aromatics_chemさんを気持ち悪くなるほどベタベタに賞賛。。
−[SS続報]@Whale Wars掲示板が突然の休止 ASS抗議船が、ノルウェー国旗を偽装? (1/11,Cool Cool Japan !!!)
http://sasakima.iza.ne.jp/blog/entry/1408469/

D1/12:
ノルウェー外務省がSSへの抗議文書を送付。

E1/18(夜):
産経佐々木氏大(?)スクープ(?)
(リンク上掲)

F1/19(午前):
翌朝共同通信が記事を配信(後述)。
−シー・シェパードが船籍偽装 ノルウェー、文書で抗議 (1/19,共同)
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010011901000067.html

G1/19(午後):
佐々木氏、個人ブログをアップ。自らの発掘したオリジナルの新情報であること強調するかのような内容。自筆記事へのリンクがないのは何でだろうねぇ?
−[SS続報]新抗議船「ボブ・バーカー」号の船籍はアフリカ中部のトーゴ (1/19,Cool Cool Japan !!!)
http://sasakima.iza.ne.jp/blog/entry/1421194/

 改めて解説しましょう。以下、記事の前半を引用(背景着色部分)。おかしな部分を赤字に。

 日本の調査捕鯨船団への攻撃を続ける反捕鯨団体シー・シェパード(SS)の抗議船「ボブ・バーカー」号が船をノルウェー船籍に偽装して、南極海を航行していたことが18日、わかった。船籍の偽装行為は、公海上での航行規則を定めた国連海洋法条約違反にあたり、日本政府は、捕鯨船団が撮影した写真やビデオ映像をノルウェー政府に提供。これを受けてノルウェー外務省は、同日までにSSに抗議文を送付した。
 ボブ号は、SSが今回の反捕鯨キャンペーンに導入した新抗議船で、1月6日、南極海を航行する捕鯨船団の母船・日新丸の前に姿を現し、航行を妨害した。この際、日本側はボブ号が捕鯨国のノルウェー国旗を掲げていることを確認した。SS側この事実を認めており、その理由について、ボブ号を捕鯨国の船と誤解させ、接近を容易にしようとしたなどと説明しているという。
 日本の外務省などによると、ボブ号は1950年代にノルウェーで建造され、同国の捕鯨船や海上保安船として使われたが、昨年、アフリカ中部のトーゴに船籍が登録されていた。日本政府はトーゴに対して外交ルートを通じ、適切な対応をとるよう要請している。


 SSの偽装が発覚したのは18日ではありません。5日にアホなSSが自らバラし、6日に調査船団が気づかなかったか知っててしらばくれたかして、8日にノルウェーの新聞記者が気づいて同国外務省に問い合わせたのです。では、佐々木氏が記事を書いた18日には一体何があったのか? ここで共同通信ロンドン発の配信記事をご参照。


 南極海で日本の調査捕鯨団の監視船、第2昭南丸と米環境保護団体シー・シェパードの抗議船アディ・ギル号が衝突した際、現場にいた同団体の別の船が不正にノルウェー国旗を掲げて船籍を偽装、同国外務省が文書で抗議したことが分かった。同省が18日、共同通信に明らかにした。
(引用)

 共同さんにしては珍しい記述ですね。先方から報道発表があったのではなく、同通信ロンドン支局の記者が独自に取材を行って得た情報ということです。産経は大手新聞といっても五大紙の中では発行部数も普及率も最小。海外発の情報は捕鯨関連も含めて通信社の配信記事に頼ることもしばしば。ロシア担当でノルウェー語がわかる同僚もいないらしい佐々木氏は、marburg_aromatics_chemさんのブログを目にするまでノルウェー紙の報道についてもまったく目を向けていなかったわけです。

 以下は憶測ですが、共同が各紙に流した情報を見た佐々木氏が、自分がmarburg_aromatics_chemさんのブログ情報をもとに捕鯨サークルからの捕捉情報と合わせまとめてあった内容を、「こりゃいま書くしかない」と掲載に踏み切ったと思われます。
 「18日に“誰が”“誰に聞いて”わかった」のかが判然としない国語的にはムチャクチャな文章ですし、個人ブログやノルウェー紙で既に事実が報じられているため、共同の名を使わず先行掲載したって文句を言われる心配もなし。産経が一足早く(ネット上では配信時間の差は11時間)自紙のスクープ報道にしてしまったのを見て、共同通信の記者は内心苦りきっているでしょうね・・
 「同日までに」という記述は、ミスリードを誘いつつ国語的に責任を回避する実に姑息なやり方ですね。送ったのは12日。8日のノルウェー紙記者の取材で同国外務省は「抗議するつもりだ」と答え、4日のうちに実際そのとおりにしたわけです。日本の要請とは無関係。鯨研が「いくらでも好きに使ってくれ」とばら撒いている映像を日本政府が本当にノルウェー政府に送ったのかどうかは知りませんが。
 しかし、佐々木氏の記事は明らかに「日本が資料を送ったことでノルウェー政府が偽装の事実に気づき、18日までにSSに抗議した」と受け取られかねない内容です。marburg_aromatics_chemさんのブログを読んでいない産経購読者は、そのように読み取るでしょう。
 他にもこの記事には、プロの記者が書いたにしては実にいい加減な表記が目立ちます。もちろん、これは意図的に曖昧な表記を使っているということ。「日本側」とありますが、marburg_aromatics_chemさんの記事にもあるとおり、鯨研のプレスリリースには該当記述は一切ありません(ボブ・バーカーは「SS所属」とのみ記載)。自分たちでSSの公式サイトにわざわざ目を通して「ノルウェーの元捕鯨船」と注釈を加えているほど)。つまり、船籍なんて気にしなかったか、あるいは問題を認識していたけど後ろぐらいところがあるのでしらばっくれてたか。

−反捕鯨団体シーシェパードによる妨害活動 (第4報) (1/6,鯨研HP)
http://www.icrwhale.org/100106ReleaseJp.htm

 その理由について、marburg_aromatics_chemさんは以下のように指摘されています。

鯨研としては、オリエンタル・ブルーバード号の船籍はく奪の件があるので、指摘しにくいだろう。
国際法違反との決定で、パナマから船籍をはく奪され、罰金も支払うはめになった過去がある。
そして1年間は再登録禁止のはずだが、「Hiyo Maru Two」 と改名して調査捕鯨の支援をしているという。
(引用)

 佐々木氏はしっかり読んだはずなのに、ボブ・バーカーの船籍問題に絡めて指摘することをなぜしなかったんでしょうねぇ??
 以下もご参照。

−日本の調査捕鯨船団に違法船!――パナマ政府が給油船の船籍を剥奪 ('08/10/28,GPJ)
http://www.greenpeace.or.jp/press/releases/pr20081028oc_html

 それにしても、まさか「日本側」ってmarburg_aromatics_chemさんのことを言ってるわけじゃあるまいな・・・
 次の「日本の外務省“など”ってのもよくわかりませんけどね。関係者とか協力者とか、産経はホンット好きだよねぇ・・
 不明だった船籍国の記述が、佐々木氏が個人ブログ上でもポール・ワトソンに負けず劣らず得意げに書いている唯一この記事のオリジナルというところでしょうか。
 実は、トーゴは日本にIWC票を売ったいわゆる捕鯨支持国。水産ODAは供与されていませんが、特例的な債務免除をIWC加盟前年に日本から受けています。しかも加盟した2005年は多数の死者を出す紛争の真っ只中。ODAと引き換えに上の人間が票を売っただけで捕鯨問題になど無関心だから、SS関係者の船籍登録もまったく気にしなかったんでしょうけどね。詳しくは佐々木氏のブログにリンクが張られているWikipediaと、以下の拙HPの解説をご参照。

−捕鯨推進は日本の外交プライオリティbP!?──IWC票買い援助外交、その驚愕の実態──
http://www.kkneko.com/oda2.htm
http://www.kkneko.com/oda3.htm

 産経記事は、ノルウェー政府がSSを刑事処罰に問うことを期待する内容となっていますが、共同配信記事には以下の記述が。


同省は提訴など、これ以上の措置は決めていない。
(引用)

 まあこれ以上のことはたぶんしないでしょう。面倒くさいだけで無駄なことわかってるはずだし。ノルウェー政府は内心「頼むからこっちに来ないで日本の相手をしててくれ」と願っていることでしょうね・・
 というわけで、佐々木氏がサラリーをもらって大手新聞に書いた記事の中で、彼自身が労力を割いた独自性のある内容は、「日本の外務省など」と書かれているたぶん捕鯨サークル関係の誰かさんに教えてもらったBB号の船籍判明と、在ノルウェー日本大使館への取材による「既にわかっていること」の確認だけ。
 ブログ記事のほうには、産経紙上にない佐々木氏の私見が書かれています。

トーゴの捕鯨に対しての考え方は、反捕鯨のオランダ、ニュージーランドとは違い、持続的利用支持の立場です。
どちらかといえば、日本側が支持をえられやすい国ですから、オランダ、ニュージーランドに比べると、比較的、日本側の意向を聞き入れてくれる可能性が高いと思われます。
(引用)

 いや、関係ないし。反捕鯨国のパナマだって、ちゃぁんとオリエンタル・ブルーバードの船籍を剥奪して罰金を命じたでしょ?

 まあ、ポール・ワトソンのバカげた演出に対する感想だけは、珍しく筆者も佐々木氏と同感だけどね・・
 個人ブロガーの方が語学スキルを活かして入手・分析し、インターネット上で公開した情報を、自分の“飯の種”にするのが一体プロの新聞記者のやることでしょうか? ブログの更新時間を見るとバラバラだけど、勤務時間中に大手町の産経本社のデスクでシコシコこんなもん書いて自分のブログにアップしてるの? 厚顔無恥もここまでくるともう脱帽するしかないねっ!!

posted by カメクジラネコ at 03:21| Comment(5) | TrackBack(0) | 社会科学系
この記事へのコメント
引用と関連情報のまとめをありがとうございます。
私のブログ記事にも簡単に追記しておきました。
特に、「佐々木記者の情報提供者ではないこと」を明記しました。

日本の新聞記者は、引用報道という手法を嫌うようで、独自の取材に基づく記事という書き方をしますね。
大手新聞というものは、スクープ合戦をするのではなく、緻密な取材に基づく分析記事を出すべきです。

個人ブログで知ったことは書けないとしても、ノルウェー紙の報道があるわけですから、彼らの取材に敬意を表して引用すべきでした。
元情報を明示した上で、日本鯨類研究所などに確認した情報を区別して書けばいいのです。

佐々木記者の書き方では、日本政府と捕鯨サークルが、非公式にノルウェー政府に情報提供したようにも解釈できます。産経は「日本は悪くない」という記事を書く方針だから、こうなるのでしょう。

我々一般市民が問い合わせをしても、水産庁も外務省も鯨研も回答しない一方で、大手新聞社の記者は非公式情報まで入手できるのですから、もう少しまともな分析記事にしてほしいものです。
Posted by marburg_aromatics_chem at 2010年01月20日 07:42
うはぁ・・・。

図書館で件の記事を読んだ時、速攻で marburg_aromatics_chemさんの記事を思い浮かべたのですが、やはり・・・という記事でしたね(怒笑)。
しかし、読めば読むほど似ていますね・・・。

>個人ブロガーの方が語学スキルを活かして入手・分析し、インターネット上で公開した情報を、自分の“飯の種”にするのが一体プロの新聞記者のやることでしょうかねぇ。
この辺りは、裏づけ取材をあまり行わない産経新聞の面目躍如(?)って奴でしょうか(苦笑)
ま、何を言っても佐々木氏の「手柄」にされてしまうのがオチなのでしょうが・・・。
Posted by flagburner at 2010年01月20日 20:59
>marburg_aromatics_chemさん
記事の書き方のイロハを何で教えてやらにゃならんのやら・・(--;; このヒト何年記者やってんだろね?
やっぱり爪の垢を煎じて飲ませたいニャ!

>flagburnerさん
どういう神経だと思ってしまうんですけどね・・
>裏づけ取材をあまり行わない産経新聞の面目躍如(?)って奴でしょうか(苦笑)
まさにサン流ケイ薄的言いっぱなし(笑)
まあ、はっきり言ってクオリティに関してはmarburg_aromatics_chemさんの記事の方が断然上ですけどね・・
Posted by ネコ at 2010年01月21日 02:16
農林水産大臣の記者会見を見ると、船籍についてトーゴに問い合わせたことは認めていますが、ノルウェー政府が何をしているのか把握していないそうです。

佐々木記者の記事では、鯨研などが非公式にノルウェー政府に情報提供したように解釈もできます。

ということで問い合わせフォームから、関連した質問をしておきました。
「シーシェパードがノルウェー国旗を使用したことをいつ把握したのか」
「ノルウェー国内紙の報道は把握していたのか」
「ノルウェー政府に情報提供はしたのか」
「日本鯨類研究所がもし船籍偽装の事実を知っていたとして、なぜプレスリリースで言及しないのか」

鯨研はこれまで、一度も回答しないので、農林水産省に代わりに質問することにしています。

まあ、西玉水の件も回答してこないので、今回も無視されるかもしれません。

無視するということは、一般市民の素朴な疑問よりも、佐々木記者のような業界人を優先することの証拠になりますね。

反応がありましたら、また報告いたします。
Posted by marburg_aromatics_chem at 2010年01月22日 07:21
>marburg_aromatics_chemさん
こういうくだらん質問をしたのはやっぱり産経の記者でしょうねぇ。
私も何度か質問してるんですが、産経ガセネタの環境負荷の一件以来無反応です・・。水産庁は捕鯨問題の「情報提供係」として職員を一名増やしたはずなのに、市民の問い合わせを無視するとは実にけしからん話ですわい。
Posted by ネコ at 2010年01月22日 20:14
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