◇日豪捕鯨会談は3バカトリオの内向け政治ショーで終わった・続き
■日豪首脳会談:COP15 合意実現に協力で一致 (12/16,毎日)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091216k0000m010114000c.html (リンク切れ)
■日豪首脳、政府間の協議開始で一致 (12/15,TBS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4309550.html (リンク切れ)
■日豪首脳会談、調査捕鯨巡り対立 (12/15,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091215-OYT1T01191.htm (リンク切れ)
■日豪首脳、調査捕鯨問題巡り対立も (12/15,MBS)
http://www.mbs.jp/news/jnn_4309649_zen.shtml (リンク切れ)
■「捕鯨は合法」日豪首脳会談で鳩山首相 (12/15,産経)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091215/plc0912152106027-n1.htm (リンク切れ)
■鳩山首相、捕鯨妨害で「適切対応」要請=ラッド豪首相、法的措置模索も (12/15,時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009121500967
〔オーストラリア首相ケビン・ラッド閣下の来日〕(12/11,MOFA)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/21/12/1211_06.html
〔日豪首脳会談(概要)〕(12/15,〃)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kinkyu/2/20091215_201624.html
〔岡田外務大臣によるラッド豪首相表敬(概要)〕(〃)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/21/12/1215_06.html
1ヶ月ルールどころか、4日前に突然発表された豪ラッド首相の訪日。新聞によっては、首相の当日の予定欄にさえ記載されていなかったり・・。前日10日に岡田外相が豪ABCラジオでびっくり発言をしたことが、今回の急遽訪問のきっかけになった・・というわけじゃないでしょうけど。
で、夜から翌日の朝刊にかけての各マスコミの報道が上掲のとおり。下の3段は外務省の公式発表です。比較してみると、日本政府が日豪関係をどのように捉えているか、またマスコミの認識との間で、あるいは各マスコミ間で、どのくらいギャップがあるか──が見えてきます。
後で再度検証しますが、外務省HPの日豪首脳会談のトピックは以下の順で並んでいます。
@核軍縮・核不拡散
A日豪安全保障協力
B日豪EPA
C捕鯨問題
D気候変動
他の外国要人との会談内容の記載と同様、この順番は外務省の判断に基づく両国間の懸案のプライオリティに沿ったものとみていいでしょう。このうち@ABDでは両政府間でほぼ足並みが揃っており、唯一Cでのみ両国の間で鋭い対立がみられます。外相との会談では、このCがすっぽり抜け落ちていました。ちなみに、11日の訪日決定については、「調査捕鯨も議題にする」という豪側の発表を時事などが取り上げましたが、日本の外務省側は二国間関係という言葉で濁して、捕鯨については触れていませんでした。
マスコミ報道を見ると、毎日はDC、TBSはAC、読売はCA@、そしてMBS・産経・時事はCのみ。いずれも最初に取り上げたトピックが見出しに一致。日豪関係を広い視野で総合的に捉えようとする前3者と、捕鯨での対立ばかりに注目したがる後3者とに大きくグループ分けできそうですね。ちなみに、NHKはWebでチェックした限り、少なくとも主要ニュースとして扱った形跡がありません。
@が公式発表のトップなのは、川口順子氏らからICNNDの最終報告書を2人で受け取ったのが、この会談のメインイベントだったから。本当の主題は、Aの豪軍と自衛隊の相互協定の正式合意だったといえるでしょう。捕鯨を頭に持ってきたとはいえ、この二点を取り上げたのが読売。毎日新聞はDに焦点を当てましたが、ラッド首相がCOP15出席に先がけ日本に立ち寄ったことと、ともに後ろ向きだった前政権では主要議題にならなかった気候変動問題で、協同歩調を改めて確認したところに注目した形。
それに対し、鯨研のオトモダチ新聞産経や捕鯨擁護色の強い時事通信は、捕鯨問題にばかり着目して、他の会談内容はまったく目に入らなかったようですね・・。MBSはTBSと同系列ですけど・・。確かに、対立点があればそこにスポットが当てられるのもやむを得ないとはいえ、日豪はいうまでもなく、経済的・人的な交流が盛んで相互の国民感情も含めて非常に親密度の高い国同士であり、特定の対立事項が両国関係のすべてであるかの如き報道には首をかしげざるを得ませんね。
今回朝日は筆者がまだ未チェックなのですが、岡田外相の経団連の懇談会での以下のコメントが。
■外交「日米以外はうまくいっている」 岡田外相がぼやき (12/16,朝日)
http://www.asahi.com/politics/update/1216/TKY200912160175.html (リンク切れ)
うまくいっているはずの日豪関係に冷や水を差すトンデモ発言をしたのは一体誰だかね(--;; もうひとついえば、調査捕鯨に対するラッド首相の抗議を実に軽く見ていることがうかがえます。両国にとってどうでもいい瑣末時だから、彼に言わせれば「日豪関係もうまくいっている」ということになるのでしょう。反反捕鯨的な思考様式は同じでも、国策上の重みについては産経や彼にエールを送ったウヨガキ君らと真逆の判断をしているわけです。
マスコミ報道チェックはこんなところにして、本題に移りましょう。
先に結論から言ってしまうと、両国政府にとって捕鯨問題が外交課題としてはおそろしく低い位置づけを与えられていることが、この会談で改めて浮き彫りになったといえます。
自由党のハワード前首相時代には、両国首脳会談で捕鯨について話し合われた記録はありません。労働党が政権を握ってラッド党首が首相の座に着いたのがちょうど2年前。日本に訪れたのは、昨年6月と翌7月の洞爺湖サミット時、そして今回の計3回。前2回の訪問時の相手は福田元首相で(麻生前首相とは電話会談のみ・・)、このときは「これがもとで両国関係にヒビが入らないよう気をつけながら、デソト−ホガース体制でのコンセンサス作りに努力しましょうや。SSのバカはこっちで何とかしますんで」という線で落ち着いたわけです。ソフトランディングを目指して進められてきた作業を何もかも台無しにしたのは、捕鯨サークルに操られた水産官僚と自民党捕鯨議連でしたが・・。
前回のラッド首相訪日と日本での受け止め方に関しては、過去記事でご紹介したジャーナリスト加治康男氏による解説もご参照。
■メディアに軽視されたオーストラリアのケビン・ラッド新首相初訪日の深層 (7/21/'08,MediaSabor)
http://mediasabor.jp/2008/07/post_440.html
今回は新政権発足後初めての訪日となったわけですが、結局捕鯨問題に関してはまったくの振り出しに戻った格好に。この間、首脳会談では「議論しましょう」の一言で片付けられ、その議論の中身はといえば何の進展もなく平行線をたどり、反捕鯨政策の強化を公約に掲げたラッド政権の2年間が無為に過ぎ去ったわけです。
オーストラリアの対日捕鯨政策はあまりにも見通しが甘く、戦略を欠いています。
環境問題に精通していることで知られ、閣僚にもその道のエキスパートを起用し、就任早々京都議定書批准、イラク撤退、アボリジニへの公式謝罪と重要な懸案をどんどんこなしていった敏腕政治家のラッド氏にしては、本気で取り組んでいる姿勢がうかがえません。
監視船投入や非致死調査の実施は、国内世論・メディアや反捕鯨国・NPOには評価され、まともな国であれば一定の成果にもつながったでしょうが、ミサイルを人工衛星だと言ってのける北朝鮮並の捕鯨ニッポンが相手では歯牙にもかかりません。今夏の総選挙で日本の政治に新風が吹いた後、民主党の捕鯨政策を研究したとのことですが、あまりにも遅すぎますし、今回の訪日に際してもその分析が活かされたとは思えません。まあ、「捕鯨対策協議会が幅を利かせていて自民党時代と何も変わらない」という結論にたどり着いたのかもしれませんけどね・・。この点はflagburnerさんの記事もご参照。
■「調査捕鯨」なら超党派状態|flagburner's blog(仮)
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/9aad9a5e8c124c609bb35c9f7325a335
残念ながらこれが現実ですが、脱官僚・情報公開促進という基本政策の部分で、追い風となる要素は間違いなくあったのですから、そこをうまく外交戦術・戦略の中に採り入れることもできたはずでした。
お互い内政から外交に至るまで山積みの難問を抱え、その一つ一つの事案について受験生さながらツメコミで対処している首脳同士であれば、今回わずか30分足らずの会談中に、二言三言答辞レベルのやりとりしか交わすことができないのは無理もないでしょう。しかし、この程度の内容なら、議題として取り上げないほうがむしろ無難だったかもしれません。逆に、自国のラジオ放送で迂闊にもほどがあるブンカ論を展開した軽率な岡田外相の方をやりこめなかったのは、なおのこと理解に苦しみます。
鳩山・ラッド両首脳の対談自体は、ちょうど1月前の11月15日シンガポールのAPEC出席時、及び9月24日の訪米時にも行われています。このときは捕鯨問題には触れられなかった模様。さらに、ラッド首相ではありませんが、昨年6月にスミス外相が訪日した際、当時民主党幹事長だった鳩山氏とも面会しています。このときの「奥さんの手料理」発言が、10月末に来日した蘭バルケネンデ首相との対談時のコメントとも合わせ、ウヨ新聞産経とネトウヨたちを騒がせたわけですが・・。1年後の鳩山氏の回答は、「余計なこと」を一切言わないだけでまったく同じ内容でした。
■鳩山幹事長、豪州のスミス外相と両国関係の更なる強化について意見交換 (06/26/'08,DPJ)
http://www.dpj.or.jp/news/?num=13587 (リンク切れ)
この2年間に溝を埋める取り組みがなされなかったのは非常に残念です。一方の日本側は、SSの妨害の件で豪州に再三にわたって強く働きかけ、豪警察が捜査に着手せざるを得なくなったわけです。日本の脱法的調査捕鯨の強行によってEEZ内の野生動物を現に収奪され続けている豪州が、“敵方”に匹敵するだけのエネルギーを注ぎ込んでこなかったのは明らか。カードとして有効に活用することさえできませんでした。IWCにおける日本と豪州の関係は、ちょうど6カ国協議における北朝鮮と日本との関係にピタリと符合しますが、6カ国協議での日本と同じくらいに無益な内向きのパフォーマンスばかりが目立っていたのは否めません。
日本のマスコミが取り上げ市井のネトウヨが騒いでいる「調査捕鯨問題を国際法廷に提訴する」件は、2年前の豪総選挙時の労働党の公約であり、別に目新しい話ではありません。豪州政府の対応については、marburg_aromatics_chemさんが、引き続きIWCなどでの外交解決の道を模索したうえで、国際海洋法裁判所(ITLOS)、さらに国際司法裁判所(ICJ)への提訴の順で進められるだろうと指摘してくれています。
ただこの点について、筆者は非常に悲観的にならざるを得ません。紳士的・正攻法すぎる豪州の手法は、対照的に非合法的かつ暴力的なSSの妨害活動と、勝算に乏しいという一点では大差ないと思えるからです。さっさと取り組まずに脅しにもならない可能性の示唆を事前にしたり、「何のことだかわかりませんが・・」とのたまった岡田外相を始めとする日本側の対応が鼻でせせら笑うように自信に満ちている点も、既に勝敗が見えているということから来ているのでしょう。
この辺は筆者も勉強不足だったので(汗)、一夜漬けで資料を漁ってみました。まず、国連海洋法条約のもとでは紛争解決のために4つの手続が設けられています。@ITLOS、AICJ、B常設仲裁裁判所(PCA)、C特別仲裁裁判所。いずれも国際紛争の解決手段として一定の強制力を持ちますが、@は当事者の合意が必要、Aは相手国が受諾宣言を行っていないと訴訟にならず(国によって条項毎に留保されている場合も)。一方が同一の裁判所で応訴しなかった場合にはBCに上訴されるわけです。ちなみに、@は海洋法に直に関係する事案を担当し、領海侵犯漁船員の釈放など漁業関係が多く、年に1、2件とのこと。Aは名前もよく知られていますが、人権侵害や武力紛争など国際紛争全般の処理を担当。ABでは大陸棚をめぐる紛争や洋上国境線策定に関わる事案も担当。詳細はWikipedia等をご参照。
豪州が日本の調査捕鯨を@ないしAに訴えた場合、まず日本が素直に応じないことが考えられます。ただ、引き伸ばし戦略に使えると判断する可能性も。先に当事者適格性・受理妥当性や管轄権の有無が問われ、相手国(この場合日本)が抗弁すれば先に審議されることになるので、それだけでも調査捕鯨の実施期間を1、2年ズルズル延ばせると。どうせBに持ち込んで、そこで更なる時間稼ぎをすればいいわけですから。
ここで、捕鯨問題とよく似た経緯をたどった過去の紛争処理事例が浮上してきます。いわゆる「ミナミマグロ事件」。水産・法学方面で結構有名な話ですが、一般には捕鯨問題ほどは知られておらず、それでも捕鯨問題と同じように“大いなる誤解”をしている方は少なくないようです。
経緯は次のとおり。1998〜1999にかけて、他でもない豪州がNZとともに日本のミナミマグロ調査捕獲に反発してITLOSに提訴、調査中止と既に漁獲した分枠を削減する暫定措置要求が通ったのですが、日本がPCAに再提訴。結果はどうなったかというと、「ミナミマグロ保存委員会(CCSBT)の中でやんなはれ、うちは管轄権ないし」といわれて暫定措置は無効に、つまり“日本の勝ち”です。
日本がPCAに訴えられたのは有史以来3件、前回は100年以上も前で、そのときは“負け”だったこともあり、日本が関わった国際紛争における外交上の“戦果”として引き合いにされ、外務専門職のキャリア試験に出題までされるほど。参考書の丸暗記あるいはドラゴン○流テクニックを身に着けた法科大生とかが、“優秀なウヨガキ官僚”の卵として外務省に入省しちゃったりするのかもしれないね。。。実際ウヨガキ学生が自分のブログでおバカぶりを発揮してたりするし(--;;
もちろん、「日本が勝った、ざまみろオージー」で済ませてしまっては、ミナミマグロ問題の本質は何も見えません。乱獲による漁獲枠削減の埋め合わせという、まさに調査捕鯨とまったく同じ商業漁獲の隠れ蓑の手段として“調査”の看板を立てた日本のやり方に対しては、PCAの判決の中でも強い自制が求められました。判決は法手続き論に従ったもので、日本の過剰漁獲と調査という名の偽装商業捕獲にお墨付きが付いたわけではまったくありません。また、裁判の結果を受けて、同委科学委による管理方式の改善や未加盟国の加入やオブザーバー参加が促されることに。
しかし、裁判の終結によってもミナミマグロの置かれた危機的な状況は改善されませんでした。そもそも手遅れの状態に近かったのに、紛争処理の間実効的な規制の導入が遅らされる羽目になったのです。さらに、2005年までの十年間に違法漁獲されたミナミマグロは10万トンにも上る事実が発覚。他の国の漁獲分も含め、それらの密漁マグロの大半は日本の消費市場に流れ込んでいたのです。日本は国際法の網の目を巧妙に掻いくぐるきわめて狡猾な海洋資源ギャングとの謗りを受けても仕方がないでしょう。乱獲の所為で半世紀の間に90%以上も個体数が減少、クロマグロに先んじてIUCNのレッドリストに登録されたミナミマグロですが、絶滅の危機に追いやった重大な責任があるのは間違いなく捕鯨ニッポン。
詳細は以下のソースをご参照。
■事務次官会見記録事務次官会見記録(平成12年8月)|外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/jikan/j_0008.html
■河野外務大臣談話・みなみまぐろ事件仲裁裁判の結果について(平成12年8月7日)|〃
http://www.mofa.go.jp/Mofaj/press/danwa/12/dkn_0807.html
■ミナミマグロ不正 Archive|勝川俊雄公式サイト
http://katukawa.com/category/study/species/sbt/page/2
■予想を超えるミナミマグロの過剰漁獲?|海洋汚染情報 −海の事件簿−
http://blog.canpan.info/maikohinako/archive/211
これに近い紛争事例として、キハダマグロ輸入制限事件があります。1991年、米国がMMPA(海棲哺乳類保護法)に則りおびただしいイルカを混獲していた東部熱帯太平洋の巻網漁業によるマグロの輸入制限を試み、GATTに引っかかったというもの。これも米国の負け。その後WTOの協定文にも「環境にも配慮」の一文が加わりましたが。
おそらく外務官僚と水産官僚は、こういう部分だけは綿密に計算しているでしょう。そこが北朝鮮じみたヤラシイとこなんですが(--;;
IWC(国際捕鯨委員会)/ICRW(国際捕鯨取締条約)とCCSBTとでは、条件の異なる部分もあります。まず、1948年と60年も昔に発効したICRWと異なり、CCSBTの発効は1994年。みなみまぐろ条約では、紛争時の仲裁について明記されています(16条)。これが’99年のPCAの判決の根拠となったわけです。一方、ICRWのほうには仲裁について定めた条項がありません。何しろ、8条で規定される調査捕鯨について、新種発見時の数頭レベルという制定当初の想定とはかけ離れた商業捕鯨と同規模のチョウサホゲイが出現するなど、時代状況にそぐわないカビの生えた条文が、日本の悪質なODAによる買収工作に阻まれ修正できずにいますし・・。
その点、ミナミマグロ事件のときとは異なり、ICJなりPCAがIWCに代わる調停機関になり得るわけです。この点は豪側にプラス。
ただし・・一番の問題は、それらの裁定機関で日本の調査捕鯨の不当性と豪州側の主張の正当性を「国際法に照らして」認めさせることが果たしてできるのか? という点。日本の信義違反を追及はできても、現行のICRW8条の法律解釈に沿った形で違法判定を勝ち取るのは厳しいでしょう。調査捕鯨の科学性は、確立された代替手法の存在や必要性、研究の質・量、プライオリティの観点から限りなくゼロに近いものの、「超低レベルだろうが研究は研究だ」という主張を完全に否定はできません。そもそも8条の調査捕鯨に定義が存在しないことが問題。専門的な裁定を下すために膨大な時間を要するか、あるいは結局IWCに差し戻すしかないという判断になるか。移動性野生動物種の保全に関する条約(CMS/ボン条約)の未批准問題も、同じように日本の信義違反を突けても、入っていない以上法的拘束を受けないのは仕方なし。南極の海洋生物資源の保存に関する条約(CCAMLAR)や南極条約環境保護議定書も、クジラのみ差別している非合理な現状を法的解釈ではどうにもできず。
後はJARPNUのイワシクジラ捕獲によるワシントン条約(CITES)違反が国際法学者ピーター・サンド氏によって指摘されていますが、これに対する日本側の見解は「輸入かどうかはこっちが決める」というもののよう。可能性が残っているならICJ以前にCITES事務局にかけ合うべきだと思いますが、仮にこれが認められても、勧告に従いイワシクジラ(の一部)を外すか、一部海域を除いていたのをひっくるめて留保し直すだけに終わってしまいそう・・。
他にある国際条約違反ネタは、GPのアークティック・サンライズとの衝突時の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約(COLREG条約)及び海上衝突予防法(日本の同条約にかかる国内法)違反。海上衝突予防法には以下のように定められています。
第15条 2隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右げん側に見る動力船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない。この場合において、他の動力船の進路を避けなければならない動力船は、やむを得ない場合を除き、当該他の動力船の船首方向を横切つてはならない。(houko.com〜引用)
さて、ここで以下のAFPの記事にある写真をご覧いただきましょうか・・。
■日本の捕鯨船とグリンピースの船が衝突 - オーストラリア (1/8/'06,AFP)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2012776/234572
舵をもっと手前で右側(あたご事故と同じパターン)に切らなくてはならなかったのはどっちか、どっちが回避義務を無視して条約/法律違反を犯したのかは、誰の目から見ても明らかですね。警笛で警告を発したのに日新丸側が傲岸不遜に直進し続けたというGP側の証言とも一致します。「国際条約に反したことはない」という水産庁の言い分は真っ赤な大嘘であることは、これだけでも明々白々。本来であれば、日新丸の当時の船長と共同船舶は業務上過失往来危険で罪を問われなければならないはずなのです。4年前の話で、当該NGOと反捕鯨国の海事専門家のツッコミ不足は否めませんが。。
こうして見てみると、捕鯨ニッポンの手口がどこまで姑息にして狡猾かということがよぉくわかりますね・・・・
実をいうと、捕鯨問題でICJの名が挙がるのは今に始まった話じゃなかったりするんですね〜。それも、海の向こうじゃなく捕鯨ニッポン側で。むか〜しむかしのこと、日本捕鯨協会が高額の報酬で米国の弁護士で雇い、「商業捕鯨モラトリアムの不当性をICJに持ち込め」というアドバイスを受けたわけです。その経緯については、捕鯨協会のPRコンサルタントとして長年にわたって助言者の役を務めた梅崎義人氏(現水産ジャーナリストの会会長)の著書『クジラと陰謀』に詳しく書かれています。ICJ提訴による“時間稼ぎ作戦”を日本側が当時なぜ取らなかったについては、「ロンヤス会談で無理やり飲まされた」だの、「米国の陰謀だ」だのというお決まりの恨み節が展開されてますけど・・。
ともあれ、規制を先送りさせて悪質な乱獲漁業者の儲けを確保する“時間稼ぎの戦略”は、ミナミマグロ事件においても奏効しました。発行から23年を経た『クジラと陰謀』を読み返すと、梅崎氏らが声高に非難しているのとそっくり同じ手口を、捕鯨サークルが存分に駆使しているところが実に笑えます。まあ、それも「目には目をだ!」と正当化するつもりなんでしょうが・・。
日本の捕鯨サークル側がアノ手コノ手の引き伸ばし作戦に出ることには、非常に合理的で明快な理由があります。しかし、豪側が勝算もおぼつかない中でズルズルと時間ばかりとられる正攻法に頼るのは、逆に合理性を欠くといわざるを得ません。下手をすれば新母船の建造をみすみす許し、給食枠の拡大と合わせた国内での地盤固めにより、さらに20年、30年の延命を許すことにもなりかねません。まさに最悪の事態。
ラッド首相が本当に賢明な政治家なら、こんなバカな真似をするはずはないと、筆者には思えるのです。東北大石井准教授の指摘するところの逆予定調和に乗っかり、反反捕鯨と反捕鯨の共存共栄を目指すのでない限り。
EEZ内を回遊するかけがえのない国民の財産を、北半球の飽食大国にブンカだなどと言われて勝手に持ち去られ続ければ、国民が怒ってSSをせっせと応援したくなるのは無理もないことでしょう。15日の鳩山・岡田両氏との対談で話し合われた残り4つの項目と比べても、調査捕鯨問題は決してぞんざいに扱っていいテーマではないはずです。オーストラリアにとって。
必要なのは、「外交手法での解決」にもっと本腰を入れることです。もっとも、日本に対して効果的なアメとムチとなる手頃なカードが、筆者にはあまり思いつかないのですが(--;; 米国と違って。。そこが悩ましいところ・・・
まあ、ね・・・。責任があるのは日本の方なのに、外圧頼みってのは実に情けない話ですよ・・。戦前の軍国主義そのままの拡張主義的公海調査捕鯨に対して世界が物申すのは、筆者にはあまりにも当たり前のことに思えるのですが。内発的な変化・市民の環境意識の成熟を待たずにモラトリアムを急ぎすぎたのは確かにマズイやり方でしたが、その反動に他ならないネトウヨたちの熱狂的な反反捕鯨運動、検察・最高裁・国税庁・鯨肉嫌いの友愛首相まで味方につけてしまうルサンチマンに駆られた捕鯨コネクションのどす黒い闇を前にすると、悠長なことばかりも言っていられない気がしてなりません。
岡田・鳩山両氏の反応は、お二人がこの問題についてまったく勉強しておらず、その気もないことを示したといえます。赤松農相にしても、その後の一連の答弁は築地市場移転問題で示した公平性への配慮がまるで嘘のようです。
13日に朝日の「私の視点」で米本昌平氏の主張が掲載されました。おそらく昨年のGPJ事務局長星川淳氏の主張と同じく、捕鯨サークル側が「すり替え反論」を一月もすればよこしてくるでしょうが・・。
■調査捕鯨 乏しい成果、すぐに廃止を/米本昌平(東京大先端科学技術研究センター特任教授)|薔薇、または陽だまりの猫
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/36194324c38fce8972adfacb3ce5e32d
こうした情報が閣僚たちの耳にじかに入らないよう、水産・外務官僚、民主党捕鯨対策協議会の面々が血道を上げているのでしょうね。風通しのよくない巨大組織の弱点が、捕鯨サークルにとっては実に好都合だったことでしょう。補助金漬けの水産系外郭団体と水産ODAの暗部に関しても、同様の情報遮断が行われているとすれば、ノーテンキな閣僚たちがせっかくの事業仕分けの結果を無に帰してしまいかねません。「聖域」という一言で、その実態を国民に何一つ明かすことなく。今回の二人の反応を見ると、さすがに悲観的にならざるを得ませんね・・・・
環境問題としては緊急性に欠ける小さなテーマだと思われるかもしれませんが、過去に負わされてきた、そして将来負わされることになりかねない負債の総額は、日本、豪州、世界にとって小さなものでは決してありません。前世紀のうちに解決されて然るべきだった遺物にいつまでもリソースを割き続けさせられること自体、地球環境にとってあまりに無為な浪費。SSのような連中に寄付金を支払ってしまう豪州市民、無理やり徴収される日本の納税者、いずれにとっても悲劇。何より、超民族主義・拡張主義の隠れた温床を維持することの危険が跳ね返ってくるのは、私たち日本に他なりません。
日本人にも、世界の人々にも、その危険の大きさ、怖さをもっと真剣に知ってもらわないと、本当に大変なことになっちゃうよ(--;;;;;
◇お互い“絵”が撮れてよかったですね〜
■放水砲の応酬、シー・シェパード 南極海で日本の捕鯨船と (12/16,共同)
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2009121501001004.html
■シー・シェパード、捕鯨船と放水砲応酬 (12/16,TBS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4310173.html (リンク切れ)
■米の反捕鯨団体と日本の捕鯨船、南極海で放水砲の応酬 (12/16,朝日)
http://www.asahi.com/international/update/1216/TKY200912150495.html (リンク切れ)
■シー・シェパード、捕鯨船と今年初の小競り合い (12/16,AFP)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2675589/5050523
■シー・シェパードと日本の捕鯨船、放水応酬 (12/16,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20091216-OYT1T00431.htm
■環境保護団体「シーシェパード」、日本の捕鯨船からの放水砲に応酬したと発表 (12/16,FNN)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00168484.html (リンク切れ)
■Operation Waltzing Matilda 1.0|flagburner's blog(仮)
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/c20c6a6235bb63c0f48ab5b053963dc6
「あいつが先にやったんだぁ!」
「ちがわい、あいつだい!」
これがホントの水掛論だニャ。。
実際には、読売と産経系列のFNNが報じているとおり、先に手を出したのは調査捕鯨船団側ですけどね。他の日本のマスコミはSSのHPなんかをネタに記事にしてしまっていますが・・やっぱり根っからのSSファンなのかニャ?
もう勝手にやっててちょうだい。。。
−シーシェパードをぶっつぶせ (拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/34155590.html
◇沖縄のジュゴンと南極のクロミンク2
辺野古沖移転を白紙に戻したのは評価できますが、いつまでも普天間の危険を放置するわけにもいかんでしょう。名護市長選が終わった辺りでビシッと国外移設に決めてほしいよね。どっかの学長さんが言ったみたいに、ごねたら電気と水道止めてまえ! 国債も全部売っぱらったれ! ・・てな具合にいけばどんなにいいことか。。。
ちょっと解せないのは社民党の方針。来年の参院選で勝つ自信があるのか・・。それとも、引き伸ばして選挙の争点にするなんて、まさかそんな真似はせんよなあ。。
いずれにしろ、同党にとって来夏は苦しい立場に追い込まれそう。現状維持(スレスレで民主過半数割れ)は、自公が勝って逆ねじれになるより可能性が低いよね。。
選挙後まで引きずったら、沖縄は間違いなく切り捨てられるでしょう。
それよりは、先にはっきりと成果を挙げたうえで、国民の審判を仰いだほうがいいんじゃないですか? 実行力を買ってもらったほうが。
オバマ米国を説き伏せる格好の材料、考えてみちゃくれませんかねぇ・・・
◇衝撃のナマコストラップ
話を小耳に挟んだとき、ふうんと聞き流したんだ・・
まさか「本物」を使ってるなんて、誰も思いやしないもの・・・
いくらね、肛門から腸を出して魚に食わせても平気だからって、バラバラに崩してももとに戻るっていったって、いくらなんでもそりゃないんじゃないの!!??
そんなストラップ付きのケータイぶら下げてるネェチャンたちの誰1人、本物と、木で作った模型と、プラスチックで作った模型と、区別なんかつかんでしょう。誰1人。
いや、区別がついたからってだからどうなんだっつーの
それとも、ナマコストラップは日本の由緒正しい伝統文化だ!とか言い出すつもり?
ああ・・その屁理屈、確かにそっくりではあるよね・・・
沿岸の生物を利用している分、まだこっちの方がマシなのか・・・
イノチってなんですか?
ここまで堕ちた、世界最悪の命と自然の浪費国家・捕鯨ニッポン