2009年12月04日

事業仕分けとクジラ・2/沖縄基地問題と捕鯨問題

◇事業仕分けとクジラ・その2

《行政刷新会議HP》
http://www.cao.go.jp/sasshin/index.html
■行政刷新会議ワーキンググループ・配布資料(11月24日)
「無償資金協力援助(ハコモノ無償)」
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/pdf/nov24-pm-shiryo/2-46.pdf
「同評価コメント」
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/pdf/nov24kekka/2-46.pdf
「無償資金協力援助(各協力案件の選定方法)」
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/pdf/nov24-pm-shiryo/2-47.pdf
「同評価コメント」
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/pdf/nov24kekka/2-47.pdf
■疑惑まみれ水産ODA (JANJAN)
http://janjan.voicejapan.org/government/0905/0905150461/1.php
■捕鯨推進は日本の外交プライオリティbP!?──IWC票買い援助外交、その驚愕の実態── (拙HP)
http://www.kkneko.com/oda1.htm

 前回記事にした捕鯨の仕分け作業、本日はやや詳細に論じたいと思います。海外漁業協力財団(OFCF)の鯨研への融資問題についてはGPJが指摘しているのでそちらに譲るとして、ここでは水産ODA問題に焦点を絞ってみましょう。
 以下、前回も貼った上掲リンクの行政刷新会議の資料をもとに解説していきます。前回の記事を読んできちんと予習していただいた皆さんには、これ以上の説明はもう要らないかと思いますが・・
 上から2番目と4番目のリンクは、今回の事業仕分けに際して各事業毎に作成された事業シートですが、担当部局の概要説明と評価する側が整理した論点のセットになっています。官庁側の説明はいかにもこれまでの霞ヶ関官僚らしい文章で、国民目線で提起された論点と噛み合ってない感じですね。
 まず、ハコモノ無償に関する概要説明。外務省側は、社会インフラ・経済インフラとしての途上国側の必要性を取り上げ、両者のバランスをとることが「国際的な援助潮流」だと説明。鳩山首相の国連演説も持ち出して、政権におもねる様子がアリアリとうかがえます。もっとも、筆者がHPで解説したとおり、「国際的な援助潮流」に逆行し、途上国側の必要性という観点からいっても公平性・合理性に著しく欠ける、政治的動機に基づく水産ODAに関しては、一言も触れていません。金額的にも決してバカにならないうえに異常な格差が明らかになり、傍目にはまるで“ニッポンの援助外交の目玉”であるかのように映る水産ODAですが、外務官僚にとってはどうでもいいカテゴリー、さらにいえば“お荷物”でしかないという本音が透けて見えます。
 それに対し、論点の方を見ると、削減できるポイントが2つ掲げられています。
(1)円借款供与国に対するハコモノ無償援助は、自立的な経済発展につながらないのでやめる。
(2)国別援助計画が策定されていない、要するに対象国のインフラ整備の全体像も描けてない“いい加減な代物”はやめる。
 
最後の6ページ目には、H19年(2007)実績に基づく表を用意してくれています。(1)に該当する水産無償は3件、このうちの1件9.68億円がいわゆる捕鯨援助です。どこの国かというと、最大の水産ODA被供与国であり、タコを乱獲した持続的水産業の落第生・中東のモロッコですな。で・・(2)の方を見てみると・・ワハハ、全滅じゃ。年間総額46億円の水産ODAのうち、捕鯨支持国でないインドネシアへの10.7億円分を除く残りすべては、国別援助計画が策定されていません。まあ当然の話なんですが。
 続いて、案件の選定方法にいってみましょうか。こちらの概要説明に目を通すと、「ODA(カネ)こそ日本の外交カードだ」という外務省の認識が、上記のハコモノに関する説明よりも鮮明に出ています。「だから(高い政治性があるから)、中身は問わなくていい(事業者丸儲け)」というのが旧い自民党時代の援助外交であり、国民の審判に基づく政権交代によって、それはもはや許されなくなったはずなんですけどね・・。こちらでも、優先度の話をしている中で、主な援助として掲げた(イ)から(チ)の八つの分野の中に「水産」はナシ。おかしいニャ〜、どうしてだろニャ〜?? また、事後評価に関して事例をあげていますが、これも筆者がHPで解説したとおり、捕鯨ODA(水産無償&水産技術協力)は完全に枠外となっています。
 論点では、ハコモノと同じように「まずは国別援助計画を策定」と明記。これは上述のとおり。「基本的に要請のあった国に対し、在外公館による相手国の要請の積上げを支援しているのが実情」「案件採択について、どのような検討過程で国や案件の採択が行われているか不透明」「平均落札率が95.1%(H18年度)と国土交通省の平均落札率88.8%(〃)と比して高止まりの傾向。入札参加者数も1社または2社入札で82.1%」とズバリ指摘。HPでも紹介した、ちょうど昨年の決算委員会における牧山参院議員の質問を踏襲する形で、非常に的確に日本のODA事業の抱える問題点を突いてくれています。
 調達に関しては、筆者がH17年〜H20年までの水産ODAに関して外務省発表資料をもとに算出した数字はなんと98%! 競争性・透明性の点で、国内のゼネコン公共事業より数段劣るODAゼネコン事業の中でも、悪質さで飛び抜けているのが捕鯨業界とつるんだ水産ゼネコンのODA事業だと、数字ではっきりと示されたのです。これも詳細は拙HPご参照。改善策については、「世銀を見習え」「国際援助協調の場にまじめに顔出せ」「費用対効果・削減効果をきっちり数値化し、徹底的に事後評価しろ」と、まさに天下りOBと捕鯨ゼネコン業者にきっつーいお灸を据える内容。
 いよいよ事業仕分け結果のコメントに映りましょう。先に「案件の選定方法」から。どのコメントを拝読しても、担当した第2WGの仕分け人の皆さんが、外務省の担当者以上にODA問題についてしっかりと勉強したうえでツッコまれていることがよくわかりますね。いずれも捕鯨ODA(水産ODA)の問題点と直結しますが、以下にいくつか抜き出しておきましょう。


・相手国との交渉・調整が必要であることは理解できるが、透明化を図るべきであり、透明化できない場合にも、その理由を明らかにすべき
・会計検査院で指摘される事例が多い。より厳格で透明性の高い第三者機関で事前・事後評価をすべき。
・(外交機密があるにせよ)仕事の進め方自体に改善意欲が見られず、スピードが遅い。



 これまでの日本のODA事業における「外交機密」は、税金を使った官僚と業者(ともに内外)の宴に使われてきたことを、他でもない日本国民の目から包み隠すための口実にすぎない側面が多分にありました。事業の効率性や調達の透明性、きちんとした事後評価は、そもそも機密に属する話ではまったくありません。3つ目の改善意欲とスピードは、こと捕鯨ODAに関しては「外交機密」というより、「(農水出向組という)内部の突き上げ」に、外務官僚が嫌気が差してやる気が起きないのかもしれませんけどね〜。。
 そして総評は「見直しを行う」。担当した第2WGの13名全委員一致の見解です。以下にとりまとめコメントを引用しましょう(背景着色部分・赤字強調筆者)。


 「案件選定過程の透明化、成果目標等の数値化、事後評価の徹底」や「国別援助計画なき支援は削減し、早急に計画を策定」については、仕分け人の評価どおり見直しを行っていただきたい。まずは、援助のPDCAサイクルをしっかりと確立していただきたいと思う。また関連して、国別援助計画についても策定するようお願いしたい。
 今回、議論を聞いていると、予算の獲得や消化に汲々とされており、チェックの部分がどうしてもずさんになってしまう感じがあった。会計検査院、さらに参議院の決算委員会等でもODAについての指摘がなされるなど、ずさんな例を数え上げると枚挙にいとまがない。また、外務省の方々が実態の把握をきちっとされているかについても疑わしい部分も見受けられたため、PDCAサイクルのチェックの部分について、より重点を置いていただきたいと思う。さらに、本日は政務官もおいでであるので、有償・無償の切り分け、タイド・アンタイドのあり方等、全般的に見直しを行っていただきたいと思う。
 最後に、先ほどのノンプロジェクト無償の見返り資金の情報公開についてであるが、外務大臣が判断すれば出るのかどうかは不明であるが、政務官には、行政刷新会議に提出していただくようお願い申し上げ、評価コメントとしたい。」



 この仕分け案件は予算の話ではなく、これまで野党時代に民主党が自公政策の問題として厳しく追及してきた点でもありますから、外務省側が「見直し(透明化や事後評価)はしません」といって、仕分けの結果を覆すのは到底許される話ではありません。ここは岡田外相&鳩山首相の英断を信じることにしましょう。
 続いてハコモノの評価結果。同様に仕分けコメントを抜粋。

・無償協力の内容が本当に相手国現地のニーズに合ったものかどうか、事業の企画段階、実行の監理段階、施行後の検査等々地道に行われていない。一つには日本企業が必ず受注する仕組みになっていて、必ずしも現地レベルに合わせた事業になっていない可能性。一つにはJICA組織そのものがまったく「現地化=現地の人材が事業の中心となる」ような方向を向いていないことにあると思う。これからも同様な事業運営である限りJICAの存在意義は極めて小さく感じられる。
・タイドの説明が「顔の見える支援」というのがどうもよくわからない。この際、日本企業の海外進出支援を目的とする方がまだわかる。
・無償を供与する際の審査時に相手国の政治状況やキャパシティを踏まえた意思決定をすべき。



 存在意義のなさで言うなら、OFCFはJICAの比じゃありませんよ。ていうか百害あって一利なし。また、捕鯨ODAに関わるコンサル・ゼネコンは公共事業の甘い蜜を吸いたいだけで、投資する企業もろくにない捕鯨支持国に進出する気なんざ、端からありゃしません。さらに、捕鯨支持国の中には、コートジボワールやトーゴやギニアなど、軍事クーデターが勃発して住民の虐殺が起こったりしている地域も含まれています。IWC票買いが目当てでガバナンスをまともにチェックする気などないからです。
 そして、きわめつけのコメントも。

・水産無償は廃止。

 自民党を盾にこそこそ隠れてボリ放題だった水産コンサル・ゼネコン業界と、オトモダチの捕鯨サークル関係者の悲鳴が聞こえてきそうですな・・・
 総評では、WGのメンバー全員16名が予算要求削減を支持、うち3人は「半減しろ」とまでおっしゃっています。以下、とりまとめコメント。

 ハコモノ無償について見直しを行い、予算要求の1/3 程度を縮減していただきたい。削減したから全部やめるというわけではなく、ハードな部分からソフトな部分へ、また、人への支援にも使っていただきたい。また、援助計画がきちんとできていない国もあるので、しっかり策定してほしい。有償でできる国はできるだけ有償で、経済インフラについては円借款で行っていただきたい。学校建設も、徐々にコミュニティ開発に移すなど、もっとコミュニティ開発にウェイトを移していただきたい。一般無償は、生命・健康に直結するような人のセキュリティ案件を優先させていくのが結論。このような方針で改めて見直しを行った上で、ハコモノ無償を続けていただきたい。


 結論としては1/3縮減という形となりましたが、その削減も単に事業単位の絞り込みのみならずハコからソフト・人へのシフトということがはっきりと謳われています。タックス・ヘイブンでしこたま儲けたアンティグア・バーブーダをはじめとするカリブの捕鯨支持国等に無償で援助するのははっきり言って無駄。学校建設にさえ厳しい目が向けられているのですから、天下り水産官僚OBを業界団体に迎え入れている水産土建屋連中に宴を開かせるために国民の血税を投じるなど言語道断。

 仕分け結果をのまされた場合、おそらく捕鯨サークル側は港湾等の建設事業からOFCFが仕切っている技術協力を頼みの綱とするでしょうが、事後評価の検証でアウトになることは必至。
 重点項目として挙げられた子育て・環境支援枠には、水産ODAの分をそっくり振り替えればよろしい。歳入は厳しいし、かといってODAはやっぱり大切ですからね。これで万事メデタシニャ〜♪

参考リンク:
猫玉さんに教えていただいた動画(多謝m(_ _)m)
−事業仕分け 報道されない調査捕鯨「見直し」判定
http://www.youtube.com/watch?v=Kpd8SpagFcg

−行政刷新会議の見直し基準に調査捕鯨をあててみる その1 (11/12,GPJ)
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/whale/t2/sato/14
−事業仕分け作業で調査捕鯨への融資断たれるか? (11/17,〃)
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/whale/t2/sato/15
−調査捕鯨の手段の有効性を考察する (11/27,〃)
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/whale/t2/sato/16
−調査捕鯨は事業として効率的か? (12/3,〃)
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/whale/t2/sato/17

 

◇沖縄基地問題と捕鯨問題

■鳩山首相、新たな移設先の検討指示=普天間、年内決着断念 (12/4,時事)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091204-00000004-jij-pol (リンク切れ)

 さて、鳩山首相が沖縄の普天間基地移設問題についての結論を先送りにしました。
 マニフェストと連立合意を重視するのは、選挙いう民意の結果を尊重することとイコール。鳩山氏も小沢氏も選挙前に沖縄県民の皆さんに対し訴え続けていたことでもありますし、自民党政権から「まったく路線変更なし」というのはそもそもあり得ない話。保守派メディアは何やらブーブー言ってますが、恣意的な新聞見出しは無視するに限ります。
 そうはいっても、財政規律と外交は、確かに軽んじていいものではありません。とくに、沖縄の米軍基地をめぐる問題は、日米間の安全保障の根幹に関わり、戦争に翻弄され続けてきた沖縄の歴史とも切っても切り離せない、スケールが大きくかつデリケートな事柄。「政策の硬直化=現実的」とはいえないまでも、前政権下での合意を白紙に戻せばタダではすまないでしょう。
 しかし、普天間の危険を放置したり嘉手納の騒音を増やすことなく、県民の願いを挫きジュゴンやサンゴの海を傷つけることもなく、解決に至る道は本当にないのでしょうか? それを探る努力を一体どれだけしてきたといえるでしょうか? とりわけ、代償を全部押し付けてきた責任があるところのの本土に身を置く私たちは。
 米国は日本にとって一番の友好国であり、信頼の構築・発展が欠かせないのは今さら言うまでもないことでしょう。ただ、米国との関係を絶対不変視し、「米国の機嫌を損ねると大変なことになる」と目一杯危機感を煽る前に、少し距離を置いて「何が“本物の友好”なのか」を冷静に考えたいもの。
 米国政府の頑なな姿勢やマスコミの厳しい対日批判は、3億人の米国民すべて、オバマ政権内の要人を含む識者全員のものとはいえないはずです。もちろん、日本の捕鯨に対する賛否も同様ですが。日本の保守メディアや外務官僚は、早合点(?)して“米国の意思”を勝手に先取りしたつもりでいましたが、当のオバマ大統領自身、「政権が交代したのだから見直しは当然だ」とはっきり明言しているわけです。
 オバマ氏が大統領に当選して民主党政権になって以来、米国の外交政策はダイナミックな変化を遂げました。一国行動主義から国連を中心とした国際協調へ。イラン問題では対話を掲げ、欧州をなだめるほど。思い切って核軍縮構想をぶち、ロシアに対して欧州ミサイル配備問題で、共和党時代であれば信じがたい妥協をし、パレスチナ問題でイスラエルに物申し。F22の開発問題など、軍需産業という聖域にも現実的な変革が求められる時代になったのです。この米国の防衛外交路線の転換は、明らかに日米二国間外交の上位に位置付けられるもの。それなのに、なぜ日米の安全保障文脈だけが不動のものとして扱われているのか、そこが理解に苦しむところ。
 防衛省予算維持のレトリックにもつながることですが、日米安保体制・米軍基地の規模を現状のままとどめる理由は本当にあるのでしょうか? 北朝鮮は厄介ですが、本来“冷戦の落し物”にすぎず、極東で欧州のように過去をきっちり清算できなかったツケが回ってきたというべき。いずれにしろ、2つの軍事大国の同盟が最新の軍事水準を維持し続ける必要のある相手ではありません。その意味で従来仮想敵国として想定されてきたのは、ご存知のとおり中国。ところが、オバマ大統領は対中外交についても、敵対・封じ込めから協調へと明確に路線を変更しました人的・経済的な相互依存が軍事的緊張の入り込む余地をなくすという、いわゆる戦略的互恵関係というやつですね。
 では、なぜ日米安保だけが、沖縄の負担、「思いやり」という名の日本国民の多額の経済負担と合わせ、不動不変でなくてはならないのか? 国際環境の激変に合わせて臨機応変に適正な水準に調節することが、なぜ日米の間でだけのみかなわないのか?
 さて、捕鯨問題に関心をお持ちの方は、東北大石井敦准教授の「なぜ調査捕鯨論争は繰り返されるのか」をチェックされたかと思います。で、同論説が掲載された昨年3月発行の『世界』に、ジャーナリストの加治康男氏の「検証・日豪安保宣言」という記事も載っているのですが、これがなかなか面白い内容でした。というか、まあリベラル論壇ではしばしば指摘されるところであり、わかってる人は誰でもうなずく話というやつで・・。とりあえず持っている方はご一読を。
 一つには、「思いやり予算」、あるいは「応分の負担」という名で押し付けられた、ウサギ小屋とは雲泥の差のある米軍高級将校のプール付き大邸宅建設費を含む海兵隊のグアム移転の巨額費用など、米軍の利権。要するに、軍需産業ゼネコンが関わってるちゅー話ですわい。カネを出す日本の納税者にゃ米国の選挙権はないからね(--;; どこの国でも一緒で、実にわかりやすいですな! グアム移転自体、沖縄への配慮ではなく太平洋の米軍再編計画の一環であるということも、皆さんご承知のとおり。
 そしてもう一つ。「日本を監視のもとに置く」という理由。小泉・安倍政権時代に一時台頭しかけ、元航空幕僚長が崇め奉られ、慰安婦問題など中韓摩擦・強制集団自決問題など沖縄−本土摩擦・あるいは核武装論など、ことあるごとに頭をもたげる復古主義的ナショナリズムに対する根強い警戒感があるため。本音を吐けば、日本は「綱を解くと何をしでかすかわからない国」であり、常に飼い慣らし続ける必要があるというわけです。それは、防衛開発研究等における“非対称性”からも十分にうかがえること。リベラル派の有識者のみならず、米国事情通の外務官僚の中にはとっくに気づいている方も少なくないでしょう。

 米豪両国は党派を超えて日本の保守層を異端視し、日本社会の底流にいまだに淀み続ける狭量な国家主義、国粋思想、かつての軍国主義・ファシズムへの警戒を怠っていないのである。先の外務省キャリアは「米国が安倍政権の長期化を恐れていたのは確か。彼に戦前の超国家主義の残影をみていたと思う」との見方を示した。
 (中略)米国際戦略センター(CSIS)から07年2月に公表された第二次アーミテージ報告書のタイトルは「米日同盟 2020年までにアジアを正しく方向付ける」である。「正しい方向」とは「米国と同盟国にとって(中国に対して)有利な勢力均衡の創出」を意味するというのが、研究者らのほぼ一致した解釈である。
 ただし、そこには「その前提として孤立を深める日本を米豪が共同して監視し、正しく方向付ける(GETING JAPAN RIGHT)」との二重の意図が込められている。(以上引用)


 上述したとおり、米豪両国は政権交代によって対中外交の方針を転換し、在日米軍の規模を維持する大きな名目の一つは失われつつあります。沖縄の米軍基地は、暴発した北朝鮮に対する歯止めとしての意味はほとんどありません。では、もう一つの“裏の名目”の方は? 日本も党名だけは同じ民主党が政権を担うことになりました。大所帯で必ずしもリベラルとはいえないとはいえ、ネオコン議員が山ほどいた前政権よりリスクは大幅に下がったはず。後は、そのことを米国に認識させることができるかどうかです。
 「ロン−ヤス」だの「ジョージ−ジュンイチロウ」だのと“見せかけの演出”仲良しのフリだけしても、実際には腹の探り合いばかりして(上手だったのは常に米国の方だったけど)、いっつもすれ違いで相思相愛とは決して言いがたかった日米関係。鳩山民主党はマニフェスト上で対等外交を掲げたものの、本音をぶつけ、そのうえで相手の意も汲み取るという、“真の友人”の関係をオバマ米国との間で築けたとは、残念ながらまだいえないようです。
 この際、霞ヶ関官僚や共和党時代と同じ米軍関係者を外し、オバマ氏、鳩山首相、福島社民党党首の3人で、広島・長崎・沖縄の地を訪れ、腹を割って話し合ってみてはいかがでしょうか? まず国の立場を離れ、1人の人間として。そのうえで、市民の暮らしと安全を守る指導者として。
 県外移設であれ国外移設であれ、沖縄の負担をまた別の誰かに移し変えるだけにすぎません。夜間の大騒音に悩まされたり、事故が起きたり、犯罪が多発したり、汚染が発覚したり、戦争の予防のために、環境にも財政にもあまりに大きすぎる負担をかけ、ときに守るべきはずの人命さえ失われるのでは本末転倒。軍事偏重・敵対外交はコストがかさむだけで合理的といえないのは確か。
 もちろん、核軍縮と同じく一朝一夕に何とかできる話ではないでしょう。しかし、在日米軍を現実に見合ったコンパクトで適正なサイズにカストマイズし直すということは、常に議論されていいはず。むしろされないのが異常でしょう。米軍だって沖縄以外では常にやっているはずなのですから。これも捕鯨と一緒で、聖域にして議論を封じてしまっては、思考停止による現状正当化、さらには非合理な肥大化につながるだけ。沖縄の米軍基地縮小は、日本の平和外交への転換を明確に示すものであり、「二度と過ちは繰り返さない」という堅い決意とセットのものですから、スジとしては米国の日本脅威論を解消するのにも役立つはずです。
 ノーベル平和賞を受賞したはいいけど、医療保険制度改革で難儀し、保守派の巻き返しに遭い、支持率が急激に落ち込む中で、折しも泥沼への一歩となりかねないアフガンへの増派声明を発表したオバマ大統領。鳩山首相も献金問題で揺れ(弟さんも一緒なのは当然予想されたことだけど・・)、予算規模圧縮に頭を抱え、沖縄や事業仕分けなどで偏向メディアに反発を受けている立場ですが・・。
 いまならむしろ、四面楚歌の大統領の“味方”“よき理解者”を積極的に買って出て、個人的な信頼関係を築く好機なのでは。以前首相がコメントされたとおり、近似点も多いはず。二人が窮地を脱するうえで外交成果ほど打ってつけのものはないでしょう。そして、それが双方の国民にとって目に見える確かな果実であるほど、効果は高くなるでしょう。
 すれ違いの現状維持よりも、よっぽど信頼関係を構築できる外交施策は決して少なくないはずです。軍事・非軍事(カネヅルではなく・・)の役割分担をして、軍事に頼らない民生支援と、ある程度民主化が根付くまでの治安維持という両国の持ち味を生かしたコンビ外交。かつての被害者と加害者という象徴的な二国の緊密な連携による核軍縮加速化。同じく地球温暖化対策での緊密な連携は、クールアース・パートナーシップを民主政権に合わせて補強したうえで途上国支援のモデルとし、米国と役割分担をすることで中進国に対するより効果的な説得材料となるでしょう。軍事同盟なんぞより、親密な友好国同士の関係としてよっぽど相応しいじゃありませんか。
 連立政権の間であれば、鳩山首相とオバマ大統領の在任中であれば、決して不可能ではないはず。現状維持が現実ではありません。「自民党と何も変わらないじゃないか」と沖縄県民に怒りを買い、リベラル派に見捨てられ、保守派だって「これで自民復権が早まった」とほくそ笑むだけのゲンジツロセンなど。そして、沖縄の苦しみも、時代の潮流も、確かな現実。こどもたちに遺すべき未来もまた現実
 ああ・・忘れてました。沖縄県民の米軍基地縮小ムードの盛り上がりに対するとてつもないビッグ・サプライズに対し、タダというわけにはいきませんな。米国側にもそれに匹敵するだけの“お土産”を用意しなきゃ。
 外交は、バランスが大事です。お互いに、押して、引く。
 保守メディアが最上の賓客のごとく気配りを見せ、「不信を買うことは一切罷りならん」と声高に唱えるのと同じ相手に対し、アングロサクソンの人種差別主義者がどうのこうのと、同盟国・友好国に対するとはまったく思われない独善的な暴論を撒き散らし、欧米豪の日本脅威論に明らかな根拠を与えているもの。米軍の規模縮小の妨げとなっているトゲ。何しろ、当事者のネオコン政治家も支持者のネトウヨたちも、怨念の如きルサンチマンに駆られたあからさまな文化帝国主義・拡張主義者どもだからねぇ・・
 沖縄の米軍基地・県民負担縮小と引き換えの公海捕鯨撤退。ともに段階的で結構。
 筆者は結構まじめにこれが唯一の現実的な打開策だと考えています。
 鳩山首相、福島党首、オバマ大統領。真剣に《チェンジ》を考えてみませんか?
 米国と豪州の市民は、マスコミが嘯く基地問題における両国関係のなど、のように大歓迎で受け入れ、鳩山首相を絶賛するでしょう。翌年の平和賞候補になれるかも!? オバマ大統領の支持率も、確実に上昇することは請け合い。また、日本の外務官僚がこれをうまくやってのければ、その優秀さが高く評価されることもまた間違いなし。たかが捕鯨でこれだけポイントが稼げりゃ、日米どちらにとってもこんなに美味しい話はないはずです。 
 ついでに、美しい自然がこれ以上脅かされることもなくなり、座間味のように非消費的な生きた野生動物のワイズ・ユースの実績のある沖縄と米豪との民間交流が深まれば、両国のすべての市民にとって言うことなしですよ。

posted by カメクジラネコ at 03:49| Comment(0) | TrackBack(1) | 社会科学系
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/34000727
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック

Propaganda en Enbajada del Japon
Excerpt: 在外日本大使館サイトの一部に、日本の捕鯨に関する意味不明の説明文が掲載されてることを最近知った俺(馬鹿)。 内容は、例によって『「調査捕鯨」最高!』と言い張るためのブツだったが・・・。
Weblog: flagburner's blog(仮)
Tracked: 2010-01-14 20:03