2009年10月22日

捕鯨のメッカ太地のイルカ漁V.S.「THE COVE」/先住民の伝統V.S.捕鯨ニッポンのデントウ

◇先住民>西洋諸国>捕鯨ニッポン(太地&共同船舶)・・・・自然破壊とその反省で進んだ順です

■メガファウナ〜巨大動物 繁栄と絶滅の歴史〜|地球ドラマチック (10/15,NHK教育)
http://www.nhk.or.jp/dramatic/backnumber/178.html
■フクロライオン|古代の巨大獣HP
http://biggame.iza-yoi.net/Pleistocene/Thylacoleo/Thylacoleo.html
■ティラコレオ|Wikipedia
ã‚3レã‚a">http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%82%B3%E3%83%AC%E3%82%AA

 今年放映されたオーストラリア・フランスのテレビ局とナショジオの共同制作によるドキュメンタリー。さすがに俳優さんに食われるシーン(足ブルブル)までやらせるのはやりすぎだニャ(--;; 当人はノリノリだったのかもしれんけど。。
 主役に当るティラコレオ(フクロライオン)、筆者は前々からこいつはフクロビーバーなのではないかと睨んでるんですけどね・・。番組で登場したCG(2番目のリンク先のイラストも参照)、豹柄の毛皮や目つきは名前のとおりライオン風に勇ましく描かれてますが、動作は鈍くとても獲物を追っかけられそうにないので、木から飛びついたとか待ち伏せしてたとかいわれてます。その時点で既にライオンでも何でもなし。フクロギツネやフクロネコなんかもキツネやネコとはかなーり違うけど・・。
 最大の相違点が、退化消失した犬歯の代わりに捕食の役割を果たしたとされるでっかい切歯(門歯)。真獣類(有胎盤類)と有袋類の各種間の相似性を見ればわかるように、生物種の形態の最適デザインはニッチ毎にある程度絞られるため、強い収斂が見られるわけですが、ここまでヘンテコな肉食獣は生物の進化史上前代未聞。こんな極度に特殊な形態で、後に説明する理由で絶滅するまで、500万年以上も生き永らえていたとは、とても思えないんですよねぇ・・。
 体重相応の大型の獲物を捕らえるのに、ヒョウのような待ち伏せ型の捕食スタイルをとるのであれば、足を使ったり群れで狩るチーターやオオカミなどの能動的なハンティング方式に比べ、一撃必殺で獲物を仕留める重要性が増してきます。抵抗されて負傷したり逃げられるリスクを下げ、成功率を上げなきゃならんわけです。大型ネコ類の多くは咽喉笛に噛みついて窒息させ、ネコの場合はネズミの頚椎を切断して即死させます。生まれついての本物のハンターの多くは、ヘッタクソな砲手のようなニセハンターに比べりゃ、まだ慈悲深いってもんです・・。で、一点に力積を集中させることができ、構造的にも強固な円柱状の犬歯(牙)に比べると、前後に平たい構造を持つ切歯は、面と垂直方向に大きな力を加えられたり、先端部分が切断面と平行にならずに力が一部に集中したりすれば、パッキリとイッてしまいます。獲物の表面はただでさえ柔らかい組織の上を毛や羽毛が重なるように覆い、力が分散しやすい構造ですし、それでも暴れまわる獲物を瞬殺することが要求されるわけです。動きまわる木の狙い定めたポイントに、正確かつ瞬時に彫刻刀を当てて彫像を彫ろうとするようなもの。大きな鉤爪の方が、まだ捕殺時に威力を発揮したと考えられるでしょう。でも、そうすると門歯がやたらデカくても邪魔なだけ。だから、食肉目(ネコ目)は軒並み前歯が小さくなっているのです。海中においても、イルカや魚食性の魚は円柱状の歯列を備えているのに対し、大型の門歯状の分化した歯を持つブダイ、フグ、エイのいくつかの種などは、動く獲物を捕らえるのではなく、硬い貝やサンゴを砕くためにこうした構造の歯を備えているわけです。鈍重な体で食事の度に木によじ登って、通りかかった獲物を出っ歯でもって必殺仕事人風にかじり殺し、捕りそこなったらまたエンヤコラと重い腰をあげて木に登ることを繰り返す……っていう図がイメージできんのですわ(--;;

 当時のオーストラリア大陸における高次捕食者のニッチは、メガラニア(オオトカゲ)や走鳥類に占められていて、哺乳類(有袋類)は小型のものしか進出する余地がなかったように思えます。敏捷性・運動性能で完全に負けてるのに、競合種が進出できない“穴場”をめっけたようにも、全然見えないんですよね。ティラコレオでも容易に捕らえられる獲物として思い浮かぶものといえば、ニンゲンくらいかも・・・
 肉食説の根拠とされる烈肉歯の磨耗とやらが、果たして定量的に検証されたのかどうか。草食動物でも、歯が磨耗した分絶えず生え変わるタイプでは形状的に裂肉歯に似ているものもあります。草食説はそもそも角竜(トリケラちゃんとか)の歯との相似から唱えられていたのですが。大体、古生物学者ってのは、実物を知らずにパンダの骨を見たら「こいつは獰猛な肉食動物だ」って言うだろからね。。定説がひっくり返されるのも毎度のパターンだし。
 ティラコレオとよく似たノミ状の切歯を持つ現生動物といえば、思い当たるのは齧歯目(ネズミ目)やウサギ目。胡桃を割ったり大木をあっという間に切り倒したりするんですから、サイズに比して相当強い顎の力を備えているはず。頭骨の構造からシミュレーションされた顎の力は食性と必ずしも相関しないでしょう。ティラコレオの体重は100キロ前後と推定されていますが、カピバラの倍、ビーバーの3倍か4倍くらいってとこですね。当時のオーストラリアは生産性の高い土地で体長3mのカンガルーもいたくらいだから、考えられないサイズじゃないでしょう。半水棲で水かきや平たい尾っぽを持っていた可能性もあるかも。ミイラ化した化石が出土しないとその辺はわからないけど。後はダムの生痕化石とか出てきたら面白いんだけどニャ〜。
 オーストラリアの古生物学者さんには、ティラコレアが肉食性か草食性もしくは雑食性かの審判を、歯の形状のみではなく、炭素同位体比(4万年前までと比較的最近ですし、洞穴で見つかった骨などは表面に組織の一部が残っているでしょう)や生息密度の推定値も使って再検証してもらいたいところ。

 ・・と、ここまでは余談。本題は、この番組で取り上げられた「オーストラリアの大型動物が、約4万年前のタイミングでなぜ突如としていっせいに絶滅したのか?」というお話。
 結論を言ってしまうと、人為的な火災による急激な植生の変化に過剰な狩猟圧が加わったことが主因とするのが最新のセオリー。つまり、犯人は今のアボリジニの先祖に当たるヒトたちということです。ニュージーランドでも南北アメリカでもユーラシアでも、ヒトという種の分布域拡散・増殖・捕殺方法の飛躍的な進化によって、同じようにたくさんの大型動物が姿を消していったわけですが・・・
 この場合、“責任”という言葉を当てはめるのは筋違いでしょう。近代文明以前の、ヒトという哺乳動物が曲がりなりにも他の野生動物とともに生態系の一部を構成していた頃の話。重要な点は、通常の捕食者であれば、獲物の過剰捕獲は当の被食種より先に自分たち自身に跳ね返り、淘汰されてしまうはずなのですが、彼ら(=私たち)は種として存続できたということです。もちろん適応力の高さ故ですが、次から次へと捕食対象種を絶滅させて、最終的に自らの首を締めることにはならず、その手前で折り合いをつける道を見出したというのが正しい解でしょう。それこそは、先住民の間で代々伝えられてきた《掟》であり、今日現代人によって再認識されるに至ったサステイナブル・ユースワイズ・ユースの原型となるものでした。
 国連の国際先住民年に象徴される、世界各地の先住民への敬意と権利の尊重が国際的に広く叫ばれるようになった最大の理由は、和人や白人による差別・抑圧の歴史とそこからの解放でした。ですが、もう一つの理由があります。近代文明による大気や海洋の汚染、乱獲や開発が生物種の多様性喪失を招き、そのツケが跳ね返って来るという形で地球環境問題が切実な課題として認識される中、先住民の《知恵》に学ぼうという動きが起こってきたわけです。
 言ってみれば、先住民は自然破壊の先駆者。そして、その罪を深く自覚し、そこから学び、自然を壊さずに生きていく術を学んだリーダーだったということ。時代の先端を行っていた人たち。
 先住民といえども所詮はニンゲン。エゴや欲に駆られ、近代文明の差し出す罠に負けてしまうこともあるでしょう。彼らが“甘い誘惑”に負けずにコミュニティの伝統文化を厳格に守りぬき、高い自律性を保持してきたのは、自らを欺くことなく過去をしっかりと見つめ直すことができたから、弱く脆い動物であるニンゲンの限界をきっちりと理解していたからに他なりません。アイヌのように、後から進入してきた異民族にその文化を根こそぎ奪われてしまうと、アイデンティティを取り戻すのは大変な困難と試練を伴う作業になってきますが・・ 
 バカげた性善説がそこに顔を出す余地はないのです。先住民の伝統狩猟でさえ。それに比べれば、たかだか400年ぽっちの間ですら、乱獲による自滅を繰り返し、そこから一切学び取ろうとはせず、目まぐるしく操業スタイルや消費形態を変えながら、自然の側ではなく自己存続のみを図ろうとした日本の捕鯨産業が、持続的一次産業の模範になどなり得るはずがないのです。最も典型的な反面教師にはなり得ても。
 欧米を中心とする市民社会は、先住民の先行した“反省する知恵”にいま学ぼうとしています。他方、捕鯨ニッポンは過去の歴史や他者の振る舞いから何一つ教訓を得ることなく、反省を拒絶することで、自然の持続的利用の面で最後進国の地位に甘んじてしまっているのです。
 捕鯨ニッポン性善説などという神話じみたフィクションを頑なに信じ込んでいるのは、駄々をこねる幼児のごとくいやいやと首を振って科学的・歴史的事実を受け入れることを拒んでいるのは、日本のオメデタイ反反捕鯨論者のみ。
 反省をまったく口にしない傲慢な太地の関係者、その彼らをに保身を図る共同船舶、わかっていながら彼らを利用するアコギな水産官僚。先住民の伝統とは似ても似つかぬ堕落しきった“デントウ”を、優越した民族による性善的偉業であるとばかり崇拝の対象として押し上げるのに、捕鯨サークルは見事成功しました。押し込められたルサンチマン的ナショナリズムをくすぐることで。その最大の功労者は広告屋の梅崎氏。脳がベーコン化してもはや救いのないウヨガキ君たちであれば、彼らの出任せをそっくり真に受けるのも仕方のないこと。ですが、もし、捕鯨サークルと結託したマスコミの流布する主張があっさり受け入れられてしまう土壌が国内にあるとするなら、それは環境教育と国際教育(先住民文化への理解を含む)がこの国でいかに立ち遅れているかを示す証左といえるでしょう。

 

◇「THE COVE」では伝えきれない太地捕鯨&イルカ漁のダメっぷり

■イルカ漁の隠し撮り映画、21日に上映 東京国際映画祭 (10/19,朝日)
http://www.asahi.com/showbiz/movie/TKY200910190078.html
■イルカ漁の町で「水銀検査」 米「隠し撮り映画」がきっかけ? (10/19,J-CASTニュース)
http://www.j-cast.com/2009/10/19052004.html
■米のイルカ漁糾弾映画の上映中止求める 和歌山・太地町 (10/21,朝日)
http://www.asahi.com/national/update/1020/TKY200910200206.html (リンク切れ)
■イルカ漁「隠し撮り」、予定通り上映 東京国際映画祭 (〃)
http://www.asahi.com/national/update/1021/TKY200910210329.html (リンク切れ)
■「表現の自由尊重」…イルカ漁映画、東京国際映画祭で上映 (10/21,読売)
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20091021-OYO1T00700.htm?from=main1 (リンク切れ)
■イルカ漁非難の映画、国内で初上映 (10/21,毎日放送)
http://www.mbs.jp/news/jnn_4263988_zen.shtml (リンク切れ)
■超緊迫!厳重警備の中、日本人によるイルカの大量捕獲を描いた衝撃作が緊急上映!![第22回東京国際映画祭] (10/21,シネマトゥデイ-MSN)
http://topics.jp.msn.com/entertainment/movie/article.aspx?articleid=160577 (リンク切れ)
■太地のイルカ漁描く映画「THE COVE」日本公開を期待 (JANJAN)
http://janjan.voicejapan.org/culture/0908/0908259279/1.php
■反反捕鯨ウヨガキ君V.S.反捕鯨ウヨオジ君】(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/33010224.html 

 南極海調査捕鯨を積極的に正当化する太地の捕鯨・イルカ漁関係者は、自分たちのブンカが唯一至高のもので、オーストラリアの自然と文化はそのために犠牲にしてよいとみなす、おそろしく高邁なヒトたちです。実際には国際PR流の広報戦略に則り“偶像的存在”として祀り上げられ、煽られているだけの悲しいヒトたち。「(国策調査捕鯨が海外からの批判に対する)になってくれる」と思い込んでいるようですが、実際にはにされているのは太地。誰の目から見ても一目瞭然でしょう。実施できてるのは調査捕鯨、できてないのは沿岸捕鯨(お余りで沿岸調査枠をもらってるだけ)。そして、今回『The Cobe』で世界中の批判の矢面に立たされているのは太地ですよ。論理的思考能力の持ち主なら、「調査捕鯨がとしてちっとも機能していない」ことにとっくに気づいてるはず。マデイラでのステートメントから朝日新聞へのインタビューに至るまでの三原太地町議長の一連のコメントは、あまりにも支離滅裂で合理性の欠片もありませんが、それはむしろ、わかっていて捕鯨サークルの“操り人形”としての役柄を積極的に演じているが故にも見えます。
 さて、本日(10/21)六本木で開かれた東京国際映画祭にてその『The Cove』が上映されました。前売りはなんとたった2日で売り切れだとか・・。なんでしょうかねぇ、1回こっきりの上映とはいえ、人気作とはもちろんいえないもんねぇ。おそらく各マスコミも入手に努めたんでしょうが、筆者が一通りチェックした範囲では、TVニュースで取り上げられた気配なし(Web上では関西の毎日放送のみ)。出てきた観客にろくでもない質問をしようと、各局のレポーターが会場前で待ち構えててもおかしくないと思ったんだけど。同じ映画祭に参加した永ちゃんドキュメントの方は出てたけど。。某芸能人の覚醒剤裁判に全部とられちゃったか? メディアがまったく取り上げないのは、それはそれで問題といえますが・・。あるいはひょっとして、一般の人々に都合の悪い映像を見せたらマズイと、誰かさんたちが買い占めたんじゃないかしらん? どっかの組合とかに動員かけさせて・・・
 今回の上映に関しては、太地町が主催者に対し「中止しろ」と圧力をかけ、先進国の市民らしからぬ“表現の自由の敵”っぷりをまざまざと見せつけてくれました。とりわけ「中止しないと名誉毀損として訴えてやる」との主催者に対する脅し以外の何物でもない主張はもってのほか。事実誤認の悪質なデマをさんざん流したNHKの一方的な偏向番組「知る楽・日本くじら物語」に目を瞑る太地町の卑劣な姿勢は言語道断です。
 六本木には同町の三軒町長の他、町会議員が何人も乗り込んできたとのこと。監督と建設的な議論を試みるといったことは何もしなかったみたいですが。ずいぶんヒマなんだね! 町政の最優先課題がソレかいな。交通費や宿泊費は町の財布から出してんでしょ。毎年のように海外に人を派遣するのに比べりゃ、安いもんかもしれんけど。
 マスコミ向けのコメントを注意深く読むと、いくつかの記事では「事実と異なる映像」という、あたかも捏造した映像があるかのような説明になっていますが、より詳細な朝日報道では(3番目のリンク)、漁協は害獣駆除のために漁を行う」「水銀汚染を隠すためにイルカの肉を鯨肉として販売している」というナレーションに対する批判に摩り替わっています。こういう辺りが姑息なんだよね・・。「害獣」云々は、捕鯨協会始め関係者がさんざん流して一般市民が信じ込まされてきたトンデモ食害論ルーツでしょうが。海外でそう受け取られたって、そりゃ仕方ないんじゃないの? それとも、「太地関係者は誰一人、一度もその手の非科学的主張をしたことなどない」って言ってんですかね?? 偽装販売の件は、これも全国各地の販売店で両者の区別のないいい加減な表示が行われてきたが歴史があるわけです。販売表示の「目的」云々以前に、あなたたちは水銀汚染の実態を隠しているでしょうに。今頃になって唐突にやると言い出した非科学的なゴマカシ検査がその何よりの証拠。
 2番目のリンク先で、その太地町による奇妙な“援護射撃”の動きが伝えられています。前回の記事でもチラリと触れたイルカ肉水銀問題については、「鯨の町住民から水銀40倍」(『AERA』, '08/6/16号)やリンク集に登録してある市民ブロガーの皆さんの記事をご参照ください。希望者のみの検査から得られるデータには、疫学統計としてまったく何の価値もありません。全市民を対象とした検査を行い、イルカ肉摂取量に応じた蓄積濃度や健康状態の比較を行わないことには。科学的評価の何たるかをここまで理解していない・できない日本人がいるということに、今更ながら驚きを覚えます。これも水産庁や鯨研の責任「自分たちの正しさを結果が証明してくれる」などと嘯いていますが、最初から結果のわかる調査なんてないし、そんな調査があったら結果を疑って然るべき。これも当たり前の話ですが。いくらでも数字が作れ、また作るだろうと疑わせるものであると同時に、町民のみなさんに対する「検査に行くな」という村八分思考的な無言の圧力も感じさせる辺り、太地という町の《作られた異常性》が垣間見えますね・・・
 太地の捕鯨史や捕鯨業者の体質の問題については、これまで幾度も当ブログで取り上げてきました。過去記事もご参照いただきたいと思いますが、要点をまとめたものとして、JANJANの記事に投稿したコメントの一部をこちらでも転載しておきます。

 日本の沿岸漁業の中には、例えばモラトリアムを敢行できる秋田のハタハタ漁や、自然のキャパシティを超えて捕獲量を増大させることのリスクを知っていて近代装備の導入を厳に戒める全国各地の海女漁など、強い自制力を備えたサステイナブルな水産業の範となる、世界に誇るべき素晴らしい沿岸漁業が存在します。一方で、捕鯨推進の立役者であった小松正之氏や現担当者の1人である森下丈二氏らも認めるとおり、日本沿岸の漁業資源の多くが、不十分な資源保護・漁獲規制のために危機的な状況にあるわけですが。そして、水産行政によっては決して優遇されることのなかった一部の<良い漁業>とは対照的に、イルカ追い込み漁はまさに<反面教師>となるものでした。
 同じ追い込みで知られていた伊豆地方では、スジイルカの激減に対する国内の鯨類学者の再三にわたる強い警告にも関わらず、まともな資源管理が適用されなかったために、結果として墓穴を掘り大半が自滅に追い込まれています。太地の追い込み漁も、捕獲量を桁違いに急増させたり対象種を無節操に拡張するなど、自己規制力のなさを露呈しました。鯨骨の洋上投棄で海上保安庁の摘発を受けたこともあれば、捕鯨支持派で知られるC・W・ニコル氏の目前であからさまな捕獲頭数のごまかしを行い、氏が衝撃を受け捕鯨協会に苦情を申し立てたことも。太地の捕鯨・イルカ漁従事者や町議会などは、捕鯨会社大手の南氷洋捕鯨に従事して大金を稼ぎ御殿を建てた人たちと直接・間接に通じており、中央と強いリレーションを築いています。
 南氷洋や近海での乱獲によるクジラの減少に対し、日本の捕鯨産業には非常に大きな責任があるということを、水産庁・捕鯨協会も公には認めているものの、当の事業者にはその自覚がなく、応援団の反反捕鯨論者も史実を一切顧みようとしないというところに、海外との温度差・捕鯨問題の本質があります。太地町民の方も含め、問題点をきちんと認識している日本人も決して少なくはないのですが。

 正直に言いますと、筆者は「日本の沿岸捕鯨やイルカ漁はゼロにしなくてもいい」という立場です。調査の名を借りた公海母船式捕鯨を停止したうえで、Jストックに対するアセスメントをまともな科学者に厳格にやらせ、アイヌの伝統捕鯨復活をまず最優先させるという手順をしっかりと踏まえるのであれば・・。イルカ漁に関しては、生態学的には追い込み漁に比べマシな漁法といえる突きん棒漁への転換というステップでかまわないでしょう。これは漁業者側にとっても一つのメリットのはず。ヘンなガイジンが忍び込んで盗撮するリスクが下がり、余計な監視コストもかけずに済むでしょうから・・・
 ただし、太地漁協は沿岸捕鯨・イルカ漁の担い手としてどこよりも相応しくないと思っています。最低でも、真摯な反省を国内・国外に対してきっちりと示すことが大前提
 『The Cove』に関してですが、まず上掲7番目のリンク「シネマトゥデイ」のサイトに、同作の監督を務めたシホヨス氏が来日して会場で語った談話が掲載されています。映画制作の意図等についてはこちらをご参照。どうでもいいけど、記事のタイトルが物騒だね。。まあ筆者も、IWC京都や下関総会の時みたいに右翼の街宣車が会場前を占拠してスピーカーでがなり立てんじゃねーかと半分心配してたけど・・。筆者自身は当日六本木まで行くのは無理だったのですが(どうせ席取れんかったろうけど)、既に知っている“事実”に付け加える目新しい情報はないため、観るだけの価値があるとも思っていませんでした。ですが、監督のおっしゃるとおり、少なくとも水族館にイルカショーを観に行ったことのある日本人の皆さんは、やはり《目にする責任》=《同じ日本で何が行われているかを知る責任》があるだろうとは思います。

 ちなみに、市民新聞上コメント欄で反反捕鯨君が吠えている『ブタがいた教室』は、はっきり言ってガラクタ(過去記事参照)。食育以前に民主主義の何たるかを履き違えている最悪の代物(原作とは逆の誤魔化しで済ませる結論だし・・)。こどもたちに“本物の食育”を施したい親は、『ブタがいた教室』以上であることはもちろんのこと、『The Cove』よりも優れた本物のドキュメンタリー『いのちの食べ方』をこどもと一緒に観るようにしましょう。

−食といのちを見つめること (拙記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/22376510.html

 

 いまの家はオンボロ屋敷なのでクマネズミが度々進入してきます。“食害”もさることながら糞尿やネズミダニの被害は結構バカにならないのですが、うちの場合は化学物質を濫用して駆除という乱暴なことはせず、生け捕りにして解放する方針。ちなみに、フェレたちはご飯を獲られてションボリするくらいで勝ち目なし(--; 都市環境に順応しているとはいえ、歴とした野生動物のクマネズミ。最近では業者の頭を悩ませるほどのスーパーラットと化してますが、性格・嗜好・頭のよさと、千差万別の個体差には驚かされるばかり。トラップにあっさりかかるのも、全然かからないのも。中でも昨日罠にかかった子はかなりの変わり者。どこがヘンかといって、なんとトマトが好きだったのです。ジャガイモとかミカンとか柿とか、ネズミ的にいってトマトよりゃ上だろ〜と思うもんにはまったく手を付けず・・。おかげで簡単に捕まえることができましたが。ヘルシー指向なクマちゃんだニャ〜(^^;;
 近くの林に逃がしに行った道すがら、空を仰ぐとスッと星が流れました。オリオン座流星群の季節だったんだよね。放射点からかなり離れた北の低い空で、雲に覆われかけていたのだけど、ちょうどその切れ間に姿を見せてくれた流れ星。くっきりとした光跡が、しばらくの間残像となって瞼の裏に残りました。
 午前5時に老フェレの給餌をせにゃならんのでここんとこちっとハードな日々を送ってますが、心が洗われるひとときでした。

posted by カメクジラネコ at 02:11| Comment(2) | TrackBack(2) | 社会科学系
この記事へのコメント
記事拝読して疑問に思いました。ご覧になっていらっしゃらないのに、

> 既に知っている“事実”に付け加える目新しい情報はないため観るだけの価値があるとも思っていませんでした。

と言い切っておられますが、「目新しい情報はない」と、どうして分かったのでしょうか。メディアの情報だけで判断されているのでしょうか。

太地町が事実と異なると言っている事に対して批判されるのであれば、少なくとも本編をご覧になるべきだったのではないでしょうか。前売りが売り切れていても現場まで出向き、当日券が買えなくても、(上映後に別会場で会見もされていた)監督本人にかけあって見せてもらうよう頼むとか、努力をされるべきではなかったのでしょうか。

こちらは、もちろん個人のブログですから他人がとやかく言うべき問題ではないのでしょうが、JANJANに記者として寄稿されている方なのですから、こちらでのご発言にも、それなりの信頼性が求められるのは仕方ないのではないでしょうか。
本編を見ずしてメディアの周辺情報だけを頼りに発言されているのであれば、kknekoさんの言葉の重み自体へ、私は疑問を持たざる得ません。思い付きを言いっぱなしであれば某掲示板の住人と大差ないのではないでしょうか。

以上、失礼ございましたらお詫び申し上げます。
Posted by tetu at 2009年10月25日 17:05
>tetsuさん
丁寧なご批判のコメントありがとうございます。
確かに言葉不足だったかもしれません。まず、筆者は当初から『The Cobe』とまったく無関係に太地を批判してきました。それだけの“事実”に関する“情報”を持っているからです。当ブログにお越しいただいているのであれば、内容も含め既にご存知のことと思いますが。そういう意味では、観覧者にメッセージを伝えることを意図した『The Cobe』なる“映画作品”を見る理由が、筆者自身にはないということです。「価値がない」というのは少々強すぎる言い方でしたが、「(筆者にとっての)優先順位が低い」ということです。太地を支持していたヒトたちにとっては、もちろんそういうわけにもいかないでしょう。また、太地で何が行われているか、本当に実態を何も知らない方(大多数の日本人)は、水族館のイルカショーを見に行く前に、やはりこの映画を見ておくべきでしょうね。配給元が現れるかどうかわかりませんが・・。
『The Cobe』については、当然マスコミ外の情報も入ってきていますが、「筆者が(批判するにあたって)知る必要のある新しい事実(太地に関する)」は含まれていませんでした。何しろ筆者とは異なる立場、異なる視点のものですから、ある程度距離を置かせてもらっています。ブログ中の批判は「筆者の知っている事実」に基づく範囲のもので、「見なきゃわからんこと」は含まれていません。上記を読めばわかるとおり、基本的に太地の実態・過去の経緯に対する批判で、『The Cobe』中でそのことを扱っているか否か、それが間違っているか否かは関係ないわけです。もし、誰かが“『The Cobe』の内容に対する批判”を中身も見ずにやったとすれば、tetsuさんの指摘は正しいでしょう。そういうヒトたちは某掲示板にわんさかいるわけだけど。。
それと、市民新聞記事は取材に基づく裏づけのある情報を提供しているのですよ。ブログはブログです。両者は明確に区別してください。私は情報の質に応じてきっちりとけじめをつけており、過去記事でその旨皆さんにはっきりとお断りしていますよ。おかしいと思う部分があれば、どの記述がそれに当るか「具体的に」ご指摘ください。ガセネタを真に受けて撒き散らしているだけの某掲示板の住人たちと決して混同しないように。
Posted by ネコ at 2009年10月26日 01:31
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