2009年10月14日

朝日の捕鯨礼賛記事/世論喚起に躍起になる捕鯨サークル/台風とクジラ/マンボウとクジラ

◇台風とクジラ

 東日本を縦走した台風18号、大変でしたね。朝方の暴風で、うちのオンボロ屋敷が飛ぶかと思っちった(--; 隣県茨城では竜巻まで。徒然といろんなことを考えさせられました。

@トキが心配。放鳥された20羽(1羽保護)のうち、確認されているのは10/12現在で11羽ということですが・・。何度か記事にしましたが、血統管理や野生下での群れ行動・繁殖行動に関する読みの甘さなど、どうも性急すぎる感あり。

A農作物被害、最大はトキの佐渡で1400万円、上陸地点の愛知県では86億円とのこと。各地でリンゴやカキなど秋の実りが大打撃。うちの庭は柿は大丈夫でしたが、収穫期を迎えたハヤトウリがいくつか落ちちゃいました(--; カキ(海の)やウナギの養殖筏も被害に。
 ここで、過去記事で取り上げた国内の野生動物食害問題と自然災害補償のネタについて、少々勉強不足の点があったので補足しておきます。自治体によって融資などに応じているところもあるようですが、実は被害補償が出るのは自民党の集票組織だったJAの共済に入っている農家だけなんだそうですね。工業製品じみたこまい規格を押し付けて、大型機械のリースでしばりつけて、化学肥料や農薬買わせて……そうやってがんじがらめにされるのが嫌で、個人でやってる方々は、まったく受けられないわけです。余談ながら、補助金をたっぷりもらってハコモノ建て三昧のはずの原発自治体の中には、「自分たちは別格だから自然災害も国が補償しろ」と図々しく要求してるところもあるとか・・・
 農業者向けのJA共済に対し、漁業者への補償制度を担っているのはぎょさい(全国漁業共済組合連合会)。“漁共”じゃ漁協とかぶっちゃうから“漁済”なんだね。。こちらは台風のみならず、不漁や養殖魚種の死亡・逃亡、さらに魚価の変動にまで対応しており、昨年始まった新制度では、水産庁の定める基準価格の9割以下の減収となった場合に、その4分の1が国庫負担される仕組み。今時分はとくに、一次産業従事者以外の目からすると、ずいぶん手厚い印象もあるやもしれません。ただ、制度自体は漁業経営安定のために必要なものではあります。問題は、漁済は水産庁はもちろんのこと、JAと同じく自民党の支持母体で大手漁業者に肩入れし、捕鯨擁護運動の中心的役割を果たしてきた全漁連と協力関係にある天下り団体だということ(現在水産庁OBは1名)。これも水産学者さんのサイトで市民の方が指摘してくれたことですが、漁船用の燃油高騰対策として支払われた補助金も、一括元売として間に入った全漁連がホクホクだったわけです。これでは、水産官僚・族議員とつるんだ利権団体を挟んだ補助金漬け行政とみなされても仕方がないでしょう。
 言い換えれば、捕鯨ニッポンにおいては、農業者・漁業者の皆さんはこうしたしがらみから抜けることができず、政治的自由が保障されているとは到底言いがたいということ
 政権交代により、JA、全漁連、そして捕鯨業界は、官僚のサボタージュ作戦とセットになった擦り寄り戦略をとることで、きっと民主党の“自民党化”を図ろうとすることでしょう。筆者やブロガーの皆さんがこうして記事を書いている今も。念のためお断りしておきますが、全国組織が利権に蝕まれているといっても、個別の農協・漁協の中には旧い体質の改善に取り組もうとされている方々もいらっしゃいます。霞ヶ関官僚の築いたガチガチのシステムは、それらの人々の熱意と努力を阻む厚いとなって立ちはだかっているわけです。
 おこぼれを回すことで、当たり前の受益者であるはずの一次産業従事者/国民を組み込む。とことん巧妙に出来上がった癒着の構図。これもまた《日本ならではのブンカ》なのでしょう・・・
 ところで、2ch等で金額を比較して、「調査捕鯨に対する補助金は少ないからいいんだ」と主張している反反捕鯨論者がいるようですが、全国の農家・漁民に対して支払われる天災の被害補償(共済なので自己負担あり)と、天下り・事業独占・株式所持・水産ODA含む利権でつるんだ特定の1私企業(従業員3百名程度)に対する不透明補助金での経常赤字穴埋めは、当然まったく別次元の話です。大学の助成金との比較の話も同じ。ビョウドウが大好きな捕鯨擁護論者は、ベールに包まれた捕鯨&水産ODA利権業界を弁護するべく、「政府の補助金見直しは全部やめろ!」と言いたいのかもしれませんが・・。

B東日本を襲った今回の台風では、首都圏の朝の通勤ラッシュ時に電車が軒並みマヒ。山の手が止まって300万人の足に影響。TVニュースでどっかのIT企業のマネージャークラスっぽい外国人へのインタビューの様子が映されてましたが、世界で最も時刻に正確な日本の鉄道網、IT駆使のダイヤ管理も形無し・・。いくら文明が進んでも自然には勝てません。大勢の人が、2時間も3時間も満員電車の中でトイレにも行けず立ちっぱなしで我慢させられる羽目に。「ダイヤを守るのが使命」と言い訳して、結局余計ひどい目に遭わせている気も・・。
 こういう融通の利かないお役所的な対応は、民営化してだいぶ経つのに、JR東日本が未だに親方日の丸体質から脱却できていないということなのでしょうか? きちんと状況を判断して、早いうちから止めてください。乗客を監禁地獄の目に遭わせないよう最善を尽くすのが、本来の民間企業としての顧客サービスでしょうに。
 もっとも、結果が同じでも「会社に遅刻できない」とせっつく理不尽な乗客がいれば、鉄道会社の所為にすべて押し付けるわけにもいかないでしょう。電車がストップすることによる社会機能のマヒの“重症化”は、日本の労働環境の問題にも一石を投げかけたといえそう。在宅勤務などもっとフレキシブルな就業形態や職住近接を推し進めれば、影響はもっと小さくなるのでは。
 不合理な旧いブンカ、《日本的なもの》にこだわるのは、いい加減やめましょう。
 強くて大型の台風の10月上陸やいつもと違う梅雨など、「例年にない」とか「記録的な」とかそんな単語が珍しくなったこの頃。地球温暖化対策をこのままほったらかせば、80年先に被害は年10兆円規模に達するという試算を環境省が発表しました。つまり、たくさんの企業に損失をもたらす困った事態が、今後ますます頻発するということ。経団連さん、ちゃんと理解してますか?

C台風のような災害があると、海や山で行方不明になったり、倒木や落下物に当たったり、車や地下に閉じ込められるなどして、怪我を負ったり亡くなられる方が必ずといっていいほど出てきます。で・・・・巨大ダムや高速道路建設の口実に防災や救急車出動など人命が謳われることが多いのだけど、大規模公共工事で日本中の清流や森をボロボロにする前に、今なお失われ続けている命を低コストで確実に救うシステムって考えられないんですか、霞ヶ関の賢い賢いエリート官僚さん? もっと人的ないし知的な工夫を凝らすことで、金をかけずに犠牲を減らす対処法もあるんじゃないの? 例えば、台風のときにおじいちゃんが田んぼの用水路とか見にいかないよう、きっちり啓蒙指導するとかさ(行ったところで呆然と眺めることしかできなくて、どうせ無意味なんだから!) 財政も逼迫してるんだし、そっちから先に手をつけるのが合理的ってもんじゃないですか?
 7月の集中豪雨の際には、山口県防府市でベンダーに相当な金額を支払って導入したはずの大掛かりな防災システムが、人的な判断ミスでまったく無意味化してしまいました。住民に対する警告が遅れたために、避難所へ行く途中でこどもを含む市民の方々が犠牲になるという痛ましい事態に。一方、三重県の尾鷲市では、主に津波に対する地域ぐるみの日常的な訓練、住民の方々の高い意識があったが故に、事前の避難対応がスムーズに行われ、被害を最小に抑えることができたとのこと。残念ながら、コストパフォーマンスに優れたうまく回る仕組みを築くことができるところは、防災に限らず稀なようですが・・・

 問題の本質から目を逸らし、その場を適当に取り繕って先送りしてしまう。スシ詰め缶詰電車から温室効果ガス排出削減ダダこねまで、構図はみな一緒。薬害問題然り。産廃問題然り。南極海生態系がズタズタに破壊されるまで乱獲と悪質な規制違反を止められなかった捕鯨産業の体質も、当の水産庁自体が威勢のよさとは裏腹に収拾に手間取っている無思慮な調査捕鯨計画拡大も、すべて根っこは同じ。後で途方もないツケをたっぷり背負い込まされる過ちを何度繰り返してもやめることができない、《日本的なるもの》。実際には、程度の差はあれ日本に限った話ではありませんから、それらはむしろニンゲンという動物の愚かさの表れなのでしょう。ヤマト民族は性善、それ以外は悪とアプリオリに決め付けることしかできない、捕鯨サークルの中心で仕切っている人物から、ヨイショ番組制作に余念のないオトモダチマスコミ、台本どおりの発言で評論家を気取るタレント、ネット掲示板で外国人差別書き込みを繰り返す大勢のウヨガキ君に至るまで、自己客観視能力ゼロの反反捕鯨論者に言っても馬耳東風でしょうが・・・
 民主党連立政権がマニフェストに沿って誠実に履行しようとしている政策に対する、大手メディアの奇妙な反発にも胡散臭さを感じます。小泉構造改革が弱者に強いた“痛み”に対しては、同じ“痛み”でも「世の中の流れだから仕方ない」という雰囲気を醸成していたはずなのに・・。現実を無視し、論理的整合性を無視して、飛躍した結論に飛びつき、ただひたすら感傷的な大声をあげることで対論を問答無用で封じ込めようとする風潮。それもいかにもな感じの、《日本的なるもの》
 八ッ場ダムはその典型ですが、全国143の見直し対象となったダムの地元で歓迎の声が少ないことに、筆者は不自然な印象を強く受けます。カネと引き換えに地域のアイデンティティ、伝統文化の何よりのよりどころであるはずの固有の自然を破壊する事業を、「反対してたんだから進めてもらわにゃ困るんだ」ってんだから、リクツもヘッタクレもないよね。数千億円単位の国民の税金がつぎ込まれ、天下り国交官僚が深く関与した団体主導で、ほとんど県外のゼネコンが受注する巨大プロジェクトなのに、まるで「村の水車作りに部外者が口を出すな!」とでも言っているかのよう。
 これも、原発や米軍基地の問題と根っこは一緒。問答無用の強引で非情な既成事実化・強権行使と、つるんだ地元政治家経由で用意した“アメ”でもって刷り込み、これまた旧い日本的な因習である“ムラ”的な共同体意識(はみ出た者は村八分・・)も活用して誘導し、“馴化”してしまう、まさしく《日本的なシステム》
 今日(10/13)持ち上がったハブ空港問題でも、多少ずれはしますけど、成田市や大阪府の反論はやっぱり大人気ない言い分に思えます。自分たちのことしか考え(られ)なくなっちゃったヒトが、どうも最近のこの国では増殖しつつあるみたいで・・・。
 中でも、朝日記事(後述)とマデイラ総会時のステイトメントで180度異なる支離滅裂な太地町議長発言は、長野原町長発言にも増して理不尽の極み。
 <科学第一>のかけ声のもと、「平等に殺さにゃいかんのだ!」とばかり世界の批判の声を無視して調査捕鯨だけはやるけれど、科学的プライオリティがはるかに高いはずの調査捕ペンギン調査捕アザラシ“副産物”が売れないのでヤラナイ。タマちゃんやらクーちゃんやらでフィーバーしてはすぐ冷める、奇妙奇天烈な愛誤全開の感情論が支配する捕鯨ニッポン
 土建屋さんのお仕事のためなら<人命第一>、市役所のポカで失われた命に対しては一言の弁明でオシマイ。共同船舶・鯨研・全日本海員組合は「人命、人命」とSSに向かってかまびすしくがなりたてるけど、捕鯨船をカミカゼ特攻させたりゴムボートに向かって音響兵器を発射したり、「いつ機関銃が火を吹くんですか」などと海保の職員に平気で口走ったり。そのうえ、ライフジャケット未装備の船員転落事故に関しては、安全管理上の怠慢について説明責任を果たすこともなく、国内のどの産業よりも高い異常な死亡事故率には知らんぷり(ウヨガキ君たちはデータの読み方を知らず・・)。
 死刑推進では被害者の<感情第一>、でも時効撤廃に話が及ぶと、役所の手間のほうがその感情より上に。二百海里内を回遊する身近な野生動物に関心を寄せるオーストラリア国民の皆さんの気持ちに至っては、顧みようとすらせず。
 「クールジャパン」を世界に向かってお仕着せがましく売り込み、<伝統文化第一>を掲げる国だけど、どれだけ自国の文化を大切にしているかといえば、ユネスコが世界遺産にするよう再三薦める歴史的景観を、たった3分の渋滞の解消のために平気で潰そうと考える。地裁判決で待ったがかかったけど、推進派には反省の色なし・・。明治に資本家が西欧の真似をしてはじめた持続的水産業の反面教師・近代捕鯨産業を死守すべきブンカと位置付けながら、捕鯨に反対する多くの先進国で尊重されている先住民アイヌの文化と諸権利を認めることはしない。そして、ジゾクテキリヨウ教原理主義者・森下丈二水産庁参事官は「そっちは例外だ、文句あっか!」と開き直る。そもそも地産地消という最も大切な伝統に真っ向から反する南極海捕鯨を北の飽食国家が強行し続ける口実にデントウブンカを謳うのが滑稽だけど・・。
 そして、捕鯨ヨイショ政治家の最右翼・山際大志郎前衆院議員は、<命が第一>を看板にする自民党動物愛護(誤)議連のメンバーでもある獣医だけど、この国のペット事情を振り返ってみれば、他の先進国ではおよそ見られないショップの生体店頭販売で店員のセールストークに乗せられ“生きたぬいぐるみ”を購入するヒトがゴマンといて、あまりに低い飼育スキルと飽きっぽさで放り出し、年間30万頭超の命を税金で建てた施設に収容し殺処分、炭酸ガス注入による窒息死を安楽死と嘯く、GDPがどれだけ高かろうとタイやトルコなどにもはるかに劣る動物福祉最後進国
 <モッタイナイが第一>とにこやかに外国人に呼びかけるこの国の台所の裏側に目を移せば、廃棄される食品の量は環境省推計で年間1900万トン(規格外で野積みにされる野菜や食用になっても売り物にならないために洋上投棄される魚は推計に含まれず、実数はさらに上)という、国民1人当りでは米国を引き離す途方もない有様。あっちじゃドギーバッグ携帯も普通だけど、日本は「命を粗末にしないこと」より「万が一の消費者のクレーム」の方が優先だからちっとも普及しないしね・・。世界の食糧援助の総量の3倍を越える食糧を廃棄し、飽食の果てに命をとことんおろそかにしている世界一バチアタリな国
 そんな《事実》を何ひとつ知らず、知ろうとすらせずに、「日本は捕ったクジラを余すことなく利用してきた」(これも真っ赤な嘘だけど)と得意気に言いふらかし、「日本には『モッタイナイ』『イタダキマス』という言葉があるんだゾ。どうだ、すごいだろ〜!」と臆面もなく世界に向かって叫ぶことができてしまう、信じがたいほど恥知らずな国。捕鯨協会の雇ったPR会社の考案したプロパガンダに席巻されて、本当に大切な食文化がなんだかまったくわからなくなってしまい、〈鯨肉のポワレカキのフライ添えカフェドパリバターソース〉がデントウとして絶賛される中、元捕鯨大手子会社などの食品偽装や農水省職員がからんだ汚染米事件が罷り通り、サプリメントに頼った挙げ句健康被害が続出するなど、伝統的な食生活が守られていれば決してあり得ない悲惨な様相を呈する始末・・・・・・
 矛盾に満ち満ちた、どれほど経済的に豊かであっても、心の寒く、貧しい国、捕鯨ニッポン。
 世界の人たちは、日本において食・文化・命の扱いがかくもすさんでしまっている事実を知りません。また、知ったとしても、軽蔑憐憫の入り混じった目で見られるだけでしょう。しかし、日本人としては、これはあまりにも耐えがたい屈辱であり、苦痛以外の何物でもありません。
 そんなニッポン、変えませんか?
 実態とかけ離れた口先だけの偽りのコトバではなく、本当に命を大切にする国に。そのことを、数字で、事実で、きちんと世界に示さなければ。“税金の無駄”をなくすことも大事だけど、何よりこれ以上の“命の無駄”をなくさなければ。先に
 ついでに温室効果ガス25%削減も、京都議定書の公約未達成のような醜態に終わらないよう、実際に達成させないと。先に
 さらに、現状では完全に劣っているオーストラリアの上を行くサステイナブルな水産業への転換も果たし、あの森下参事官さえ認める近海の漁業資源の危機的状況を解消しましょう。んでもって、同じくオーストラリアに負けないよう、農水予算でせっせとばら撒いたテトラポッドを全国の海岸線から取っ払ってぜーんぶ自然海岸に戻しましょう。先に
 そのうえで、「日本は努力の結果、『モッタイナイ』という言葉に気後れや疚しさを覚えなくて済む国に生まれ変わりました。名実ともに環境保護&動物福祉先進国になりました。ですから、沿岸のクジラをほんの少しだけ利用させていただくことを(たとえ沿岸であっても回遊性野生動物ですから当然世界の共有財産であり、日本が勝手に決めていい話ではありませんが)、どうか認めていただけないでしょうか?」と世界に対してお伺いを立てるのがスジというものです。
 捕鯨そのものは、悪ではありません。鯨肉を食べることも、悪ではありません。
 しかし、現状では、ニッポンほどその担い手として相応しくない国はありません。世界中のどこの国よりもその資格がない国です。そのことだけははっきりしています。誰でもわかること。本物の日本人でさえあれば──

 

◇朝日の捕鯨礼賛記事

■我ら さかな族>捕鯨のぬくもり 絶やさぬ (10/8,朝日夕)
http://www.asahi.com/jinmyakuki/
■高成田享「捕鯨のぬくもり 絶やさぬ」 (Yahoo!BBS)
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=38626

 古新聞を回してもらったり、時々図書館でチェックしたりはするけど、実は筆者は購読していない朝日新聞。全体的なスタンスは、もちろんウヨ産経よかよっぽどマシだと思ってるんですけどね・・。ただ、元編集委員の中には、土井全二郎氏小松練平氏など、捕鯨協会が雇った宣伝マン梅崎義人氏とも結託して数々の捕鯨ヨイショ本を著したツワモノの反反捕鯨論者がおり、過去の捕鯨推進基調の社説・論説掲載に大いなる貢献を果たしてきました。小松氏は鯨研の評議員、土井氏は日本海洋調査会なる団体の代表として水産(捕鯨)ODAのお手盛り監査で一役買うなど、現在鯨研理事の1人を務める元産経客員論説委員馬見塚達雄氏同様、捕鯨サークルと強固なリレーションを築いています。彼らにとっちゃまさに頼もしい味方
 その朝日も、業界とグルになってた古株記者の影響力が薄らいできたのか、大本営発表ばかりさせられるのに嫌気がさしてか、近年は過剰在庫問題を取り上げるなど第4の権力としての面目躍如の感がありました。今年のIWC(国際捕鯨委員会)マデイラ総会に関しては、朝日は6/27の最終日に外交面でベタ記事扱いしたのみ。バーゲンセールでつかみ合うオバチャン同士みたいなスッタモンダがなくなれば、世間の関心が遠ざかり、紙面で割かれるスペースが小さくなるのも道理というもの。報道量が少なくなるのは良し悪しではありますが、一方の当事者の発信から距離を置いてメディアとしての中立性が確保されるのは悪いことではありません。
 ところが・・その朝日が久しぶりにヨイショ記事を流したとの情報が。まず、筆者は首をかしげました。というのも、媒体が朝日というだけでなく、書いた記者が高成田亨氏だったからです。高成田記者は同紙のワシントン市局長を務めたこともあるベテランで、以前拙ブログでも紹介した『こちら石巻さかな記者奮闘記』(時事通信出版局)の著者。同書の中で高成田氏は、捕鯨船の同乗取材記事を始め何点か捕鯨問題について言及しており、その内容は非常にバランスの取れたものでした。中には、鯨肉グルメ愛好家が読んだら激昂しそうな一文も。
 首を傾げつつ、図書館で8日の夕刊を手に取ってビックリ仰天。一面トップのカラー記事。IWC報道も閉幕を短く伝えるだけだったってのに、何のトピックもないこの時期に、この扱いの大きさは一体!!??
 そして、肝腎なのが内容。優秀な記者らしい、上手にまとめられた巧みな文章です。
 しかし、そこには、記事中で語られなかったIWCでの議論の流れ、それ抜きにして捕鯨問題を語ることは許されないとさえいえる、それだけの重みを持つ致命的な情報の欠落がありました。
 そう、当ブログにお越しの皆さんはご承知のとおりの、ホガース前IWC議長の提案した仲裁案がお流れになった経緯、そして記事に登場した太地町三原議長のトンデモナイ二枚舌発言です。沿岸捕鯨再開の最大にして唯一の障害が、調査捕鯨そのものに他ならないという真実乱獲の限りを尽くした大手事業者による公海母船式遠洋捕鯨の延長線上にあり、捕鯨&水産ODA天下り利権を貪る水産官僚・業界に寄生する鯨研の御用学者・自民党ネオコン捕鯨議連・共同船舶(日本捕鯨協会という裏の顔も持つ補助金タカリ企業)によって形成される捕鯨サークル──米国を始め海外が「現実的になりましょうや。お互い譲歩すりゃいいじゃん」とずーっと前から持ちかけているにもかかわらず、北朝鮮そっくりの唯我独尊拡張思考で頑なに拒み続ける捕鯨ニッポン自身が原因そのものなのです。何となれば、「沿岸捕鯨なんぞどうでもいい」というのが彼らの本音で、商業的にもはや成立しない一昔前の共産主義国家じみた国策企業の延命存続、税金を貪る利権構造の維持こそが彼らの本音だからです。それはまた、利権の恩恵に直接授かっている業界関係者・官僚たちと、元朝日記者からリアル&ネット右翼に至るまで群がるヒトビトが築いた一大コミュニティ・原理主義的反反捕鯨思想集団の維持でもあります。それを“新しいブンカ”として位置付けることも、あるいは可能かもしれません。後々歴史学者が振り返ったとき、さぞかし興味深いテーマを与えてくれるだろうと思いますが・・・
 『こちら石巻〜』中の記述を見ても、高成田氏は国策調査捕鯨と沿岸捕鯨との競合(圧迫)・政治的力関係について間違いなく知っていたはずでした。元ワシントン支局長を務めた記者が、IWC文脈にまったく通じていないというのも、どう考えてもおかしな話です。それがこの記事では、そうした背景説明がすべて省かれてしまい、沿岸捕鯨再開を阻んでいるのはIWCであり反捕鯨国であるとしか受け取れない内容。実質的に、俯瞰情報を収集せずに片方の当事者の主張のみを一方的に取り上げる、三流記事に成り下がってしまっています。捕鯨サークル専属広報部隊としてガンガンスクープを流すウヨ産経と、これでは同レベル。しかし、それでも、IWC文脈を知らない、沿岸捕鯨と公海調査捕鯨の区別などつかない一般の購読者が読めば、何の疑問も抱かずにそのまま頷いてしまうことでしょう。
 ここでは、記事中でインタビューのコメントが掲載されたもう一名の登場人物、C・W・ニコル氏と太地捕鯨との関係について補足しておきましょう。といっても、既出の情報ですが。
 ウェールズ出身のナチュラリスト作家として、捕鯨ニッポンの最も優秀な応援団だったニコル氏。朝日記事中では、“過去の経緯を知らない”太地の関係者が聞いたら大喜びしそうな“味方発言”をしています。まあ、彼はかなり日本人っぽいヒトで、論理的というより情緒に訴えるタイプなんですが・・。ついでにいえば、少数派云々は、少数派の意見が尊重されにくい村八分社会捕鯨ニッポンで多数派へのオベンチャラで使っていい台詞じゃないね(--;; 死刑反対にしろ捕鯨反対にしろ、日本じゃ大手マスコミが声を伝えようとしない歴とした少数派。
 そのニコル氏ですが、太地町の捕鯨業者のきわめて悪質な捕獲頭数ごまかしの現場に居合わせたことがあり、強いショックを受けたことを東京新聞紙上のコラムで赤裸々に綴っています。また、朝日ニュースターの宮崎哲弥氏との対談では、太地のイルカ追い込み漁問題に触れて「殺シ方ガトテモ下手デス」と、いかにも彼らしい、気を遣いながらの戒めのコメントを発しています。昨年にはJapanTimesにも寄稿(これも最初と最後で論旨が食い違ってたりして、ニコル氏らしかったりしましたが・・)。当の朝日新聞上でも、鯨研元理事で鯨類学者の大御所・大隈清治氏、日本のホエール・ウォッチングの開拓者であるナチュラリスト漫画家・岩本久則氏、そしてニコル氏の三者の対談記事が掲載されたことがあり、そこでニコル氏は中間派(沿岸賛成・遠洋撤退)の立場でした。詳細は以下の拙過去記事をご参照。

−捕鯨関連ブログ&必読本ご紹介
http://kkneko.sblo.jp/article/29810241.html

 問題は、高成田氏がこの記事を作為的書いたのかどうか。新人みたくポカをやらかしたのでないとすれば、そのように受け止めざるを得ませんが・・。
 この記事は5回の漁業特集連載の4回目に当たりますが、現在の生産額で見れば、大手と合わせても漁業全体の1%にも満たず、沿岸零細漁業者が霞ヶ関にずっと不遇を強いられ続けてきた中で、強力な庇護を受けてきた大手事業者と「一蓮托生だ」“自己定義”している太地が、課題山積の漁業問題をテーマとする5回連載の1回分にどうして相当するのか、筆者には理解に苦しみます。
 そして、もう一つの疑問は、なぜこの時期に書かれたのかということ。原油高騰やクロマグロ資源管理問題などはありましたが、ここ最近でそれ以外に漁業が国民の一大関心事となるトピックは発生してませんしね。日陰者扱いされてきた日本の水産業の抱える構造問題に焦点を当てる記事を書き、あえて読者に問うということであれば、漁業者の皆さんはもちろん歓迎するでしょうし、筆者自身もまったく異論はありません。しかし、連載4回目の記事だけはすっぽりとそこが抜け落ちてしまっていますし・・。
 捕鯨問題に限っていえば、IWCはもう4ヶ月も前に日程が短縮されるほどあっさり終了。母船日新丸の南極への出港までネタがない状況。逆に言えば、わざわざ“クジラの季節”の狭間の時期に国民の気を引こうという意図でもあったのか?と勘繰りたくなります。
 なぜこの時期かという点で後思いつくことといえば、政権交代後、重要懸案がある程度落ち着いたタイミングってとこですか・・・・
 新政権とのヨリを探っている捕鯨サークルにとってみれば、少しでも世論を喚起する追い風として、今回の朝日報道に対しニンマリと目を細めてほくそ笑むことでしょう。
 「オージーはイルカ食ってる」「捕鯨はエコだ」などと匿名掲示板のウヨガキ書き込みと大差ない低レベルのガセネタばっかり報道する産経新聞については、筆者がブロガーの皆さんに質問しても「だってサンケイだし・・・」という返事がたくさん返ってくるくらいで、「やれやれ」と首を振るくらいですむかもしれません。NHK教育で放映された御用人類学者秋道氏プレゼンツのホゲ〜ばんざい番組にしても、テレビ朝日のくっだらないバラエティ番組にしても(系列だけど)、制作サイドが肩入れしすぎて内容があまりにもお粗末なため、ベーコン脳化していないまともな視聴者なら辟易する代物。それらに比べると、むしろ今回の朝日報道は大きなインパクトがあります。
 高成田記者、ひょっとしたら、「お前は一体どっちの味方なんだ!?」と圧力でも受けたんじゃないかしら・・・
 

◇新潟で、釧路で、連チャンイベントで世論喚起に躍起になる捕鯨サークル

■鯨と食文化を見つめる催し=新潟〔地域〕 (10/9,時事)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200910/2009100900219
■全国鯨フォーラム2009釧路関連ニュース (10/10,11)
■商業捕鯨再開の機運を、全国鯨フォーラム釧路 (釧路新聞)
http://www.news-kushiro.jp/news/20091011/200910113.html
■クジラ料理で歓迎、釧路で鯨フォーラム前夜祭 (〃)
http://www.news-kushiro.jp/news/20091010/200910106.html
■釧路で鯨フォーラム 14自治体結集、全国から400人 (北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/agriculture/193778.html (リンク切れ)
■釧路で鯨フォーラム (読売北海道版)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/news/20091011-OYT8T00024.htm (リンク切れ)

 今月9日には新潟で、そして11日には釧路でと、“クジラの季節”休閑期に当るこのタイミングで、捕鯨サークルが立て続けにイベントを開いている模様。釧路の「鯨フォーラム」は3年前まで伝統捕鯨サミットと仰々しい名前を付けて行われていたものの再開バージョン。新潟の「鯨と食文化を語る市民の集い」はやはり捕鯨協会主催(水産庁後援)で全国各地を回って開かれているイベント。いつもどおりに「アングロサクソンはけしからん!」「クジラを食って何が悪い!」ワイワイ気勢をあげるなんともオメデタイ行事ですが、共同船舶社長も白状している鯨肉の売行きの悪さ、IWCでのホガース議長案に基づくソフトランディング失敗(原因は専ら彼ら自身にあるけど・・)、そしてオトモダチのネオコングルメ議員がいっぱいいて頼りにしていた自民党政権終焉という流れの中、連中もそれなりに焦っているんでしょう・・。
 このうち釧路の方を細かくチェックしてみましょう。はぐれラッコのクーちゃんでセンチメンタルに盛り上がった(経済効果は調査捕鯨とドッコイ?)動物愛誤自治体・釧路市。参加者の中には地元選出の民主党国会議員の顔も。仲野博子衆院議員はこの間の選挙で負けた(比例復活)相手の前釧路市長伊東良孝衆院議員とともに相席・・。「チェンジ」は一体どうしちゃったの? それにしても、北海道新聞の掲載写真見ると、400人が参加したという割にゃ、式典の椅子はガラガラ・・。
 「食と健康」のテーマで講演予定だった王理恵氏は、本人が体調不良で欠席・・。王監督の娘さんの雑穀料理研究家の方だそうですが・・。我が家は雑穀の消費量も料理のレパートリーでもたぶん王氏に負けないと思っていますが、雑穀は歴史的に長い間日本人の大半の主食であったにもかかわらず、生産量は大幅に落ち込み、その食文化は絶滅の危機に瀕しています。調査捕鯨みたく毎年補助金ガッポリもらえるわけでもなければ、国が音頭をとって試食イベントを開いてくれるわけでもないですからね。雑穀エキスパートなら、たかだか40年前に捕りだした種との違いも理解できないエセ食ブンカなぞよりはるかに重要な雑穀食文化の再生に専念してくださいよ! それと、お父さん台湾出身なんだから、どうせなら日本のエセ鯨肉食文化とは対極にある台湾の素晴らしい食文化・“素食”でも紹介してくださいな・・・
 で・・欠席した王氏のピンチヒッターとして急遽呼ばれたのか、釧路市HPの開催案内で予定に入っていなかった人物が登場。その名はミスター捕鯨問題・小松正之氏。水産庁でいろんなポストに就きながら専ら捕鯨問題・IWC対応を専管事項とし、JARPA2/JARPN2の増産・対象種拡大を担った中心人物。捕鯨批判サイドから見ればA級戦犯の位置付けですが、現IWC日本政府代表中前明氏がセンター長を務める水研センター(拙ブログでは産経のガセネタ関連で扱ったとこ)に実質左遷(詳細はAERA('08/4/7)『捕鯨ナショナリズム煽る農水省の罪』に)、結局辞めて現在は政策研究大学院大学教授の肩書き。その後グリーンピース・ジャパン主催のシンポジウムに参加したり、捕鯨に関する発言も微妙な変化が。中前氏との間ではいろいろ確執があったんじゃないかと想像しちゃうけど・・。でも、こんなとこに喜び勇んでホイホイ顔出してちゃ世話ないですね(--; 功罪の罪の部分を自ら認めるのは、ニンゲンという動物にとってはなかなか難しい勇気のいることではありますが。あえて好意的に解釈すれば、水産行政の悪しき体質を何とかしようと持論を訴える場であれば、どこにでも行くという心積もりなのでしょう。一応、彼の発言は新聞によってきちんと紹介されているので、モトは取れたといえるかもしれません。


欧州並みに漁業資源の回復に予算を充てるべきだ」と強調した(読売)

 補足しましょうか。捕鯨ニッポンでは漁業資源が回復してないんです。予算を充てることができてないんです。ここでいう欧州、すなわち漁業資源回復のために十分な予算を投じている国々とは、主にEUの反捕鯨諸国のことです(ノルウェーも漁業先進国のひとつですが、アイスランドは基準満たさず。日本よかまだマシだけど・・)。皆さん、わかりますね? 関係者は聞いててハラハラしたかもしれないけど・・。
 小松殿。「モラトリアムは必要ない」発言は、どのみち水産庁の本音が調査捕鯨継続なんだから大目に見てもいいけれど、限られた予算を食ってるのが何なのか、無策の水産行政の目隠しに使われているのが何なのか、貴殿であればわからないはずはないのでは?

−AERA記事を読んで (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/13459966.html
−捕鯨翼賛体制に反旗を翻し始めた捕鯨の味方たち (〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/18902531.html

 で、現職の水産官僚として予定通りに登場したのが、新潟から駆けつけた森高志遠洋課調査官。民主党は官僚の記者会見を禁止したはずですが、了解はとったの!? 確かに会見ではないイベント講演ではありますが、公人の水産官僚の立場での発言がこのような形でメディアで報じられてしまっているのは如何なものか。釧路ではSSの妨害について講演(前回JARPA2操業中を始め調査捕鯨中多発している死亡事故については言及せず・・)。そして、筆者があったま来たのが新潟での森氏のトンデモナイ発言。

捕鯨支持国に貧しい国が多いことや、不足が懸念される中、鯨が貴重な食料資源となることなどを説明した。(時事)

 何バカげたこと言ってんですかね、この御仁は。捕鯨支持国の貧しい国ってのはどこですか? タックスヘイブンでしこたま儲け実質先進国と変わらない国民所得の高さを誇るアンティグア・バーブーダ? 先日反政府勢力を100人以上虐殺した非民主的な軍事政権国家にして、日本の水産ODA供与額2位のアフリカの捕鯨応援団長ギニア? 同類のトーゴやコートジボワール? 水産ODA供与額1位で、日本市場に輸出しようとタコを乱獲しまくった持続的漁業がまったくできない困ったちゃんのモロッコ? 「不足が懸念される」!? ふざけるのも大概にしなさい。年間栄養失調で失われるこどもたちの命が世界中で一体どれだけに上ると思っているのか。世界で唯一南極海捕鯨を行っている(RMPの2海区分の枠を事実上独占的に使い切ってもいる)北の飽食経済大国が、税金の補助をたっぷり出しても大赤字の不採算事業を、カネもなければ食習慣もない貧しい国々にやらせるつもりなのか? 一体いくらコストがかかるのか示してご覧なさい。それだけのカネがあれば何十倍、何百倍の命を救うことができるか、霞ヶ関のエリート官僚のおたくには実に簡単な計算だろうに。
 こうしたふざけた水産官僚・森高志氏や二枚舌の嘘つき参事官森下丈二氏らの給料を税金で賄っていることに、筆者は強い憤りを感じます。
 先住民文化を尊重する反捕鯨国と異なり異民族・異文化を敵視する捕鯨ニッポンで、伝統捕鯨もサケ漁も禁じられながら、前夜祭で観光気分の和人に“ただの見世物”を披露した釧路のアイヌの皆さん。私はあなた方が、シャクシャインの戦いの時とまったく同じように、シャモにすっかり騙され体よく利用されているのが、見ていて痛々しくてなりません。あなた方の文化は、輸入物とでっち上げのツギハギだらけで本質がすっかり失われた贋物のブンカなどよりよっぽど格上です。しかし、水産庁にとって捕鯨の一軍は国策公海調査捕鯨、二軍は(和人の)沿岸捕鯨、アイヌ捕鯨は三軍です。連中は一軍以外はどうでもいいのですよ。
 そして、長崎と釧路の高校生の諸君。相手の声に耳を傾ける作業をしていますか? しましたか? くれぐれも、耳を閉ざしてウヨガキ君になっちゃわないように・・・

 

◇マンボウとクジラ

■野生の神秘「マンボウ〜知られざる素顔」 (10/12 24:10-,NHK-BS2)
http://tv.yahoo.co.jp/program/15132/?date=20091012&stime=2410&ch=3c66

 連休の深夜、何気なくテレビつけたら野生動物番組でした。NHKと海外局との合同制作による環境ドキュメンタリー番組で、'03年にBSハイジョンで放映されたものの再放送。
 主役はマンボウ。カリフォルニアの研究者の非致死的調査による興味深い生態を撮った映像が盛りだくさん。無線操作の無人カメラ映像は鮮明でアップもバッチリ。ヨシキリザメもキュートだったけど。マンボウはフグの親戚なので瞬きができちゃったりするんですよね〜。
 北から流れてくるジャイアントケルプの流れ藻生物群集は、マンボウの他にもたくさんの海洋生物が身を寄せ、複雑で豊かな生物相を垣間見せてくれます。致死的調査によっては絶対に明らかにされることのないその種間関係のひとつが、マンボウの群れが流れ藻にやってくる二つの理由の一つ。一つは餌を求めてくるわけですが、もう一つはクリーニング。流れ藻でマンボウの掃除屋を引き受けているのは、ハーフムーンと呼ばれる割と大型の魚。ハーフムーンに掃除をお願いするときには、マンボウは体色を黒く変化させます。これはいわゆる異種間コミュニケーション(情報伝達・交換)に他なりません。
 さらに面白いのは、マンボウが交流を結ぶもう一種の相手。それはカモメ。漁師たちの間で俗に「マンボウの昼寝」と言われる不可解な行動は、実は海鳥にクリーニングを求める合図だったわけです。このときはハーフムーンが相手の時とは逆に、体色を白く変化。前者は海中、後者は海面で目立ちやすいようにということでしょうな。マンボウとカモメとの対話が、一体どのような進化史的な過程を経て成立するに至ったのか、考えるほどワクワク・ゾクゾクさせられます。 

 付け加えると、マンボウを漁獲対象としているわけではない漁師が、マンボウの生態に通じていなかったとしても責める筋合いのものではありませんが、クロミンククジラの冬季の生態からツチクジラの社会性まで、何も知らずにのほほんとして大乱獲の前科が付いた捕鯨業者には通らない話。
 寄生虫は甲殻類のイカリムシの仲間(淡水のメダカや金魚なんかにもくっつくやつ)ですが、マンボウに寄生するイカリムシはサイズもデカ(--;; このほか、マンボウはクジラと同様ブリーチング(全身を海上に現すジャンプ)も披露します。海をただプカプカと漂っているような印象を受けますが(番組中のナレーションにもあったけど・・)、実はマンボウは非常に遊泳能力が高い魚で、上下の大きなヒレを用いて自在に方向転換できます。ザトウなどのブリーチングは、寄生虫除去説より社会的な意味合いを持つシグナルと見る説のほうが有力ですが(兼用もありだけど)、異種間で情報伝達を行うマンボウについても、単なるイカリムシ対策のみでない可能性もあるかもしれません。
 テレメトリーを使った遠隔行動調査も。傷つけないように捕獲して装置を装着、水圧と水温から水深を計測します。この結果、150mもの深度に急速繰り返すということが判明。比較的寿命が長い(自然死亡率が低い)一方、装着によるリスクは低くなるので、こうした調査は大型海洋動物の生態観察には特に威力を発揮します。日本にもデータロガーの技術はあるんですが・・。
 ちらっと大西洋に潜った潜水艇の撮った映像も出てきましたが、そこにはなんと深度600mにまで潜るマンボウの姿が。尾びれの形状が異なっていたため(近縁のヤリマンボウみたいに真ん中が出っぱっていたけど、ヤリでもなし)、もしかしたら新種かも。
 さらに、排泄物の観察により、中深海性のオキアミやイカを捕食していることも判明。これまではクラゲやサルパなどの海面のプランクトンを主食にしていると思われていたんですけどね。道理で、あんな水っぽい食いもんだけじゃ1トンの体重もたないよね。
 日本の鯨研のような異常な研究機関は毎年毎年大量の死体が必要であるかのように嘯いていますが、これは真っ赤な嘘です。野生動物全般において、餌生物の調査を全方位的な生態解明の中で位置付けるからには、これで十分なのです。クロミンククジラの冬季の生態や社会行動、マンボウの例に見られる捕食−被食に限らない種間関係など、多くの部分がまったく手着かずの白紙の状態である以上、ウシとクジラを掛け合わせるなぞというくだらんガラクタ研究まで名目にしてリソースを奪うこと自体許されないこと。
 一般市民の生物フリークを痺れさせるこうした生態研究の醍醐味を味わえるのは、まさに非致死的調査だから。
 致死的調査は、長期的な観察によってしか得られない貴重で膨大なデータの宝庫である科学的資源・野生動物を、ただのスナップショットとして切り取って破壊してしまう粗悪な手法。そして、日本の調査捕鯨はバランスを無視してその粗悪な手法のみに固執し続ける最悪の科学であり、反科学的調査と言いきっても過言ではないのです。実際、致死的調査で得られるデータを使いきることさえできないのですから。ヘッタクソな砲手のせいで胎児の組織が欠損して標本としては使い物にならなかったり(心臓狙ってんじゃねえのか!?)。「余すことなく利用してきた」が口癖なのに、腎臓の有害物質蓄積データなどをはじめ、全個体の全組織を隅から隅まで「余すことなく有効に」科学のために利用させてもらうこともなし。なぜなら、さっさと手早く解体しないと体温のせいで“副産物”が売り物にならなくなっちまうからですよ・・・・
 筆者は、純粋に科学的な動機に基づききちんと設計された正当な致死的調査まで全否定するつもりはありません。マンボウについてだろうと、クジラについてであろうと。もっとも、刺し網などで混獲される率の高いマンボウは、それらの混獲標本の調査だけでも今のところは十分であり、毎年数百頭規模の調査捕マンボウが必要だなんてことは、日本を含め誰も言い出したりはないのです。
 クジラについても、生態の多くの部分が未解明で、ペンギンやオットセイ、アザラシ、魚や他の無脊椎動物などの生態系を構成する他種の調査研究に割かれるべきリソースがすべて調査捕鯨に奪われ、大量の健康な死体由来のデータが手付かずのままほったらかしにされ、IWCで求められている商業捕鯨時代のバイアスの解析なども進まず、既に結論の出ている地球温暖化や有害化学物質の挙動・循環に関する研究に基づく防止策が十分に講じられていない中、調査捕鯨を続ける科学的・合理的正当性は絶無です
posted by カメクジラネコ at 03:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系
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