2009年07月05日

不可解な鯨肉大幅値下げ/驚き呆れる捕鯨官僚の超問題発言

◇不可解な鯨肉大幅値下げ──そのコスト、一体誰にもたせるつもり!?

■鯨肉最大2割値下げ 7日から 消費者離れ対策で (7/3,北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/175138.html (リンク切れ)

 今年はIWC報道自体低調でしたが、地方新聞に非常に重要な記事が掲載されました。
 これまで鯨肉余剰在庫問題について、関係者は「増産したんだから在庫が増えるのは当然だ」と開き直ってきました。しかし、今冬のJARPA2分の入荷前の3月時点の在庫は4400トンと、捕獲予定を倍増させた2年前のJARPAUスタート直後の水準にまでついに戻ってしまいました。「4年ぶりの2ケタ値下げ」は、このことと決して無縁ではありえません。問題は、「値下げによる損失を誰が<Jバーするのか!?」です。
 昨年は鯨研の経常赤字が8億円近くにまで膨らみ、水産庁から経営合理化の指示を受けて直営店を閉鎖するなど、捕鯨サークルはもはやどん詰まりの状態でした。昨年度の調査捕鯨に対する国庫補助金は、燃料高騰を言い訳にした増額や補正予算で組まれたSS対策費など合わせて13億円、調査委託費4億円を含めれば17億円に達します。「円滑化緊急対策」を名目にした補正の3億円は、LRADの装備だけでは説明がつかない額ですが、詳細な内訳は機密扱いでベールに包まれたまま・・。
 捕鯨サークルは増産後、販促専門の鯨食ラボを立ち上げて大赤字を負わせたり、問答無用で学校給食に回したり、水産卸業者に強制的に割当を押し付けるなど、国策を後ろ盾にしたあまりに強引な“商法”で在庫消化に躍起になってきました。需給バランスを無視した供給体制を見直しもせず、環境負荷を含めた正当なコストを度外視した価格設定をすることは、あってはならないことです。
 値下げはさらなる収益の悪化を意味するわけですが、要は一般市民の関心が低いことにつけこんで、裏でこっそり国民の血税を流用して補填するつもりだとしか考えられません。他に打つ手など何もないのですから。
 値下げの原資について、ちゃんと説明してくださいよ、水産庁さん、鯨研さん、共同船舶さん。
 商業捕鯨/鯨肉販売産業がすでに成り立たないことは、市場経済の原理を完全に逸脱している時点で明らかです。再生産力の低い大型野生動物を対象にした致死的利用ビジネスは持続不可能であるということも、歴史が証明しています。現在の調査捕鯨関連事業は、ODA利権を貪る土建事業者と族議員・天下り役人によって国策の錦の御旗のもとに推進される、きわめて非合理なものであり、まさに資本主義経済とかけ離れた旧い共産主義国家の国営事業に等しいといえます。
 筆者が言いたいのは次の一言だけ。
 税金返せ!!!!!

 

◇クジラ関連ブログクリッピング

■『闘え!自民族中心主義者』の山際 大志郎氏|flagburner's blog(仮)
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/b375b2a600ddfd5e2841aaf919e7b8dc

 捕鯨議連の中でもアフリカまで自ら票飼いに出向いてしまう最も熱心な若手ホープ(?)、山際大志郎衆院議員の著作『闘え!くじら人』。筆者も以前取り上げましたが、flagburnerさんが反反捕鯨論者の本質というべき山際氏の世界観にまでツッコんでくれています。
 ほんとにアングロサクソン・コンプレックスの固まりみたいなヒトですね・・。最も素朴なクジラ食害論にしがみついている代表者であり、世界に顔向けできない行政による犬猫大量殺処分を市民の所為にするトンチンカンなペット税を提唱している愛護(誤)獣医議員である山際氏、その中身は間違いなく劣等感の裏返しにすぎない尊大な自民族賛美を掲げるナショナリストだということが、著書中の文章の端々からうかがえます。

■幕末にも「丸投げ」があった|不条理日記
http://himadesu.seesaa.net/article/122684049.html

 そうなんだ・・と思う一方、日本人ならみんな「なるほどニャ〜」と頷いてもしまう史実。捕鯨と直接関係ありませんが、水産ODAの捕鯨利権とは密接に絡んでくる話。捕鯨存続に執着する「日本の伝統文化」の核心部分はコレかもね・・・。山際議員のトンデモ愛国論より、こっちの方がよっぽど“日本らしさ”を説明できてるでしょ。

■あの場所まで行ければ|3500-13-12-2-1
http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-87.html

 調査捕鯨の疑似/似非科学性とその背景に潜む共有因子である政治・ビジネスと科学との癒着の問題を解説。確かに「民間のトンデモ」と変わらないぶっ飛んだ内容なのに、「官製のトンデモ」だとあまり気に留める人がいないのは不思議な気がします。立派なトンデモなのに(--;; 一例に挙げられた遺伝子組み替えビジネスは、生物資源を専有化して第三世界の貧しい農民にまで特許権を振りかざすもので、どこぞの多国籍企業は原種をこっそり汚染するようなかなりアコギな真似までしてますしね・・
 捕鯨サークルや応援団は、ウシやカンガルーを野生動物・生態系保護の問題とリンクさせて「全部不問にしよう」などと後ろ向きなことをのたまうのが大得意なヒトたちですが、調査捕鯨をただの“看板架け替え”にすぎないとする批判に対しては、「ICRW8条」を印籠の如く掲げてしらばくれるばっかりで、切り離したがる傾向が顕著です。文化論や食害論を“防波堤”のリストから自ら外した水産庁の捕鯨問題担当森下参事官ですが、最後の砦となった「科学」の“錦の御旗”についてみれば、突出した異例の大規模経年致死調査であるJARPN2/JARPA2の「不可欠性」に対して科学界は何の保証も与えていません。
 Adarchismさんには以下の情報も教えていただきました。

−捕鯨問題で自らの主張を力説|nakada.net
http://www.nakada.net/syutyo/syutyo12.htm

 上掲のリンクは、いま話題を呼んでる人物の1人、熱烈な捕鯨ヨイショ応援団長でもある中田宏横浜市長のサイト。その記事の中に、2000年10月に放映された「サンデープロジェクト」に彼が森下参事官と出演した時の話があります。そこで森下氏が、駅前でよくやってる包丁の実演販売みたいなとんでもない非科学的プロモーションをしていたことが発覚しました。


森下:(写真を示して)これを見てください。ミンク鯨の胃を開けて出てきたカタクチイワシですよ。胃の中にこんなに魚がつまっている。これが漁業に影響を与えないはずはないんです。(以上引用)

 高級エリート官僚だからって10年近く前の自分の発言を一字一句覚えちゃいないだろうけど、こりゃいくらなんでもひどすぎるんじゃないですか、森下さん? 国際社会と日本国民に対して、「前言撤回お詫びをさせてくれ」とテレビ朝日に申し入れる義務が、あなたにはあるのと違いますか?

−一方的な捕鯨推進番組だったサンデープロジェクト|IKAN
http://homepage1.nifty.com/IKAN/hogo/hogei/001014.html



◇驚き呆れる捕鯨官僚の超問題発言

 ついでに「ミスター捕鯨問題」森下参事官の無責任発言シリーズ第2弾をば・・

■米国紙がみた調査捕鯨とアイヌ|無党派日本人の本音
http://blog.goo.ne.jp/mutouha80s/e/a863ac35990df463fce164c7633863d5

 2年前のブログ記事ですが、ロサンゼルスタイムズでの森下参事官のコメントが取り上げられています(ブロガーの方は捕鯨批判派というわけではありませんが)。


我々はいつも首尾一貫しているとは言えない。誰でも全ての点で完全であることは出来ない。それがたまたまアイヌの問題でそれが起こったのだ。」(森下氏のコメント)
森下氏は日本人の食欲を満たすことと、捕鯨禁止を止めさせることは無関係で、それは主義の問題だとしている。
然し日本はその原則をアイヌのコミュニティーに拡げる道をまだ見つけていないのだ。
(以上引用)

 いやはや、たいした原理主義もあったもんです。自国の政策についてはまるで首尾一貫性がないけど、よその自然、よその国々に対しては「完全」な一貫性を強硬に要求していいのだと、恥も外聞もなくおっしゃっているわけですから。「たまたま」との発言を聞いたらアイヌの人たちはどんな気持がするでしょうか? よくもまあヌケヌケと、こんな台詞を海外メディアに向かって吐けるもんです。ここまでくるともう、面の皮の厚さをひたすら賞賛する以外ないでしょう。
 国際社会においては、持続的利用の規範性、先住民に対する抑圧と差別の自覚に基づき、捕鯨支持のデンマークから捕鯨反対の米国、豪州、NZまで、多くの先進国で認められているところの伝統捕鯨を含む先住民の諸権利。国連の国際先住民年から15年もたった昨年になって、やっと抽象的な決議を出したものの、未だに先住民の権利擁護に関する施策で突出して遅れている伝統保護後進国が捕鯨ニッポンの真の姿です。そのことはもう、海外の皆さんにもバレバレなわけです。
 自国の長年にわたる伝統否定政策を棚にあげて、明治期に資本家が輸入した外来斜陽産業をあたかも文化の砦の如く騙ったり、自国の沿岸でまったくできていない持続的利用原理主義を南極の自然に押し付けていては、とんでもない二重人格国家の烙印を押されることでしょう。この国が優先すべきことを取り違えているのは、誰の目から見てもはっきりしています。
 森下殿、それにしても貴殿はを何枚もお持ちですね。次から次へと生えてくるんですか? まるでサメの歯みたいですよ・・・・
 前回の記事と、「総ざらい」のアイヌ捕鯨のトピックもご参照。

 

◇「クジラの季節」をすぎて・・・・

 クサガメさんの飼い主が現れないなあ・・。図書館に貼ったポスターは、こどもたちが食い入るように見ていて、イベントのチラシ等を引き離してダントツの人気があったんですけどね・・。飼い主が出てこなければ、この子たちに里親の名乗りをあげてほしいもの。
 IWCマデイラは当事者である日本社会にあまり顧みられることなく幕を閉じ、しばらくの間はクジラもしくはシーシェパードが酒の肴にされることもなくなるでしょう。今総会で決定された小グループによる作業は来年に向けて進められるでしょうが。次のイベントは、サミットとの日程調整や直前の船内自殺発生により延びた昨年より早く、今月下旬に終了する予定のJARPNU。船団の構成やスケジュールの変更等、本日の記事の主題とも関連する生産調整を示唆する部分もあり、結局何頭で締めるのかも気になるところ。
 IWC総会期間中ウォッチされてきた市民ブロガーの皆さんもお疲れさまでしたm(_ _)m 当ブログも臨戦モードを解除して、当分は関係ない話題も含め週1程度のペースに戻ります。捕鯨問題について興味を持たれた方は、今回まとめた資料集リンクを活用してぜひしっかり勉強してください。

−捕鯨問題総ざらい!!
http://kkneko.sblo.jp/article/29976279.html

posted by カメクジラネコ at 19:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会科学系
この記事へのコメント
>値下げによる損失を誰がカバーするのか!?

「損して得取れ」と言うでしょ。

>税金返せ!!!!!

もっと無駄使いしてる所に言いましょう。
Posted by オキクルミ at 2009年07月07日 00:45
>オキクルミさん
部位による価格差があるようだけど、緊急避難的な在庫縮小はできても得を取るのは無理だと思うよ。
>もっと無駄使いしてる所に言いましょう。
そりゃそだね・・・・。でも、そういうところはマスコミが指摘するでしょ。誰も言わないところがあったら、やっぱり誰かが言わなきゃいけないさ。
Posted by ネコ at 2009年07月07日 01:29
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