2009年06月09日

捕鯨擁護派と捕鯨批判派との対話

◇捕鯨擁護派と捕鯨批判派との対話

■産経「鯨肉生産は牛肉よりエコ」はデマだった (6/3,JANJAN)
http://janjan.voicejapan.org/living/0906/0906010416/1.php
■いのちを大切にする捕鯨賛成派??? (拙過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/29480333.html

 以前分類した前向きな動機がまったく見えないタイプ、正真正銘の狂人という以外に定義不能な反反捕鯨論者が暴走中・・。若いうちに時間とエネルギーの使い方を誤ると、後でさんざん後悔する羽目になるのがオチなのに。それにしても、なんでこんなに性格類型がパターンにぴったり当てはまるんでしょうね。読解力とコミュニケーション力のなさは、今の日本の教育の問題も大きいのかもしれませんが・・。
 お互いに議論可能な穏健な捕鯨賛成派の方ももちろん少なくはありません。この間もブログやメールで何人かの方々とやり取りをしました。ですが、捕鯨サークルの直接の関係者も含め、最近の捕鯨擁護論者は相手の主張に耳を傾けず、口角泡を飛ばして持論を押し付け、対話を拒否する姿勢が目立ってきています。IWCでの仲裁案は公海調査捕鯨死守に固執する日本側に蹴られ、せっかくの歩み寄りの機会が不意になり、退任するホガース議長にも苦言を呈されました。イスラエルとパレスチナではありませんが、過激な妨害をやめる気配のない反捕鯨団体シー・シェパードと、音響兵器や特攻でSSに応じようとする日本の調査捕鯨船団との対立は、ますますエスカレートするばかり。何人もの船員の命が操業中の事故等で失われながら、顧みることなく危険な事業に執着する鯨研/共同船舶ですが、このままでは本当に人為的に人命が断たれる事態にまで発展しかねません。異なる意見の者同士で対話が成立しないようでは、それこそクジラやワンコたちに対しても万物の霊長としてとても顔向けできないでしょう。
 「LCA(ライフサイクルアセスメント)」「環境負荷」「温室効果ガス排出量計算」について、言葉の意味を理解できずに混同されている方もいるようです。平易な解説と対話のお手本を兼ねて、以下のブロガーさんの所での議論をご紹介しておきましょう。

■鯨肉は牛肉よりエコなのか (Mutteraway)
http://bobby.hkisl.net/mutteraway/?p=981

 狂信的な反反捕鯨論者の中には、「牛肉生産の環境負荷は高止まりしていなければならず、だから鯨肉生産について一切文句をつけてはならない」という常軌を逸した教義を唱える人物もいるようです。ここまでとことん後ろ向きなヒトは、筆者もお目にかかったことがありませんが・・。いずれにしても、JANJAN上の記事とは無関係な議論。
 既に議論は出尽くしているのですが、追加の補足をしておきましょう。
 第一に鯨肉生産と牛肉生産を比較すること自体に意味はなく、単純明快な事実は「双方とも高い」「ともに削減しなければならない」というだけのことです。

■調査捕鯨による温室効果ガス排出量はやっぱり最低でも年間4万トン(C02換算)以上だった! (拙過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/29682226.html
■「鯨肉は牛肉よりエコ?」報道に関する公開質問状 (〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/29378622.html
■捕鯨は牛肉生産のオルタナティブになり得ない (拙HP)
http://www.kkneko.com/ushi.htm

 両者の間で大きな違いがあるのは以下の点。

○畜産については、環境負荷と削減策に関する研究が行われ、複数の技術が実用化されている(例:帯広畜産大、畜産草地研等)

●捕鯨については、まともな調査研究の事例がない。(ロイター報道はノルウェーNPOによる沿岸捕鯨の一部負荷のみ。産経報道はデマで、水産庁・水研センター・鯨研は何もしていなかった)

○畜産については、例えばウシのメタン排出を大幅に抑制するシステイン含有飼料は、農水省・厚労省が認可して普及を支援すれば絶大な効果がある。畜産施設からのメタンの回収・エネルギーとしての再利用も既に実用化済みで、広く普及すれば削減効果はきわめて高い。飼料作物を含む地産地消の推奨も一定の効果はある。すべては日本政府のやる気と日本の消費者の意識改革次第。

※ついでにいえば、両者とも豚肉・鶏肉への転換、菜食の推奨、単純に廃棄量&生産量を減らすという合理的なオルタナティブがある・・

●捕鯨については、遠洋捕鯨から沿岸捕鯨への転換は効果的だが、日本政府は環境負荷削減を拒絶している。「公海捕鯨やめて沿岸だけにしよう」という合理的な声は国内の識者やメディアの一部からも上がっているが、捕鯨シンパはごく一部の穏健な方を除いて聞く耳持たず。

○畜産については、他の事業活動と同様、温室効果ガス抑制対策についての具体的議論が進められている。(例:畜産草地研、AFP報道)

捕鯨については、他のあらゆる事業活動と異なり、排出削減策を講じないことを正当化するために、他の事業活動を引き合いにして非科学的な対比を行おうとする。時には事実に反するデマまで流す。(例:産経報道、粘着2号君を始めとする捕鯨擁護論者のばら撒く風説)

 狂人が騒いでいるLCAについてですが、他の方が誤解されないよう(まず大丈夫だろうと思いますが)補足説明しておきましょう。
 LCAとは、環境負荷を測る際の「一つの評価の仕方」。通常の負荷に加え、生産時・廃棄時のコスト(製品寿命で割り、年間の負荷にプラスする)を加えるものです。環境負荷には様々な種類があり、温室効果ガス排出は「その一つ」。LCAは、もちろん「温室効果ガス排出」についてだけでなく、他の環境負荷、水質汚濁や温室効果ガス以外の物質による大気汚染等を図る際にも適用できる概念です。工業製品も含めLCAは決して無視できないとはいえ、耐用年数等で割ることもあり、使用・運転時の燃料使用等の環境負荷を越えることは通常ありません。
 異なる生産活動による負荷をあえて比較しようと思ったら、単位を統一し(生産重量当りなど)、各種の条件も揃えてやらなくてはなりません。牛肉生産の約36kgの数字にはLCAの一部に当る数値が含まれていますが、産経報道は鯨肉生産のLCAについて一切説明のないまま、あたかも対等の条件であるかのように記事を書いたわけです。一方、「牛肉生産がエコ」という主張は存在しませんから、狂信的な反反捕鯨論者はただ仮想敵に向かって独りで吠えているだけ・・・
 生産設備建造のための環境負荷は、年間5千トンの生産のために、全長130mの巨大母船をはじめ船舶用におよそ2万トンの鉄鋼(ご存知のとおり最大の排出源のひとつ)を要する捕鯨が圧倒的に負けるでしょう。畜舎も飼料倉庫も単位生産重量当りでこれほど莫大な鉄鋼が使われることはありません。貯蔵施設・冷凍施設についてもスケールメリットが働きますし、生産拠点が分散している畜肉と違い、鯨肉は例えば大井から青森までなど特定の水揚港から全国各地に運搬されるため、陸上輸送でも不利になるでしょう。もっとも、この辺りの差は、捕鯨船のように専従で他の貨物を輸送しない輸送機関を除けば微々たるものですが。経済に詳しい方なら、それ以上の説明の必要は要りませんね。
 零下30度の漁船用強力冷凍庫は空調用の数十倍から数百倍もの冷媒を必要とします。のみならず、捕鯨推進の立役者である小松正之氏などは、鯨肉の味覚向上のために冷媒&エネルギー効率をさらに悪化させる零下50度クラスの超強力冷凍庫の導入まで主張しているほど。陸上倉庫・捕鯨船の倉庫それぞれのスケールメリットを含め、公海捕鯨のほうが圧倒的に不利。穀物バルク船を扱う大手外航船舶企業の環境報告書の中でも代替フロン分は含まれていません。販売メーカーのパンフレットが輸送船の平均冷媒量と関係があると主張する研究者は世界中探しても一人もいやしません。コンプレッサーの原理、冷媒の物理的特性を理解できないのは、体積ppmと重量ppmの違いという基本すら認識できない厨房レベルの非理系出身者であれば、仕方ないことかもしれませんが・・。

■LCA手法により評価した肉用牛肥育の環境影響 (畜産草地研)
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2003/nilgs03-37.html

 飼料の輸送に伴う排出量は全体の14%、カナダなどの5%に比べ全面輸入依存の割に大きくないのは、もちろん研究者が指摘するとおりメタンの温暖化係数が圧倒的に高いためです。単位生産当りCO2換算温室効果ガス排出量36.4kg/kg・CO2に占める飼料輸送分の排出は約5kg。南極海母船式捕鯨の9kg、及び飼料輸送を含めて1.5倍以上という筆者の試算は、研究者の示したデータとほぼ合致します。
 「ノルウェーやカナダの試算」の倍以上の温暖ガス排出になってしまうとするのは、やはり計算能力のない反反捕鯨狂人くらいものもの。
 AFPで報道された論文執筆者の方のコメントについても、単に“試算”の意味、コメントの意味を理解する能力のない反反捕鯨狂人が若干1名いるのみですから、改めて補足する必要はないでしょう。

■“温暖化ガス排出食”の王者は牛肉、畜産分野の約80% (2/16,AFP)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2572329/3807742

 ちなみに、36.4kgは肥育期間の長い高級黒毛和牛のみのモデル試算値で、消費牛肉、国産牛肉の平均値ですらありません。オージービーフはLCAを含めて16.4kg、物流はわずか0.7kgで、大半が畜体由来メタンによるもの。

http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=41427#under-deli

■オーストラリア産牛肉のカーボンフットプリント (日本ハム)
http://www.cms-cfp-japan.jp/common/files/roundtable_005/roundtable_005_004.pdf

 畜体由来メタンを大幅削減する帯広畜産大の研究によるシステイン含有飼料ですが、コストアップ分は牛1頭当り1日100円、年間36500円。生産コスト全体で見ればおよそ1割上昇することになりますが、生産者・消費者・行政が負担を分担すれば済む話。平均18ヶ月肥育で54750円となり、1頭当りの出荷時価格900万円のわずか6%。全額価格に転嫁してさえ、小売価格100g当り700円弱(国産)がたった4円値上がりするだけです。毎月の価格変動にそっくり吸収される額。輸入のオージービーフの場合も同様に100g約350円が数円値上がりするのみ。オーストラリアなどで日本の研究成果を活かしシステイン含有飼料を導入すれば、豚肉と同等の水準に環境負荷を抑えられるでしょう。対する鯨肉は、一部赤字をものともしないテコ入れで低級の赤肉の安売りが行われているようですが、ネット通販などで赤身ブロック100g当り約800円、ベーコン100g2000円など庶民には目の玉が飛び出る価格で売られている現状を見れば、わずかに価格が上昇したエコ牛肉(輸入でも高級黒毛和牛でも)とどちらが消費者に選択されるかも一目瞭然。誰かさんのいい加減な試算でわずか0.5%しか代替にならない鯨肉などとは、牛肉生産そのものの削減量はまさに比較になりません。経済学者でもマーケットリサーチャーでもなんでもないネット依存症患者の試算はゴミでしかありません。
 調査/商業捕鯨再開の音頭を取っている農水省が、国内の畜牛農家に向かって捕鯨サークルのために生産量を減らせなどとは口が裂けても言えない話。生産農家も、仮に鯨肉に市場のほんの一部でも取られるくらいなら(そうみなしている人もいないでしょうが・・)、当然わずかなコストアップでの環境負荷削減の方を選択するはずです。もちろん現状で鯨肉を買う気などさらさらない大多数の消費者も。捕鯨が牛肉生産の代替になるなどというのはまさに与太話でしかありません。
 もちろん筆者は、牛肉にも鯨肉にも頼らない排出削減がより望ましいと考えますが・・・

■捕鯨は牛肉生産のオルタナティブになり得ない (拙HP)
http://www.kkneko.com/ushi.htm
■持続的利用原理主義さえデタラメだった!/小松さんウヨガキ化?
http://kkneko.sblo.jp/article/37285308.html

 さらに、以下のような具体的な研究・取り組みも行われています。海外にも普及させることで削減できる温室効果ガス排出量は、自ら排出抑制も情報公開もせず削減効果も不明、さらに日本以外には適用不可能な公海捕鯨の比ではありません。

■LCA手法による休耕地を活用した濃厚飼料供給システムの環境評価 (畜産草地研)
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2004/nilgs04-42.html
■農畜産業における温室効果ガスの排出権取引研究 (日本商品先物振興協会)
http://www.jcfia.gr.jp/study/ronbun-pdf/no15/95.pdf
■畜産からの温室効果ガスの排出抑制技術 (畜産草地研)
http://www.niaes.affrc.go.jp/magazine/pdf/mgzn09801(5).pdf

 帯広畜産大の権威ある畜産研究者が実現不可能な研究をしている、農水省の畜産草地研の一連の負荷削減の研究も無駄だからやるなという、理系素養ゼロのネット依存症患者の主張は実に失礼な話。研究機関に補助金を出している農水省に対する何の根拠のない批判です。
 そしてもちろん、母船式捕鯨には南極海の生態系に与える重大なダメージがあります。

■ジゾクテキリヨウ原理主義さえデタラメだった
http://www.kkneko.com/sus.htm

 匿名掲示板の書き込みなどにソースとしての信憑性はゼロ、というのは誰でも知っていることですが、狂信的な反反捕鯨論者にはそもそも日本語が通じませんし、ゴミをばら撒くのが狂人自身のアイデンティティなのでしょう。コトバが通じない相手と意思疎通は不可能。ニャンコやワンコたちは十分コミュニケーション可能だけど。やっぱり万物の霊長が泣くニャ〜・・・

 
posted by カメクジラネコ at 17:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系
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