2009年05月26日

NHKに座布団4枚/「捕鯨がエコ」だなんて冗談キツイ!(続々)

◇NHKに座布団4枚

■クジラに触れる海へ カリフォルニア半島|世界遺産への招待状 (5/25 22:00-,NHK)
http://www.nhk.or.jp/sekaiisan/invitation/archives/archive090525.html

 近ごろ予算不足以上に番組の質の劣化が目立つ公共放送。世界遺産紹介番組はTBSに張り合って負けたのか(あっちもいまスポンサーが大変そうだけど・・)、時間帯が9時から10時に移行、中身も1回のうちに1カ国数ヵ所を駆け足でめぐる中途半端なものに・・。ただ、本日のメキシコの回は、ファン垂涎のクジラ尽くしでした。
 世界の海棲哺乳類の4割の種が群れ集うカリフォルニア湾(全域が世界遺産)、カリフォルニア山地の岩絵、そして太平洋岸に生息するコククジラが繁殖するエル・ビスカイノのクジラ保護区。先住民の描いたカリフォルニア山地の岩絵には、クジラをモチーフにした5mものサイズの絵も。一部、民放で流された海中写真家から買ったものも含まれていましたが、シロナガスやコククジラの映像は見ごたえ十分。
 メキシコをはじめとする南米諸国の人々がなぜクジラを愛し、捕鯨に強く反対するのか、ご覧になられた日本の人々にもよく理解できたでしょう。できればマデイラ総会直前にやって欲しかったですね。。あんまり近いと、自民党捕鯨議連から圧力がかかったかもしれないけど・・。
 7千年前に岩絵を書いた先住民は、ヨーロッパからの侵略者に滅ぼされましたが、当時と同じ死者を弔う儀式は今も伝えられています。9千年前の貝塚から骨が出てきただのと、毎度の如く国際会議で講釈をぶつ日本ですが、私たち現代の日本人に多く流れているのは、やはり大陸から移入した別の民族の血。古代の日本人に近いとされるアイヌは、松前藩の収奪・迫害の対象となり、明治以降は強圧的な政府に土地を奪われ、同化政策により文化そのものを否定されました。資本家が西洋から持ち込んだシャモの捕鯨より、文化としての正当性の点でははるかに高いはずのアイヌの捕鯨は、先住民の伝統を尊重する他の反捕鯨国と異なり日本でのみ認められていません。
 生きたクジラを敬うメキシコの文化は、日本のうわべを取り繕っただけの殺す文化よりよっぽど格上。日本は世界中の国々に、そんなニセモノの殺す文化を強硬に押し付けようとしていますが、彼らの生かす文化こそ、南極のクジラたちに対して適用するのにふさわしいのではないでしょうか? 南極の自然を飽食大国が独占的に消費する口実に、あまりに身勝手な文化論を持ち出すのであれば、生かす文化と殺す文化とどちらを選択するか、世界に向かって正々堂々と問いただすべきでしょう。
 たったいま、どちらが正しいかを示す、はっきりとした証拠があります。それは海そのもの。
 自然を大切にするメキシコの豊かな海で、一時200頭と絶滅間際だったコククジラは2万頭にまで回復しました。対する持続的利用食文化を錦の御旗とする捕鯨ニッポンでは、開発・汚染・乱獲によって沿岸の海の豊かさは奪われ、ニシコククジラは未だに絶滅の淵をさ迷っています。
 これが逆であったなら、確かに皮肉な結果といえたでしょう。しかし、いくら気まぐれといっても、そういうところではやっぱり自然は正直なものです。



◇オマケ・科学くんは1枚・・ 

■飛び出せ!科学くん (23:30-,TBS)
http://www.mbs.jp/pgm/tbs_kagakukun/

 東海大学海洋科学博物館所蔵のお宝の数々──というので、チャンネルを合わせてみましたが、生物フリークとしてはもうちっとマイナーどころを揃えてほしかったですね・・。
 43年前に捕獲されたピグミーシロナガスの世界唯一の完全骨格標本は、たいしていばれません。ただの骨格標本じゃ、生きた野生の個体(の映像)には当然負けます。絶滅していたら確かに貴重といえたけど・・。BWU(シロナガス換算)という科学的根拠のない管理制度によって、亜種の認識がなかった時代にたまたま小型のシロナガス扱いを受けたから難を逃れたものの、昔の御用学者に種として同定され、捕獲枠をシロナガスと別に設定されていたら、きっとアウトだったでしょうね・・。

 

◇「捕鯨がエコ」だなんて冗談キツイ!(続々)

■鯨肉は牛肉よりエコ?CO2排出量は10分の1以下 (4/24,産経)
http://sankei.jp.msn.com/science/science/090424/scn0904240100000-n1.htm (リンク切れ)
■難航IWC 溝は深いが望みはある (5/24,中日社説)
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2009052402000045.html

 「日本でしか通用しない“世界共通語”」(引用)が一体どこにあるというのでしょう??
 中日新聞の論説委員は、おそらく直接水産庁/水研センターに問い合わせたのではなく、産経新聞の記事を鵜呑みにしただけなのでしょう・・。以下もご参照。

■中日新聞は「クジラ食害論」を信じているのだろうか|ドイツ語好きの化学者のメモ
http://blogs.yahoo.co.jp/marburg_aromatics_chem/61376980.html
■「捕鯨がエコ」だなんて冗談キツイ! 大法螺ばっかり吹いている水産庁の天下り団体と産経新聞 (拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/28686903.html

 で、水産総合研究センターに調査を委託した水産庁遠洋課の水産調査官に対し、以下の質問状を送付しました(親切に回答用紙まで付けてあげたんだニャ)。6月1日までにご回答いただくようお願いしましたので、それまでご返事をお待ちしようと思います。回答結果についてはまた市民新聞さんに掲載していただくつもり。


 
<<<「鯨肉は牛肉よりエコ?」報道に関する公開質問状>>>

1.今回の調査の担当者・発表媒体・発表日時(未発表であれば予定)をお教えください。

2.今回の調査結果の詳細は公開(予定を含む)されていますか。非公開とするなら、その理由をお教えください。


3.産経記事には、「鯨肉(生産に伴う温室効果ガス排出)は捕鯨船団の燃料だけですむ」という説明があります。これは明確に事実に反します。記事は取材過程における産経側の事実誤認に基づくものでしょうか。それとも、調査担当者がそのような誤った認識でおられるのでしょうか。


4.質問3.に関して、誤った情報を市民に提供した責任は産経新聞もしくは水産庁遠洋課・水産総合研究センターのいずれかにあります。貴庁の方から訂正の発表をして、産経新聞に対しても報道するよう求めるべきと考えますが、いかがでしょうか。訂正を指示しない場合、その理由をお聞かせください。

5.船舶から排出される温室効果ガス排出には、CO2の他、ボイラーから排出されるSOx、NOx、CH4(メタン)、冷蔵冷凍設備の冷媒であるHFC(代替フロン)などがあります。
「CH4については、低負荷時における機関からの排出および原油タンカーからの蒸散量が、HFCについては冷蔵コンテナの冷媒として用いられる代替フロンのリーク分が、相当量あることが予想される。」
 以上は日本財団による報告書からの抜粋です。調査捕鯨においては8,000トン級の捕鯨母船が操業期間中及び停泊期間中アイドリングを続け、CO2より温室効果の高いCH4が大量に排出されると考えられます。また、調査捕鯨船団の母船日新丸は1987年、補給船第二飛洋丸は1978年建造の老朽船であり、温室効果の極めて高いHFCのリーク(漏洩)も膨大な量に上ると推測されます。鯨肉を搭載する冷凍倉庫は船団の各船にも備わっており、やはり同様に冷媒のHFCのリークについて考慮する必要があります。先ごろ環境省は、代替フロン排出の温室効果への影響を過少見積していたことを発表しました。
 これらの温室効果ガス排出について、今回の調査では考慮されましたか。

参考:「平成11年度船舶から発生するCO2の抑制に関する調査研究報告書(P2)」(日本財団)
http://www.sof.or.jp/jp/report/pdf/200003_4_88404_006_6.pdf
「代替フロン漏れ、想定の2倍 国、温室ガスの排出量修正」(3/20,朝日新聞)
http://www.asahi.com/eco/TKY200903200258.html


6.船舶からのCO2排出量計算には、燃料法、燃費法、トンキロ法の3通りがあります。このうち最も正確で計算も容易なのは燃料法です。今回の調査では、上記3つのうちいずれの手法を選択されましたか。

参考:「改正省エネルギー法における輸送時に発生する二酸化炭素排出量の3つの算定方法の比較に関する研究」
http://www2.kaiyodai.ac.jp/~kuse/introduction/pdf/07s_hamada.pdf


7.輸送事業者・荷主が貨物輸送にかかるCO2排出を計算する場合、往路と復路で異なる貨物を輸送することから、片道分の排出量を計算します(主に質問6.のトンキロ法を採用)。しかし、同じ船舶航行でも貨物輸送と異なり、鯨肉生産においては往路復路とも生産活動に伴うC02排出となるため、計算には注意が必要です。今回の調査では、往復分の航行をきちんと含める形で排出量を計算していますか。


8.今回のCO2排出量計算には、公式には船団中に含まれていないながら、鯨肉生産活動に不可欠な役割を負っている中積補給船第二飛洋丸による燃料消費・排出は含まれていますか。


9.排出量計算に使用した元データをご提示ください。開示できない場合、排出量の根拠となる正確な情報を伏せながら、結果のみをマスコミに発表させた理由をお聞かせください。

10.「捕鯨で生産・販売された鯨肉1キロ当たりのCO2排出量」には、当然のことながら、陸上輸送にかかるCO2排出も含まれます。例えば、共同船舶の社員が「土産」として支給された20kgの鯨肉を、東京の大井港から宅配便で青森まで運んだ場合、それだけで2kgのCO2が排出されることになります。調査捕鯨で生産された鯨肉は、一次搬入港から全国に向けて配送されるため、輸入食品と同様、地場で生産・消費される畜肉その他の農産物・水産物に比べて必然的にCO2排出量が増えます。
 今回のCO2排出量計算において、鯨肉の生産・販売活動の一部である陸上輸送にかかるCO2排出を考慮されましたか。


11.鯨肉を在庫として保管する際に、冷凍冷蔵設備が消費する電力にかかるCO2消費及び冷媒のHFCリークもまた、生産活動に伴う温室効果ガス排出となります。鯨肉の月末在庫は平均値が生産量の約8割、最低値でも約5割で、他の水産物と比べても在庫率がきわだって高くなっています。年間を通じて最低でも2,500トンの冷凍・冷蔵鯨肉が全国各地の流通会社や食品会社の倉庫に貯蔵されており、そのために電力が常時供給され続け、HFCの漏出も起こっていることになります。
 今回の調査において、鯨肉の冷蔵冷凍保管における電力消費に伴うC02排出及びHFC排出を考慮されましたか。

参考:「増える在庫/消える在庫 鯨肉在庫統計のカラクリを読む(6)」
http://www.news.janjan.jp/living/0811/0811190892/1.php


12.鯨肉生産に伴う温室効果ガス排出量としては、設備のLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)も考慮すべきでしょう。巨大な捕鯨母船を始めとする複数の船舶と関連施設の建造にかかるエネルギー消費等、鉄鋼などの原材料の採掘・輸送・精製にかかるエネルギー消費等、厳密にいえばすべてが鯨肉生産に伴う排出活動です。他の食糧生産においては、2、30年で償却しなくてはならない巨大母船のような高環境負荷の設備投下は必要としません。
 今回の調査において、上記のLCAの観点を考慮されましたか。


13.今回の調査では、牛肉生産に伴う温室効果ガス排出量(CO2換算)を36・4kg(生産量1kg当り)と発表されています。しかし、他の研究機関が発表している数値は約16kg(生産量1kg当り)となっています。なぜこれほどまでに開きのある数値となったのでしょうか。この数値の大幅な食い違いについて、ご意見をお聞かせください。

参考:「“温暖化ガス排出食”の王者は牛肉、畜産分野の約80%」(2/16,AFP)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2572329/3807742
「クジラの肉は牛肉より環境に優しい=ノルウェー活動家」(ロイター)
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-30627220080304


14.調査捕鯨の鯨肉生産にかかる温室効果ガス排出量について、朝日新聞報道による船団の燃料消費量の情報に基づき試算したところ、7.7kgから9.7kg(生産量1kg当り)に達するという結果を得ました。これは、鶏肉や豚肉生産によるCO2排出量を大きく上回る数字です。また、船舶の燃料消費に伴うCO2排出のみの数字であり、上掲の質問4.10.11.12.中で指摘している温室効果ガス排出は含まれていないため、実際の排出量に比べると大幅に過少な数字と思われます。
 質問6.7.8.9.13.とも合わせ、当方の数値と今回の調査の数値の開きについて、ご意見をお聞かせください。

参考:「遠洋調査捕鯨は地球にやさしくない・日新丸船団、CO2を4万tは排出か?」
http://www.news.janjan.jp/living/0807/0807090629/1.php


15.今回の調査で発表された鯨肉生産・牛肉生産のそれぞれについて、温室効果ガス排出を抑制するための具体的かつ現実的なオルタナティブ(代案)を検討されましたか。オルタナティブの提案がある場合はご提示ください。

例)
牛肉生産の場合:
過剰消費や食糧廃棄を減らすための啓蒙活動を行う。地産地消を推進する。エネルギーとして再利用できるCH4を回収したり、飼料の改良によりその排出量を削減する(既に様々な技術が開発・実用化され、排出権国際取引の場でも活用されている)。温室効果ガス排出のより少ない豚肉・鶏肉への転換を図る。
鯨肉生産の場合:
公海母船式捕鯨の場合、CH4、HFC、CO2などについていずれも回収など効果的な排出削減方法がないため、排出量のより低い沿岸捕鯨への転換を図る。温室効果ガス排出のより少ない豚肉・鶏肉への転換を図る。

参考:「家畜ふん尿及び食品廃棄物からのメタンガス回収」
http://www.affrc.go.jp/ja/research/seika/data_kanto/h13/01/narc0101a32
「温室ガス削減に効果?家畜のゲップからメタン除去、帯広畜産大が開発」
http://matinoakari.net/news/sc/item_64059.html
「農畜産業における温室効果ガスの排出権取引研究」
http://www.jcfia.gr.jp/study/ronbun-pdf/no15/95.pdf

posted by カメクジラネコ at 01:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/29378622
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック