2009年04月25日

「捕鯨がエコ」だなんて冗談キツイ! 大法螺ばっかり吹いている水産庁の天下り団体と産経新聞

◇大法螺ばっかり吹いている水産庁の天下り団体と産経新聞


■鯨肉は牛肉よりエコ?CO2排出量は10分の1以下 (4/24,産経)
http://sankei.jp.msn.com/science/science/090424/scn0904240100000-n1.htm (リンク切れ)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090424-00000509-san-soci (リンク切れ)

 またまた鯨研のオトモダチ新聞・産経がやらかしてくれました。
 産経新聞といえば、元論説委員の馬見塚氏が年収1千万円の役員の1人として送り込まれており、鯨研ときわめて濃厚なリレーションを築いているだけあって、これまでにも他紙にないスクープ報道を数多く連発してきたマスコミです。今回の記事は、水産庁所管の独立行政法人水産総合研究センター発で、水産庁のコメントも寄せられています。上記の報道が事実だとすれば、他のメディアがこぞって後を追いかけても不思議はない一大ニュースといえるでしょう。
 この水産総合研究センター、養殖技術とか水産畑で役立つ研究をやっている研究機関ですが、クジラ絡みでもどっかで名前を聞いたと思ったら、Mr.捕鯨問題こと小松正之氏が以前“飛ばされた”とこなんですね。結局、小松氏は「こんなとこいたって張り合いがない」と辞めちゃったんですが(「ナショナリズム煽る水産庁の罪・調査捕鯨担当者の辞表」『AERA』'08/4/7)。で、小松氏と入れ替わるように水産庁から天下ってきたのが、IWCの日本政府代表団長を務める元水産庁次長の中前明氏。水産庁を出てセンターの理事長となった昨年からも、サンチアゴ総会やローマ中間会合に出席しています。他の理事の面々はといえば、小松氏が出向した後の増殖推進部漁場資源課長のポストにいったん就いた奥野勝氏、元増殖推進部参事官の石塚吉生氏、元資源管理部審議官の長尾一彦氏、元農水省中国四国農政局次長の高島泉氏と、6人の役員のうち5人が農水官僚という見事なまでの天下り団体(後の1人は水産学者)。
 同センターのホームページでは、他の正直な外郭団体と異なり、役員の前歴を伏せています。あの鯨研でさえ載せてるってのに・・(もっとも、馬見塚氏の経歴は隠したけど)。最近、地球温暖化関連のシンポジウムも主催したようですが、講演の演目を見ると、主に漁業生産への影響に関するもので、遠洋漁業や養殖など高環境負荷型漁業の排出コストの問題は取り上げていない様子。

■独立行政法人水産総合研究センター
http://www.fra.affrc.go.jp/
■「地球温暖化とさかな」出版記念シンポジウム
http://www.fra.affrc.go.jp/topics/210330/program.pdf

 問題の記事ですが、実は2年前にノルウェーの漁業系NPO「ハイ・ノース・アライアンス」が沿岸捕鯨のデータをもとに似たようなことをマスコミに発表しており、日本のウヨガキ君たちが拡大解釈して「捕鯨はエコ!」と産経そっくりの見出しをブログに書きまくっておりました。当時、外野の応援団を除く捕鯨サークル(水産庁/鯨研/共同船舶)サイドはこの件については沈黙。筆者はこの問題に関して、昨年7月に市民WebニュースJanJanにて同団体の指摘が日本の母船式捕鯨に当てはまらないどころか、牛肉生産に匹敵するか場合によっては上回る大量の温室効果ガスを排出する高環境負荷産業に他ならないことを指摘しました。

■遠洋調査捕鯨は地球にやさしくない・日新丸船団、CO2を4万tは排出か?
http://janjan.voicejapan.org/living/0807/0807090629/1.php

 さて、今回の産経の記事は一体どう解釈すればいいんでしょうね? 水産総合研究センターに算出根拠をすっかり明示してもらわないと、どちらが間違っているのか、何を計算し忘れたのか、これではわかりません・・。
 と思いきや、産経が同センターの主張の一部を紹介してくれたことで、どちらに軍配が上がるかがはっきりしました。
 正しいのは筆者です。ハイ。しかも、これは単純に計算間違いをしたとかいうレベルではなく、水産総合研究センターの真っ赤な嘘だということが明らか(あるいは、産経がとんでもない聞き間違いをしたか・・)。
 自称院生ながら算数が苦手らしいウヨガキくんでも、プロのくせに算数が苦手らしい水産学者のお偉い先生方でもわかるように、今から筆者が懇切丁寧に講義してあげるニャ〜

<<<サルでもサンケイ新聞でもわかる算数講座>>>

 まず、記事の一部を引用しましょう(背景着色部分)。

数年前の調査捕鯨船団の燃料使用量からCO2の排出量を計算。捕鯨で生産・販売された鯨肉1キロ当たりのCO2排出量を試算した。
その結果、日本から約1000キロ沖で行われる北太平洋の調査捕鯨では、鯨肉1キロをとるために、約2・5キロのCO2が排出されていると推計。1万キロ以上離れた南極海の調査捕鯨では、CO2の排出量は増えたが、それでも約3キロにとどまった。
これに対して、畜産農家が牛肉1キロを生産するために、排出するCO2などの温暖化ガスは36・4キロと計算されており、鯨肉の排出量は10分の1以下になることが判明した。
牛肉生産では、牛の飼育やエサの生産・運搬などで大量のエネルギーが使われるが、鯨肉は、捕鯨船団の燃料だけですむため、温暖化ガス排出も比較的少ないという。

 「鯨肉は捕鯨船団の燃料だけですむ」大体この説明自体があまりにあからさまな嘘八百なのですが(後で詳述)、とりあえず目をつぶりましょう。。前提条件が単純になりますので。
 まず、水産総合研究センターは調査捕鯨船団のCO2排出量を、筆者と同様に最も誤差の少ない手法で導き出しました。つまり、燃料消費量から換算するやり方です。筆者は新聞記事をもとに推測するしかありませんでしたが、同センターは共同船舶から実際の数字を入手しているのでしょう。であれば、この数字は筆者のはじき出した結果より正確でなくてはならないはずです。
 筆者が導き出した数字は、燃料消費量が1400万リットル(A重油のみとした場合)ないし1600万リットル(C重油のみとした場合)、単位生産量当りのCO2排出量は7.7kgないし9.7kgというものでした。産経の2.5kg(JARPNU)及び3kg(JARPAU)と比べると、とんでもない開きがありますね・・。
 水産総合研究センターの計算が合っていることを前提に、ここで調査船団の燃料消費量と船の燃費を逆算してみることにしましょう。お暇な方は先に進む前に挑戦してみてください。数字のソースは以下のリンク。下の2つは捕鯨擁護派の方のデータベースですが、いろいろ重宝します。

■二酸化炭素排出量一覧表
http://www.skr.mlit.go.jp/eizen/image/hozen/09ondanka/co2haishuturyou.pdf (リンク切れ)
■北太平洋における日本の鯨類捕獲新調査(JARPN II)の経過表
http://luna.pos.to/whale/jpn_jarpn2.html
■南極海における日本の第二期鯨類捕獲新調査(JARPA II)の経過表
http://luna.pos.to/whale/jpn_jarpa2.html

 調査年度が書いてありませんが、生産量が最大で計画に一番近い2006年度の数字を用いると、鯨肉生産量は1900トン(JARPN)及び3400トン(JARPA)と見積もられます。生産量が多ければ排出量の対生産重量比は下がって(往復分の距離が同じなので)捕鯨業界に有利に働きますから、水産総合研究センターもたぶんこの年次のデータを用いているはずです。ですから、燃料消費量は以下の式で求められます。

   A×C=2.5(kg−CO2/kg)×1,900t (JARPN2分)
   B×C=3(kg−CO2/kg)×3,400t (JARPA2分)

 Cは定数の燃料のCO2排出係数。A、BがJARPN2とJARPA2の船団の総燃料消費量になります。ここではとりあえず、調査捕鯨船団が全船A重油を用いていると仮定し、A重油の二酸化炭素排出係数をもとに計算してみましょう。この手の計算で厄介なのは、計算そのものより単位を揃える作業なのですが、リンク先の換算表は欲しい単位に合わせてくれています。1トンは1万kgではなく1千kgですからくれぐれも間違えないように・・。
 すると、右辺(CO2排出量)が4,750トン(JARPN2)及び10,200トン(JARPA2)となるので、

   A=175万リットル
   B=378万リットル

 合計で553万リットルとなります。筆者の見積りの1/3ほどですね・・。
 JanJan記事で述べたように、「燃料費だけでも4億円増える」という鯨研筋の情報を朝日新聞が伝えています。記事が掲載された当時の重油の1リットル当りの価格差(対前年比)は約30円。海外漁業協力財団の無利子融資増額を期待しての言及であれば、過小な見積を出すことはもちろん考えられません。これをもとに筆者は、調査捕鯨にかかる重油消費量を1400万リットルと弾き出したわけですが、少なくとも1千万リットルを下回ることはないでしょう。融資増額を当て込んで、デタラメの数字をマスコミに流す姑息な真似をしたのでもない限り・・。

■クジラ肉、2年連続の値上げ 目標数を捕獲できず ('08/6/24,朝日)
http://www.asahi.com/ business/update/0624/TKY200806240296.html (リンク切れ)
■A重油納入価格調査推移表|石油情報センター
http://oil-info.ieej.or.jp/price/data/Ajuyu.pdf

 別の視点からツッコんでみましょう。 
 CO2排出量は燃料消費量に、そして燃料消費量は航行距離に比例します。ですから、この数字を航行距離で割ると、船団の各船の燃費(平均)を合計した値が出てくるはずです。実際の船の燃費は航行中変動するため、計算が非常に煩雑になるのですが、平均ということで大目に見てもらいましょう。出航時の満載した状態の燃料重量は約4500トンとなりますから、往路と鯨肉を積んだ復路の燃料消費の差は、他の貨物船などに比べるとかなり小さいと考えられます。
 ここで早くも、「JARPAUの船団すべてで3000トンしか燃料を消費していないのであれば、補給船など要らないだろうに」という素朴な疑問が沸いてきます。OB号改め第二飛翔丸は100%中積の役目しか担ってないんですかねぇ? 産経の記事に基づき、調査海域と日本との間の航行距離を片道1,000km×2で2,000km(JARPNU)、片道10,000×2で20,000km(JARPAU)とします。これに総探索距離(各調査船の探索距離を加えた延べの数字)を加えます。2006年度の数字を用いると、それぞれ22,679km(JARPN2)及び30,073km(JARPA2)となります(ソースの単位は海里なのでkmに換算、海里とマイルは違うのでご注意)。
 補足しておくと、総探索距離には目視調査の航行距離が含まれています。その分、過去の商業捕鯨時代より燃料消費が増えることになりますが、RMPにおいて資源量を推定するのに必須の作業である以上、当然ながら鯨肉生産に伴う排出量に含めないわけにはいきません。参入企業がなく再開の見込みが立たない以上、現行の「調査名目での商業捕鯨」の排出量であることも間違いのないところ。
 皮肉なことに、目視航行分の排出量をあえて取り除こうとすれば、往復の燃料消費の比重が高くなって、2.5と3というCO2排出量の調査海域間の小さな差が説明できなくなってしまいます。また、JARPNUでは捕獲数の半数以上が大型のイワシクジラとニタリクジラなのに対し、小型のクロミンククジラが捕獲対象の大半を占めるJARPAUの方は、探鯨・捕獲・曳航作業に伴う航行距離が大幅に伸び、単位生産重量当りの燃料消費を押し上げます。ですから、調査部分を強引にカットした数字を作ろうとすれば、仮にJARPNUの単位生産重量当り排出量を2.5kgとした場合、JARPAUは10kg以上といった極端に大きな数字が飛び出してくるでしょう。
 そうなっていないということは、少なくとも水産総合研究センターは目視航行分を外す形のズルはしていないはずです。どちらの作業にどれだけ燃料を消費したか計算するのは、実際問題としてほとんど不可能ですし。
 以上の前提に基づき、調査捕鯨船団の燃費を計算してみましょう。すると

   175万リットル/(1,000×2+22,679)km=70.9リットル/km
   378万リットル/(10,000×2+30,073)km=75.5リットル/km

 ご覧のとおり、かなり近い数字となっています。三陸沖と釧路沖の沿岸調査の分を上のJARPN2の式に加えれば、数字はさらに接近します。これまた不可解な数字といわざるをえません。なぜなら、JanJan記事でも解説してありますが、南極行の方がプラスαの排出オプションが付くからです。ひとつには、「吠える40度、叫ぶ50度、怒涛の60度」などと呼ばれる荒天海域を2度も突破しなければならないこと。調査海域自体も日本周辺など低緯度に比べれば荒天海域といえるでしょう。当然のことながら、通常の海を航行するのに比べ燃費が大幅に悪化します。
 捕鯨船団の構成は、JARPN(北西太平洋調査捕鯨)とJARPA(南極海調査捕鯨)ともに、総トン数8000トン台の母船1隻及び中積補給船1隻、総トン数700トン前後の目視専門船2隻及び目視採集船3隻となっています(隠し玉のスパイ船等を除く・・)。筆者がWeb上の資料(リンク)をもとに大雑把に試算したところでは、大型船2隻(母船+補給船)の燃費がおよそ30リットル/km、小型船(各調査船)5隻の燃費がおよそ7リットル/kmで、船団の数字を合計すると95リットル/kmとなります(大幅な過小評価の可能性が高いのですが・・)。20も小さいのは、少なくとも鯨肉生産活動に必須であるはずの中積補給船の燃料消費・CO2排出量を無視しているとしか考えられません。確かに、“公式のメンバー”じゃありませんけどね・・。

■石油業界の改正省エネ法荷主対応ガイドライン|石油連盟
http://www.paj.gr.jp/paj_info/data_topics/pajpg200610.pdf

 上記を鑑みると、水産総合研究センターは筆者の提示した温対法上の議論を逆手にとり「自分達は“運送業者”であるから片道分の燃料消費だけ考えればよい」という理屈をひねり出し、燃料消費の半分(もしくはそれ以下)しか計算に含めなかったと思われます。
 ここで、「鯨肉は、捕鯨船団の燃料だけですむため」という、研究機関としてはあまりにも致命的な見逃しについて、拙記事から改めて引用しましょう。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 今年の3月、「捕鯨のほうが畜産より環境にやさしい」というノルウェーの捕鯨推進活動家による調査結果をロイター通信が報じた。
 こうした主張は、日本の捕鯨賛成派のメディアや文化人が以前から繰り返し論じてきたものである。
 ロイターの報道によれば、鯨肉1kg当りの温室効果ガス排出量1.9kgに対し、牛肉は15.8kg、豚肉6.4kg、鳥肉4.6kgと、いずれも鯨肉より多くなっている。
 上記の数字のうち、鯨肉以外は、食料問題や南北問題、工場畜産の問題に取り組むNPO/NGOなどがよく掲げるデータと同じものである。
 この件に対するグリーンピースの反論にもあるように、迂回生産に加え、反芻動物である牛はメタンを大量に排出するため、「どんなものでも牛よりマシ」というほど、確かに牛肉生産による地球温暖化への寄与度は高い。
 ただし、ここにある鯨肉の数値は小型沿岸捕鯨(燃料消費のみ)によるもので、母船式遠洋捕鯨のそれとはまったく異なる。
 そこで、燃料費の増額から求めた調査捕鯨の二酸化炭素排出量を、鯨肉の単位生産量当りの数字に直してみることにしよう。調査捕鯨による年間の鯨肉生産量を約5千tとすると、見積りの最小値である3.9万tの場合で7.7kg、最大値の4.9万tなら9.7kg。最小値でも豚肉を上回り、最大値では鶏肉の2倍を越える。
 実は、この見積りはまだまだ甘い。調査船団の燃料消費は、鯨肉生産に伴う温室効果ガス排出活動のすべてではないからだ。
 船舶からは二酸化炭素ばかりでなく、大気汚染物質でもある硫黄酸化物や窒素酸化物など、他の温室効果ガスも排出される。硫黄分の多いC重油を用いる大型船舶の排気は、とくに硫黄酸化物の割合が高くなる。ボイラーの燃焼では、より排出係数の高いメタンも排出される。
 もう一つ忘れてはならないのが、冷凍・空調設備に冷媒として使用される代替フロンHFCである。代替フロンはオゾン層を破壊しない代わり、種類によっては二酸化炭素の1万倍にも達する強力な温室効果を発揮するものがある。これらHFCは、設備への封入時や、メンテナンス・故障時の漏洩により大気中へ排出される。しかし、測定が容易でないこともあり、環境省の算定報告マニュアルでは事実上無視に近い扱いとなっている。
 船舶の冷凍設備に関しては、陸上施設に比べても管理が甘く、リーク量が多いのではないかと指摘されている。日新丸は1987年、補給船オリエンタル・ブルーバード号は1978年建造の老朽船であることも、念頭に置く必要がある。
 海上輸送にかかる分だけを計算するのでは不十分であろう。国内で小売店や料理店、あるいはネット販売で注文した消費者宅へ届けられる際の陸上運送にかかる二酸化炭素排出もある。例えば、20kgの鯨肉を東京から青森へ運べば、それだけで2kg分のCO2が排出されることになる。そして、もう一つ見過ごせないのが、鯨肉を在庫として保管する際に冷凍設備が消費する電力及び冷媒のHFC使用である。
 鯨肉の月末在庫は平均値が生産量の8割、最低値でも5割で、他の水産物と比べても在庫率がきわだって高い。年間を通じて最低でも2500tの冷凍・冷蔵鯨肉が全国各地の流通会社や食品会社の倉庫に貯蔵されており、そのために電力が常時供給され続けていることになる。
 まだある。投下設備のLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)──具体的には、巨大な捕鯨母船を始めとする船舶と関連設備の建造、鉄鋼など原材料の採掘・輸送・精製にかかるトータルの環境負荷まで、厳密にいえば考慮に入れる必要があるだろう。そうでなければ、他の食糧生産との対等の比較はできない。
 これらの過程で排出される温室効果ガスの量をすべて合計したならば、母船式遠洋捕鯨/調査捕鯨の鯨肉生産による環境負荷は、環境に悪いとされる牛肉の生産に匹敵する可能性もある。飼料を含めた地産地消型の畜産には確実に負けるだろう。この点については、グリーンピースは少々捕鯨に対する採点が甘すぎたかもしれない。
 念のため捕捉しておくと、調査捕鯨の活動よる二酸化炭素排出量には、目視船の走行分も含まれる。これらは直接的には鯨肉の生産に伴う排出にはあたらない。しかし今後、仮にIWC(国際捕鯨委員会)の管理下において商業捕鯨が再開された場合、RMS(改訂版管理方式)という新しいルールに則ることになり、目視調査による継続的なモニタリングが必須となる。
 結論からいえば、大型鯨類の激減、南極海生態系の荒廃と撹乱を招いた乱獲時代の商業捕鯨と一線を画する、厳重に管理された持続可能な新時代の商業捕鯨とは、きわめて環境負荷の高いものとならざるを得ないのだ。しかも、実績がない以上、海洋生態系に果たして影響がないかどうかも未知数である。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 補足しますと、ほとんど把握されていない状態だった強力な温室効果ガスであるだいたいフロンの漏出に関する報道がありました。水産総合研究センターは、とりわけ古い船舶の冷蔵施設から大量にリークしている可能性大の冷媒の代替フロンによる温室効果の影響を計算し直さなければなりませんね。マデイラまでにできますか?

■代替フロン漏れ、想定の2倍 国、温室ガスの排出量修正 (3/20,朝日)
http://www.asahi.com/eco/TKY200903200258.html
■温室効果ガス 07年度排出量上方修正 代替フロン漏れ倍増が影響 (4/3,フジサンケイビジネス愛)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090402-00000035-fsi-bus_all

 一方、水産総合研究センターは牛肉の排出量について36kg−CO2/kgととんでもない数字を掲げています。
 以下に海外の研究者発の情報を伝える報道があります。16kgという数字はハイ・ノース・アライアンスの主張と同じ。一体どういう計算をすれば倍以上に増えるのか理解に苦しみますが・・。ノルウェーの捕鯨擁護NPOの方がまだしも紳士的といえますね。

■“温暖化ガス排出食”の王者は牛肉、畜産分野の約80% (2/16,AFP)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2572329/3807742
■クジラの肉は牛肉より環境に優しい=ノルウェー活動家 ('08/3/4,ロイター)
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-30627220080304

 これについても少し補足を加えておきましょう。
 AFPの記事によれば、輸送コストの割合はそれほど大きくないそうです。地産地消という最も大切な伝統文化を守るに越したことはありませんが、「週に1回、肉と乳製品をまったく食べない日を作るほうが、1年中毎日地元のものに限った肉や乳製品を食べるよりもずっと大きな効果がある」という教授の講義はごもっとも。
 まあ、筆者はそもそも牛肉も鯨肉も口にしない純草食動物なのでどうでもいいんですが、「肉までやめるのは・・」という方には朗報でしょう。メタンについては、現在既に回収して発電に再利用する技術があり、実際途上国との排出権取引に利用されています。温室効果係数でみればメタンの方が二酸化炭素より圧倒的に高いのですが、CO2は燃料としての再利用ができません。また、CO2の地中や深海への固定技術はコストの点でも実用化への道のりは遠く、長期的な環境への影響も十分考慮されていません。そういったオルタナティブの視点を含めても、やはり捕鯨の方が牛肉生産に比べるとよほど環境には悪いのです。

■捕鯨は畜産のオルタナティブにはなり得ない
http://www.kkneko.com/ushi.htm

 問題は、捕鯨による排出量をとことん過小評価し、牛肉生産による排出量の方はとびきりでかい数字を採用する、自分たちに有利なように客観的なデータを捻じ曲げる水産総合研究センターの姿勢
 国の指定する独立行政法人の科学研究機関にあるまじきものといえます。ここまで非科学的で信用の置けない主張は、国内でもオトモダチ新聞・産経以外のメディアはまさか取り上げないでしょう。また、本気で6月のマデイラでこんな主張をしたら、温暖化を含む環境問題全般のプロフェッショナルであるWWFなどのNGOに即座に反論され、捕鯨ニッポンの環境問題に関する無知・無理解及び科学的素養の低さが世界の物笑いのタネになってしまうでしょう。
 IWC政府代表団長も務める水産総合開発センター中前所長、でたらめな数字を引っ込めるか、算出根拠をきちんと公開してください。共同船舶の重油購入の領収書も添付して。

参考リンク:
■地球温暖化とクジラ類との関係についての総説を読む (フリーランス英独翻訳者を目指す化学系元ポスドクのメモ)

http://blogs.yahoo.co.jp/marburg_aromatics_chem/60968123.html

 WWFとWDCSによる、鯨研とは大違いの「まともな温暖化研究」論文へのリンクあり。



◇オマケ
 

 産経の記事が出てからすぐアップすべきでしたが、バタバタして時間がかかってしまいました。

 某タレントさんの不祥事、個人的にはそこまで騒ぐこと(某大臣の発言とか)だとは思わないんですが・・。飲酒運転事故や傷害、薬物事件などに比べたら、他人を傷つける度合を考えてもずいぶんマシでしょう。
 イギリスなどでは、客を泥酔させた居酒屋は営業停止になるとか。飲酒に寛容すぎる社会全体の問題も考え直してみては? 筆者はどのみち煙草と同じく一滴も口にしないヒトですが。
 なんだか今のニッポンは、寛容であるべきところで不寛容で、許してはいけないことについては気にしない、不可解な風潮が蔓延っている気がしてなりません・・・

 
posted by カメクジラネコ at 18:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系
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