2009年03月24日

ウミガメとクジラ──有益な胃内容物調査とムダな胃内容物調査

◇クジラ関連ニュースクリッピング

■「殺さない調査捕鯨」作業部会、会合始まる 豪政府主導で (3/23,日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090323AT2M2300R23032009.html (リンク切れ)

 「日本政府がなんでこの作業部会に加わっていないのだろう?」と不思議に思う国民は多いでしょう。水産庁が「やだ」って言うなら、環境省が参加すりゃいいのにね・・。

 
■書評『鯨塚からみえてくる日本人の心』宮脇和人、細川隆雄著 (3/21,産経)
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/090322/bks0903220836002-n1.htm (リンク切れ)

 ただの殺しの言い訳と後ろめたさの解消にすぎないものを、「高い精神性と文化性」とまで自画自賛するのは、日本人としてはひたすら悲しくて泣けてきます・・。信心深かった当時の日本人が持っていた“後ろめたさ”すら捨ててしまったのが現代の捕鯨ニッポンですが・・・・

参考リンク:
■鯨塚について(リンクも)
http://www.kkneko.com/aa3.htm


◇ウミガメとクジラ──有益な胃内容物調査とムダな胃内容物調査

■JNN共同制作番組 ウミガメが教えてくれること (3/21 15:30-,TBS)
http://www.tbs.co.jp/program/mbc_umigame.html

 日本とメキシコ沖を往復し、日本で産卵するアカウミガメを中心に、ウミガメを取り巻く環境問題にスポットライトを当てたドキュメンタリー企画。
 メキシコで保護活動に取り組む研究者が、種子島に視察に訪れ、口にした言葉──4WDの轍や大量の漂着ゴミ、そして何より母ガメのUターンの跡もくっきりと残っている消波ブロックを前にしたときの、日本に対する痛烈な皮肉が、たいへん耳に痛かったです・・。
 豊かな飽食大国日本と異なり、「食べる」から「護る」への転換を果たしたメキシコ。小笠原では未だに食っていいことになってますし・・。所得水準では比べ物にならないはずの現地の漁民が、多少コストが高くついてもナイロン製から混獲の危険性の少ない絹製の網への転換を図ったり、さらに日本の定置網にも学ぼうと意欲的な姿勢を見せたり。
 調査のサポートをしている漁民の方は別にしても、実際のところ、日本の魚網・漁業がよその国より野生動物にやさしいとは、お世辞にもいえません。水上で息ができるといっても、体力が弱ればおしまいですし、クジラの混獲は全国で年間百数十頭にも達しています。経済的には世界最高水準の豊かな国でありながら、被害金額がどうのといって混獲を減らす努力を怠り、行政もまともにバックアップする気がないようでは、メキシコの漁民たちに対してとても顔向けできませんね・・。
 保護活動も、未だ途上ながら海洋環境保護後進国・捕鯨ニッポンよりはマシ。バハ・カリフォルニアのWW規制はもっと強化してもらいたいところですが、それでも南極まで押しかけて食おうとする貪欲な国とは段違い。北太平洋唯一の産卵地である日本が、意味もなく砂浜をコンクリで固めて産卵を妨害して人工孵化でお茶を濁したり、被害の実態も定かでないまま混獲を続けているようでは、ウミガメたちの将来はクジラ同様暗そうですね・・。
 こんなことなら、日本ではなく、きれいな砂浜がまだ多く残されているメキシコが繁殖地だったらよかったのに……なんて思ってしまいます。日本人としては恥ずかしい限りですが。どうせ人工孵化をやるのであれば、メキシコで試して母ガメが向こうで産卵を始めてくれるようにできないか、とか。稚ガメが育てる環境として相応しいかどうかは別問題ですし、産卵地を変えてくれる保証もありませんが。
 もっとも、アカウミガメの北太平洋の個体群で、西岸と東岸の間を往復する形の回遊行動が見られる理由もわかっていません。おそらく、海流の変化や大陸移動など、長期的スケールの地史的変動への適応の結果なのでしょうが。魚や鳥、あるいはクジラに比べても、謎の部分が非常に大きいようですし・・。
 ウミガメフリークのサーファーの方が教えていたウミガメレースは、子供たちにも受けていましたし、優れた環境教育だと思いました。水産官僚に対しては何も期待できないけど、将来の日本を担う子供たちには、少し希望が持てた気がします。
 メキシコでは、年間300頭のウミガメが打ち上げられています。それでも調査捕鯨の頭数より全然少ないですが。アカウミガメのストランディングの原因について、研究者もはっきりしたことは現時点ではいえないようですが、魚網が食い込んだのが外見上わからない程度でも、体力を消耗して座礁したか、あるいは魚網片その他の漁業系浮遊物を飲み込んで胃腸障害を引き起こしたことは考えられるでしょう。原因をはっきりと突き止めるためには、詳細な死体の解剖調査と解析が必要です。
 日本の調査捕鯨は、クジラの胃内容物を調査して生態系構造を解明することを目的に掲げているのですが、特定の種に極端に偏った調査で、満足な結果など出るはずがありません。しかも、バイオプシーによる脂肪酸解析より精度が落ちるという代物。「直近の餌がわかったほうがいいんだ」などとまたヘンな後付の言い訳をこじつけていますが・・。時々名目を替えつつ、延々と同じ調査を続けながら、結果をどういう形で環境保護・漁業資源保護・漁業被害軽減その他にフィードバックするかが何も見えてこないのが、その何よりの証拠です。
 南極での、クロミンククジラのみを対象とした、健康な個体を殺して行ういびつな胃内容物調査は、海洋生態系保全にまったく役立ちません。一方で、ウミガメや他の座礁した海棲哺乳類の胃内容物調査は、日本を産卵場所としているアカウミガメを保護するうえで非常に有益である上に、全ての海洋生物の保全に資するものといえます。意味のない護岸でウミガメたちを追い詰めている水産庁としても、少しは責任を痛感し、調査捕鯨分の補助金を全額メキシコのウミガメ研究者に渡してバックアップするべきですね。
 ついでにいえば、かつてのタマちゃんやラッコのクーちゃんなどのはぐれ個体は、保護したところで生態系保護の観点からは何の意味もありません。そして、有害物質の蓄積度と逸脱行動の相関を調査するために、致死的研究に用いる意義は、調査捕鯨なんぞより格段に上です。国民とマスコミの愛誤レベルが先進国中でもずば抜けている日本で、実施することは許されないでしょうが・・。
 自分たちのマスコットは殺さず、よその海で他の国民に愛されている動物は「何が何でも殺さねば」と押しかけて、実際に殺してしまう神経はすさまじいものがあります。一体どこが高い精神性と文化性なのですか???

参考リンク:
■アカウミガメは絶滅の危機に瀕しているか (ひむかのハマグリ)
http://beachmollu.exblog.jp/8425802/



◇ウミガメとクジラ・オマケ
 

■小笠原 絶海の孤島 幕末秘話 (3/21 21:00-,TBS)
http://www.tbs.co.jp/f-hakken/mystery_1.html (リンク切れ)

 こちらもクジラとウミガメつながり。もっとも中身のほうは、クジラとハシナガイルカがちょろっと出ただけで、自然紀行モノとしては不満足な内容でした。昔の航海中の食糧にウミガメが使われたことを、クイズで取り上げていましたが、文化とも呼べない舶来ものの食習慣が、観光客相手の商売として現地で残っていることには触れず。メキシコに完全に負けてしまっています(--;;
 最初に定住したのが米国人とハワイ人の移民だというのは知っていたのですが、小笠原という名が、幕府にガセネタを掴ませた浪人の姓に由来し、それが英米に対して領有権を主張する根拠となったってのは笑えますね・・。
 やっぱり、南島のヒロベソカタマイマイの絶滅のミステリーの方がよっぽど気になりました・・・

参考リンク:
■ヒロベソカタマイマイの絶滅
http://www12.ocn.ne.jp/~mand/luhuana.html

posted by カメクジラネコ at 01:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系
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