2009年02月05日

「ほぼテロリスト集団」鯨研/共同船舶

◇捕鯨ニッポンと対極にある、まるで別世界のヒトと野生動物との関係

■人と友達になりたかったシャチ 前/後編・NHKBS世界のドキュメンタリー (2/3-4)
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/090203.html
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/090204.html

 多くの賞を受賞したカナダCBCのドキュメンタリー番組。有名なバンクーバーの迷子シャチL98ルナと、右往左往する加政府当局や科学者、先住民、地元の製材業者、観光客たち。
 ルナ、成熟個体からラビングの習慣をきちんと教わらなかったからか、幼いうちは特に皮膚がボロボロでしたね。群れの仲間にも受け入れられた、もう1頭の有名な迷子シャチA73スプリンガーとは対照的に、最後は悲劇に終わるのですが・・。
 シャチはエイリアンや神秘的なメッセンジャーのごとき未知の存在ではありません。ルナはただのシャチ、社会性哺乳類の未成熟個体であり、健全な社会環境から切り離されてしまった孤児の野生動物にすぎないのです。社会性の点で、ヒトという分類学的には離れたサルの一種と一部類似する部分があるというだけです。知能の問題ではありません。
 他のすべての野生動物/自然物と同様に畏敬の念を抱くのは、ニンゲンという動物の非力さの自覚、自己相対化に役立ちますが、シャチだけを特別視するのは過ちです。ヒトが直接シャチに相対したときにしばしば受ける、畏れに近い圧倒的な印象は、大きさと、本能にインプリントされている天敵の大型肉食獣のイメージに対するものと考えられます。シャチ自体は、食物連鎖上のヒトの捕食者ではありませんけれども。もちろん、殺す能力を獲得した途端に、肩をそびやかしてエバリ散らすのに比べれば、全然マシですけどね・・。
 先住民のディープ・エコロジー的思想や制作者の深入りしすぎには、筆者にはやや辟易する部分もあります。ただ、感情を排して単純明快にトラブルを最小限に抑制・回避する工夫こそ必要だったのに、何かトラブルが起こるのを密かに待つだけだったカナダ水産海洋省の無策以上の愚策にはまったく腹が立ちます。社会行動学的なストレス軽減策を講じることで問題行動の解消を図った、現場で漁業監督官をしていた先住民の青年のほうが、よほど賢明でありました。
 “愛のムチ”などという不自然な干渉は、最初から失敗に終わることがわかりきっていました。また、同省の善い干渉∞悪い干渉≠フ定義はまさに逆。シャチほど水族館での人工飼育に適さない野生動物はいません。一方、悪い干渉≠ニされた青年の対処法は、単に未成熟な社会性動物に必要とされる適切なスキンシップであって、人工給餌のように資源を投入して自然界のバランスを崩すわけでもありません。まさに不合理で非科学的の一言に尽きます。
 いずれにしろ、ヒトは成熟シャチに代わる完全な社会交渉の相手にはなれません。生まれ変わりの酋長の四周忌が済んだところで、成否の可能性はどうあれ、シアトルから送られて定着に成功したスプリンガーと同様、どこかの野生ポッドに編入させる試みをするべきだったのではないでしょうか?
 本当に事故死だったか“他殺”だったか、疑惑は払拭しきれませんが、ルナの死は、カナダの人たち、シャチやクジラたちに関心を持つ世界中の人たちに、重い課題を残したといえます。
 そうはいっても、カナダでの議論と日本でのそれとで天と地ほども違いがあることに、いまさらながら愕然とさせられますね・・・・

参考リンク:
■ハンソン島日記
http://fukui.cool.ne.jp/tomokito/


 

◇昨日の記事補足──人命を顧みなくなった「ほぼテロリスト集団」鯨研/共同船舶

 昨日のSS3回目の妨害と調査船団側の“応戦”について、追加の情報がありましたのでお知らせします。flagburnerさんの記事と合わせてご参照。

■調査捕鯨船団の秘密兵器の正体は? (2/3,海洋汚染情報−海の事件簿−)
http://blog.canpan.info/maikohinako/archive/771
■音響兵器 (Wikipedia)
¨">http://ja.wikipedia.org/wiki/éŸ3響å…μåトレードマーク(TM)¨

 税金で購入されるLRADの価格は1台2千万円、調査船5隻に配備すれば1億円。音量はなんと最大150dBというすさまじいもの。以下はWIKIからの引用ですが、人体に対してきわめて高い危険性があることが指摘されています。

2008年時点の医学では治療困難な音響外傷や感音性難聴などの永続的な障害が残る危険性があり、人道上の問題点が完全に排除されたわけではない。(引用、強調筆者)
 もし、荒波にもまれる南極の海で、“攻撃”を受けたSSの船員が、聴覚・平衡感覚が麻痺して転落するようなことにでもなれば、間違いなく人殺し。酪酸がちょっと目に入ったどころではすまされません。また、一応指向性があるとのことですが、円錐状の範囲に拡散して、結局海洋生物にとって大迷惑な騒音を発することは間違いないでしょう。逆に、狙い撃ちされたら致命的。標的も自身も大きく揺れる南極海の船上でどうやって狙いを定めるのか知りませんが、誤って海中のクジラやペンギンを殺傷する可能性もゼロではないはず。ロープに負けず環境の敵といえますね。
 日本が加盟している南極条約では、南緯60度以南の南極圏の利用を平和目的に限り、同地域での軍事演習などを含む一切の軍事活動を禁止しています。南極圏の自然をトータルに保護するには現行の南極条約/環境議定書も不十分ではありますが、いずれにしても「海の上だからいい」などというのは屁理屈。いま捕鯨船団が横暴の限りを尽くしている南極海も、大陸・氷床部分と同様、世界中の市民が野生動物たちの平和な楽園としてそっとしておくことを望んでいる、他の原生自然と同様に地球の中でただ一ヶ所しかない貴重な自然です。そんな場所へ、対外的に平和国家を謳っているはずの日本が、LRADという軍事用に用いられる対人兵器を持ち込んでいるというのです。
 水産庁捕鯨班長高屋殿。ブッシュみたいなくだらん駄洒落を飛ばして悦に入ってる場合じゃありませんよ。
 鯨研は、非暴力をモットーとする市民団体のグリーンピースをテロリストと誹謗中傷していますが、GPはフランスの諜報機関に船を爆破されて人命を失ったテロの被害者として世界的に有名ではあっても、こんな殺人兵器を使用したことはもちろんありません。シーシェパードも過激とはいえ、お笑いレベルです。
 腐ったバターを投げる市民団体SSと、軍用対人兵器システムを装備した日本の捕鯨船団とは、戦車に石を投げるパレスチナの子供と、合法だといって白燐弾を使用し、罪のない子供たちを平気で焼き殺そうとするイスラエル軍との関係を彷彿とさせます。
 鯨研/共同船舶は、いまやお笑い鯨人集団の域を通り越しています。COLREG条約、国連海洋法条約、南極条約、ワシントン条約などの数々の国際条約に抵触し、違法性が濃厚に疑われる行為、あるいは主旨に相反する行為を平然と続けることで、国際法規を蔑ろにし、国際捕鯨取締条約の抜け穴をつく姑息な手段でもって、日本の伝統とは何の縁もない南極の自然を荒らす海のギャング
 鯨研/共同船舶は、ライフジャケットを着用させずに深夜船外に船員を出したことを隠し、原因についても沈黙を続けていますが、これでは鯨研/共同船舶が亡くなった船員の方を殺したも同然です。
 鯨研/共同船舶は、野生動物だけでなく人命までも平気で粗末に扱う、金(出所は日本国民の税金です)と暴力でもって相手をねじ伏せようとするテロリストといっても、もはや過言ではありません。
 SSは「暴力が自分たちに向けられるならいい」と殊勝なことを言ってますが、それは困ります。かけがえのない人命がこれ以上失われる前に、調査捕鯨をやめさせなければなりません。
 鯨研殿、LRADを装備/使用したのは事実なのですか、違うのですか? 金属片を「投げた」かどうかなんて誰も聞いてません。軍事兵器を用いたのですか??
 もしLRADの使用(過失・誤用を含む)によりSSのクルーが亡くなった場合、一体どういうことになるでしょうか? 第三者の検証が不可能な南極海上のことと、しらばっくれて刑事責任を逃れるつもりでしょうか? しかし、LRADを装備して南極の海に持ち込んだというだけで、証拠としては十分だと国際世論、メディア、そして各国政府はみるでしょう。そのときは、日本は調査捕鯨即時廃止だけでは済まされない、最悪の事態を招くことになるでしょう。
 LRADの装備/南極海への持込・今回の使用によるSS側の何らかの人的被害が確認された場合、筆者は鯨研/共同船舶を100%テロリストとして認定し、周知を図りたいと思います。 

 谷口提案/ホガース議長提案を軸に、五年を目処に調査捕鯨を段階的に廃止し、沿岸捕鯨に関しては伝統に恥じない形で厳に自らを戒めつつ行うことに、筆者は賛成します。調査捕鯨はとっとと潰してよい。そんなにやりたければ、国民の了解を得た上で、先に科学的合理性と必要性のはるかに高い調査捕ペンギンでもやりなさい。
 日本は資本主義社会であり、企業の都合に合わせて大勢の派遣社員を平気で切り捨てることのできる国です。事業性のまったくない産業、企業が1つ消えたところで、誰も振り向きさえしないでしょう。そうあって然るべきです。税金をのべ百億円以上つぎ込んだうえに、さらに年間十億円を越える補助金その他の大盤振る舞いをしてなおも臆面もなく増額しようとする動きには、全国民あげて反対しなければなりません。とくに、大手捕鯨のせいでこれまでずっと蔑ろにされてきた他の一次産業──農業者、沿岸漁業者、沿岸捕鯨事業者は、先頭に立って異を唱えるべきでしょう
 国民の血税を湯水のように使い、テロまがいの行為まで平気でやる鯨研/共同船舶にはさっさとご退場願うべし。日本の癌であり、恥です。
 筆者としては、今年6月にポルトガルで開かれる予定のIWC年次総会までは、調査捕鯨段階的廃止/沿岸捕鯨条件付容認という中間派の立場をとり、仲裁案が最善の内容で実を結ぶよう日米政府による交渉を見守っていきたいと思います。が・・交渉が決裂した場合は、よりラディカルなスタンスをとらざるを得ません。
 以前にも解説しましたが、東北大の石井准教授なども指摘するとおり、IWCを脱退すれば、日本の商業捕鯨再開の道も、調査捕鯨存続の道も共に閉ざされます。ICRWという法的根拠がなくなる一方で、国連海洋法条約の縛りを受けます。そっちも脱退してますます北朝鮮化の道をたどるというなら話は別ですが・・。
 石井氏のいう逆予定調和路線をとり、しらばくれてIWCに留まり続けるか。巨額の財政出動により本来無関係な島嶼国やアフリカ諸国を抱き込んだ「日本の、日本による、日本のための」とんでもない国際カルテルを立ち上げるか──。日本はそのいずれかを選択する以外にありません。後者はより非現実的ですが。前者であれば、米・豪・NZ・欧州・南米など加盟国が一丸となり、日本に脱退を勧告すべきでしょう。どちらに転んでも、捕鯨という瑣末な問題に不相応なプライオリティをかけるとち狂った国に、各国は経済・外交制裁を含む遠慮仮借ない強大な圧力をかけるべきです。短期的な痛みは伴いますが、結果的にはそれがいちばん安上がり。21世紀に入ってなお歴史の負の遺産を引きずることを、世界は許してはなりません。
 仮に悲劇的なハードランディングとなった場合、屈折した感情をとかく溜め込みがちなこの国に、新たな火種を燻らせることになるのは、もはや避けられないことでしょう・・
 日本と各国が、だれにとっても最も負担が少なく、公平で、しこりを残さない、賢明なソフトランディングを選択することが、最善の、そして唯一の道です。
 その後については、日本は環境教育と非消費的利用産業の健全な発展により、内発的な脱捕鯨の道を歩み、IWCは他の国際機関・NGOと連携しつつ、原住民生存捕鯨と非消費的利用の管理(財政メリットも今より大きいはず)と海洋環境保全の中核をなす機関に脱皮することが、万物の霊長たるに相応しいヒトと野生動物/海の自然とのあるべき未来の関係だと、筆者は信じています。

参考リンク:
■IWCの沿岸捕鯨容認案を蹴ってしまった日本|おこじょの日記
http://d.hatena.ne.jp/o-kojo2/20090204#p1
■小型沿岸捕鯨について思うこと|ika-net日記
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-5ba3.html

posted by カメクジラネコ at 01:56| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会科学系
この記事へのコメント
別に捕鯨を擁護するつもりありませんが、LRADは一台2千万円もしないです。
その4分の1程度の金額です。人体への安全性もしかるべき機関が検証済です。
一般の方が正しい情報を得るのは困難でしょうが、未確認の情報をさも正確なものの様に取り扱う点は問題があると思います。
Posted by LRAD関連業界人 at 2009年05月13日 15:41
>LRAD関連業界人さん
丸紅情報システムズさんか取引先にお勤めの方でしょうか? コメント及び情報提供ありがとうございます
・・ですが、上掲記事のリンクをご確認いただけましたでしょうか? 1台2千万円のソースは「海洋汚染情報」さんです。こちらの管理者は、実は穏健捕鯨賛成派で、海事関係のお仕事をされているプロの方です。LRADといっても並から上まであるのでは。
いずれにしても、この件での補正予算は確かに3億なんですよ。何台買ったのか、本当にLRADだけに使ったのかはわかりませんが・・。安いのを買ったんだとしたら、不明な使途に関する疑惑もそれだけ大きくなるわけでして。
>人体への安全性もしかるべき機関が検証済です。
今はいろんな製品のメーカーさんが安全性情報に神経を使ってネット上できちんと情報公開しています。LRADは一般個人が買うもんじゃないでしょうが、物騒なもんじゃなかったらあってもいいはずでは。是非ソースを教えていただけませんでしょうか。
「音響兵器」の表現はWIKIのものなので、関係者の方ならむしろ編集をされた方がよいのでは。ところで、この検証試験、南極海上ないし荒天の海況で、ゴムボート上の人間に対して行いましたか? そのようなシチュエーションでの使用に対しても、安全上まったく問題ないと、あなたは業界人として胸を張れますか?
個人ブログではありますが、当方はなるべくソースのリンクを掲載し、読者の皆さんが確認できるように配慮しておるつもりです。コメントいただく際にも、きちんとお読みいただいたうえで、根拠を明確にしていただければ助かります。
LRADの件は当方の本題からは逸れますが、有益な情報ではありますので、ご回答をお待ちしております。
Posted by ネコ at 2009年05月14日 03:40
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