2009年01月16日

捕鯨船いきなりワープ/誰もが声をあげよう捕鯨問題

◇南極にいたはずの日本の捕鯨船がなぜかインドネシアに出現!?

■The War for the Whales Erupts in Indonesia (1/13,SS)
http://www.seashepherd.org/news-and-media/news-090113-1.html
■インドネシアでも「調査捕鯨」への抗議デモが起きたらしいが|flagburner's blog(仮)
http://blog.goo.ne.jp/flagburner/e/0d6630e5a9245cb19dc0923046ae7807

 南極海でせっせとクジラを殺しているはずの日本の捕獲調査船第2勇新丸が、突然インドネシアの港に出現したという情報が飛び込んできました。情報の出所はシーシェパード。SSのHP上での発表を読むと、日本のマスコミや鯨研/共同船舶が公表していない非常に深刻なトラブルが発生していたことが明らかに。
 事故は、筆者が先月お伝えした今期最初の接触時に起きたようです。第2勇新丸は、同日中に南極海を離れることを決めた模様。行方不明の船員捜索にあたった船の数が足りないという謎のうち、1隻についてはこれで解けました。もう1隻動かせるはずなのに、なぜ捜索しないのかは依然として不明ですが・・。

■シー・シェパード、日本の調査捕鯨船団を発見 妨害試みる ('08/12/21,AFP)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2551786/3629345
■捕鯨船団v.s.SS第1ラウンド (12/22,拙記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/24614512.html

 上掲記事で説明したとおり、悪天候でSS側がまともな妨害を行える状況になかったにもかかわらず、一週間後の目視専門船海幸丸へのアタック時とは対照的に、第2勇新丸は一目散に逃走しています。どうやらこれが完全に裏目に出てしまったようですね。スティーブ・アーウィン号から遁走したときに、海氷の所為でスクリューに損傷を受けたのだとSSは説明しています。航速が7.5ノットしか出せず、インドネシアスラバヤ港に到着するまで16日もかかっていることからも、おそらくSSの解釈は正しいでしょう。それほどのダメージを受けたのに、豪州やNZの港を素通りしてわざわざインドネシアまで足を伸ばしているところが、“意地っ張り”な日本の捕鯨船らしいですな。
 第2勇新丸の入港に際しては、SSのお友達らしいインドネシアの動物保護団体が抗議活動をしています。この先応急修理して“南極戦線”に復帰するのか、操業を断念して帰港するのかは不明。たぶん後者でしょうけど。もし、同船の倉庫に今期の鯨肉の一部を積載していれば、インドネシアに寄港したことで、たとえ鯨類各種について留保していてもCITESの規制に引っかかるはずですが・・。
 応援団のネトウヨ君が、「逃げるのが合理的だ」と指摘してくれているにも関わらず、対応がバラバラでまったく統一性に欠けるニッポンの科学捕鯨船団。3年前にはGPの監視船に対して、ヤクザばりの傲慢さで国際条約を無視して針路を変えようとせずぶつかったかと思えば、今年のSSのスティーブ・アーウィンに対しては、一目散に逃げ出す変転ぶり。もっとも、逃げてこのザマじゃどうしようもありませんね。
 3億円を投じてSSのバター攻撃対策をするくらいなら、同じ予算を氷海での航行の安全性を高める改装に使ったほうが、まだしも合理的だったんじゃないですか? 人命に関わるリスクを減らす労働安全管理体制の見直しは、一段も二段もプライオリティが高くあるべきでした。何より、わざわざ南極まで行かなければ済んだこと。
 それにしても、やはり不可解なのは、鯨研が第2勇新丸の“戦線離脱”という重要情報を隠し続けていたこと。実質的な被害はゼロだった海幸丸に対するバター攻撃は、鯨研のプレスリリースに応じた一部マスコミが報じました。しかし、情報としての価値は、捕鯨に対する是非と無関係に、こちらのほうがはるかに上です。尻尾を巻いて逃げたうえに、自分でトラブルにはまったことが、日本や世界の市民に知れ渡るのを潔しとしなかったのでしょうか? 日本の政官不祥事と同じパターンですが、後でバレるほうがよっぽど恥ずかしいでしょうに。
 今期のJARPAUは本当に災難続きですね。これでは、火災事故の起きた一昨年、SSの妨害を受けた昨年と比べても、鯨肉生産量はさらに大幅に落ち込むでしょう。国内で鯨肉在庫が溢れ返っている状況を振り返れば、市場を完全に無視した科学的計画≠ヌおりの増産には、もともと無理がありました。しかし、減産によって収益が一段と悪化することも避けられず、昨年8億円近い経常赤字に陥った鯨研の台所事情を鑑みると、まさに捕鯨サークルは瀬戸際のピンチに追い詰められたといえます。完全に不採算事業と化した南極捕鯨からの撤退という合理的選択への1ステップとしてみれば、やむを得ない必要な痛み≠ニみなすこともできますが・・。
 ただ、日本政府は来年度の農水省予算の中に「鯨類捕獲調査事業の円滑化」という名目で、鯨研の赤字を埋め合わせる目的としか考えられない8億円弱を計上しています。上掲の3億円のSS対策費のさらに2倍以上の金額を新たに同じ名目で上乗せすることに対し、「保安上の理由」という口実で国民に詳細な使途を明らかにしないとすれば、それはあまりに姑息であり、日本国民に対する裏切りに他なりません。この経済不況の最中、破綻寸前の官民癒着型公共事業に多額の税金を投じることは、国民の目から見れば許されることではありません。農水省・外務省の官僚さん、日本の針路を見誤ることのないよう、現状を直視してください。


 

◇誰もが声をあげよう捕鯨問題

■知らなければ論じられない、だから『クジラを追って半世紀』〜これを読まずして捕鯨問題を語るなかれ
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090113/182476/?ST=life

 日経ビジネスのネット書評。評者はフリーライターで、来春に「クジラを知りたい!」との著書を出す予定とのこと。出版不況のさなか、先日取り上げた議員氏の本をはじめ、一頃に比べ減っていた“クジラ本”がまた出回り始めたようで・・。筆者も再販できるなら出したいくらいですよ。。
 おなじみ大隈氏の著作のほうは、昨年4月に山際氏や梅崎氏の発行元と同じ成山堂書店から。アマゾンでは、GPJ事務局長星川氏の「日本はなぜ世界で一番クジラを殺すのか」(幻冬舎新書)と併せて買うことをユーザーの皆さんが進めております。まあ、バランスを保つには正しい選択といえるでしょう。
 野生動物の正確な年齢査定に伴う制約は、別にクジラに限ったことではありません。手っ取り早く殺して済ませようとするのは、科学者としては二流以下。致死的研究は、研究対象の長期的な科学的価値を寸断・破壊し、得られるはずだった数多くの情報を無に帰してしまうという点で、極めて重大な欠陥を有しています。全部殺すのであれば話は別ですが、統計解析を要し、大きな不確実性が常につきまとう点も、日本では一般に知られていないこと。それに対し、目視観察による標識記録は、継続的にさまざまな有用な知見を取得し続けることができます。科学的にはるかに優れた手法なのです。
 日本の鯨類学が、他国の鯨類学、あるいは他の野生動物を対象にした生物学とは、致死的研究と非致死的研究のプライオリティ付けの点であまりにも常軌を逸していることを、多くの日本人が知らずにいる、あるいは無関心でいるということは、日本の科学界にとってもあまりに不幸なことといわねばなりません。
 大隈氏は“振り子説”でもまた(クジラ方面では)有名ですが、振り子が一方の極にあったとき、日本の鯨類学者として乱獲を防ぐ重大な責務を帯びていたはずなのに、不可抗力の振動現象とでもいいたげなトンデモ仮説はまるで他人事のようです。大きな外圧を受けるまで、捕鯨業界のお気楽体質をついに変えられなかったことに対する、悔恨や自責の念はお持ちでないのでしょうか? この辺りが、同世代の鯨類学者である粕谷氏と対照的ですね。南氷洋捕鯨の華やかなりし全盛期、若き大隅氏は業者と科学者との間の決して埋め合わせることのできない溝に気づいていたはずでしたが……。
 大隈氏はまだクジラ養殖の淡く儚い夢を見続けているみたいですね。森下参事官がサンチアゴ会合に出席している間、留守部隊を引き受け、「鯨論闘論」で風呂敷を広げて壮大な夢の構想を語っておられましたが・・。この点については、先日取り上げた若手捕鯨ヨイショ議員の急先鋒、山際氏の方がまだ少し現実的といえそうです。

 記事自体は穏健な捕鯨賛成派の体裁でしたが、見出しの一文はあまりに傲慢といわざるを得ないでしょう。専門家に任せた結果一体どうなったのか、おわかりになっていないようですね・・。
 捕鯨問題については、野生動物・自然環境に関心を持つすべての市民が声をあげてよいのです。 

 

◇いただいたお便りご紹介

最近このページを見に来ました。

私のブログでもときどき反捕鯨の立場でコメントを載せています。
このHPはとても良くできているし、いろんな意見も読めるのでとてもためになります。
これからも頑張ってください。(NAさん)

 どうもありがとうございますm(_ _)m NAさんのブログも近日中にHPの捕鯨批判ブログリンク集のほうに追加させていただきます。 
posted by カメクジラネコ at 01:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会科学系
この記事へのコメント
インドネシアの英字紙によると、第二勇新丸は、インドネシア・スラバヤ沖に停泊してドック入りを申請していましたが、当局から接岸を拒否されたため、移動したとのことです。
「違法漁業を行う船はお断り」だそうです。インドネシアはオーストラリアの影響圏なので、当然の措置だと思います。
漁業ODAで捕鯨賛成国にさせた国に行けばよかったのにと思います。
もう少し記事が集まってから、ブログにまとめようと思います。
Posted by marburg_aromatics_chem at 2009年01月16日 07:15
>marburg_aromatics_chemさん
情報ありがとうございます。インドネシアの新聞まで調べられるのはさすが(^^;
インドネシア政府もずいぶん明確にメッセージを打ち出しましたね。SSは早速勝利宣言をしているようで。
http://www.seashepherd.org/news-and-media/news-090115-1.html
日本は太平洋の島嶼国に対してもIWC票買いのODAをばらまいているはずですね。第二勇新丸はそっちまで行けない状態だったのかも。次はどこに行くつもりでしょうかね。仕方ないのでトロトロ日本に直帰するかもしれませんが。
Posted by ネコ at 2009年01月17日 01:26
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