2009年01月14日

陰謀論をふりかざして「闘うお笑いくじら人!」たち

 ヒヨちゃんが「飯寄越せ」と盛んにさえずる今日この頃。庭のセンリョウやナンテンの実、ほうれん草の葉っぱまで、もともと雑食性が高いので何でもついばんできますが、結構グルメなので食べるのにも順番があったりするんですよね・・。いただきものの干し柿は吊るしても興味を示さず。みかんもときどきあげてるんですが。
 ヒヨちゃんのけたたましい鳴き声は美声とはいいがたいものの気にならないのですが、「殺して何が悪いー!」と吠えてるサルの一種の声はどうにも耳障りでなりません・・・
 

◇伝統の意味と中味は正しく認識しましょう

■ハラソ祭り:勇壮、昔の捕鯨再現…三重・尾鷲の梶賀湾 (1/12,毎日)
http://mainichi.jp/select/today/news/20090113k0000m040105000c.html (リンク切れ)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090112-00000029-maip-soci (リンク切れ)

 祭りは例年1/15に行われているもので結構知られているようですが、肝心の古式捕鯨のほうはあまり情報がありません。というのも、梶賀浦では鯨組が明和6年(1769)には早くも廃絶してしまったからです。組織を維持するのは、当時でも採算が厳しかったためでしょう。ハラソ祭りは、捕鯨が途絶えた後に、往時を偲んで行われるようになったとのこと。
 梶賀浦の捕鯨が廃れる少し前、現在の同じ尾鷲市にある九木浦に紀州藩が藩直営の網取式捕鯨を進出させましたが、なんと梶賀の廃業の1年後には早くも閉鎖。梶賀の鯨組の不漁の一因が、丸木のより大規模で効率的な捕鯨だったことも考えられます。その後の近代捕鯨の大手と沿岸事業者の関係を彷彿とさせますね。三河湾で始まった元祖鯨組も、乱獲のために一世紀と待たず捕鯨の方が“絶滅”しています。
 祭りの方は伝統行事として是非大切に存続させてください。
 ちなみに、捕鯨協会のリサーチによれば、都道府県毎の鯨肉消費量が最低なのは三重県だったりします。

参考リンク:
■熊野市百科大事典:熊野灘の捕鯨
http://kumadoco.net/dictionary/report.php?no=124

 


◇陰謀論をふりかざして「闘うお笑いくじら人!」たち

 さる方に『陰謀だらけのアメリカ文化史』(文芸春秋'02/10)という記事を見せていただきました。
 ヒトというサルは、他の保守的なタイプの動物に比べ、ある程度のリスクを背負いつつ、環境中の目新しい珍奇なものに興味を持ちアプローチを試みることで、より好適な環境に進出するという適応戦略をとってきたわけですが、UFOやらフリーメーソンやらといった眉唾な話につい夢中になっちゃうところも、種としての特性なのかもしれませんね・・。とりわけアメリカは陰謀好きなお国柄のようで、大真面目に論じているヒトたちも、傍から見ている分にはなかなか愉快です。以前、風刺文化と欧米市民社会の成熟性、健全な自己批判能力について記事に書きましたが、こうした陰謀論も、社会のバランスを保つ一種の自浄作用のややオーバーな表出と捉えることもできるでしょう。陰謀論者が目を光らせているうちはまだ安心というわけですね。
 しかし……国内に目を向けてみると、どうも笑ってばかりもいられないようです・・。

「日本にも陰謀論はありますが、ほとんどがアメリカからの輸入で、日本人のオリジナルはあまりありません」(と学会会長山本氏・同記事から引用)

 ということですが、高環境負荷の輸入食品や金ばっかかかったハリウッド映画と同じく輸入頼みの陰謀説の中にも、実は純国産モノが存在します。他でもない「反捕鯨陰謀論」。ベトナム戦争やら人種差別やらという例のアレ≠ナすな。
 荒唐無稽度ではロズウェル事件の上をいく「クジラと陰謀」仮説。タネを明かせば、同タイトルの書籍の著者である梅崎義人氏(現水産ジャーナリストの会会長)が、日本捕鯨協会から日本のマスコミ・世論操作の依頼を引き受けたPRコンサルタントだったという、なんとも身も蓋もない話だったわけです。梅崎氏が陰謀論の根拠≠ニして引合いにしているのが、実は向こうの陰謀オタクのラルーシュ氏だったりするからなんとも皮肉な話。文春の対談では、このラルーシュ氏は「英米政府に命を狙われている」と勝手に被害妄想してるネオコンのオッサンで、得体の知れないとこから資金をどっさりもらっていたり、環境NPOなどよりよっぽどアヤシイ“不思議な人物”として紹介されています・・。テキサス親父のトモダチかもニャ〜。
 メイドインジャパンの陰謀論の特色として、アプリオリに「日本(国家・民族・文化・社会)=善」という前提から出発し、陰謀の出所を常に外に求めたがる点が挙げられましょう。この辺は、なんだかんだいっても気骨のある海外の陰謀論者とは対照的ですな。フロイト流に背景を探れば、やはりアングロサクソン・コンプレックスに根差すものと考えざるを得ませんが。そして何より薄気味悪いのは、眉唾な陰謀話を政治家や上級官僚までが真に受けている≠ニころ・・。ネトウヨガキ君たちならまだしもカワイイものですが。

 陰謀論が出回った背景については、拙HPの上掲リンクをご覧いただくことにして、捕鯨協会のプロパガンダ戦略に見事にどっぷりはまって陰謀説にのめり込んでしまった国会議員の著作がつい最近発行されましたので、ちょっぴりつっこんでみたいと思います。政治家がここまで洗脳されてしまったという悲しい事実を示すモデルケースであり、中には衝撃を受ける方もいることでしょう。同書をお読みでない方には、以下の記事は少々退屈かもしれませんが、そこら辺に転がっているネトウヨ君たちのブログの方がまだマシというほどの代物なので、買う必要はまったくありません。以下、着色部分は同書からの引用です。
 問題の書籍はつい2ヶ月前の昨年11月に発行された「闘えクジラ人!」(山際大志郎著)。上掲リンク先の山際氏の公式サイトに目次も載っています。

■山際氏の公式サイト
http://www.yamagiwa-daishiro.jp/2009/
■発刊の辞 - やまぎわ大志郎
http://www.yamagiwa-daishiro.jp/2009/img/pdf/2009yamagiwa_book.pdf

 出版した成山堂は梅崎氏の「動物保護運動の虚像」の発行元と同じです。実際、梅崎氏がゴーストライターを務めたんじゃないかと思わせるほどの“出来栄え”に仕上がっています。提供写真もありますので、著者がご本人から詳細なレクチャーを受けたのは間違いありますまい。
 そんな具合ですから、中味はもう、梅崎氏の著作を読んだことのある方には耳タコの話のオンパレード。冒頭から「クジラと陰謀」の引き写しが盛りだくさん。山際氏はクジラの身体構造や生態に「神秘」を感じたんだそうですが、その時点で研究者に向いてなかったんじゃないですかね。クジラはただの野生動物にすぎませんよ。神秘を感じていたヒトが、クジラがシンボルにされていることに「違和感」があると、矛盾することを書いてらっしゃいますが、捕鯨が日本文化のシンボルにされているほうが、実態を知っている日本人としてはよっぽどしっくりこないんですけどね・・。

クジラの実態を知らない人はこの言葉にたやすく共感し、ベトナム戦争の悲劇も忘れて洗脳されたに違いない。しかし、ここには重大な嘘がある。クジラは絶滅に瀕してなどいなかったのである。

 「クジラの実態」ってなんでしょね? 以降の文章もそうですが、どちらも「先生」の呼称がつくトップエリートの獣医兼国会議員にしてはかなり拙い日本語。まあ、ここは著者の意を汲んで"翻訳"してあげると、「反捕鯨運動の実態」ということをおっしゃりたいんでしょう。筆者にいわせれば、「近代捕鯨の実態を知らない人は梅崎氏や山際氏の言葉にたやすく共感し、ベトナム戦争において日本が果たした役割も忘れて洗脳されたに違いない」ってとこでしょうか。とりあえずやる夫君に教えてもらって勉強してください・・
 「クジラは絶滅に瀕してなどいなかった」というのは重大な嘘。ややレベルの高い捕鯨賛成論者や捕鯨関係者なら、「一部の種については」という但し書きを必ず入れるところ。応援団のネット右翼の皆さんでも、さすがに十把一からげにこんな真っ赤な嘘をつく人は少ないでしょう。シロナガスクジラは無論のこと、ミンククジラの日本海側の系統群やニシコククジラなど多くの個体群が絶滅の危機に瀕していることは、IUCNやNACS-J始め、内外の多くの自然保護団体が指摘し、水産庁も概ね認めているとおりの事実です。南半球のクロミンククジラについても、各系統群単位での個体数は日本の小地方都市の人口程度ときわめて心もとない数字であり、重金属の蓄積や地球温暖化に対して非常に脆弱な生態と、いまの海洋環境の現状をトータルに見た場合、絶滅に瀕しているというのは決して言い過ぎではありません。詳細は拙HPの自然科学系の各項をご参照。
 1章の2では素朴で非科学的な間引き論へとつながっていきます。その前に、GPとの議論に途中で、感情的になって席を蹴るという醜態ぶりを晒したことを自ら告白。見出しに沿った内容が書けていないようですが・・。
 ここの山極氏の記述に関して注釈すると、実はP24に掲載されている鯨研提供の写真は、日新丸が国際条約(SUA条約における航行ルール)に違反した疑いが極めて強いことを示す“証拠写真”となっています。船首の角度を見れば一目瞭然。日本の捕鯨船団はまさに公海のヤクザ、あたごよりひどいとさえいえるでしょう。問われるのは公正に事実を伝えようとしない日本のマスコミの報道姿勢ですが。第三者の目撃者がいないから平気で嘘をつけるんでしょうが、これではやはりNZや豪軍の監視がないと何をしでかすかわかったもんじゃありません。
 そういう意味では「IWCに出席する資格はない」のは日本の関係者なんですけどね。まあ、出てもらわなくてもまたそれはそれで困るんですけど。詳細については下掲リンクの拙ブログ記事をご参照。
 続いて、梅崎氏の筋書きどおりに環境保護運動資金集めを糾弾。しかし、専属スタッフの人件費が支出の大きな部分を占めるのは、金持ちのボランティアを除けば、日本と世界、クジラとそれ以外の環境問題とを問わず、すべてのNGO、NPOに当てはまること。環境保護にいちばん必要なリソースはスキルのある人材なのですから、あったりまえの話です。
 ところで、調査捕鯨のコストにも当然ながら人件費が含まれますし、水産庁の天下り役人マスコミ出向者から成る鯨研の役員の多額の報酬にも、寄付や国庫からの補助金の一部が結果的に充てられているはずなんですがね? NGOに寄付をするのは個人の自由意志ですが、日本国民は調査捕鯨をいくらやめて欲しいと願っていても、勝手に持ってかれてるんですけど・・。先日の鯨研の財務報告に関する記事等もご参照。
 間引き論の非科学性については、筆者もNGOも他のブロガーの皆さんもさんざん取り上げていることですが、このヒトの間引き論はやはりネトウヨ君たちに比べてもとくに稚拙なもの。山際氏は鯨研からクジラの捕食量しか聞いていないようですが、海鳥の捕食量、他の海棲哺乳類の捕食量、商業漁獲対象魚類の捕食量、非対象魚類の捕食量、イカ等他の海棲動物の捕食量の計算結果を全部教えて欲しいんですがね。でもって、捕食量のうちの漁獲対象魚種と非対象魚種の内訳もぜひ教えてもらいたいんですがね。そのすべてを人間がコントロールできるなどと主張する水産学者が仮にいたとすれば、その人物は究極のバカです。研究機関はそんな科学者の風上にも置けない人物など即刻解雇すべき。実際には、そこまでノーテンキな学者などいるはずもありませんが。某“お笑い鯨人”集団を除いて・・。

クジラだけを保護し続けると北極と南極の海に棲む生物と人間の食糧資源に重大な影響を与えてしまうことになる。

 こういう文言を見ると、どうやら山際氏は「自然は神から与えられたニンゲンの占有物である」とのたまう非科学的なファンダメンタリストと同類としか思えませんね。反省する前の旧い西洋文化によっぽどかぶれてしまったんでしょうか? わずか百年の間に海洋生態系とその構成を大幅に狂わせたのは、急激に膨張した近代漁業の無思慮な乱獲であり、あるいは汚染や開発さらには気候変動などすべて人為的活動の結果に他なりません。クジラはただの野生動物であり、5千万年という地史的なスケールで進化適応してきた海洋生態系の一部にすぎません。こういうヒトたちは一体なんだって、ただの野生動物をまるで地球人に敵対するエイリアンででもあるかのように“擬人化”するんでしょうかね? 中学時代に理科教育を真面目に受けたのかどうか、甚だ疑問です。
 3の項目でも同じ思考パターンで、捕鯨業界に依存する日本の水産資源学信仰が延々と続きます。近代捕鯨の乱獲の歴史に対する反省から、いかに人間の“業”をコントロールすべきかが論じられているのが、いまの国際社会における捕鯨問題の文脈なのですが・・。いずれにしても、責任を負っているのは全世界であって、日本が国際社会の合意もなしに勝手に進めていい話ではないですけどね。
 さらに山際氏は76万頭という旧い暫定的な合算値を持ち出していますが、時系列的に比較可能な同じ計測・解析手法に基づくIDCR/SOWER3周目のデータでは、これが半分近くに落ち込んでいます。野生動物の個体数動態としては、繁殖率を無視した急激な増加はありえなくても、急激な減少は十分ありえることですが。山際氏のプロフィールについては後述しますが、IDCRに参加したんならわかってておかしくないんですけどね。ついでにいえば、76万頭という数字は、日本側がいつまでもごね続けて最新の更新値を認めないがために、科学的には既に死んでいます
 しかも、RMP(改定管理方式)を「科学的知見」だなんて言ってます。知見じゃなくて、管理方式ですよ・・。ほんとにこのヒト調査に参加したんですか???
 さらに、RMS(改定管理体制)の必要性については、近代捕鯨史について正確に理解しているならば、クジラに限らず野生動物の保護管理全般に精通しているならば、当然のこととして認識されるべきところ。しかし、山際氏はRMSそのものを真っ向から否定。これには筆者もびっくり仰天して開いた口が塞がりませんでした・・。とりわけ、密輸・密漁の実態と日本の関係について完全に無知であることをさらけ出しています。詳細はやる夫君に教えてもらってください・・。
 28ページの「捕鯨国の主権にかかわることで、日本としては到底受け入れられない」という記述は、核査察やそれと引き換えの人道支援に対する北朝鮮の姿勢とまさに瓜二つ。ポーズとして受け入れている北朝鮮の方がまだマシとすらいえます。歴史的にまったく信用のおけない公海上での捕鯨活動を、第三者の監視抜きで行わせるなど、絶対にあってはならないことです。唐突に「植民地に対する扱い」といった文句が飛び出すあたりは、やはり時計の針が半世紀以上前の位置で止まったままの、欧米に対する鬱屈した感情を抱えた典型的な日本のネオコンの一人ですね。国際社会がこのような危険な思想と言動を放置するならば、南極の海で再び悲劇が繰り返されることになるのは必至です。
 もう1つ補足すれば、かつてのIWCが、乱獲をまったく防止できない機能不全状態に陥ったのは、日本を中心とする捕鯨国の責任に他なりません。やる夫君に一から教えてもらってください。
 1章の4ではサンクチュアリに言及。これも「やる夫」で解説していますが、サンクチュアリは国際捕鯨管理スキームの中で導入された経緯のある歴とした管理方策のひとつです。自然保護の観点からいえば、固有性の高い貴重な南極圏生態系の最も合理的な保護策のひとつでもあります。今後はサンクチュアリを補強してコアゾーンとして南極圏の自然をトータルに保全していくのが正しい流れ。
 続いて、「自由と平等と民主主義を標榜する」山際氏は、NGOの民主的で非暴力的な抗議活動を「極めてあくどい手」と断罪しています。実際には、現地の人たちの伝統的な生活と文化を破壊する日本の票買い水産ODAのほうがよっぽど悪辣でしょうに。

「外交にはいろいろな手練手管がつきものであることは承知しているが、あまりに酷い。これが民主主義にのっとった議決とはとても思えない」

 手練手管で議決を通し「再開は目前だ」と喜んでた方々もいたはずですが。民主主義の原理原則に照らせば誉められたものではない、国連の常任理事国になりたがっている国が、口にしていいことではないんじゃないですか?
 1−5もそっくりそのまま国際PR梅崎氏の受け売り。しかも'80年代に発行された「クジラと陰謀」の当時の主張のまま・・。そんなもんだから、主な藩捕鯨団体リストでグリーンピースがアメリカの団体になっています(インターナショナル本部はオランダ)。日本の捕鯨サイドが行った世論操作に関しては、やる夫パート4に加え、IKAN/平賀氏とAdarchism氏の記事(リンク下掲)をご参照。
 唯一正しいのが、クジラを養殖したらべらぼうな環境コストがかかるという指摘。

 倫理・人道問題についても、梅崎氏の主張をそのまま借用。山極氏に言わせれば、先進国の中では桁違いに多いと指摘される日本の行政による犬猫の大量殺処分に関しても、倫理問題として取り扱うことは一切まかりならんということになるのでしょう。こういう人物が自民党の動物愛護議連に入っているということを、日本で犬猫を始めとする動物福祉の問題に関わるすべての人が知っておくべきですね(この件についてはまた後述)。その後も「先輩たち」として山際氏が頼りにする米澤氏や梅崎氏の“体験談”をそのまま引き写しています。人種差別の問題についてはリンクをご参照。
 1−6でNGOの金の出所について、トンデモ陰謀論を唱えるあちらのラルーシュ氏の雑誌を取り上げています。以下のサイトがそれ。信憑性のほどについての判断は皆さんにお任せしましょう・・。

■エグゼクティブ・インテリジェンス・レビュー
http://www.larouchepub.com/

 梅崎氏のテキスト通りのアザラシ猟反対運動の解説では、またしても非科学的な食害論を持ち出してタラの資源枯渇をアザラシの所為にしていますが、間違いなく乱獲が主因ですよ。日本近海でも。詳細は三重大勝川氏のサイトをご参照。
 グリーンピースについては、当の団体に直接情報を求めるのが一番ですが、核問題・気候変動(地球温暖化)・オゾン層破壊・塩素系有害物質・森林破壊・遺伝子組替技術など多岐にわたる問題に取り組み、実績をあげてきたことで、国際的には評価の非常に高い組織です。部外者が解説するのも何ですが、IUCNでお役ごめんになったヒトの指摘とは裏腹に、GPはNGOの中ではかなりドライで、日本人の目からは冷淡に映るほど。プロジェクトをたたんでスタッフをあっさり切ることも。また、GPがアプローチする相手は、国際機関、米国や日本を始めとする各国政府、あるいはモンサントなどに代表される巨大な多国籍企業であり、筆者なんかの目からすると「ゾウに立ち向かう無謀なアリ」といった感じなんですがね・・。昨年日本のスタッフが逮捕された件を見てもわかるとおり。「全く何も生み出していない」というのは、IUCNを解雇されて恨んでいる件のヒトや、日本の捕鯨関係者などの利害関係者だけでしょう。
 ただ、こうした一連の文章からは、彼ら捕鯨擁護論者の本性を明確に読み取ることができます。最近は環境後進国日本においても、自然環境・野生動物の非消費的な価値についてようやく環境教育の場でこどもたちに教えられるようになってきました。彼らがそうした金銭に決して還元されない自然の豊かさを公共的財産として認める価値観を正面から否定していることは、梅崎氏や山極氏の主張そのものからも強くうかがえます。
 シーシェパードについては筆者は擁護しませんが、日本の調査捕鯨船団側の対応を見るとどっちもどっち≠ナしょう。詳細は拙ブログで何度も報じているので過去記事をご参照。
 加、米、豪政府に「外交面から厳しい対応」
をするのは、調査捕鯨の数々の不正疑惑に対し捜査のメスを入れて徹底的に洗い出す作業をしてからにしてください。世界に対して恥ずかしいです。

 ──というわけで、とりあえず第1部の1章について詳細にチェックしてみましたが、これだけでももう辟易しすぎてお腹いっぱいな感じ・・。
 第3部については、飽食大国としてあまりにもみっともない食糧危機論をはじめ、拙HPで十二分に反論を掲載しておりますので、とりあえずそちらをご参照ください。
 いずれにしても、科学についても歴史についても極めて浅い見識しか持ち合わせていないニンゲンが国政を動かしているという現実を前に、一日本人としては驚愕するばかりです。
 ちなみに、帯に推薦を寄せているのは小池百合子氏と登山家(タレント?)の野口健氏。小池氏はともかく、野口氏とはどういう関係でしょうね? たまにTBSの「世界不思議発見!」などに出演してますが、「このヒト本当に世界を渡り歩いていたの?」と思わせるほどトンチンカンな発言ばかりで、野々村氏のほうがまだ国際常識がありそう・・。ヒトが山に捨てたゴミと野生動物のクジラを一緒くたにしないで欲しいのですが・・・

     *     *     *

 さて、著者の山際大志郎氏は自民党所属の衆院議員(神奈川18区選出)で、党青年局の部長も務める若手。
 経歴は政治家としては異色。山口大農学部の獣医学生の身で、'95-96漁期のJARPAに調査研究員として従事しています。余談ですが、日本の調査捕鯨は免許もなく修士課程も終えてない学生さんがやっていたりするわけですね。まあ、目視のカウントには別にそんなスキルなぞ要らんわけですが。で、卒業直後に今度はSOWERに日本代表として参加。その後、東大のベテリナリーセンター勤務を経て、川崎で動物病院を開業。2年後にさらに横浜でもう1つ病院を立ち上げた同じ年に、補欠選挙で自民党の公募に応募し、2回目の衆院選で当選を果たしています。実際に開業獣医をやってた期間は3年で、政治家への道をずいぶん積極的に選んだのですね。山口大に入り、調査捕鯨に携わっている間に、いろいろ周りに感化されたんでしょうか?
 著作からも十分うかがえますが、昨年のサンチアゴや一昨年のアンカレジの年次総会へも、国会が閉会して間もないのに自ら足を運ぶなど、捕鯨への入れ込みぶりは相当なもの。捕鯨議連所属議員のうちでも最右翼、彼らにしてみればまさに“期待のホープ”というところでしょうか?
 ただ、このヒトは“先輩”たちの言うことを真に受け、RMSすらも全面否定する過激な脱退・再開論者。現状を認識したうえで、現実的な政策選択に苦慮している一部の官僚たちにとっては、まさしく頭痛の種でしかないと思われます。
 これは憶測ですが、鯨肉横領事件に関して検察に圧力をかけて捜査を途中で打ち切らせ、調査捕鯨の数々の不正疑惑を闇に葬り去ろうとしたのも、捕鯨議連の関係者ではないかと、筆者は強く疑っています。
 また、山際議員は自民党の動物愛護議連の副幹事長を務め、ペット税を提唱しているとのこと。ペット税については、拙ブログにて「如何に誤っているか」詳細に論じたところであります。動物福祉は倫理・人道の問題ではないとし、動物福祉政策が少なくとも日本に比べればはるかに充実している欧米への敵愾心を剥き出しにし、世界の恥である大量殺処分に対し実効性のある方策を打ち出すでもなく、それを口実にして犬猫たちとその親たちに利益をもたらすどころか負担を強いるだけのペット税を唱えているのが、この山際氏だったわけです。世界一命を粗末にしている飽食大国が南半球公海上の野生動物を貪ることに対して、他国が口出しするのは一切罷りならんとする過激な動物捕殺正当化論者と、動物愛護を語る獣医政治家という二つの矛盾する顔を持つ山際氏ですが、ペット税を打ち出している時点で化けの皮がはがれたといえます。典型的な動物"愛誤"議員ですね。実はうちの子(猫)が原因不明の奇病にかかって東大病院に通院したことがあったのですが、大切な家族の健康を預ける担当医がこのヒトでなくてよかったと心の底から思います。
 山際議員の人間性を端的に伝えるのが以下のブログ記事です。

■犯罪集団|まっしぐら.com=山際氏のブログ (6/27)
http://blog.goo.ne.jp/yamagiwa-daishiro_001/e/67c57abc823d2f5f04eb51b2615547ca

 「一体どこのウヨガキが書いたブログだろう?」と読んだ方は皆さん思われることでしょう。これが正真正銘の日本の国会議員の文章だとは到底信じがたいことです。グ○ーンピースだの、朝○新聞だの、とまるで“厨房”。名誉毀損で訴えられるのを恐れてでもいるんでしょうか? だったら、いんちき団体だの犯罪集団だの左翼新聞だのといった用語を使わなければいいものを。最近の流行語を使うなら、政治家としての矜持を持った人間が書く文章ではありませんね。山際氏は自分で読み返してみて、さもしいとは感じないのでしょうか?
 どっかの府知事さんじゃないけど、朝日新聞を親の仇とばかりに敵視しているのは、日本のネオコン、若い超保守主義者にみられる共通の特徴。神奈川18区内で朝日新聞を購読している多くの世帯は、このブログを目にしたら一体どう思われるでしょうか?
 ちなみに、筆者はGPJ職員逮捕時のマスコミの報道姿勢について入念にチェックを入れましたが、朝日は最も公正中立な報道というわけではありませんでした。筆者のランキングでの順位は4位。
 山際氏はおそらく、鯨研に役員を送り込んでいるオトモダチ新聞産経と朝日の2紙を単純に比べただけなのでしょう。

 山際氏は、'03年の衆院選では民主党候補に負けたものの、比例で復活当選。そして'05年、国民がみんなして小泉改革の看板に騙された郵政選挙では民主党候補に勝っています。次期衆院選のメディアの下馬評では民主党候補の樋高氏がやや優位に立っている模様。

■第45回衆議院議員選挙 神奈川18区|ザ・選挙−JanJan
http://www.senkyo.janjan.jp/election/2009/99/008477/00008477_23833.html (リンク切れ)

 民主党/共産党の対抗馬が、現行の日本政府の捕鯨政策に対して批判的であることは、残念ながら期待できないでしょう。しかし、少なくとも厨房レベルのブログ記事を書いたり、陰謀マニアチックなトンデモ本を出したりする、歴史認識と科学的素養、国際的なバランス感覚を著しく欠いた人物ではありますまい。民主党の樋高剛氏は「エコがかっこいい社会」を目指すとしており、自然環境の非消費的価値を頭ごなしに否定する山際氏よりは、まだ環境保護に理解がありそうです。また、共産党の宗田裕之氏は、米ミシガン州のホープ大学で生物学を専攻されており、非科学的な鯨研の資源学を検証する能力がなく、予防原則を無視する山際氏よりは、生物学を熟知していそうです。

■樋高剛氏公式ブログ
http://blog.muneta.net/
■宗田裕之氏公式ブログ
http://www.the-hidaka.net/

 神奈川18区は田園都市線沿線などの住宅地域ですが、住民の皆さんには、朝日新聞や環境NPOをこき下ろし、動物福祉は人道ではないとのたまうペット税提唱者の候補に票を投じるかどうか、真剣に考慮してもらいたいところ。国外に仕立てた敵であれば好き放題非難して威勢のいいところを支持者に誇示できると考えたのかもしれませんが、調査捕鯨を外交面のみならず様々な観点から国益を著しく損ねる愚かしい行為だと見る日本人がいまや大勢いることを、山際議員はちっとも理解していないようです。

 筆者がいくら口を酸っぱくして過ちを指摘したところで、お偉い政治家のセンセイはたかが一市民のブログなど歯牙にもかけんでしょう。仮によっぽど几帳面な秘書がいて目にでも止まれば情報はいくかもしれませんが、おそらく筆者の批判の1%にすら耳を傾けようとせずに、ますます先鋭化して捕鯨ヨイショ度をヒートアップさせるでしょうね・・。ま、市民/選挙民にとっては、そのほうがよりわかりやすくなると思いますが。

日本人の良識が問われている(山際氏の上掲ブログ記事)

 今度の衆院選(いつなんだ!?)で、神奈川18区にお住まいの皆さんには、まさしく良識が問われます。ぜひ有権者として賢明な選択をし、審判を下してください。

参考リンク:
■平成13年度 捕鯨に関する世論調査について (平賀さんの投稿:IKAN)
http://homepage1.nifty.com/IKAN/news/toukou/08021902.html (リンク切れ)
■アンケート|3500-13-12-2-1
http://3500131221.blog120.fc2.com/blog-entry-53.html
■スケトウダラ|勝川俊雄公式サイト
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/study/0430/ (リンク切れ)
http://katukawa.com/?tag=%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%88%E3%82%A6%E3%83%80%E3%83%A9
■グリーンピース・ジャパン公式サイト
http://www.greenpeace.or.jp/
■やる夫で学ぶ近代捕鯨史−番外編・戦後繰り返された悪質な規制違反
http://www.kkneko.com/aa3.htm
■やる夫で学ぶ近代捕鯨史−番外編・モラトリアム発効と「国際PR」の陰謀
http://www.kkneko.com/aa4.htm
■調査捕鯨自体が否定した3つのトンデモ論
http://www.kkneko.com/jarpa.htm
■捕鯨賛成票、一票おいくら?
http://www.kkneko.com/oda.htm
■人種差別とクジラ
http://www.kkneko.com/sabetsu.htm
■捕鯨報道・マスメディアランキング
http://www.kkneko.com/media.htm
■捕鯨批判ブログリンク集
http://www.kkneko.com/framel2.htm
■2人の鯨類学者/西脇氏
http://kkneko.sblo.jp/article/18205506.html
■冗談じゃニャイワン!
http://kkneko.sblo.jp/article/24885060.html

posted by カメクジラネコ at 01:18| Comment(0) | TrackBack(1) | 社会科学系
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『闘え!自民族中心主義者』の山際 大志郎氏
Excerpt: ごく一部の好事家達(笑)から熱狂的な支持を受けている山際 大志郎氏の著作『闘え!クジラ人 -- 捕鯨問題でわかる国際社会 --』を読んでみた。 以下、感想。
Weblog: flagburner's blog(仮)
Tracked: 2009-07-04 19:59