円高が一気に進んで1ドル80円台にまで。もっとも、円(日本)の"強み"が評価されたとはまったくいえない以上、単なる一時的な避難壕にすぎないのでしょう。欧米等他の先進国の景気が回復基調に入った時点で、再び売りに出されることは必至。構造改革は福祉切り捨てと、企業が都合のよい時に首を切れる労働派遣の規制緩和くらいで、肝心の政官の改革はできないまま、道路や新幹線などの不採算公共事業路線に逆行しそうな気配。財政赤字の解消もポーズだけ。このまま"癌"の進行を放置するような政策が続けば、近い将来国債の格付けが突然下がり、円が暴落することになりかねません。
円高と合わせ、原油価格の下落は、重油高騰で悲鳴をあげていた鯨研/共同船舶には一つの朗報でしょう。それでも、経営合理化策を水産庁に提出する羽目になるほど苦境が続く中では、焼石に水ならぬ油かもしれませんね・・。肝心の“副産物”が売れなきゃ、話にならないのですから。
不況の度に口にされることだけど、過剰消費型のライフスタイルの見直しが叫ばれる今日この頃。間違いなくグルメの一つといえる鯨肉の都市部での消費がさらに落ち、本来の伝統食に近い、一部地域のハレの日の御馳走の位置付けに落ち着くのは結構なことです。後は、環境負荷がかかるばかりで、生産のスタイルとしても伝統から大きくかけ離れている現行の供給体制を修正しさえすれば、ある程度世界の許容範囲に収まるのではないでしょうか。
◇死刑とクジラ
■<国連総会>死刑停止決議案を採択 日本は昨年に続き反対 (12/19,毎日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081219-00000040-mai-int (リンク切れ)
■裁判員候補者、11万8500人「辞退希望」などと回答 (12/19,読売)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081219-00000046-yom-soci (リンク切れ)
■模擬裁判でも悩む量刑 実際、裁判員になったら… (12/17,産経)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081217-00000547-san-soci (リンク切れ)
一番上のリンクにあるように、国連で死刑の“モラトリアム”を求める提案が(今年も)採択されました。提案したオーストラリア、EUなど106国が賛成、日本・中国・米国の先進死刑大国が反対に回りましたが、反対票を投じた国は昨年より8カ国減り46カ国のみに。先日拙記事でお伝えしたように、米国でも実際には死刑は減少傾向にあり、多くの州で行われず実質的廃止状態にあります。捕鯨でいえば、日本、ノルウェー、アイスランド、カリコム諸国の位置付けを、中国、米国、日本、アラブ諸国が担っている感じでしょうか。
先日取り上げた読売の死刑特集企画の第2部7(17日、オンラインではまだ未掲載)で、松本サリン事件で被害に遭われた河野氏の意見が、死刑に反対する立場として取り上げられました。冤罪でマスコミからもさんざん叩かれ、一歩間違えれば自分が死刑になるところだった氏の主張には、大変重い説得力があります。残念なことに、この回だけいわゆる三面でなく右隣。読売が賛成論に割いたスペースとの差は、国内世論の賛否と比べても大きすぎるように思われますが・・。
捕鯨と死刑の制度をめぐる賛否論には、多くの類似した特徴があります。「命をより多く奪ったほうがいい」という価値観。システムに組み込まれ、知らず知らずに国民が加担させられている"殺し"という側面。そして何より、国と主要なマスメディアの多くが明確な推進派の立場をとり、積極的に情報操作を行っているという点です。メディアも国も、少数意見の尊重、公平性という観点に欠けていませんか?
一方、裁判員制度で辞退希望者が通知者の3割以上に上っているというニュースも(2番目のリンク)。「死刑判決になんて関わりたくない」との動機も、きっと強く働いているのではないでしょうか? マスコットキャラを各県で競い合うように(どちらかというとセンスの悪さを競っているふうにみえますが・・)せっせとこしらえる前に、裁判員制度導入の大前提として、まず死刑を廃止してください。
ちなみに、オウム問題に詳しいのに"浄化"という宗教用語(?)が好きで、素朴な捕鯨賛成論をぶっている某有名評論家さんは、死刑に賛成の立場のようですね・・・
前回の記事もご参照。
◇クジラしょうゆだってさ!
■世界初、クジラしょうゆを開発=山口県〔地域〕 (12/18,時事)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081218-00000140-jij-soci (リンク切れ)
■ヤマカ醤油、水産大など クジラ肉からしょうゆ開発 (12/19,山口新聞)
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2008/1219/11p.html
お腹痛くて辞めた安倍元総理のお膝元で、2002年にIWC年次会合を招致し、食文化県議連も発足している捕鯨ヨイショ県の筆頭である山口県のお話。来年6月頃に都内のデパートでも販売する予定だそうです。IWC総会で話題になることを念頭に置いているのでしょうか。いやはや・・・・。
時事通信の記事では「南氷洋産のミンククジラやイワシクジラ」とありますが、南氷洋産はクロミンククジラでミンククジラではありません。一方、イワシクジラは太平洋沖での調査捕鯨の捕獲対象です。いずれにしても間違いですが、どちらの調査捕鯨の生産物を利用しているのかはっきりしないため、こういう誤認表記は非常に困ります。いい加減な種名表記をいつまでたってもやめようとしない鯨研・水産庁にも大きな責任がありますが。
さらに記事の一部を引用しましょう。
しょうゆの原料となるクジラ肉は、調査捕鯨で捕獲された南氷洋産のミンククジラやイワシクジラ。食肉としてカットされた際の細切れ肉は通常捨てられているが、これを有効活用し、商品化する。はっきりしているのは、今年2008年まで、まだ食べられるのに捨てられていた鯨肉が厳然として存在したというとですね・・。いかにも年間2000万トンという膨大な食料を廃棄している国らしいといえますが。これまで各方面で大々的に言いふらされていた「クジラだけは余すところなく有効活用していた」という宣伝文句が、またしても大嘘だったという事実が発覚したわけです。しかも、しょうゆの原料というのは要するにエキスを絞るだけで、残った絞りかすの肉はやはり捨てられる運命にあります。国内の捕鯨擁護派の主張を聞いていると、あたかも日本人にとってクジラは他のすべての動物と一線を画す"神聖な存在"でり、結婚式の披露宴でウェディングケーキの高さを超える残飯の山を築こうと、冷めたハンバーガーを15分でポイしようと、「クジラだけは決して余さず食べ尽くさなくてはまかりならん」という戒律でもあるんじゃないかと思えてしまうのですが、完全に思い過ごしだったようですね・・・・
さて、山口県民の税金で運用されている食品開発推進協議会と、県内メーカーのヤマカ醤油、年若い学生に鯨肉食品開発までさせている水産大学校の皆さん。あなたたちがなさっているのは、食文化の要というべき地産地消の究極のアンチテーゼだってこと、十分理解してますか?
参考リンク:
■鯨料理"トンデモ"メニュー一覧
http://www.kkneko.com/shoku.htm
◇セミクジラにスポットライトが当たる日
■大掃除:大物もきれいに 実物大セミクジラ−−くじらの博物館 (12/19,毎日、読売、産経)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081219-00000132-mailo-l30 (リンク切れ)
http://mainichi.jp/area/wakayama/news/20081219ddlk30040365000c.html (リンク切れ)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081218-00000592-san-soci (リンク切れ)
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/081218/trd0812181942017-n1.htm (リンク切れ)
http://osaka.yomiuri.co.jp/season/20081219kn03.htm?from=iphoto (リンク切れ)
■クジラ全身骨格標本 県の天然記念物指定へ ('07/9/25,紀伊民報)
http://www.agara.co.jp/modules/dailynews/article.php?storyid=132294 (リンク切れ)
■展示解説・セミクジラ全身骨格|東京海洋大学 水産資料館
http://www.s.kaiyodai.ac.jp/museum/public_html/whale_gallery/exhib_whaleskeleton.htm
毎日と読売は地方版。産経は「ふるさと便り」として全国版に掲載している模様。
いわゆる年中行事で、目クジラを立てるほどのことではないのですが、一点気になる記述が。 模型は、68年にオホーツク海で捕獲されたクジラを石こうで型どりしたFRP(繊維強化プラスチック)製。(引用、強調筆者)
──で、下から2番目のリンクの紀伊民報に、すす払いした模型のもとになった骨格標本の記事が載っています。そこに記されているとおり、実はこの'68年には2頭のセミクジラの捕獲が行われていたのですね。つまり、国際捕鯨取締条約8条に基づく科学調査、すなわちIWCがもともと想定していた数頭レベルの“本来の調査捕鯨”による捕獲だったわけです。ちなみに、文楽人形用のゼンマイ用の鯨髭のストックもこの時ある程度確保された模様。もちろん、どの国からも文句はありません。もっとも、石膏で型取りしたのは形状の安定している頭骨、胸ビレ、尾ビレのみで、毎日の記事だけ読むと全身石膏で固めたんじゃないかと誤解しそうですね。ま、物理的にもまず無理な相談ですし、自重で潰れて醜く歪んだ死体から、野生の海で泳ぐ生き生きとした姿を再現するのは不可能ですから・・。
ところで、捕鯨ヨイショ新聞産経はまたまたおバカぶりを発揮。。
命綱をつけて巨大なクジラの模型に乗った職員は、古式捕鯨時代の漁師をほうふつさせるような動きでモップやはたきを使い、手際よくほこりをふき取っていた。(引用、強調筆者)・・・・。記事はどうでもいいんですが、古式捕鯨は危険と隣り合わせで命を落とすことも多かったのは、博物館の方たちなら当然ご存知のことでしょう。現代でも、調査捕鯨で事故や火災に巻き込まれて亡くなった方が出ていますが。産経に書かれたからといって、くだらんパフォーマンスはしないでしょうが、どうぞ怪我などなさいませぬように──