◇動物たちの見る夢
老犬の背中を見つめていたら、すっかりメランコリックな気分に陥ってしまいました・・。歯が健康で、食欲があっていいウンチをしている限りは、まだ安心なのですが。嵐の中をさ迷っていたところを拾われた甥のシーズーは、白内障と心肥大を患い、最後は寝たきりの状態が長く続きましたが、数年耐えてくれましたし。
犬も猫もフェレも、年をとると日がな一日ぐっすりと眠っていることが多くなります。ヒトの場合は、年取って睡眠時間が延びるタイプと短縮されるタイプに分かれそうですが。せっかちなニンゲンは、人生の1/3も無為な時間を過ごすのはヤダとばかり、あくせくと働いて、起きている時間を延ばそうとしがちですが、そんな駆け足のような生き方をすることで、何か代わりに大切なものを失っている気がします。
眠っている間、動物は夢を見ます。別にニンゲンに限った話ではなく、少しでも睡眠をとる動物はおそらくみんな夢を見ているでしょう。猫や犬たちの寝姿を観察していると、レム/ノンレム睡眠の違いは明瞭です。ヒト以外の家族を持つ方にはわざわざ説明の必要もないと思いますが。
夢は、睡眠中に脳内で行われる記憶の整理、廃棄、"編集"という重要な作業に伴い現れる現象と考えられていますが、夢そのものは生存に必須な機能というより、随伴的に"見せられる"ものみたいですね。もちろん、はっきりとしたメカニズムが解明できているわけではありませんし、還元主義的な既存の科学手法でそれがなしうるとも思えないのですが。科学の力で機能の存在理由や因果関係が一分の隙もなく突き止められるわけでもなく、さりとて、サジを投げ出してオカルト的な説明に頼る必要もない、そんな"自然な現象"があることに、私は一種の安堵感を覚えるのです。
なんにしろ、"こどもたち"の寝姿ほどリラクゼーション効果の高いものはありません。毛皮を通じて伝わる規則正しい鼓動や、呼吸に合わせて静かに上下動するお腹を見ているだけで、安らかな気持ちになります。当たり前の日常以上に価値のあるものなど、この世界に存在しないのだと、改めて再確認させてくれるのです。ときどき、寝言でうなり声をあげたり、手足を痙攣させたりするとき、「悪い夢でも見てるんじゃないか」と不安になり、ついそっと手を伸ばしてしまい、不意に起きてキョトンとした顔をするのを見て、胸を撫で下ろすと同時に、起こしちゃって悪いことをしたな、と思ったり。
夢には、"悪い夢"を消去して"いい夢"を固着・強化してくれる機能もあるようなので(逆に働いてしまうとPTSDになっちゃうけど・・)、願わくばどの子も"いい夢"だけをいっぱい見て、長生きをして欲しいと思うのでした。
◇飼育のプロたちの裏事情
■動物園のスゴ腕飼育員|プロフェッショナル (10/7,NHK)
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/081007/index.html (リンク切れ)
上野動物園でサイのラニーの飼育を担当し、アイアイの人工繁殖に世界で初めて成功した細田孝久氏。
細田氏が担当している小獣展示、これはパンダ、あるいはゾウやライオンなどの"目玉"となる大型動物以外の、分類上はかけ離れているものを全部まとめてぶち込んだもの。園の"ステータス"となるのは、稀少性(絶滅危惧種という意味の他、飼育している競合園がないというニュアンスもある)とともに"種数"です。看板動物に比べて予算をかけられないのが実情でしょう。
その紛れもない証拠が、番組中で登場したキツネザルとアルマジロ。マダカスカル産のキツネザルに園内で育った"ササ"をあげているのは、体調がよいという理由だけではないでしょう。同じササを食べるパンダのそれは"特注品"で、園内の動物の中で一番食費がかかることで有名・・。ちなみに、ミーアキャットに馬肉をあげていましたが、これも経済的な理由で肉食動物の餌によく使われます。以前は鯨肉が充てられていたわけですが・・・。どっちにしても不自然ですけどね。ミーアキャットがウマやクジラに襲いかかる図なんて、誰も想像できないでしょ・・・
そして、アルマジロの繁殖の密着取材──ボイラー室の裏側のような一隅に置かれた、木クズを敷いて電球を取り付けた間に合わせの哺育ケージ。相当な工費をかけて作られた、空調の効いたパンダの展示室とは雲泥の差ですね。電球はおそらく保温のためでしょうが、乾燥を招く欠点も。生まれたての仔アルマジロがプルプル震えていたのはかわいかったけど、あれは要するに寒さの所為。野生状態とは隔絶した、あんなまぶしい照明の中では、親が落ち着かないのも当たり前。どの哺乳類でも生まれたての赤ちゃん/母親が真っ先に行うのは哺乳/授乳なんですから、初めてお乳を飲むまでに24時間もかかるという時点で首をかしげます。
体重が50gあった先例は、運よく先に授乳できていたということでしょう。では、今回と先回の違いは一体なぜ引き起こされたのでしょうか? カメラが入った所為も案外考えられるかもしれませんが。また、8回の繁殖のうち2回しか成功していないのはなぜなのでしょうか? 人工繁殖技術がこの先確立されるまでに、一体どれくらいまったくの手探り状態での試行錯誤を繰り返さなければならないのでしょう?
細田氏は日本の動物園業界でも飼育技術においてトップレベルの方。にもかかわらず、暗中模索の状態なのです。内外の飼育関係者と蓄積された情報をやりとりする段階にも達していないわけです。NHKのプロフェッショナルに登場する第一人者がこれなんですから。用意されていたのは、ペットショップで手に入る仔猫用ミルクだったし・・。確かに手頃でしょうけど、分類群が近くてさえ乳脂肪率等には結構気を遣うのに、異節目(旧貧歯目)でもいいのかしら? まあ、猫の初乳も牛からとってたりするんですけど・・。
絶滅の危機に瀕した野生動物を人工繁殖させ、個体数の回復を図ることこそが動物園の使命であり、野生動物を自然から切り離し、自由を奪う施設が存続することを許されるための、残されたほぼ唯一の正当な理由でしょう。とはいえ、やはり野生状態での繁殖行動の観察・研究がもっと進んでからでないと、あまりに乱暴すぎるという印象を持たざるを得ませんでした。水族館の魚の飼育のノウハウに関しても、同様の実態があったわけですが。
動物たちのちょっとした異変を目敏く見つける細田氏のスキル/才能は、園側にとっても貴重であろうと思いますし、"死なせる"ことに自己嫌悪を覚える氏が動物に近い側にいることもわかります。一緒に過ごす時間が短いせいか、スッポンには逃げられていたけど・・。一方で、そうしたスキルのある人材の活用が、園にとっては一番安上がりということもいえるでしょう。毎朝8時に出勤してずいぶんジャンキーな食事ですまされていましたが、動物の異変を察知できても、自身の体調管理がはたして大丈夫なのか気にかかるところ。
サイのラニーは結構有名で、知り合いの動物通も知っていましたが、貴重な裏話も。旧いタイプの飼育員の社会はずいぶん閉鎖的なムラ社会だったのですね。厳しい指導で知識を徹底的に叩き込むというなら話はわかりますが、新入りが噛まれたことをあざ笑うばかりで、主な疾病等や健康状態の判別法をたたきこむなど、必要な教育すらしないのは、動物のためを真剣に慮っている職業の慣習とは到底思えません。細田氏は、そうしたベテラン飼育員たちから厄介な老獣を押し付けられたように聞こえました。
サイは寒ければ自分でドアを閉めたりする、とても賢く、また繊細な動物です。そして、動物たちは、どれほど老齢で皮膚がボロボロになって「こりゃもう駄目だ」と見放されようと、自ら生きる意志があれば立ち上がります。そして、諦めないで支えてくれるヒトがいるかいないかでも、その意志は大きく違ってくるのです。細田氏以前にいた上野の飼育のプロたちは、そのことがわからなかったようですね。
施設にカネをかけるより、大型動物でも"実績"を残した細田氏に担当を任せた方が、リンリンの寿命も少しは延びたかも・・・
参考リンク:
■やっぱり偽物の自然は本物にはかなわない
http://kkneko.sblo.jp/article/17589205.html