2008年09月06日

捕鯨翼賛体制に反旗を翻し始めた捕鯨の味方たち

■「魚食検定」今秋スタート (9/4,読売)
 ちょうど今日のブログで取り上げた小松正之氏も参加。クジラの設問では相変わらずの"小松節"で食害論をぶってるかもしれませんが・・。
 「さばく前の魚を見たこともない子どもがいる。旬のサンマより、冷凍マグロに人気が集まる。『どこか違う』と思っていた」という発案者の生田氏のコメントも、「売れ筋のマグロやエビなどを世界中から買い集めるようになった。それが資源枯渇を招き、日本に魚が入ってこない事態につながっている」という解説の指摘も、至極ごもっとも。ただ、原因を突き詰めるなら、魚食の崩壊を招いたのは明らかに水産行政、流通業界、マスコミ、そして消費者自身です。組織としての生産者側も、そこに乗っかっていたのは否めないでしょう。そして、現状から目を逸らさせ、進むべき道を誤らせた最大の責任は、捕鯨擁護プロパガンダとその担い手たちにあるといっても過言ではありません。
 この検定、まず水産庁の担当者たちに受けさせては

 それと、検定料を徴収しておいて、『魚食検定3級に面白いほど受かる本』とやらを自分達で発行するのは如何なもんでしょうか・・。

参考リンク:(漁業問題を知るには、検定受けるより以下の三重大勝川准教授のHPを読んだ方がよっぽど参考になるかも・・)
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/
 (リンク切れ)
http://katukawa.com/

 
◇捕鯨翼賛体制に反旗を翻し始めた捕鯨の味方たち

 これまで日本の捕鯨の最も強力な味方だった人たちの中から、捕鯨サークルのあまりにも旧態依然とした翼賛体質に愛想を尽かせた人たちが出始めました・・。
 

1.小松正之氏

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9D%BE%E6%AD%A3%E4%B9%8B

 日本の捕鯨推進政策の核となり、捕鯨関連の著作が数多ある農学博士小松氏は、このヒトを抜きにしては日本の捕鯨を語れないというほどの重要人物。捕鯨に反対する立場からすれば、トンデモな鯨食害論を世間一般に吹き込みまくり、調査捕鯨の対象種拡大や増産のレールを敷いた張本人である以上、同情の余地のない重大な責任者でもあるのですが・・。
 その小松氏、水産庁遠洋漁業課長補佐(捕鯨班担当)から次々に部署は変わるも、水産庁の捕鯨関連政策を一手に引き受け、IWC本会議にも毎年のように乗り込んで熱弁を奮ってきたのですが、2005年に突然"肩たたき"を受け、外郭団体への事実上の左遷。この辺りの事情は今年4月に『AERA』に掲載された「調査捕鯨担当者の辞表」にて詳細に述べられています。水産庁に対しては「低レベルの事勿れ主義」「自分への責任転嫁だ」と憤懣やる方ない模様。
 捕鯨に関する考え方そのものに変化があったわけではないようなので、このヒトをここで紹介するのは少々語弊があるのですが・・。それでも、今年にはGPJ主催の国際海洋環境シンポジウムでのパネリストも引き受けるなどしています。水産庁の肩書きが外れてフリーハンドになり(現在は政策研究大学院の教授)、今後新たな本音も聞かれるかも?

■未来の子どもたちに残したいお魚リスト|GPJ
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/susea/ (リンク切れ)
■捕鯨政策の裏側
http://kkneko.sblo.jp/article/13459966.html

 

2.C・W・ニコル氏

http://ja.wikipedia.org/wiki/C%E3%83%BBW%E3%83%BB%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%AB

 ウェールズ出身で長野県黒姫在住、『勇魚』などの著作で知られるナチュラリスト作家であり、外国人でありながら日本の捕鯨の最も強力な支援者として、日本の捕鯨賛成世論の形成にも果たすところの大きかったのがC・W・ニコル氏。
 日本の捕鯨応援団が頼り甲斐のある助っ人として頼みの綱にしてきた、ニコル氏の捕鯨に対するスタンスに大きな変化が見られたのは、2001年のこと。
 実はニコル氏は、捕鯨モラトリアムが施行される以前にも、太地の捕鯨業者がこっそりクジラを捕獲して数字をごまかしていた"現場"を目撃し、しかもやんわりと事実確認しようと試みたところ(この辺りの性格は如何にも"日本人的"なヒトだなあ、と思ってしまいますが・・)彼自身があからさまなを吐かれてしまいました。その後、今世紀に入ってからも沿岸事業者の悪質な規制違反が続いていた事実を知り(『週刊金曜日』に掲載された記事を読まれたとのこと)、「残念だが、自分の首をかけて日本の捕鯨を支持するのはこれを最後にしようと思う。味方に嘘をつくのは許しがたい」ときっぱり述べています(「裏切られた信頼・徒然の記」2001/10/17,東京新聞連載のエッセイ)。
 近著の『鯨捕りよ、語れ!』(2007、アートデイズ)では捕鯨に対する熱い思いが語られてはいますが、日本の商業捕鯨の"現実"と「旧き良き鯨捕りたちを信じたい」気持ちとの間で揺れ動く葛藤にも似た氏の心情が感じ取れます。
 最近では、新聞やテレビなどのマスコミでコメントする際にも、彼は限定的捕鯨賛成派の立場をとり、「南極で捕鯨を続けることは日本だけで決められることではない。世界の理解が得られなければ撤退すべきだ」という趣旨の発言を何度もされています。沿岸捕鯨での規制違反を実際本人が目の当たりにしたこともあり、「母船式捕鯨の方はまだマシなんじゃないか」という認識を持たれていたようですが、GPJと共同船舶元社員による告発の内容に対しては、おそらく激しい衝撃を受けたことでしょう。
 また、オーストラリアの監視船が撮影した昨漁期の調査捕鯨の映像で、親子と思しきクジラが映されていたことにも「子供のクジラまで殺しているとは知らなかった」とはっきりと苦言を呈しています。ニコル氏自身はハンターですが、プロのハンターとしてのフェア精神からも、日本の捕鯨のやり方は自身の信条と相容れないものがあったのでしょう。太地で行われているイルカ漁に対しても、「彼ラハ殺シ方トテモ"ヘタ"デス」と、これまた非常に日本的な控えめ表現ながら、群れ毎虐殺するやり方を批判しています。これも、獲物に対する尊敬やフェアな命のやり取りとは真っ向から反する、伝統的な狩猟とは到底いいがたいものだからでしょう。
 筆者自身は、狩猟愛好家のニコル氏や鯨肉試食イベントをやってのけるGPJとは距離を置きたい立場なのですが、ニコル氏とグリーンピース・ジャパンとは「捕鯨以外の環境問題に関しては意見を同じくしているため」最近は友好関係にあるということです。

■非科学的な動物愛誤団体「鯨研」
http://www.kkneko.com/icr.htm
 

3.三崎滋子氏

 IWC代表団の翻訳を長年務めた三崎氏は、翻訳家であるばかりでなく、TVなどマスコミの場にも登場して、舌鋒鋭く日本の主張を代弁してきた方。小松氏の論文などを英訳したり、鯨研や国際PR、捕鯨協会の求めに応じて英文資料を翻訳したり、捕鯨推進サイドにとってはなくてはならない存在でした。IWC科学委のメンバーに加わっていたこともあります。
 鯨類学者でありながら、"南極海牧場構想"とか妄想に近い大言壮語しか吐かない大隈氏や、使い古しの食文化論を振りかざすしか能がない文化人・著名人応援団と異なり、幅広い議論に理路整然と対応できる、キャンペーナーとしてもきわめて有能な人物で、内外の捕鯨反対派にとってはある意味一番の難敵でした。翻訳家の草分けとしてのスキルもさることながら、IWC総会に幾度も出席し、海外の代表団やNPO、メディアとも堂々と渉り合ったり、全体の事情をすっかり知り尽くしていることもあったでしょう。
 陰に日向に日本の捕鯨世論形成に尽力してきた最大の功労者ともいうべきその三崎氏が、この8月にJapanTimes紙上に論説を寄稿。タイトルはなんと"Environmental impact of whaling"。ぜひご一読いただきたいのですが、「日本は南極海捕鯨からの撤退のタイミングを見失ったのではないか」「鯨肉産業はフードマイレージなど環境負荷の観点が考慮されていない」との趣旨。JTへの掲載というインパクトを考えれば、拙記事など霞んでしまいそうです。

■Environmental impact of whaling (8/3,JT)
http://www.japantimes.co.jp/text/rc20080803a6.html

 三崎氏はWFF(ウーマンズフォーラム魚)の発足にも関わったり、講演に出たりもしていたようですが、生粋の国際派エリートである三崎女史と、単純素朴な食文化論を真に受けるばかりの他のメンバー(鯨肉料理店等の関係者)とでは、肌が合わなかった部分も少なくなかったかもしれません。また、ずっと続けていた捕鯨協会のアドバイザーも、2年ほど前から退かれていました。どういう事情があったかは不明。大隈氏のほうは、IWC期間中のポータルサイトでの森下氏の代役など、未だに担ぎ出されていますが。
 小松氏と同じく、組織のしがらみが切れて「今まで言いたくても言えなかったこと」が自由に言える立場になったということかもしれません。距離を置いて冷静に捕鯨問題を改めて俯瞰したとき、合理的思考と良識を重んじる方であれば、自己分析・自己批判能力のまったく欠如した捕鯨賛美論が歯止めなく受け入れられている日本の現状を憂慮されるのも、ある意味当然といえるでしょう。


 お三方とも(小松氏は特に)捕鯨賛成派から反対派に鞍替えしたとまではいえません。ニコル氏も三崎氏も、シーシェパードの過激な行動を支持することはあり得ないでしょう。『2人の鯨類学者西脇氏』(8/21)の記事でも触れましたが、共通しているのは「是は是、非は非」として認める姿勢です。
 日本の世論の過半数を捕鯨賛成派によって占められるに至ったのは、まさに彼らの功績といえます。その彼らが、関係者、そして日本を諌めようとしているのは、まだ信じたい気持ちが残っているからでしょう。
 にも関わらず、日本政府はかつての強力な援護者による批判に耳を傾けるどころか、あたかもそうした主張が国内から発せられることがまるでないかのように、日本の捕鯨にはまったく非の打ち所がないかのように振る舞っていますそして、巷の捕鯨シンパも、未だに3人の主張の都合のいい部分だけを切り取って、諌言にはぴったりと耳を塞ぐばかりのようです。これでは、仲良し捕鯨ヨイショサークルに愛想を尽かせて出ていく人が、この先どんどん出てきても不思議はないでしょう。


■ 2人の鯨類学者/西脇氏
http://kkneko.sblo.jp/article/18205506.html
posted by カメクジラネコ at 02:06| Comment(3) | TrackBack(1) | 社会科学系
この記事へのコメント
三崎さんのコメントに反応して投稿してきました。

The purpose of the Bonn Convention (The Convention on the Conservation of Migratory Species of Wild Animals, signed in 1979 in Bonn and entered into force in 1983) is to develop international cooperation with a view to the conservation of migratory species of wild animals, including whales and sea turtles.

The Japanese Government has ignored this international cooperation scheme for almost three decades. I believe that the Fishery Agency has kept this from being enacted as it is conflicting with the so-called 'scientific whaling' in the southern ocean and also with sea turtle conservation.

A few 'endangered' sea turtles are harvested under government control in some Japanese waters but they migrate widely over national boundaries. The CITES convention (Japan is a member nation) recognizes these turtles are endangered.

I wonder why the author of this opinion had helped to promote the 'scientific whaling' for many years, while probably she was aware of such conventions. Did she advise the authority to stop this infamous act during her duty years?
Posted by beachmollusc at 2008年09月06日 08:11
>beachmolluscさん
ご指摘は大変ごもっとも。。が・・これまでのしがらみを断ち切ってJapanTimesのような媒体であえて正論を唱えられたことについては、私としては高く評価したいと思います。それに、もし彼女がもっと早く異論を唱えていたら、水産庁はやはりその時点で切って捨てるだけだったはずですから。ニコル氏にしても、大事なのは現在のベクトルなので。これまでさんざんよりかかってきたはずの人々から叩かれて四面楚歌の状態にあるのではないかとも察せられますし・・
Posted by ネコ at 2008年09月07日 02:02
切って捨てられるのが嫌なので、正論を出したのは辞めたあとなの、というのは辛い所ですので、一応突っ込んでおきました。

あなた達とは違うんです、とか捨て台詞を残して辞任した方がカッコよかったでしょうね。
Posted by beachmollusc at 2008年09月07日 07:56
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