2008年09月04日

日本の哺乳類学の異端・鯨類学

◇公明党とクジラ・・

 解散戦略については、早くも論陣の左右を問わず見方が割れていますね。いずれにせよ、福田退陣のタイミングが最善だったのは否定できないでしょう。あくまで自民党にとっての最善ですが・・。この機を逃せばジリ貧必至ですから。とはいえ、これで追い風になるとの読みは、やはり国民をなめていたということでしょうね。総裁選花火が完全に不発に終わった場合は、また解散を先送りして延命を図るつもりかもしれませんが。給油継続法案は、あきらめるか、公明とまた何かトレードでもするしかないでしょう。民主党も、ここで長妻氏など若手を立てれば、勝ち目も広がったのではないかと思うのですが。
 自民党の計算を狂わせた張本人というべき公明党。どうやら結果次第では"乗り換える"可能性も出てきそうな気配。そりゃ、学会票は民主党だって欲しいでしょうけどね・・。キャスティング・ボートを握るといえば聞こえはいいけど、要は風見鶏。継続に反対したところで、そもそも元の法案を通した責任をどう考えているのでしょうか? 福祉・平和を掲げても看板倒れ、連立政権下で施行した具体的政策の中で、何か一つでも独自色を打ち出せたのでしょうか? 公明党が政権に入ったおかげで暮らしが変化したと思っている人が、学会員以外でただの1人もいるとは思えないのですが・・。
 筆者はそもそも宗教アレルギーなのですが、実を言いますと、親戚が学会にかぶれてしまい、若い頃一度「大事な話がある」と呼び出されてあやうく拉致られかけた"恐怖体験"がありまして(汗) 正体が判明したところで、命からがら自力で脱出しましたが・・。勤務先まで押しかけてきたので追い返したことも。そんなわけで、ここは主要政党の中でいっちばんでっ嫌えなのですわ(--;;;
 実は、公明党は動物実験等動物の問題については比較的理解があることになっており、以前聖教新聞で捕鯨に対してやや批判的な社説が載ったこともあります。ま、表向きは新興でない仏教系ということになってますし、ね・・。言い換えれば、反反捕鯨論者が一番嫌いなセンチメンタルな理由ということになりますが。
 まあ、連立政権に入った時点で、南極での調査捕鯨を縮小/停止させるくらい政治力を行使するのであれば、筆者も応援してもよかったんですけどね。実際には、小松氏を党に呼んで勉強会をやるわ、捕鯨議連に参加してる議員もいるわで、クジラの味方をする気は皆無のようです。自衛隊海外派遣と同じく、何事につけお経を唱える心やさしい信者(?)には表立って情報を流さず、自民党の所為にするというやり口なのでしょう。

 そゆわけで、筆者が公明に票を入れることは絶ッッ対ありません。

 

◇日本の哺乳類学の異端・鯨類学

■『日本の哺乳類学』(東京大学出版会)
http://www.utp.or.jp/series/mammalogy.html

 今年の7月に国際哺乳類学会議の記念事業として刊行された、いわゆる一般向け専門書。1巻目は小型哺乳類、2巻目は霊長類と中大型哺乳類で京大霊長類研の山極氏が監修に入っています。そして3巻目の水生哺乳類の巻の監修は、「南極海は日本の里海だ」などと、世界が耳にしたら震撼するに違いない恐ろしいことを平気で口にする加藤秀弘氏。
 案の定、遠洋水研/宮下氏による目視調査と鯨研/藤瀬氏によるJARPAの解説(宣伝)に大きく紙幅を割いています。特に、藤瀬氏が担当した章の中身は、以前拙ブログでも取り上げた鯨研通信や『鯨類学』(東海大学出版会)のそれと基本的には変わらず、総論で調査捕鯨の科学的正当性を訴えながらも、各論に目を通せば無視できない不確実性や偏向が読み取れるものとなっています。
 とりわけ、わかりやすい解説のつもりで入れたらしい、南極海における鯨種変遷の図は、実測データに基づかない大雑把なシミュレーションか、大きなバイアスがかかっている商業時代のデータによる推測と、手法的な一貫性のない最近の調査結果を並列扱いにしているうえに、他のオキアミ捕食者の変動をまったく無視している点で、あまりに非科学的といわざるを得ません。各鯨種の体格と捕食量を考えても、絵自体が単純に間違っていますが・・。相変わらず、「調査捕鯨が温暖化研究に役立つ」と臆面もなく謳っていますし。なお、この件に関しては、新しいネタが届いたため、明日再度取り上げたいと思います。下のリンクもご参照。
 『鯨類学』(東海大学出版会)の書評でも触れましたが、3巻を通して読めば、鯨類資源学の日本の哺乳動物学会における特異な位置付けが浮き彫りになるでしょう。
 1巻で取り上げられている齧歯目や食虫目などの小型哺乳類は、生息域が限定された一部の種・個体群では危険な状態にあるものの、全体に繁殖率が高いため、保全に関する記述は章立てするほど大きく扱われてはいません。2巻目では、農作物被害と関連する「保全と生態」の章がありますが、ここでは生態への理解を通じた被害の防止策や再生プログラムに主眼が置かれています。ところが……3巻ではこれが「資源と保全」に・・。この章に宮下氏の目視調査と藤瀬氏のJARPA解説が含まれているのですが、後の2つは北海道のトド食害に関するものと沖縄のジュゴン。要するに、保全に関して紹介されているのはジュゴンのみで、クジラの研究は資源利用オンリーということです。繁殖率の低い大型哺乳類を致死的資源とみなし、商業利用をはかることを初めから前提とした議論であり、異質性がひときわ目立っているのです。
 捕殺によって利益を得る産業と密接に結び付いた研究を、他の哺乳類の研究と同列に扱えば、読者が違和感をバリバリに感じるのも当然でしょう。野生動物保護に等しく関心があり、本書を手に取られた方々には、鯨研の唱える競合仮説やその対処法を哺乳動物全般に当てはめれば、一体どれほど恐ろしいことになるか──という点に、ぜひ想像力をめぐらせていただきたいと思います。その裏にあるのは、「海は生態系じゃない」「ニホンオオカミが絶滅して何か不都合があったか」と平然と言ってのけるような、日本の鯨類学者の思考様式に他なりません。

参考リンク:
■鯨類学(拙ブログ)
http://kkneko.sblo.jp/article/15638823.html
■調査捕鯨自体が否定した3つのトンデモ論(拙HP)
http://www.kkneko.com/jarpa.htm

posted by カメクジラネコ at 01:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系
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