2018年12月05日

今年のIWCブラジル総会の日本政府代表団の旅費(の一部)が明らかに!

 今年9月にブラジル・フロリアノポリスで開催された国際捕鯨委員会(IWC)の第67回総会については、動画で配信された会議の模様やオブザーバー参加したNGOの話をもとに当ブログで取り上げたところ。
 今年の総会にはオブザーバーを除く加盟国政府だけで400名を越える参加者が集まりました。このうちの62名が日本政府代表団。実に7分の1近くを日本が占めていたことになります。もちろんダントツで最多。他の加盟国はほぼ1桁で、代表1名のみのところも少なくありません。
 10月にソチで開かれたワシントン条約常設委員会(CITES-SC)も日本からは18名が出席、参加者数で他国を大きく引き離していました。
 どちらもクジラがらみ。
 すべての産業界にとって無関係ではいられない国連気候変動枠組条約、その昨年の締約国会議(COP)23に参加した政府関係者は197カ国で約9千人(1ヶ国当たりでは50人弱。多く派遣しているのは先進国でしょうが)。100人に上る政府代表団が送られるのは、後はサミットくらいのものでしょう。
 実際のところ、国際交渉で10人以上の政府要員を派遣するだけで、その国にとってよほど重要な案件のはず。それはIWCやCITES-SCへの日本以外の国からの参加人数を見てもわかります。
 もちろん、かかる経費だって決してバカにならないのですから。
 というわけで、筆者は外務省および農水省に対し、今回の総会への日本政府代表団の旅費その他参加費用に関する書類の行政文書開示請求を行うことにしました。
 農水省に関しては、情報公開窓口で農水省分と水産庁分を農水大臣宛・水産庁長官分宛に分けて出してくれと言われたため、開示請求を2通分作成することに。外務省も本来は本省分と在外公館(大使館等)分に分かれるそうですが、こちらは一括で応じてくれました。さらに、開示可否の決定通知を受けたうえで、不足分(開示実施手数料−開示請求手数料)にあたる印紙を貼って開示実施方法等申出書を送付。ようやくブツが手元に。面倒くさいですね。用意する方も大変でしょうけど。あと、フォーマットを省庁間で統一した方がもっと効率的だろうにとも思いましたが。
 農水省・外務省とも部分開示でしたが、とくに農水省は一部不開示とした理由を5項目詳述しており、いずれも合理的な内容で異存はありませんでした。懇切丁寧な対応をしていただいた両省の担当部署の方々にはお礼申し上げます。水産庁以外。
 ていうか、水産庁(国際課捕鯨室)だけ開示決定期限を1ヶ月延長してきたんですよね〜。「権利利益を侵害される可能性のある第三者の意見聴取及び当該行政文書開示・不開示の審査に時間を要するため」という理由で。
 メンバーに庁外の業界団体関係者がいたからということなんでしょうが、すでに当事者であって第三者とはいえないはず。国際会議出席にかかった旅費・宿泊費等の費用を開示するだけで「権利利益を侵害される」可能性のある第三者とは一体誰なのでしょう? 例えば、業界団体の人間には国会議員並にビジネスクラスの航空券やランクの高いホテルの部屋を用意したことが国民に知られると、それが権利利益の侵害にあたったりする? そりゃ、侵害する方とされる方が逆≠ネのと違いますか? 税金使ってるのに。四の五の言わずにとっとと開示してほしいものです。
 さて、現物は農水省がA4用紙36枚、外務省がA4用紙27枚。墨塗りは一部のみで、必要な支出金額はすべて開示していただきました(水産庁以外)。それを一覧表にまとめたのがこちら。表下部の補注もご参照。
iwc67_delegates_exp.png
 同じ表を以下の拙HPでも公開しています。

■IWC67日本政府代表団旅費等参加費用情報公開請求
https://www.kkneko.com/iwc67delegatesexp.htm

 今回明らかになったのは、IWCに参加登録した日本代表団全62名のうち、農水省2名、外務省18名の分。また、資料上は匿名でしたが、在クリチバ領事館のスタッフの方6名がおそらくリストの最後に加わったと考えられます。
 今年のブラジル詣でに加わったのは、このほかに国会議員5名、下関市2名(市長と議長)、同じく太地町2名(町長と議長)。水産庁の幹部クラス官僚5名も確認。残る22名が水産庁職員および業界関係者ということになりますね。
 自民党3名、公明党1名、国民民主党1名の族議員は議院ないし国会委員会の職務扱いで、残念ながら情報公開法の対象外。
 太地町のお2人の分については同町議会の漁野尚登議員が、過去の総会同様、町に対して開示請求されたとのこと。
 今回筆者の方では下関市に対する請求をあえて行うことはしませんでした。おそらく太地町と同額程度と考えられるため。
 で、判明した金額が20,115,297円
 これでまだ≪62分の26≫にすぎません。国会議員では≪7分の2≫。
 水産庁の27名分を除いた残りの推計を含めた35名分で、およそ4千万円
 たった1回のブラジルツアーで家(土地付き)1戸建っちゃいますね・・。
 仮に、政務官と秘書官を除く外務省本省7人分の平均を水産庁の27人にあてはめると、およそ3千万円。しめて約7千万円
 都内の新築マンションが買えますね・・。
 少し細かく見ていきましょう(会計検査院の目で)。
 判明している26名分の旅費のうち8割は航空運賃です。ブラジルはフロリアノポリス開催ということで、渡航費がかさむのはやむをえないかもしれません。
 ただ、その航空運賃の6割近くは岡本政務官と谷合副大臣およびそれぞれの秘書官、計4名の分です。
 谷合副大臣と山本秘書官の航空運賃はそれぞれ2,013,960円。サンパウロ−フロリアノポリス間のブラジル国内線はエコノミーですが、東京−サンパウロ間はルフトハンザ航空のビジネスクラスを使用。岡本政務官は復路で米西海岸2都市に立ち寄っており、谷合副大臣より50万円高い値段(その後カナダへ)。
 それにしても、1度の往復で200万円とはすさまじいですね。会社の業務であれ個人の旅行であれ、比較サイトで格安航空、キャンセル待ちを探す庶民には想像もつかない金額です。とある研究者の方いわく「200万円くれたら10回か11回分国際会議を回ることが出来て、論文も捗るなあ・・」とのこと。しかも、当人の出張がなければ必要のない随行秘書の分で2倍に。議員・政府高官として、万が一にも遅れて会議に出席できなくなることがあってはならないという事情もわかりますが。
 さればこそ、せめて参加する国会議員は谷合氏と岡本氏の2名に絞るべきでした。
 また、会場でのスピーチは初日を谷合副大臣、最終日を岡本政務官といった形で分担すればよく、2人とも丸々5日間会議に張り付いている必要はなかったはずです。外交の場で政府の顔≠ニしての役割を演じるのが彼らの仕事であり、どうせ実務を担当するのは官僚なのですから。そうすれば宿泊費は1泊分ですみ、秘書官含め5日分の宿泊代と日当、40万円ちょっと浮いたはずです。
 実は、今回の総会にはオーストラリアからも与党自由党の上院議員アン・ラストン氏が出席していました。役職は谷合氏に相当する国際開発・太平洋担当副大臣。ラストン議員も日本の岡本氏と同様に豪州政府を代表して初日にスピーチを行ったのですが、内政を優先してとんぼ返り。そのことに対してNGOや豪州国内からは批判の声もあがりました。
 しかし、筆者はラストン議員・豪州政府の判断は賢明だったと思います。長くいたところで税金の無駄になるだけなんですから。
 日本の国会議員が7人も内政をほったらかしてブラジルまで押しかけ、会期中丸々居座るのではなく、2人だけ出席して「本当はずっと会議の行方を見守りたいところですが、地震と豪雨により被災した国民が大勢おります故、1日だけ顔を出させていただくことにしました」とでもスピーチしておけば、国内のみならず対外的にもむしろ日本の株はあがったことでしょう。
 それ以外の議員5名の旅費は、秘書の同行なし、航空運賃と宿泊費は谷合副大臣と同じ(まさかエコノミーで行くはずもないし・・)と仮定したうえでの推計ですが、やはり合わせて1千万円を超えます。また、おそらくブラジルでこれら国会議員に随行し通訳等の世話をするために在クリチバ領事館から追加のスタッフが派遣されたと思われるので、その分余計な支出が増えるとともに、領事館の業務が手薄になったんじゃないかと心配になります。
 はたして、地球の真裏のブラジルまで国会議員7名を擁するこれだけ大がかりな代表団を送り込んだだけの成果は挙がったのか──という点に関していえば、もうすでに結果は出ちゃったわけですが……。

■税金でブラジルまで出かけて無能ぶりを晒した捕鯨族議員は惨敗の責任を取れ
http://kkneko.sblo.jp/article/184463999.html
■IWC67会議報告−1日目〜その他のこと|ika-net日記
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/index.html
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/index.html
■国際捕鯨委員会第67回会合と日本提案 [クジラ]|真田康弘の地球環境・海洋・漁業問題ブログ
https://y-sanada.blog.so-net.ne.jp/2018-09-15

 判明した一部だけで2千万円、推計で7千万円と言う莫大な税金をかけ、国会議員7名を含む大代表団を送る必要があったとは、筆者には到底思われません。
 過去のIWC総会においても、日本は他の加盟国より相対的に多くのメンバーが出席し、族議員の誰かも加わってはきました。が、今回はとくにコストパフォーマンス的に最悪の外交だったといえるのではないでしょうか。(安倍首相の外遊のそれについてはここでは問わないとして・・)

 日本政府がIWCを脱退する/しないの判断を下すとしたのが今月。
 はたして「我が代表堂々退場ス」ということになるのかどうか。
 9月のブラジルが本当に参加する最後の機会だったとしても、もっと他にやり方があったでしょうにね。

参考リンク:
第66回IWC総会参加費用|太地町議会議員 漁野尚登のブログ
https://blogs.yahoo.co.jp/nankiboys_v_2522/34527636.html
平成30年 第2回 太地町議会定例会開催のお知らせ|〃
https://blogs.yahoo.co.jp/nankiboys_v_2522/35172444.html

 近日中にアイヌのサケ漁と捕鯨のダブスタに関する記事をアップする予定です。
posted by カメクジラネコ at 18:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系
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