2008年08月23日

絶対にやって欲しくなかった安楽死

■迷子の赤ちゃんクジラ、衰弱のため安楽死 (8/22,AFPBB)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2509251/3250835
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080820-00000488-reu-int (リンク切れ)
 
 「野生動物は、人為的要素が強く絡む場合を除き、安楽死させるべきではない」というのが筆者個人の立場です。
 クジラだろうと他の野生動物だろうと、幼若個体が飢えたり捕食者に食べられることは自然の摂理であって、ヒトが関与すべきことではありません。豪州の領海で1頭きりの例外ケースですから、「南極の自然はヒトが管理すべし」と主張して年間数百頭を捕殺し続ける日本とは比べ物にはなりませんが。
 動物観や生命倫理を国や民族の文化に摩り替えるのは、単なる「殺しの正当化」のための屁理屈に他なりません。ま、見分け方はごく単純で、殺しの抑制を目指すのか、それとも箍を外して際限なく拡大する方向に突き進むのか、それがすべてです。
 「代わりに何を殺さないのか」「命の無駄を具体的にどう減らしていくのか」という議論を完全に無視した日本の捕鯨推進論は、まさに殺しの正当化の典型例といえるでしょう。「供養さえすればいい」などというのは卑劣なごまかし以外の何物でもありません。かつての日本に備わっていた食生活や動物観を取り戻せたなら、西洋諸国が足もとに及ばないほど、口先だけでなく命にやさしい国になれていたはずなのに。現実には、現代の日本ほど、国内の野生動物も、犬猫も、食用家畜も節操なく殺し、命を粗末にしている国は世界中のどこにもないのですから。
 筆者自身が日本人であるが故に目につくのかもしれません。しかし、自分の国の現状に目をつぶってよその国をあげつらい、貶めることで自らを慰めるのは、やはり恥ずべきことといわざるを得ません。
 とはいえ……価値観の違いが厳然として存在することも事実。価値観は個人に属するものですが、社会や家庭の環境すなわち文化や宗教の影響を大きく受けることもまた事実。そして、国の政策あるいは法律も、結局のところ国民の総意、すなわち価値観のぶつかり合いの中から生まれてくるものには違いありません。
 捕鯨の是非もその一つであり、いまは日本において優勢なのは、残念ながら「クジラを生かすより殺すことに重きを置く価値観」なのでしょう。筆者としては、それとは正反対の自身の価値観を提示することで、ほんのわずかでも流れを変えていきたいと願っていますが・・。
 捕鯨問題と動物(ヒト含む)の安楽死の問題は、無関係でないとはいえ、皆さんそれぞれ是々非々あるでしょう。オーストラリアでは捕鯨には反対、安楽死には賛成の方が主流かもしれません。
 じゃあ、日本は安楽死に反対の立場なのかといえば、そうともいえません。年間40万頭もの犬猫を、安楽死といいつつ安楽でないガス室での窒息死という形で、行政自らが殺処分していたり、実験動物や食用家畜の屠殺における人道的配慮に関しても、諸外国に比べ決して厳格とはいえないのです。動物の"苦痛"も"命"も、取るに足りない「他愛のないこと」と考え、賛成反対以前の次元に留まっているといえます。それは、IWCでの人道的捕殺の議論を一笑に付す姿勢からも明らかでしょう。
 冒頭で述べたとおり、筆者個人は捕鯨と同様、欧米に多い積極的安楽死推進派とは正反対の立場です。捕鯨に関しては日本政府の姿勢を強く非難しますが、今回の安楽死に関しては、豪州の野生生物局の措置が正しいとはまったく思いません。筆者はオーストラリアびいきでもアングロサクソンかぶれでも何でもないので・・。
 価値観の違いを乗り越えるのは非常に困難なことですが、価値観が相互作用の産物であるならば、ほんの小さな小石であっても、投げることで新たな波紋を生み出すことも、意味のない作業ではないでしょう。
 ここで、別所にて掲載している犬猫の安楽死問題に関する小論を合わせてご紹介しておきます。
 
<<<安楽死について>>>
 

  これほど理性と感情の葛藤をもたらすテーマはないと思いますし、実際に自分が選択を迫られる立場に追いやられない限り、その苦しみを理解できるものではないとも思います。
 理性的には、積極的安楽死は論外にしろ、消極的安楽死については本人と家族の意思に委ねるべきだろうというのが、筆者自身も含め大方の意見(いわゆる尊厳死)ではないかと思いますが、これは人間のケースです。こと相手が動物たちとなると、人間の場合と大きく異なるのは、言葉による意思の確認ができないということであり、実質すべてがヒトでいうところの積極的安楽死ということになります。動物の安楽死に関しては、あまりにもあっさりと安楽死を勧め、あるいは受け入れてしまう傾向が欧米で強いことに、筆者は強い違和感を覚えます。欧米人と日本人との動物観の違いを強調するのは、しばしば動物に不遇を強いることを合理化するための方便として用いられるので、はっきり言って嫌いなのですが(自分たちの所業の反省材料に使うのならまだしも‥)。税金で尊厳のかけらもない大量殺処分を行っている日本人の身としては大きなことはいえませんからね‥。
 ところで、欧州の一部などの法的な(ヒトの)尊厳死の規定では、48時間といった間隔をおいて複数回確認をとるよう定められています。しかし、言葉は嘘をつくものであり、心は絶えず変化するものです。たとえモルヒネ漬けでも激痛を逃れられない状態に陥ったとしても、48時間、あるいはそれ以上の間に1秒たりと「生きたい」思う瞬間がないと言い切れるでしょうか? 何度確認をとったところで、決断が揺らぐ可能性が完全なゼロになるわけではありません。それでも、自分自身のことであれば、死を選択するのもかまわないでしょう。
 しかし、相手が他者の場合は? 保護者のニンゲンに全権を委ねられてしまう動物の場合は?
 「自分だったら苦痛に耐えるのが嫌だから……」という理由を持ち出すのは簡単です。動物実験を始めとする、不必要な、不自然な、理不尽な苦痛に対する指摘であれば、それは正しいことでしょう。もちろん、苦痛はニンゲン以外の動物だってないほうがいいに決まっています。しかし……命あるものすべてが等しく直面するところの"死"について、自然を差し置いて自らが断を下すことを、どのように正当化できるでしょうか? たとえその子が、命の灯が消える寸前だとしても、苦痛に白旗を振るより、なお"生ききる"ことを選ばないと、断言することができるでしょうか?
 自分の立場に置き換える、相手の立場になってみる、そのことは必要な発想だと思いますが、生かすことではなく死なせる(殺す)ことを正当化する理由にするのには、筆者は抵抗を覚えるのです。きれいに死にたい、苦痛なしで死にたい──こうしたニンゲン特有の尊厳死の考えを、しかも積極的安楽死にまで当てはめることはできないと思うのです。むしろ、ニンゲン以外の動物にとっての尊厳死とは、最後まで生ききることなのではないだろうか?‥と。命というものが、たった一つきりであり、一度失われれば本当に、二度と、決して取り返せるものではないのだという現実を受け入れられるかどうかで、結論は違うかもしれませんが……。
 うちの子が死に直面したとき、人に安楽死を勧められ、私は怒鳴り返して電話をたたき切りました。一方で、獣医(近所のがまったく信用ならなかったので電車で一時間かけて通っていたのですが)には安楽死させたものかどうか相談もしました。迷いから自由になど決してなれはしませんでした。押しとどめてくれたその先生には感謝しています。私は、うちの子を安楽死させなかったことを、後悔しています。激しく。しかし、もしその選択をしていたとしたら、その後悔はこんなものではすまされなかったでしょう。自分を許すことなど絶対にできはしなかったでしょう。最後の数日の間、その子は食事も水も睡眠もとらず喘ぎ続けるばかりでしたが、それだけではなかったのです。決してそれだけではなかったのです。私とその子との時間は。

posted by カメクジラネコ at 02:58| Comment(3) | TrackBack(0) | 社会科学系
この記事へのコメント
赤子の死体を大切にするゴリラの話思い出した。
ヒトがやったら・・・・
Posted by あはは at 2008年08月23日 21:34
ゴリラってヒトに近いので子供が死んでも
その現実を受け入れられない事が
あるらしい。
もう一つ思い出した。
テレビでやってたネコ屋敷の老婆
かわいそうといって
ネコを数十匹集めたあげく糞尿にまみれた
ネコ屋敷は近所の迷惑の元だそうだ。
捕鯨をやめても鯨がゴミになるだけの結果に
なりそうだ。
すなわち海洋汚染の元凶にもなる可能性もあるわけだ。


Posted by あはは at 2008年08月23日 23:46
>あははさん
ニホンザルやイルカでも観察例があるよ。他にもあると思うけど。
猫屋敷と野生動物は全然違うよ(--;
汚染の発生源は100%すべて人為的なものだよ。ニンゲンなんてたかだか600万年しか地上にいないし、汚染らしい汚染を始めたのはそれこそ千年そこらだよ。
捕鯨をやめて汚染になる可能性はゼロだから安心してください。そういう科学性の一片もない嘘を信じちゃダメだよ。
Posted by ネコ at 2008年08月24日 02:14
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