2016年08月03日

びっくり仰天、都合の悪い事実に蓋をする非科学的な水産庁広報資料

 水産庁が実に驚くべき資料を立て続けに公表しました。


 上の資料は、「水産基本計画の変更」について審議するべく、7月13日に水産庁で開かれた水産政策審議会企画部会で使用されたもの。
 そして、下の資料は、農水省ホームページにもあるとおり「消費者の皆さん、農林水産業関係者、そして農林水産省を結ぶビジュアル・広報誌」(引用)。ちなみに、編集を下請けしているのはKADOKAWA。
 何が驚き≠ゥといって、水産資源状態の枯渇とそれに伴う国際規制強化の動きについて、乱獲の当事者である日本の漁業者とそれを監督する責任のある水産庁ではなく、別の誰かの所為にしていること。
 その誰か≠ニは、具体的にいうと「外国(中国・台湾等の周辺国および島嶼国)」「環境保護団体」そして「クジラ」──。

 上掲のファイルをもとにツッコミを入れていきましょう。まずは審議会資料の方から。
 プレゼン3ページ目、真ん中の段、1番右と左、「科学的根拠に基づかない規制」「『環境保護』勢力の圧力増大」は言っていることがほとんどダブっていて2つに分ける意味がありません。まあ、強調したかったんでしょうが・・。
 そのうえ、3番目は科学的根拠に基づ≠ゥず、札束外交・力ずくで言うことを聞かせるやり方を掲げているのですから、自己矛盾もいいところ。
 捕鯨に関しては、「科学的根拠に基づく生物資源の利用全体の観点も見据え、調査捕鯨の継続による商業捕鯨を再開」と、なにやら国語の苦手な中学生の作文状態・・。
 「U−2.太平洋マグロの国際的な資源管理」、【課題】で日本自身の乱獲に一言も触れられていません。
 最大消費国として重い責任を持つはずの日本が、経済規模でも漁業への依存度でも比較にならない太平洋の小さな島国にその責任をなすりつけている図は、みっともないの一語に尽きます。
 前月には同じ企画部会で国内の資源管理について議論がなされ、クロマグロについてもちょびっとだけ触れられましたが、大手巻き網の産卵親魚漁獲集中問題への言及はなし。
 実はこのとき、企画部会委員でもある全漁連常務理事の大森敏弘氏が、とんでもない意見を述べています。


 気候変動、外国漁船の影響のほか、開発行為等、水環境政策など、さまざまな資源の変動要因があるのではないか。これらをしっかりと分析・評価する精度をあげる研究をしていくべき。その上で、漁業者の乱獲が減少要因であれば、厳しい管理措置の実施も何ら避けるものではない。(引用)

 大森氏自身が下線で強調しているこの指摘、言い換えれば「自分たちの責任だとはっきりしない限り、いくら魚が減っていようと規制は受け入れず獲り続けるぞ」ということ。
 つまり、全漁連役員の用いる「持続的」という言葉は、水産資源の持続性を保証するという意味でないのです。
 これは非持続的な乱獲志向の大手事業者に常に寄り添う業界団体幹部の認識であり、日本のすべての漁業者の皆さんがそういう感覚に縛られているとは思いませんが・・。
 密漁に関わる日本の裏社会、あるいは温室効果ガスを大量に放出する産業界の責任を追及し、減船や漁獲削減に対する補償を求めたり、国に実効的な規制を要求するのは、至極正当なことでしょう。
 しかし、「じゃあ、俺たちも獲り続けるよ」というのは、海の自然・魚と長年つきあい、配慮してきた人たちの口にする言葉ではありません。
 例えるなら、全漁連のこの指摘は、気候変動による高潮で国土が水没しつつある島嶼国が、「俺たちの責任じゃないんだから、俺たちはCO2をガンガン排出し続けるぞ」と、無頓着に自国を沈めたがるのと一緒です。
 してみると、翌月の審議会で配布された国際管理に関する資料が、すべての責任を日本の漁業者以外に押し付ける内容になっているのは、業界団体の不満を和らげるガス抜きの配慮と見て取れるわけです。
 なお、クロマグロの問題については、漁業問題に精通する茂木陽一氏のブログの解説を合わせてご参照。

■生クロマグロ水揚げ日本一の境港を訪れて
http://uminchumogi.blog111.fc2.com/blog-entry-455.html

 で、P18からが捕鯨。相変わらず部門の規模に似合わない大きな扱いですが・・。

(注1)環境NGOの活動はその後、公海流し網漁業の禁止、マグロ延縄漁業による海鳥の混獲問題、クロマグロやサメの貿易規制提案等、他の漁業・魚種に拡大(引用)

 P19中のこの一文にはもう笑うしかありません。なぜって?

■(資料2) 漁場環境の保全及び生態系の維持|水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/shingikai/pdf/pdf/61data2.pdf
 
 上掲はまさに同じ企画部会で使われたもう一つの資料
 P5に「生物多様性に配慮した漁業の推進」と題して海鳥やウミガメに対する混獲削減に向けた取り組みと一層の改善の必要性が紹介されています。
 そう・・混獲問題に関しては、日本の研究者も米国等海外と協力し、まさに科学的根拠に基づ≠「て、漁業者・国民の理解を求めているところなのです。
 ところが、水産庁自身も率先して漁業者に呼びかけているハズのこうした取り組みに対し、同日に配られた資料1の総論と上掲の記述はまるで「環境保護団体の圧力で、科学的根拠に基づかず仕方なくやる羽目になった」とでも言いたげな様子。
 実際には、環境NGOの指摘に基づく海洋生態系保全のための国際共同研究とは対照的に、科学的根拠に基づかない=A科学≠フ皮をかぶった美味い刺身目的の調査になっているのこそ、調査捕鯨なのです。
 その証拠に、P20は非科学的な珍説のオンパレード。
 環境外交の専門家・早大真田氏もばっさり斬り捨てています。


水産庁の新方針、「クジラのせいで魚が減っているのだ。クジラがどのくらい餌を食べているかはお腹を割いてみなければわからないのだ。だからクジラを科学調査目的でとるのだ」という国際司法裁判所の口頭弁論でもでさんざんけちょんけちょんにされた例の説をまたもや大々的に開陳(p. 20)。
「おなかを割かないと何を食べたかわからない」という理屈に対しては、勿論「じゃあ、なんで特定の種類のクジラばっかりとっているんだろうね。北太平洋で魚など食べ物を食べているのは、日本の調査捕鯨の理屈では、特定のクジラだけなんだ。φ(`д´)メモメモ… 」と外国の科学者たちからこき下ろされている今日この頃です。(引用)

 世界中の研究者から白い目を向けられるようなプレゼン資料を、よりによって国の所轄機関が発表してしまうとは、なんとも恥ずかしい限りです。
 ラッコ先生に倣い、筆者も個別にチェックしてみましょう。

増加したクジラによるこの捕食行動が、漁業に深刻な影響を与えていると懸念されている。(引用)

 まず、「クジラが増加した」という表現が科学的にはきわめて不正確。
 正しくは、「商業捕鯨の乱獲によって激減した鯨種のうち、捕獲禁止後一部は回復に向かっているとみられる」です。
 そして、「漁業に深刻な影響を与えている」ことを立証する論文はどこにもありません。
 まさに非科学的な懸念そのもの。放射脳≠ネらぬクジラ食害脳なのです。
 間引き説を唱えた捕鯨御用学者・大隅氏らが、「鯨類は○○トンの魚を食べる」という、科学リテラシーの弱いネトウヨに受けそうな珍説を披露しましたが、これは南極のオキアミも非商業漁獲対象種も全部ぶっ込んだ数字。
 いずれにしても、数字は「深刻な影響」を意味しません。
 クジラと同じように科学的には意味のない、分類群による大雑把な推計を挙げるなら、魚もイカ等の無脊椎動物もトータルでは鯨類の捕食量を圧倒的に上回ることでしょう。魚(商業漁獲対象種)と魚(非商業漁獲対象種)を分けても、やはり同様にクジラの上をいくでしょう。
 単位体重当り摂餌量で比較すれば、代謝の高い鰭脚類や海鳥類が鯨類を上回ることも確実です。これは食害の効果≠ェより高いことを意味します。
 付け加えれば、資料2には「有害生物による漁業被害防止対策の推進」の項もあるのですが、そこに記載があるのは大型クラゲ・トド・ザラボヤのみ。クジラへの言及はありません。
 まじめな研究者であれば、水産庁所属であっても否定するのが当たり前の話なのです。

 水産庁は、生態系を構成する野生動物にすぎないクジラを、まるでエイリアン、ヒトに対抗する文明種族か何かのように、「クジラと漁業の競合」を掲げています。
 「生態系の一部であるクジラ」と、経済の論理で動く人間の「漁業」とでは、天と地ほどの開きがあります。
 水産庁が故意に狙った$}説に対抗すべく、こちらもなるべくわかりやすいよう図を用意してみました。

oomachigai.png

 食害論については、先日更新したこちらのまとめとリンク先をご参照。

■間引き必要説の大ウソ|拙HP
http://www.kkneko.com/mabiki.htm

 トンデモ図説の隣、P20の右側について。
 文章自体を正しく直してあげましょう。このプレゼンを作成した庁の担当者が国語と水産学双方に疎いとしか思えないのですが・・

2.このため鯨類資源調査においては、致死調査の一貫として、鯨類の胃内容物を調査。
  鯨類資源調査の主目的
(1)致死調査の例
  致死調査によってわかる情報
●資源の構成(耳垢栓による年齢組成分析など)
●系群の分布(組織サンプルの遺伝解析)
●摂餌生態(胃内容物)
(2)非致死調査の例
  非致死調査によってわかる情報
●資源量(目視による個体数推定)
●資源の構成(組織サンプルの化学分析)
●系群の分布(組織サンプルの遺伝解析)
●摂餌生態(組織サンプルの化学分析、バイオロギング)

 筆者が青字で付け足した、水産庁が省いた項目について補足。
 RMP(改訂管理方式)では年齢構成の情報自体不要。日本はこれを調べる目的を掲げて調査捕鯨をやっていますが、そもそも「必要不可欠」な作業ではないのです。日本の主張する精度の改善とは、「調査捕鯨のデータを活用すると、もしかしたら捕獲枠を1割くらい増やせるかもしれない」という話で、商業捕鯨再開の前提でも何でもありません。そのために必要な年齢査定は、DNAメチル化技術で非致死調査によっても可能。後は精度の問題。その精度でなければならないという理由もやはりないのですが。
 摂餌生態については、胃内容物調査はその場限りのスナップショット的情報しか得られないため、むしろ非致死調査の脂肪酸解析の方が優れています。

 続いてP21。
 「イルカはIWCの管理対象外」とあるのは間違い。正確にはまだ規制対象外」。小型鯨類も国連海洋法条約のもとで国際機関が管理するのがスジですが、現在できておらず、IWCできちんと管理・監視すべきだという議論が続いています。
 「科学的根拠に基づく適切な資源管理の下で実施」
 現行では日本の独断で管理しており、イシイルカ等で適用されている管理方式(PBR)を太地の追い込み猟の対象種に対しては恣意的に適用しないなど、科学的にも大いに問題があると批判を受けています。
 「反捕鯨団体による妨害活動」について。
 日本側もLRAD、放水等人命に関わる応戦をしているので五十歩百歩。いずれにせよ、いま沖縄の辺野古や高江で海保と機動隊がやっている非人道的・暴力的な行為に比べれば百倍も千倍もマシ。
 「イルカ漁業への抗議・妨害」について。
 太地イルカ猟関係者はWAZA/JAZAに嘘をついて「生体用と食用の捕獲を分ける」という約束を破ったり、ハナゴンドウの捕獲枠を超過した疑いがあるなど、甚だ信用が置けません。監督者でありながら物申すことができない県・水産庁の責任でもあります。
 世界イルカデーの行動は合法的な市民のデモ。
 先進国であれば市民誰にでも認められた権利です。アイヌの存在そのものを否定したり、在日外国人に対し「殺せ」「レイプしろ」と叫んで子供の安全を脅かす卑劣で陰湿な極右団体のヘイトスピーチとは次元が違います。在特会は(勝手に?)何度か太地に捕鯨・イルカ猟の応援に入っていますが、水産庁は沈黙を守っています。これでは水産庁自身の人権感覚が問われても仕方ありません。
 これは同時に、以前と異なり、過去に日本の捕鯨会社が犯した乱獲や密猟という大きな過ちを認めるどころか、嘘で塗り固めて否定しようとする歴史修正主義と相まって、国際社会に対する日本の国全体のイメージを大きく失墜させるものといえます。

 まとめのP22「基本計画における方向性」
 この1ページだけで「科学的根拠に基づく」と4回も連呼しているのが可笑しくなってしまいます。トンデモ図説のせいで台無し。
 従来の捕鯨政策の延長で、とくに目立った変化はないのですが、今まで以上に北朝鮮を髣髴とさせる硬直した姿勢が見て取れます。
 「生物資源全般の科学的根拠に基づく持続的な利用」を謳うなら、南極の自然に手を出す前に日本がやるべきことはあるはずです。

(1)なぜICJ判決で負けたか、国民にきちんと説明し、責任を果たすこと。
 国民に対して嘘をつき続けるのをいい加減やめ、水産庁トップの「美味い刺身の安定供給のため」発言によって自ら首を絞めたことを明示すること。

(2)公海調査捕鯨をただちにやめること。
 NEWREP-Aの続行は、日本に「国際法的・科学的な正当性」がないことを証明し、世界の信頼を失うばかりです。

(3)南極のクジラ殺しのみを神聖視するダブスタをやめること
 オオハクチョウやキタオットセイやハダカイワシ、多くの昆虫、食用に適さないわけではなく市場がないという理由で網にかかりながら遺棄される多くの魚等、クジラと同じ意味において科学的・持続的に利用可能でありながら日本が現在(ほとんど)利用していない生物資源はいくらでもあります。
 少なくともそこには、南半球のたくさんの人々が生態系サービス・非消費的な経済的価値に浴している野生動物をよそから乗り込んで強奪していく行為によって生じる、彼らの感情を逆なでし、生かす文化≠踏みにじり、友好国との外交関係に支障を来たすという、きわめて高い障害はありません。
 筆者自身は無理にやれというつもりはありませんけど……。

(4)乱獲体質を改め、真の持続的水産業先進国へと脱皮すること。
 日本には水産物の持続的利用で世界を仕切り、発展途上国を指導する資格などまったくありません。
 論より証拠、世銀レポートでも、漁業生産で世界平均23.6%の成長が見込まれる中、唯一日本のみがマイナス成長(-9.0%)と予測されている国なのです。
 日本は持続可能な漁業のできない落第生≠ナあることを示す何よりの証拠。国民に対して嘘をつき続けるのは、北朝鮮にも劣る、先進国としてあまりにも情けないことです。

■世界漁業・養殖業白書 2014年(日本語要約版)|FAO
http://www.fao.org/3/a-i3720o.pdf
■世界銀行レポート FISH TO 2030:世界の漁業は成長し、日本漁業のみが縮小する|勝川俊雄公式サイト
http://katukawa.com/?p=5396

 V章の「海外漁業協力等の推進」、札束外交については、以下をご参照。

■捕鯨推進は日本の外交プライオリティbP!? ──IWC票買い援助外交、その驚愕の実態──|拙HP
http://www.kkneko.com/oda1.htm

 さて、P22の最下段、「政府広報の展開、国内・海外へのマスコミの情報発信のやり方を工夫」の一環といえるのが、農水省広報誌affの鯨特集。
 引き続き、ざっとaffの記事をチェックしていきましょう。

 P1、「日本遺産に認定された鯨と生きた人々の物語」
 日本遺産認定に関しては以下の記事を参照。残念ながら、太地をはじめとする古式捕鯨も、やはり持続性のない乱獲の歴史に他なりませんでした。

■哀しき虚飾の町・太地〜影≠フ部分も≪日本記憶遺産≫としてしっかり伝えよう!|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/175388681.html

「畏敬(いけい)と感謝の念を持ち大切に利用されてきた鯨」
 従来はアイヌの捕鯨につながる縄文時代の真脇遺跡の例を挙げるケースが多かったのですが、次頁も含め見当たりませんね・・。代わりに登場したのが壱岐・原の辻の遺跡からの出土品。
 ただ、同地方は大陸・朝鮮半島由来の出土品が多く、捕鯨技術もおそらく大陸からもたらされたものでしょう。鯨と船(?)が線刻されたと見られる土器は紀元前1世紀のもので、時期的にも新宮の徐福伝説と重なります。

■太地の捕鯨は中国産!? 捕鯨史の真相|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/18025105.html

 短いうえに強引にまとめた段落ですが、捕鯨問題ウォッチャーは既にご承知のとおり、日本人はこの文章のように単純化された畏敬と感謝の念のみでない、もっと複雑に入り乱れた感情をもってつきあってきたのです。
 江戸時代初期から捕鯨の乱獲と非人道性に対する批判もあれば、仔鯨殺しへの悔恨の情もあれば、「鯨一つ捕れば七浦枯れる」と戒める地域もあったのです。
 そして、鯨油を売って外貨を獲得することしか頭になかった戦前の捕鯨会社は、南極海で獲ったクジラの肉の大半を捨てていました。大切に利用してきた民族がやることではありません。

■鯨供養碑と仔鯨殺しに見る日本人のクジラ観の多様性|Togetterまとめ
http://togetter.com/li/977982
■真・やる夫で学ぶ近代捕鯨史|拙HP
http://www.kkneko.com/aa1.htm

「捕鯨の近代化と環境保護主義の台頭」
 規制と環境保護の台頭を自ら招いた日本の捕鯨産業による乱獲と密猟について、一言も言及がありません。
 「食料難に苦しんでいた日本人を救ってくれたのが南極海の鯨」に対し、恩を仇で返すとはまさにこのことです。ライターの下境氏の責任ではなく、すべては捕鯨サークル・水産庁が悪いのですが・・。

P2、「畏敬の念を示す祭事や史跡のシンボル」として、ここで北海道のモヨロ貝塚が紹介されていますが、日本という国は先住民アイヌに対して畏敬を示すことなく、和人よりは持続的で歴史の長かった彼らの伝統捕鯨を強制的に廃止させたのです。

■倭人にねじ伏せられたアイヌの豊かなクジラ文化
http://kkneko.sblo.jp/article/105361041.html

 その下には和田浦の小型捕鯨を紹介。
 繰り返しになりますが、「捕鯨の対象は国際管理下にはないツチクジラ」は間違い。正しくは「未規制」です。
 「地元で捕れる物を食べる」とありますが、和田浦の外房捕鯨は北海道沖まで出張っています。地元とはいえず。

 P3。鯨肉は単に割高なだけ。バレニン教≠ノ騙されないように。
 あと、グルメ紹介サイト「クジラ横丁」のドメイン取得者はあろうことにも鯨研。「写真提供/日本鯨類研究所」って、よく恥ずかしくないよね……。
 以下をご参照。

■完全商業捕鯨化に向けKKP発進|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/60376356.html
■鯨料理トンデモ<激Vピ一覧|拙HP
http://www.kkneko.com/shoku.htm

 P4、ここでおなじみ森下丈二氏が登場。東京海洋大教授だけで、現IWC日本政府代表の肩書きがないのが不思議。

 「唐突な商業捕鯨停止提案とIWCでの多数派工作」
今では反捕鯨の立場をとっている国を含め、欧米諸国はかつて鯨油を目的とする捕鯨を盛んに行っていました。1960年代には大規模な母船式捕鯨を展開して乱獲状態となり(引用)

 非常に計算された、狡猾な日本語表現。文字で起している以上、そう断定せざるをえません。
 前半の句点までの主語は「欧米諸国」。後半は主語がありません。
 1960年代、戦後の南極海商業捕鯨の最盛期に最も多く船を出し、トータルで最も多くクジラを殺していたのは日本です。この時期に一番多くナガスクジラとシロナガスクジラを殺していたのも日本
 日本の捕鯨産業の責任について一言も触れない、ここまで卑劣な歴史修正主義が一体あるでしょうか!?

アメリカが唐突に商業捕鯨の停止の提案を行ったのは、1972年6月、スウェーデンで開催された国連人間環境会議でした。(引用)

 さあ、耳タコの陰謀論が出てきましたね・・。
 きわめて不可解なのは、森下氏自身が以前、食害論の否定と同様、日本捕鯨協会/国際ピーアールの世論操作に自分は関わっていないと言わんばかりに「当時に直に関わっていたわけではないので何とも言えません」と発言していること。竜田揚げ効果で態度を翻したのかもしれませんが・・。
 ベトナム戦争陰謀論についての詳細は以下をご参照。

■クジラの陰謀|IKAN
http://ika-net.jp/ja/ikan-activities/whaling/324-the-whale-plot-j
■検証:クジラと陰謀|Togetterまとめ
http://togetter.com/li/942852
■「ビハインド・ザ・コーヴ(Behind the Cove)」の嘘を暴く〜いろんな意味で「ザ・コーヴ」を超えたトンデモ竜田揚げプロパガンダ映画 |Togetterまとめ
http://togetter.com/li/941637

「捕鯨に関する日本の見解とかたくなな反捕鯨国の姿勢」

 上掲したとおり、南半球ナガスクジラについてはIWC科学委員会で合意された生息数の数字はありません。日本の一部捕鯨関係者が勝手にそう言ってるだけ。

反捕鯨国にとっては、捕鯨国に科学的データを持ち出されてもやすやすと譲歩するわけにはいかない事情もあるのでしょう。
反捕鯨勢力が国際世論を醸成し、今や調査捕鯨にまで「悪」のレッテルを貼ろうとする反捕鯨団体や、鯨やイルカを「カリスマ的動物」として特別視する人たちが登場しています。こうなると科学の範ちゅうの話ではありません。(引用)

 おやおや・・現実と真逆の印象操作をなさってますね。
 国際司法裁判所(ICJ)はなぜ、日本の調査捕鯨を違法と断じたのでしょうか? 「カリスマ的動物」を特別視する反捕鯨勢力が国際世論を醸成したから? ICJまで調査捕鯨に「悪」のレッテルを貼った??
 答えはNOです。その
 日本の調査捕鯨が国際司法機関によって「違法」という事実に即したシンプルな「悪」のレッテルを貼られたのは、判決文にもしっかり記されているとおり、南極産鯨肉を美味い刺身「カリスマ的美食」として特別視する人が日本に存在するからです。反捕鯨国に「いくら科学的データを持ち出されても」、判決直後に永田町で鯨肉パーティーを開いたりする面々に尻をたたかれ、担当官僚も「やすやすと譲歩するわけにはいかず」、看板をかけかえたり、国連の受諾宣言を書き換えるみっともない真似をせざるをえないするわけです。確かに、もうこうなると「科学の範疇」ではありませんけど……。

■ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html
■とことん卑屈でみっともない捕鯨ニッポン、国際裁判に負けて逃げる|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/166553124.html

 「鯨を含む『カリスマ的動物』に対する規制の強化」

 ここで斜めに走るのがお好きな森下氏らしい、トンデモ食料自給論が登場します。

 「多様性の維持」こそが食料安全保障のキーワードなのですが、すでに極端なモノポリー(独占)が進行しているのです。(引用)

 いかにも飢餓と貧困の現場から遠く離れたところで飽食三昧に暮らしている日本の官僚らしい主張ですね・・。
 彼が引用した元FAOの台詞は、国際的な食糧市場を牛耳るGM等のバイオメジャーによって商業作物の種苗が囲い込まれ、途上国で非商業的・伝統的に利用されてきた植物の栽培・利用技術が失われようとしている現状を指したもの。事情は日本においても同様で、地域野菜や雑穀が高齢化・過疎化に加えTPP加入により市場経済への適合をますます迫られることによって、いま絶滅の危機にあるわけです。多額の税金と石油を投じて南極にクジラを屠りにいくことで解決する話ではまったくありません。TPP参入をはじめ、食の多様性を喪失させる方向へと邁進しているのは日本政府に他ならないのですから。国民の目を欺くことで、日本の自給率低下を加速させ、多国籍企業の支配を手助けする効果ならあるでしょうが。
 それにしても、多様性≠ニいう言葉で国民を惑わす手口が原発推進派に実にそっくりです。
 捕鯨がいかに日本の食糧安全保障に寄与しないかについては、こちらで詳細に論じているとおり。

■鯨肉は食糧危機から人類を救う救世主?|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/174477580.html

鯨を前例として、国際会議の場で科学的根拠のないまま、あれもダメ、これもダメと絶滅危惧種の提案や利用を厳しく制限する提案が続出し、ゾウなどの大型の陸上動物、マグロやサメが「カリスマ」のリストに加えられようとしていることです。こうなると、多様性はさらに失われます。(引用)

 そんなにいうなら、いっそ生物多様性条約(CBD)に対抗する食の多様性条約でも提案したらどうかと思いますが・・。
 ゾウ、マグロ、サメと、注意深い管理を求めるだけの生態学的・社会科学的根拠が明確にある野生動物に対し、科学的根拠なく「カリスマ」というレッテルを貼って規制の足を引っ張ろうとする森下氏は、もはや生物多様性の敵といっても過言ではないでしょう。水産庁自身の資料に「生物多様性に配慮した漁業の推進」も入っているのにね・・。
 「未曽有の干ばつや家畜の伝染病が発生すれば、人類は危機的状況」(引用)に陥った場合、南極産鯨肉が2000%助けにならないのは前掲ブログ記事で指摘しているとおり。無知な大衆の危機感を煽るやり方は、過激な市民団体≠フ模倣なのかもしれませんが・・。
 「捕鯨は国家主権の問題」(引用)という日本に右へ倣えの主張をしているのは、日本から多額の援助を受け、農水省から手取り足取りレクチャーを受け、現実的に公海母船式捕鯨を実施する可能性ゼロの国だけです。

「カリスマ的」といった概念を持ち込めば、「私たちの文化は他の文化より勝っている」という文化帝国主義的な議論になりかねません。鯨についても異なる考え方がある。意見の相違があっても相手を尊重する。これもまた、鯨に対する見方の「多様性」であり、まずはこの合意を議論の前提として求めていくべきです。(引用)

 そもそも「クジラはカリスマだ!」と主張している反捕鯨派を筆者は知りませんし、森下氏自身の発明した誘導目的のキャッチコピーだとしか思えないのですが、文化帝国主義≠ヘ森下氏本人のカラーです。南半球の殺さない文化∞生かす文化≠蔑ろにすることといい、アイヌに対するダブスタ発言といい。「意見の相違があっても相手を尊重する」ということをまったくしていないのは、傲慢な超拡張主義的食ブンカを南半球の人々と自然に強引に押し付け続ける日本に他なりません。

■米国紙がみた調査捕鯨とアイヌ|無党派日本人の本音
http://blog.goo.ne.jp/mutouha80s/e/a863ac35990df463fce164c7633863d5
■Japan's whaling logic doesn't cut two ways (LATimes,2007/11/24)
http://articles.latimes.com/2007/nov/24/world/fg-whaling24

「商業捕鯨/先住民生存捕鯨等を行っている国々」

 日本の調査捕鯨の捕獲数を入れないなら意味のない数字。日本はノルウェー・アイスランド産鯨肉の市場となっていることも注意。
 同ページの最後に登場するウーマンズフォーラム魚ですが、NGO(非政府組織)の呼称に似つかわしくない、政府・業界の立場をそっくり代弁する御用団体。詳細はこちら。

■モラトリアム発効と「国際ピーアール」の陰謀|拙HP
http://www.kkneko.com/aa4.htm

 最後のP5は、調査捕鯨の正当化。

持続可能な捕獲量を計算するには目視で得た現在の生息数だけでなく、将来の変動を予測する必要があります。ある鯨種が全体として高齢化していれば今後、減少していくことになるわけです。また若い個体が多くても栄養状態が悪く、成熟が遅れがちだと増えにくいと言えます。(引用)

 持続可能な捕獲量を計算するためのRMPは、生息数のデータのみで将来の変動を予測することのできる安全な方式として考案されたもの。これも繰り返しですが、そもそも調査捕鯨は要らないのです。「必要だから」やっているのではなく、「1割くらい捕獲枠を増やせるかもしれない」という理由でやっているのです。
 クロミンククジラの「栄養状態が悪く」なっているという論文を鯨研はネイチャーに提出、胸を張って宣伝しようとしましたが、統計処理に問題があったと他の研究者に突っ込まれました。なんでそこまできちんと書かないのかしら?
 ICJ判決を受け、今までお座なりにやっていた非致死調査にやっと少しだけ腰を入れ始めたことも、記載がありません。まるで最初から一所懸命取り組んでいたかのよう。それが事実なら、ICJで敗訴することは決してありませんでした。

「北西太平洋における競合の模式図」

 さっきの非科学的きわまりない審議会資料、しっかり使ってますね〜。

例えば南極海ではクロミンククジラの資源が安定していることや、近年ザトウクジラなどほかの鯨種が急増していること、これによって将来、クロミンククジラの餌環境が脅かされてその資源の動向にも影響を与える可能性が否定できないことなど、資源管理をするうえで重要な事実が分かってきています。(引用)

 再掲ですが、以下を参照。

■間引き必要説の大ウソ|拙HP
http://www.kkneko.com/mabiki.htm

 「ザトウがミンクを脅かす」という従来無責任に流布していたのとは真逆の説についてですが、これはあくまで可能性の一つにすぎません。いくつもの可能性が考えられるのですが、特定種の致死調査に特化した調査捕鯨ではそのどれが正しいのか判別することができないのです。詳細は以下を参照。

■調査捕鯨の科学的理由を"後から"探し続ける鯨研|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/18846676.html

 その他、NEWREP-Aの問題点の数々については、前回の記事とリンクをご参照。

■新調査捕鯨NEWREP-Aはやっぱり「美味い刺身」目当ての違法捕鯨だ|拙ブログ過去記事


 大越船長のコメント「調査捕鯨を止めてしまえば、これらの技術は失われ、復活させるのは難しいでしょう。」(引用)について。高齢化や経済的理由で伝統産業の担い手が失われるままに放置されている日本ですが、それらに比べれば近代捕鯨の技術が復活困難だとは到底呼べません。調査捕鯨が科学目的ではないと白状しているに等しいですが……。

 7月号のaffの特集は鯨と鰻の2本立て。
 クジラの5ページに対し、ウナギに割いたのはたったの2ページ、しかも1ページは丸々どうでもいい豆知識解説。
 かろうじて一言だけ「乱獲」と入ってはいるものの、「資源管理は避けられない課題」とあり、「クジラのページに書いてあるとおり日本が持続的利用を推進する国なら、なんで今まで出来なかったんだろう??」とまともな読者なら首をひねるでしょうね。
 そしてやはり、密漁にも密輸にも、絶滅危惧種指定にも、一っっっ言も触れていません。
 この構成だけ見ても、農水省/水産庁が、一体何から国民の目を逸らしたいのかは一目瞭然でしょう。
 こちらに読者アンケートがあるので、鯨と鰻の特集を読んでひどいと思った人は、該当欄の「悪い」にチェックを入れて送っておきましょう!

■農林水産省広報誌「aff(あふ)」2016年7月号アンケート
https://www.contact.maff.go.jp/maff/form/d448.html
posted by カメクジラネコ at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系
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