2016年03月08日

クジラたちの海─the next age─(追記)

 陰謀論が盛り上がったので、小説中にも追記しました・・
 登場(名前のみ)するのは「世界PR」のコンサルタント・桜崎善人氏と、元大日本水産副社長・麦沢國男氏。
 以下に一部を抜粋して紹介しちゃうニャ~
*   *   *   *   *

 捕鯨サークルはマスコミ各社に内通者を送り込んでいる。垂涎物の鯨肉で釣り、欧米に対するルサンチマンの種を仕込むことで、率先して業界の矛となり盾となってくれる強力な捕鯨シンパを、これまで何人も育て上げてきたのだ。中でもとくにひどいのが富士経新聞と公共放送JHKだったが。
 このマスコミに対する懐柔工作は、一九七二年にストックホルム国連人間環境会議で商業捕鯨モラトリアムが採択されたのを受け、危機感を抱いた捕鯨業界が七〇年代後半から裏で推し進めてきたものだ。大日本捕鯨協会が世論操作戦略のアドバイスを求めたのは、通信社にも在籍していた水産ジャーナリスト・桜崎善人氏が代表を務める広告代理店、その名も「世界PR」。 桜崎氏が召集した捕鯨問題懇談会には、大手新聞社や論説委員のほか、作家・芸能人等各界の著名人が名を連ねた。鯨鯢亭の宴のルーツがここにある。
 桜崎氏が最初に考案したキャッチコピーは「蛋白自給論」だった。七〇年代のメディアの論調には「伝統」の文字はひとつも入っていなかった。だが、だれの目からも説得力の乏しいこの主張は受けが悪く、世論の反応は鈍かった。次に登場したのが「伝統食文化論」だ。新たなコピーは大当たりした。保守的な知識人層の間でくすぶっていた、アメリカに対する鬱屈した感情──かつては鬼畜米英と罵り、戦争を挑んで敗れた相手に、安全保障から経済までどっぷり依存し、外交面においても政府自ら追従してきたことへの怨嗟の念≠ノ、火を着けることに見事成功した。桜崎氏は顧客である捕鯨協会宛の報告書の中で、自らの手腕と成果を得々と自讃している。
 さらに、桜崎氏は、ストックホルム会議とモラトリアムが通過した八二年のIWC総会ともに政府代表団メンバーとして参加した麦澤國男氏の証言をもとに、「捕鯨禁止はベトナム戦争から世界の目を逸らすために米国が突然持ち出したもので、日本はスケープゴートにされた」との陰謀論まででっち上げた。これがまた、「人種差別論」とセットになり、米国嫌いで陰謀話の好きな国内オピニオンに絶大な効果をもたらした。
 実際には、ベトナム戦争はストックホルムの会議場でも、米国内でも、終始批判され続けてきた。米国の商業捕鯨モラトリアム提案は、前年のIWC総会で日本がマッコウ規制を頑なに拒んだことで、国内の突き上げがあったからだ。米国は同会議で、多額の途上国資金援助を約束したり、CITES、世界遺産条約、ロンドン条約等、今日の環境保護で欠かせない役割を担っている国際条約の締結に向けたたたき台を出しており、クジラはそれらのパッケージのひとつにすぎない。デタラメな陰謀論は、当時真剣にアイディアを練っていた米国スタッフに対する侮辱以外の何物でもない。
 このベトナム戦争陰謀論には、さらに致命的な欠陥がある。日本は米軍にとって不可欠な補給基地の役割を果たし、特需で最も恩恵に預かった国でもあった。米国をかばって国内の報道機関に圧力をかけ、北爆の真実を訴えようとした、知久の先輩にあたる大物キャスターを降板までさせたのは、だれあろう日本政府なのだ。さらに、ベトナム戦争で展開された米海軍空母タイコンデロガの艦載機が水爆を積んだまま沖縄沖の深海に沈んだ事実を、非核三原則を掲げる日本への核持込と合わせ、白日のもとにさらしたのも、我らがROだった。
 桜崎氏が書いたレポートを茉莉に読まされたとき、業界のエゴのために戦争と核の悲劇を利用してはばからない卑劣な捕鯨サークルに対し、七央斗は胸の内にふつふつと怒りがこみ上げてきたものだ。
 麦澤氏は桜崎氏の著書『クジラの陰謀』の中で、「会議の日程がずれたことを日本だけが知らされなかった! 米国の罠にはめられた!」と、まったく事実に反する相当に悪質な嘘まで吐いている。麦澤氏は、各種の国際漁業交渉の場で捕鯨業界の利益を代弁した後、大日本水産に天下って副社長のポストまで得た、まさに官業癒着の象徴といえる人物だ。米国二百海里内での北洋漁業操業との二択を迫られた日本は、モラトリアムへの異議申立を取り下げたが、最終的に日本漁船が締め出されたことを、交渉当時者として猛烈に恨んでいるらしい。遠洋漁業の規制強化は時代の流れであり、逆恨みもいいところだ。いずれにせよ、あからさまな嘘を吐いていい理由にはならない。
 そう……陰謀を企てたのは米国等の反捕鯨国や国際NGOではなく、まさに捕鯨サークル自身だったのだ。
 そして、彼らは今なお闇で蠢き、マスコミを操っていた。

~*七央人*(5)より抜粋

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 本作品はフィクションです。実在の人物、団体、地域、事件とは無関係です・・が、トンデモ竜田揚げ映画よりは捕鯨・イルカ猟問題についてためになる情報がたくさん入ってるニャ~
 クジラを取り巻く海の環境問題についても学べる前作・本格的動物ファンタジー『クジラたちの海』と合わせ、ぜひ読んでみてくださいニャ~♪


『クジラたちの海』『クジラたちの海 -the next age-』上下巻・携帯端末用PDFファイルセット

−小説掲載ページ(PDF・HTML)

クジラ・ジュゴン・イルカたちが問う南極、オキナワ、タイジ、そしてフクシマ


☆オマケ
 上巻の挿絵を1枚追加したニャ~
sashieset.png

posted by カメクジラネコ at 23:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 特設リンク
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