2015年12月18日

◇オーストラリアは本当に庭先の自然を荒らす海の無法者&゚鯨ニッポンから潜水艦を買うの?

■最初は中国でなく日本に…豪新首相、18日来日 (12/13,読売)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20151213-OYT1T50010.html
■豪首相、18日訪日を発表 中国通のターンブル氏が日本を優先、相互訪問始まる (12/16,読売)
http://www.sankei.com/world/news/151216/wor1512160023-n1.html
■豪首相、18日訪日=日本は潜水艦売り込みへ (12/16,時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2015121600226
■豪首相が18日に初来日 首脳会談へ (12/16,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151216/k10010342721000.html
■日豪首脳あす会談 (12/17,朝日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12120470.html
■豪首相  18日に来日、安倍首相と会談へ (12/17,毎日)
http://mainichi.jp/articles/20151217/k00/00m/010/047000c
■豪首相、18日に初来日 安保・防衛協力を深化   (12/16,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16H16_W5A211C1EAF000/

 9月の就任後初の東アジア外遊先に日本を選び、メディアから「中国寄り」と見られてきた風評を払拭(ふっしょく)する狙いもありそうだ(引用〜時事)

 前々回のブログでも触れましたが、我らがアベ首相ととぉーっても仲良しだったオーストラリアのアボット前首相が不人気で与党自由党総裁選に敗北。
 代わってこの9月より就任したターンブル首相が、東アジアで最初の訪問先に選んだのが日本──と、いつも政権への気配りに余念のない読売・産経の2紙が見出しで、時事が記事中で自慢げに伝えています。
 まあ、「アジア」に「東」とつけざるを得なかったのは、先月すでにフィリピン(APEC首脳会議)とインドネシアを訪問してるからなんですけどね。
 続けて毎日と日経を読むと、さらなる種明かしが。

 豪州はアボット前首相の9月の訪日を検討していたが、首相が交代したため延期となっていた。(引用〜毎日)

 2014年7月に安倍首相が豪州を訪れた際、首脳の相互訪問を毎年行うことで合意し、今年は豪側が訪問する番だった。(引用〜日経)

 要するに、ギリギリ12月下旬に「しょうがないから足を運んでやるよ」ということだったわけです。
 しかも、滞在時間は1日に満たない15時間で、日本科学未来館へ訪れたり、ホンダのアシモとの会見≠ワで日程に組み込まれてるとのこと(後掲英紙@〜)。
 日本の保守系メディアがはしゃいだ裏には、時事報道にもあるとおり、蜜月関係を築いたアボット前首相とは一転、ターンブル氏はどちらかというと親中派とみられ、危機感を抱いていたこともあるでしょう。
 上であんなに喜んだ産経なんてこれでしたから。

■日本にとって“寝耳に水” 新首相のターンブル氏「あまり情報ない」 (9/15,産経)
http://www.sankei.com/world/news/150915/wor1509150007-n1.html

 日本政府高官は14日夜、「辞めるのか。知らなかった」と驚きの表情を見せた。ターンブル氏については「あまり情報がない」(官邸筋)のが現状。(引用)

 ウヨ産経にペラペラ話すだけあって、無能かつよその国に対して失礼きわまりない政府関係者≠烽「たもんです。。
 何にせよ、「中国より順番が先かどうか」というだけのことに、大手メディアが一喜一憂して大げさに書き立てるようじゃ、どこからも「日本はチョロイ国だ」と思われそう・・・

 で、本題のクジラ。
 当然話題に上るであろう、先週船団が日本を発ったばかりの違法&゚鯨問題に関して、毎日と朝日、NHKはクジラのクの字、捕の捕の字も触れてません。読売では「会談で議題になることも予想される」(引用)。
 ちなみに、訪問部隊地位協定に触れているのが時事、産経、日経。NHKは「安倍首相との会談や夕食会」が最重要事項と考えていそう・・。
 駆け足の日程もさることながら、一体捕鯨問題は両首脳会談で遡上に上るのでしょうか?
 日本の国連ICJ受諾宣言更新問題を、海外報道に続いていち早く日本語で報じたメディア、NNA.ASIAは少し詳細な事情を伝えています。

■〔政治スポットライト〕ターンブル首相18日に訪日、捕鯨問題も協議へ (12/17,NNA.ASIA)
http://news.nna.jp.edgesuite.net/free/news/20151217aud004A.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151217-00000009-nna-asia

 ターンブル首相は、首相就任後20カ国・地域(G20)首脳会合や国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)などで安倍首相と会談を行っているが、今回の訪問で潜水艦建造と捕鯨問題という重要な問題を正式に協議することを重視したとみられる。(引用)

 一方、公開は早いものの、捕鯨問題に関してはひどく偏向しているニュースフィアは、またもや欧米メディアの報道姿勢を意訳的にネタとして扱っています。

■多忙でも訪日を優先する豪新首相の意図は? 一部欧米メディアは捕鯨問題に強い関心 (12/17,ニュースフィア)A
http://newsphere.jp/politics/20151217-2/

 日豪間のビジネスの話や、アボット路線を引き継ぐ程度で目新しさのない軍事提携強化の話より、国際社会がICJ判決後の南極海の調査捕鯨再開問題に集中するのは、あまりにも当たり前っちゃ当たり前の話。
 同メディアの田所記者は、ジャーナリストでありながらどうもマイナーな島国日本人視点から離れることができないようですね。
 対中安保・南シナ海問題については後ほどさらに解説することにして、一応主な海外報道のリンクを張っておきましょう。

■Turnbull urged to raise whaling during Japan visit (12/1,豪SBS)
http://www.sbs.com.au/news/article/2015/12/01/turnbull-urged-raise-issue-whaling-during-visit-japan
■Malcolm Turnbull in whirlwind Tokyo trip (12/16,豪シドニーモーニングヘラルド)
http://www.smh.com.au/federal-politics/political-news/malcolm-turnbull-in-whirlwind-tokyo-trip-20151216-glp88t.html
■Turnbull to talk whaling in Japan (12/16,豪スカイニュース)
http://www.skynews.com.au/news/politics/international/2015/12/16/turnbull-to-talk-whaling-in-japan.html
■Whaling on the Agenda as Australia’s Turnbull Visits Japan (12/15,米ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-12-15/whaling-on-the-agenda-as-australia-s-turnbull-visits-japan
■Malcolm Turnbull's flying visit to Japan to include 'special time' with Shinzo Abe (12/16,英ガーディアン)@
http://www.theguardian.com/australia-news/2015/dec/16/malcolm-turnbulls-flying-visit-to-japan-to-include-special-time-with-shinzo-abe

 こちらはちょっと面白いオピニオン記事。

■Japan's real national security task is to offset a falling population (12/15,豪ファイナンシャルレビュー)
http://www.afr.com/opinion/japans-real-national-security-task-is-to-offset-a-falling-population-20151215-glokea

 海外報道は多くがICJ判決について触れられ、国際NGOのコメントも紹介しています。
 詳細は記事をチェックしてもらうとして、ここで日豪両政府の公式発表を比較してみましょう。

■Prime Minister to visit Japan (12/16,オーストラリア首相公式HP)
http://www.pm.gov.au/media/2015-12-16/prime-minister-visit-japan

Prime Minister Malcolm Turnbull will travel to Tokyo on his first trip to North Asia as Prime Minister on 18 December.
Australia’s relationship with Japan is a sophisticated special strategic partnership built on common values and a shared view of the world and the region.
Japan is our second largest two-way trading partner and a major investor in Australia. Our economic relationship is broad-based, encompassing joint business ventures, trade and investment, education and science, sport and culture, energy and agriculture.
The first year of the Japan-Australia Economic Partnership Agreement, which entered into force in January 2015, has seen an increase in exports of a range of products. Australia and Japan are both parties to the recently-concluded Trans-Pacific Partnership agreement, which will usher in a new era of economic growth and opportunity across our region.
Japan is a leading innovator, and the Prime Minister’s visit to Japan will be an opportunity to build strong ties in creating a research and business culture that incentivises and rewards innovation and entrepreneurship.
In their bilateral discussions, Prime Ministers Turnbull and Abe will discuss all aspects of the Australia-Japan relationship, including economic and trade relations, security and defence cooperation, and Australia’s concerns about Japan’s decision to resume whaling in the Southern Ocean this summer.引用)

■ターンブル・オーストラリア連邦首相の訪日 (12/16,外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_002789.html

1 12月18日,マルコム・ターンブル・オーストラリア連邦首相(The Hon. Malcolm Turnbull MP, Prime Minister of Australia)が実務訪問賓客として訪日します。
2 滞在中,安倍晋三内閣総理大臣はターンブル首相と会談するほか,夕食会を催す予定です。
3 ターンブル首相の訪日は,我が国とオーストラリアとの「特別な関係」を一段と深めるものと期待されます。(引用)

■ターンブル・オーストラリア連邦首相の来日について(12/16,首相官邸)
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201512/16_a.html

 日本とオーストラリアは、基本的価値と戦略的利益を共有する特別な関係であります。両国関係の発展は、日本、オーストラリア両国の国益、そして地域と国際社会全体の平和と繁栄に資するものと認識をいたしております。(引用)

 ご覧のとおりで、オーストラリア側は二国間で議論すると明言しているのに対し、日本側の公式発表の中には捕鯨に関して言及がまったくありません。
 これまでも、政権に関わりなく、両国の首相・外相等政府要人同士の会談があった際、外務省の発表では一言入っていればマシな方という具合でした。
 残念ながら、オーストラリア側も、「ともかく言ったぞ」と国内向けにアピールできればいいという程度(安倍首相と中韓首脳との立ち話よろしく!)で済ませてきた点は否めませんが。
 ところで、安倍首相殿。貴自民党の鶴保庸介参議院議員は公の場(地元紙の公式HP)でこんなこと言っちゃってますよ?

■捕鯨文化を粘り強く発信 佐々木さんの映画制作に支援を (鶴保庸介|わかやま新報・国会議員レポート)
http://www.wakayamashimpo.co.jp/2015/07/20150722_52442.html

こうしたことが続く欧米社会とは永遠に分かり合えないのではないかという不信感、そして埋めようのない価値観の違いに絶望感すら抱きます。安全保障法制が議論されている昨今、今後こうした欧米社会と価値観を共有し、さまざまな事態に連携して対処していくことができるのだろうか、とは私の考えすぎでしょうか。(中略)
例えば同性婚について、これまでさまざまな迫害がありましたが、連綿と続く努力のなかでいまや世界的に容認の方向であるといっていいでしょうし、少なくとも今現在認めていない国々に対して認める国が圧力をかけたり、不満を表明したりすることはないでしょう。(引用)

 「埋めようのない価値観の違い」への疑念について、正直に打ち明けた方がよかないですか?  潜水艦の商談に入る前に。

 少々脱線しますが、代表的な捕鯨族議員のお1人、鶴保氏の人権感覚と文章力・論理性のなさには正直開いた口がふさがりません。
 地方から国まで、いかにも日本の政治家らしいといえばそれまでかもしれませんが・・。
 いったい誰に向けられたアイロニーなのやらさっぱり不明ですね。
 仮にも国会議員なのですから、日本が同性婚を認めずLGBTへの差別が残る数少ない先進国であるという事実を知らないほど愚か者ではありますまい。
 とすれば、このちぐはぐな文章の趣旨を、実情に合わせて何とか無理やり解読すると、鶴保議員が言いたいのは、つまり「たとえ世界的に容認の方向にあっても、とある文化・価値観〈ex.同性婚、クジラを殺さない文化、南極の自然を貪らない文化〉を認めない国〈ex.日本〉に対して、それを認める国が文句を言ったり圧力をかけたりしてはイケナイ」ということなのでしょう・・・
 逆に、同性婚を否定しLGBTの権利が認められていないこの日本の国会議員が、自ら立法によって解決を図ることなく、「(LGBTへの迫害を)認めていない国々に対して(迫害を)認める国(ex.日本)が圧力をかけることはない」なんて無意味で支離滅裂な主張をしているのだとしたら、一刻も早く辞職してもらわないと国と和歌山県がアブナイというものですし・・・
 プーチン政権下でLGBTへの迫害の姿勢を強めたロシアに対し、冬季五輪開催に合わせて強い抗議運動が世界各地で巻き起こったのは、LGBT問題を多少ともウォッチしている方なら承知しているはず。
 国際的に容認されており、認めない国に対しては政府ないし市民によって国際的な圧力がかけられている、特に人権問題に関わる抑圧的・差別的風習≠フ事例は世界に数多く見られます。
 北朝鮮や中国における人権侵害については、日本は声高に非難していますし、それ以外の地域の国に対しても主に価値観を共有する♂「米と歩調を合わせているのではないのですか? それこそ「日本と欧米諸国が共有する最も重要な価値観」ではないのですか?
 わざわざ同性婚を引き合いに出したうえで、アプリオリに「価値観の違いを認めろ、迫害する国に対して迫害しない国が口出しするな!」という主張を有力な政治家が唱えているとすれば、その埋めようのない価値観の違いに対し、欧米諸国とその市民は絶望感とまでは言わぬまでも、強い疑念を抱くんじゃありませんか?
 もうひとつ余談。オーストラリアは日本同様同性婚が認められない数少ない先進国のひとつでしたが、内外の圧力を受けて今まさに変わりつつあります。前首相アボット氏は同性婚反対派だったことが人気凋落の理由のひとつ。


 国連の場で、同性婚の法整備を行わないオーストラリア政府を、アイスランド、アイルランド、オランダ、スウェーデン、スペインが批判しました。
 今年発表された国連人権高等弁務官の性的マイノリティに関する報告書に、各国は同性婚の法制度を導入すべきと記載が入るなど、国際社会は同性婚の法整備(同性カップルへの婚姻の平等の実現)を促す流れに動いています。
 (日本政府も)同性カップルに対する婚姻の平等や同性婚の法制度を整備しない限り、各国や国際人権団体から批判を受け、国際社会での立ち位置にマイナスに働く危険性があります。(引用)

 鶴保議員は、「アイスランド等はけしからん! 同性婚禁止文化を否定する外圧にオーストラリアは屈するな!」とエールを送る気なんでしょうか・・・。クジラ文脈じゃアイスランドはオトモダチ、オーストラリアは敵のはずだけど。。

 そうは言っても、鶴保議員の指摘するとおり、お互いの間に横たわる埋めがたい溝、著しい価値観の相違について正視せずに、美味しいビジネスの話だけすることが、両国のためになるとは思いません。
 それでは、「価値観を共有する緊密な同盟国」と互いを持ち上げたところで、内実を伴わないリップサービス。南シナ海問題をことさらに取り上げる新聞もありましたが、その中国との、懸案を先送りにするばかりの「戦略的互恵関係」と差がないといえます。
 ひょっとしたらこのままじゃ、安倍首相と日本のおべんちゃらメディアは「中国より上に見てくれた! 俺たちのアベのおかげ\(^o^)/」とあっさり伝えておしまい、オーストラリアはオーストラリアで、ターンブル首相が出るときは派手に目立つ「調査捕鯨反対!」ロゴ入りパンツを履いていったのに、日本側には下着を隠した全裸っぽいポーズだけ見せ、自国に帰ってから「安心してください、言ってきましたよ!」とパンツ指してみせるみたいな、茶番劇に終わる可能性も少なくないかもしれませんね・・。
 というわけで、安倍首相や菅長官のいいことづくめの白々しいコメントとは裏腹の、そして鶴保氏ら反反捕鯨派のどす黒い敵愾心では見通せない、今回の両首脳会談と密接に関わる両国の溝について、もっと突っ込んで検証していくことにしましょう。

 今回のターンブル豪首相の訪日の、クジラと並ぶもうひとつのキーが、刺身(by本川)とは別の意味でいろいろ美味しいビジネス、「鉄のクジラ」。すなわち潜水艦
 報道以来、オーストコリアというどちらの国にも失礼な揶揄を好んで使いたがる低次元のネトウヨたちは、「潜水艦なんて売るな!」と息巻いていますが、問題は売り手市場なのか、それとも買い手市場なのか。つまり、どちらの国が交渉のカードを握っているのか、です。
 以下はこの間の豪次期潜水艦問題に関する報道。

■オーストラリアは日本の潜水艦を買うのか (5/23,東洋経済)
http://toyokeizai.net/articles/-/70703
■オーストラリア海軍の次期潜水艦購入交渉、仏DCNS社のバラクーダ型が最有力候補に浮上 (10/28,businessnewsline)
http://www.businessnewsline.com/news/201510281810020000.html
■日本による調査捕鯨再開、オーストラリア政府首脳からは批判・潜水艦購入交渉への影響も (11/30,〃)
http://www.businessnewsline.com/news/201511301508570000.html
■豪潜水艦、日本も現地製造視野で巻き返しへ 一方、技術移転に懸念の声も (10/6,ニュースフィア)
http://newsphere.jp/politics/20151006-3/
■豪潜水艦の受注競争:“技術を全て共有してもいい” どうしても受注したい日本の思惑とは (11/21,〃)B
http://newsphere.jp/politics/20151121-1/

またAFRは、多くの業界消息通が、アボット前首相が2014年末に日本との秘密の取引に署名する寸前だったと確信している、と語る。その計画では、12隻の潜水艦が日本で建造され、メンテナンスのわずかな部分だけがオーストラリアで実施されることになっていた、としている。WSJは、日本はオーストラリアの首相交代によってえこひいきを失った、と語っている。(引用〜B)

 前アボット首相と安倍首相との間で、400億ドルで日本(官民合同、メーカーは三菱重工業および川崎重工業)が受注する話がついていたものが、ドイツとフランスもコンペで入る競争入札にひっくり返ったことを、上掲した英ガーディアン紙が報じています(〜@)。つまり、とんとん拍子でいくかと思いきや、途中でいきなり梯子を降ろされちゃったわけです。そして、頼みの綱だったアボットは降板。
 5月の東洋経済の記事と後の記事を比較すれば、この半年のうちにもますます分が悪くなっていることがわかります。
 後2つの日本語メディア(ニュースフィアは同じ田所記者ですが・・)の解説にもあるとおり、仏DCNS社は豪州政府から他の海軍艦船の調達も請け負っています。しかも、日本が三国の同盟関係を強調してきたはずの米国も仏メーカーを推薦。オーストラリアは自国内での共同開発、共同生産を条件にするなど、どんどん強気の姿勢を打ち出しています。対する日本は、フツーの国≠ヨの格上げにつながる非常に大きな「兵器輸出実績」につながり、咽喉から手が出るほど受注したがっているというわけです。
 一方で、騒ぐネトウヨたちではありませんが、豪国内での生産・技術移転に対しては懸念の声も。「価値観を等しくする国」といってもその程度なのですね。しかも、米国と豪州という2人のトモダチの間に線を引いているわけです。価値観の違いでいったら、クジラを持ち出すまでもなく、3カ国の中で日本が一番ズレていると誰もが思うでしょうけど・・。
 そんな具合で、ただでさえ日本が非常に不利な状況の中、日本はオーストラリアを始めとする国際社会の忠言を無視し、南極海での調査捕鯨を強行すると発表し、船団を南極海へ送り込みました。両首脳会談のまさに直前のタイミングで。

 契約してもらえると嬉しくて美味しい≪鉄のクジラ≫と、刺身にすると美味くて香りもいい(by本川農水事務次官)≪刺身のクジラ≫
 この2つ、「それはそれ、これはこれ」と、本当に無関係に話を進められるのでしょうか?
 実際、過去の両首脳はクジラを他の懸案・交流と切り離すことで見解を一致させてきたといえます。
 しかし、ことはそう簡単ではありません。

 中国より日本を優先したとすれば、安全保障面などで利益を共有していることが大きいだろう。
 例えばオーストラリアは、日米とともに、南シナ海の「航行の自由」を重視している。(引用〜A)

 本当にそうでしょうか?
 それは普遍性のある、重要な共通の価値観といえるのでしょうか?
 「航行の自由」とはそもそも何でしょうか?
 航行の自由の恩恵に最も浴しているのは何かといえば、公海であれ他国のEEZであれ、我が物顔で往来する米国・ロシア・中国等大国の海軍の艦船でしょう。日本とオーストラリアも大国に近い位置づけ。
 それは、表現や最低限度の幸福を求める権利等、市民の自由とは大きく性質を異にするものです。
 どこでの航行が自由かについて、どこに線を引くかについて、各国で意見が異なるだけ。
 従来、米国は尖閣諸島をめぐる日中間の領土問題について、我関せずと口笛吹きながらそっぽを向いていた立場でした。それが、石原元都知事の国有化発言騒動以降、沖縄米軍基地移設をめぐる一連の経緯や、安保法制で今までより一層従属的に米国の意向に沿って負担を肩代わりする政策を打ち出すのと引き換えに、「あれは日本のでいいんじゃない?」と態度をコロリと変えたわけです。
 また、日韓の竹島問題については、米国は依然として我関せずの立場。
 南シナ海では、日米豪の3国でたまたま自由の範囲についての認識が一致しているというだけの話です。
 民主主義・人権といった価値観に比べれば、共有といえるものでさえないでしょう。ただ、線の引き方がある辺りで同じなだけ。
 では、南極海は??

■Humane Society International Inc v Kyodo Senpaku Kaisha Ltd [2015] FCA 1275 | FEDERAL COURT OF AUSTRALIA
http://www.judgments.fedcourt.gov.au/judgments/Judgments/fca/single/2015/2015fca1275
■日本の調査捕鯨「違法」=罰金8750万円支払い命令−豪裁判所 (11/18,時事)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201511/2015111800713
■調査捕鯨で共同船舶に罰金 豪連邦裁判所 (11/18,日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM18H97_Y5A111C1FF2000/

 オーストラリアは国内法で、領海と主張する南極沿岸に「クジラ保護区」を設定しているが、同国領海と承認しているのは数カ国にとどまる。(引用〜日経)

 ご承知のとおり、これはオーストラリア連邦裁判所による判決。

 南極大陸の一部とその周辺海域は、オーストラリアにとって自国の領土なのです。日本は認めていませんが。(米国は同大陸上の一部の権益を留保)
 中国が南沙諸島を自国の領土だと主張しているように。日本と米国は認めていませんが。
 日本が尖閣諸島を自国の領土だと主張しているように。中国は認めていませんが。(米国は以前と違い日本をかばうようになった)
 韓国が竹島を自国の領土だと主張しているように。日本は認めていませんが。(米国は特定の立場を取らず)
 ロシアが北方領土を自国の領土だと主張しているように。日本は認めていませんが。

 これらはいずれも、今の段階では国際法のもとではっきりと白黒決着が付けられてはいません。
 ちなみに、南極条約では領有権主張について双方の主張を棚上げしており、否定されているわけではありません。
 南沙諸島に関しては、フィリピンがPCA(常設仲裁裁判所)に持ち込み、ようやく仲裁手続が始まったところ。
 日本の南極海調査捕鯨がICJ(国際司法裁判所)によって明白に違法認定されたのと違って。

 これほどの違いがあるのです。
 これでは、日・米・豪の3カ国が「航行の自由」という普遍的原則・価値観を共有する国とは言いがたいでしょう。

 確かに、領土・領海問題はどこの国であれセンシティブです。
 「軍を動かせ!」「他国の艦船の侵入と違法な活動を許すな!」という声がそれぞれの国で沸き起こるのも自然でしょう。
 つまり、オーストラリア人にとっては、日本人にとって尖閣諸島や竹島、北方領土の周辺海域に相当する、自分たちの愛する海が、地球の裏側から赤道を越えてやってくる密猟捕鯨船団に土足で踏みにじられているという感覚なのです。

 すでに、オーストラリアのブランディス司法長官は税関の巡視船派遣を検討している旨表明し、内外で報道されています。
 また日本のネトウヨたちが「なんだ税関の船か」とせせら笑いそうですが、正確にはACBPS(税関国境警備局)
 オーストラリアの海上保安体制は諸事情でグチャグチャしてるのですが(下掲C参照)、2013年に一応法整備され、ACBPSの1セクションであるBPC(国境警備司令部)には海軍も関与しています。
 日本の海上保安庁、あるいはそれより中国の海洋警察に近い存在といっていいでしょう。

■Maritime Powers Act 2013 - C2013A00015 |Australia Government Comlaw
https://www.comlaw.gov.au/Details/C2013A00015
■オーストラリアの海上保安体制と2013 年海洋取締権限法|国立国会図書館C
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8433522_po_02590010.pdf?contentNo=1
■防衛駐在官の見た中国(その22)−中国海警は第2の中国海軍−|海上自衛隊幹部学校
http://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/topics-column/col-071.html

 以下はCからの抜粋。p150,151の図1と図2もご参照。

 BPCが法執行活動を行うことのできる同国の関係海域には、領海、EEZ、EEZ 外延の大陸棚区域、海洋保護区等が含まれる。(〜p149)
 (2013 年海洋取締権限法)第3 章「海洋取締権限」で定める海洋取締権限は、@船舶・施設・航空機への乗込み及び陸地への立入り、A事情聴取等の情報の取得、B場所や人物の捜索、C物品の検査及び確保、D文書記録類の複写、E武器等の押収・留置、F船舶や航空機の抑留、Gオーストラリア法に違反する行為の停止要求など広範に及んでいる。(〜p154)

 同国法では、南極大陸の一部と南極海も、BPCの権限が及ぶ「同国」の地理的範囲に帰属するという扱いになるわけです。なお、同法第41条では「国の間における権限の行使」として、公海上の外国の船舶に対する取締権限に制約を設けていますが、オーストラリア国内法および国際法・国際間の合意に違反する可能性がある場合には「逮捕」「行為の停止の要求」も可能。令状の取得も不要。
 ICJの判決および同国連邦裁の判決は、BPCの活動に間違いなくお墨付きを与えるはずです。国際法に反する日本の密漁船団に対し、尖閣諸島海域領海内に出入りする中国艦船に対する日本の海上保安庁や海上自衛隊と同程度のアプローチを可能にするでしょう。今のところ日本の海自は哨戒機までで船は出してませんけど。
 同国内で日本のネトウヨと重なる層がどのくらいいるか知りませんが、SSCSの支持層も厚いのですから、「なんで毅然とした態度を取らないんだ!」「撃沈しろ!」と騒ぐ人たちが出ても何の不思議もないでしょう。
 法的にも正義を遂行する立場のACBPS/BPCが、きっと無法者の海賊を取り締まり、成敗してくれるに違いないと期待する人たちがいても。SSCSや、小笠原周辺に大挙して出没した中国のサンゴ密漁船団に対してそういう感覚を抱いている日本の反反捕鯨ネトウヨたちとそっくり同じように。

 さて、ターンブル首相殿。そして、安倍首相殿。
 「刺身のクジラ」と「鉄のクジラ」の話、本当に切り離せると思いますか?
 両国民が納得すると思いますか?
 自国の国土・領海を守るのはオーストラリア海軍にとっても主要な任務のはずで、そのためにこそ次期潜水艦の開発を考えているのではないのですか?
 日本が自国の自衛隊(安倍首相いわく「わが軍」・・)の潜水艦を中国、ロシア、韓国から調達することが、いったいありえるでしょうか?
 そんな話がポロリと漏れ出ようものなら、反反捕鯨ネトウヨより2桁、3桁多いであろう国民が、超党派から成る捕鯨族議員より多い国会議員が猛反発して、いくらマスコミがそろってヨイショしてきた安倍首相といえど、早晩退陣に追い込まれるんじゃありませんか?
 オーストラリアが自国の次期潜水艦の共同開発相手として日本を選ぶのは、それとまったく同じことです。
 いいんですか、それで?

   ※ ※ ※


就役後6月8日からインド洋において通商破壊任務に従事し、輸送船やタンカーなど7隻を撃沈している。この際、撃沈した船の乗務員に対して銃撃を行った。これは第八潜水戦隊司令部より「艦船を撃沈して生じた捕虜はすべて処刑すべし」という命令が出ていたからである。(引用)


・捕虜の虐待
 伊号第八潜水艦による輸送船「ジーン・ニコレット」退去者への機銃掃射
・民間人の殺害・虐待
 潜水艦による溺者への機銃掃射 - 伊号第八潜水艦による「ティサラック」に対する行為、呂号第三三潜水艦によるen:MV Mamutuに対する行為(引用)

 これは、かつて軍国日本の潜水艦が侵した罪。
 前々回記事でも示した、国際法規に背を向ける受諾宣言書き換えに始まる日本の行動……独善主義、超拡張主義、歴史修正主義そのものの捕鯨推進政策に、過去の亡霊を見るオーストラリア市民も少なくないでしょう。
 トモダチのふりをして、相手の顔色を伺いながら、いくらにこやかに握手を交わしても、価値観の違いを脇に置いたまま、お互いの手を血で染めるビジネスだけを推進して、本当に世界の平和に貢献できると思いますか?
 新たな争いの火種を撒くばかりではないのですか?

■オーストラリアに潜水艦を売るな!「武器輸出反対ネットワーク」発足会見&官邸前アクション|レイバーネット
http://www.labornetjp.org/news/2015/1450226473756staff01

 個人的には、一日本人として、武器を輸出するなんて願い下げです。
 日本はよその国の戦争で私腹を肥やす死の商人になるべきではありません。たとえ、相手が1番のオトモダチ米や2番目のオトモダチ豪だろうと。捕鯨の是非によらず。
 軍用の潜水艦なんて海の生き物たちにとっちゃ迷惑でしかないしね・・・

 潜水艦を売っても平和はやってきません。
 まず南極から平和を!
 そして、すべての国に、すべての海に、つなげていきましょう。
 そのためにはまず、日本政府が友好国との親密な関係を損ね、野生動物たちの平和の楽園を脅かす違法な捕鯨を断念し、船団を引き揚げることです。
 
参考リンク:
−Why Australia order new submarines from "outlaw on the sea" Japan; the state which ignore the ICJ's decision and trample the international law for "favorite Sashimi"!?
http://www.kkneko.com/english/index.htm
−とことん卑屈でみっともない捕鯨ニッポン、国際裁判に負けて逃げる(拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/166553124.html
−日豪捕鯨会談は3バカトリオの内向け政治ショーで終わった(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/34240502.html
−ICJ敗訴の決め手は水産庁長官の自爆発言──国際裁判史上に汚名を刻み込まれた捕鯨ニッポン(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/92944419.html
−捕鯨ニッポンが最悪のドツボにはまる可能性(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/93046598.html

posted by カメクジラネコ at 03:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系
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