2015年09月08日

またやっちゃった! 産経パクリ記者佐々木氏のビックリ仰天差別・中傷記事

 前回の記事で《クジラの季節》についてお話ししましたが、同様にイルカにもやはり《季節》があります。
 地産地消∞旬≠ニいう大切な伝統がすっかり崩壊してしまったこの国の捕鯨・鯨肉食と異なり、《イルカの季節》は実際に太地でイルカ追い込み猟が行われる9月〜2月にかけてのシーズンを指します。
 もっとも、太地の関係者にとっては残念なことに、こちらも政治的なニュアンスを抜きには語れなくなりましたが。

 全国の農村では、豊作・・というより、実際は天候に左右されがちな収穫物が少しでも一定以上確保できるように、もっと言えば飢饉に見舞われることがないようにと、地区をあげて多大なエネルギーを費やし、祭事が執り行われてきました。そうした伝統行事を数百年の間絶やすことなく続けてきた人々は、それが本当に豊作のための不可欠な手続き≠セと信じ込んでいたわけです。自然に逆らい収量の確保を目指す農業の近代化に伴い、今では伝統的な食のあり方とともに信仰心の方も薄れてしまい、どこでもほとんど形式にすぎなくなっていますが。
 一方、漁業では農業とちょっと事情が異なってきます。魚種交代のような、人間が感知し得ない要因で大きく収量が振れるため、例えば「漁に出る前は○○をしちゃいかん」といった一種の験(げん)担ぎに近い風習が、日本に限らず世界の多くの漁村で見られるわけです。昔の漁民はやっぱりそれを本気で信じていたわけですが。
 クジラ・イルカに関してはさらに異質でした。多くの日本の漁民にとって、クジラは魚を追い込んでくれる恵比寿、豊漁の神様として崇められる存在でした。全国各地にある供養塔のうち、捕鯨と無関係なほとんどの地域のものが、浜辺に打ちあがった恵比寿の祟りを恐れ、丁重に葬ったものだったのです。
 クジラ・イルカを漁獲対象とみなしていた地域でさえ、そうした祭事は豊漁祈願より供養が前面に出ている点が大きな特徴といえます。「やましさの解消」こそ、古の日本の鯨捕りが自ら求めた手続き≠セったわけです。
 付け加えると、イルカ漁/猟に関しては、捕鯨と同様の供養碑はあるものの、確立され定着した豊漁祈願の祭事の類が見受けられません。それもそのはず、イルカは群れの来遊・ストランディングによって突発的に発生する偶発的な収獲物、余禄であり、生活の糧として依存する持続的な漁業として発展し得なかったのです。
 日本の先住民アイヌの場合、それはシャチの神に対してお裾分けを頼み込むものでした。倭人のそれと性格がまったく異なるのは、野生動物の生態に関する鋭い観察眼と、長い時間をかけて培ってきた持続性の故でしょう。そのアイヌの捕鯨は、明治政府によって強制的に禁止され、潰されてしまったわけですが。

 さて、現代のクジラ・イルカをめぐるお祭り騒ぎはといえば──そのどれとも似ても似つかぬもののよう・・
 イルカ漁業関係者〉 − 〈反イルカ猟団体〉 − 〈マスコミ+反反捕鯨ウヨガキ軍団〉 の監視し合いっこ。

 9/1、太地のイルカ猟解禁を全国のマスコミが一斉に報道しました。
 漁業の解禁日については、それが全国的にもある程度知名度の高い特産物である場合、NHKや地方局のニュースで風物詩的に伝えられることは一応あります。毎年恒例の行事であり、乱獲が祟って禁漁といった特殊事情でもない限り、そもそもニュース性のない情報ですけど。
 狩猟の解禁日に至っては、せいぜい地方紙のベタ記事扱い。TVニュースで放映されたのは観た試しがありませんよね・・。全国の猟友会員は減っているとはいえ10万人近く、太地いさな組合とは比較になりません。間違って殺されたくない山菜採りやワンコのお散歩に行く人だって、知っておきたい情報でしょうに・・。
 しかし、イルカ猟解禁のニュースだけは、何か痛ましい事故や凶悪事件が起きたかのごときおどろおどろしさを伴って報じられます。
 強張った表情のレポーター。棘を含んだナレーション。
 そして、画面にズームアップされるのは、漁や収穫の様子ではなく、生産者以外の人物たちの姿。
 初出漁の模様をビデオに収めたい、初競りの様子を見学したい、あるいはさっそく買いたい、食いたいと港を訪れる観光客は、外国人と日本人とを問わずどこにもいるものでしょうけど・・。
 まあ、確かにちょっと違いますね。メッセージの入った横断幕を掲げていたりすれば。

 彼らのパフォーマンスの目的は明らか。
 「マスコミに絵を提供するため」です。
 そして、大勢のマスコミが押しかける理由も同様。
 その「絵≠提供してもらうため」。つまり、商売です。

 現状、反イルカ猟団体(有志含む)は、太地に足を運んだとしても、「マスコミに絵≠流してもらう」以外に打つ手がありません。
 海上保安庁と警察のこわ〜い人たちが見張ってますからね〜。ほんと、お仕事お疲れさまです。
 フェロー諸島ではSSCS(シーシェパード)がデンマーク軍・警察とすったもんだしていますが、日本で同様の事態が起こる心配はありません。もっとも過激な団体であるSSCS自身が、南極海での日本の調査捕鯨に対する妨害行動から撤退し、リソースを北欧に回すと表明しているからです。
 まあ、これまでもずっと、ウヨガキ君から鶴保氏ら捕鯨族議員まで、被害妄想の強いヒトたちが「なんで日本だけが!?」とすねて文句を言い続けてきたのですから、妥当な判断といえるでしょう。太地にはまだ人員を送っていますが、実際問題、監視以上のことをする態勢を整えてはいません。
 これで反反捕鯨派は「日本たたき」という非常に効果的だったキャッチフレーズを失ったことになったわけです。
 今の彼らのやり方は、SSCSも含め、問題が起こっている現場での非暴力直接行動という欧米の市民運動の最もオーソドックスな手法に則っているわけです。
 ですから、警察と海保の過剰な警備体制は単なる税金の無駄遣い以上のものではありません。目を光らせ続けてるまわりさんたちは、議事堂周辺でデモ参加者をチェックする公安や辺野古の沖縄県警よりマシとはいえ、楽じゃないでしょうけどねぇ。いや、ほんと、お仕事お疲れサマです。。

 正攻法とはいっても、反対派がいくら太地町でパフォーマンスを繰り広げたところで、イルカ猟を止める力は何もありません。
 The Cove以来多くの市民がすでに知っていることをアピールする以上の成果は期待できないのです。
 太地のイルカ漁関係者は、ただのパフォーマンスを全無視してしまえます。ウザイというだけ。どの商売でも、商品を買ったうえで難癖を付けてくるクレーマー対策にかけるコストはバカになりませんが、そういう連中とは比較になりません。実質的に無害です。
 妨害がまったくないよそと異なり、太地では水産庁の大甘な捕獲枠の限度いっぱいまで、問題なくイルカ猟を遂行できているのが、その何よりの証拠。
 補助金審査の際に慢性的な在庫超過を指摘され、大赤字に陥っていた鯨研が、大減産の口実を作ってもらってSSCSサマサマ、足を向けて寝られないほど大恩があるのとは対照的。
 今年物議を醸した例の事件、WAZA(世界動物園水族館協会)に有効な圧力をかけたのはオーストラリアの少数精鋭NGO。スイスでの訴訟がきっかけでした。
 JAZA(日本動物園水族館協会)の方針転換という、間接的ながら小さな一歩を進められたのは、太地という現場での直接行動ではなかったのです。
 それさえ、JAZA加盟水族館が抜けて太地のイルカ生体バイヤーの比率が変わっただけで、表面上大きな変化はありません。太地漁協は財政的にノーダメージなわけです。例の牧場構想の名目等で国からの補助金も流れてますし。
 円安といっても、太地にメンバーを長期滞在させる費用はバカになりません。そんな金があったら、時間はかかっても着実に成果を挙げるために、交渉すべき、協力を仰ぐべき相手がいるはず……。
 そして、そのことは海外の保護団体側にも理解されるようになってきました。

■イルカ追い込み漁解禁「頼むから町の平穏を乱さないで」反捕鯨活動に不安いっぱい (9/5,産経)

町漁協などによると、例年より人数は少なく昨年の半分くらいという。(引用)

■クジラの町「警戒」…太地の追い込み漁初出漁、抗議宣言や反捕鯨家の姿も (9/3,産経)
http://www.sankei.com/west/news/150903/wst1509030042-n1.html

解禁日の1日以降、15〜20人のメンバーが太地町入りしているとみられるが、和歌山県警によると、昨年同時期の35人からは大幅に減少。町内に住む男性(67)は「イルカ入手をめぐる問題であれほど騒がれたのに、不気味なくらい穏やかだ」と話す。(引用)
 
■和歌山 太地町 イルカの追い込み漁始まる (9/3,NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150903/k10010214731000.html

この日は、捕獲に反対する環境保護団体などのメンバー、10人ほども姿を見せ、地元の警察が警戒に当たるなか、写真を撮ったり漁の様子を双眼鏡で監視したりしましたが、大きなトラブルはありませんでした。(引用)

 もし、気候変動や野生動物保護関連の国際会議場、あるいは紛争発生時の当該国大使館前でのNGO主催のデモ等で、参加者が10人、20人前後しか集まらなかったとしたら、普通はがっかり・しょんぼりするレベル。
 付け加えれば、ここ数年日本のNGO・市民が主体となったイルカ猟反対デモが都内や大手水族館前で行われているのですが、その参加者は日本人と在日・訪日外国人を合わせ、今年太地町でプラカードを掲げた外国人活動家の倍以上。カウンターの連中も相当な人数がデモを取り巻き嫌がらせを働きました。
 しかし、取り上げたメディアはジャパンタイムズのみ。
 今年の太地の浜辺は、日本のマスコミが「たいしたことない」と取り合わなかったいくつもの市民の抗議行動と比べても、明らかに閑散としていたのです。熱気などありはしなかったのです。

 ところで……NHK報道の「10人」で思い出すのは、沖縄での米軍基地辺野古移設に対する抗議デモを報じた産経記事。

■沖縄、盛り上がらない反対運動 県庁集結は約10人 ('13/12/27,産経)
http://www.sankei.com/politics/news/131227/plt1312270026-n1.html
■「沖縄、盛り上がらない反対運動、県庁集結は約10人」といいつつ、実際は・・・|Togetterまとめ
http://togetter.com/li/608151

 そういえば産経は、先月末の国会議事堂前大規模市民デモについても、一部の区画を切り取って数えたうえで「たったの3万人」と言わんばかりのニュアンスで報じていましたっけ・・。
 どうも、思いっきり過少見積したうえで、「10万人以上でなきゃ盛り上がってるなんて認めない」というのが、産経のポリシーのように見えますね・・。
 「沖縄10人」「国会前3万人」をあざ笑うかのような記事を書いた産経のこと、今回は「太地、盛り上がらないイルカ漁反対運動、浜に集結はたった10数人にがた減り」という見出しでも付けた?
 どうもそうではないみたいですね・・。
 上掲の記事タイトルを見ても、沖縄の基地移設反対デモや全国の安保関連法案反対デモとの扱いの差は一目瞭然。
 ともかく、太地を訪れる活動家は減少したわけです。他に効果的なやり方、取り組むべき対象が見つかったから。
 産経記事中に「あれほど騒がれたのに」というインタビューコメントがありますが、WAZA/JAZA問題が太地での直接行動(≠監視)に左右されずに一定の前進を見たからこそ、益のないパフォーマンスに無駄なエネルギーを注がなくなったわけです。太地が「穏やか」になるのは実に理にかなった話。

 しかし、客観的に見ても、まったく盛り上がってなどいなかったはずなのに、産経以外を含め今年の《イルカの季節》国内報道は例年にも増してヒートアップしていました。
 では、現実に盛り下がっていた太地町の騒動を「盛り上げた」犯人は、一体誰なのでしょう?

■9月1日恒例のパフォーマンス|太地町議会議員 漁野尚登のブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/nankiboys_v_2522

 太地町の町民より日本のマスコミの方が何か非常に関心を持っているのではと首をかしげたくなる今日この頃である。
 日本のマスコミが騒がなければ静かな9月1日だったのではと思った次第です。 (引用)

 引用部分以外も必読。


私は太地に居て,活動家が何かしないかきょろきょろしてますが,見かけるのは,数名が歩き回っているくらい.ふつうに町内で生活していたら,なんら,“活動”は見ません(今のところ).町民の多くもそうです.ニュースで初めて,「あれまあ,こんなことよるわ」と知るわけですわ.(引用)


関西のテレビでは,かなりの時間を使ってイルカ追込み漁の“初日”を報じました.でもね.テレビクルーは活動家の“活動”について回る.だから,数分の“活動”をそれらしく撮影してもらえる.ニュースで見ると一日中,活発に活動が行われているように見えてしまう.これ報道?宣伝??(引用)
 ツイート主の関口氏は『イルカを食べちゃダメですか』の著書で知られる生物講師、ウォッチャーはご存知でしょう。イルカ猟賛成派ながら、公海調査捕鯨に関してはバランスの取れた意見もお持ちで、かなり希少なポジションにいるお方。

 そう……静かな町の平穏を破り、しょぼい抗議活動を大げさに騒ぎ立てた犯人は、日本のマスコミなのです。
 視聴率を稼げるを欲している商売人たち。
 ナショナリズムをくすぐるわかりやすい対立の構図──まさに格好の絵(ネタ)を提供してくれる太地WARSが盛り下がっちゃうと困るヒトたち

 最低限の監視の傍らで形式的に行っているにすぎない活動家らの抗議活動に意味を与えているのは、間違いなく日本のマスコミです。
 英ガーディアンやインディペンデントなど、日本の一地方のイルカ猟解禁を報じた海外メディアもありますが、彼らが使用した絵≠ヘ自国で行われたジャパンイルカデーデモの様子と過去の資料画像。
 「日本のマスコミが自分たちの活動を記録し、連日のようにTV新聞で報じている。この国で注目を浴びている」──その事実が、一部の支援者に対し実績をPRすることにもつながっているわけです。
 つまり、太地のイルカ猟関係者にとってのウザさを倍増させているのも、日本のマスコミにほかなりません。

 イルカ漁業者&反イルカ猟団体&マスコミ+ウヨ応援団による、お互いの思惑が完全にすれ違った《3すくみ状態》
 ここに安定したセイタイケイが出来上がっちゃっているわけです。
 東北大石井准教授が指摘するところの、反捕鯨団体と中央の捕鯨サークル(水産庁+鯨研+共同船舶)との逆予定調和関係の太地版。

3sukumi.png

 え? もう1人の犯人、お騒がせ人物がいるじゃないかって?
 イルカ方面で両サイドから一目も二目も置かれる有名人、リック・オバリー氏のこと?
 確かに、彼は今回の立役者といえるでしょう。
 解禁の報とほぼ同時に、いくつかのメディアでは同一の記事内で、彼の名は大々的に報じられました。
 見出しはそろって「活動家逮捕」
 
 本当に彼は騒いだのでしょうか? 太地を、日本中を、騒がせたのでしょうか?
 御歳75歳にして、日本の優秀な警察と海保隊員から成る厳重な警戒網をかいくぐり、太地漁協が窮地に陥るような何かアクロバティックな非合法アクションでもやらかしたのでしょうか?
 ここまでに開陳した筆者の見立ては全部彼に覆された?
 半ばそういうのを期待してたヒトたちもいたかもしれませんね・・。でも、ハズレです。
 オバリー氏は日本でことさら評判の悪いSSCS(シーシェパード)とは一線を画し、船で体当たりするとか、実験施設を燃やすとか、そういう過激な妨害活動をするタイプの反対派ではありません。日本に対しては特別な配慮が必要だということも一応弁えていらっしゃいます・・。
 斜め方向からの訴訟にも関わったりしたようですが、要するに、少なくとも日本では正当な権利としての合法な活動≠オかしてないわけです。
 
■イルカ漁中止に向けて「対話」を 米活動家、アピール ('10/9/16,共同)
http://www.47news.jp/CN/201009/CN2010090601000628.html

日本のイルカ漁を批判的に描いた米映画「ザ・コーヴ」に出演したイルカ保護活動家リック・オバリーさんが6日、東京都内の日本外国特派員協会で記者会見し、日本でのイルカ漁の中止に向けて「漁業者らと話し合っていきたい」と述べた。
オバリーさんは「自分は反日ではない」と強調。日本の捕鯨活動に反対し、世界各地で調査捕鯨船の妨害活動を行っている団体「シー・シェパード」との連携についても「逆効果だ」と否定した。(引用)

■リック・オバリー|ウィキペディア/『SPA!』2010年7月13日号 扶桑社「エッジな人々」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%90%E3%83%AA%E3%83%BC

2010年に、「わざと逮捕されて悪法に注目を集める」目的(アメリカの市民運動に顕著である)で、イルカを捕らえた網を切る事もあるが、日本国内においては「単なる犯罪者」になってしまい、そういった効果が望めないので行わないとコメントしている(引用)

 そんなオバリー氏が一体なぜ逮捕される羽目に?
 彼の罪状は、パスポート不携帯(出入国管理及び難民法〜通称入管法違反)。

■パスポート不携帯容疑の反捕鯨活動家を釈放 (9/2,毎日放送)
http://www.mbs.jp/news/kansai/20150902/00000011.shtml

「僕が逮捕されたのは、パスポートをホテルの部屋に置いてきたからだ。そんな大したことかな」(オバリー氏)(引用)

 オバリー氏は「逃亡や証拠隠滅の恐れがないとして」(引用)翌朝までに釈放されました。これを報じたのは毎日放送のみ。

 さて・・旅券不携帯による入管法違反は、一体世間が騒ぐほどの一大事件なのでしょうか?
 以下の法務省の資料をご覧いただきましょう。

 ■平成26年における入管法違反事件について|法務省
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri09_00029.html
http://www.moj.go.jp/content/001138405.pdf

 入管法違反の検挙数は1年で1万件余。不法入国でも不法残留でもない、パスポート不携帯なんてまさに微罪。入管法第76条に基づき、罰金10万以下の刑。資料表中では「その他」にくくられてしまっています。
 罰金刑だけなら、日本で年間約30万人が罰金判決を受けています('13、道交法違反の反則金除く〜ウィキペディア)。1日当り百件近く。いちいち報道してたら、新聞の紙面もニュースの放送時間もそれだけで埋まっちゃいますね・・。

 自分が別格扱いを受けることまで見通したうえで、イルカ猟問題を訴えるためにパスポートをわざとホテルに置きっぱなしにし、狂信的な反反捕鯨監視活動家を利用してわざと警察に通報させた? んなアホな。
 そう……オバリー氏《が》騒いだのではなく、オバリー氏《で》騒いだのです。
 日本のマスコミの方が。
 まさしく言葉通りの逮捕劇=B

 ここで、ツイッターでの反応を拾ってみましょう。


過激派であるシーシェパードが逮捕されるんは、納得できる英語圏の一般人が多いのでもうニュースにはなりませんが、穏健派オバリーさんをパスポート不携帯の理由で拘束するのは、日本の政治的なイメージダウンにしかならないと思うんです…。ヘッドラインにならないうちに釈放されますように。(引用)


「ザ・コーヴ」の監督の逮捕、形式的には違法なのかもしれないが(旅行者に常に旅券の携帯を求めるという法律自体問題で、提示を求められたら近隣の警察署で二日以内に示す、といった条文が妥当だと思う)、諸外国に対しては日本の市民的自由について、むしろネガティヴな印象を与えると思う。(引用。注:監督については出演者の誤認)

 MunroさんはNZ在住で両国の事情にお詳しい日本人の方。
 そして、脳科学者の茂木健一郎氏については説明は要りませんよね。

 ところが……オバリー氏と、一言私見をツイッただけの茂木氏に噛み付いた人物がいました。
 おなじみ産経記者・佐々木正明氏
 彼こそは、オバリー氏《で》最も騒いだ人物。
 すなわち、今年いくぶん戻った太地町の静けさを破り、騒動を無闇やたらに拡大した張本人。

■太地町イルカ問題 静岡・伊東市長をだまし、交通事故起こした大物活動家 追い込み漁めぐる不毛な闘い 今後も続く (9/4,WEDGE)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5330

 スペシャリストである勝川氏や片野氏の漁業問題記事、共同通信記者で日本の環境ジャーナリスト第一人者・井田氏の水族館問題記事、鈴木氏のウナギ業界の闇特集、そして外務官僚として捕鯨交渉にもあたった谷口氏の本音。
 捕鯨を含む漁業に関わる分野で数々の良記事を提供してきたウェッジですが、そのグレードを台無しにしているのが漁業問題にも環境問題にも疎いただの反捕鯨運動監視マニア・佐々木氏。
 産経の記事は写真撮影以外無署名ですが、ウェッジ記事は字数だけでも3倍は超えてそう。
 それだけのボリュームがありながら、中身はボロボロのグダグダ・・・。
 これでよく新聞記者がやっていけるものだと、正直開いた口が塞がりません。
 のみならず、この記事にはいかにも産経記者らしい佐々木氏の内面が如実に現れています。
 日本人としての過剰な自尊心と、外国人に対する前時代的な偏見。そのダブスタに自覚がない無神経さと国際感覚のなさ。
 悪質な嘘と、それを自らに認める歪んだ心理。

 一ウヨ新聞記者の資質だの何のには別に興味ない? そりゃ筆者も同感。
 そうは言っても、彼がオバリー氏やSSCS元代表ポール・ワトソン氏ら特定の個人を公に貶めた以上、その責任は取らせるべきでしょう。大手新聞記者で売れっ子(?)SSCS本の著者という副業も持つ公的な立場の人物なのですから。
 それに、これは彼自身が多くの記事中で表現している、「ビジネスモデル」「利権」にも関わることです。佐々木氏自身の
 以下、詳細にチェックしていきましょう。(褐色反転部分引用)

 それにしても、序文から日本語がメタメタですねぇ。
 冒頭の段落の構成は、A「オバリー氏はドジで嘘つき」 B「オバリー氏は太地の敵」 C「オバリー氏は自分が亀裂のもとだと気づいてる?」 の三段構えですが、読めばわかるとおり三段論法になっていません。言いたいと思ったことを無理やりつなげただけで、まるで国語のできない小学生の作文。時間がないのに長文の記事を書こうとして破綻したのが見え見え。

 飲酒運転の末、旅券不携帯で摘発され

 ??? なぜそんなことが起こり得るのでしょう?
 飲酒運転したのなら、「飲酒運転で摘発」されるはず。日本で飲酒運転(酒気帯び運転と、酒酔い運転)が検問ないし事故により発覚しながら逮捕できない飲酒運転は、それが日本人であれ、オバリー氏という特定の人物であれ、彼以外の外国人であれ、存在しません。オバリー氏は飲酒運転をしていないわけです。佐々木氏がこの後しきりに繰り返す記事中の第一の嘘。

 翌々日には懲りずに車を運転し

 ??? さて・・飲酒検問に遭ったけど、基準値以下でパスした日本人の自動車運転手の皆さん。翌々日に運転するのを控えますか?
 ま、仮にちょびっと酒を嗜んで冷や汗をかいた方がいれば(実態としては決して少なくないはずですが)、飲むのは控えるでしょうけどねぇ。

 昨今の水族館イルカ問題でも主要なプレイヤーとなった。

 彼がおそろしく不勉強な人間か、あるいは国語力ゼロの人間か、いずれかであることを象徴する一文。まともな新聞記者が書く文章じゃありませんな。
 事実としては、オバリー氏は水族館におけるイルカ飼育展示問題に長年取り組んできた主要人物の一人ですから、「昨今」を使う意味が不明。
 もし、直近に起きたWAZAによるJAZA除名/復帰問題を指すのであれば、そう明記するのがスジ。ただし、オバリー氏は直接のきっかけを作ったオーストラリア・フォー・ドルフィンズのサラ・ルーカス氏と協力関係にあるものの、WAZA/JAZA問題における主要プレイヤーとまではいえません。「プレイヤー」はWAZA・JAZA・AFD・日本の3NGO。太地すらプレイヤーではありませんでした。

 オバリー氏の言動は、太地町の漁師らが生活の糧としてきた営みを貶め、彼らの誇りや尊厳を傷つけている。

 具体的にどの言動か、記事を通して一切言及がありません。名誉毀損で裁判になるほどでなければ、たいしたもんじゃないでしょうが。
 どの程度「生活の糧としてきた営み」なのか、「利権」「ビジネスモデル」としての要素はないのか、「生活の糧」であれば一切の批判は許されないのか、はたして日本はすべての国民に「生活の糧」を完全に保障している国なのか。
 佐々木氏は大手新聞に籍を置くジャーナリストとして、公正な視点で論争の背景を分析する作業を何一つしてはいません。これは純粋に彼個人の主観のみで書かれた文章。
 日本の各NGOも、オバリー氏らも、そして筆者も、太地のイルカ猟にどれほど多くの問題点があるか、口酸っぱく唱えてきました。
 一言で言うなら、太地のイルカ猟は貶められても仕方がない程度の、とてつもなく浅い代物です。伝統を語るのは、伝統という言葉に対して失礼なほど。
 言い換えれば、誇りや尊厳を傷つけているのは彼ら自身に他なりません。
 佐々木氏は、それらの批判に対して応えた試しがありません。アプリオリに、太地のイルカ猟は批判の余地のない善≠セと決め付けているだけ。 

 オバリー氏は自らが招く摩擦が、日本社会とイルカ保護運動全体に大きな亀裂を起こしていることを把握しているのだろうか?

 摩擦とはお互いのすれ違い、思惑違いによって発生するもの。例えば、貿易摩擦が起こるのは、輸出する側と輸入する側との間に思惑のズレがあるから。
 イルカをめぐる摩擦があるとすれば、国連海洋法に基づき国際管理を求める世界と、それを拒む日本との摩擦。
 国際社会における摩擦を誰か単独の個人の所為にすれば済むと考えるほど、ノーテンキな思考の持ち主がいるでしょうか?
 亀裂の対象も不明。日本社会と保護運動のそれぞれに亀裂が生じているのか、その2つの勢力の間に亀裂が生じているのか、判然としない文章ですね。
 イルカに限らず、市民運動は常に多様であり、NGO・活動家個人によって戦術や理念の違いをめぐる軋轢が生じる場合もありますが、オバリー氏がいようがいまいが、そこに違いはありません。
 日本社会にも、例えば産経と親和性の高いウヨウヨ層と、それ以外との間に深刻な亀裂がある、という見方も可能でしょう。
 しかし、オバリー氏であれ誰であれ、個人がいなくなれば社会の亀裂がなくなるとは誰も言いますまい。それが強大な権力を手にした独裁者でもない限り。
 では、二者の間で価値観の違いに基づく亀裂が生じた場合、どのように対処すべきでしょうか?
 その答えは、お互いの相違点を検証し、着地点を見出す努力をする以外にないでしょう。それこそが国際社会における外交の本質のはずです。
 価値観を押し付け合うだけでは、亀裂の解消にはつながらないのです。
 太地は誠実にそれをやりませんでした。
 ラディカルで原理主義的な保護派といえるSSCSやオバリー氏も。
 そして、彼らと対極にある、佐々木氏に代表される太地イルカ猟性善主義者も。
 両者がいがみ合うからこそ、亀裂が生じるのです。
 佐々木氏の記事は、オバリー氏の素行に関する部分以外、自己の主張を全肯定し、相手側の主張を一方的に否定するだけの内容です。
 対立の輪の外側から事象をながめる記述者というより、彼自身が対立し、摩擦を生む当事者になりきっているのです。少なくとも、オバリー氏と同じくらいには。
 自らが招く摩擦が、日本社会に大きな亀裂を起こしていることを、佐々木記者は把握しているのでしょうか?

 世界のイルカ保護活動家にとって、悪名高き「聖地」になった。

 壊れた日本語ですね・・。
 太地が保護活動家の聖地≠ナあるはずがないでしょうに。太地を聖地扱いしているのは、佐々木氏と同レベルの狂信的な太地教信者たち。

 同市富戸漁港はかつてイルカ漁を行っていたが、国内外からの批判が高まり、イルカを殺す漁をやめ、イルカを愛でるウォッチングビジネスを始めた。

 佐々木氏は西伊豆地方のイルカ猟が乱獲によってほぼ自滅した歴史的経緯すら知らないほど、イルカ猟問題に関する基礎知識がゼロのニンゲンなのです。あるいは、知っていて悪質なごまかしを行ったか。前者でしょうけど・・。
 これは公平な文章じゃありませんね。「イルカ肉を愛でるイルカ猟ビジネスをやめ」と書くか、単に「イルカウォッチングをはじめた」と書くべき。ま、まともな記者なら後者でしょうが。
 非持続的な致死的利用から脱皮し、持続的なウォッチングに切り替えた富戸のみならず、同じ選択をした七尾に対しても、きわめて失礼な話。
 それらの自治体のウォッチング関係者は、少なくとも公社組織を巧みに利用して粗利をがっぽり稼ぐ太地ほどえげつない商売はしていませんよ。

 佃市長は相当に脇が甘かった。オバリー氏の言われなき非難に悩んできた太地町の住民だけでなく、永田町や霞ヶ関の関係者にも多大なる不信感を抱かせた。どんなに弁明してもオバリー氏を市役所に招き入れ、記念写真を撮影したことは明かな事実だからだ。少し調べれば、オバリー氏がこれまでも何度も騒動を引き起こしてきた「要注意人物」(治安関係者)であることがわかったはずだ。

 まあ、親善大使の件は完全にオバリー氏のチョンボですね。FB公開して市長にも泉氏にも迷惑をかけたのはオバリー氏の責任であり、彼は謝罪するのがスジ。
 聞き違い、勘違い、通訳の訳し違い、思い違い、強度の願望の反映、いろいろ理由は考えられるでしょうが・・。
 伊東市長も、「親善大使とまでは呼べないな。そんなになりたきゃ、うちに訪れてカネを落とす外国人観光客を3倍に増やしてくれよ」とか、ウィットに富んだ返事で返してくれればまだよかったのだけど・・
 しかし、そもそも親善大使はイベントを仕事にする象徴的な役職で、通常ボランティアで給料もなし。何か自治体の権限を委譲するわけでもなく、大げさに捉えること自体バカげています。
 いずれにしても、佐々木氏のチョンボで相殺です。
 国語的には「言われなき:× 謂れなき:○」。
 オバリー氏個人の主張が全部正しいかどうかは議論があっていいでしょうが、太地のイルカ猟は非難されて当然のもの。ただし、対象は「住民」ではありませんが。
 そして、何より伊東市は太地のイルカ猟と無関係。太地町のイルカ猟関係者や、永田町の族議員や霞ヶ関の「ミンク刺身美味い」と言ってばかりの腐れ官僚連中に、なぜ異常なまでに気を遣う必要があるのでしょうか?
 いつから太地町は伊東市の上位の行政区分になったのでしょうか?
 形式ですませて枠を消化せず、自然を賢く持続的に活かしている伊東市の流儀を見習うというのであれば、耳を貸すのもやぶさかではないでしょうけど。
 そして、「市役所に入れてはいけない」「記念写真を撮影してはいけない」理由≠ニは一体なんでしょうか?
 まるで、「刺青をした人間は銭湯に入っちゃいけない」とか、「外国人お断り」の飲食店やサッカー場の話みたいですね・・。
 佐々木氏の答えは「要注意人物」だから。
 では、彼ないし「治安関係者」なる所属も不明な人物の言う「要注意人物」とは、どういう人物を指すのでしょうか?
 オバリー氏は(少なくとも日本では)犯罪者ではありません。伊東市を訪問した後で旅券を置き忘れるという微罪を犯しましたが。
 日本人だったら、どのみちその程度の微罪の前科で市役所への出入禁止になどならないはず。微罪とはいえない前科があってさえ、禊をすませれば議員になれちゃうんですし・・。
 ICPOを通じて国際指名手配されているわけでもなし。
 騒動? 最近で言うならデザイナーの佐野氏とか研究者の小保方氏とか? パクリ騒動なら佐々木氏本人だってやらかしてるのにね・・(後述)。
 裁判を起こすのに協力した? デモ等の示威行動? フェイスブックや記者会見での意見表明?  
 それはただの市民の自由≠ナす。思想・良心の自由です。
 つまり、それこそ産経佐々木記者、永田町の国会議員や霞ヶ関の官僚、治安関係者とやらが「市役所に入れるべからず」「記念写真を撮影するべからず」と唱える理由なのです。
 端的に言い換えれば、思想・信条による差別です。
 オバリー氏は思想・信条を理由に「危険な人物」としてマークされました。
 そして、佐々木氏らは何の権限もないにもかかわらず、「思想・信条の異なる外国人に胸襟を開きやがって」と、自治体首長に食ってかかったわけです。「脇が甘い」と。
 およそ差別に無頓着な意見を平気で記事に書いてしまう、そこまで脇の甘すぎるジャーナリストなのです、産経佐々木氏は。
 職員にセクハラを働いたり、談合業者と酒席に興じたり、政治的・差別的発言を平気でポロッと口にしてしまう、およそ自治体のトップに向かないタイプの人物は、全国の地方自治体に数多くいました。
 そういや、「女子にコサイン教えて何になる」だの、「脇が甘い」の一言ではすまない、化石的な女性蔑視・差別感覚の持ち主の知事さんもいらっしゃいましたっけ・・
 佐々木氏の目には、それらの問題首長より、伊東市長の「脇の甘さ」の方がずっと許せない罪と映ったのでしょう。
 霞ヶ関・永田町の捕鯨・イルカ猟関係者、佐々木氏と懇ろにして情報提供に余念のない治安関係者も同じく。

 問題はオバリー氏サイドが情報の削除には応じたものの、なぜ削除したかの説明責任や混乱を引き起こした謝罪を一切していないことだ。この騒動は表面上まるでなかったかのようになっている。

 自分のことを棚に上げて、よくまるで何もなかったかのようにこんなことが言えるものです。その時点で、佐々木氏は紛れもなくオバリー氏未満。
 さて・・ここで過去記事をご覧いただくことにしましょうか。

■大手新聞社外信部記者でも誤訳をするのだ|ドイツ語好きの化学者のメモ
http://blogs.yahoo.co.jp/marburg_aromatics_chem/62734352.html
■パクリ捕鯨擁護記者サンケイ佐々木氏(拙ブログ過去記事)
http://kkneko.sblo.jp/article/34692147.html
■捕鯨擁護記者のビックリ仰天パクリ記事(〃)
http://kkneko.sblo.jp/article/34841650.html

 佐々木氏はパクリ元の市民ブロガーの方にひたすらゴマを摩りはしたものの、説明責任や混乱を引き起こした謝罪を一切せず、ネトウヨたちが拡散した誤情報に対しても、「積極的に火消し」なんか一切しませんでした。
 彼とシンパは伊東市に対して英語での説明まで要求していますが、そんな資格はありやしません。
 彼の勤務先の産経も、ずさんなガセネタ記事を枚挙の暇がないほど乱発しながら、謝るほどの必要のなかった朝日吉田調書報道と異なり、訂正・謝罪・検証を一切せずシラを切り通す新聞であることは、まとめサイトをチェックしてる皆さんはとっくにご承知のとおり。
 上掲した「沖縄、盛り上がらない反対運動 県庁集結は約10人」という2桁も鯖読んだデタラメな記事をはじめ。
 以下もその一例。

■産経「鯨肉生産は牛肉よりエコ」はデマだった(旧JANJAN記事)
http://www.kkneko.com/sankeidema.htm

 イルカ漁問題はこれまでもこうして、オバリー氏のような活動家が横のものを縦にするような虚偽の情報を流布し、その情報を海外の人々が正しい情報として受け入れ、漁師に対する非難のボルテージを上げるという負のサイクルが続いてきた。支持者はカリスマが物事を歪めて伝える情報に、煽動された。

 事実を言えば、「イルカ猟問題はこれまでもこうして=A佐々木氏のような御用ジャーナリストが横のものを縦にするような情報を流布し、その情報を国内の人々が正しい情報として受け入れ、太地イルカ漁業者に対する崇拝のボルテージを上げるという負のサイクルが続いてきた」わけです。
 数字の上ではオバリー氏ほどではありませんし、産経外信部記者という肩書きがあってここまで乗った数ともいえるでしょうが、フォロワーや記事のツイート数、RT数などを見る限り、彼を立派な反反捕鯨カリスマにして煽動家と呼んでも差し支えないでしょう。
 彼の横縦虚偽情報はまだまだ続きますが……。

 前日の夜、オバリー氏は自らレンタカーを運転して、那智勝浦町内の居酒屋に1人で出かけた。翌日のパフォーマンスのための景気づけだったのだろう。ビールを飲んで食事をして、2軒目の中華料理屋にも出向いた。そうして、ほろ酔い気分でホテルへ帰ろうとした。ところがその様子を見ていた地元民がいた。『オバリー氏が酒を飲んで、車を運転している』。この情報を和歌山県警新宮署に通報した。(中略)通報を受けた新宮署の警察官はオバリー氏に職務質問した。すぐに呼気検査を実施した。だが、摘発するレベルのアルコール分は検出されなかった。

 奇妙な記述に、いくつもの疑問が沸き上がります(日本語のメタメタぶり以外で・・)。
 警察がすぐに呼気検査を実施したにも関わらず、摘発するレベルのアルコールは検出されませんでした。
 明白な事実として、彼は飲酒運転も酒気帯び運転もしていないわけです。
 少なくとも、検問に引っかかったものの結果として飲酒運転に該当しないですんできたすべての日本人と同じく
 可能性としては、飲酒運転に該当しないくらいの、嗜む程度のごくわずかな飲酒量だったか。
 あるいは、実際には飲んでいなかったにもかかわらず、「不審な外国人」に対する偏見に満ち満ちた地元民なる人物に通報されたか。後述するとおり、日本では十分ありえること。また、店主がまともなら、酒を飲ませなかった可能性も十分あるわけです(これも後述)。
 もう一点、日本の交通法規制におけるきわめて重大な問題を、佐々木氏は華麗(?)にスルーしました。陰湿な故意か、無知か、いずれかの理由で。
 飲酒運転は、幼子の命を奪う悪質な事故等で厳罰を求める声が高まったことから'07年に道交法が改正され、運転者を幇助した酒類提供者にも懲役を含む厳しい罰が課せられることになりました。 
 彼が飲酒運転認定された時点で、記事中の那智勝浦町の居酒屋及び(そっちでも飲んでいれば)2軒目の中華料理屋は有罪。
 1人で、車で訪れたことが明らかであるにもかかわらず、酒を勧めた以上。あくまでも、オバリー氏が飲酒運転の罪で問われるのであれば、ですが。
 日本語が片言しかできない相手であれば、店主はなおさら強く固辞すべきでした。銭湯に入りたい刺青のおっさんや、博物館にプラカード持って入りたいねえちゃん以上に、入店・給仕をつっぱねる道理があったはず。
 問われるのはむしろ、南紀地方の居酒屋の遵法精神といえるでしょう。もし、飲酒運転に寛容な雰囲気が残っているのであれば、地域住民は強く憂慮すべきであり、ジャーナリストはそれを大きく取り上げるだけの理由があるはずです。
 オバリー氏のことを知っていて、そ知らぬふりしてわざと飲ませたというのなら、話はまったく違ってきますけど……。
 さて、はたして佐々木氏は、悪意をもって重要な法的事実を端折った記事を書いたのでしょうか? それとも無知だったのでしょうか? どうも後者にしか見えないんですけどねぇ・・。
 昔の新人新聞記者は交通事故なんかの取材対応等を任せられ、警察に張り付いて鍛え上げられたものだと聞きましたが、佐々木氏にはそうした経験はなかったのでしょうか……。
 さらに、法的に責任はなくても、彼が酒を飲んで車を運転するのを防ぐことのできた可能性のある人物が別にいます。
 警察に通報した人物が、仮に外国人に対する偏見の固まりで、居酒屋から外人の運転する車が発進するのを見ただけで、早合点して通報したのであれば、そこまで求めるのは酷かもしれません。
 しかし、オバリー氏が居酒屋でビールを注文するところを観察し、その飲酒量までチェックし、梯子して中華料理屋に行くまで、執拗に尾行したうえで、警察に通報したのであれば、話は違ってきます。
 なぜ、この通報者は、わざわざ彼が酒を飲んだのを確認し、車を運転するのを待ってから通報し、事故のリスクを放置したのでしょうか? 
 店に居合わせた時点で、「飲んだら乗るな! 乗るなら飲むな!」とビシッと注意すべきだったでしょう。店主に対しても「こいつ車で来てるからビール出すなよ。捕まりたいのか!?」と指摘することはできたはず。
 一連の経緯を見る限り、この通報者に常識的な良心が備わっていたのか、疑問に思えてきます。
 この通報者は、外国人は飲酒運転するものだと決めつける人種的偏見の持ち主か、あるいはオバリー氏をストーカーしていた狂信的な反反捕鯨活動家か、そのどちらかにしか見えません。
 記事中で地元民とありますが、比較的若い活動家レベルの応援団の移住者は実際にいるわけですから、彼らを指して「住民」と呼ぶことも十分可能なわけです。
 公平を期せば、彼らを反反捕鯨活動家と呼ばないなら、オバリー氏らも訪日外国人という一般的呼称で済ませるべきですが。

 治安が悪化している国ではこの時点で不審人物と判断され、署に連行されるケースも多いだろう。しかしここは日本だ。

 「日本は治安がよい国」という先入観と、他の国と相対化することでそれを強調したいという思いにあふれた、事実にウヨ記者らしい文章ですね。
 ですが、これもまた事実と違ったりするわけです。

■パスポート不携帯の罰金にご注意(日本編)|中国ビジネス コンサルタント
http://kinnohashi.seesaa.net/article/167741999.html
■パスポート不携帯の罰金にご注意(日中比較編)|〃
http://kinnohashi.seesaa.net/article/167851629.html
■日本人のあなたが外国人として逮捕される日。|ヤフーニュース
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nishantha/20140818-00038350/
■「外国人風外見」をしているだけで即逮捕!?──入管法改正でいっそう強まる外国人のアパルトヘイト化|いったい地球はどうなってんの?カルロス小林の妄語録
http://www.seikyou.ne.jp/mt/mt4i.cgi?id=18&cat=198&mode=individual&no=35&eid=787

 上2つは、外国人登録管理制度と合わせ、外国人に対する差別的制度という点で中国よりひどいという指摘。
 3番目は、日本国籍を持つ在日外国人の方が、オバリー氏と同じ旅券不携帯容疑で誤認逮捕された事件について。論者はスリランカ出身で社会学者兼タレントとして活躍している にしゃんた氏。「不審な外国人」として第三者が通報した経緯も、オバリー氏の一件と酷似しています。
 4番目も、警官自身が外見で判断した同罪の誤認逮捕について。この国に外国人に対する露骨な偏見が存在することを浮き彫りにした事件でした。
 佐々木記者は必読。ついでに、論者らの爪の垢を煎じて飲むべきでしょう。
 筆者の知り合いの外国人も、訪日して街を歩いているとやたら職質に遭う差別待遇をぼやいてましたが、にしゃんた氏の認識は日本を訪れたことのある外国人の間で幅広く共有されています。
 つまり、事実を言えば「ここは日本」それ故に「(罪がなくてさえ)不審人物と判断され、署に連行され」ちゃったりするのです
 ここにも佐々木氏の国際事情に関する圧倒的な疎さが露呈しています。外信部のくせに。

 警察官はオバリー氏に、ホテルにいったん戻って旅券や運転免許証を取ってくるようやんわりと促した。ところが、オバリー氏はこの提案を拒否した。頑な態度をふまえ、新宮署は厳格に法を執行することを決めた。

 さて、この記述を読んで、あなたは「日本の警察はなんて素晴らしいんだろう」と称えますか?
 では、以下の引用に目を通してみてください(リンク先はすぐ上掲3番目)。
 
午後7時40分ごろ、川口市内の路上を歩いていた女性にパトロール中の署員3人が職務質問。署員は女性の容姿が東南アジア出身者に似ており、名前や国籍を尋ねたところ、小さな声で「日本人です」と言ったきり何も話さなくなったため、署に任意同行した。女性は署でも日本語の質問に対し無言を通したため、同署は「外国人」と判断。パスポートの不所持を確かめて同容疑で逮捕した。
女性は逮捕後に家族の名前を紙に書き、母親に確認すると娘と分かって誤認逮捕が判明した。母親は「娘は知らない人とは話をしない性格」と話していたという。(引用)

 尋問に対して黙秘で通すのは、本来市民に認められた権利でもあるはず。
 しかし、警察が恣意的に運用することで、こうした誤認逮捕のような悲劇が現に起こっているわけです。
 これでも日本の警察が人情的だなんていえますか?
 ちなみに、筆者もデモやなんやで警察ともめたことは何度かありますが、大抵の警察官は高圧的で、慇懃な言葉を使いはするものの、「やんわりと」促された試しがありません。
 オバリー氏だけ丁重に扱ったのだとすれば、むしろダブスタにしか見えないんですけどね〜。

 警察幹部は「オバリー氏には遵法精神がみられない」と語った。

 おやおや・・毎日放送によれば、「逃亡や証拠隠滅の恐れがないとして」(引用)釈放されていますよ?
 本当に遵法精神が見られないのであれば、簡単に釈放などしないでしょうに。
 この新宮署の警察幹部たる人物、上掲の知らない人と話せない性格だったため無実で逮捕された女性を尋問したら、きっと「こいつには遵法精神がみられない」と思っちゃうタイプでしょうね・・。
 以下は同じく中国ビジネスコンサルタントからの引用。
 
ちなみに日本人であっても、車の運転の場合、運転免許証の携帯を義務化されていますが、もしそれを忘れた場合、3,000円の罰金が科され、行政処分で済みます。外国人の場合も、せめて、同等に処理するべきでしょう。(引用)

 旅券や免許の不携帯に限らず、10万以下の罰金相当の罪を犯す日本人は年間30万人以上いるわけです。
 この新宮署の警察幹部氏は、彼らを全部遵法精神が見られない要注意人物としてマークすべきだと考えているのでしょうか? そんなことしてたら、日本の検挙率ますます下がっちゃうよね・・。
 うっかり言ってしまったにしろ、佐々木氏に乗せられてしゃべっちゃったにしろ、(とりわけ外国人の)人権を尊重していないことを示す点で、警察署の幹部としては迂闊すぎる発言です。

 茂木氏はさらに「京都を歩いている家族連れの外国人旅行者が、旅券不携帯で逮捕されることはないでしょう」ともつぶやき、和歌山県警の姿勢を暗に非難した。
 しかし、交通事故が多発し、飲酒運転には厳格な取り締り規制を敷いている日本で、運転免許証も持たずに居酒屋に行き、酒を飲んで帰りも平気で車を運転している人がいるのであれば摘発するのは当然ではないか。この時のオバリー氏の態度は、「京都を歩いている家族連れの外国人旅行家」とは違うのである。

さて、続く章で佐々木氏は、例の茂木氏のツイートをわざわざ画像まで添付して紹介しています。
 読めばわかるとおり、茂木氏の指摘は日本の入管法の問題点について。上掲したにしゃんた氏らの主張にも重なります。
 それに対する佐々木氏の反論ですが、入管法には一切触れていません。オバリー氏の特別視を正当化した理由は「飲酒運転」。
 悪質な論旨のすり替えですが、それにしてもあまりにも稚拙すぎて話になりません。
 上で詳細に述べたとおり、オバリー氏は飲酒運転をしていないのです。これは警察がはっきりと認めた事実。オバリー氏と同じ状況に遭った日本人に対して、飲酒運転をしたと言えないように。
 飲酒運転の嫌疑(シロだった)と、旅券不携帯は、法律上一切何の関係もありません。つまり、これは典型的な別件逮捕
 繰り返しますが、茂木氏は入管法の問題点を指摘したのです。京都観光に来た家族連れも、うっかりで、あるいは日本のホテル従業員に絶大な信頼を置いて、パスポートを旅館に置いてきてしまう可能性は十分にありえるのですから。
 しかし、佐々木氏は「態度」こそが問題だと強調しているわけです。日本の司法は、態度によって違法か合法かが変わるものなのだ、と。
 もし、たかが「態度の違い」で法的な取り扱いにあからさまな差が出るとすれば、日本は警察が特権を振り回す監視社会であり、もはや法の下の平等を重んじる先進国とは到底呼べないでしょう。
 茂木氏も指摘したとおり、実際にそういう側面を持つが故に、日本の司法運用の恣意性が問われているわけですが。
 法の下の平等について、とくにマスコミの取り上げ方について、別の事例を挙げましょう。

■山形の41歳消防士長、酒気帯び運転で逮捕
http://www.hochi.co.jp/topics/20150905-OHT1T50067.html
■信号無視で当て逃げ、運転者は飲酒運転の警官
http://response.jp/article/2015/09/02/259191.html
■酒気帯び運転:テレビ岩手社員を逮捕
http://mainichi.jp/select/news/20150906k0000m040046000c.html

 さて、これらはここ数日の間に起こった本物の(オバリー氏と違って!)飲酒・酒気帯び運転の逮捕報道です。ほぼすべてのマスコミからたたかれたオバリー氏の一件より大きくは報道されなかったようですが。
 「酒を飲んで帰りも平気で車を運転し、摘発されて当然」のヒトたち。
 飲酒運転とそれによる事故の問題に関心のある方なら、基準に達しなかった無数の事例に相当する違反していない運転者よりも、警察が飲酒運転と事実認定した飲酒運転者の摘発事例に目が行くはずでしょう。
 ジャーナリストであれば、本来なら取り締まる立場にあり、市民に手本を示すはずの公職の逮捕者、ないし同業者の逮捕に、より一層着目するでしょう。
 ところが佐々木記者は、同業者であるテレビ岩手社員や、記事中でさんざん持ち上げている警官による飲酒運転は取り上げなくても、嫌疑をかけられたものの実際には該当しなかったオバリー氏の飲酒運転だけは、どうしても見過ごせないと言っているわけです。

 次の章では、オバリー氏一個人に対する佐々木氏の異常な執着がさらにエスカレートします。

 オバリー氏は懲りずに自分でレンタカーを運転した。波止場内の駐車場に車を止めようとした際、段差があることに気付かずに、そのまま前へ突っ込み、タイヤが段差に乗り出して、運転不能になった。
 オバリー氏は、警察署から釈放された翌日の9月2日朝、太地町で自損事故を起こした(地元住民提供)
 自損事故。オバリー氏はつい数時間前まで滞在した警察に通報した。当時、周りに車や歩行者がいなかったことが幸いした。本人にも他の人にもケガはなかったが、一歩間違えば、大けがを負う危険性もあった。

 さて・・ジャーナリストとして基本の下調べもできない佐々木記者に変わって、実情をお目にかけましょうか。
 以下は損害保険協会の資料。P6の図8のグラフをご参照。

■自動車保険データにみる交通事故の実態―提言と主な対策― 2009 年4 月〜 2010 年3 月|日本損害保険協会
http://www.sonpo.or.jp/archive/report/traffic/pdf/0033/book_jikojittai2011.pdf

 車両単独事故(構築物衝突及び横転・転落)、いわゆる自損事故の年間発生件数は全国で約250万件1日1万件弱です。
 少し前のデータですが、グラフの増加傾向と高齢者人口の更なる増加を考えれば、今ではもっと多いと予想できるでしょう。
 まあでも・・言わなくたってみんな知ってることだよね。
 日本全国で、毎日のように、このレベルの事故は起きています。まさに日常茶飯事
 筆者もつい先日、自然観察会の帰りにバンパーがへしゃげて路肩で停止し、レッカーを待っている自損事故の車の横を通り過ぎましたけどね。
 オバリー氏の場合、駐車場での車庫入れ時という最も一般的なケース(微妙ですが構築物衝突に該当するでしょう)。人口の少ない地方の町村の波止場で、自分が海に落ちる以外のリスクはきわめて小さかったといえるでしょう。バックを指示する人がいれば、事故自体起こらなかったでしょうけど。
 都市部のコンビニでアクセルとブレーキを踏み違えるとかでなくてよかったですね。
 実際に、そういう死傷事故が毎年何軒も起きているのですから。
 しかも、オバリー氏と同年代の高齢者による事故が急増していることも、資料のみならず、一般の方々が知識として持っているはず。
 米国在住のオバリー氏のケースについていえば、自国に比べ道路も車庫の間隔も狭い日本の道路事情は小さくないでしょう。これはどの外国人でも言えることですが。
 そして、一日前に拘置所で一晩拘禁された疲労とストレスも考慮の余地はあるでしょう。
 自分の運転技術に自信があり、なおかつ他者への共感能力の希薄な方の中には、自損事故を起こした方すべてに対し、「未熟で反射神経の鈍いやつだ。こんな奴にはハンドルを握らせない方がいい」と嘲笑の感情を持つだけの御仁もいるかもしれません。
 新聞・Webメディアで、公然と攻撃するのは、産経佐々木記者くらいのものでしょうけど。
 ただ・・そういう御仁に限って、自分が高齢者になってから運転技術の低下に気づかず事故を引き起こしてしまう可能性が高いともいわれています・・。
 一体、太地町には、自損事故を起こしてはならないというムラの掟でも存在するのでしょうか? 自損事故を起こした人は町へ入ることすら認めず排撃する、そういう町なのでしょうか?
 もしそうだとすれば、太地町以外のすべての市町村に住む住人は引くでしょう。
 いや・・そんなことを思っている狂人は太地町にだっていないはず。どこの町とも変わらない普通の日本人(と在日外国人)が住んでいる町のはずです。
 違うのですか?
 高齢者の交通事故についての問題提起であれば、オバリー氏の固有名詞を出す必要性はまったくありません。筆者自身、もっともなことだと思います。
 しかし、佐々木氏の記事の場合、飲酒運転云々と同様、自損事故に関する一連の記述も、オバリー氏に対するただの個人攻撃にしかなっていません。

現場で事故処理が行われ、レンタカーはレッカー車で運ばれた。何事かと周囲に人が集まりだし、オバリー氏はピースポーズを示して住民におどけて見せた。

 まあどうでもいい部類に入るのですが、カメラを向けられるとつい自然にピースサインを出しちゃうのって、日本人アルアルですよね・・。
 オバリー氏は日本の文化に合わせてくれたんじゃないですか?
 もうひとつの可能性として、カメラを向けた人物が、「ピース」とかサインを出すジェスチャーをするとかしませんでした? 狂信的な反反捕鯨応援団ならいかにもやりそうなことだと思いますけど・・。 
 まあ、逮捕されて日本の狭苦しい拘置所に閉じ込められたり、事故ったり、彼もツイてませんでしたからね。
 そういうときって、人間は自分を励ます意味も含め、ちょっとおどけた仕草をしてみせることはよくあるものです。ヒトという動物の自然な感情。
 ところで、佐々木記者は以前、東北大震災のときに地元の日本人が訪れていたSSCSの監視団に救いの手を差し伸べたことをことさらに訴えていましたが、同様の記述がないところを見ると、今回「集まった人」冷たい野次馬だけだったみたいですね。
 無論、太地町民がみんなそうだとは言ってませんよ。ていうか、「集まった人」とやらも、反反捕鯨監視団のメンバーばっかりだったという臭いがプンプンするんですけど・・。
 他人の衆人環視にさらされるストレスに対する防衛反応としても、自分をリラックスさせる意味も含めておどけみせるのは、やはり人の心理として正常なもの。
 どうも佐々木記者は、崇拝対象であるイルカ猟関係者を除き、相手の心情をトレースする能力に決定的に欠けているようです。ジャーナリストとしては相当致命的だと思いますが。
 まあ、産経だからいいのか・・・

オバリー氏を一躍有名にした「ザ・コーヴ」は公開後すぐに事実誤認にまみれていることがわかった。日本語版上映の際、日本の制作会社が明らかに間違いの部分を省くという修正を行ったほどだ。あらゆるシーンの検証の結果、ルイ・シホヨス監督らは、撮影された時期も場所も異なる映像素材を組み替えて編集してあるはずもない場面を生み出したり、CGを駆使して虚像を作り出したりした疑いも浮上した。

 「ザ・コーブ」にいろいろと粗があることは、筆者を含む内外のイルカ・クジラ問題ウォッチャーにも広く認識されているところですが、事実誤認にまみれているとすれば、編集された日本版は数分にも満たなくなっているでしょう。それは明らかな事実誤認です。
 ここで佐々木記者は、巧みとはいえない言葉遊びでのごまかしを試みています。
 過去記事でも解説したように、「ザ・コーブ」の検証は各方面で行われていますが、彼の記事では「その検証」が誰によるものか、主語が省略されていて不明。「あらゆるシーン」を検証した結果、一部に$燒セと食い違うものが見つかった、というのが事実のはずなのですが、一部≠ニいう表現を省略することで、あらゆるシーン≠ェ虚偽であったかのような印象を与える書き方になっています。実際、それを狙っているのでしょう。
 「CGを駆使」は海面の血の色の強調を意味していると思われますが、虚像という表現はCGの使用そのもの、さらには映画の演出手法の否定につながりかねません。日本が世界に誇るNHKスペシャル等のドキュメンタリー番組も、特定の視点が強調された虚像だらけという批判は可能。最近はとくにCGばっかりですしね。場面場面でCGが使われるのは、基本的にわかりやすく強調するためですよ。
 筆者自身は「ザ・コーブ」の演出を好ましいと思っていないことを前置きしておきますが、ドキュメンタリーを含むあらゆる映画は、観客へのわかりやすさを優先して加工と演出を施されるものです。構図、絞り、フレーム移動、BGM、etc. CGを一切使わなくてさえ、カメラを駆使してにふさわしい映像が撮られます。それらはすべて、一面的な、ある方向から見たものであり、現実と100%一致するわけではありません。ドキュメンタリーであろうと。
 「ザ・コーブ」問題について、詳しくは以下のまとめと引用リンク先をご参照。

■「池上彰のニュースそうだったのか!!2時間SP」の中で言及されたWAZAJAZA問題部分まとめ
http://togetter.com/li/837312
■激論!コロシアム【イルカが消えるだけじゃない!?日本を追い込む"やっかいなニュース"の真相!】(2015.6.13放送)
http://togetter.com/li/834969

 捕鯨族議員の筆頭、和歌山県選出の鶴保参議院議員なんて、TV愛知の番組で「映像は太地町ではなく静岡県のものだった」という誘導を狙った姑息な嘘を電波に乗せて茶の間に流しちゃいましたからね(事実は「一部のみ静岡での映像も使われていた」)。オバリー氏の虚言やザ・コーブの粗なんてカワイイもんです。
 もちろん、オバリー氏が飲酒運転したという、特定の個人に犯していない罪の濡れ衣を着せる佐々木氏の真っ赤な嘘と比べても。
 以下は産経報道があった9/1の彼のツイート。


【お騒がせオバリー】飲酒運転とパスポート不携帯で逮捕されたリック・オバリーが今度は太地町で自損事故。75歳。もうやめなはれ、自動車運転は。

 「飲酒運転とパスポート不携帯で逮捕」という日本語はもう誤解の余地がありません。
 たとえある罪を犯したことが事実だとしても、その人物が別の犯していない罪まで犯したと主張することは、立派な名誉毀損にあたります。
 太地町立館に対しては、共闘NGOを通じて裁判戦術も使っているオバリー氏のこと、彼を訴えることも十分考えられるのでは?
 ベルギーの博物館・デザイナーによるJOCと日本のデザイナーへのパクリ疑惑訴訟より、勝率は高いと思えますがね。

 さて・・ここで日本の「ザ・コーブ」対抗ドキュメンタリー映画にちょっと話を移しましょう。

■ 【マスコミ試写会のご案内】
http://jaef.la.coocan.jp/jf/notice/2015/0807.pdf
■Filmmaker tries to rebut documentary on Japan dolphin hunt (8/7,AP)
http://bigstory.ap.org/urn:publicid:ap.org:827ba3bf6d344ea3b8318d4a0de4ae4b
■「シー・シェパード、ひどい」 モントリオール映画祭、日本人女性監督の反捕鯨「反証」作品に熱い反響
http://www.sankei.com/entertainments/news/150905/ent1509050015-n1.html

 プロダクションに勤めていた八木景子氏が単独で製作した初作品という「Behind the Cove」
 モントリオール国際映画祭参加ということで、産経が他の多くの出品された日本製映画とは別格の扱いで取り上げました。やはり沖縄デモ10人とは対照的な報じ方。
 先月にはマスコミ試写会が行われたのですが、宣伝の場を提供したのは日本捕鯨協会に「伝統食文化」「人種差別」の効果的キャッチコピーを伝授した広告代理店・元国際ピーアールの梅崎氏が代表を務める水産ジャーナリストの会
 産経記者と同姓の佐々木芽生氏もベテラン映画監督として「ザ・コーブ」対抗作品のクラウドファンディングを利用した製作を表明されましたが、佐々木監督が「日本人のずるさも描く」とどちらからも距離を置いた中立性を担保したのに対し、デビュー仕立ての八木監督は首までどっぷり浸かった捕鯨礼賛派
 しかも、学校給食の竜田揚げが原点という八木氏、「捕鯨問題に隠された国家秘密と謎解き」なんて怪しげな文句が並び、もう都市伝説臭が最初からプンプン漂ってきます。
 AP通信のインタビュー記事でも、広島の被爆を絡めるなど、乱獲と密猟にまみれた日本の捕鯨産業の黒歴史について何も知らないノーテンキな捕鯨性善説信奉者であることをうかがわせます。
 そして、きわめつけがシネマトゥデイの記事。

■アカデミー賞受賞反捕鯨映画『ザ・コーヴ』を反証!衝撃のドキュメンタリーがモントリオール上映|シネマトゥデイ
http://www.cinematoday.jp/page/N0076186

 「映画では、ペリーが来航し捕鯨の技術を日本に伝達した江戸時代にまでさかのぼり、日本人と鯨の関わりについて検証」(引用)

 ・・・・。正直、もう開いた口が塞がりません。
 賛成派と反対派とを問わず、ウォッチャーには説明の必要はないと思いますが、明治に始まった日本の近代捕鯨は起業家がノルウェーから導入したしたもので、米国の帆船式捕鯨ともペリー来航とも無関係。八木氏は捕鯨史の基本中の基本について、驚くべき無知を露呈したのです。
 まあ、この表現はシネマトゥデイのライターが大ポカをやらかした可能性もありますが、産経記者佐々木氏の言葉を借りれば、ザ・コーブとは程度で比べ物にならないほど、「事実誤認にまみれている」「疑いが浮上した」とはいえます。
 わざわざカナダに行って、「日本は侵略戦争なんてしていない! 従軍慰安婦も南京大虐殺も真っ赤な嘘だ!」と唱えるに等しいほど、デタラメな法螺話を海外に撒き散らしに行ったも同然。
 まさに日本の恥
 正しい歴史を教えてあげなかった捕鯨関係者の責任ともいえますが・・。

 もう何年も太地町の住民はオバリー氏とまともな会話をしていないのではないか。

 佐々木氏は憶測でこう述べていますが、非常に奇妙なことに、彼にインタビューした八木氏とも異なり、佐々木記者自身はオバリー氏本人に直接問い合わせた形跡はありません。FBの記事やコメントをのぞき、間接的に情報を収集しているだけ。
 取材対象は、新宮警察と名前も所属も明かさない治安関係者、ほぼ間違いなく応援団活動家とみられる住民くらい。
 プロの新聞記者、ジャーナリストとして、2chラー水準というのはどんなものでしょうね?
 
 漁師たちは合法で持続的可能な捕獲量で行われている漁を決して止めるつもりはない。

 この表現にもきわめて大きな問題がいくつもあります。
 まず、「合法」という決まり文句は当事者がいつも口にするのですが、非常に大きな誤りです。
 正しくは無法。
 彼らのいう合法は、和歌山県知事の許可に基づいている趣旨。日本国内の都合でしかありません。
 しかし、国連海洋法条約第65条において、「特に、鯨類については、その保存、管理及び研究のために適当な国際機関を通じて活動する」と定められているのです。
 現状で適切な国際機関といえるのは、太平洋の鯨類資源利用(非致死含む)に関わる多くの国が加盟しているIWC(国際捕鯨委員会)ですが、小型鯨類の資源管理を求めるモナコ提案が昨年やっと採択されたばかり。しかも、法的拘束力がないため、日本は無視してしまうことができます。
 国際機関による管理が国際法の要求であるにもかかわらず、未だまともに行えていないのが実態なのです。
 もうひとつ。
 日本には家畜を含む人間社会と関わる愛護動物に関して環境省が倫理指針を定めています。他の先進国に比べると著しく遅れているとはいえ・・。
 ところが、イルカの動物福祉上の法的指針が日本においては存在しないのです。
 
 次のフレーズ、持続性について。さすがに決まりが悪いからか、漁協関係者らは「合法」に比べ「持続可能な」という表現をあまり口にしたがりません。
 実は、同じイルカでも主に三陸地方で行われてきた突きん棒猟の対象であるイシイルカや、害獣として北海道で駆除されているトドに関しては、NOAA(米国海洋大気庁)が策定した管理指標であるPBRという管理方式を一応採用しているのですが、太地町のイルカ追い込み猟の対象種に対しては、ずっと指摘を受け続けながらいつまでたっても水産庁が採用を拒み続けているのです。
 国際的な自然保護団体は、水産庁による現行のイルカ捕獲枠がPBRの2倍近い過大な設定になっていることを指摘しています。到底持続可能な量などとは呼べません。

■有害な捕獲 日本の持続不可能で無責任なクジラおよびイルカの猟|EIA
https://eia-international.org/wp-content/uploads/EIA-Toxic-Catch-Japanese-med-res1.pdf

 もっとも、今ではその捕獲枠を限度近くまで消化しているのは太地町のみ。昨年のハナゴンドウに至っては、オンライン上の国際データベースで枠をオーバーしてしまったことまで記録されています。
 そもそも、日本のイルカ猟は歴史的に非持続的なものだったのです。
 乱獲と密猟(著名な作家、C・W・ニコル氏が証言)の当事者の言うことを鵜呑みにしているだけとも言えますが、裏をきっちり取ろうとしない点でジャーナリストとしては完全に落第でしょう。

 オバリー氏が派手な立ち回りをすればするほど、支持者たちからの寄付金が彼の懐に落ちるビジネスモデルが成立してしまっている。

 NPOに専従職員を置くなというのが彼の主張なのかもしれませんが、それでは福祉方面を含む日本のNPO法人制度自体も全否定することになってしまいます。
 「懐に落ちるビジネスモデル」とは、物は言いようですね。というより、ただの言葉遊び。
 それを言うなら、産経新聞を購読したり、アンチSSCS本を買う支持者がいるおかげで、佐々木氏の懐に金が落ちるビジネスモデルも、同様に成立していると言っていいでしょう。二束草鞋といっても、ほとんど同じ内容を使いまわすんだから、えらい効率のいい商売ですなあ。
 太地のイルカ猟はといえば、公社を利用したからくりで内外の水族館にマージンを8割以上乗せて生イルカを売りさばく、とんでもない荒稼ぎのビジネスモデルにほかなりません。

■第65回IWC(国際捕鯨委員会)について 費用|太地町議会議員 漁野尚登のブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/nankiboys_v_2522/33397714.html

毎回毎回4,5名でビジネスクラスで参加し、すでに参加費用は3千万以上になっていると思います。
国内の旅費は太地町職員旅費条例で定めれらていますが国外の旅費は条例で定められていません。
毎年毎年ブルームやアメリカ等々太地町は多額の海外旅費を計上しております。(引用)

 なぜ佐々木氏が三軒町長らのこういうセレブな振る舞いに噛み付こうとしないのか、筆者は不思議でなりません。
 ひとつ重要な違いを挙げるべきでしょう。
 両者には天と地ほどの違いがあります。個人の意思に基づく寄付と、強制的に徴収される税金という。

 イルカ漁をめぐる不毛な騒動は今後も続いていく。太地を訪れ、パフォーマンスを行う活動家たちは自分たちの行動が反発を呼ぶだけで、むしろイルカ漁の停止から遠のかせてることに気付いていない。

 ここまで見てきて、産経記者佐々木氏がいかにとんでもないダブスタ脳の持ち主か、みなさんにもおわかりいただけたでしょう。
 イルカ猟問題に関心があるのであれば、保護団体の主張の内容にこそ耳を傾けれど、オバリー氏やワトソン氏等個人の素行になんか誰も興味を持つはずがありません。
 捕鯨やイルカ猟について、賛成ないし反対の意見を自由に表明することは、世界中のすべての人々に認められるべき権利です。
 メディアが双方の主張を紹介したり、議論に役立つ情報を提供するのも、報道機関・記者として当然の仕事といえるでしょう。
 しかし、特定の個人の自損事故をブチブチネチネチ記事に書き連ねることが、一体公益にかなうジャーナリズムなのでしょうか?
 ウェッジに掲載された彼の記事は、まさに不毛な個人攻撃の書きなぐり文でしかありません。
 佐々木氏こそ、日本で、いや、世界で最も「イルカ漁をめぐる不毛な騒動」を煽り立てている人物といえないでしょうか?
 ただひたすらイルカ猟に自分を重ね、ケチをつける者に対してはそのすべてを全力で否定しなくては気がすまない。
 おそらく、太地という神々しい聖なる存在の盾の役を自ら買って出た有能な騎士のつもりでいるのでしょう。
 しかし、少なくともそれは、問題を冷静に見つめ、市民に事実を伝えることに務めるジャーナリストの態度ではありません。
 彼がそのことに「気づいている」様子はありませんが……。

 日本の御用記者にここまで書かせるほど、いろいろネタを提供してしまったのは、確かにオバリー氏の落ち度とはいえます。
 筆者としては、ソロモン諸島での活動の後始末、持続的な共存関係を築くまで現地にとどまったほうが、イルカたちのためにもなるのではないかと思うのですけど。
 外国人が暮らしにくい差別国家・監視国家に何度も足を運ぶよりは、きっと健康にもいいでしょうし・・
 それでも・・どちらがイルカ猟の是非をめぐる問題に有害な影響をもたらしているかといえば、佐々木氏にはやはりかないますまい。

 拙ブログではこれまでにも、産経佐々木記者の発信する内容のボンクラぶり、ガッカリぶりを伝えてきました。
 一般人が都市伝説を真に受けてしまう被害を多少なりとも食い止める公益上の必要から、ですがね……。
 しかし、今回の記事はいままで以上にひどいものでした。
 記事全体を通して稚拙で乱暴な表現のオンパレード。
 「オバリー氏が飲酒運転で逮捕された」というあからさまな嘘をついたり、日本で年間数百万件発生している自損事故をオーバーに騒ぎ立てたり、茂木氏にまでツイートをキャプチャーして噛み付いたり。


 佐々木氏は安保法制問題についてほとんどツイートしていません。たぶん、安倍政権にベッタリの産経の大方針に沿った考えなのでしょうけど。
 そんな彼が、マイクで熱唱する茂木氏の画像付報道をわざわざRTしたのは、一体どういう了見なんでしょうか?
 彼はときどき、イルカ猟に疑問を投げかける一般市民のツイートも好んでRTします。当然、記事中の彼の主張とは明らかに反する意見ですが。
 ツイッターユーザーとしても、たぶんそういうタイプ≠ネんでしょうね・・・・・
  
参考リンク:
■イルカ猟の開始|IKAN
※筆者注:産経よりマシとはいえかなりひどい朝日報道の問題点について。
http://ika-net.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-cea2.html
■御用新聞のトホホ記者・佐々木氏の珍解説|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/70152801.html
■沖縄を切り捨て太地を庇う、自民党と日本政府のすさまじいダブスタ|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/133050478.html
■捕鯨の町・太地は原発推進電力会社にそっくり|拙ブログ過去記事
http://kkneko.sblo.jp/article/78450287.html

posted by カメクジラネコ at 01:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/163126790
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック