2008年06月07日

"ただの自殺"で終わらせていいのか

■日新丸船内で自殺者 広島・因島に停泊中 (5/31,中国新聞)
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200805310081.html (リンク切れ)

http://megalodon.jp/2008-0602-1244-11/www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200805310081.html
 

 鯨研・共同船舶は、鯨肉横流し疑惑の真っ只中にJARPN(北西太平洋調査捕鯨)の強行を図り、事件はその出港わずか数時間前の日新丸船内で起こりました。この50代の男性の方が、鯨肉横領で告発された12名の解体主と関係あるかどうかは不明。
 日新丸では二度の火災が発生したほか、昨年夏には機材に挟まれて作業員の方が亡くなるなど、この10年の間に3名もの人命が失われています。これで間違いなく船上で4人目の死者が出たことになりました。
 母船式捕鯨の従事者は、長期の遠洋航海と危険な肉体作業を伴うきわめて過酷な労働環境におかれています。一方で、共同船舶鰍ヘ日本の水産業トップ3による合弁企業を前身とし、国の委託事業を独占的に受託している超優良企業ということになります。労働条件の厳しさを考え合わせれば、従業員の健康管理に、メンタル面も含め細心の注意を払っていて然るべきでしょう。
 海上保安庁の調べでは、男性は日頃から持病について話していたとのことですが、もし自殺を考えるほど深刻なものであれば、捕鯨母船上の業務にはとても耐えられないでしょうし、同僚・会社がそれを放置するのは非常におかしな話です。
 もちろん、大体自殺の動機というのは複合的で、本人でさえ気持ちが絶えず揺れ動くものでしょう。遺書も残ってないなら、原因を特定することは不可能です。だから、学校でこどもが自殺した場合などは、関係者の口から実に都合のいい無責任な言い逃れが飛び出すのですが・・。しかし、職場で、重要な業務遂行直前にとなると、一般の産業ないし会社であれば、社内の人間関係に問題がなかったか、会社との間でトラブルを抱えていなかったか、そして過労を疑い、きちんとした調査を行うのがスジでしょう。
 「犠牲を無駄にしない」というのは、使い方を誤れば危険で、あまり好きな言い回しではないのですが、これ以上犠牲を増やすことは回避しなければなりません。今回の事件が、「謹んでお悔やみ申し上げます」の一言で、ただの自殺としてやり過ごしていいものだとは、筆者には思えません。横領事件の最中、サミット前に出港してたたかれるのを回避できて、「助かった」と考えているヒトたちも、中にはいるかもしれませんが……。


 捕鯨ブンカを声高に掲げる日本は、年間3万人を越す自殺者を出している自殺大国でもあります。自殺動機のトップは健康上の理由、それから経済的な理由が続きます。しかし、末期ガンや不治の難病に冒されるなど本当に深刻な病を抱えた人ほど、濃密な人生を生きようと必死に戦うものです。お金にしろ健康問題にしろ、家族の支えさえあれば、決して乗り切れないものではないはずです。ニンゲン以外の動物はもちろん、お金に困って首をくくったりはしませんし、病気や怪我の場合は全力で抗うか、静かに自然な死を受け入れるかで、どのみち自らを殺す選択などはしません。唯一生きる希望を失うことがあるとすれば、家族の絆を喪ったときだけです。
 こうした理由であっさり自殺を選択してしまうヒトが日本で多発している原因には、憲法で保証されているはずの"最低限度の幸福を享受する権利"が、実際に認められているとはいいがたい点も挙げられるでしょう。国家・行政というものは、難癖をつけて生活保障を打ち切り、老人を平気で孤独な餓死に追い込めるような、感情の欠片もない冷酷で非動物的な存在です。ときどきヘンなところでおそろしく感情的になるくせに・・・
 軽々しく命を絶つことが、もはや捕鯨ブンカと同じく新しい日本のブンカとなってしまった感もありますが、そんなブンカは当然認めるべきではありません。筆者はフェアだとはまったく思いませんが、曲がりなりにも野生動物の命を奪い、その"死"を間近に見ているはずの鯨捕りは、本来であれば命の重みについて深い自覚を持っていていいはずではないでしょうか。

posted by カメクジラネコ at 14:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系
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