2008年05月26日

ハレムじゃないよ・・

■オットセイ・ハレムの真実|ダーウィンが来た! (5/25,NHK)
http://www.nhk.or.jp/darwin/program/program103.html
 
 前回のオウサマペンギンに続く南極サウスジョージア特集、今回はミナミオットセイ。
 「一夫多妻のハレム社会で、その主となったオスが圧倒的に強く、メスはひたすら服従するとの"定説"を覆す、したたかに力強く生きる、メスの"新伝説"」とありますが……野生動物の社会関係に関する認識がどうも根本から間違っているようです(--;; まあ、ハレムなんて呼称を付けたのがそもそもの過ちだったのですが・・・
 夫婦ハレムも、ニンゲンによる後天的な文化です。アザラシにしろ他の鳥や獣にしろ、恋人という社会的概念≠ヘありません。当然、法律の縛りもありません。野生動物の繁殖行動には、種/個体によって保守的か気まぐれかという傾向の違いがある、というだけの話なのです。
 ミナミオットセイに関する最新の研究成果が示す事実は、従来繁殖オスを中心にした交配のための集団≠セと考えられていたものが、実はテリトリー・繁殖のための場所・資源を確保する便宜に基づく集団≠セったということです。雌雄の利害が対立する場合は、オスは確保したメスが他のオスとつがうのを阻止する行動をとるように、選択圧が働くはずです。よそのハレムからメスがやってくるのを迎えればいいのですから、オスがメスの浮気に口を挟まず放っておくのは、動物行動学の見地からは理に適っているのです。要するに、(ニンゲンと同じ意味での)浮気などではないのです。メスがしたたかなわけでもないのです。一見、自分とつがわないメスのために他のオスとの闘争のエネルギーを割くのは理屈に合わない気がしますが、遺伝子を共有する血縁個体であれば(遺伝子にとって)有利に働く、という解釈なのです。
 野生動物の社会集団は、細かい差異はあっても、近親交配を避けるために必ず父系ないし母系のいずれかのタイプに分けられます。ミナミオットセイの場合、父系/母系どちらとも判別つきかねますが、非常に巧妙な仕組みに出来上がっており、興味をそそられます。
 もっとも、この社会のシステムがどの程度自然に成立したものなのか、疑問の余地もあります。というのも、番組中でも解説されましたが、ミナミオットセイは南極海捕鯨が盛んだった頃に乱獲され、一時島で50頭のレベルにまで個体数が落ち込んでしまったのです。下手人は西洋の捕鯨業者ですが、意識レベルはアホウドリを乱獲した日本人と何ら変わるところはありません。結果を予期できなかった、自然の生態系のシステムを理解できなかったニンゲンの仕業なのです。
 ハレム(に代わる呼称を早く考えたほうがいいケド・・)のおかげで、400万頭のオーダーに回復できたとされていますが、むしろシロナガスなどの大型鯨類の激減による南極海生態系の乱調の結果とみるべきでしょう。捕鯨推進派のロンリに従えば、オットセイたちを殺して間引かないのは"不合理な差別"ということになりますね...
 ちなみに、オオフルマカモメに襲われた仔アザラシを成熟個体が救うシーンがありましたが、撮影スタッフが実の母親≠ニきちんと確認したのかは疑わしく思えます。目玉をつつかれたりするのは、ニンゲンの目には残酷に映るかもしれませんが、これが自然の摂理というもの。フルマカモメたちもそうやって命をつないでいるのですから、"悪者扱い"はやめて欲しいですね。ペンギンやオットセイやクジラたちにとって、真の"悪者"は、南極海生態系にまったく場違いなニンゲンという殺戮者だけなのですから。
 どうも公共放送NHKは、以前に比べ野生動物の捕食関係を情緒的に解説する傾向が強まっているみたいですね。。なんとかしてもらわなければ。あと、返ってわかりづらいだけの無駄なCGに割く予算があるなら、取材費に回してもらいたいところ。。
 
posted by カメクジラネコ at 02:21| Comment(2) | TrackBack(0) | クジラ以外
この記事へのコメント
>捕鯨推進派のロンリに従えば、オットセイたちを殺して間引かないのは"不合理な差別"ということになろう。

こんなに増えてるんだからそこら辺の資源食い荒らしてる筈ですよね。そこら辺のデータあるんでしょうか
Posted by Zちゃんねらー at 2008年07月25日 19:44
>Zちゃんねらーさん
ナンキョクオットセイはものすごく激減して(昔の西欧の捕鯨業者のせいもあるんだけど)、その後奇跡的に回復したけど、それでナンキョクオキアミの資源量がどのくらい増えたり減ったりしたか、実際に測ったデータはありません。クジラやカニクイアザラシやペンギンや海鳥や魚やイカや、いろいろな捕食者がいるから、極端に増減したりしないである程度バランスを保ってくれたのでしょう。経験的には、考えなしのニンゲンが介入しないほうがうまくいく場合が多いと思うよ。生態系は複雑でややこしいから、食害論を唱えているヒトたちがいうような具合には進まないんだよ。もし彼らの考えてるほど自然が単純だったら、ニンゲンが登場してくるずーっと昔に地球の生物界は滅んじゃってただろうね。
Posted by ネコ at 2008年07月26日 02:25
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