2008年05月15日

ゴリラとクジラ

■私が愛したゴリラ|爆笑問題の日本の教養 (5/13,NHK)
http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/20080513.html


 ゲストはゴリラ研究の草分的存在、京大霊長類研の山極教授。
 分岐系統学的見地からいえば、サル目(霊長目)、狭鼻猿類という大きなくくりの中にヒトを含む類人猿(無尾猿類)が位置付けられるので、やはりヒト=サルの一種というのが正しいハズなんですけどね・・。まあ、「ゴリラと同じヒト科」という説明だけでもかまわないのですが。あと、ニホンザルの場合、人工的なサル山のような不自然な環境にない限り、「実はボスは存在しない」というのが今はセオリー。オマキザルタイプの他種も同様ではないのかしら?
 動物園のゴリラは怖くて檻の中に入れないという山極氏。飼育係も入らないわけですが。アフリカの地に生きるコミュニケーションが可能な野生の群れ・個体との決定的な違いを明確に指摘してくれました。動物園の動物を見せても、環境教育にはまったくならないのです。
 多くの飼育動物の中でも、いちばん哀れなのは類人猿とイルカではないでしょうか。社会性の動物を群れから孤立させ、野生とは異なる環境に長期間置けば、"距離のとり方"がわからなくなるのは当然でしょう。大体、あの反応は"孤独感"からくるストレスとしか受け取れません。檻の外で他のサルの個体が自分を無視して勝手にしゃべくってるのを見せつけられてるんだよ?
 さすがは山極教授だけあって、ヒトとゴリラの比較研究の話はとても面白かったです。結論としては、ニンゲンが他の類人猿と際立って異なる点の多くは、ネオテニーによって解釈するのがいちばんしっくりくるようですね。
 ただ、ひとつ気になったのは、「"共感"こそがヒトならではの特徴」というところ。感情の共有、あるいは幼児の"指差し"のような行動は、実はイヌ・ネコ・フェレットでも見られるのです(と筆者は考えています・・)。家族の一員が該当する方ならご存知のとおり、イヌはゴリラと同様、家族のケンカを仲裁するなど空気を読む一方、ゴリラと異なりニンゲンのようにしばしば場の雰囲気に合わせます。また、指差しは指がないから不可能ですが、イヌ・ネコ・フェレットはいずれも意思表示のために飼い主と対象物(おやつ、玩具、扉など)との間の視点移動を確かにやってのけます。いかにも「あれを取ってほしいんですけど・・」という具合に。指せる指を持っていれば指すでしょうね。ネコやイヌなどは、連れていきたい散歩のポイントに誘導する行動もみられます。さらに、以前にも触れましたが、家族の心の機微を読み取ることにおいては、イヌやネコたちはニンゲン以上に敏感です。
 もちろん、家畜化の長い歴史によって、社会行動に関する遺伝的プログラムがヒトと類似する方向に設定された、という解釈は可能でしょう(とくにイヌの場合)。ただそうなると、ニンゲンとニンゲン以外の動物との行動学的見地から見た差異というのは、むしろ身体的特徴よりもっとあやふやなのではないかと思えてきます。
 日本の動物行動学は、今西錦司氏の研究をルーツに、とくに霊長類の社会行動について、同霊長類研を中心に世界でも先駆的な役割を果たしてきました。今西氏のやり方を"根性主義"と批判する向きもありますし、最近の日本の若手研究者には勢いがないという話も耳にします。しかし、フィールドで"同じ目線"に立つ手法には、無味乾燥な数値解析だけでは得られない大胆な着想や仮説を産み出すポテンシャルがあるはずです。
 エソロジーの観点からは、あらゆる動物の中で群を抜いておもしろいのが鯨類と類人猿(=檻に閉じ込められると一番悲惨な種ということでもある・・)。捕鯨さえなければ、日本は鯨類行動学の分野で世界に冠たる地位を占めることも可能だったはずなのですが・・。
 ところで、父系社会のゴリラとは異なり、シャチやマッコウクジラは母系社会。社会集団の母系/父系と、父性愛の強さとはまた別のものですが・・。ゴリラに近い父系性の社会集団を発展させてきたとみられるのがツチクジラ。日本の小型沿岸捕鯨で毎年殺され続けているにもかかわらず、社会行動に関する研究はほとんど進んでいません。
 致死的研究では、市民の知的好奇心を満たすいかなる成果ももたらせません。もたらすのは、食通家たちの胃袋を満たす鯨肉だけ
 捕鯨なんぞとっととやめてくれれば、筆者も純粋な鯨類の生態学や行動学の非致死的研究に基づく成果だけ読んで楽しんでいたいものです... 

posted by カメクジラネコ at 00:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学系
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