2008年05月14日

ニッポンの水産業の真の敵はクジラではない

■アワビごっそり密漁団|クローズアップ現代 (5/12,NHK)
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_2578.html

 各地でアワビやナマコをねらった密漁が多発しているとのこと。裏で糸を引いているのは暴力団。経済成長を背景に、五輪を前にした中国の水産物市場が急激に拡大し、高値を呼んでいるためです。
 ヤクザは漁業と縁のない無職の20代の若者を集め、「一晩で5万儲かる」ともちかけ、ダイビングの講習を受けさせ、技術を仕込んだうえで、夜中に潜らせているのです。もちろん、摘発されても"トカゲの尻尾切り"。沿岸漁業者が資源保護のために、なけなしの努力を払って稚貝を育て放流していることなど、ヤクザや生活に困り札束に引き寄せられた若者たちが頓着するはずもないでしょうね。
 こうした密漁を監視するための夜回りなどの、危険で労力のかかる監視作業は、なんと高齢化の進む漁業者が自腹で行っているのです。自治体は、財政上の理由などにより補助を打ち切る傾向にあるとのこと。
 トドやアザラシその他諸々の"食害"に行政が補助金を出すより、こうしたニンゲンの違法行為を徹底的に取り締まるのがスジではないでしょうか。弱い者が相手の時は金を出して殺させるのに、暴力団が相手だと「自己責任で」と逃げるのが、一体"お上"のやることなのでしょうか? それとも、もしかして裏でつるんでたりとか??
 海上保安庁も、シーシェパードと火薬弾を投げ合ってる場合ではないでしょう。あんな連中は、日本がとっとと公海での捕鯨をやめればすぐにブッ潰れますし、日本の漁業に何の影響も及ぼしません。敵を間違えていやしませんか? それとも、やっぱりつるんでるの?? 目を逸らしたいの??? 漁業者の不満の矛先をすり替えたいだけなの????
 後半の解説では、密漁の問題と日本の水産業の現状・将来展望の話が整理されず、生煮えのまま終わってしまいました。水産物市場の利益の3/4が流通事業者の手にわたっている根本的な問題があるとせっかく指摘したのだから、そこをもっと突っ込んでほしかったのですが・・。
 かつて商業捕鯨を手がけていた大手水産会社は、軒並食品流通商社に転身しました。要するに、うまみのある商売に乗り換えて、このいびつな構造を作り上げた張本人なわけです。海の現場で働いている漁業者を、そっくり皺寄せのできる下請扱いしているのです。"構造改革"なしでは、「逆境をバネにして日本ブランドを売り込もう」などと旗を振っても、みんな大企業とヤクザに吸い上げられるだけです
 せっかく地道に栽培漁業に取り組んでも、自分たちの収益向上にはつながらず、原油高騰などの影響はまともに直撃をくらう──。そのうえこの密漁。これで日本の水産業に未来があるなどと、現場の人たちに思えるはずもありません。若者だってやりたがるわけがないでしょう。
 昔からずっと、自分達の金儲けのためだけに零細漁業者を苦しめ続けてきた大手の同業者、彼らをかばうばかりで本物の漁業者の苦境に見て見ぬふりをする水産行政。クジラと環境保護団体をスケープゴートに仕立てたところで、何も変わりはしません。漁業者の皆さんには、ぜひ誤魔化されないでほしいもの。
 構造改革についていえば、消費者と生産者が分断され、流通事業者に牛耳られている程度において、漁業は農業より輪をかけてひどいのが実情です。そのことが収益の低さに直結しているのです。相次ぐ水産物の食品偽装は、専ら流通事業者によるものですが、それも構造の問題と無縁ではありません。"お魚ソング"をスーパーでガンガン流して、マイナスイオンならぬDHA効果を宣伝するだけの、「魚の消費量さえ増やせばいい」といった短絡的発想に基づく魚食文化普及キャンペーンが、そもそも根底から間違っているのです。
 洋食やお菓子に魚を混ぜ込みカモフラージュして、無理やりこどもに食べさせるのは本末転倒というもの。それならば、主婦には三枚下ろしができるように、こどもには箸を使って焼き魚を食べられるように指導する方が、まだしも正しい食文化の伝道になったことでしょう。これもまた、捕鯨推進キャンペーンの誤ったやり方を踏襲した結果といえますが。捕鯨はこんなところでまで全水産業の足を引っ張っているのです。
 消費者と生産者との顔の見える関係≠築き直していく以外に、健全な漁業を後代に残す道はありません。すべては、日本の水産行政にやる気があるかどうかにかかっているのです。
 もう一つの元凶は中国。中国国民の消費スタイルが"日本型"のままどんどん膨らめば、一種の短期的な投機対象と化した水産物市場めがけて、不正な密漁による水産物が日本からなだれ込むことは避けられないでしょう。要するに、日本の真似をさせたら日本の水産業がアブナイということなのです。中国の流通事業者と消費者の意識を高め、急激な消費増大を抑制するとともに、欧州のMSCのような制度を導入して、資源管理がきちんとなされている水産物のみが取引されるような仕組みに改めなければ、根本的な解決とはなりません。一方で、中国国内の健全な漁業の育成と沿岸の海洋環境・資源保護に努め、世界の魚をごっそり巨大な胃袋にかき集める日本のような輸入大国化への道を防ぐことも必要でしょう。同様に消費が拡大しており、国際市場において競合関係となる欧米諸国とも協力したうえで、中国政府が自ら積極的な施策を打ち出すように促すべきです。クジラなんぞで鍔迫り合いをやっている場合ではありません。

■水産行政とクジラ
http://www.kkneko.com/suisan.htm

posted by カメクジラネコ at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会科学系
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/14905359
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック