2008年05月06日

日曜定番動物番組評・・

■クイーンズランドの湿潤熱帯地域|THE世界遺産 (5/4,TBS)
http://www.tbs.co.jp/heritage/archive/20080504/

 ここ最近、どこの局もオーストラリアの大自然特集がやたら目につく気がします。固有性が高く、スケールが大きく、保全状態が良好な、言い換えればハイグレードな自然が、それだけ多くのオーストラリアに残っているということでしょうけど・・。
 海の豊かさは同格でも、陸上は東西で際立った対照を見せているのがオーストラリア。その東海岸に残るクイーンズランドの湿潤熱帯雨林は、少なくともゴンドワナ大陸からオーストラリアが分離した1億年以上前から続く豊かな森。
 3億年前から姿の変わらないソテツやシダ。シーラカンス植物番といったところでしょうか。キングファーンと呼ばれる現生最大最古のシダは、巨大なゼンマイのよう。日本人の目にはつい"美味しそう"に映ってしまうけど、哺乳類には食えそうもないですね。恐竜の口には合ってたかもしれないけど・・。そして、昆虫との共進化が始まる以前から登場していた最古の被子植物も。
 動物の方は、キノボリカンガルーやカモノハシ、ヒクイドリ、ナナフシetc. キノボリカンガルーは、有胎盤類でいえば植食性の原猿とナマケモノを足して2で割ったくらいかしら。彼らがこのまま進化したらどうなるでしょうね? ユーカリの栄養価が低くて、摂食行動に割く時間が長すぎ、仮に人類が出現・進出してなかったとしても、大陸が東南アジアにぶつかるまでに真猿や類人猿のレベルにまではいかないでしょうけど・・。むしろ、霊長に化ける可能性があったのは、雨林の生態系のカギを握る種でもあるヒクイドリの方かもしれません。あり得た/あり得る進化の空想は思考実験としては楽しいものです。
 激カワだったのはヒクイドリのヒナ。まるでウリボウみたい。オーストラリアはコアラやカンガルーやこのヒクイドリや、種ごとにしかも公・民でシェルターがあるんですねぇ。日本のトキやコウノトリの場合、固有の地域個体群は絶滅、海外に別系統がいたからまだ助かったのです。ヒクイドリもニューギニアに亜種はいるようですが、日本の犯した愚を繰り返さないようにしてほしいもの。オージーの皆さんなら大丈夫だと思うけど・・。

 

■シリーズ 火と氷の国アイスランド(1)「火山湖に謎の竜巻!」|ダーウィンが来た!生きもの新伝説 (NHK)
http://www.nhk.or.jp/darwin/program/program100.html

 捕鯨国アイスランドの自然。幸い(?)、クジラは出てきません。こういう比較的マイナーな地域のマイナーな生物を紹介する回のほうが、返って見ごたえもある気はしますけど。
 今回はミーバトン湖という名の、湖底の巨大なマリモや、多くのカモ類が渡ってくることで知られる、世界的にも稀少な火山湖。登場するのは、キタホオジロガモとユスリカ。
 世界初撮影との触書のユスリカのさなぎの水中浮上シーンは、まあおもしろかったけど、日本でだってその気になれば撮れますねぇ。。国産種はウケないと思ってるのかニャ(--;
 ごく普通に見られる昆虫であるユスリカは、親戚の蚊のように血を吸うわけでもなく、別に実害は何もありません。しかし、現代の日本人は「うざい」「死体が汚い」といった理由で、税金でわざわざ殺虫灯まで立てて殺すようになってしまいました。蚊柱を季節の風物詩として楽しみ、(成虫になってからの)はかない命に"もののあはれ"を感じるのがニッポンの文化、ニッポンの心ではなかったのでしょうか??

 

■どうぶつ奇想天外!(TBS)
http://www.tbs.co.jp/doubutsu/

@デブネコ:
 食事の管理をせず肥満を放置し、自分の子供の寿命を大幅に縮めるのは、ほとんど虐待も同然です。テレビでもてはやすのはぜひやめていただきたいもの。「うちの子のほうがデカイ」「この品種でデブキャラを狙おう」といったバカなデブ専が増殖すると困ります。
Aゴリラの父性愛:
 同じ類人猿でもニンゲンよりずっと格上。まあ、世のお父さんが、これを観て頭の下がる思いに駆られたなら、流す価値のある映像だったということで・・。
 解説では、「父親が子育てに積極的に参加するのは"哺乳類では"(魚や鳥ではフツーだから注釈付けなきゃいけない)ゴリラとニンゲン(は余計だけど・・)だけ」と説明されていましたが、深海性の歯鯨類の一種であるツチクジラも、特殊な父系社会を築いていることが研究者に指摘されています。社会形態の類似した近縁の歯クジラでも、今後非致死的な研究が進めば観察される可能性があるかもしれません。ツチクジラは日本では捕獲対象にされていますが・・・

 

■出現!ハイブリッド猫の秘密・ペットブームの光と影 Vol.4|素敵な宇宙船地球号 (TV朝日)
http://www.tv-asahi.co.jp/earth/midokoro/2008/20080504/index.html (リンク切れ)

 アシェラ:ベンガルとのハイブリッドが300万の高値で売られている話は聞いていましたが・・。米国の繁殖業者は「プラダと同じステータスシンボルだ」と明け透けに本音を吐いていました。
 確かに外見は、大型猫フリークにとっては魅力的に映るに違いありません。しかし、発想がもはや"甘やかされた金持ちの子供"。番組中に登場していた、向こうじゃあからさまに軽蔑されるタイプの超メタボ体型の飼い主さん、ステータスったって、みんなあなたじゃなくて"その子の方だけ"に注目してたんだけど。。「こんなはずじゃなかった」という"予想どおりの顛末"を前に途方に暮れられても、同情に耐えないのは、すっかりニンゲン不信に陥って怯えた顔で威嚇するアシェラのほう。いくら販売価格3万$といっても、返品された"曲がったキュウリ"の辿る運命は同じでしょう。
 環境省はこの手のハイブリッドペットが上陸する前に、危険動物への指定などの策を早めに打ち出しておくべきです。後手に回れば対応が困難になりコストも余計にかかってしまいます。といっても、ペット業界・消費者のモラルが一段と低い日本では無理な相談かもしれませんが・・。
 日本のペット事情も取り上げられましたが、ラブの股関節形成不全を始め、どの品種にも皮膚疾患、子宮蓄膿症、癲癇など高率で発生する疾患や先天性異常があることは、もはや飼育前に知られて然るべき常識です。だからといって、ミックスの"ブランド化"もどうかと思いますが・・。血統管理も必要ですが、悪質な業者と無知な"消費"者がいる限り、それだけで事態は改善されません。高値で売れる"売れ筋"商品に生産が集中し、乱繁殖による"品質の低下"が起こるだけです。すべては市場経済の話。
 "戻し交配"など、一般人の感覚からするとあまりにインモラルに思える近親交配は、普通に行われるブリーディングの手法にすぎません。ブリーダーがすべて悪い人物ばかりだと言うつもりはありません。しかし一方で、愛犬家殺人事件の犯人のような極悪人も。命の"扱い/処分"への慣れも働いていなかったとは言い切れないのでは。売れ残りはミニコミ紙やネットを使って安値で譲渡したり、実験業者に卸したり、こっそり始末したり・・。自家繁殖用に回されるのは一部(そもそも落ちこぼれなんだし)。商品価値のなくなった"モノ"にまで、終生餌代・医療費をかけて飼育したり、金と時間を割いて里親を募集するような手間はかけられないでしょう。そんな良心を働かせていたら利潤は出ないし、それこそ、命に値段を付けて差別化することの疑問に苛まれるだけなのですから。
 せめて日本もショップの存在しないドイツ並に、個人の誇り高いブリーダー、行政の厳しい規制、飼育する側の高いモラルが揃わないと・・。
筆者は「こどもを金を払って店で買う」「こどもの容姿や血筋にこだわる」感覚が理解できませんし、正直生理的な嫌悪感を覚えます。一口に動物好きといっても、"買う人""売る人"は別の人種と映ってしまいます。日本では極論と思われるかもしれません。しかし、本物の運命の出会いは、ショップのガラス越しではありえないのです。私の子供たちは全員捨て子・拾い子でした。できることなら、自治体の保護センター(殺処分施設)などで行き場のない里子をもらってください。日本には死を待つだけの運命にある子が数え切れないほどいるのだから。
 動物と暮らすのには向き/不向きが厳然としてあります。向いてない人は電子ペットを飼ってください。そのほうが絶対いいから! 容姿や稀少性に拘ったり、収集癖のある方にも、命のないものに興味の対象を移し変えることをオススメします・・。

 
posted by カメクジラネコ at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | クジラ以外
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