◇捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!・3
■巨大クジラ、漁業資源の増殖に貢献? (07/11,ナショジオ)
「我々が新たに検証した複数の研究では、クジラのような大型捕食動物が存在するほうが、生態系における魚類の個体数が多くなることが明らかになっている」(引用)
クジラたちは、高緯度における生産を貧栄養の深海や低緯度海域に分配し、海の自然の多様性を高めるきわめて重要な役割を果たしていることが明らかに。もっとも、定性的には以前から指摘されてきたことであり、とくに意外性はありません。要は、クジラも「他の野生生物と同じなんだ」というだけのこと。自然について無知な日本の反反捕鯨論者が脳内妄想でこしらえた、海の自然を害するエイリアンのごとき存在などではないという、当たり前のことが再確認されただけ。
国際司法裁判所からもそのずさんさを指摘された日本・鯨研の調査捕鯨と異なり、「質が高く興味深い研究」とレビューした他の研究者も絶賛。まあ、「刺身にすると美味いミンククジラ肉の安定供給のため」に行われた名ばかりのケンキュウとじゃ、比較にもなりませんわな。。
以下の拙過去記事と関連リンクもあわせてぜひご参照を。
−捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!
−捕鯨は森林破壊に勝る環境破壊!!・2
−捕鯨は生態系破壊!!
−調査捕鯨では絶対わからない種間関係の重要性
◇JARPAUレビューに見る調査捕鯨の非科学性・2
■SC/65b/Rep02 Report of the Expert Workshop to Review the Japanese JARPA II Special Permit Research Programme
http://iwc.int/sc65bdocs
http://events.iwc.int//index.php/scientific/SC65B/paper/view/686/673
http://iwc.int/sc65bdocs
http://events.iwc.int//index.php/scientific/SC65B/paper/view/686/673
前回の続きから。
生息数推定に関する6章では、クロミンククジラと他の鯨種、あるいは捕鯨操業海域≠ノおける生態の情報量のアンバランスが指摘されています。従前から筆者らが口酸っぱく追及してきたことですが・・。以下はJARPATのレビュー時にHPで使ったチャート。Uになってフクサンブツの生産量が倍増、生態系アプローチというお題目が加わったものの、状況は変わってないわけです。
一言で言えば、おっそろしく偏っているのです。
かくもいびつに変更している理由はひとつ──そう、永田町のグルメ族議員に「刺身にすると美味いミンククジラ肉を安定供給するため」。ICJの判決文中にもしっかり書き込まれてしまったとおり・・。
そのことを端的に象徴しているのが、レビューの23ページに書かれた以下の記述。
The Panel also recommends the collection of data on the ecotype of killer whales to try to allow estimates of abundance to be developed for each. This information is of importance to ecosystem modelling given their different feeding habits and in particular to evaluate the consequences of predation on minke whales.(引用)
自然死亡のパラメータ推定にも直結する重要な捕食者であることは誰の目にも明らかなことですが、生態系アプローチと言いつつ、両種を含む種間関係の研究には、《耳垢コレクション》と違い雀の涙ほどの研究リソースも割かれてはきませんでした。
今日ではシャチは食性や分布から少なくとも3つのエコタイプに分かれることが確認されていますが、シャチの個体数と分布動態とあわせ、クロミンククジラの繁殖海域を確定し、海域と年齢によるシャチの捕食傾向を突き止める息の長ーい研究が必要とされるでしょう。日本は単純な4鯨種モデルをぶち上げましたが、その単純なモデルでさえ、パラメータとしてシャチの捕食を考慮するか否かでシミュレーションの結果は天と地ほども変わってくるはず。RMPに生態系モデルを適用するなら、絶対に外していいはずがありません。
まあ、まっとうな動物学者にしてみれば、挑戦のし甲斐のあるテーマに違いありませんが、副産物の売り込み営業を喜び勇んで兼任している鯨研の連中としては、忍耐力と限界突破の発想と多くの時間を要するこの手の非致死的研究には、きっと食指が動かないのでしょうけれど・・・
最後のJARPAUレビュー、ツッコミどころはまだまだ残っているのですが、当ブログではこの辺にとどめておきます。興味のある方は直接IWC-SCのレポートをぜひチェックしてみてください。
調査捕鯨に関してひとつはっきり言えることは、海洋環境保全や沿岸の漁業資源の管理のために必要な、はるかに寄与度の高い数々の研究を差し置いて、長期にわたって巨額の研究費が国によってあてがわれながら、その内容は驚くほどずさんで、疑問符のつかない満足なアウトプットひとつ出せない代物だということです。なんとなれば、《調査捕鯨そのものの正当化》、《永田町のグルメ議員たちに刺身にすると美味いミンククジラ肉を安定供給すること》こそが、調査捕鯨というカガクの目的であり、成果に他ならなかったのです。
参考リンク:
−調査捕鯨の科学性を解体する|Togetter
−JARPAレビュー報告徹底検証
−持続的利用原理主義さえデタラメだった
−調査捕鯨の科学的理由を"後から"探し続ける鯨研
−ペンギンバイオロギングと調査捕鯨
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